番号ポータビリティの実現方式に関する研究会報告書概要



 本研究会では、一般加入電話・ISDN及び着信課金サービスの番号ポータビ

リティの実現方式について検討を行った。検討に当たっては、番号ポータビリテ

ィが事業者間の競争を促進し、利用者の利便性を向上するための重要な要素であ

るとの認識に立ち、できる限り早い時期に番号ポータビリティを導入しようとし

た場合にネットワークの改修規模が非現実的なものとならないことに配慮した。





1 一般加入電話・ISDNの番号ポータビリティの実現方式



 一般加入電話・ISDNの番号ポータビリティの実現方式を特徴付ける要素と

して、次の3つが考えられる。



  [1]番号ポータビリティによる移転先を示す情報を取得する事業者

  [2]取得された情報に基づいて移転先事業者(番号ポータビリティにより

    移転した後に加入者が契約する事業者)への回線設定を起動する事業者

  [3]移転先事業者への回線設定の起動点まで回線を戻す場合の方法(折返

    し回線を設定する方法(折返しの部分は二重に回線を使用)又は回線を

    遡って開放する方法)



これらの3つの要素によって決まる実現方式案を比較した結果、



 ○ 最適回線再設定方式

   移転元事業者が移転先を示す情報を取得し、移転元事業者内で必要に応じ

  て回線を遡って開放し、移転先事業者への回線設定を起動する方式(図I−

  1参照)



が最適と考えられる。

 また、関係事業者間で合意が得られる場合には、この方式を一部変更し、



 ○ 最適回線再設定方式のオプション

   移転元事業者が移転先を示す情報を取得し、前位事業者(発信事業者又は

  中継事業者)まで回線を遡って開放し、前位事業者が移転先事業者への回線

  設定を起動する方式(図I−2参照)



を採用することが適当である。



 さらに、移転先を示す情報は、移転先事業者が、

 ・ 「市外局番+移転先事業者が使用する代表的な市内局番」の形式で移転先

  事業者を識別

 ・ 「市外局番+市内局番」の形式で移転先事業者の加入者交換機を識別

 ・ 「市外局番+市内局番+加入者番号」の形式で移転先事業者の加入者回線

  を識別の中から選択するものを移転元事業者に通知することが適当である。



 なお、全ての発呼について発信事業者(又は中継事業者)において着信先を示

す情報を所得するためにデータベースに問い合わせを行うIN方式については、

改修規模が大きく、早期導入の観点から現実的ではないと考えられるが、上記の

方式が実現されている状態において特定の事業者が実現するとしても問題は生じ

ない。





2 着信課金サービスの番号ポータビリティの実現方式



 着信課金サービスの番号ポータビリティの実現方式を特徴付ける要素として、

次の2つが考えられる。

  [1]移転先を示す情報を持つSCP(サービス制御用データベース)に問

    い合わせを行い、移転先を示す情報を取得する事業者

  [2]移転先の着信課金サービス制御用SCPへ問い合わせを行い、移転先

    を示す情報を取得する事業者



 これらの2つの要素によって決まる実現方式案を比較検討した結果、共通線信

号網により発信事業者から移転元事業者及び移転先事業者のSCPへ問い合わせ

を行う方式(図II−1参照。回線の効率的利用の観点から最適であるが、ネッ

トワークの改修規模が大きく、早期導入の観点から現実的ではない。)に円滑に

移行可能となる次の方式を採用することが適当である。



 ○ 情報取得方法選択方式

   SCPから情報を取得する方法として共通線信号網を介して直接SCPに

  問い合わせを行う方法又はPOIを介した回線接続によりSCPへの問い合

  わせを行う方法のうちのいずれかを選択することとし、移転先を示す情報の

  取得方法については発信事業者と移転元事業者との間での合意により選択し、

  着信先を示す情報の取得方法については発信事業者と移転先事業者との間で

  の合意により選択して、着信先への回線設定を起動する方法(図II−2参

  照)



 また、移転先を示す情報は、移転先事業者が、

 ・ 「0120+移転先事業者が使用する代表的なDEF」の形式で移転先事

   業者を識別

 ・ 「0120+DEF」の形式で移転した契約者の着信先データが格納され

   るSCPを識別

 ・ 「0120+DEF+GHJ」の形式でSCP内での移転した契約者の着

   信先データの格納位置を識別

の中から選択するものを移転元事業者に通知することが適当である。



 なお、移転先を示す情報を持つSCPについては、事業者間で共通に設置する

という考え方もあるが、各事業者から共通線信号網を介して問い合わせを行うこ

とが前提となることから、当初は事業者個別のSCPにより番号ポータビリティ

を実現し、各事業者からの共通線信号網を介した問い合わせが可能となる段階で

事業者共通のSCPの設置の適否について検討を行うこととすることが適当であ

る。





3 今後事業者間で検討を行うことが必要である事項

 今後、番号ポータビリティを早期に導入するため、次の事項について事業者間

で早期に検討(事業者の参加による標準化機関での検討を含む)が行われること

が期待される。

 ・ 実現方式に基づく信号方式の標準化(事業者間精算用データの信号方式を

  含む)

 ・ 利用者からの番号ポータビリティの申込みに対する処理

 ・ 事業者間での番号ポータビリティの運用上の処理







 一般加入電話・ISDNの番号ポータビリティの望ましい実現方法



図I−1 最適回線再設定方式




図I−2 最適回線再設定方式のオプション






  着信課金サービスの番号ポータビリティの望ましい実現方式



図II−1 


図II−2 情報取得方法選択方式




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