第4章 映像表示手法の在り方

 本章においては、映像表示手法の在り方について考察するが、まず、テレビの映 像表示手法について諸外国ではどのような考え方をとっているかについて触れる。 次に、映像が視聴覚機能に与える医学的影響の議論を踏まえた、当検討会における 映像表示の在り方についての考え方をまとめる。  1 諸外国における対応     テレビ映像の視聴覚機能に関する規程を設けているのは、郵政省で調査し    た範囲では、英国のみである。以下、英国における対応の概要について紹介    する。    (1)経 緯       ア ITCコード策定の契機         1993年4月、Golden Wonder社のカップ麺のコマーシャルを視        聴していた者から、不快感を引き起こすという苦情が出たことか         ら、独立テレヒ゛シ゛ョン委員会(Independent Television Commission 以        下「ITC」という。)は番組コード及びガイダンスを策定するこ        ととなった。         このコマーシャルは、背景で多くの白黒パターンが急速に変化し        画面を覆うというもので、コンピュータ・グラフィックスにより制        作されている。         このコマーシャルについて、3人が発作を起こしたほか、25人        から不快であるとの苦情の申し入れがITCにあった。         ITC、放送局及び広告代理店との話し合いの結果、放送局はこ        のコマーシャルの放送を中止した。       イ 策定過程         ITCは、ガイダンスの策定に当たり、PSE(Photosensitive        Epilepsy:光感受性てんかん)の研究の第一人者であるハーディン        グ教授(アストン大学)に本件の調査及び素案の作成を依頼した。         同教授は、700人以上のPSE症状発現者を対象に検査を実施        し、ガイダンスの素案を作成した。    (2)ITC番組コード及びガイダンス ア ITC番組コード(7.3)
○ 点滅画像や反復的パターンの使用に関する規定              
 光の明滅や断続的な光、反復的視覚パターンのうち一定のものについては、P 
 SE症状発現者に対して問題を起こすことがあり得る。           
  要請がある場合には、ITCガイダンスを差し上げます。         
            イ ITCガイダンス
1 光の明滅や断続的な光、反復的視覚パターンのうちの一定のものについては 
 、PSE視聴者に対して問題を起こすことがあり得る。放送事業者はITCと 
 ともに、有害となりうる刺激にさらされるリスクの軽減を目的とするガイドラ 
 インを作成するために、この分野の医学の専門家に意見を聴取した。     
                                     
2 テレビは、もともと明滅する媒体である(これは、典型的な受像機のリフレ 
 ッシュ速度が50Hz(1秒間に50回)であり、また飛越走査の効果が25Hz 
 (1秒間に25回)であるため)。したがって、テレビが原因となってPSE 
 視聴者が発作を起こすリスクを完全に除去することはできないが、不要なリス 
 クを軽減する措置を講じることは可能である。テレビの広告や宣伝、また、さ 
 らに一般的には、実行可能な番組においては、下記の映像技巧は使うべきでは 
 ない。                                 
                                     
3 3Hz(1秒間に3回)を超える速度での光の点滅や急速変化・明滅画像は避 
 けるべきである。たとえこの限度内であっても、この限度に近いケースでは、 
 こうした画像が画面の中心にある場合や、絵の部分の約10パーセント以上を 
 占める場合、輝度が著しく変化する場合は避けるべきである。単に色が変化す 
 る分には問題はない。                          
                                     
4 画面の大部分をきわだった一定のパターンの画像が占めることも避けるべき 
 である。特に縞模様、渦巻き模様、「ダーツボード」模様がそうである。この 
 ような規則的なパターンが動いたり、明滅したりすることは、特に有害であ  
 る。                                  
                                     
5 コンピュータで作成された画像は、高度に精細な場合、テレビ画面の映像  
 で、25Hz(1秒間に25回)のインターラインフリッカーを引き起こすこと 
 があり、注意が必要である。                       

