「新たな料金制度の運用等の在り方に関する研究会」報告書





  (目次)
        はじめに

        第1章 上限価格方式の概要

        第2章 基準料金指数の算定方法

            第1節 消費者物価指数変動率
            第2節 生産性向上見込率(X値)の算定
            第3節 外生的要因

        第3章 料金指数の算出方法

            第1節 料金指数の算出について
            第2節 料金指数算出に当たり留意すべき点について

        第4章 上限価格方式の適用開始時期等について

        おわりに

  《参考資料》
  • 新たな料金制度の運用等の在り方に関する研究会・構成員
  • 上限価格方式検討ワーキンググループ・構成員
  • 新たな料金制度の運用等の在り方に関する研究会・開催経緯
  • 上限価格方式検討ワーキンググループ・開催経緯
  • パブリックコメントの概要と研究会の考え方
    はじめに
    
     わが国の電気通信分野においては、競争の一層の促進による料金の低廉化、国際
    競争力の向上、情報通信産業の活性化等を図る観点から、NTT再編、接続政策の
    推進、規制緩和の3つの政策を一体として進める第二次情報通信改革が実施されて
    きたところであり、外資による第一種電気通信事業への新規参入、市内電話分野に
    おける実質的な競争の導入による料金低下・選択的割引料金の導入、携帯・国際電
    話料金の大幅な値下げなど、その具体的な成果が現れつつある。
    
     第二次情報通信改革においては、電気通信料金制度についても、市場における競
    争の実状に適合させる観点から、昨年4月、第142回通常国会において、第一種
    電気通信事業に係る料金制度を原則届出制とするとともに、国民生活・経済に必要
    不可欠であって競争の不十分なサービスには上限価格方式(プライスキャップ制)
    を導入することを内容とする電気通信事業法改正法が成立した。
    
     これを受けて、本研究会においては、法施行後の適切かつ円滑な運用を確保する
    ため、料金届出制や意見申出制度の手続き、料金変更命令の在り方、上限価格方式
    の運用等についての検討を行い、昨年9月に報告書「電気通信分野における新たな
    料金制度の運用の在り方」を取りまとめた。その報告書に基づき、郵政省が関連省
    令を定め、また、本年1月には電気通信事業法改正後初めての料金変更命令を発出
    したところである。
    
     その報告書において、上限価格方式については、本年度にNTTの再編成が予定
    されていることから、再編成後のNTT地域会社の将来の事業収支見通しや再編成
    後もっとも早い時期に出される会計データ等をもとに生産性向上見込率(X値)等
    を算定し、適用することとしたが、その具体的方法については更に検討していくこ
    ととなっていた。
    
     そこで、本研究会では、上限価格方式の具体的な適用に向けて、専門家による「
    上限価格方式検討ワーキンググループ」を開催し、X値の算定方法や料金指数の算
    出方法、上限価格方式適用開始時期の問題点等について引き続き検討を行い、5月
    31日、「報告書案」の公表と利用者や電気通信事業者の意見(パブリック・コメ
    ント)の招請を行った。
    
     この意見招請により、「報告書案」に記載した内容についていくつか貴重な意見
    が寄せられた(意見及び意見に対する研究会の考え方については、本報告書の巻末
    に付記してある)。
    
     今後、郵政省においては、本報告を踏まえて、上限価格方式の運用を着実に行う
    ことにより、一層の料金の低廉化の実現を図っていくことを期待するものである。
    
    
    第1章 上限価格方式の概要 1 上限価格方式の趣旨   上限価格方式は、競争が十分進展していないサービスについて、市場メカニズ  ムを補完するとともに、事業者の自主的な経営効率化のインセンティブを賦与す  ることにより料金の低廉化を促すためのものである。 2 法制度の概要 特定電気通信役務(競争が十分進展していないサービスであって、利用者の   利益に及ぼす影響が大きい役務)を設定 特定電気通信役務について、一定の対象区分ごとに、行政が適正な原価や物   価その他の経済的事情を考慮して、通常実現可能と認められる水準の料金を基   準料金指数として設定 基準料金指数以下の料金であれば実施前に届け出ることによる料金設定が可能   また、基準料金指数を超える料金については、基準料金指数により難い特別   の事情がある場合に限り、認可を受けて料金設定が可能 3 電気通信事業法施行規則の概要  (1) 基本的考え方    電気通信事業法施行規則1について、前回の報告2を踏まえて、以下の点に特   に留意しつつ改正が行われた。   事業者の機動的かつ柔軟な料金設定による積極的な事業展開の支援   料金の低廉化・多様化を通じた利用者利益の確保   電気通信分野においては技術革新や競争の進展が著しく、競争の進展に伴    う届出制への移行も含め、柔軟に見直しを行うことが必要
     1 昭和60年郵政省令第25号。以下「施行規則」という。  2 電気通信分野における新たな料金制度の運用の在り方(平成10年9月8日、  本研究会報告書)。以下「前回報告書」という。  (2) 特定電気通信役務の範囲(施行規則第19条の3)    上限価格方式の対象である特定電気通信役務の範囲は次のとおりとする。
       指定電気通信設備を設置する第一種電気通信事業者が、指定電気通信設
      備を用いて提供する都道府県内の通信サービスのうち、                
       電話役務                                                      
       ISDN役務                                                  
       専用役務                                                      
    
     注1)指定電気通信設備には、現在、NTTの加入者回線等の都道府県内     通信用電気通信設備が指定されている。   2)電話役務には、付加機能のうちプッシュホン接続機能を含む。   3)電話役務、ISDN役務には、番号案内サービスを含む。   4)専用役務は、利用者に及ぼす影響が比較的少ないサービス(映像伝     送、放送専用等)は除く。  (3) 特定電気通信役務の種別(施行規則第19条の4)    基準料金指数の設定対象区分である特定電気通信役務の種別(バスケット及   びサブバスケット)は次のとおりとする。  (4) 基準料金指数の算定方法(施行規則第19条の5)    基準料金指数の算定方法は次のとおりとする。
       基準料金指数の算定                                              
       基準料金指数=前期の基準料金指数×(1+前年度消費者物価指数変動率 
               − 生産性向上見込率(X)±外生的要因)           
        基準料金指数は、上限価格方式開始の半年前の料金水準を100として
          表す                                                            
                                                                          
       生産性向上見込率(X)の算定                                    
      ア 設定期間における需要予測(市場全体の需要及び対象事業者のシェアの
      予測)を踏まえた、現在の生産性に基づく将来原価と、今後の生産性向    
      上分を見込んだ将来原価から算定。                                    
      イ 3年ごとに見直す。                                              
                                                                          
       外生的要因は、X値の算定の際には考慮されない要因のうち消費者物価
      指数の変動には反映されないものとする。                              
    
     (5) 基準料金指数の適用期間(施行規則第19条の5)
       基準料金指数の適用期間は、毎年10月1日から1年間とする。
    
     (6) 料金指数の算出方法(施行規則第19条の6)
       料金指数の算出方法は次のとおりとする。
    
       料金指数は、特定電気通信役務の種別ごとに、次に掲げる式により算出す
      るものとする。
         
      (Ptは料金額、P0は基準時における料金額、Sは前年度の供給実績)   
      上限価格方式開始の半年前を基準時とする。                           
    
     (7) 基準料金指数の通知期間(施行規則第19条の7)
         基準料金指数の通知期間は、90日とする。
    
     (8) 通信量等の記録方法(施行規則第20条の2)
       料金指数算出のために必要な通信量等の記録方法は次のとおりとする。
    
       通信量等の記録は、通信の距離及び速度その他の区分ごとに、料金の課金
      単位により電気通信役務の通信量、回線数その他の供給量を記録する方法に
      より行うものとする。                                                
    
    4  検討課題
     (1) 基準料金指数の算定方法
       消費者物価指数
        基準料金指数の算定式における消費者物価指数変動率について、前年度(
       基準年度)の実績を用いることとしているが、適用期間における変動率の政
       府見通しを用いるべきとの意見があり、第2章第1節において検討した。
       生産性向上見込率(X値)の算定方法
        基準料金指数の算定式における生産性向上見込率(X値)については、そ
       の設定期間における需要を予測し、現在の生産性に基づく将来原価(例えば、
       現行料金水準が現在の生産性の下での費用水準と一致していると仮定した場
       合、現行料金水準での収入予測が予測原価となる。)と将来的な生産性向上
       分を織り込んだ将来原価との関係において算定することとしている。その算
       定にあたり、問題となる以下の点につき第2章第2節において検討した。
       ア X値算定の基本的方針
        (ア)X値の算定期間
        (イ)X値算定のベース
       イ X値算定のために必要な個別要素
        (ア)需要・収入の予測
        (イ)CPIの予測
        (ウ)費用の予測
        (エ)適正報酬率・利益対応税額の算定
       ウ X値算定に向けてのその他の課題
       外生的要因について
        基準料金指数算定の際に、生産性向上見込率(X値)、消費者物価指数変
       動率以外に考慮すべき要因(外生的要因)については、第2章第3節におい
       て検討した。
    
     (2) 料金指数の算出方法
       具体的算出方法
        料金指数の具体的算出方法について、第3章第1節において検討した。
       料金指数の計算方法に関する問題点
        料金指数の計算方法に関する以下の問題点について、第3章第2節におい
       て検討した。
       ア 割引料金
       イ 新サービス
       ウ 料金の体系的な変更
       エ サービスの廃止
       オ 導入初年度、2年目における料金指数算出に使用する供給量
       カ 消費税
     (3) 上限価格方式適用開始時の問題点
       基準料金指数の適用期間は、施行規則上10月1日から1年間とされている
      が、適用開始時について、年度途中を予定しており、その際の取扱いについて、
      第4章において検討した。
    
    (参考1.1)
        電気通信事業法及び同法施行規則(上限価格方式関連部分抜粋)
    
    ○ 電気通信事業法(昭和59年法律第86号)                            
    第31条                                                                
    3 郵政大臣は、毎年少なくとも一回、郵政省令で定めるところにより、第38
     条の2第2項に規定する指定電気通信設備を設置する第一種電気通信事業者が
     当該指定電気通信設備を用いて提供する電気通信役務であつて、その内容、利
     用者の範囲等からみて利用者の利益に及ぼす影響が大きいものとして郵政省令
     で定めるもの(以下「特定電気通信役務」という。)に関する料金について、
     郵政省令で定める特定電気通信役務の種別(第9条第2項第2号に規定する郵
     政省令で定める区分を更に細分した区分による電気通信役務の種類及び態様の
     別をいう。以下この項において同じ。)ごとに、能率的な経営の下における適
     正な原価及び物価その他の経済事情を考慮して、通常実現することができると
     認められる水準の料金を料金指数(電気通信役務の種別ごとに、料金の水準を
     表す数値として、通信の距離及び速度その他の区分ごとの料金額並びにそれら
     が適用される通信量、回線数等を基に郵政省令で定める方法により算出される
     数値をいう。以下同じ。)により定め、その料金指数(以下「基準料金指数」
     という。)を、その適用の日の郵政省令で定める日数前までに、当該第一種電
      気通信事業者に通知しなければならない。                              
                                                                           
