第7章 今後の課題

 今回の検討の中では、放送の視聴覚機能に与える影響について、主に生物医学的 研究成果に基づき分析を行い、放送事業者、番組制作事業者、国民視聴者が採るべ き対応策について整理してきた。しかしながら、これまでのこれらの分野で必ずし も十分に研究成果が蓄積されていないため、今後、立体映像等新たな映像表示手法 が視聴覚機能に与える影響、望ましい視聴環境の科学的研究、映像や音が人体に影 響を及ぼすメカニズム等について研究が更に深められることが必要である。
○ 立体映像等新たな映像表示手法が視聴覚機能に与える影響に関する研究  
   興奮集中度が高まると瞬目(まばたき)の回数が減少することや、臨場感
  や一体感が高まると視覚誘導による自己運動感覚が生じることなどがある。
  新たな映像表示手法が視聴覚機能に与える影響に関して、関係機関がそれぞ
  れの立場から、心理効果を客観的かつ精密に把握する定量評価実験による研
  究が蓄積されることが必要である。                  
                                    
○ 望ましい視聴環境の科学的研究                    
   今後、さらに視聴環境が視聴覚機能に与える影響について配慮を努め、科
  学的裏付けのある具体的なガイドラインを自主的に策定し、検討していく必
  要がある。                             
                                    
○ 映像や音が人体に影響を及ぼすメカニズムに関する研究         
   映像や音が人体に影響を及ぼすメカニズムについてはあまり研究が進んで
  いない。例えば、音声について言えば、過去の研究の多くは「低周波障害」
  に関するものであり、低周波以外の音の生体への影響についての研究成果は
  極めて少ないなど、今後科学的な研究成果が蓄積されることが重要と考えら
  れる。                               


 放送による視聴者の健康被害の可能性をより低減するため、さらに研究を深め、
予防策等十分な対策を講じることが必要である。また、産学官が横断的に会し常に
対応できる体制を確保できるようにし、新たな事実が判明した際には迅速な対応が
行われるようにすることが必要である。




        「放送と視聴覚機能に関する検討会」委員名簿

                         (敬称略・あいうえお順)
あわた まさのり
粟田 政憲     (株)シナジー幾何学代表取締役

うえだ よういち
上田 洋一     日本放送協会審議委員

おおたわら しゅんすけ
大田原 俊輔    岡山大学医学部小児神経科名誉教授

おおひら あきひこ
大平 明彦     東京厚生年金病院眼科部長

おかだ ひろきち
岡田 晋吉     日本民間放送連盟放送基準審議会放送倫理小委員長

すずき つとむ
鈴木 務      日本工業大学電気電子工学科教授

せいの まさかず
清野 昌一     国立療養所静岡東病院名誉院長

たけむら みつひろ
武邑 光裕     京都造形芸術大学メディア美学研究センター所長

にへい けんじ
二瓶 健次     国立小児病院神経科医長

はまだ じゅんいち
濱田 純一     東京大学社会情報研究所所長  (座長代理)

はまの やすき
濱野 保樹     メディア教育開発センター研究開発部ヒューマンインターフ
          ェース研究開発部門助教授

はらしま ひろし
原島 博      東京大学工学部教授      (座長)

まつうら まさと
松浦 雅人     日本大学医学部精神神経科助教授

みつた かずほ
満田  〓     (株)円谷プロダクション専務取締役

みやけ しょうた
三宅 捷太     横浜市保土ヶ谷保健所所長

やまぐち やすお
山口 康男     東映動画(株)取締役 東映アニメーション研究所担当

やました ふみよ 
山下 富美代    立正大学文学部哲学科教授

※厚生省及び文部省がオブザーバー参加

〓はのぎへんに斉という字



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