電波監理審議会(第812回)議事要旨(平成10年7月21日公表)
1 日時
平成10年6月26日(金)16:00〜17:20
2 場所
郵政省審議会会議室(郵政省12階)
3 出席者(敬称略)
(1) 電波監理審議会委員
塩野 宏(会長)、岩男 寿美子、辻井 重男
(2) 電波監理審議会審理官
小山 隆生
(3) 幹事
小野寺 敦子(審議会室長)
(4) 郵政省
電気通信局長及び放送行政局長ほか
4 議題
(1) 議決事項
ア 株式会社神奈川放送(発起人代表 松尾昭弥)から提起された同社所属超
短波放送局(超短波放送局:横浜)の免許拒否処分に関する異議申立て審理
(昭49.3.2付議)等5件の審理を主宰する審理官の指名について
イ 無線局(放送局を除く。)の開設の根本的基準の一部を改正する省令案
(平10.5.1諮問第20号)等2件の意見の聴取の手続を主宰する審理官の指名
について
(2) 諮問事項
ア 電波法施行規則及び無線設備規則の各一部を改正する省令案について
イ 電波法施行規則の一部を改正する省令案について
ウ 日本イリジウム株式会社所属特定無線局の包括免許について
エ エヌ・ティ・ティ移動通信網株式会社及び関西セルラー電話株式会社所属
特定無線局の包括免許について
オ 日本放送協会及び日本衛星放送株式会社等7社に係る高精細度テレビジョ
ン放送等を行う実用化試験局の再免許について
(3) 報告事項
ア 「地上デジタル放送懇談会」中間報告について
イ 日本放送協会平成9年度決算及び業務の概要について
ウ キー局5社の平成9年度決算速報について
エ 株式会社ジャパンキャピタルテレビの異議申立棄却決定取消請求訴訟につ
いて
(4) その他
放送局免許申請に係るコストについて
5 議事模様
(1) 電波法施行規則及び無線設備規則の各一部を改正する省令案について
電気通信分野における規制の合理化のための関係法律の整備等に関する法律
(平成10年法律第58号。10.5.8公布。) による電波法の一部改正(免許不要局
の要件の緩和)に伴う電波法施行規則及び無線設備規則の各一部を改正する省
令案について、郵政省から説明があった。
・ 近年の無線通信技術及び電波の利用形態の多様化に伴い、衝突防止用自動
車レーダー及び有料道路自動料金収受システム等多様な無線通信システムの
実用化が予定されている。
第142回国会においては、電波法第4条第3号に規定する免許を要しな
い無線局(以下「小電力無線局」という。)について、その要件の一部を緩
和することとされた。この要件緩和に伴い、免許不要局の要件の一部である
混信防止機能に関する規定を追加し、呼出符号の表示義務を廃止し、小電力
無線局が有すべき混信防止機能を規定すること等各規定を整備しようとする
ものである。
また、申請者の負担軽減を図るため、呼出符号等指定申請書の型式及び名
称の記載を省略するものである。
主な質疑応答は以下のとおり。
・ 小電力無線局が有すべき混信防止機能に関し、PHSシステムと有料道
路自動料金収受システムをなぜ同じ規定(施行規則第6条の2第2号)の
対象とするかということについて質問があり、PHSは識別符号を電気通
信事業者が管理しており、また、有料道路自動料金収受システムは日本道
路公団等が管理することになるが、同規定は識別符号の管理者を「電気通
信事業者その他郵政大臣が別に告示する者」としており、電気通信事業者
に限定しているものでない旨、郵政省から説明があった。
本件は意見の聴取を行う必要があるため、意見の聴取を行うこととし、その
手続を主宰する審理官を指名した。
(2) 電波法施行規則の一部を改正する省令案について
電波利用における人体の防護に関し、その安全性確保の観点から、電波の強
度が定められた値を超える場所に取扱者以外の者が容易に出入りできないよう
に措置することを義務づけること等について規定の整備をしようとする無線設
備規則の一部を改正する省令案について、郵政省から説明があった。
・ 電波利用における人体の防護(以下「電波防護」という。)については、
平成2年の電気通信技術審議会答申「電波利用における人体の防護指針」を
踏まえ、社団法人電波産業会が「電波防護標準規格」を定め、無線局の建