    (参考)1990年放送法(抄)
第7条 (1) 委員会は、次の事項についての手引きを与える基準を作成しかつ随
 時それを見直さなければならず、また、免許サービスの提供において基準が遵 
 守されるようにするために委員会がなし得るすべてのことを実施しなければな 
 らない。                                
 (a)及び(b) (略)                           
 (c) 委員会が基準に含めるのにふさわしいと考える番組についての基準及び実
   施方法に関するその他の事項                     
   (3)ITCガイダンス策定の根拠
      ○ 3Hzを基準とした根拠
       ・ ITCからの依頼を受けてハーディング教授が検討を行い、ガ
        イドラインのドラフトを作成した。
       ・ 700人以上のPSE症状発現者に対してどのような刺激に過
        敏なのか、ストロボによる臨床検査を行った。検査は、通常の照
        明状態でテレビ画面から2.5メートル離れて映像を見せて脳波
        検査を行い反応をみる形で行われた。このうち、感受性の限界を
        正確に確認できた170に関する検査結果は次のとおりである。

                 図省略

      出所)Photosensitive Epilepsy G.F.A.Harding/P.M.Jeavons    
        (New Edition) p87


       ・ テレビの視聴を止めないと光への反応を0パーセントにするこ
        とはできない。
       ・ このデータに基づき、表示手法についても考慮しつつ、リスク
        を最小化する水準を3Hzと決定した。
       ・ ハーディング教授によれば、英国のテレビは50Hzで行われ
        ており、60Hzで行われている日本に比べてPSE視聴者が過
        敏になりやすいと考えられるとのことである。

   (4)ITCガイダンスの性格と審査体制
            ア ITCガイダンスの性格
1) 1990年放送法第7条の規定に基づき、ITCは基準に含めるのにふさわ 
 しいと考える番組についての基準及び実施方法に関するその他の事項を定める 
 ことができる。                             
2) ITC番組コード7.3において、点滅する画像や反復的パターンの使用につい
 て規定するとともに、詳細についてはガイダンスに明記することとした。   
3) ITCガイダンスの規定は、番組コードと同様に取り扱われる。      
       ・ 放送事業者がコード・ガイダンスに違反した場合、ITCは当
        該放送事業者に対し、注意を行い、なお、改善されない場合には
        公式の警告を出す。さらに改善されない場合には罰金を課す。そ
        れでも改善されない場合には放送免許を撤回する(1990年放送法
        第41条ほか)。

      イ 英国における審査体制
        ・ 広告の放送は、放送広告クリアランスセンター(民間団体)
         の審査を受けることが必要である。しかしながら、実際に放送
         された場合でもコードの基準を満たしていない場合がある。
        ・ なお、ハーディング教授は、これまで500本のテープにつ
         いて、コードの基準を満たしているかどうか審査・修正してき
         た。

   (5)最近の動向
     ○ ITCコードで措置されていない注意すべき映像
      ITCコード策定後、白黒パターンでも一定の方向に流れているもの
     は問題ないが、白黒のパターンが逆転するものや全く動かないものの方
     が問題が多いことが明らかになってきている。
       深赤色も問題が多いとの指摘がなされている。

   (6)BBCの基準
      BBC(British Broadcasting Corporation)においても、ハーディン
     グ教授の研究成果を基にしてガイドラインを策定している。



 2 映像の表示手法の考え方
    「ポケットモンスター問題」を契機として映像表示手法についての論点・
   整理すべき課題についての検討会における意見を整理する。

   (1)基準の在り方について
     ア 基準策定の必要性
       「ポケットモンスター問題」はこれまで予期されていなかった映像
      の表示手法に起因した経緯があり、一定の基準を定めることは今後同
      様な問題の発生回避に有効であるだけでなく、我が国の映像ソフトに
      おける表示手法が安全であることを内外に知らしめるという観点から
      も重要であると考えられる。

     イ 策定する主体について
       基準の策定主体については、放送事業者自らが定める方法、行政が
      基準を定める方法等が考えられる。
       表示手法に関する基準の策定を行政が行うことは、可能ではあろう
      が、放送番組に関する問題は、表示手法を通じて表現内容に深く関わ
      る可能性があるものであることから、再び今回のような深刻な被害を
      発生させることのないように十分配慮しながら、基本的には放送事業
      者が基本的枠組みの策定から適正な基準の策定・運用までを自主的に
      行うことが望ましい。行政は広い観点からの基本的な方向性を示すこ
      とが望ましい。