    ※ 指定電気通信設備(電気通信事業法第38条の2第1項)                
      全国の区分を分けて電気通信役務の利用状況及び都道府県の区域を勘案して
     郵政省令で定める区域ごとに、その一端が利用者の電気通信設備と接続される
     伝送路設備のうち同一の第一種電気通信事業者が設置するものであって、その
     伝送路設備の電気通信回線の数の、当該区域内に設置されるすべての同種の伝
     送路設備の電気通信回線の数のうちに占める割合が郵政省令で定める割合を超
     えるもの及び当該区域において当該第一種電気通信事業者がこれと一体として
     設置する電気通信役務であつて郵政省令で定めるものの総体(都道府県におい
     て5割を超えるシェアを有する加入者回線及びそれと一体となって設置される
     概ね県域をカバーする電気通信設備であり、加入者回線、加入者交換機、県内
     伝送路設備のほか、番号案内台などが含まれる。)                            
                                                                            
    4 第38条の2第2項に規定する指定電気通信設備を設置する第一種電気通信
     事業者は、特定電気通信役務に関する料金を変更しようとする場合において、
     当該変更後の料金の料金指数が当該電気通信役務に係る基準料金指数を超える
     ものであるときは、第1項の規定にかかわらず、郵政大臣の認可を受けなけれ
     ばならない。                                              
     (通信量等の記録)                                                    
    第31条の2                                                            
      第38条の2第2項に規定する指定電気通信設備を設置する第一種電気通信
     事業者は、郵政省令で定める方法により、その提供する特定電気通信役務の通
     信量、回線数を記録しておかなければならない。                          
                                                                            
    ○ 電気通信事業法施行規則(昭和60年郵政省令第25号)                
     (特定電気通信役務の範囲)                                            
    第19条の3 法第31条第3項の郵政省令で定める電気通信役務は、次の各号
     に掲げるもの(利用者の利益に及ぼす影響が少ない付加的な機能の提供に係る
     電気通信役務、特定の 業務の用に供する通信に用途が限定されている電気通 
     信役務、他の電気通信役務に代替され利用者の利益に及ぼす影響が低下した電
     気通信役務及び端末設備の提供に係る電気通信 役務を除く。)とする。     
     一 指定電気通信設備のみを用いて提供される音声伝送役務(電話及び総合デ
      ジタル通信サービスに限る。)                                        
     二 指定電気通信設備のみを用いて提供される専用役務                    
                                                                            
     (特定電気通信役務の種別)                                            
    第19条の4 法第31条第3項の郵政省令で定める電気通信役務の種別は、次
     のとおりとする。                                                      
     一 音声伝送役務                                                      
     二 音声伝送役務であつて第23条の2第4項第1号イに規定する指定端末系
      伝送路設備のみを用いて提供されるもの                                
     三 専用役務                                                          
                                                                            
     (基準料金指数の算定方法等)                                          
    第19条の5 法第31条第3項の基準料金指数は、適用期間ごとに、次の式に
     より算定するものとする。                                              
     基準料金指数=前適用期間の基準料金指数×(1+消費者物価指数変動率    
            −生産性向上見込率+外生的要因)                        
    2 基準料金指数の適用期間は、10月1日から1年とする。                
    3 第1項の消費者物価指数変動率は、基準料金指数の適用期間の始まる日の直
     近に終わる基準年度(毎年4月1日から翌年3月31日までの期間をいう。以
     下この条及び次条において同じ。)における消費者物価指数(総務庁が小売物
     価統計(指定統計第35号)のための調査の結果に基づき作成する消費者物価
     指数のうち全国総合指数をいう。)の変動率とする。                      
    4 第一項の生産性向上見込率は、3年ごとに、現在の生産性に基づく将来原価
     及び今後の生産性向上を見込んだ将来原価から、算定するものとする。      
    5 第1項の外生的要因は、生産性向上見込率算定の際には考慮されない要因の
     うち消費者物価指数変動率に反映されないものとし、基準料金指数の適用期間
     ごとに、算定するものとする。                                          
    6 法第38条の2第1項の規定により新たに指定された電気通信設備を用いて
     提供される特定電気通信役務に適用される最初の基準料金指数の算定の際には
     、第1項の前適用期間の基準料金指数は100とする。                    
                                                                            
     (料金指数の算出方法)                                              
    第19条の6 法第31条第3項の料金指数は、特定電気通信役務の種別ごとに
     、次の式により算出するものとする。                                    
       
                                               
                                                                            
     Ptiは、通信の距離及び速度その他の料金区分ごとの料金額        
     Poiは、法第38条の2第1項の規定により新たに指定された電気通信設備を
     用いて提供される特定電気通信役務に適用される最初の基準料金指数の適用の
     日の6月前における料金額でPtiに対応するもの             
     Siは、Ptiが適用される電気通信役務の基準年度における供給量      
    2 前項に定めるもののほか、郵政大臣は、料金指数の連続性を保つために必要
     な料金指数の修正の方法を別に定めるものとする。                        
                                                                            
     (基準料金指数の通知期間)                                            
    第19条の7 法第31条第3項の郵政省令で定める日数は、90日とする。  
                                                                            
     (基準料金指数を超える料金指数の料金の認可の申請)                    
    第19条の8 法第31条第4項の認可を受けようとする者は、様式第16の2
     の申請書に、料金の新旧対照及び次の事項を記載して提出しなければならない。
     一 実施期日                                                          
     二 料金の適用区域若しくは適用区間又は適用期間(限定する場合に限る。)
     三 料金の変更後の料金指数及びその算出の根拠に関する説明              
     四 基準料金指数以下の料金指数の料金により難い特別な事情に関する説明  
     五 料金の算出の根拠に関する説明                                      
     六 料金の実施の日以降3年内の日を含む毎事業年度における申請に係る電気
      通信役務の収支見積り                                                
     (通信量等の記録方法)                                                
    第20条の2 法第31条の2の方法は、通信の距離及び速度その他の料金区分
     ごとに、料金の課金単位により電気通信役務の通信量、回線数その他の供給量
     を記録する方法により行うものとする。                                  
                                                                            
    

    第2章 基準料金指数の算定方法
    
    第1節 消費者物価指数変動率
    
     1 現在の施行規則の規定
    
      基準料金指数の算定に使用する消費者物価指数変動率については、現在の施行
     規則において前年度の実績値を使用することとしている。
    
     ※ 電気通信事業法施行規則第19条の5
       法第31条第3項の基準料金指数は、適用期間ごとに、次の式により算定
       するものとする。
       基準料金指数=前適用期間の基準料金指数×(1+消費者物価指数変動率−
               生産性向上見込率+外生的要因)
       第1項の消費者物価指数変動率は、基準料金指数の適用期間の始まる日の
       直近に終わる基準年度(毎年4月1日から翌年3月31日までの期間をいう。
       以下この条及び次条において同じ。)における消費者物価指数(総務庁が小
       売物価統計(指定統計第35号)のための調査の結果に基づき作成する消費
       者物価指数のうち全国総合指数をいう。)の変動率とする。
    
     2 消費者物価指数変動率に政府見通しを用いるべきとの意見
    
      他方、適用期間における変動率の政府見通し3を用いるべきとの意見があり、
     その主な理由は以下のとおりである。
     1) 基準料金指数はそもそもコスト動向等を踏まえて当年に許容されるべき価格
      の上限を画するものである点に鑑みれば、前年度の実績ではなく当年の政府見
      通しを用いるという考え方もある。
     2) 前年度の消費者物価指数を用いる場合には、例えば平成9年度のように消費
      税の税率が引き上げられると、翌年度の指標にそうした特殊要因が反映されて
      しまうという問題がある。
    
    
    3 消費者物価指数の政府見通しは、翌年度のものが、政府経済見通しの中で、毎年  1月20日前後に発表されている(経済企画庁作成)  3 検討   確かに、基準料金指数が、適用年度に許容されるべき価格の上限を画するもの  であることを踏まえれば、政府見通しを用いるとの考え方もありうる。   しかし、以下の理由により、前年度の実績値を用いることが適当と考えられる。   規制の透明性の確保    政府見通しは、年度途中で修正される場合がある他、政府の目標という意味   も含まれているが、前年度の実績値は、客観的に確定した数値であり、安定性、   予見可能性の点で優れている。また、政府見通しはその算定方法が公表されて   いないが、前年度の実績値は、明確な算定方法が公表されており、その点でも   透明性が高い。    したがって、規制の指標として用いる場合には、事業者及び利用者から見た   規制の透明性を確保する観点から、実績値を用いることが適当である。   補正の必要性    政府見通しは予測値であるため実績との乖離が生じることは避けられないが、   仮に政府見通しが実績値より高い場合には、事業者に実績よりも小さな値下げ   (大きな値上げ)の余地を与えることとなり、その数値に基づいて料金を設定   した場合には、経営努力に基づかない利益の増加をもたらすこととなるので、   放置することは不適当である。    したがって、政府見通しを用いるとした場合、その乖離分は翌年に補正を行   う必要があると考えられるがその場合には、長期的に見れば常に過去の実績値   を適用するのと変わらないこととなる。    他方で、実績値を用いる場合には、このような補正は必要なく簡便であり、   かつ、上のように見通しを用いて補正するという方法と長期的には同水準とな   ることを考えれば、実績値を用いることが適当である。    消費税率の考慮については、第2章第3節及び第3章第2節6において検討   しているように、外生的要因による基準料金指数の補正によっても可能であり、   むしろその方が正確に反映させることが可能となり望ましいと考えられる。   米英の状況    米英でもプライスキャップの指標として過去の物価指数変動率の実績値を用   いており、過去の実績値を使用することは、グローバルスタンダードに合致し   たものであると考えられる(参考2.1参照)。 (参考2.1)                 米英の状況   米国(FCCのAT&Tに対するプライスキャップ)    プライスキャップ適用期間(7月1日から6月30日まで)の直近の1年間   (1月1日から12月31日まで)のGNP・PI(国民総生産物価指数)変   化率の実績を用いている。   英国(OFTELのBTに対するプライスキャップ)    プライスキャップ適用期間(8月1日から7月31日まで)の直近の1年間   (7月1日から6月30日で)のRPI(小売物価指数)変化率の実績を用い   ている。   両国とも、公開されている資料を見る限りでは、過去の実績を用いるべきか、   政府見通し等の予測を用いるべきかどうかについては検討していないようであ   る。 第2節 生産性向上見込率(X値)の算定 I X値算定の基本方針についての検討  1 X値算定の基本的考え方    「新たな料金制度の在り方について」4においては、現時点において、我が   国の電気通信料金にはミックス生産性準拠方式(事業者の費用情報等に基づき   X値を算定するプライスキャップ方式。参考2.2参照)を適用することが適当   とされ、また、前回報告書においても、X値の算定については、その設定期間   における需要を予測し、現在の生産性に基づく将来原価と将来的な生産性向上   分を織り込んだ将来原価との関係において、X値を算定することが適当とされ   た。(参考2.3参照)    ただし、ミックス生産性準拠方式は、フル生産性準拠方式と比較すると、イ   ンセンティブ賦与効果が小さくなり、X値算定における透明性が低下するとの   指摘がされている。    したがって、需要・収入、費用、レートベースの算定に当たっては、特定電   気通信役務に関する合理的な推計に基づく必要があり、その推計には、適切に   NTTの生産性向上を見込む必要がある。また、透明性確保のためには、それ   らの算定のための根拠データ等を、積極的に公開していく必要があると考えら   れる。
    4 「マルチメディア時代に向けた料金・サービス政策に関する研究会」報告書(平 成9年12月24日) (参考2.2)     ミックス生産性準拠方式におけるX値算定式の基本的イメージ
                                                                            
