審議会のトップへ トップページへ戻る

インデックスへ・ 電波管理審議会

電波監理審議会意見の聴取(第350回)意見書(平成12年10月20日公表)






                意 見 書

 電波法の一部を改正する法律(平成12年法律第109号)の施行に伴う規定の整備
に関する電波法施行備規則(昭和25年電波監理委員会規則第14号)、無線局免許手
続規則(昭和25年電波監理委員会規則第15号)及び無線従事者規則(平成2年郵政
省令第18号)の各一部を改正する省令案について、電波法第99条の12第1項の規定
により、意見の聴取を行った(平成12年9月12日)結果、下記のとおり意見を
決定する。

  平成12年10月20日

                      主任審理官  石 田 義 博

                  記

第1 意 見

  各省令改正案は、それぞれ適当である。

第2 事実及び争点

 1 改正案の内容等
  (1) 電波法施行規則の一部を改正する省令案
    改正電波法第6条第7項により、原則として、電気通信業務用の陸上移動
   局、基地局及び人工衛星局並びに放送局であって、郵政大臣の公示する周波
   数を使用するものの免許申請については、免許申請期間を別途公示し、公募
   することとしている。同時に、こうした公募手続を要しない無線局の免許申
   請については、別途、郵政省令で本手続の適用除外を認めることとしている
   ため、適用除外とする無線局を次のとおり定めること。(第6条の4)
   1 認定を受けた開設計画に従って開設する基地局を通信の相手方とする陸
    上移動局
   2 日本放送協会及び放送大学学園の放送局
   3 受信障害対策中継放送を行う放送局
   4 受託内外放送を行う放送局
   5 多重放送を行う放送局
   6 臨時目的放送を専ら行う放送局
   7 コミュニティ放送局
   8 放送の中継局
   9 電気通信業務を行うことを目的とする無線局が開設されている人工衛星
    に開設する放送局
   10 電気通信業務用の人工衛星局又は放送局であって、再免許の申請に係る
    もの
   11 電気通信業務用の人工衛星局又は放送局であって、再免許申請と競合す
    るもの

  (2) 無線局免許手続規則の一部を改正する省令案
   ア 改正電波法第27条の13第1項の規定による郵政大臣の認定を受けた
    電気通信業務用の基地局に関する開設計画に従って開設する基地局の無線
    局免許の申請に当たっては、無線局事項書の「開設を必要とする理由」の
    記載を省略することができることとすること。(第15条第1項)
   イ 改正電波法第20条第3項の規定により事業譲渡の場合に免許の承継が
    できること(新規の免許の申請は不要)とされたことに伴い、会社分割の
    場合において、完全子会社等に営業の一部を譲渡する場合の事業の譲受人
    による新規の免許申請の特例規定を削ること。(第15条の3の2、別表
    第1の3及び別表第2号の11関係)
  (3) 無線従事者規則の一部を改正する省令案
    政府の障害者施策推進本部の決定を踏まえ、改正電波法第42条により心
   身の障害により無線従事者免許を取り消された場合の規定を整備することと
   しているが、同決定を踏まえたその他の措置として、郵政省令で規定してい
   る無線従事者免許の絶対的欠格事由を相対的欠格事由に改正する等すること。
   (第45条、第46条及び別表第11号関係)
  (4) 施行期日
    改正電波法の施行の日(公布の日(平成12年6月2日)から6月以内で
   政令で定める日)から施行すること。

