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電波監理審議会意見の聴取(第346回)意見書(平成12年7月14日公表)







 マイクロ波帯の周波数の電波を使用するデジタル方式の番組素材中継を行う無線
局の導入及び60GHz帯の周波数の電波を使用する無線システムの導入に関する
電波法施行規則(昭和25年電波監理委員会規則第14号)、無線設備規則(昭和25年
電波監理委員会規則第18号)及び特定無線設備の技術基準適合証明に関する規則(
昭和56年郵政省令第37号)の各一部を改正する省令案について、電波法第99条の12
第1項の規定により、意見の聴取を行った(平成12年6月15日)結果、下記の
とおり意見を決定する。

  平成12年7月14日

                      主任審理官  石 田 義 博


                  記

第1 意 見

  各省令改正案は、それぞれ適当である。


第2 事実及び争点

 1 郵政省の陳述の大要

  (1) マイクロ波帯の周波数の電波を使用するデジタル方式の番組素材中継を行
    う無線局の導入

    放送事業者は、取材現場からスタジオまでニュース映像等の番組素材の映
   像情報を伝送するための番組素材中継回線(FPU/TSL)に、マイクロ
   波帯を中心とする無線伝送路等を使用している。しかしながら、これらの回
   線のほとんどはアナログ方式であり、今後の放送のデジタル化に伴うHDT
   V画像の伝送や回線需要の増加に対応するためには、高い伝送効率をもつ番
   組中継用デジタル回線の導入が必要となっている。
    本案は、本年3月27日に開催された電気通信技術審議会において答申を
   受けたマイクロ波帯のデジタル方式のFPU/TSLの技術的条件の内容に
   沿って関係省令を改正しようとするものである。

  (2) 60GHz帯の周波数の電波を使用する無線システムの導入

    ミリ波帯(周波数30〜300GHz、波長1〜10mmの電波)は、広
   帯域伝送や機器の小型化が可能という特徴を持っている。中でも、60GHz帯
   は、この特徴に加え、酸素による吸収減衰が大きいため、遠くまで到達せず
   干渉が起こりにくいという物理的特性を持っているため、大容量で低コスト
   の多様な無線システムによる利用が期待されている。
    本案は、本年2月28日に開催された電気通信技術審議会において答申を
   受けた60GHz帯の周波数の電波を使用する無線設備の技術的条件の内容に沿
   って関係省令を改正しようとするものである。

 2 改正案の内容等

  (1) マイクロ波帯の周波数の電波を使用するデジタル方式の番組素材中継を行
    う無線局の導入

    無線設備規則(第37条の27の19関係)

    次のとおり技術基準を定める。

   ア 通信方式 単向通信方式

   イ 変調方式 64値直交振幅変調(64QAM)方式、32値直交振幅変
         調(32QAM)方式、16値直交振幅変調(16QAM)方
         式又は4相位相変調(QPSK)方式

   ウ 偏波   FPU:垂直偏波、水平偏波又は円偏波
          TSL:垂直偏波又は水平偏波

  (2) 60GHz帯の周波数の電波を使用する無線システムの導入

   ア 60GHz帯の周波数の電波を使用する免許を要しない無線局を特定小
    電力無 線局に追加

    (ア) 電波法施行規則(第6条第4項関係)

       特定小電力無線局に使用する周波数として59GHzを超え66GHz以下の
      周波数を追加する。

    (イ) 無線設備規則(第9条の4、第14条、第24条、第49条の14,
      別表1号 関係)

       無線設備の筐体の条件、空中線利得等の規格を定める。
       筐体の条件 送信機は、一の筐体に収められており、かつ、容易に
            開けることができないこと。
       空中線利得 47dBi以下

    (ウ) 特定無線設備の技術基準適合証明に関する規則(別表第3号関係)
       特定無線設備の特性試験項目を改める。

   イ 60GHz帯の周波数を使用する陸上移動業務の無線局の導入(高速無
    線回線 システム)

    (ア) 無線設備規則(第7条、第24条、第49条の25の2、別表1号
      関係)

       使用可能な周波数帯、通信方式等の規格を定める。

       周波数帯 54.25GHzを超え59GHz以下

       通信方式 A 基地局:単向通信方式、周波数分割多重方式若しくは
                時分割多重方式を使用する周波数分割複信方式
                若しくは時分割複信方式又は同報通信方式

            B 陸上移動局(Aと通信するもの):周波数分割多元接続
                方式又は時分割多元接続方式を使用する周波数
                分割複信方式又は時分割複信方式

            C 陸上移動局(B以外のもの):単向通信方式又は周波数
                分割複信方式若しくは時分割複信方式

       変調方式  振幅変調、周波数変調若しくは位相変調又はこれらの組
           合せ

       空中線電力 0.1W以下

       偏波    水平偏波又は垂直偏波

    (イ) 特定無線設備の技術基準適合証明に関する規則(第2条、第8条、
      別表第3号 及び別表第5号関係)

       特定無線設備とし、その無線設備の特性試験項目を定める。

   ウ 60GHz帯の周波数を使用する番組素材中継を行う移動業務の無線局
    の導入 (FPU)

       無線設備規則(第7条、第24条、第37条の27の19、別表1
      号関係)

