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電波監理審議会意見の聴取(第332回)意見書(平成11年7月26日公表)







 2.4GHz帯の周波数の電波を使用する小電力データ通信システムの無線局の無
線設備の技術的条件を定めること等に係る電波法施行規則(昭和25年電波監理委員
会規則第14号)、無線設備規則(昭和25年電波監理委員会規則第18号)及び特定無
線設備の技術基準適合証明に関する規則(昭和56年郵政省令第37号)の各一部を改
正する省令案について、電波法第99条の12第1項の規定により、意見の聴取を
行った(平成11年7月26日)結果、下記のとおり意見を決定する。


  平成11年9月17日

                      主任審理官  安 成 知 文


                   記


第1 意 見

   各省令改正案は、それぞれ適当である。


第2 事実及び争点

 1 郵政省の陳述の大要
   2.4GHz帯の周波数の電波を使用する小電力データ通信システムの無線
  局は、主にオフィス、工場の無線LANなどに利用されているが、最近のパー
  ソナルコンピュータの高機能化に伴い、無線LANシステムの利用形態につい
  ても一層の高機能化、多様化が期待されるとともに、周波数需要も増大してお
  り、現行の無線LANシステムの伝送速度の一層の高速化やパソコンとパソコ
  ン周辺機器との接続システムの導入などが望まれている。
   本件は、こうした中、平成11年3月の電気通信技術審議会答申を踏まえ、
  新たな小電力データ通信システムの導入に必要な技術基準等について規定を整
  備しようとするものである。

 2 改正案等の内容
  (1) 電波法施行規則の一部を改正する省令案
    ア 改正の内容
      小電力データ通信システムの無線局に使用する周波数として、2,40
     0MHz以上2,483.5MHz以下の周波数を追加すること。
     (第6条第4項第4号関係)
    イ 施行期日
      公布の日から施行すること。
  (2) 無線設備規則の一部を改正する省令案
    ア 改正の内容
    (ア) 2,400MHz以上2,483.5MHz以下の周波数の電波を使
      用する小電力データ通信システムの無線局の無線設備の技術的条件を定
      めること。(第7条、第49条の20、別表第1号及び別表第2号関係)
    (イ) その他規定の整備を行うこと。
    イ 施行期日
      公布の日から施行すること。
  (3) 特定無線設備の技術基準適合証明に関する規則の一部を改正する省令案
    ア 改正の内容
      2,400MHz以上2,483.5MHz以下の周波数の電波を使用
     する小電力データ通信システムの無線局に使用するための無線設備を特定
     無線設備とし、その無線設備の特性試験項目を定めること。(第2条、第
     8条、別表第3号及び別表第5号関係)
    イ 施行期日
      公布の日から施行すること。

 3 利害関係者の陳述等
   本件省令改正案に関し、利害関係を有する4者が準備書面を提出し、意見の
  聴取の期日に出席して陳述した。
   4者の省令改正案に対する賛否は、次のとおりである。
       利害関係者
      賛    否
備 考
(財)テレコムエンジニアリングセンター
     賛    成
 
(社)電気通信事業者協会
     賛    成
 
(社)電波産業会
     賛    成
 
筒井多圭志(帝京大学講師)
賛否表明せず(要望及び指摘あり)
 
   なお、筒井多圭志氏からは、研究者であり省令案については賛否を表明する
  立場にないとの断りがあった上で、要望及び事実関係の指摘があった。この概
  要及びこれに対する郵政省の回答の概要は、別添のとおりである。


