（構成員）資料３ページ目の米国のオークション制度についてですが、落札総額約４兆６千億円とありますが、この中には落札したもののその後未払いとなったものや、落札事業者が倒産後、ＦＣＣが、同落札者とＦＣＣの間の訴訟の結果によって効果が異なる（いわゆる）条件付再オークションを実施した後、同訴訟の判決で再オークションの有効性が否定されたものなどが含まれており、必ずしも全てが米国政府の収入となっているわけではありません。また、米国でオークションを行うのは、初回の免許申請時だけです。更新時には、オークションは行わないと法律に記されており、原則的に更新は自動的に認められます。従って、米国のオークションで落札した電波については最初の免許期限までではなく、事実上、半永久的に電波の使用権が付与される状態に近いと言えるので、これらのことに応じた年当たりの金額を算出するのが適切です。
（構成員）米国ではオークションの歴史は長いが、欧州でオークションが導入されたのは比較的最近と言えるのでしょうか。
（構成員）米国では、大規模なオークションを実施する前に、小規模なオークションを実施するなど、長い時間をかけて試行錯誤しながらオークション制度を現在の形に定着させていったと言えるのでしょう。それに対し、欧州では、米国にならってオークションを導入したものの、最初から大規模な免許付与にオークションを導入し、そこでの失敗が大きかったため、その後、あまりオークションが実施されていないという印象があります。米国も落札額の高騰などの失敗もありましたが、現在では安定的に運用されています。
（総務省）行政の立場からしますと、米国と欧州のオークションでは大きく異なる点があります。米国では、オークションに際し、ほとんどすべての場合、大きく分けても州単位、場合によっては州を更に８つに分けて、全国を493地域に分割するというように、サービスエリアを細分化してオークションを実施しています。他方、欧州では基本的に全国単位のサービスエリアを前提として、オークションを実施するのが一般的です。地域を細分化してオークションを実施する場合、採算地域の免許には多くの事業者から応札があっても、不採算地域では免許が売れ残り、結果としてサービス展開が望めない地域が出てくるということが問題となります。我が国は、サービスエリアという観点では、米国よりも欧州の状況に近いと考えるのが適当かと思います。
（構成員）資料９ページに、フランスの固定マイクロ局の料金算定例が紹介されていますが、これと比べると日本の場合はどの程度になるのでしょうか。
（総務省）まず総額について申しますと、日本の電波利用料制度では固定マイクロ局１局あたり16,300円ですので、フランスに比べると相当低い水準であると言えます。フランスでは経済的価値を反映した電波利用料を徴収するということになっておりますが、電波の経済的価値の絶対額というよりは、先ずは、財政上何らかの具体的な徴収目標額があって、それを経済的価値に照らして按分していくという手法が取られています。
（構成員）韓国の制度についてですが、韓国でも第３世代携帯電話については、全国単位の免許になっているのでしょうか。また、免許申請時の出捐金については、事業者の申し出によるという説明がありましたが、上限額、下限額とも決められているので強制的な寄付金、負担金とも見えなくともないのですが、どのような位置付けになるのでしょうか。また、実際の免許審査過程において、この出捐金の額に相当する「２点」というのは、その他の審査項目と比べて大きなウエイトを占めるものなのでしょうか。
（総務省）韓国の場合も、欧州同様、全国単位の免許となっています。「出捐金」という用語については、韓国電波法の訳文をもとにしたものですが、基金に繰り入れられるという点から出捐金という語が用いられているのではないかと思われます。免許審査においては、サービス提供計画、財政的能力、技術開発の優秀性等の評価項目の合計点１００点に、上限額の１兆３千億ウォンの場合は２点、下限額の１兆ウォンの場合は０点が加算されます。その他の評価項目合計１００点に対して、出捐金の点数は最大２点ですので、一見割合は小さいと思われるのですが、但し、実際にはレベルの高い事業者間の競争になりますので、サービス提供計画等その他の評価項目で差をつけるのは難しく、出捐金額の点数が大きな重要性を持つとも考えられます。