         
                                                                           
      凡例                                                                  
      Ft:t年の需要量(Xの関数となる。)                                 
      Mt:現行料金の場合の1需要当たりの収入額                             
      CPIt:t年の前年度における消費者物価指数変動率                     
      Ct:t年の費用(人件費、物件費、減価償却費等)                       
      Nt:t年の報酬(自己資本コスト+他人資本コスト)+利益対応税         
                                                                            
      s:算定期間の初年度                                                  
      e:算定期間の最終年度                                                
                                                                            
    
    (参考2.3)
           フル生産性準拠方式とミックス生産性準拠方式の比較
    
     上限価格方式の目的が、個別の事業者の経営の効率性に依存せずに、できるだけ
    客観的なデータに基づき適正な料金の上限を決定することにより、事業者に経営効
    率化のインセンティブを賦与しようとするものであることを踏まえれば、本来的に
    はフル生産性準拠方式(全要素生産性向上率に基づきX値を算定するプライスキャ
    ップ方式)のような事業者の費用情報から独立したデータに基づきX値を設定する
    方式が望ましいとも考えられる。
     しかしながら、フル生産性準拠方式については、全要素生産性の算出方法が統計
    的に確立されておらず、仮定の設定方法等により算出される数値が大きく変化する
    等、料金規制に用いるためには現時点においては信頼性に欠けるところがあると考
    えられる。5
    
    5 英国においても、BTに対するプライスキャップにおいて、プライスキャップ方 式導入時には生産性向上率のみをを用いてX値の算定を行ったが、その結果BTに 過大な超過利潤が発生したためBTの費用情報を用いる方法に移行した。  2 X値の算定期間   (1) X値の算定期間とX値の適用期間の関係     X値の適用期間については、施行規則において3年間とされているが、算    定期間は、より長期間のNTTの経営効率化を見込むために、X値の適用期    間である3年間よりも長くすべきとの考え方もありうる。     しかしながら、電気通信分野においては、技術革新等により費用構造の変    化が著しいことから長期間の予測は困難であること、現在の認可制における    料金改定においては、料金算定期間が3年間とされていることを考慮すれば、    X値の算定期間は適用期間と同じ3年間とすることが適当であると考えられ    る。   (2) X値は算定期間の最終年度のコストをベースに算定すべきか、あるいは、    算定期間全体のコストをベースに算定すべきか。     X値の算定方式における算定期間の取扱方法としては、     X値を算定期間の最終年度で収支相償するレベルに設定する方式[最終     年度案]     算定期間全体で収支相償するレベルに設定する方式[算定期間全体案]    の2つの方式が考えられる(参考2.4参照)。     算定期間全体案をとった場合には、事業者がX値と同じ水準の生産性向上    を達成した場合に、算定期間全体で適正報酬率となるのに対し、最終年度案    をとった場合には、事業者がX値と同じ水準の生産性向上を達成した場合に、    最終年度には適正報酬率になることが確保される。     従来の公正報酬率規制(総括原価方式)であれば、算定期間全体で報酬率    が適正であることを確保すべきとの考え方から算定期間全体案をとるべきこ    ととなると考えられる。     しかしながら、公正報酬率規制においては、報酬率を適正とすること自体    が規制の目的であるのに対し、上限価格方式は、事業者の達成すべき生産性    向上率をあらかじめ設定し、事業者がそれ以上の生産性向上を達成した場合    には、それを報酬として与えることにより、事業者に生産性向上のインセン    ティブを賦与することを目的としている。     上限価格方式である以上、ミックス生産性準拠方式も、報酬率の規制自体    を目的とするものではなく、達成すべき生産性向上を算定する際に、事業者    のコストの一種である報酬を算定するために適正報酬率を用いるのにすぎな    い。     むしろ、上限価格方式において、事業者の達成すべき生産性向上とはX値    算定期間の最終年度で望ましい費用水準が達成されることであり、料金水準    がそれと一致することが目的であると考えれば、最終年度案の方が、上限価    格方式の趣旨により合致したものであると考えられる。   ※ OFTELの場合には、BTのプライスキャップにおいて、利用者料金、    接続料金ともに最終年度で効率化目標が達成される水準にX値を設定してい    る。 (参考2.4) 最終年度案と算定期間全体案のイメージの比較 [最終年度案]  (X値算定式のイメージ)
    3×M3×(1+CPI3−X)3=C3+N3      
    
     (費用水準・料金水準推移のイメージ)
    
        
    
    [算定期間全体案]
    
     (X値算定式のイメージ)
    
    
    
     (費用水準・料金水準推移のイメージ)
    
       
    
    (参考2.5)
                                      
                      最終年度案と算定期間全体案の比較
    
         
         最終年度案  
        算定期間全体案 
    メリット
         
         
    X値として設定された経営効率
    
    化を達成した場合に、最終年度
    
    の報酬が適正となる料金水準と
    
    なる。
    X値として設定された経営効率
    
    化を達成した場合に、算定期間
    
    全体の報酬が適正となる水準と
    
    なる。
    デメリット
    



    算定期間全体の報酬が過大又は
    
    過小となるおそれがある。
    


    X値として設定された経営効率
    
    化を達成した場合でも、最終年
    
    度の報酬が過大又は過小となる
    
    おそれがある。
     3 X値算定のベースとなるコストは、どの範囲とすべきか。
      X値算定のベースとしては、
       特定電気通信役務提供のためのコストをベースとする案[特定電気通信役
       務案]
       指定電気通信設備利用部門のコストをベースとする案[指定設備利用部門
       案]
       NTT地域会社の全体のコストをベースと算定する案[全社案]
       の3通りが考えられる。(参考2.6参照)
       従来の認可制のもとでは、NTTの利用者料金の算定は、基本的にNTT全
      社における電気通信事業に関するコストを総括原価として行ってきており、こ
      の3案の中では全社案に近い考え方をとってきたといえるが、それは、NTT
      の収入のほとんどが認可対象の利用者料金であった時において、NTT全社の
      報酬率を適正な範囲内にコントロールすべきであるとの考え方に基づいていた
      ものである。
       しかし、新しい料金制度は、料金届出制のもとで自由な料金設定を可能とし
      競争を進展させることにより、一層の料金低廉化・多様化を促すのと同時に、
      競争分野と非競争分野を区別して、非競争分野については、不当な内部相互補
      助の防止により公正競争及び利用者間の公平性を確保するとともに、競争分野
      であれば存在したであろう競争による効率化圧力に代わる生産性向上のインセ
      ンティブを与えるために、上限価格方式を導入したものである。
       したがって、接続料と特定電気通信役務に係る利用者料金を一体として計算
      することにより、両者間に不当な内部相互補助をもたらすおそれや、指定設備
      管理部門の効率化が接続料にのみ反映され、利用者料金に反映されないことと
      なるおそれがある全社案は適当とはいえない。
    
       一方で、X値算定と接続料算定の整合性をとる観点からは、指定設備利用部
      門案のように指定設備利用部門のコストのみをベースにX値を算定することが
      適当であるとも考えられる。
       しかしながら、上限価格方式の趣旨は、利用者へ電気通信役務を提供するの
      に必要な、指定設備管理部門を含む独占的なNTT地域通信網全体について経
      営効率化のインセンティブを与えることにより、利用者料金の低廉化を図って
      いくことが目的である。したがって、経営効率分析の対象を利用部門に限定す
      る指定設備利用部門案よりも、指定設備管理部門を含む特定電気通信役務の提
      供に必要な範囲のコスト全体を把握してX値を算定することとなる特定電気通
      信役務案をとることがより適当であると考えられる。
       なお、X値の算定の基礎となるコストについては、客観的な指標の比較等に
      より、適切な生産性向上を見込んだものとする必要があると考えられる。
    
    (参考2.6)
                          X値算定と接続料算定(接続会計)との関係
    
       
    
     [特定電気通信役務案]
      特定電気通信役務対象範囲()をベースにX値を算定する。
      (収入は利用者料金。費用は指定設備利用部門の費用及び指定設備管理部門の
       費用のうち特定電気通信役務に分計される部分の合計)
    
     [指定設備利用部門案]
      NTT地域指定設備利用部門()をベースにX値を算定する。
      (収入は利用者料金。費用は指定設備利用部門の費用及び振替接続料の合計。)
    
     [全社案]
      NTT地域全体()をベースにX値を算定する。
      (収入は利用者料金及び接続料。費用は指定設備利用部門及び指定設備管理部
       門の費用の合計)
    
    
    (参考2.7)
    
          特定電気通信役務案、指定設備利用部門案、全社案の比較
    
         
      特定電気通信役務案
         (
      指定設備利用部門案
         (
       全社案(
    メリット
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    ・特定電気通信役務提供の
    
     ための費用・資産のみを
    
     ベースにX値を算定する
    
     ため、不当な内部相互補
    
     助を防止できる。
    
    ・指定設備管理部門を含む
    
     特定電気通信役務提供の
    
     コスト範囲全体の経営効
    
     率分析を基に、X値を設
    
     定することが可能となる
    
    ・特定電気通信役務提供の
    
     ための費用・資産のみを
    
     ベースにX値を算定する
    
     ため、不当な内部相互補
    
     助を防止できる。
    
    
    
    
    
    
    
    
    ・従来の方式の考え方に
    
     近い。
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    デメリット
    
    
    
    
    
    
    ・特定電気通信部門に、費
    
     用・資産を配賦によって
    
     分計する必要がある。
    
    
    
    
    
    ・経営効率分析の範囲は、
    
     指定設備利用部門に限ら
    
     れ、特定電気通信役務案
    
     より狭くなる。
    
    
    
    
    ・接続のための費用・資
    
     産と、ユーザー役務の
    
     ための費用・資産を区
    
     別しないので、不当な
    
     内部相互補助の防止の
    
     観点から問題がある。
    
    II X値算定のために必要な個別要素についての検討
    
     1 需要・収入の予測
    
      (1) 基本的考え方
    
        需要・収入の予測に当たっては、市場の実態を的確に反映し、また、需要
       と費用との関連を保つことができるよう、NTTによるバスケット毎の中期
       的な需要・収入見通し、統計的手法による市場全体の需要予測・NTTとN
       CCのシェア予想等を勘案して、郵政省が予測する。
        具体的な需要算定の手順としては、以下の通り
        NTTが、バスケット毎の中期的な需要・収入見通しを提出
        統計的手法等により需要レベルを予測し、1)の妥当性を検証し、必要な
        修正を加える。
    
    
    (参考2.8)
    
                        従来の需要・収入の予測方式
    
        過去のトレンドから将来の加入数を予測する。
        過去のトレンドから将来の1加入当たりの収入単金を予測する。
         (料金改定を行う場合はその影響を加味する。)
        予測加入数×予測収入単金を予測収入とする。
         (トラヒックの予測はしない。)
    
