FTTHの実現に向けたネットワーク展望と課題
第2章 FTTH実現に向けたネットワークの展望


4 ネットワーク構築コストの展望


   (1) ネットワーク構成要素のコストダウンの状況

   (2) ネットワーク構築の低コスト化の可能性






第2章 FTTH実現に向けたネットワークの展望

4 ネットワーク構築コストの展望

 光ファイバ網の整備、FTTH化を促進し、高速・広帯域通信サービスの料金の低廉化を実現するためには、ネットワーク構築の低コスト化が必要である。
 本節では光ファイバを用いたネットワークの構築コストの低廉化の可能性について検討した。

(1) ネットワーク構成要素のコストダウンの状況
 これまで比較的高価であると言われてきた、光ファイバケーブルとONUのコストについては、初期の頃に比べ大幅に低廉化している。
 最近の6年間でもそれぞれ約60%、70%程度低下している。今後も量産化等により、更なるコストの低廉化が期待されるところである。

光ファイバの価格の推移 光ファイバの価格の推移

ONUの価格の推移 ONUの価格の推移





(2) ネットワーク構築の低コスト化の可能性
 今後、FTTHを実現していくにあたり、上記光ファイバネットワーク構成要素の一層の低コスト化に加え、加入者系での「PDS方式」の導入、加入者系・中継系における「統計多重効果」の活用、中継系における「高多重化」の実現等による低コスト化が考えられる。現在のSS方式でFTTHを実現するのに比べ、対応可能な伝送速度等ネットワークの能力やサービスの品質には限界があるものの、光ファイバが有する大容量性という特性を活用すれば、メタルケーブルでは実現できない多種多様なサービスの提供が可能となり、しかもネットワーク構築コストの大幅な低廉化を実現できる可能性がある。

 ア 「PDS方式」
 「PDS方式」は、前節で触れたように、加入者回線を一部共用し、収容局と加入者間に受動素子が入るネットワーク方式である。加入者系において、16ないし32分岐のPDSを想定すれば、SLTや光ファイバの共用化と関連機器の量産による低コスト化により、従来のSS方式に比べ、1/10程度のコストダウンの可能性がある。

 イ 「統計多重効果」
 マルチメディア通信、特に、インターネットの利用や動画像通信など情報の量が時間的に大きく変化する場合、ATM方式で多重することにより、合計の通信速度が平滑化され、STM方式に比べ、一定の帯域で、多くの情報を送ることが可能となる。ATM方式がもたらすこのような効果を「統計多重効果」と言い、伝送路の有効活用を可能とする。
 この統計多重効果を活用すれば、一定の通信容量を、複数のユーザで共用が可能となり、コストダウンを図り得る。
 一般にLAN等においては、実際に転送される情報量はLANの最大伝送速度の数%であり、情報の発生もバースト的である。このため、インターネットの利用等を想定すれば、中継系、加入者系で、一定の容量を100人程度で共用することを見込んでも、実利用上は影響は少なく、低コスト化も可能と考えられる。

 ウ 「高多重化」
 「高多重化」とは、1本の光ファイバで伝送される情報の量を大幅に向上させることを言う。中継系において、ネットワーク構成の改善、現在よりも10倍以上の大容量システムの開発、利用、伝送装置等のコストダウンにより、1/3−1/4程度のコストダウンの可能性がある。

 これらにより、ネットワーク全体では、中継系で1/300から1/400、加入者系で、1/1000のコストダウンの可能性がある。中継系と加入者系のネットワーク全体での構成割合を4対1と想定すれば、ネットワーク全体としては、現在のSS方式によるFTTHに比べ、1/400程度のコストダウンの可能性がある。

ネットワーク構築の低コスト化の可能性

利用技術 低コスト化の可能性
中継系 加入者系
PDS方式 1/10
統計多重効果 1/100 1/100
高多重化 1/3〜1/4
合 計 1/300〜1/400 1/1000
構成割合 0.8 0.2
全 体 1/400