	（４）電波利用料のあり方見直しに向けた考察
	事務局より、資料２について説明が行われた後、以下のような質疑応答が行われた。

（構成員）資料２ページに「ワイヤレスIT技術への取組に対象を限定」とありますが、これはどういったことを意図しているのでしょうか。
（総務省）電波利用料の使途の範囲については様々なご意見がございますが、本日の議論では、先ずは研究開発への支出について検討していただきたいということでございます。その他の格差是正、電波再配分等への支出については、次回以降ご議論いただければと思います。「ワイヤレスIT技術」というのは、基本的には電波に関する研究開発とご理解いただければと思います。もちろん、放送に関する研究開発も含まれます。
（構成員）資料８ページのモデルＢの場合ですが、図の右側の使用料にあたる部分は逼迫の解消と新規事業領域の開拓の二つの使途に充てられるものと思いますが、この二つのバランスについても議論が必要ではないかと思います。逼迫帯域、逼迫地域を利用している既存事業者は使用料部分の負担を求められるが、それは自分の帯域の逼迫解消ではなく、新規領域開拓のみに充てられるということになると、負担を求められるばかりで受益がなく、不公平感が強くなることも考えられます。
（構成員）８ページのモデルＢでは、共益費用と使用料を分けておりますが、これに対応して、５ページに挙げられている電波利用料の内訳項目が、それぞれ共益費用と使用料のどちらに割り振られるかについても、これからの議論になるのでしょうか。
（総務省）これからの議論になると理解しています。
（構成員）構成員の皆様にお聞きしますが、事業者の立場として、政府による研究開発への支出のために利用料を徴収されることについては、どのようなご意見をお持ちでしょうか。政府に委ねるより、市場に任せるべきとも考えられますが。
（構成員）歳入面では電波有効利用のインセンティブ、免許人間の負担の公平性、歳出面では電波有効利用の活用方策、効率的運用という議論の出発点については、皆さんの認識は一致しているところかと思いますが、歳出の総額については、現在の600億円弱という大枠の中で、効率的な運用を行っていくことで、ある程度を研究開発にも割り当てていくのが適当と考えます。研究開発の額が際限なく増えていき、諸外国で約１千億円を徴収しているから日本でも１千億円を徴収しましょうということになることを懸念しています。
（構成員）確かに政府による研究開発に非効率性があるとしても、では市場が万能かとも言い切れません。国家の神経回路網たる通信については、有事への対応等も必要となり、常に市場が機能する場合だけとは考えられません。政府の非効率性は、監視・監査と情報公開で改善し得るものと考えます。市場に委ねられる部分と委ねきれない部分のバランスを取ることが肝要です。
（構成員）中長期的な研究開発については、リスクが大きく市場原理だけでは研究開発が進まないため、国による支出が必要です。米国でも、当初国防用として支出された研究開発の成果が、民生用に転換されたような例が多数あります。
（構成員）８ページのモデルは、フランス、韓国のモデルに近い形で整理したと考えてよろしいのでしょうか。仮にそうだとしたら、フランスの場合は電波利用料と免許料、韓国の場合は電波利用料と出捐金というように、毎年徴収する部分と免許付与時のみに徴収する部分とがありますが、８ページのモデルでもそのような形になるのでしょうか。
（総務省）基本的な発想として、電波監視等恒常的な業務については全ての無線局から毎年費用を徴収し、その上で、逼迫帯域については電波の有効利用を促進する観点から、使用料を徴収するという点は、フランス、韓国と同様です。但し、韓国では使用料としての収入は情報通信分野に還元されるのに対し、フランスでは一般財源に繰り入れられます。この点については、韓国型に近いと言えます。免許料等を免許付与時に一括して徴収するのか、それとも免許期間中にならして徴収するのかという徴収の方法については、方法の問題ですので色々なバリエーションがあり得るかと思います。例えば、韓国の第３世代免許の場合でも、出捐金の半額については、免許付与時に一括納付してもらうが、残りの半額については以後１０年間で分割納付するという方法が取られておりますし、フランスはもともと免許時に一括徴収という方向でございましたけれども、免許時には750億円を徴収して、それ以降、毎年売上の１％を徴収するという形になっております。
