![]() ![]() ![]() |
電波監理審議会意見の聴取(第335回)意見書(平成11年10月22日公表)
放送法の一部を改正する法律(平成11年法律第58号)の施行に伴う関係郵政省令 の一部改正案等について、電波法第99条の12第1項及び第2項並びに放送法第 53の11第1項の規定により、意見の聴取を行った(平成11年9月28日)結果、 下記のとおり意見を決定する。 平成11年10月22日 主任審理官 安 成 知 文 記 第1 意 見 各省令案等は、それぞれ適当である。 第2 事実及び争点 1 郵政省の陳述の大要 本件は、本年5月28日に公布された放送法の一部を改正する法律(平成 11年法律第58号)において、テレビジョン放送等の一部として、文字、図形等 を併せ送ることができることとされたことに伴い関係省令等の改正を行うこと、
この放送法の一部改正においてNHKはテレビジョン放送の一部として文字、 図形等のデータを併せ送る放送を行うことができることとされたが、これにつ いて、公共放送としての基本的な性格にふさわしいものを行うことが適当であ ると判断したことから、この趣旨を明らかにするため放送普及基本計画の一部 変更を行うこと、
有効走査線数720本の順次走査による映像表示方法(映 像フォーマット720P)について、先の電気通信技術審議会において実証実 験の結果によりその性能が確認されたこと、また、技術的にHDTV放送と位 置づけることが可能であることが報告されたことから、関係省令等の改正を行 うものである。 2 改正案等の内容 (1) 放送法施行規則(昭和25年電波監理委員会規則第10号)の一部を改正する 省令案 ア BSデジタル放送及びCSデジタル放送における超短波放送又はテレビ ジョン放送による委託放送業務に関し、一の者が保有可能な周波数資源の 上限値等を改めること。 イ 超短波放送又はテレビジョン放送による委託放送業務において、主音声 又は映像に伴わない補完放送を行う場合には、その認定の申請に当たり、 当該補完放送に係る伝送容量を記載することとすること。 ウ 超短波放送又はテレビジョン放送による委託放送業務において、主音声 又は映像に伴わない補完放送を行った場合には、委託放送業務日誌及び抄 録に主音声又は映像に使用した伝送容量の平均値を記載することとするこ と。 エ テレビジョン放送による委託放送業務の認定の申請に当たって、走査方 式及び走査線数(以下「走査方式等」という。)を記載させることとする とともに、郵政大臣は認定に当たり走査方式等を指定することとすること。 オ 複数の走査方式を指定された場合は、委託放送業務日誌及び抄録に記載 する放送番組の題名等について、走査方式等が明確に識別できるように表 示することとすること。 カ NHKの行う標準テレビジョン文字多重放送及び超短波文字多重放送に 係る放送の区分を削ること。 キ 既にテレビジョン放送による委託放送業務の認定を受けている者の走査 方式等については、BSデジタル放送の高精細度テレビジョン放送は一本 おき及び1125本と、標準テレビジョン放送は一本おき及び525本並 びに順次及び525本と、CSデジタル放送の標準テレビジョン放送は一 本おき及び525本とみなすこととすること。 (2) 電波法施行規則(昭和25年電波監理委員会規則第14号)の一部を改正する 省令案 ア 超短波放送、テレビジョン放送及び補完放送について主音声又は映像に 伴わない文字、図形等を併せ送る放送を含めること、並びに映像フォーマ ット720Pを高精細度テレビジョン放送とすること、を定義規定におい て明らかにすること。 イ 超短波放送又はテレビジョン放送を行う放送局において、主音声又は映 像に伴わない補完放送を行った場合の当該補完放送に係る無線局業務日誌 及び抄録の記載事項を定めること。 (3) 無線局免許手続規則(昭和25年電波監理委員会規則第15号)の一部を改正 する省令案 超短波放送又はテレビジョン放送を行う放送局において、主音声又は映像 に伴わない補完放送を行おうとする場合の当該補完放送に係る免許の申請の 際の記載事項を定めること。 (4) 無線設備規則(昭和25年電波監理委員会規則第18号)の一部を改正する省 令案 テレビジョン放送のうちデジタル放送において、映像フォーマット720 Pに関する規定を整備すること。 (5) 放送局の開設の根本的基準(昭和25年電波監理委員会規則第21号)の一部 を改正する省令案 ア 超短波放送又はテレビジョン放送を行う放送局において、主音声又は映 像に伴わない補完放送を行う場合の放送番組の放送時間について定めるこ と。 イ 教育放送を専ら行うテレビジョン放送の放送局において、映像に伴わな い補完放送を行うときは、教育番組又は教養番組をできる限り多く設ける こととすること。 (6) 標準テレビジョン放送等のうちデジタル放送に関する送信の標準方式(平 成10年郵政省令第57号)の一部を改正する省令案 テレビジョン放送のうちデジタル放送について、映像フォーマット720 Pに関する規定を整備すること。 (7) 放送普及基本計画(昭和63年郵政省告示第660号)の一部変更案 ア NHKが受託国内放送において委託して行わせるテレビジョン放送のう ち、文字、図形等を併せ送るものについては、デジタル技術の特性を活用 して、多様化、高度化する、視聴覚障害者等を含む公衆の需要や地域社会 の要望にこたえることとすること。 イ NHKの行う標準テレビジョン文字多重放送及び超短波文字多重放送の 項を削ること。 (8) 放送法施行規則第17条の19第3項第4号の規定に基づく告示案 委託放送業務の認定の際に指定された事項を変更できる場合として、以下 の場合を規定すること。 ア 少ない伝送容量で送信が可能な走査方式等の導入により、伝送容量を減 少するとき イ テレビジョン放送又は超短波放送の認定とデータ放送の認定を統合する ことに伴い、伝送容量を増加するとき ウ CSデジタル放送において、映像等に伴わない文字・図形等のデータを 併せ送るため、伝送容量を増加するとき エ その指定された伝送容量を増加させないで、走査方式等を変更するとき オ CSデジタル放送において、複数の委託放送業務の認定を受けている者 がその中で周波数又は人工衛星の軌道位置を入れ替えるとき、又は二の者 がそれぞれ認定された委託放送業務について周波数又は人工衛星の軌道位 置を同時に入れ替えるとき (9) 電波法関係審査基準(平成6年達第3号)の一部を改正する達案 標準テレビジョン放送のうち、総合放送を行う放送局において、主音声又 は映像に伴わない補完放送を行う場合の放送番組の放送時間について定める こと。 (10) 放送法関係審査基準(平成6年達第5号)の一部を改正する達案 テレビジョン放送又は超短波放送による委託放送業務の認定の審査基準と して、主音声又は映像に伴わない文字・図形等のデータを併せ送る場合は、 映像又は主音声が主であると認められるものであることとの規定を設けるこ と。 3 利害関係者の陳述等 本件省令改正案に関し、利害関係を有する11者が準備書面を提出し、このう ち3者が意見の聴取の期日に出席して陳述した。また、意見の聴取の期日に欠 席した8者の準備書面については、電波監理審議会が行う審理及び意見の聴取 に関する規則第42条において準用する同規則第17条第1項の規定により、 当該準備書面のとおり陳述したものとみなした。 11者の省令改正案に対する賛否は、次のとおりである。
利害関係者 賛 否 備 考 (株)エフエム東京 概ね賛成(要望あり) 欠 席 (株)ミュージックバード 概ね賛成(要望あり) 欠 席 スーパーデジタル(株) 賛成(要望あり) 欠 席 ディレク・ティービー・ジャパン(株) 賛成(要望あり) 欠 席 日本衛星放送(株) 原則賛成(要望あり) (社)日本新聞協会 意見表明(要望あり) 欠 席 日本放送協会 異議なし(要望あり) (社)日本民間放送連盟 概ね賛成(要望あり) ヒューズ・ジャパン・ブロードキャス ティング (株) 賛成(要望あり) 欠 席 プラネット・コミュニケーションズ (株) 賛 成 欠 席 ワンダーウェーブ(株) 賛成(要望あり) 欠 席なお、各利害関係者の要望及びこれに対する郵政省の回答の概要は、別紙の とおりである。 