     ウ 数値基準について
       基準については英国の基準のように、何らかの数値基準を定めるこ
      とが視聴者だけでなく放送の現場にとって望ましいと考えられる。
       しかしながら、「ポケットモンスター問題」については以下のよう
      な要素を十分に考慮する必要がある。
      ・ストーリー、視聴環境等いろいろな要素が問題の発生に複雑に絡み
       合っていると考えられること
      ・番組の映像内容を事前に知って視聴する場合と知らずに視聴する場
       合で条件が異なること
      ・ハーディング教授が指摘しているように、テレビは光の明滅により
       映像を表現するため、問題が発生しないようにするためはテレビの視
       聴をやめる以外にないこと。すなわちの発生の可能性をゼロにする基
       準は作れないこと。
      ・問題の発生は光感受性てんかんに限られていないこと
      ・数値基準は本質的に細分化していくおそれがあること
       以上のような点を考慮すると,仮に数値基準を定めるとしても、その
       遵守のみで問題が解決されるものではない。例えば,視聴者が良好な
       視聴環境の確保することが不可欠であるほか、どのような映像が使用
       されているか事前に視聴者に周知することが有益と考えられること、
       数値基準を遵守していても問題が発生することがあり得ることを説明
       していく必要があること等を考慮すべきと考えられる。

     エ 英国の基準の準用の可否
      1) 基準への評価
        現在、テレビ映像表示手法について基準を定めているのは、上述
       のとおり、英国だけである。
        英国の基準はコマーシャルフィルムを契機に策定されたものでは
       あるが、ハーディング教授の実証データに基づいて策定されたもの
       であり、我が国の医学専門家の目からみても基準として妥当なもの
       であるとの評価が得られている。

      2) 閃光以外の基準への評価
        今回は、主に明滅する閃光が問題とされたが、英国の基準におい
       ては閃光以外の非明滅刺激(縞模様、渦巻き模様、同心円模様など
       の規則的なパターン等)についても規定を置いている。
        このような非明滅刺激については、我が国の医学専門家からも、
       発作を起こす要因となるとの評価が得られており、今回について 
       も、明滅刺激と非明滅刺激が組み合わされて発作を起こしたとの意
       見も得られている。

      3) 赤色への対応
        英国の基準には、深い赤色については、現在ITC基準、BBC
       基準のいずれにも規定されてはいないが、現在、基準に含めるかど
       うかについて検討されており、この点についても「注意を要すべき
       事項」との認識はされている。

   (2)その他基準策定のために考慮すべき事項
     ア 表現の自由と基準の関係
       映像の表示手法に関する問題は、映像に関わる安全性の問題である
      一方、表現内容にも深く関わる問題であり、何らかの基準を策定する
      際には「表現の自由」との関係を特に配慮する必要がある。
       表示手法の可能性のあくなき追求は創造的な芸術活動には不可欠で
      あり、基準を策定することによって、制作者に対して萎縮的効果を与
      えないよう、創造性を損なわないように配慮した上で、制作者側にお
      いては映像表示の視聴覚機能に対する影響を十分に自覚して制作する
      ことが必要である。

     イ ストーリーとの関係
       今回の問題の発生原因については、明滅する閃光刺激以外に、内容
      にのめり込み易いストーリーであったことも原因の一つとの意見が出
      されていた。
       この点については、委員からは、ストーリーの内容が深く関わった
      との見解もある。一方、英国のハーディング教授が、日本語を理解し
      ない英国の光感受性てんかんの患者6名に対して、アニメーション番
      組「ポケットモンスター」第38話の問題の場面をカラー版とモノク
      ロ版でスポット的に見せながら脳波検査を行ったところ、カラー版で
      5名の患者に光発作反応が惹起したが、モノクロに反応した者はいな
      かったことから、ストーリーの内容自体はまったく関係が無く、画面
      を過度に凝視させる一因に過ぎず、明滅刺激・非明滅刺激等が原因で
      あるとする強い見解もあった。
       ストーリーの問題は、アで触れた表現の自由に密接に関わる問題で
      あり、専門家の見解が定まらない現段階において一定の方向性を求め
      ることは適当ではなく、今後慎重に研究が進められるべき事項である
      と考える。