第3 理 由

 1 本事案は、オフィスや工場の無線LANなどに使用されている2.4GHz
  帯の周波数を使用する小電力データ通信システムの無線局について、最近のパ
  ーソナルコンピュータ等の情報機器の普及や高機能化に伴い一層の高速化、高
  機能化、多様化が期待されていることから、現行の小電力データ通信システム
  を更に高度化した「2,400MHz以上2,483.5MHz以下の周波数
  の電波を使用する小電力データ通信システム」の導入に向け、技術基準等の関
  係規定を整備しようとするものである。
   本システムは、従来システムと比較して、以下のような利点・特徴がある。
  1 伝送速度が従来の2Mb/s程度から10Mb/s以上に高速化すること
   で、画像伝送や高速インターネットアクセスなどのマルチメディア伝送への
   対応が可能になる。
  2 周波数の割当てを現行の最大26MHzから最大83.5MHz幅に拡大
   することにより、高速化が図られるほか、現在の単一チャンネル利用から複
   数チャンネルの利用が可能となり、今後の通信需要の増大に対応できる。
  3 諸外国の周波数割当てと整合性がとれるため、無線ホームリンクやパソコ
   ン周辺機器の接続システムなどの通信機器の貿易が促進される。
  4 従来の周波数拡散方式以外の変調方式の利用も可能とすることで、利用者
   の選択の幅が広がる。

 2 本事案については、(財)テレコムエンジニアリングセンター、(社)電気
  通信事業者協会及び(社)電波産業会からいずれも賛成の意見が述べられた。
   また、筒井多圭志氏からは、事案に対する意見としてではなく要望及び指摘
  事項として、
  「一連の技術基準自体が利害関係者を交えることなく行われて、答申が出され
   るような意思決定プロセス自体が問題である」
  「2.4GHzの無線機器によるインターネット接続を現実的なものとするた
   めに電力規制を緩和して、米国と同様の値にすべきである」
  「2.4GHzの規制そのものはFCCパート15ルールと整合性をもたせる
   ものに変更するべきである」
  「5GHz帯についても早期に割り当てるべきである。また、本システムと周
   波数帯域のぶつかるLEOとの調整を早期に行うべきである」
  等の旨、述べられた。
   これらの要望・指摘事項に対し、郵政省から、
  「電気通信技術審議会の審議には、国内の製造事業者、欧米の製造事業者の代
   表、LEO(低軌道周回衛星)を用いる衛星事業者等が参加し、また、一般
   から広く意見聴取する手続をとった」
  「電力について、欧米の規制も参考にすると同時に、我が国の電波利用の現状
   と動向を踏まえ、同一周波数帯を用いる他の無線局に有害な混信を与えるこ
   となく周波数の共用が可能となる空中線電力の上限を定めたものである」
  「FCCルールとの関係について、電気通信技術審議会における無線緒元の検
   討では、国際的調和を図る方針のもとに、使用周波数、拡散率等について国
   際的調和を図った」
  「5GHz帯を利用する広帯域移動アクセスシステムについては電気通信技術
   審議会で検討中であり、また、LEOとの調整に関しては、LEOの発展状
   況を見ながら検討する予定である」
  等の旨、回答があった。

 3 本事案については、利害関係者3者が賛意を表明しており、また、筒井氏か
  らの要望及び指摘事項に関する郵政省からの回答には合理性があると認められ
  ること、さらに、本件措置により無線LANシステムの一層の高速化、高機能
  化、多様化が可能となり、我が国の情報通信の高度化、国際化に資すると考え
  られることから、本件措置は適当と認められる。


                                  別 添
  筒井 多圭志 氏の要望等の概要
     郵政省の回答の概要
1 一部の関係者のみにより行われている
 技術基準策定プロセス自体が問題である
 (内外の事業者、製造事業者等の関係者
 の意見聴取すらされていない。)





2 2.4GHzの無線機器によるインターネッ
 ト接続を現実的なものとするために、そ
 の電力規制を米国と同様にEIRP(等価等
 方輻射電力)において1W以下、アンテ
 ナ利得についてはアンテナ利得の1/3の
 EIRPの増加を許すべき。その場合のRFID
 (移動体識別装置)との混信については、
 専用に1MHz程度を割り当てれば事足りる
 。また、RFIDの場合、IDが分かれば事
 足りるため802.11(IEEE(米国電気
 電子技術者協会)の無線LANに関する
 格規)のFH(周波数ホッピング方式)と
 混信しても周波数がホッピングしてよそ
 へ行けば通信は即座に回復する。