（構成員）共益費用と使用料の全体の額についてはいかがでしょうか。
（総務省）それは今後の検討課題でございますが、周波数逼迫対策として実際に大きな割合を占めているのはアナアナ変換対策事務に係る部分です。現行のアナアナ変換対策事務の負担のあり方については、放送局による追加的な電波利用料の負担も含め、二度国会で議論されておりますので、その点は尊重しなければならないと認識しています。
（構成員）論点整理に対するパブリックコメント募集の際に、現状の総額580億円を超えないことを前提として検討すべきとの意見を出させていただきましたが、他の事業者からも同様の意見があったかと思います。今後、研究開発についての予算を検討するにあたりまして、この点はどのようにお考えでしょうか。
（総務省）効率的な運用を行うことによって節約しつつ、電波有効利用のための方策に戦略的に取り組んでいく他ないと思います。現状では、電波利用料から支出される技術試験事務は約84.5億円、研究開発予算全体としては約140億円、独立行政法人を合わせれば約500億円の規模となっておりますが、戦略的な観点から取り組むべき分野である未利用周波数利用技術の中・長期的な研究開発予算については１億円に満たない額であるというのも事実であります。既存の免許人の立場からしますと、少しでも徴収総額が大きくなることには反対であるのも当然のことかと思いますが、電波利用全体が発展することによって電波利用者全体が得られる長期的な利益に照らして、免許人間のご理解が得られるような形で予算を組んで行くべきであると考えています。
（構成員）モデルＢ−１は共益費用の部分については量的要素を勘案せず、使用料部分については経済的価値を反映させようというモデルであろうかと思いますが、これまで、現行制度と同様に、共益費用について量的要素を考慮しないモデルというのはあまり議論されてこなかったと思います。これまで各免許人が共益費用として、局数で頭割りして負担してきた部分というのは安くなるのでしょうか、それとも、これまでの共益費用に加えて、研究開発等に充てる費用を新たに使用料という形で徴収していくことになるのでしょうか。
（総務省）量的要素を勘案するのが難しいのではないかというご意見はごもっともであろうかと思いますが、実際に諸外国でも試行錯誤しながら電波の経済的価値を反映させた料額の体系を構築してきておりますので、透明で、客観性のあるプロセスを経て組み立てて行くべきものと考えております。確かに、全ての無線局に共通した量的要素を勘案した算定式というのは非常に難しい面もありますが、既にアナアナ変換費用の一部を追加的電波利用料として放送局に負担をお願いしているように、用途や周波数帯等を限定すれば、量的要素を勘案した算定式というのも作りやすくなるのではないか思います。
　総額がどうなるのかという議論については、現行のアナアナ変換対策を共益費用として整理するか、周波数逼迫対策のために使用料として徴収する部分に整理するかによって大きく変わるかと思いますが、いずれにしましても、今後のご議論次第であると認識しています。
（構成員）個人的な意見としては、モデルＢ−１に親近感を持っております。共益費用については局数割り、使用料については電波の量的要素を勘案してということですが、スペース資源という考え方に照らして考えますと、共益費用はスペース資源の場所代、使用料の方は場所代に加えて徴収する混雑解消のため費用と考えられるのでしょうか。
（構成員）スペース資源をマンションにたとえて申しますと、マンションの管理費は共益費用に、マンションの部屋代すなわちスペース資源を占拠することの代金は使用料に対応すると考えています。
（構成員）量的要素は、共益費用、使用料の両方で勘案すべきなのでしょうか。
（総務省）少なくとも使用料という概念については、価格が設定できるためには希少性があることが前提となります。量的要素は価格が設定される際の重要な要素になります。一方、共益費用の負担を、マンションの管理費用にたとえて言えば、量的要素を勘案せず単純に戸数で均等割りとするか、各戸のフロア面積に占める割合で按分するのか、両方のやり方が考えられるかと思います。量的要素の勘案は、使用料においては必須ですが、共益費用について勘案する、しないは選択の対象となります。