     ウ 基準履行の確保
       基準の履行確保方策については、基準の策定主体が行政であるか事
      業者であるか、また基準の性格等により、異なるものと考えられ  
      る。前述のとおり事業者による自主的な基準が望ましいとすれば、 
      自主的に履行確保できるような体制を整えることが望ましいと考え 
      られる。

     エ 警告表示
       番組放送前に視聴者に対して注意喚起を行うことは、今回の問題の
      発生後、一部の放送事業者により行われているところである。このよ
      うな事前表示については、先行事例として好感を持たれているとの委
      員からの指摘もある。


 3 放送番組の放送の方法による映像表示手法の相違
  (1)視聴者が積極的に求める映像視聴について
    放送の中でも、自ら求めて視聴する有料放送と、眼にとびこんでしまう無
   料放送では、映像表示の在り方において差があっても良いという考え方があ
   る。つまり、視聴者が意図的に求めることを前提に制作された映像と、視聴
   者の意図にかかわらず眼に飛び込んでくる映像とを同等に扱えるのか、とい
   う考えである。

   ア 視聴者から見たノンスクランブル放送とスクランブル放送の違い
     ノンスクランブル放送とスクランブル放送は視聴者からのアクセスとい
     う点から、次のような違いがある。
    
 ノンスクランブル放送 
スクランブル放送    
アクセス
方法  
    
    
    
全国世帯のほぼ100%が地 
上はテレビ受信機を所有 
しており、だれでも(NHK 
及び広告放送)視聴する 
ことができる。     
料金を支払うことによって
視聴することができる。 
            
            
            

     なお、スクランブル放送には次の3種類がある。
   ・ CATV及びCSでは、月ごとに視聴料を支払う契約視聴者に対して、
    複数のチャンネルをパッケージとしていつでも視聴可能なサービスを提供
    している(ベーシック・サービス)。
   ・ WOWOWと、CATV及びCS放送の一部のチャンネルでは、チャン
    ネル単位で別途に視聴料金を支払うチャンネルがある(プレミアム・サー
    ビス)。
   ・ CATV及びCS放送の中の一部のチャンネルでは、番組単位で別途に
    視聴料金を支払う個別番組がある(ペイ・パー・ビュー)。
     ただし、一般に視聴者が見たい放送番組を選択するのは、番組の内容如
    何によるのであり、番組の映像がどのような表示方法を採用しているかは
    あまり関係がない。
     したがって、スクランブル放送であっても、その番組がどのような映像
    の表示方法を採用しているかは、番組を見てはじめて気がつくということ
    が多い。しかし、視聴者にその番組がどのような映像の表示方法を採用し
    ているかを事前に知らせることによって、視聴者は当該番組を視聴しない
    ようにすることもできる。

    なお、最近では、アニメ番組等無料放送であっても、視聴者(特に子供)
   の目に入る際には、視聴者側で事前に配慮できるよう視聴環境に関する注意
   事項表示を行っている番組もある。


  (2)大人向け放送番組と子供向け放送番組について
  ア 対応策
    第3章(7)の人間の成長段階における影響の相違でとりあげたように、
   光感受性発作や動揺病の発症頻度が大人より子どもの方が高いことや、視覚
   情報処理において注意を喚起する刺激に対して大人より子どもの方が凝視し
   やすいこと、また脳の発達において成熟完成は青少年期であること、そして
   テレビの表現技法の読み解き能力において子どもは発達段階にあることな 
   ど、様々な見地から子どもと大人の成熟度の違いが説明され、子どもの方が
   大人より影響を受けやすいという報告がなされている。
    そこで、放送する側と放送を視聴する側の双方において、子供の方が大人
   より影響を受けやすいことに対応した方策とし、下記のような点に留意する
   ことが考えられる。

  1) 放送事業者
   (ア)子供の視聴が多い放送番組における映像表示に特に配慮する
   (イ)子供の視聴が多い時間帯の放送(CMを含む)における映像表示に特
   に配慮する
   (ウ)子供の視聴が多い放送番組では、望ましい視聴環境をわかりやすい事
   前表示で伝える

  2) 視聴者
   (ア)子供に自己責任を求めることは困難であり、親が責任をもって視聴環
   境を整える
   (イ)望ましい視聴環境を遵守する
   (ウ)事前表示に注意する
   (エ)親は事前表示の内容を子供に理解させる