 2 郵政省の陳述の大要
   本件は、第147回国会において電波法の一部を改正する法律が成立したこ
  とを受けて、省令改正を行うものであり、大きく分けて以下の3点を内容とし
  ている。
   なお、本省令の施行は、改正電波法(事業譲渡に係る改正部分を除く。)は
  平成12年12月1日までに施行する必要があることから、11月中を考えて
  いる。
  (1) 電気通信業務用無線局等の競願処理手続の整備関係
   ア (1(1)の改正案の内容について陳述があり、加えて、適用除外の無線局
    とした理由として、次の表の左欄の無線局について、それぞれ右欄のとお
    りの説明があった。)
適用除外とする無線局
理    由
1 認定を受けた開設計画に
 従って開設する基地局を通
 信の相手方とする陸上移動
 局
 認定を受けた開設計画に従って開設する
基地局が、この手続の適用除外とされてい
るため。
2 日本放送協会及び放送大
 学学園の放送局
右
の
理
由
か
ら
本
手
続
に
な
じ
ま
な
い
 NHK等は放送業務を行うことが義務
づけられていることから、NHK等の放
送局に割り当てられる周波数は予め決め
られており、その周波数は他者に割り当
てられないため。
3 受信障害対策中継を行う
 放送局
 申請者が事実上受信障害の原因者に限
られるため。
4 受託内外放送を行う放送
 局
 現時点では、需要の予測がつかないた
め。
5 多重放送を行う放送
 局
 申請者が事実上特定の者に限られるた
め。
6 臨時目的放送を専ら行う
 放送局
 申請者が特定の者に限られ、又は迅速
な開設が求められるため。
7 コミュニティ放送局
 放送局の性格から、どの地域でも随時
の申請を可能としているため。
8 放送の中継局
 申請者が特定の者に限られるため。
9 電気通信業務を行うこと
 を目的とする無線局が開設
 されている人工衛星に開設
 する放送局
 申請者が事実上特定の者に限られるた
め。
10 電気通信業務用の人工衛
 星局又は放送局であって、
 再免許の申請に係るもの
 既存免許人は多額の投資を行って現に事
業を営んでいることや、視聴者・利用者の
利益の保護の観点も重要であることから、
従来と同様の取り扱いとするもの。
11 電気通信業務用の人工衛
 星局又は放送局であって、
 再免許申請と競合するもの
 10を適用除外としたことから、これと競
合するものも、同様に適用除外としたもの
。
   イ 電波法改正により、電気通信事業用の基地局については、多数の基地局
    全体を総合的に審査するため、基地局の免許申請に先立ち、基地局全体を
    対象とする開設計画の認定制度を導入することとしているが、これに伴い、
    開設計画に基づく個々の無線局の免許申請に当たっては、その開設の必要
    性について開設計画の認定の際に審査していることから、その記載を省略
    することができることとするものである。
  (2) 無線従事者免許に関する規定の合理化関係
    (1(3)の改正案の内容について陳述があった。)
  (3) 事業譲渡の場合の無線局免許の承継関係
    (1(2)イの改正案の内容について陳述があった。)

 3 利害関係者の陳述等
   本件省令改正案に関し、利害関係を有する6者が準備書面を提出し、このう
  ち5者が意見の聴取の期日に出席して陳述した。また、意見の聴取の期日に欠
  席した日本放送協会については、電波監理審議会が行う審理及び意見の聴取に
  関する規則第42条において準用する同規則第17条の規定により、当該準備
  書面のとおり陳述したものとみなした。
   6者の省令改正案に対する賛否は、次のとおりであり、いずれも賛成又は異
  議なしとしている。
利害関係者
賛    否
備 考
(社)電気通信事業者協会
   賛   成   
 
(社)電波産業会
   賛   成   
 
(社)日本アマチュア無線連盟 
   賛   成   
 
日本放送協会
   賛   成   
欠 席
(社)日本民間放送連盟
   異 議 な し
 意見あり 
(財)日本無線協会
   異 議 な し
 
   なお、(社)日本民間放送連盟から「(電波法施行規則第6条の4第11号は)
  放送局の再免許の際に当該免許人と競合する他の免許申請の存在を認めるとい
  う意味であると思うが、放送事業者の経営の安定性や、視聴者に対する放送サ
  ービスの持続・維持を考えれば、当然、当該免許人の再免許を認めるべきもの
  と考える。そうした点から、(今回の改正により)再免許時に当該免許人以外
  の者が新規に免許申請を行えば、容易に競合申請の機会が得られ、新規免許の
  付与が大いに期待できるといった誤った印象を与えるならば誠に不本意な内容
  である。しかし、(公表されている電波監理審議会の議事要旨によれば)審議
  会においても委員から同様の指摘があり、郵政省からこれまでの基本的な考え
  を変更するものではないとの説明があった旨記載されているので、この点を再
  確認する意味で『放送局免許の取扱いに関し、従来と異なるものではないと考
  えるので、特段の異議はない』としたものである」旨の補足説明があった。