（構成員）モデルＢ−１につきまして、混雑を調整するための費用を徴収するとのことですが、先ず、この混雑というのはどのように判定するのでしょうか。それから使用料を設定する際にはどのように絶対額を算定するのでしょうか。また、公共部門の電波利用に係る費用の算定はどのように扱うのでしょうか。
（総務省）公共部門の電波利用の扱いについては資料３でご説明させて頂きたいと思います。逼迫度の判定方法については、トラヒックというより、新たに他の無線局が参入できるかどうかという点が重要になるかと思います。混雑により新たな無線局の開設が困難であるような、希少性のある地域、帯域の経済的価値は高いと考えられます。では、使用料の絶対額が算定できるのかということになりますとなかなか難しいのですが、フランス、韓国の例を見ましても、経済的価値の絶対額を徴収するというよりも、何らかの財政上の徴収必要額があり、それを電波の量的要素、経済的価値を反映した係数で按分しているのが実際のようです。韓国の約１千〜1千300億円という出捐金の額も、他国の免許料額を参考にして、自国の経済規模等を加味した上で設定したもののようです。

	（５）電波利用料の特例措置等について
	事務局より、資料３について説明が行われた後、以下のような質疑応答が行われた。

（構成員）昨年４月に部会でプレゼンテーションいたしましたとおり、消防無線は、あくまで災害現場等において使用する、緊急性の高いものですので、引き続き電波利用料の免除をお願いしたいと思います。
（構成員）国・地方公共団体から電波利用料を徴収することによって、国・地方公共団体にも電波有効利用のインセンティブが働くのではないかとのご議論もありますが、例えば、消防・救急無線に電波利用料を課すことで本当にインセンティブに寄与することになるのかどうか疑問です。以前の部会の議論で、民間部門についても相当高い額に料額を設定しなければ、実際には有効利用インセンティブは働かないのではないかというご意見もありましたが、特に消防・救急無線については、消防車と救急車の間で無線以外に通信を代替する手段は無いわけですので、電波利用料がいくらになろうとそれを負担せざるを得ません。仮に徴収したとしても、国・地方間での資金循環となり、徴収の実益に乏しいと考えます。
（構成員）国庫循環となっても、有効利用インセンティブが働く場合もあると考えます。例えば、使用料を徴収しても、その徴収額に等しい金額が使途を限定されない形で、かつ電波の利用状態にかかわらず当該自治体等に還付されるような場合、自治体には新しい技術を導入してでも周波数帯を圧縮しようというインセンティブが働き得ます。これは英国で一部採用されている方式です。現在のように電波が無料で利用できる場合には、利用周波数帯を圧縮するような新しい技術を導入しようというインセンティブは働かないのではないでしょうか。
（構成員）一般論として、徴収する金額によっては有効利用インセンティブが働くということもあるかと思いますが、では、現状において電波利用料が無料であるから周波数利用効率化のインセンテンティブが働かないかというと、実際には、平成２８年度までに消防・救急無線のデジタル化を進めております。こうした、有効利用への取組みも個々の自治体の消防がそれぞれに利用形態を選択するという形ではなく、広域的な応援活動に際しての互換性が不可欠なことから、国として統一的に進めていく必要があります。必ずしも経済的なインセンティブを課さなければ、効率化が進まないということにはないことをご理解いただきたいと思います。
（構成員）資料で免許不要局の発展について触れられていますが、このように免許不要局が発展してきているからこそ、免許不要局が自由に利用できる環境を確保すべきであると思います。徴収コストの観点、諸外国で非徴収となっていることとの整合性からも、免許不要局については、従来どおり非徴収とすべきと考えます。
（構成員）免許不要局にからの電波利用料の徴収・捕捉コストと徴収実額を比べてみても、小電力の基準をしっかり定めた上で、楽市楽座のように自由に利用できる環境を整えることで、サービスを活性化させたほうが、国全体としても効用が大きいのではないかと考えます。
（構成員）いろいろとご議論ありがとうございました。時間になりましたので、本日の議論はここまでとしたいと思います。