  (3)広告における映像表示と一般番組における映像表示
   ア 広告映像における映像効果
     広告映像では、視聴者を引き付けるために、刺激の強い映像もしくは映
    像効果が用いられる傾向がある。現実に英国ITCコード策定の起因とな
    ったPSE発作事例もコマーシャル映像がきっかけであった。
     第2章で取り上げたような映像効果が、広告映像ではどの程度利用されて
    おり、その利用割合が番組と比較してどの程度高いかは明らかではない 
    が、広告映像を通常番組の映像に比較すると刺激の強い映像が用いられや
    すい背景として、次のような事情が挙げられる。

     表 広告映像と通常番組の映像表示にかかわる一般的な違い
     
    広告映像     
   一般番組の映像   
視聴者の画
面への注意
喚起及び持
続    
     
     
     
     
     
     
広告映像は、その目的や放 
送時間の短さ等の理由か  
ら、放送される15秒又は30 
秒間のフル期間にわたって 
視聴者を画面に引き付けよ 
うとする傾向がある。この 
ために、刺激の強い映像や 
映像効果、また画面転換等 
の視覚情報の多い映像が用 
いられる。        
通常番組では、視聴者は広
告映像ほどの高い注意力を
持続させられることは少な
い。一般番組でも視聴者を
画面に引き付けることは目
的とされているものの、通
常は番組の内容で引き付け
ることが目指されている。
            
            
視聴頻度 
     
     
     
     
     
広告映像は、繰り返し放送 
され、しかもスポットCM 
の場合は放送される時間帯 
が一定ではないため、視聴 
者にとっては広告映像の視 
聴頻度が増える。     
通常番組では、放送時間が
一定の時間帯に決められて
おり、視聴者は自分の視聴
したい番組を中心に視聴す
る。          
            
    ※出典:「広告読本」(八巻俊夫・梶山皓著 1995年東洋経済刊)

   イ 広告映像の審査過程
     前述のように刺激的な映像が用いられやすい広告映像が、実際に放送さ
    れるまでには、どのような審査過程があるかという点について整理する。
   1) 広告映像の遵守規定
     放送法上、コマーシャルは通常番組と同様に放送番組としての規律を受
    ける。また、これに加えて、広告一般における遵守規律である各種の法規
    制と自主規制も遵守することが求められる。
     ただし、これらの規律は、いずれもコマーシャルの内容(コンテンツ)に
    関するものであり、サブリミナル手法に関する規制を除いてはコマーシャ
    ルの表示方法に焦点を絞った規制項目は存在しない。

   2) 広告映像の審査体制
     広告映像は、上記の規律に違反していないかについて審査される。審査
    方法としては、消費者に露出される前の事前審査と事後の苦情処理の両面
    からの審査が行われる。
     事前審査については、基本的には各放送局において行われ、まず営業部
    門が審査を行い、一部のものについては更に審査・考査担当部署がコマー
    シャルを通常の番組と同様に審査する。このとき、放送局の審査・考査担
    当部署では、コマーシャルの上記の規律や自局番組放送基準への違反有無
    に加えて、消費者利益の擁護・促進についても審査するかたちとなってい
    る。
     なお、規律への違反有無が明確でなく、放送すべきかどうかについて局
    の審査・考査審査部でも判断を下せないコマーシャルについては、民放連内
    の放送基準審議会で協議し、参考意見としてまとめることがある。
     また、広告制作会社及び広告主の側においてもコマーシャルについての
    事前審査は行われ、主に不正競争防止法などの広告一般における遵守規律
    の面から審査される。
     一方、事後審査については、消費者からコマーシャルに対する苦情が広
    告主や広告媒体に寄せられると、日本広告審査機構(JARO)が事後審
    査を行う。ただし、苦情が放送番組基準と関連するものの場合は、各局内
    部(視聴者センター等の部署)での対応が行われる。

   3) 放送局内の審査部門
     広告映像の事前審査の実態としては、各局の審査・考査部ともおおむね
    10人程度で構成されており、コマーシャルと多数の番組(24時間放送の普
    及に伴って番組数自体も増加)を審査している。



戻る