3 新しい電波規制においても、意味のな
 い電力規制が緩和されないため、日本以
 外では全世界で普及する802.11を使用し
 て 、学校を無線LANでインターネッ
 トに接続したり、インターネット接続に
 802.11を使用するなどの公共の福祉を増
 進する目的には、十分な通信品位では通
 信を提供できない。そのため、国益と電
 波利用者の利益を大きく損ねている。
4 2.4GHzにおける電力規制(HF方式並
 びにDS方式(直接拡散方式)の10mW/M
 Hzとする規制)について、郵政省内、関
 係者間で解釈が異なる。電力規制が拡散
 帯域にかかるのか、各1MHzにおいて規
 制されるのか明文化すべき。
5 2.4GHzの規制そのものはFCC(米国
 連邦通信委員会)パート15ルールと整
 合性をもたせるものに変更すべき。



6 5GHz帯も早期に割り当てるべき(米
 国では既に機器が販売されており、この
 ような外国製品を日本で使用できないの
 は大変残念)。
7 日本の現行割当て帯域はLEO(注:
 低軌道周回衛星を利用する衛星移動通信
 サービス。ここではグローバルスターが
 該当。)の使用する帯域とぶつかってい
 る。このような混信を放置したまま国際
 的調整が日本だけなされていない。
 2.4GHzの特定小電力の根拠のない規制と
 ともに深刻な国際摩擦を派生するおそれ
 があり、早期に調整すべき。
8 2.4GHzを使用するOFDM(直交周波
 数分割多重)方式について、日本の新し
 い規制では使用できない(外国では近々
 量産体制に入るという状況にある)。








1 本技術的条件については、電気通信技
 術審議会において、国内の製造事業者、
 欧米の製造事業者団体、同一周波数帯を
 使用する衛星事業者等の参加を得て審議
 が行われており、誤解である。また、同
 審議会の審議過程において、一般からの
 意見を募集するため、意見の聴取を実施
 する旨を官報により公告した(ただし、
 意見の応募はなかった。)。
2 空中線電力については、電気通信技術
 審議会における審議において、欧米の規
 制も参考にしつつ、我が国の電波利用の
 現状と動向を踏まえた上で周波数の共用
 モデルを作成して検討した結果、他に有
 害な干渉を与えることなく周波数の共用
 が可能と考えられる上限値を定めたとこ
 ろ(無線局の密度の高い日本においては
 、必ずしも米国と同じ規制にすることは
 好ましいものではない。)。
  なお、RFIDとの干渉については、製造
 業者や利用者団体との検討及びシールド
 ルームにおける実験結果から、一定の強
 度の電波により干渉を受けると誤動作等
 の障害が生じる可能性のあることが確認
 されている。
3 2と同じ。








4 帯域内のすべての各1MHzにおいて10
 mW以下である(電気通信技術審議会答申
 を参考のこと)。



5 電気通信技術審議会の検討においても
 国際的な調和は大きな方針であり、使用
 周波数や拡散率など可能な限り国際的な
 動向と調和が図られている。ただし、空
 中線電力については前述(2参照)のと
 おり。
6 5GHz帯を利用する無線LAN(広帯
 域移動アクセスシステム)については、
 現在、電気通信技術審議会において検討
 されているところ。
7 今回の改正に係るシステムは、周波数
 が異なる。
  これまでのシステムについてはLEO
 の周波数帯と重なっているが、この取扱
 いについては電気通信技術審議会答申に
 おいても、今後のLEOの普及状況を見
 た上で別途検討すべきとされており、今
 後、LEOの発展状況を見ながら検討す
 ることとしているところ。
8 OFDM方式については、現在、5G
 Hz帯を利用する広帯域移動アクセスシス
 テムや 地上デジタルテレビジョン放送
 方式において 検討が進められているこ
 とから、電気通信技術審議会の検討にお
 いても、これらの検討結果とOFDM方
 式のシステムの導入要望の動向を踏まえ
 て今後検討することが適当とされている
 ところ。
  なお、IEEE.802.11委員会におい
 ても現在検討中と聞いている。





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