設・運用における民間のガイドラインとして自主的に活用しているところで
ある。
昨今の携帯電話及びPHSの普及等により、無線設備から発射される電波
が人体に好ましくない影響を及ぼすのではないかという懸念が提起されるよ
うになってきたところである。
本年3月の「電波防護指針の運用の在り方に関する調査研究会」におい
て、無線局の整備、運用において守るべき基準が明示され、その遵守を確保
するため、従来の民間ガイドライン方式から強制規格へ移行するのが望まし
い旨の報告を受けたところである。
・ このような状況を踏まえ、一般の人々を保護する観点から無線設備から発
射される電波の強度が定められた値を超える場所に、取扱者以外の者が容易
に出入りできないように施設を整備することを義務づけようとするものであ
る。
主な質疑応答は以下のとおり。
・ 電波による人体に対する好ましくない影響について周知は必要である
が、電波の好ましくない影響について、いたずらに国民の不安を煽ること
のないよう、今後意見聴取、改正省令の施行と進む中で、国民への周知の
方法について細心の注意と努力をしてほしい旨の意見があった。
本件は意見の聴取を行う必要があるため、意見の聴取を行うこととし、その
手続を主宰する審理官を指名した。
(3) 日本イリジウム株式会社所属特定無線局の包括免許について
日本イリジウム株式会社から申請のあった非静止衛星に開設する人工衛星局
の中継により携帯移動衛星通信を行う携帯移動地球局(イリジウム電話サービ
ス用端末)の包括免許について、郵政省から説明があった。
・ 本年9月にサービス開始が予定されている低軌道周回衛星を使用して、世
界的規模で衛星携帯電話サービスを提供するイリジウムシステムについて、
その携帯端末用の無線局として携帯移動地球局の包括免許の申請が提出され
たものである。
・ 審査した結果、電波法第27条の4各号の規定に適合していると認められ
ることから、電波法第27条の5の規定により包括免許を付与しようとする
ものである。
主な質疑応答は以下のとおり。
・ イリジウムシステムについては、昨年12月の電波監理審議会において
人工衛星局と我が国のネットワークとの接続等を行う携帯基地地球局の予
備免許付与に係る答申をしているが、今回の携帯移動地球局に係る包括免
許付与で一連のイリジウムシステムに関する諮問は最後かとの質問があり、
郵政省から、電波監理審議会への諮問は要しないが、携帯基地地球局につ
いては、工事落成後の検査を行い、本免許の手続がある旨、説明があった。
審議の結果、諮問のとおり免許することは適当である旨、答申した。
(4) エヌ・ティ・ティ移動通信網株式会社及び関西セルラー電話株式会社所属特
定無線局の包括免許について
エヌ・ティ・ティ移動通信網株式会社及び関西セルラー電話株式会社から申
請のあった陸上移動無線データ通信を行う特定無線局(テレターミナル端末)
の包括免許について、郵政省から説明があった。
・ テレターミナルは、外勤中のセールスマンなどが持つ携帯機や自動車に設
置した移動端末、自動販売機等に設置される各種センサーと各ユーザのオフ
ィスやセンターコンピュータを結び、効率的なデータ通信を行うシテスムで
ある。
申請者は、テレターミナル事業者から営業権の譲渡を受けることに伴い、
譲渡後も引き続きサービスを提供していくために本無線局の包括免許を申請
してきたものである。
・ 審査した結果、電波法第27条の4各号の規定に適合していると認められ
ることから、電波法第27条の5の規定により包括免許を付与しようとする
ものである。
主な質疑応答は以下のとおり。
・ 本件は、営業譲渡という形で売買が行われることが想定され、手続とし
て無線局の廃止、新免ということがよいのかどうか、今後制度論として検
討が必要ではないか、との指摘があった。
審議の結果、諮問のとおり免許することは適当である旨、答申した。
(5) 日本放送協会及び日本衛星放送株式会社等7社に係る高精細度テレビジョン
放送等を行う実用化試験局の再免許について
日本放送協会及び日本衛星放送株式会社等7社に係る高精細度テレビジョン
放送等を行う実用化試験局の再免許について、郵政省から説明があった。
