電波監理審議会(第829回)議事要旨(平成12年1月24日公表)
1 日 時
平成11年12月10日(金)15:30〜17:53
2 場 所
郵政省審議会会議室(郵政省12階)
3 出席者(敬称略)
(1) 電波監理審議会委員
塩野 宏(会長)、秋山 喜久(会長代理)、岩男 寿美子、辻井 重男
常盤 文克
(2) 電波監理審議会審理官
安成 知文
(3) 幹事
仲矢 徹(審議会室長)
(4) 郵政省
天野電気通信局長、金澤放送行政局長ほか
4 議 事 模 様
(1) 無線局(放送局を除く。)の開設の根本的基準、電波法施行規則、無線設
備規則及び特定無線設備の技術基準適合証明に関する規則の各一部を改正す
る省令案について (諮問第32号)
次のとおり郵政省の説明及び質疑応答があった。
ア 郵政省の説明
IMT-2000(第三世代移動通信システム)は、既存の一般的な携帯電話の200
倍以上となる2Mbps程度のデータ伝送を実現する移動通信システムとして、
世界各国で利用可能となるよう国際標準化が進められてきたものであり、第
二世代システムと呼ばれる現在の携帯電話に続く第三世代の移動通信システ
ムとして、我が国への導入が検討されてきたものである。
本件については、平成10年7月に、同一地域では最大3事業者とすること
等を内容とするIMT−2000の導入に関する基本的考え方を公表し、パブリ
ック・コメントを求めた。この結果、一地域で3以上の申請があった場合の
オークション制の導入には全ての者が反対であったものの、これ以外につい
ては、この基本的考え方を支持する意見がほとんどであった。
本件は、本年7月の電気通信技術審議会答申及びパブリック・コメントの
結果を踏まえ、この第三世代移動通信システムの円滑な導入に必要な規定の
整備を図るため
・第三世代移動通信システムの無線設備の技術基準等の整備
・割当て可能な周波数帯が不足する場合の比較審査の実施に係る規定の整備
等を行おうとするものである。
イ 主な質疑応答
パブリック・コメントに寄せられた意見でオークションの導入に関するこ
とは全て反対意見であったことの理由について質問があり、郵政省から、オ
ークションを行うとその落札金はユーザ料金に転稼される可能性が高いこと、
資金力のある者に周波数が集中する可能性があることがその理由ではないか、
との回答があった。
本件は、電波法により意見の聴取を義務付けられているため、別途、意見の
聴取を行うこととし、その手続を主宰する審理官に安成知文を指名した。
(2) 無線従事者の免許の取消しについて (諮問第33号)
次のとおり郵政省の説明及び質疑応答があった。
ア 郵政省の説明
本件は、平成7年10月期の第2級アマチュア無線技士の無線従事者国家
試験おいて、他人に身代わり受験を依頼し、同試験に合格した結果、不正に
同資格の免許を取得した者について、電波法第79条第1項の規定に基づき、
同人の当該免許を取り消そうとするものである。
イ 主な質疑応答
今回の事例はどのようにして判明したのかとの質問があり、郵政省から、
申告によるものであり、諮問は今回の件で4件目である旨の説明があった。
本件は、電波法により意見の聴取を義務付けられているため、別途、意見の
聴取を行うこととし、その手続を主宰する審理官に安成知文を指名した。
(3) 日本放送協会の定款変更の認可について (諮問第34号)
日本放送協会の定款変更の認可について、次のとおり郵政省の説明があり、
審議の結果、適当である旨、答申した。
・ 郵政省の説明
本件は、放送法の改正によりテレビジョン放送及び超短波放送の定義が改
められ、それぞれの一部として「文字、図形その他の影像又は信号を併せ送
ること」ができることとなったことに伴い、定款の規定を整備するものであ
る。
(4) 日本放送協会所属多重放送局の廃止の認可について (諮問第35号)
日本放送協会所属多重放送局の廃止の認可について、次のとおり郵政省の説
明があり、審議の結果、適当である旨、答申した。
・ 郵政省の説明
本件も諮問第34号と同様に、放送法の改正により多重放送はそれぞれ超
短波放送及びテレビジョン放送の中で実施することとなったため、これに係
る多重局を廃止しようとするものである。
(5) BSデジタル・データ放送の委託放送業務の認定について
(諮問第36号)
BSデジタル・データ放送の委託放送業務の認定について、次のとおり郵政
省の説明及び質疑応答があり、審議の結果、次回の会議において引き続き審議
することとした。
ア 郵政省の説明(28の申請の詳細及び次の説明があった。)
申請期間中に28社(計57スロット)の申請があり、法令に定める審査
基準に基づき審査したところ、全ての社が法令に定める審査基準(絶対審査)
に適合していた。この結果、申請が、認定可能な番組数及び割当て可能なス
ロット数を上回るため、放送法関係審査基準及び認定方針に基づく比較審査
により、優先順位を決定することとした。
比較審査は、各社ごとに次の事項等について、それぞれに掲げる審査のポ
イントからその達成度合等を審査した。
・委託放送業務を維持するに足りる財政的基礎
ポイント:事業開始費用及び最大累積損失に対する資金的手当ての有無
・マスメディア集中排除原則への適合性
ポイント:既存放送事業者等との関連性の程度