      [従来の方式の問題点]
        過去のトレンドを延ばしているので傾向が大きく変わるときは対応でき
        ない。
        トラヒックの伸び、割引料金の契約者数等多くの要素を収入単金の中に
        入れ込んでいるため、細かい要素分析ができない。
    
    
      (2) 統計的予測方法の検討
    
        市場全体の需要(電話・ISDNの加入数、距離段階別トラヒック、専
        用線の距離段階別の総提供容量等)を予測する。
    
         マクロ指標を用いた重回帰分析により、サービス需要(電話・ISDN
        の加入数、距離段階別トラヒック、専用線の距離段階別の総容量等)を予
        測する。
    
        市場毎に東西地域NTT各社のシェアを予測する。
        市場全体の予想需要×東西地域NTT各社の予想シェアを予測需要とす
        る。
        価格弾力性を考慮して予測需要をXの関数の形に表す。
        予測需要×1需要当たりの収入額を予測収入とする。
         ただし、t年の1需要当たりの収入額は、
        (現行料金の場合の1需要当たりの収入額:Mt)×(1+CPIt−X)t
        とする。
    
    
      (予測における留意点)
    
        需要予測に用いるマクロ指標の選定及びマクロ指標自体の将来予測
    
         マクロ指標のうち、GDP伸び率、無線呼出し加入数、通信費指数等一
        般的に電気通信需要に大きく影響を与えると考えられるものについて、電
        気通信需要の変動との相関性を計測して決定する。マクロ指標のうち、公
        式の予測があるものについてはそれを用い、それ以外については過去のト
        レンド等から推計する。
    
        東西地域NTT各社のシェアの予測
    
         過去のトレンド等により将来の東西地域NTT各社のシェアを推計する。
    
        価格弾力性の予測
    
         NTT収入の予測に用いることから、可能な限り、NTTの価格弾力性
        を測定のうえ予測する必要がある。具体的には、サービス・料金区分ごと
        に、NTT民営化以降の価格弾力性の推移を検証するとともに、市場全体
        の価格水準の変動及び需要の変動を計測し、それらを基に将来の価格弾力
        性を予測する。
    
        現行料金の場合の1需要当たりの収入額
    
         現行料金の場合の1需要当たりの収入額については、
        ア 割引料金の利用動向の変化による1需要当たりの収入額の変化を考慮
         するという考え方
        イ 割引料金の利用動向の変化による1需要当たりの収入額の変化を考慮
         しないという考え方
        の2つの考え方があり得る。
         本来ならば、1需要当たりの収入額は、料金変更が行われない場合であ
        っても、割引料金の利用動向の変化により変化するものであり、特定電気
        通信役務の収入を正確に予測するために、割引料金の利用動向の変化の予
        測を行い、それを反映させた1需要当たりの収入額を予測することとする
        のが適当であるとも考えられる。
         しかし、割引料金の利用動向を予測するためには、すべての割引料金(
        現在設定されているもの及び算定期間中に新たに設定されるものの双方を
        含む。)についての需要予測を行う必要があるが、その予測は技術的に非
        常に困難である。
         したがって、X値算定に当たっては、1需要当たりの収入額は料金指数
        基準時における割引の利用状況が反映された料金額から求めることとし、
        割引料金の利用動向の変化については、料金指数の計算の際に考慮するこ
        ととするのが適当であると考えられる。
    
     2 CPIの予測
    
       将来のCPIについては、過去のトレンド等より推計を行う。
    
     3 費用予測
    
      (1) 基本的考え方
    
        郵政省は、NTTの収支見通し・経営効率化の計画、諸外国及び国内の電
       気通信事業者の生産性・効率性の比較等を基にして、NTTがX値算定期間
       内に達成すべき経営効率化目標を適切に設定し、それを基にX値算定期間の
       最終年度におけるNTTの適正費用を推計する。
        経営効率化目標の設定に当たっては、サービス供給規模の拡大、サービス
       提供範囲の拡大による効率化の推計及び効率化目標の設定を行う。
    
        サービス供給規模の拡大、サービス提供範囲の拡大による効率化の推計
         加入数、トラヒックの変動、サービス品目の増大等に伴う単位当たりの
        コストの削減について過去のトレンド等より合理的な推計を行う。
        効率化目標の設定
         資源配分・設備投資等の効率化、アウトソーシング、技術進歩等を見込
        んで効率化目標の設定を行う。その際には、他国の電気通信事業者の効率
        性等を参考とする。
    
    ◎ 費用予測の基本フロー
    
    
    (参考2.9)
    
                                従来の費用予測方式
    
        人件費・物件費・減価償却費等に費用を分けて、過去の動向等から予測
        を行う。
    
        人件費については、以下のように行う。
        a.予測需要と過去の実績から算定する。
        b.事業計画に基づく人員減少率を用いて、a.を修正する。
    
        物件費については、以下のように行う。
        a.ア.一般物件費とイ.事業化経費(子会社化した業務に対する経費)
         に分けて、予測需要と過去の実績から、算定する。
        b.ア.一般物件費については、伸び率(CPI伸び率)の30%分を効
         率化分として査定する。
        c.イ.事業化経費については、伸び率(人件費単金伸び率)の2%分を
         効率化分として査定する。
    
        減価償却費等その他の経費については、予測需要と過去の実績から算
        定する。
    
        [参考]
    
         現在費用予測において予測需要及び過去のトレンド以外に考慮されてい
         る事項
    
    費用項目
    考慮事項
    人件費
    人員の削減を見込む。(事業計画に基づく)
    物件費(一般物件費)
    毎年30%経費伸び率が削減されると見込む。
    物件費(事業化経費)
    毎年2%経費伸び率が削減されると見込む。
      (2) 具体的な費用予測方法の検討
    
        NTTによる自主的な経営効率化の計画の策定
    
        NTTは、国民生活・経済に必要不可欠な地域電気通信サービスを提供す
       る事業者として、経営効率化努力を行うことにより、上限価格方式の下で料
       金の低廉化に努める責任があると考えられる。
        したがって、NTTにおいては、X値算定に当たっては、自ら経営効率化
       の計画を策定のうえ、X値算定に必要となる原価資料、経営効率化について
       適切な判断を可能とする客観的な効率化指標等を郵政省に対して提出する必
       要があるが、それと同時に、利用者に対しても、自らの料金の妥当性を積極
       的にわかりやすく説明していくことが望まれる。
        なお、客観的な経営効率化指標の例としては、1回線当たりのコストや1
       通信時間・1通信回数当たりのコストなどが考えられるが、適切な比較が可
       能となるよう、経年比較、国内・他国の事業者との比較等も含め、諸外国の
       例も踏まえ十分に検討していくことが必要であると考えられる 。6
        また、利用者に対しては、経営効率化の計画やそれを踏まえた原価資料は、
       企業秘密に該当するデータであり、そのままの形で公表することは難しい面
       があるとしても、X値に対する利用者の理解を得るに必要と判断される情報
       については、その公表が求められる。
        経営効率化の計画の内容としては、次頁のようなものが考えられるが、こ
       れについては今後さらに検討が必要である。
    
