第6章 提言 − 視聴覚機能に過度に影響を与える映像表示等の回避 −
本検討会においては、放送番組が視聴覚機能に与える影響について検討を重ねて きた。放送番組において表現手法の多様性は最大限確保される必要があるが、テレ ビ番組の表示手法によって子供を中心に多くの視聴者の健康に被害が生じたことは 極めて深刻な問題である。また、厚生省の研究班の報告書において指摘されている とおり、光感受性に起因するものに加えて、動揺病に類する要因によるものや心理 的要因によるものの可能性もあるため、心理的要素も含め、刺激要素と症状の関係 を明らかにする必要があり、その検討結果を踏まえ対応方策を検討する必要があろ う。そこで、今回の症例のうち中心的なものである光感受性に起因するものを主た る対象として、テレビにおける映像表示の在り方について、次のとおり提言する。 また、中間報告ではセルアニメーションについて提言を行ったが、テレビにおけ る映像表示についてはセルアニメーション以外の放送番組についても同様の問題が あり、報告書ではすべての放送番組の映像表示を対象とする。 今後、通信と放送の融合が進展する中で、放送番組が放送以外で二次利用された り、放送番組以外のソフトが放送で二次利用される機会が増加することが考えら れ、映像表示手法の視聴覚機能に及ぼす影響については、放送分野のみならず、映 像分野全体において留意されるべきである。
(1)放送事業者は、放送番組の映像表示に関して視聴者に対する視覚的効果への配 慮に努め、科学的裏付けのあるできるだけ具体的なガイドラインを自主的に策 定し、制作の手法、対象として想定される視聴者層を踏まえて実効性の高い運 用が行われることが適当である。 (2)ガイドラインには、現段階においては少なくとも以下の項目に触れることが望 ましい。 ア 閃光 イ 規則的パターン ウ 赤色 エ 強度(輝度) なお、英国の基準(ITC基準、BBC基準)は、我が国専門家からみても、 類似先例として参考に値すると考えられる。 (3)今後,放送番組が視聴覚機能に与える影響について新たな事項が明らかになっ た場合は、速やかにガイドラインに反映させるための検討を行うことが必要で ある。 (4)視聴環境について、番組前に視聴者の注意喚起を行う措置をとることは、既に 一部で行われているところであるが、視聴者の良好な視聴環境の確保は問題回 避に重要であるので、このための情報提供・啓蒙活動に放送事業者等の関係者 は積極的に取り組み、視聴者の協力を求めていくことが望ましい。また、放送 が視聴覚機能に与える影響について、制作者、放送事業者、視聴者間で正確で 十分な情報の共有が行われるよう、放送事業者等の関係者は努めることが望ま しい。 (5)視聴覚的効果とストーリーへの集中度との関係については、今後研究が深めら れることが望ましい。 (6)この分野の今後の研究に資するため、今回の事案に関して得られた知見を広く 国際的に情報提供していくことが望ましい。