第3 理 由 1 本件は、放送法の一部改正に伴い、超短波放送及びテレビジョン放送の補完放送と して、従来、これらの主音声や映像に伴う音声、文字、図形等を送るものに 限られていたが、今回新たに主音声や映像に伴わない文字、図形等を併せ送 ることができるようになったことから、これら補完放送に係る認定・免許手 続等を定めること。 具体的には、 ・ 委託放送業務に関して、一の者が保有可能な周波数の上限値について、 併せ送る情報の伝送も考慮した規定にすること。(放送法施行規則の一部 改正) ・ 委託放送業務日誌、無線業務日誌及び抄録に記載する事項として、これ ら補完放送に関連する事項を定めること。(放送法施行規則及び電波法施 行規則の一部改正) ・ 委託放送業務の認定及び放送局の免許の申請書に関して、補完放送を行 う場合の記載事項を定めること。(放送法施行規則及び無線局免許手続規 則の一部改正) ・ 教育放送を専ら行う放送局について、補完放送を行う場合の教育番組等 の放送時間に関する規定の整備を行うこと。(放送局の開設の根本基準、 放送法関係審査基準、電波法関係審査基準等の一部改正) ・ その他、規定の整備を行うこと。
放送法の一部改正に伴い、NHKが受託国内放送において委託して行なわ せるテレビジョン放送のうち、文字、図形等のデータを併せ送る放送につい ては、公共放送としての基本的な性格にふさわしいものを行うことを規定す ること。(放送普及基本計画の一部変更)
電気通信技術審議会において実証実験が行われていた720P(有効走査 線数 720本の順次走査)の映像表示方式について、実験によりその性能が確認さ れ、技術的にHDTV放送と位置づけられたことに伴い、この方式を用いる ことが可能となるよう関係規定の整備を行うこと。(放送法施行規則、電波 法施行規則、無線設備規則、標準テレビジョン放送等のうちデジタル放送に 関する送信の標準方式等の一部改正)について、規定を整備するものである。 2 本事案に対して、利害関係者からいずれも賛成又は概ね賛成の意見が述べら れた。 なお、要望事項として、
日本衛星放送(株)、日本放送協会、(社)日本民間放送連盟、(株)エフエ ム東京及び(株)ミュージックバードから、「業務日誌、抄録について、補完 放送に係る事項を記載する規定があるが、この規定の運用に当たっては、事 業者に過度の負担とならないよう、簡素化、柔軟な運用を図るべき」等の旨 の要望があり、これに対し、郵政省は、「要望として承る。なるべく事業者 の負担にならないよう、柔軟な運用を検討していきたい」旨、回答した。
また、日本衛星放送(株)、(社)日本民間放送連盟、スーパーデジタル放 送(株)、ディレクティービ・ジャパン(株)等から、「補完放送については、 放送事業者の個別の状況に応じ、データ放送の持つ多様な可能性を考慮した 柔軟な運用を認めるべき」等の旨の要望があり、これに対し、郵政省は、「 要望として承る。要望の趣旨を踏まえていきたい」旨、回答した。
また、(株)エフエム東京及び(株)ミュージックバードから、「放送法施行 規則における一の者が保有可能な周波数の上限値に関して、今回の措置でテ レビ放送事業者の保有可能なスロットの上限値が24スロットになるが、一 中継器に2テレビ事業者が認定されると、独立超短波放送事業者にとって、 その中継器の中で存在する場所がなくなる。また、超短波放送事業者の上限 値が2スロットあるが、既認定のスロットの数によって、事業者間のバラン スを欠くことになる。」等の旨、指摘があった。これに対し、郵政省は、「 保有可能なスロット数はあくまで上限値であり、実際の認定は申請状況をみ て判断するもので、懸念はあたらない」等の旨、回答を行った。
また、(社)日本新聞協会等から、「NHKの行うデータ放送については、 公共放送としてふさわしい、限定的なものにすべき。対価性の強いサービス や一般放送事業者の行う領域に進出すべきでない」等の旨、指摘があった。 これに対して、郵政省は、「今回の放送普及基本計画の一部変更は、パブリ ックコメントの結果、NHKの行うデジタル・データ放送は公共放送として の基本的な性格にふさわしいものを行うことが適当と判断したことから、そ の趣旨を明らかにするために行うものである」旨、回答した。
