〔附記〕
 第4章のNTTの再編成に関する提言については一部の委員から、
 (1)「国際的市場開放の流れの中で、世界は今や大競争の時代になっており、
   情報通信分野でも今後国内の市場での競争は勿論、海外への進出が重要
   な課題となりつつあるような状勢下で、企業の競争力、特に海外進出、
   研究開発等を弱める分割は好ましくない、また、答申の分割でも長距離
   分野は既にNCCと競合状態にあり、2地域NTTにしても従来同様独
   占状態に変わりはなく余り分割によるメリットは期待できない」
 (2)「NTTの再編成は地域の競争の可能性を見極めた上で行う必要がある」
 (3)「(ア) 国際競争力の維持・強化に不可欠な研究開発力の低下につながるの
    で、情報通信に関する科学技術の発展に大きなダメージを与える
   (イ) 現在のNTT収支を前提に考えた場合、東京圏を除く地域会社で赤
    字となることが当然予想され、その場合料金・サービス面で地域間格
    差を生ずることが明らかで、悪結果をもたらす
   (ウ) 再編成した会社の株式配分方法や上場審査基準の面から、現在のN
    TT株主の権利が侵害される
   (エ) 公正有効競争条件の確保についてはこの答申案以外の方法でも可能
    であるが、そのための検討が行われていないのは問題である
   以上のことから、この答申案によるNTTの再編成については反対であ
   る(説明別紙)」
旨の反対意見があった。
 これらの意見で指摘されている事項については、例えば、公正有効競争条件
の確保については非構造的措置のみでは限界があること等、いずれも十分な検
討がなされたうえで提言が行われているものである。
 以上附記する。

(別紙)
1 研究開発力の低下について
  NTTを再編成すると、研究開発リソースの分散や分割損が生じ、日本の国際競争力
 の源泉である研究開発力が弱体化する。(AT&Tの分割後の状況をみれば明らかであ
 る)
  とりわけ、マルチメディアの実現に重要な役割を果たすネットワーク基盤における世
 界のトップレベルの技術開発力の保持が難しく、国際標準化活動等における日本の発言
 力が低下するなど、日本の産業の国際競争力の弱体化を招き、日本の将来にとって大き
 なマイナスとなる。
 
2 料金、サービス面での地域間格差の発生について
  平成6年度のNTT収支を前提として、基本料値上げによる改善額等の諸要件を考慮
 すると、約 3,000億円程度の経常利益となる。今後のNTTをとりまく経営環境を考え
 た場合、ネットワークのオープン化による競争の激化(NTTは2000年で 3,000億円を
 想定)や、市外通話料金の値下げ(2000年までに最遠距離通話料 100円、影響額 2,000
 億円)などの厳しい条件があるため、合理化・節減努力や増収努力に取り組んだとして
 も、今後のNTTの売上高利益率に急激な変化がない限り、現在の利益(平成7年度の
 業績見込 2,990億円)程度を確保するのがせいぜいと考えられる(新聞によると2000年
 での経常利益は 2,500億円程度)。
  このような経営状況で再編成した場合、東NTTに比べ西NTTの黒字が増える要因
 は見当たらないため西NTTは赤字となる可能性が強く、料金値上げやサービスの普及
 レベルに格差が生じることになる。(AT&Tの分割後の各地域会社の状況をみれば明
 らかである)
 
3 株主の権利保護について
  NTTの株主には、現在、政府以外に約 160万人の株主が存在しており、再編成に伴
 ってその権利が侵害されることがあってはならない。そこで、答申では、株主の権利保
 護のための方策として、商法に規定がない新会社株式の現物交付のための特別法や、上
 場審査基準の特例を設けることで対処しているが、例えば無額面株式の流通上の不利益
 に対する検討や、特例措置の具体的実現可能性についての検討が行われておらず、株主
 の権利が侵害されることが予想される。
  なお、分割コストの負担について述べられていないが、最終的には株主が負担せざる
 をえない状況も想定される。
 
【長距離NTT、東NTT、西NTTの3社に分けた場合】(NTT公表資料を元に作成)
  平成6年度のNTT収支をもとに、基本料の改定等の諸要件を考慮して算定