    6 OFTELでは英国の調査機関NERAに委託し、BT、米国地域通信事業者を 含む他国の電気通信事業者の1回線当たりコスト、1通信量当たりコストの比較、 計量経済学的な方法等により計測された効率性の比較等を行い、BTと最も効率的 な事業者の効率性の差分を計測し、その結果をX値の算定に用いている。
    NTTの経営効率化の計画における項目案 I 概要 II 事業の現状  1 会計(バスケット毎の収支、資産・負債等)  2 設備(ネットワーク設備、その他の設備等)  3 従業員(配置、在籍出向者の状況等)  4 サービス・料金(サービス・料金メニュー、サービス品質、提供数 等)  5 その他の経営実績(アウトソーシングの状況等) III 将来計画  1 収支・資金計画  2 設備投資計画  3 雇用計画  4 その他の計画(アウトソーシングの計画等) IV 需要・収入予測 V 費用効率化目標   費用項目毎に効率化目標を設定する VI レートベース効率化目標   資産項目毎に効率化目標を設定する VII 適正報酬率の算定 VIII 収支見積 IX 経営効率化指標  1 各種経営効率化指標の実績(経年変化、他事業者との比較を含む。)  2 各種経営効率化指標の目標 X 前回の経営効率化計画のフォローアップ(予測・目標と実績の比較等)  (次回のX値算定以降)    郵政省によるNTTの経営効率化の計画の適正性の検証     郵政省においては、X値算定のための費用予測の確定のため、NTTの費    用予測およびそれの基礎となる経営効率化の計画の適正性の検証を行う必要    がある。     その検証に当たっては、従来の方式も参考としつつ、個別の費用について    検証を行うほか、諸外国の規制当局の効率性の計測方法などを参考として、    日本及び諸外国の電気通信事業者の生産性・効率性のデータを、それぞれの    地理的状況の差異等前提条件の違いを補正した上で、NTT各社のデータと    適切な比較を行い、NTT自身の経営効率化計画における費用予測について、    比較検証を行うこととするのが必要となると考えられる。     具体的には、NTTの効率性を計量経済学的な方法等により測定し、その    数値を参酌しつつNTTの費用を検証することとなると考える。郵政省にお    いては、効率性の計測方法について、引き続き十分な検討を行っていくべき    であると考える。    長期増分費用方式との整合性について     現在、郵政省においては、NTTの接続料の算定に長期増分費用方式を導    入するとともに、ユニバーサル・サービスコストの算定にも同方式を使用す    る方針としている。     このため、NTTにおいては、長期増分費用方式が導入された後は、経営    効率化の計画の作成に当たり、長期増分費用方式によって算定される費用と    X値の算定の前提が十分整合性のとれたものであるようにすることが求めら    れる。     また、郵政省においても、費用査定検証の段階で、長期増分費用方式によ    って得られた結果を十分参酌して行うことが必要である。     ただし、長期増分費用方式については、その具体的方式がまだ決まってい    ないため、長期増分費用方式の具体的な参酌方法については、長期増分費用    方式の具体的方式決定後に、検討していくことが必要となると考えられる。  4 適正報酬額・利益対応税額の算定   (1) 基本的考え方     基本的には従来の算定方式に準拠して行うこととするが、レートベース及    び適正報酬率の算出方法につき改善を図ることとする。    (参考2.10) 従来の適正報酬額・利益対応税額の算定方式     適正報酬額=レートベース×適正報酬率とする。     レートベースは電気通信事業固定資産、繰延資産、運転資本、投資等の     合計とする。     適正報酬率=自己資本利益率×自己資本比率+他人資本利益率×他人資     本比率とする。     ア レートベース       予測需要及び過去の実績より推計する。(分社化等を行う場合はそれ      を見込む。)     イ 適正報酬率      i) 自己資本比率、他人資本比率はNTTの実績を用いる。      ii) 他人資本利益率はNTTの金融費用の実績(社債及び借入金の平       均)を用いる。ただし、引当金等(退職給与引当金、及び有利子負債       以外のその他の負債)分については10年もの国債利回りを用いる。      iii) 自己資本利益率は主要企業の平均を用いる。     利益対応税額の予測      予測報酬の場合に、税法の規定により実際支払われるはずの税額を推計     する。   (2) 具体的な適正報酬額・利益対応税額の算定方式の検討     レートベースの予測      費用予測の方法と同様に、効率化の推計及び効率化目標の設定を行い、     適正なレートベースを推計することとするのが適当である。     (p.25〜29参照)     適正報酬率の算定     ア 自己資本比率・他人資本比率の算定       自己資本比率・他人資本比率の算定に当たっては、現在のNTTの資      本構成が、経営判断の結果の一定の合理性があるものとなっていると考      えられること、また、再編成に当たり、基本的には、現在のNTTの資      本構成をNTT地域各社が引き継ぐ予定であることから、今回のX値算      定に当たり、現在のNTTの数値を用いることに一定の合理性があると      考えられる。       しかしながら、NTT再編成後、東西地域NTT各社はNTT持株会      社の100%子会社となることから、将来的には東西地域NTT各社の      資本構成が現在のNTTと異なることとなることも予想されうることか      ら、次回のX値算定時以降においては、自己資本比率・他人資本比率の      合理的な見込み方法について、十分検討していくことが必要であると考      えられる。     イ 自己資本利益率の算定       「接続料の算定に関する研究会報告書(H10.11.6)」におい      ては、接続料の算定の場合において、自己資本利益率は事業の安定性と      リスクとを織り込んだ指標7を勘案して決定するものとしている。利用      者料金と接続料の自己資本利益率の考え方は、設備投資にかかる調達コ      ストを適正な範囲で賄えるような水準とすることを基本とすべきである      点において変わるものではなく、X値算定に当たって用いる自己資本利      益率についても、接続料と同様の考え方で算定することが合理的である      と考えられる。       なお、接続料算定に用いる自己資本利益率の算定の考え方については、      さらに「接続料の算定に関する研究会」において検討を行うものとされ      ており、X値算定に用いる自己資本利益率についても、その検討結果を      踏まえ、それと整合性をもったものとすることが適当であると考えられ      る。
    7 具体的には、資本資産評価モデル(CAPM:Captial Asset Pricing Model)の考え 方に基づき算出された期待収益率 E(Ri) = Rf + β [E(Rm) - Rf] Rm : 市場ポートフォリオのリターン Rf : 無リスク資産のリターン β : 対市場ポートフォリオの感応度     ウ 他人資本利益率の算定       他人資本利益率については、現在のNTTの他人資本利益率の実績が、      経営判断の結果として一定の合理性があるものとなっていると考えられ      ることから、今回のX値算定に当たっても、現在のNTTの数値を用い      ることに一定の合理性があると考えられる。       しかし、X値算定に用いる他人資本利益率は、本来最も合理的な資金      調達方法を採った場合における利回りを参考とすべきであるため、現実      的には、例えばNTTと同じ格付け企業の社債利回り等客観的なデータ      を用いて算定すべきであるとの考え方もありうるところである。       また、NTT再編成後、東西地域NTT各社はNTT持株会社の10      0%子会社となることから、将来的に実際の東西地域NTT各社の資本      調達方法が現在又は通常の企業と異なることとなることも予想されうる      ところである。       したがって、次回のX値算定時以降においては、他人資本利益率の合      理的な見込み方法について、十分検討していくことが必要であると考え      られる。     エ 引当金等の取扱い       引当金等については、機会費用の観点からリスクフリーレートである      国債利回り等を用いる現在の方式に一定の合理性があると考えられる。     オ 次回以降のX値の算定に用いる適正報酬率について       以上の検討から、今回のX値算定に用いる適正報酬率の算定について      は、現在の認可制の下で用いられている方法に一定の合理性があると考      えられることから、自己資本利益率の算定方法を除き、基本的に従来の      方法を用いることとするのが適当であると考えられる。       しかし、NTT再編成後、東西地域NTT各社の資本構成・資本調達      方法が、現在又は通常の企業のNTTと異なるものとなることも予想さ      れることなどから、次回以降のX値算定においては、適正報酬率の算定      方式について十分に検討を行う必要があると考えられる。       その際には、接続料算定の際に用いられる適正報酬率及びその算定の      考え方を踏まえて、それらと整合性をもったものとすることが適当であ      ると考えられる。 III X値算定に向けてのその他の課題  1 支援NTT東日本からNTT西日本への特定費用負担金の取扱い    NTT法改正法では、NTT再編成後、NTT東日本は、3年間事業年度間   に限り、NTT西日本の収支バランスを補正する経営の安定化のために、NT   T西日本に対して利益処分の形で、金銭を交付することができる旨を定めてい   る8。これがいわゆる支援特定費用負担金であるが、支援特定費用負担金とX   値算定との関係については、    支援特定費用負担金については全く考慮しない。[無考慮案]    支援特定費用負担金を支払う会社については費用と考え、支援特定費用負    担金を受ける会社については収入として考える。[費用・収入案]   の2つの考え方がありうる。    本来X値は、NTT東西会社それぞれについて、生産性向上見込率を算定し、   それを各社に生産性向上のインセンティブを賦与するために用いることである   ことを踏まえると、東西各社ごとの費用をもとにX値を算定する無考慮案が原   則であると考えられる。    しかしながら、東西NTTにおいて急激に料金格差が生じるのは望ましくな   いとの趣旨から、NTT再編成後3年間事業年度間にわたり支援特定費用負担   金制度を設けられたことを考慮すると、上限価格方式においても同様の考え方   を取り入れ、NTT再編成後3年間事業年度間は、支援特定費用負担金を支払   う会社については費用と考え、支援特定費用負担金を受ける会社については収   入として考慮するという費用・収入案が適当であると考えられる。    ただし、実際のX値算定に当たっては、支援特定費用負担金制度自体の詳細   がまだ固まっていないため、確定した制度を踏まえて、適切に支援特定費用負   担金の額を推計することが必要となる。なお、X値算定時に支援特定費用負担   金の制度自体の詳細が固まっていない場合には、支援特定費用負担金の趣旨を   取り入れた調整額を独自に見込む等の措置を検討する必要があると考えられる。
    8 日本電信電話株式会社法の一部を改正する法律(平成9年法律第98号) 附則第11条 (参考2.11) 無考慮案と費用・収入案の比較
          
         無考慮案
        費用・収入案
    メリット
    
    
    
    
    
    ・東西会社の生産性に見合っ
    
     たX値の設定が可能になる
    
     。
    
    
    
    ・X値設定による東西料金格
    
     差は生じにくい。
    
    ・東西会社の生産性の相違を
    
     一定程度反映可能。
    
    デメリット
    
    
    
    
    
    ・X値設定により、東西会社
    
     の料金に格差が生じる可能
    
     性がある。
    
    
    
    ・支援負担金を支払う会社の
    
     生産性向上のインセンティ
    
     ブが一定程度薄れる。
    
    
    
     2 特定電気通信役務の収支・レートベースの報告
    
       特定電気通信役務は、独占的に提供され利用者に及ぼす影響が大きいもので
      あることから、その会計情報は毎年度社会的に公開されることが望ましく、そ
      れは、X値の適正さを社会的に検証する上でも必要である。9
       したがって、NTTにおいては、毎年度、特定電気通信損益明細表及びレー
      トベース明細表を作成し、バスケット・サブバスケット毎の収支及びレートベ
      ースの額を、郵政省に報告し、公表することが求められると考える。
    
    9 前回報告書p.42参照  3 加入者回線サブバスケットのX値    音声伝送役務のうち加入者回線設備を用いて提供されるサービスについては、   市内通信サービスや県内市外通信サービスに比べ、独占的に提供されているこ   とから、サブバスケットとして独立の基準料金指数を設けることとされている。   (基本料、施設設置負担金等が対象となる。)    しかし、加入者回線サブバスケット独自の生産性向上見込率を算定すること   は実務上困難であること、音声伝送役務バスケット全体のX値による料金低廉   化を期待できることを考慮すると、当面の間は、加入者回線サブバスケットに   ついて独立したX値を算定することはせず、X値を0とする等により料金の上   昇を押さえることにすることが適当と考える。  ※ 英国では、BTに対するプライスキャップにおいて、電話バスケット全体の   X値は4.5%とされているが(1997年以降)、基本料についてはRPI   +2%を上限とすることが定められている。 第3節 外生的要因  1 外生的要因として考慮すべき事項    外生的要因として考慮すべき事項としては、消費税率の変更のほかには、法   人税率の変更、規制制度の変更等事業者の管理を超えたところで発生するコス   トの変化であって、事業者の経営に大きな影響を与える事象が挙げられる。    なお、具体的な外生的要因の算定方法については、それぞれの事項が発生し   た際に、その目的や効果を勘案して検討することとすべきであると考えられる。   例えば、法人税率の変更の場合については、税率の変化によるコストの変化の   うち、消費者物価指数に反映されない部分を算定することが必要となると考え   られる。  ※ 第3章第2節5において、消費税分は、料金指数の算出に当たり含めないこ   ととし、消費税率の変更により消費者物価指数が変動する部分については、翌   年度の基準料金指数の算定の際に外生的要因として除去することにより調整す   ることが適当であるとしている。    具体的な調整方法としては、消費者物価指数が公表される際に経済企画庁が   発表する消費税率変更相当分を外生的要因として除去することにより調整する   ことが可能であると考えられる。  2 外生的要因の設定時期    外生的要因の設定時期については、基準料金指数の適用期間毎(毎年度)に   行うこととし、具体的な設定の手続きとしては、外生的要因に該当する事実が   発生したこと又は発生することが明らかな場合に、郵政省が自ら、あるいは、   NTTによる申出に基づき、外生的要因を計算して修正を加えた基準料金指数   を通知することになる。    基準料金指数の適用期間中に事業者のコストに重要な影響を与えるような特   別な事情が生じた場合には、基準料金指数を超える料金の認可申請を行い、郵   政省において、その特別な事情について審査することとすることが適当である   と考えられる。
    第3章 料金指数の算出方法 第1節 料金指数の算出について  1 基本的考え方   (1) 前回報告     料金指数は、できるだけ現実の料金水準を正確に表すことが求められるこ    とから、個別料金の変化率をそれぞれの前年度の収入ウェイトで加重平均し、    料金改定ごとに算出することとする。     具体的には、料金指数は、基準時における料金水準を100として、料金    改定時において、改定後料金(Pt)と改定前料金(Pt-1)のそれぞれにつ    いて前年度の供給実績(S)と同量だけ需要があった場合の収入を計算し、    その比率を料金改定前の料金指数に掛け合わせることによって算出する 。9
          
    
      (2) 施行規則の規定
       第19条の6
        法第31条第3項の料金指数は、特定電気通信役務の種別ごとに、次の
        式により算出するものとする。
       
    
        Ptiは、通信の距離及び速度その他の料金区分ごとの料金額
        P0iは、法第38条の2第1項の規定により新たに指定された電気通信設
        備を用いて提供される特定電気通信役務に適用される最初の基準料金指数
        の適用の日の6月前における料金額でPtiに対応するもの10
        Siは、Ptiが適用される電気通信役務の基準年度11における供給量
    