       使用可能な周波数帯、通信方式等の規格を定める。

       周波数帯  54.25GHzを超え59GHz以下

       通信方式  単向通信方式、単信方式、複信方式、半複信方式、同報
           通信方式

       変調方式  振幅変調、周波数変調若しくは位相変調又はこれらの組
           合せ

       空中線電力 0.1W以下

 3 利害関係者の陳述等

   本件省令改正案に関し、利害関係を有する5者が準備書面を提出し、このう
  ち3者が意見の聴取の期日に出席して陳述した。また、意見の聴取の期日に欠
  席した社団法人電気通信事業者協会及び日本放送協会については、電波監理審
  議会が行う審理及び意見の聴取に関する規則第42条において準用する同規則
  第17条の規定により、当該準備書面のとおり陳述したものとみなした。
   5者の省令改正案に対する賛否は、次のとおりである。
    利害関係者      
     賛    否     
 備 考 
(財)テレコムエンジニアリング
   センター        
     賛    成     
               
    
    
(社)電気通信事業者協会   
     賛    成     
 欠 席 
(社)電波産業会       
     賛    成     
    
日本放送協会        
     賛    成     
 欠 席 
(社)日本民間放送連盟    
     賛    成     
    

第3 理由

  本件は、マイクロ波帯の周波数の電波を使用するデジタル方式の番組素材中継
 を行う 無線局の導入、及び60GHz帯の周波数の電波を使用する無線システム
 の導入を図 るため、関係省令の一部改正を行うものである。

 1 マイクロ波帯の周波数の電波を使用するデジタル方式の番組素材中継を行う
  無線局の導入について

   (1) 現在、放送事業者がニュース映像等の番組素材を取材現場からスタジオ
     に伝送す   るための番組素材中継システムは、アナログ方式が中心と
     なっている。
     本事案は、今後の放送のデジタル化に伴うHDTV映像の伝送や回線需
    要の増大に対応する必要性が高まっていることから、これらに対応できる
    デジタル方式の番組素材中継システムの導入を図るため、技術基準に関し
    所要の規定の整備を行うものである。

  (2) 技術基準として具体的には、本年3月の電気通信技術審議会の答申「マ
    イクロ波   帯のデジタル方式のFPU/TSLの技術的条件」を踏ま
    え、周波数の許容偏差、通信方式、変調方式、偏波等の規定を定めるもの
    である。(無線設備規則の一部改正)

  (3) 本事案については、利害関係者はいずれも賛意を表明しており、また、
    本件措置により、HDTV映像等の高速伝送が可能なデジタル番組素材中
    継システムが実現されることで、電波の利用の高度化や周波数の有効利用
    が図られるほか、放送番組素材の充実により放送の発展に資することが期
    待されることから、本案は適当と認められる。

2 60GHz帯の周波数の電波を使用する無線システムの導入について

  (1) 60GHz帯の周波数の電波は、広帯域伝送や機器の小型化が可能な他、
    電波の 到達範囲が小エリアに限られるため、周波数の繰り返し利用が可
    能という特徴があり、家庭・オフィスにおける広帯域映像伝送や超高速無
    線LAN、ビル間を結ぶ高速無線回線システム、小型で広帯域の番組素材
    中継システム等への利用が期待されている。

  (2) 本事案は、60GHz帯の周波数の電波を使用する無線システムの導入を
    図るため、本年2月の電気通信技術審議会の答申「60GHz帯の周波数の
    電波を使用する無線設備の技術的条件」を踏まえて、以下の関係規定の整
    備を行うものである。

   1 60GHz帯の周波数の電波を使用する無線システムの一部(59GHzを
    超え66GHz以下の周波数を使用し、屋内の広帯域映像伝送や高速無線
    LAN、車両間のデータ通信等を行う小規模な無線局)を免許を要しない
    無線局である特定小電力無線局とし、以下の技術基準等の整備を行うこと。

    ・ 特定小電力無線局として、59GHzを超え66GHz以下の周波数を
     使用する無線局を追加すること。(電波法施行規則の一部改正)

    ・ 同システムの無線局の無線設備の技術基準として、周波数の許容偏差、
     混信防止機能、空中線電力の許容偏差、空中線利得等の規定を定めるこ
     と。(無線設備規則の一部改正)

    ・ 同システムの無線局の無線設備を技術基準適合証明の対象設備とし、
     その無線設備の特性試験項目を定めること。(特定無線設備の技術基準
     適合証明に関する規則の一部改正)

   2 60GHz帯の周波数の電波を使用するビル間通信等の高速無線回線シス
    テムの導入を図るため、以下の技術基準等の整備を行うこと。

    ・ 同システムの無線局の無線設備の技術基準として、周波数の許容偏差、
     通信方式、変調方式、空中線電力等の規定を定めること。(無線設備規
     則の一部改正)

    ・ 同システムの無線局の無線設備を技術基準適合証明の対象設備とし、
     その無線設備の特性試験項目を定めること。(特定無線設備の技術基準
     適合証明に関する規則の一部改正)

   3 60GHz帯の周波数の電波を使用する小型で広帯域の番組素材中継を行
    う無線局の導入を図るため、同無線局の無線設備の技術基準として、通信
    方式、変調方式、空中線電力等の規定を定めること。(無線設備規則の一
    部改正)

(3) 本事案については、利害関係者はいずれも賛意を表明しており、また、本件措
  置により、屋内及び屋外の多様な分野において広帯域で小型軽量の通信システ
  ムが導入されるとともに、60GHz帯の新たな周波数資源の開発が促進され
  ることが期待できることから、本案は適当と認められる。



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