さらに、(社)日本新聞協会から、「データ放送は、通信・放送融合型の 新たなメディアとして位置付けるべきで、早急に放送・通信制度の在り方を 見直すべき」等の旨、指摘があった。これに対して、郵政省は、「法律の在 り方の見直しについては、立法府で議論されるべき課題であるが、行政府の 立場としては、ご意見として承る」旨、回答した。 3 本事案については、放送法の一部改正及び放送技術の進展を受けて、関係規 定の整備を行うものであり、これにより放送の高度化・多様化の他、規制の緩 和・手続の簡素化等が促進されると考えられ、また、利害関係者はいずれも賛 意を表明しており、案は適当と認められる。
別 紙
要 望 等 の 概 要 郵政省の回答の概要 1 無線業務日誌、同抄録、委託放送業 務日誌、同抄録の作成について、簡素 化を図るべき。 (エフエム東京、ミュージック・バード 、日本衛星放送、日本放送協会、日本 民間放 送連盟) 2 補完放送については、データ放送の 持つ多様な可能性を考慮した柔軟な運 用を認めるべき。 (日本衛星放送、日本民間放送連盟、ス ーパーデジタル放送、ディレク・ティ ービー・ジャパ ン、ヒューズ・ブロ ードキャスティング、ワンダーウェー ブ) 3 一の者が保有可能な周波数の上限値 に関して、今回の措置でテレビ放送事 業者の保有可能なスロットの上限値が 24スロットになるが、一中継器に2 テレビ事業者が認定されると、独立超 短波放送事業者にとって、その中継器 の中で存在する場所がなくなる。 また、超短波放送事業者の上限値は 2スロットであるが、既認定のスロッ トの数によって、事業者間のバランス を欠くことになる。したがって、5ス ロット以下の小容量事業者において は、合体後の容量の制限をしない方が 望ましい。 (エフエム東京、ミュージックバード) 4 NHKの行うデータ放送について は、公共放送としてふさわしい、限定 的なものにすべき。対価性の強いサー ビスや一般放送事業者の行う領域に進 出すべきでない。また、視聴覚障害者 を含む公衆の需要に応える等を理由に サービス領域の拡大、受信者の負担増 や利便性を損なうことのないように求 める。 (日本新聞協会) NHKの行うデータ放送については 民間放送事業者の行うデータ放送と競 合しない範囲で行うべき。 (日本民間放送連盟) 5 データ放送は、通信・放送融合型の 新たなメディアとして位置付けるべき で、早急に放送・通信制度の在り方を 見直すべき。 (日本新聞協会) 1 要望として承る。事業者の負担とな らないよう柔軟な運用を検討したい。 2 要望として承る。要望の趣旨を踏ま えていきたい。 3 今回の改正は、1テレビジョン事業 者が保有可能な周波数資源の上限値が 24スロットまで拡大されたということ にとどまり、実際の認定は申請状況を みて判断することとなる。また、新規 スロットの割当ては、空きスロットを 割り当てるものであり、認定事業者間 において周波数の入替えの合意があれ ば尊重するが、ご懸念はあたらない。 また、新しく認定されたスロットと 既認定のスロットを合わせて超短波放 送として放送することが可能になるた め、拡大分をすべてデータ放送に使わ なければならないというわけではな く、主たる放送である超短波放送が確 保されている限り、自由に放送できる ので、ご懸念にはあたらない。 なお、2スロットはあくまで上限値 であり、実際の認定は申請状況を見な がら行うこととしている。 4 今回の放送普及基本計画の一部変更 は、パブリックコメントの結果、NH Kの行うデジタル・データ放送は公共 放送としての基本的な性格にふさわし いものを行うことが適当と判断したこ とから、その趣旨を明らかにするため に行うものである。 5 法律の在り方の見直しについては、 立法府で議論されるべき課題である が、行政府の立場としては、ご意見と して承る。