    
    9 前回報告書p38〜p40参照。 10 当年度の料金を前年度の料金とではなく、基準時の料金と比較することとして いるため、毎年度補正を行うことが組み込まれている(参考3.1参照)。 11 直近の事業年度(4月1日から翌年3月31日までの期間)。     前項に定めるもののほか、郵政大臣は、料金指数の連続性を保つために     必要な料金指数の修正の方法を別に定めるものとする。 (参考3.1) 料金指数の補正のイメージ  1 料金指数の補正の必要性と方法    前回報告書の算出方法に基づき料金指数を算出する場合、算出の基となる供   給実績が毎年度変更されるため、年度を超えるときに指数の連続性が保たれな   くなる。    したがって、毎年度、新しい基準料金指数が適用される時に、料金を基準時   の料金と比較することによって料金指数の補正を行うこととし、施行規則にそ   の旨を定めた。  2 具体例
       
       
       
           
       料金
           
        
     供給実績 
     
       料金指数
    
     (前年度の料金と
    
       比較したもの)
    
     補正後の料金指数
    
     (基準時の料金と
    
       比較したもの)
    基準時
    基本料100円  
    通話料10円/分 
       10加入
        100分
         100    
          −    
    1年目
    基本料95円  
    通話料10円/分
       12加入
        130分
    2年目
    基本料95円  
    通話料 9円/分 
       12加入
        140分
    3年目
    基本料90円  
    通話料 8円/分 
       14加入
        150分
        
     2 具体的算出方法
    
       バスケットの内部において、サービスの独立性や代替性の観点から、料金
       指数算出単位(参考3.2参照)を設定し、料金指数算出単位ごとに料金変化
       率を計算する 。12
    
       料金指数算出単位ごとに各収入ウェイトでの変化率を加重平均したもの
       を、料金改定前の料金指数に乗じることによりバスケット単位の料金指数を
       算出する。
    
      (計算例)
       同一バスケットAの料金指数算出単位A1において、現在の料金が100円で
       あるものを90円に改定した場合には、その料金変化率は、90/100=0.9となる。
    
       したがって、バスケットAの料金指数算出単位Aiの収入ウェイトをWiと
       し、料金改定前の料金指数をP0とすると、当該バスケットの料金改定後の
       料金指数P1は、次のようになる。
    
      バスケットA
    
      単 位   
    旧収入ウェイト
     旧料金
      新料金
    新収入ウェイト
       A  
       W  
      1
      0.9
      0.9W 
       A   
       W   
      1
       1
       W   
       A   
       W   
      1   
       1   
       W   
      P0=W1+W2+……+Wi
      P1=0.9W1+W2+……+Wi
    
      P1−P0=0.1W1
    
      したがって、料金指数は、全体として0.1W1分だけ下がったことになる。
    
    12 ただし、既存の無料サービスを有料化する場合には、前年度収入ウェイトは0 であるとともに、料金の変化率が無限大となるので計算ができないことから、実際 には(当該サービスの実績供給量×有料化価格)/全収入として料金指数に織り込 む必要がある。 (参考3.2)    料金指数算出単位のイメージ(電話・ISDNバスケットの場合)
                                  
    料金指数算出単位
    基  
    本  
    料  
    ・  
    施  
    設  
    設  
    置  
    負  
    担  
    金  
    基本料
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    電話
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    単独電話
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    事務用
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    3級局
    2級局       
    1級局       
    住宅用     
    (事務用と同様)  
    ISDN  
          
    64                       
    1500                     
    施設設置負
    
    担金
    
    
    電話                         
    ISDN  
          
    64                       
    1500                     
      
    通 
    話 
    料 
    ・ 
    通 
    信 
    料 
      
    電話
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    平日
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    昼間
    
    
    
    
    
    
    区域内       
    隣接〜20km   
    〜30km     
    (以下略)     
    夜間      
    (昼間と同様)   
    深夜・早朝   
    (昼間と同様)   
    土曜    
    (平日と同様)             
    日曜祝日  
    (平日と同様)             
    ISDN         
    (電話と同様)                  
    第2節 料金指数算出に当たり留意すべき点について
    
     1 割引料金の扱い
    
      (1) 割引料金の影響
        割引料金は、あるサービスを利用量、利用者の選択等にしたがって、通常
       の料金よりも低廉な料金で提供するものであり、割引を利用する利用者にと
       っては実質的な値下げ効果があり、事業者にとっても減収要因となるもので
       ある。
        したがって、割引料金の影響については、利用者への影響(料金指数に反
       映)又は事業者への影響(基準料金指数に反映)の一方又は両方で考慮すべ
       きと考えられる。
        前章で検討したように、X値算定に使用する一需要当たりの収入額を基準
       時におけるものに固定した場合には、割引料金の利用動向の変化による1需
       要当たりの収入額の変化を料金指数の算出時に考慮する必要がある。
    
      (2) 既存の割引料金
        まず、既存の割引料金(上限価格方式の適用開始の際の料金指数の基準時
       以前に導入された割引料金)については、通常料金と同一の料金指数算出単
       位とし、通常料金が適用される通信量と割引料金が適用される通信量で加重
       平均することにより、割引料金の利用動向の変化を反映させることができる。
        また、既存の割引料金を更に値下げした場合には、昨年度の供給量実績を
       用いることにより、その値下げを料金指数に反映させることができる(参考
       3.3参照)。
    
      (3) 新割引料金
        次に、新割引料金(上限価格規制方式の適用開始の際の料金指数の基準時
       以後に導入された新しい割引料金)については、導入時点において前年度の
       供給量実績が存在しないことから、新割引料金の値下げ効果が料金指数へ反
       映されないこととなる。
        ここで、新割引料金は、実質的な値下げであることを踏まえると、供給量
       の予測値を用いてこの値下げ効果を織り込むことも考えられるが、
        新割引料金の利用者が少ない場合は値下げ効果がほとんどないこと
        予測値を推計することは実務的に困難であること
       から、実績値のみを用いることが適当であり、新割引料金の提供時には実績
       値がゼロであるため、料金指数へ反映させることは適当ではない。
        また、新割引提供後の次回料金届出時には、現実に新割引料金の利用が生
       じていることから、直近の実績値を用いることにより料金指数に新割引の利
       用量実績に応じた実質的な値下げ効果を適宜織り込むこととする(参考3.4
       参照)。
    
     [具体的算出方法案]
       通常料金・既存割引料金・新割引料金を同一の料金指数算出単位として扱う
      こととする。
       供給量は、「通常料金+割引(既存割引+新割引)」の合計値を使用。
       料金水準は、以下の値を使用。
       P0=料金基準時点の「通常料金、既存割引の加重平均値」
       Pi=直近時点の「通常料金、割引の加重平均値」
    
    (参考3.3)
                         通常料金と既存の割引料金との間の関係
    
         
    
    (1) 初年度は、基準時点の料金に対し、通常料金は(A-100-1)、割引料
      金は(B-100-1)をそれぞれウェイトとして加重平均することにより、
      料金指数を算出する。
    (2) 翌年度は、t1時点の料金に対し、通常料金は(A0110)、割引料金
      は(B0110)をそれぞれウェイトとして加重平均することにより、料
      金指数を算出する。
    
    (参考3.4)
                           通常料金と新割引料金との間の関係
    
         
    
    (1) t時点で新料金が提供開始された場合、前年度の実績値がないため、1年目の
      新料金は料金指数に反映されない。
    (2) しかし、その後料金が変更された場合は、通常サービスの年間通信量である
      (A011C’C0)と1年に満たない新料金の通信量(C’B11)をウ
      ェートとして加重平均するのではなく、実績値が把握できる直近時点(t1)
      の供給量(通常料金:A11、新料金:B11)をウェートとして加重平均し
      て、料金指数を算出することを可能にする。
    
    
     2 新サービスの扱い
    
      新サービスは、大きく次の2つに分類される。
      既存サービスと類似性があり、代替性があるサービス
      全く新しいサービス(既存サービスと類似性・代替性が全くないサービス)
      さらに、のサービスについて、(A)基準時以降に提供が開始される「新サー
     ビス」、(B)基準時において提供されている「既存の新サービス」に分けること
     ができる。
      このような新サービスについては、前年度の実績値がない場合や、独立の料金
     指数算出単位ととらえた場合等、料金指数にその開始や利用動向の変化を反映す
     ることができない場合がある。
      しかし、新サービスは研究開発の成果である技術革新により生産性向上を現実
     化させたものであり、料金指数にはこの研究開発による効率化を反映させるべき
     ではないかとの意見があるため、検討することとする。
    
     (1) 既存サービスと類似性があり、代替性があるサービス
       既存サービスと類似性があり、代替性があるサービスについては、サービス
      の開始により、既存サービスから新サービスへの利用シフト(例:同じ情報伝
      送量での高速ディジタル伝送サービスからディジタルアクセスへのシフト)が
      起こった場合に実質的な料金変動効果があるため、料金指数に反映させること
      が適当であると考えられる。
       これは、研究開発の成果等が新サービスの提供の形で実現し、普及を通じて
      生産性の向上が図られているものであり、新技術等を活用した新サービス、既
      存の新サービスの普及を料金指数に反映することは、X値との整合性の点から
      も、一定の合理性があると考えられる。
       この場合、計算方法は、「既存の新サービス」、「新サービス」を同一の料
      金指数算出単位とすることにより、料金指数に反映させることが可能となる。
       なお、新サービスは、保守が簡素化されている、常時伝送速度が保証されて
      いない等、既存のサービスとは品質が異なっている場合があるが、この品質の
      違いにより、料金指数算出単位として独立させるべきか否かは、利用者、利用
      目的等から個別に判断していくこととする。
       なお、判断の結果、独立の料金指数算出単位とすべきとされた場合には、次
      の「(2) 全く新しいサービス」と同様の方法により料金指数に組み込むこと
      となる。
     [具体的算出方法案(割引サービスの扱いと同様13)]
       類似のサービス(既存サービス、既存の新サービス、新サービス)を同一の
      料金指数算出単位として扱うこととする。
       供給量は、「既存サービス+既存の新サービス+新サービス」の合計値を
       使用する。
       料金水準は、以下の値を使用する。
       P0=料金基準時点の「既存サービス、既存の新サービスの料金の加重平均値」
       Pi=直近時点の「既存サービス、既存の新サービス、新サービスの料金の
          加重平均値」
    
     (2) 全く新しいサービス
       全く新しいサービスについては、開始時及び開始後しばらくの間においては、
      利用者利益に与える影響がない又は小さいと考えられることから、特定電気通
      信役務に含まないこととする。
       その後、利用が増大し、利用者利益に与える影響が大きくなったと考えられ
      る場合には、その時点で上限価格方式の適用対象とすべきか否かをその影響を
      踏まえて、個別に判断することとする。
       また、個別判断の結果、全く新しいサービスを特定電気通信役務に含めて上
      限価格方式を適用する場合は、独立した料金指数算出単位として料金指数を算
      出することとする。
       この場合、上限価格方式が適用された当初は、全体の料金指数に与える影響
      はないので問題はないが、次に料金変更が行われた場合、料金指数の基準時に
      おけるそのサービスの料金が存在しないため、その料金変更を料金指数に反映
      させる方法が問題となる。
       これについては、基準時の料金を提供開始時の料金と同一に設定する方法が
      考えられるが、この方法により加重平均して料金指数を計算すると、基準時か
      ら提供開始時まで料金は変化していないものとして扱うため、適用開始時から
      変化してきている料金指数を大きく変動させる可能性があり、適当ではない。
       したがって、現在の料金を他の適用対象サービスの料金指数値で割り戻す等
      により基準時の料金を仮に設定し、料金指数水準に影響を与えないようにする
      ことが必要となると考えられる。
    