・ この再免許申請は、平成10年7月22日で実用化試験局の免許期限の終了す
る高精細度テレビジョン放送等を行う無線局について、その実用化に向けた
各種試験を引き続き実施するため、日本放送協会及び日本衛星放送株式会社
等7社から申請のあったものである。
審議の結果、諮問のとおり免許することは適当である旨、答申した。
(6) 報告事項
ア「地上デジタル放送懇談会」中間報告について
郵政省から「地上デジタル放送懇談会」中間報告について説明があった。
・ 中間報告においては、情報通信分野におけるデジタル技術の急速な進展と
放送メディアへの影響を概観し、地上放送のデジタル化の背景とその意義を
記述するとともに、地上デジタル放送の導入の道筋、デジタル放送用放送端
末のイメージや視聴者の視点からの円滑な移行、支援措置及び放送制度の在
り方等が盛り込まれている
・ 特に、地上デジタル放送の導入の道筋として、テレビジョン放送について
は、アナログ放送からデジタル放送への早期全面移行を基本的考え方として、
関東広域圏で2000年からの試験放送の開始を期待するなど導入スケジ
ュールを可能な限り明確化している。一方、音声放送については、アナログ
放送を存続した上で、デジタル音声放送を新規サービスとして2000年か
ら試験放送を含む放送が開始されることを期待するなどとしている。
イ 日本放送協会平成9年度決算及び業務の概要について
郵政省から、日本放送協会平成9年度決算及び業務の概要について報告が
あった。
・ 決算の概要については、予算に対し、収入は特別収入の増などにより19
億円上回り、支出は経費節減などにより73億円下回った結果、93億円の
黒字決算になった。これで8年連続の黒字決算となった。なお、繰越金は2
億円積み増しされ、456億円が10年度以降に引き継がれた。
・ 業務の概要については総合テレビの24時間放送化、衛星第二放送におけ
る字幕放送の開始、欧州向け映像国際放送の放送時間の拡大、長野冬季パラ
リンピックの放送の編成強化、営業活動の効率化などである。
主な質疑応答は以下のとおり。
・ NHKの繰越金の使い道について、放送のデジタル化などの国民受信者
全体の利益に使うことも考えられないかとの意見があり、郵政省からNH
K予算に付する郵政大臣意見等の検討の際に反映させていきたい旨、説明
があった。
ウ キー局5社の平成9年度決算速報について
郵政省から、キー局5社の平成9年度決算速報について、各局とも過去最
高の収益があった等の報告があった。
主な質疑応答は以下のとおり。
日本経済全般が不況の中で放送会社の売上げが伸びているが、広告費全体
ではどうなのかという質問があり、郵政省から次回審議会にローカル局の決
算状況と合わせて報告する旨の説明があった。
エ 株式会社ジャパンキャピタルテレビの異議申立棄却決定取消請求訴訟につ
いて
郵政省から、東京高裁で争われていた株式会社ジャパンキャピタルテレビ
の異議申立棄却決定取消請求について、原告の主張が退けられ国側の主張が
認められ、また、原告から最高裁への上告がなく判決が確定した旨の報告が
あった。
主な質疑応答は以下のとおり。
一本化行政指導は違法ではないとの判決であるが、一本化調整を積極的に
行っても良いということではないので取り違わないよう、更に手続の透明性
を確保して進めていただきたいとの意見があり、郵政省から最近は行ってい
ない旨の説明があった。
(7) その他
放送局免許申請に係るコストについて
郵政省から、放送局免許申請に係るコストについて説明があった。
放送局の免許申請手数料は、テレビジョン放送局、多重放送をする無線局、
その他の放送局の種別ごと、さらに新規免許は空中線電力の規模の区分ごと、
再免許は空中線電力の規模によらずに定められている。NHKについては、平
成10年度予算において免許申請関係予算として11,325局を対象として
免許手数料0.5億円、申請書刷成費0.6億円が計上されており、民間地上
放送事業者については親局1局、中継局80局のモデルケースで新規申請の場
合、約360万円、再免許申請の場合、約42万円となる。
(文責:電波監理審議会事務局 速報につき事後修正の可能性あり)