第3 理 由

 1 公募手続を要しない無線局(電波法施行規則第6条の4関係)
   本件は、今回の電波法改正で整備された免許申請の公募手続を必要としない
  無線局を改正電波法第6条第7項の規定により定めるというものである。

   改正電波法第6条第7項の規定では、まず、電気通信業務用の陸上移動局(
  一又は二以上の都道府県の区域の全部を含む区域をその移動範囲とするものに
  限る。)及び当該陸上移動局を通信の相手方とする基地局が公募手続が適用さ
  れる無線局となっているが、一方で、今回の電波法改正で特定基地局の開設計
  画認定制度が創設され、改正電波法第27条の13の規定により開設計画を公
  募することとしていることから、認定を受けた開設計画に従って開設される基
  地局が本手続の適用除外となっているので(改正電波法第27条の17)、当
  該基地局を通信の相手方とする陸上移動局についても本手続の適用除外とする
  ものである。認定を受けた開設計画に従って開設される基地局とそれらを通信
  の相手方とする陸上移動局の免許申請を異なる取扱いとすべき理由は認められ
  ないので、当該陸上移動局を本手続の適用除外とすることは適当と認められる。

   次に、電気通信業務用の人工衛星局及び放送局が本手続が適用される無線局
  となっている。これらのうち、日本放送協会又は放送大学学園の放送局、受信
  障害対策中継放送局、受託内外放送を行う放送局、多重放送局、臨時目的放送
  を専ら行う放送局、コミュニティ放送局、放送の中継局並びに電気通信を行う
  ことを目的とする無線局が開設されている人工衛星に開設される放送局につい
  ては、それぞれ本手続になじまないため、適用除外とするものである。これら
  の放送局については、従来から、放送普及基本計画及び放送用周波数使用計画
  において個別の区分を立てて放送系の数の目標を設け、周波数等を定めたり、
  放送系の数の目標を設けず周波数等を個別に定める等により、免許申請に対応
  してきたところである。今回の措置に合わせてこれまでの方針を変える必要は
  認められないので、これらの無線局を本手続の適用除外とすることは適当と認
  められる。

   電気通信業務用の人工衛星局又は放送局の再免許申請及び再免許に競合する
  免許申請については、現に、多額の設備投資により電気通信事業又は放送が行
  われており、多数の加入者及び視聴者が存在していることを考慮に入れるなら
  ば、積極的に公募することは適当でないとする行政側の判断は妥当なものと認
  められる。したがって、電気通信業務用の人工衛星局又は放送局の再免許の申
  請に係るもの及び再免許申請と競合するものを本手続の適用除外とすることは
  適当と認められる。

   利害関係者はすべて賛意を表明している。

   以上のことから、本件電波法施行規則の一部を改正する省令案は適当と認め
  られる。

 2 無線局事項書の記載事項の省略(無線局免許手続規則第15条第1項関係)
   本件は、今回の電波法改正で特定基地局の開設計画認定制度が創設され、改
  正電波法第27条の13第2項の規定により、開設計画に特定基地局の開設を
  必要とする理由が記載されることになった。このため、認定を受けた開設計画
  に従って開設される基地局の無線局事項書の記載事項のうち「開設を必要とす
  る理由」の記載を省略することができるようにするものである。

   申請者の負担の軽減に資するものであり、電波監理上の支障も認められず、
  利害関係者もすべて賛意を表明していることから、本件無線局免許手続規則の
  一部を改正する省令案は適当と認められる。

 3 事業の譲受人による新規の免許申請の特例規定の削除(無線局免許手続規則
  第15 条の3の2、別表第1号の3及び別表第2号の11関係)
   現在、無線局免許手続規則第15条の3の2に、会社分割の場合において、
  完全子会社等に営業の一部を譲渡する場合の事業の譲受人による新規の免許申
  請について簡易な免許手続が規定されているが、改正電波法第20条第3項の
  規定により事業譲渡の場合に免許の承継ができることとされたことに伴い、特
  例規定及び関連する申請書等の様式を削除しようとするものである。