    
    13 この考え方は、既存サービスと既存の新サービスとの関係は、「1 割引サー ビスの扱い」における参考3.3、既存サービスと新サービスの関係は、同参考3.4と 対応している。  3 料金体系の変更を伴う料金改定時の扱い    料金体系の変更については、単純な料金値下げと異なり、料金指数に与える   影響を単純に算出することができないため、個々について、料金の変更前後で   ユーザ負担にどのような影響を与えるかを明らかにした上で、料金指数の算出   に反映させる方法を考える必要があると考えられる。  [具体的事例]   (1) ISDNの施設設置負担金の負担方法のように、従来の方法である新規加    入時の一時払い(72,000円)と、利用期間中継続して月額料金として基本料加    算額(月額640円)を負担するという2通りの方法を併用するケース   (2) 基本料をベースレートとして、1回線目と2回線目で料金額に差を設ける    ケース   (3) 通話料金を、現行の「課金秒数ごとに一定の単位料金を課金する」方式か    ら、アクセスチャージのような「初度算料金+1秒単位料金」に変更するケ    ース  [具体的事例に対する考察]   (1) 施設設置負担金の例     施設設置負担金と基本料はどちらも加入者回線を用いて提供するサービス    の料金であることから、同一のバスケットとしているため、基本料との関係    においてどのように料金指数に織り込むのか、また、施設設置負担金におい    て一時払いと月額払いの2通りの方法を併用しているものについてはその関    係が、問題となる。     基本料と施設設置負担金との関係      基本料は定期的に支払う料金であるが、施設設置負担金は加入時に支払     う一時的な料金であり、会計上も圧縮記帳が認められる等、従来からその     取扱いを異にしているため、別の料金指数算出単位として扱うこととする。     施設設置負担金内における料金指数算出単位の扱い      施設設置負担金の負担方法は、現在、電話サービスについては一時払い     (72,000円)しかないが、ISDNサービスにおいては、一時払いと月額     払い(月額640円、年間で7,680円)の2通りがある。      この月額払いは、基本料と同様毎月定額料を支払う費用負担方法である     ため、施設設置負担金の中においても、一時払いと月額払いを算出単位を     1つとするのか、それとも別の単位とするのかが問題となる。      それぞれ別の算出単位として年間収入で計算する場合、それぞれの料金     変動は、そのまま反映されて加重平均されることとなるが、一時払い、月     額払いの両方で同様の割合で値下げを行ったとしても、同様に料金指数に     は反映されない(参考3.5参照)。      本来、この一時払い(72,000円)と月額払い(月額640円)は、利用者     の負担が同等になるように設定されたものであり、このように同様の割合     による値下げが同様に評価されないのは問題があると考えられる。      したがって、一時払いと月額払いの料金を同じ算出単位とし、双方の値     下げが同様に評価されるよう換算比率(9.375=72,000円÷(月額640円×     12ヶ月))を月額払いの料金に掛けることにより計算することが適当と考     えられる。      ただし、この方法によれば、月額払い料金を値下げした場合、その料金     変動分が換算比率倍だけ大きく評価されることとなるため、換算比率を用     いずにそのまま加重平均した場合よりも料金指数を押し下げる効果を持つ     (参考3.6参照。なお、この計算例においては、計算の便宜上料金指数が     大きく変化する例をあげている。)が、これは実際には影響はかなり小さ     く、また、一時払いと月額払いの双方の同様の値下げを同様に評価すると     いう点と合わせて考慮すれば、やむを得ないものと考えられる。     月額払いの値下げ、導入      現在、施設設置負担金について一時払いと月額払いの2通りの支払方法     を設けているISDNサービスについては、上記の方法で料金指数に織り     込むことが適当である。      他方、電話サービスにおいては、現在は一時払いの費用負担方法しかな     いが、もし将来的に現在の一時払い方式に加えて月額払い方式が導入され     るという料金体系の変更が行われた場合には、ISDNサービスと同様に     上記の方法により料金指数に織り込むことが適当と考えられる。   (2)・(3)の事例     これらの事例のように、料金体系に大幅な変更を加える場合については、    実際にこのような料金設定が行われた時点において、個々のケースに応じて    適切な計算方法を検討することが必要となると考えられる。 (参考3.5)   一時払いと月額払いを別の単位とし、同様の割引を行った場合の計算例   一時払いと月額払いは同等の利用負担により設定しているため、同様の割引を  行うこととし、一時払い、月額払いの料金をそれぞれ10%下げる場合、年間の減  収効果は、次のとおり。    一時払いを10%値下げする場合     72,000円×0.1=7,200円の減収効果    月額払いを10%値下げする場合     640円×12ヶ月×0.1=768円の減収効果   したがって、同様の割引方法であっても同様には料金指数に反映されない。 (参考3.6)  施設設置負担金の月額払い料金だけを10%下げた場合について、月額払い  料金に換算比率を(1)用いないときと(2)用いるときの料金指数の差異  (1)換算比率を用いずに単純に加重平均する場合  表1
        
    金額(年)
     契約数 
     収入額 
    収入ウェイト
    料金変化率
    新料金指数
    基本料
     21,000
       280
    5,880,000
       88.1%
         1
       88.1
    施設設置負担金
        
       20
     796,800
       11.9%
      ―  
       11.8

    一時払い
     72,000
       10
     720,000
      (90.4%)
         1
      (90.4)
    月額払い
      7,680
       10
      76,800
       (9.6%)
        0.9
       (8.7)
    合計
             
    6,676,800
       100.0%
        
       99.9
     注:表中の括弧は施設設置負担金内における一時払いと月額払いの収入ウェイト
    
       表1における料金指数は次のように計算する。
       施設設置負担金の各支払方法における収入ウェイトの算出
        一時払いの:1×0.904=0.904
        月額払いの:0.9×0.096=0.087
    
       全体に占める施設設置負担金の収入ウェイトの算出
       (0.904+0.087)×0.119=0.118
       全体の料金指数の算出
        0.881+0.118=0.999 ⇒ 99.9
    
     (2) 月額払い料金を換算比率倍する場合
     表2
    
            
    金額(年)
     契約数 
     収入額 
    換算前ウェイト
    換算後ウェイト
    料金変化率
    料金指数
    基本料
     21,000
       280
    5,880,000
        88.1%
        88.1%
         1
      88.1
    施設設置負担金
        
       20
     796,800
        11.9%
        11.9%
      ―  
      11.3

    一時払い
     72,000
       10
     720,000
       (90.4%)
       (50.0%)
         1
     (50.0)
    月額払い
      7,680
       10
      76,800
        (9.6%)
       (50.0%)
        0.9
     (45.0)
    合計
             
    6,676,800
        100.0%
        100.0%
         
      99.4
     注:表中の括弧は施設設置負担金内における一時払いと月額払いの収入ウェイト
    
       表2における料金指数は次のように計算する。
       月額払い料金を換算比率(9.375)倍することによる施設設置負担金の各
       支払方法における収入ウェイトの算出
       この場合、施設設置負担金の収入額は、
       72,000×10+7,680×9.375×10=1,440,000と換算される。
       したがって、それぞれの収入ウェイトは次のとおり。
        一時払い:72,000×10/1,440,000=0.5
        月額払い:72,000×10/1,440,000=0.5
       料金変更後の施設設置負担金の各支払方法における収入ウェイトの算出
        一時払い:1×0.5=0.5
        月額払い:0.9×0.5=0.45
       全体に占める施設設置負担金の収入ウェイトの算出
        (0.5+0.45)×0.119=0.113
       全体の料金指数の算出
        0.881+0.113=0.994 ⇒ 99.4
    
     4 サービス・料金廃止時の扱い
    
       サービス・料金が廃止されるのは、通常はサービスが陳腐化し提供数が少な
      くなった時点であるため、料金指数に与える影響はほとんどないことから、料
      金指数の算出の際には特段考慮に入れる必要がないと考えられる。
       しかし、例外的に、廃止の影響の大きいサービス・料金を廃止することも考
      えられる。その場合には、関連する代替的サービスを含めて一つの料金指数算
      出単位とし、料金指数算出単位の中で平均料金水準を変化させ、廃止の効果を
      料金指数に反映させることとする。
       なお、廃止サービスの代替的サービスが明確ではない場合や代替的サービス
      を全て廃止する場合等、サービス体系の大幅な変更が行われる場合には、その
      時点において、個々のケースに応じて適切な計算方法を検討することが必要と
      なると考えられる。
    
    
     5 消費税の扱い
    
      (1) 消費税の扱いについて
        消費税を含めて料金指数を算出すると、消費税率を変更した場合に事業者
       の自主的な経営効率化によらず料金指数に影響を与えてしまう(参考3.7参
       照)ことから、料金指数算出の際には消費税を除くことが適当であると考え
       られる。
    
      (2) 消費税を除いて料金指数を算出する理由
        上限価格方式の趣旨は事業者の自主的な経営効率化を促すインセンティブ
       を賦与することにあるが、消費税率の変更のような国の政策による費用変動
       まで含めて効率性を求めることは、事業者に対し経営努力とは無関係の外生
       的な負担を課す可能性があり、適当でないと考えられる。
        したがって、税率変更時には価格への転嫁を許し、事業者にその負担を負
       わせないようにする方法を検討する。
    
        まず、消費税を含めて料金指数を算出する方法について検討する。
        税率が変更されると料金指数も変動することにより、税率が上がる場合に
       は事業者が料金変更を行わなくても基準料金指数を上回ってしまう可能性が
       あるため、消費税率の変更の際には外生的要因として基準料金指数の修正が
       必要となると考えられる。
        さらに、消費税率の変化は翌年の基準料金指数算定の基となる消費者物価
       指数変動率に反映されるため、二重に消費税率の変更が織り込まれることと
       なる。これを是正するためには、翌年の基準料金指数に対しても外生的要因
       として調整する必要がある。
        そのため、消費税率を含めて料金指数を算出する方法は、調整が煩雑にな
       るおそれがあり、実務的にも困難であることから、適当ではないと考えられ
       る。
    
        次に、消費税を除いて料金指数を算出する方法について検討する。
        この場合は、税率の変更時に煩雑な手続きによらずとも、価格への転嫁を
       許し、事業者に税率変更に伴う負担を負わせることもない。
        ただし、翌年の消費者物価指数変動率は消費税率の変化が織り込まれるた
       め、消費税率が上がる場合は、それが基準料金指数に反映され、翌年度にさ
       らに値上げが可能(他方、消費税率が下がる場合はさらに値下げしなければ
       ならない)となり、基準料金指数の調整が必要となる。
        しかし、その調整は、翌年度の基準料金指数の算出の際に外生的要因とし
       て除去することとすれば、消費税率の変更による料金指数の調整は一回で済
       み、かつ、その調整幅も寄与分として公表された数値を使用すればよいこと
       から容易であると考えられる。
        なお、料金指数の算出に当たっては、公衆電話通話料金のように消費税相
       当分を含んだ内税料金としているものは、税抜きベースで料金指数を算出し、
       消費税率の改正時に税率変更分を利用者に完全に転嫁しない場合は、未転嫁
       分は実質的な料金変更として勘案する必要がある。
    
