郵便局ビジョン 2010

は じ め に

 当審議会は、本年2月、「21世紀を展望した郵便局ネットワーク及びそのサービスの在り方並びにその実現のために講ずべき方策」について、郵政大臣より諮問を受け、特別部会を設置して計10回の検討を重ねたほか、地方委員会、専門調査会における討議を得て、この答申を取りまとめた。

 現在、我が国は大きな変革期にあり、高度情報化、少子・高齢化、グローバル化など、どれ一つをとっても、大変なスピードで我々の経済社会構造を変えつつある。また、こうした構造変化は、いわゆる情報弱者や都市圏と地方の格差の拡大など、新たな課題を産み出しつつある。
 このような状況の中で、これまで国民にとって親しみやすい、身近なサービス拠点として大きな信頼を得てきた郵便局も、次の時代に最も適した姿に改革していかねばならないが、その姿を決めていくのは、やはり、毎日の暮らしの中で、郵便局と一番密接に関わりあっている、国民一人ひとりに他ならない。したがって、当審議会では、「国民の立場から見て、現在の郵便局ネットワークが持つポテンシャルを、どう活用することが期待されているのか」という観点から検討を行った。

 この答申が目標とする時期としては、21世紀全体の社会像が反映され、しかも現実的な政策を考えるに相当な期間、ということで2010年とした。したがって、当審議会としては、この2010年においても十分役に立つ答申であるように、長期的な観点から検討を進めた。
 と同時に、現在、急ピッチで検討されている金融制度改革や行財政改革などの課題についても、十分な配慮をしつつ、取りまとめを行った。

 21世紀を展望した郵便局の具体的なサービスの在り方については、本論に譲るとして、当審議会の審議を通じて一貫していたことは、地域社会、国民の期待に沿うためには、郵便局の資源、つまり全国津々浦々に広がるネットワークと地域の身近な窓口をいかに有効に活用するかということであった。
 すなわち国民生活に不可欠な基礎的サービスを全国あまねく公平に提供しつつ新たな社会的ニーズへ対応していく「公共性」、市場との調和を図りつつ効率性を追求する「独立採算」の特性をいかに発揮していくか、いかに特色ある地域社会づくりを地域の人々と一体になって進めていけるか、ということである。
 こうした考え方に沿って国民とともに歩む郵便局づくりのために、地域社会、国民が主体的な担い手となって参画できる郵便局を目指すことが必要ではなかろうか。

 以上の観点から、本答申では、郵便局を情報、安心、交流の拠点と位置づけ、そのために是非とも必要と思われる項目を中心に、「郵便局の改革−7つの提言」として、独立の章を設け、改革の必要性を強調した。
 また、当審議会では、現在の金融制度改革、行財政改革に関わる論点についても活発に議論されたが、その結果は「補論」という形でまとめた。
 さらに、本答申の取りまとめにあたっては、「国民の視点」という趣旨に違わぬよう、可能な限り多くの人に読んでいただける、わかりやすいものとなるよう留意した。

 今後、本答申の趣旨を最大限に尊重した諸施策が、国民の主体的な選択のもとに講じられること、また、郵便局自身が自らのあるべき姿を探る不断の努力を続けることを通じて、郵便局が21世紀においても、国民から親しまれ、信頼される存在であることを願うものである。