   今回の電波法の改正により、無線局免許手続規則第15条の3の2に定める会
  社分割の場合において、事業の譲受人が新規に免許申請する必要がなくなるの
  で、関連規定を削除することは適当と認められる。

 4 無線従事者免許の絶対的欠格事由を相対的欠格事由に改正すること等(無線
  従事者 規則第45条、第46条及び別表第11号関係)
   以下の3点について改正するものであるが、それぞれについて述べるとおり
  申請者の負担の軽減に資するものであり、かつ、電波監理上も支障はないもの
  と認められ、さらに、利害関係者もすべて賛意を表明している。したがって、
  本件無線従事者規則の一部を改正する省令案は適当と認められる。
  (1) 無線従事者規則第45条第1項第2号に無線従事者免許を与えない者の一
   つとして「精神病者、耳の聞こえない者、口の利けない者又は目の見えない
   者」が規定されている(絶対的欠格事由)が、これをそのような欠格事由に
   該当していても「郵政大臣又は地方電気通信監理局長がその資格の無線従事
   者が行う無線設備の操作に支障がない場合」には免許を与えることができる
   (相対的欠格事由)ようにするものである。

    本件は、「絶対的欠格事由は相対的欠格事由に改正すること」とする政府
   の障害者施策推進本部の決定を踏まえた措置であり、また、無線設備の操作
   に支障がない場合に操作を認めるわけであるから、電波監理上も支障はない
   ものと認められる。

  (2) 無線従事者規則第45条第1項第3号に無線従事者免許を与えない者の一
   つとして「前号に掲げる者のほか、心身に著しい欠陥のある者であって、郵
   政大臣又は地方電気通信監理局長がその資格の無線従事者に適しないと認め
   るもの」が規定されているが、「必要性が薄いものは廃止すること」とする
   政府の障害者施策推進本部の決定を踏まえて当該規定を削除するものである。

    電波法第42条第3号は、無線従事者免許を与えないことができる者の一
   つとして「著しく心身に欠陥があって無線従事者たるに適しない者」を規定
   しているが、これまでの状況からみて、この「著しく心身に欠陥がある者」
   としては無線従事者規則第45条第1項第2号に規定する「精神病者、耳の
   聞こえない者、口の利けない者又は目の見えない者」以外は想定できないこ
   とから、明確な規定のみを残すものであり、本件削除は適当と認められる。

  (3) 無線従事者規則第46条に無線従事者の免許申請に添付しなければならな
   い書類が規定されているが、無線従事者免許を取り消された者が、欠格事由
   に該当しなくなったときに再度申請する場合には、一部の書類について提出
   を要しないこととするものである。

    提出を不要とされる氏名及び生年月日を証する書類(氏名に変更があった
   場合を除く。)及び養成課程の修了証明書等は、郵政省において、最初の免
   許申請の際に確認したことを記録しているため、提出を不要にしても電波監
   理上支障がなく、かつ、申請者の負担の軽減に資することから適当と認めら
   れる。


(参 考)
  本件意見の聴取の官報公告(平成12年7月28日)に際し、規制の設定又は
 改廃に係る意見提出手続(平成11年3月23日閣議決定)に基づき、一般から
 の意見を募集したところ、今回の無線従事者規則の改正に直接影響を与える趣旨
 のものではないが、これに応じた意見の提出が1件あった。
  意見は、「一部の無線従事者免許の申請の際に添付を要することとされている
 医師の診断書を不要とされたい」というものであり、これに対し、郵政省から「
 今回の省令改正では『絶対的欠格事由』を『相対的欠格事由』に改めるが、欠格
 事由をなくすものではない。現在、診断書の提出を義務付けている従事者資格は、
 人命の安全、財産の保護を図る、通信、放送のサービスを提供する等、社会的に
 重要な役割を担う無線局を操作するために必要とされているものであり、今後も、
 欠格事由に該当するか否かを審査する上で必要な診断書の提出を求めることとし
 ている」旨の回答があった。



トップへ