    (参考3.7)
    
               料金指数を消費税抜きと消費税込みで計算した場合の比較
    
      料金額の変更の場合
       消費税抜きの料金額で計算する場合と消費税込みの料金額で計算する場合を
      比較しても、料金指数は変わらない。
    
     (料金額の変更の場合の料金指数の計算例)
    
       
          
          
        
     税抜料金額
          
       
     消費税率
     
       
     税込料金額 
         
        料金指数
    税抜料金額で
    計算する場合
    税込料金額で
    計算する場合
    基準時
     3分10円
      5%
     3分10.5円 
      100
      100
    料金額変更時
     3分20円
      5%
     3分21円
      200
      200
      消費税率の変更の場合
       消費税抜きの料金額で計算する場合は料金指数は変動しないが、消費税込み
      の料金額で計算する場合には料金指数は変動することとなる。
    
     (消費税率の変更の場合の料金指数の計算例)
    
        
          
          
         
     税抜料金額
          
          
     消費税率
         

     税込料金額 
         
        料金指数
    税抜料金額で
    計算する場合
    税込料金額で
    計算する場合
    基準時
     3分10円
      5%
     3分10.5円
      100
     100
    税率変更時 
     3分10円
      10%
     3分11円
      100
     104.8
     6 導入初年度及び2年目における料金指数算出に使用する供給量の扱い
    
       料金指数を再編後のNTT東西地域会社に適用するにあたっては、再編成後
      の東西会社にそれぞれ帰属するサービス・料金の範囲を基準として、その供給
      量を正確に把握する必要があると考えられる。
       しかし、サービスによっては、再編成前と再編成後のサービスの帰属が異な
      るものや再編成前には正確な県内・県間別収入額の把握が困難なサービスが存
      在する(参考3.8参照)ため、大きな誤差が生じるおそれがある。
       したがって、導入初年度及び導入2年目においては、料金指数に大きな誤差
      が生じないよう、使用する供給量は、再編成前のNTTのデータではなく、再
      編成後の実績データを用いて算出することが適当であると考えられる。具体的
      には、
      ・ 導入初年度は平成11年7月〜9月末までの3ヵ月データ
      ・ 導入2年目は平成11年7月〜12年3月までの9ヵ月データ
      として料金指数を算出する。
       ただし、季節変動について、再編成前の過去の実績値を用いて修正する必要
      がある。
    
    (参考3.8)
    
                  再編成前にデータを確定することが難しいサービス
                                         
       市外通話割引サービス
        再編後は県内市外通話を含めて長距離会社に帰属
       メンバーズネット基本料
        再編後は電話基本料とメンバーズネット付加料に区分され、それぞれ地域
       会社・長距離会社に帰属
       専用サービス
        現在の県内・県間別の収入額は、年2回の特別調査に基づく理論値であり、
       実績値は把握されていない。
    
    
    第4章 上限価格方式の適用開始時期等について  1 基本的考え方   (1) 前回報告書の概要     基準料金指数の適用開始時期については、できるだけ早期に導入し、電気    通信料金の低廉化を促すことが望ましいと考えられるが、現時点で上限価格    方式の適用対象となるNTTについては、本年(平成11年)夏に再編成が    予定されており、現在の再編前のNTTに適用したとしても、短期間で基準    料金指数を再設定する必要があることなどから、再編成後できるだけすみや    かに実施することとすることが適当と考えられる。     具体的には、再編時において策定される事業収支見積、又は再編成後最も    早い会計データ等を基に生産性向上見込率を算定し、平成11年度中を目途    に基準料金指数の適用を開始することが適当と考えられる。     適用開始時以外の通常の年の基準料金指数の適用開始時期は、年1回基準    料金指数を設定することとすれば、事業年度の中間点が適切であることから、    通常の基準料金指数の適用期間は10月1日に開始し翌年9月30日に終わ    る1年間とすることが適当であると考えられる。   (2)施行規則の規定    第19条の5第2項     基準料金指数の適用期間は、10月1日から1年とする。    第19条の6第1項     法第31条第3項の料金指数は、特定電気通信役務の種別ごとに、次の式    により算出するものとする。       Ptiは通信の距離及び速度その他の料金区分ごとの料金額    P0iは法第38条の2第1項の規定により新たに指定された電気通信設備を    用いて提供される特定電気通信役務に適用される最初の基準料金指数の適用    の日の6月前における料金額でPtiに対応するもの    SiはPtiが適用される電気通信役務の基準年度における供給量  2 料金指数の基準時、初年度の基準料金指数の適用開始時期等   (1) 料金指数の基準時     基準料金指数の適用時点を施行規則において毎月10月1日としている趣    旨は、事業年度である4月1日から3月31日の中間点である10月1日に    料金を下げることにより、事業年度平均として基準料金指数を下回る料金水    準にするものであるため、料金指数の基準時は、事業年度が始まる平成11    年4月1日とすることが望ましいとも考えられる。     しかし、上限価格方式は再編成後の東西地域NTTを実際の規制対象とす    るものであることから、料金指数の基準時はNTT再編成が行われ東西地域    NTT各社が発足する日(平成11年7月1日)とし、その日から、東西地    域NTT各社に経営効率化を促していくこととすることが適当である。   (2) 基準料金指数の適用開始時期     事業年度の期央で値下げさせるとの趣旨を踏まえると、料金指数の基準時    から年度末までの期間の中間点である平成11年11月頃を初年度の基準料    金指数の適用開始時期とし、基準料金指数の通知はその90日前の8月頃と    することが適当であるが、生産性向上見込率の算定は、その精度を高めるた    めに、再編成後の会計データを用いて行うこととしている。     したがって、東西地域NTTの最初の会計データ(中間決算)等を踏まえ    て生産性向上見込率を算定することとなるが、それらのデータが得られるの    は平成11年11月頃であるため、実務的に8月に通知を行うことは不可能    である。     また、基準料金指数は国民生活・経済に大きな影響を及ぼす地域通信サー    ビスの料金の上限となる数値であることから、算定した基準料金指数につい    て、広く一般の意見(パブリックコメント)を求める必要があると考えられ    る。     以上を勘案すると、初年度の基準料金指数を今年度(平成11年度)中に    適用するためには、基準料金指数の通知を平成11年12月頃を目途とし、    適用開始を平成12年3月頃を目途とすることが適当であると考えられる。   (3) 適用開始初年度の生産性向上見込率(X値)の考え方     料金指数については、NTT再編成の日を基準時として計算することから、    その日以降の値下げは東西地域NTTの努力として考慮し、X値についても    その日からの生産性向上を反映させて計算することが適当であると考えられ    る。     このとき、NTT再編成が行われる日から3月末まで9か月間あるため、    通常年度の生産性向上見込率をX%とした場合には、初年度の生産性向上見    込率を(X)×(9/12)%として算定することになる(参考4.1参照)。 (参考4.1) 上限価格方式適用開始時の基準料金指数のイメージ      
    おわりに  今回の研究会においては、NTT再編成により東西NTT地域会社が発足する平 成11年7月1日を控え、上限価格方式における生産性向上見込率(X値)の算定 方法、料金指数の算出方法、上限価格方式の適用開始時期等について具体的な検討 を行い、一定の結論を得ることができた。  なお、今回の報告書において、今後更に検討を深める必要のある事項がいくつか 残されている。  まず、X値を算定する際の費用予測に必要なNTTの経営効率化の計画の適正性 の検証において、比較対象として郵政省が行うNTTの効率性の具体的計測方法に ついて、更に検討を進める必要がある。  また、近い将来、郵政省はNTTの接続料の算定に長期増分費用方式を導入する 方針としているが、費用検証の段階で長期増分費用方式によって得られた結果を十 分参酌して行うことが必要であり、具体的な参酌方法については、長期増分費用方 式の具体的方式が決定次第、検討することが必要となる。  最後に、上限価格方式は競争が十分進展していないサービスであって、利用者の 利益に及ぼす影響が大きい役務を対象として適用するものであり、郵政省において は、上限価格方式の対象となるサービスについて、今後も地域通信市場のシェアや 料金推移等を参考に競争の進展状況を注視し、その状況に応じて上限価格方式の対 象サービスの範囲等、適宜料金制度の見直しを行うことを要望する。
        新たな料金制度の運用等の在り方に    関する研究会・構成員  座  長 堀 部 政男 中央大学法学部教授  座長代理 醍 醐 聡  東京大学大学院経済学研究科教授       池 畠 恵治 毎日新聞論説委員       宇 賀 克也 東京大学大学院法学政治学研究科教授       加 藤 真代 主婦連合会副会長       二ノ宮 博  前東京都消費生活総合センター所長       関口 博正  神奈川大学経営学部助教授       辻  正次  大阪大学大学院国際公共政策研究科教授       新 美 育文 明治大学法学部教授       舟 田 正之 立教大学法学部教授       山 内 弘隆 一橋大学商学部教授       山 谷 修作 東洋大学経済学部教授   研究会事務局   郵政省電気通信局電気通信事業部業務課      上限価格方式検討ワーキンググループ構成員  座  長 醍 醐 聡  東京大学大学院経済学研究科教授       関口 博正  神奈川大学経営学部助教授       辻  正次  大阪大学大学院国際公共政策研究科教授       山 内 弘隆 一橋大学商学部教授       山 谷 修作 東洋大学経済学部教授
         新たな料金制度の運用等の在り方に関する研究会 開催経緯  (報告書「電気通信分野における新たな料金制度の運用の在り方」発表後)  第11回会合  平成11年5月28日(金)         「上限価格方式検討WG報告書(案)について」  第12回会合  平成11年6月22日(火)         「最終報告書案について」
            上限価格方式検討ワーキンググループ 開催経緯  (報告書「電気通信分野における新たな料金制度の運用の在り方」発表後)  第5回会合  平成10年11月9日(月)         「基準料金指数算定に向けての検討課題」  第6回会合  平成10年11月30日(月)         「消費者物価指数、上限価格方式適用開始時期について」  第7回会合  平成10年12月21日(月)         「料金指数の算定に係る検討課題」  第8回会合  平成11年2月4日(木)         「X値の算定に係る検討課題」  第9回会合  平成11年2月24日(水)         「X値の算定に係る検討課題−需要予測の方法について」  第10回会合  平成11年3月17日(水)         「X値の算定に係る検討課題−費用予測の方法等について」  第11回会合  平成11年3月29日(月)         「報告書骨子案について−第1章、第2章」  第12回会合  平成11年4月5日(月)         「報告書骨子案について−第3章、第4章」  第13回会合  平成11年4月19日(月)         「上限価格方式検討WG報告書案について」  第14回会合  平成11年4月27日(火)         「報告書案参考資料について」
            パブリックコメントの概要と研究会の考え方            ―パブリックコメント提出者―           ・日本電信電話株式会社(NTT)           ・日本テレコム株式会社(JT)            ・大阪メディアポート株式会社(OMP)         パブリックコメント概要及び研究会の考え方