・事業計画実施の確実性
ポイント:具体的な番組編成に関する計画の有無、番組素材の保有又は
番組供給協定の有無
・対象とする視聴者層の広狭
ポイント:総合編成か、専門放送か。地域や受信機を特定しているか否
か。
・BSデジタル放送の開始から相当程度遅い時点を予定期日としていないこ
と。
ポイント:放送開始の時期、BSデジタル放送の普及への支障の有無
また、その他考慮事項として、「認定することが放送の普及及び健全な発
達のために適切であること」(審査基準第7(4))の審査は、上記基準のほ
か、関係法令、放送普及基本計画、放送用周波数使用計画によることとされ
ていることから、次の点について、これらへの適合性について審査した。
・NTT及びその子会社等の参入について
特に考慮すべき点はなかった。
・外資性により参入を制限されている法人の子会社の参入について
外国法人等の参入を制限している放送法の趣旨への適合性を考慮した。
・放送普及基本計画への適合性について
エンジニアリング放送について、多様化・高度化する放送需要に応える
ための放送として、評価した。
以上の項目についての各社ごとの審査結果及び申請者の希望(最低)スロ
ット数等を勘案し、総合点の高い次の8事業者の各1番組を認定することが
適当であると判断した。
(日本ビーエス放送企画株式会社、株式会社メディアサーブ、株式会社日本
データ放送(設立中)、株式会社ウェザーニューズ、日本メディアーク株式
会社(設立中)、株式会社デジタル・キャスト・インターナショナル(設立
中)、日本データ放送株式会社(設立中)及び社団法人ハイビジョン推進協
会)
なお、この8事業者8番組を認定した場合、BSデジタル・データ放送全
体として特定の分野に大きな偏りがあるとは認められなかった。
イ 主な質疑応答
・ エンジニアリング放送のように必要不可欠なものは、通常の比較審査と
は別枠とするということは検討しなかったのか、という質問があり、郵政
省から、エンジニアリング放送を別枠にするかどうかは議論したが、審査
基準によれば、今回は、他の申請と同列に扱う以外に方法がなかった、旨
の説明があった。
また、他の委員から、エンジニアリング放送について、今回は、BSデ
ジタル放送の円滑な導入に不可欠なものということでこの整理は理解でき
るが、次回(17日)の審議会において、放送法の「放送」に当たるかど
うか等についての今後の取扱いを伺いたい旨の発言があった。
・ 今回の認定で既存放送事業者に対するマスメディア集中排除原則が重く
適用されているが、仮に、HDTV事業者が22スロットのうち2スロッ
トをデータ放送として利用してもよいのか、という質問があり、郵政省か
ら、平成11年度に放送法が改正されたことにより可能であるとの説明が
あった。
・ 外資により参入を制限されている法人の子会社の参入を比較審査の考慮
対象としたことについて追加説明を求める発言があり、郵政省から、次回
(17日)の審議会において説明したい旨の回答があった。
・ 放送事業へのNTTグループ参入については今回の整理でよいと思うが、
仮に放送事業の方が収益性が高くなった場合、その収益を通信事業に使っ
て内部助成がされるおそれがあり、放送は放送、通信は通信というように
明確な区分会計をしておくべきではないか、との質問があり、郵政省から、
次回(17日)の審議会において、対応を説明したい旨の回答があった。
また、他の委員から、NTT及び子会社の参入について、放送の健全な
発達の観点から特に問題はなかったとの説明は一応分かったが、NTT法
との関係・趣旨についてさらに説明したいことがあれば、次回、再度説明
されたい旨の発言があった。
・ 仮に申請にある平成12年12月の放送開始時期が守られなかった場合
どうなるのか、との質問があり、郵政省から、申請書を受け付ける際、そ
の事業計画等について詳細に確認し、その根拠について納得できたものを
認定審査に当たっての判断の根拠とした、との説明があった。
・ 各審査項目間での配点(ウェートづけをする、しない)の考え方につい
て質問があり、郵政省から、各審査項目間のウェートづけを変えることに
よって結果が変わることも考えられ、恣意的要素を排除する観点から、公
表した審査基準に忠実に従った旨の説明があった。
・ 審査基準が示されているが、これは審査の点数も含め公表するのか、と
の質問があり、郵政省から、審査基準は公表するが、点数までは公表しな
い旨の説明があった。また、審査内容等の公開に関し、仮に異議申立てが
あった場合、これらの審査内容は公にするのか、との質問があり、他の委
員から、仮に不服審査となった場合は、審査内容は出さざるを得ないと思
うが、現時点では、どこまで公表するのかは行政当局の判断となる。今後、
どこまで公開することが適当であるかについて考えておくべきである、と
の意見があった。
・ 今回は、審査基準が非常に重要な問題になっているが、NTTや外国性
の問題は審査基準の策定時点では想定外のことであり、申請受付け後にそ
の取扱いについて苦慮したことは理解できる。この経験を今後の審査基準
に反映し、今後、ケース・バイ・ケースの判断を審査基準に繰り上げると
か、個別の判断の積み重ねを法令化する、ということも検討して欲しい旨
の発言があった。
(文責:電波監理審議会事務局)