電気通信審議
NTTの在り方についての特別部会
第12回会合議事要旨
1 日時
平成7年11月20日(月) 午前10時〜12時
2 場所
郵政省審議会会議室(郵政省12階)
3 出席者(敬称略)
(1) 特別部会
ア 委員・臨時委員
伊東光晴(部会長)、月尾嘉男(部会長代理)、新井明、岩山保雄、加藤真代、後藤守正、園山重道、舟田正之
イ 専門委員
浅野正一郎、鬼木甫、若杉敬明
(2) 事務局
佐村知子審議会室長
(3) 郵政省
五十嵐三津雄電気通信局長 ほか
4 議題
関係者からのヒアリング
(1) 通信機械工業会 澤村紫光会長
(2) 社団法人テレコムサービス協会 一力健会長
(3) 全国消費者団体連絡会 太田吉泰事務局長
(4) 社団法人情報通信設備協会 玉野義雄会長
5 模様
関係者からのヒアリングが、次の(1)〜(4)の各氏から行われた。
(1) 通信機械工業会 澤村紫光会長
ア 意見
(ア) 電話からマルチメディアへという情報通信のパラダイム変化を考える
と、ネットワークのオープン性及びエンド・ツー・エンドサービスが不
可欠である。
(イ) 我が国の通信サービス市場のGDP比率は米国、英国、さらにOEC
D平均をも下回っており、低迷している。その要因には、風土の違い等
による米・英との情報利用格差や、通信事業・通信利用上の規制等によ
る競争の遅れがある。
(ウ) 競争促進による国内市場の活性化のために、相互接続の義務化等の公
正有効競争条件の整備と、市場区分、参入退出・需給調整等の規制の見
直しが必要である。
(エ) 国際的な標準化への影響力、大型開発投資に耐えうる事業体力の維持
等国際競争力の観点から、ナショナルフラッグキャリアの力を弱めるお
それの大きいNTTの分離・分割は採るべきではない。
(オ) NTTに対抗し得るキャリア創出のための環境整備を行うべきである。
イ 質疑応答
NTTとの共同開発、デファクトスタンダード等の問題について質疑が
行われた。主な回答は次のとおり。
(ア) NTTと共同開発した交換機の競争力については、交換機は自国仕様
に合わせて、既存のシステムとの接続等を勘案して開発するのが普通
であり、海外仕様に合わせて開発し直すかどうかは、自社の開発資源等
に照らして、各社が判断すべきことである。外国に交換機が出ていって
いないのは、必ずしも価格が高いからではない。
(イ) 開発は大型になってきており、2000億円を超える大型開発投資はメー
カ1社では無理。それに耐えられる体力を持つナショナルフラッグキャ
リアが是非とも必要である。光伝送の分野ではNTTは世界一流と考え
ている。
(ウ) NTTは製造分野に進出しないで欲しいというのがメーカの希望。
(エ) 英国が通信サービス市場のGDP比率が高いのに通信機械工業が盛ん
でないのは、物作りには関心を示さず、サービスに力を入れているため
と思う。
(2) 社団法人テレコムサービス協会 一力健会長
ア 意見
(ア) NTTは、電話サービス料金の引下げ努力が不足している。また、独
占領域の料金値上げが、マルチメディアのサービス開拓を阻害している。
(イ) 協議要望が当初から受け入れられなかったり、多大な費用・長期の期
間を要する条件が提示されるなどしたため、オープンネットワーク協議
会は実質的に機能していなかった。
(ウ) エンドユーザの利益と利便性向上を達成するためには、公正有効競争
環境の確保が最優先課題である。
(エ) そのためには、次のようなNTTとの公正有効競争条件を早急に整備
し、これを担保することが第一義である。
A 他の事業者による公平で対等なアクセスを可能とするため、NTT
の独占的な基本インフラ事業と競争的サービス事業の会計分離、及び
ネットワークの構成要素ごとの機能分離によるアンバンドルを実現する。
B 競争を有効に機能させるようなルールメイキングと、そのルールを
遵守させるための監督/調整機能の強化を図る。
C NTTの地域における独占状態を解消するための具体的施策を配慮
する。
イ 質疑応答
会計分離、監督機能の強化等の問題について質疑が行われた。主な回答
は次のとおり。
(ア) 事業部制、会計規則にプラスして、会計分離、機能分離が必要である。
(イ) NTTのオープンコンピュータネットワーク構想も、今までのような
やり方では何十年かかるのか分からない。アンパイアが必要。
(ウ) 監督強化のために必要なマンパワーの経費負担については、英米同様、
第一には税金で対応すべきと考える。
(エ) 専用線料金は高止まりしており、国益のために値下げすべきである。
(3) 全国消費者団体連絡会 太田吉泰事務局長
ア 意見
(ア) マルチメディアなど情報通信分野が、消費者のニーズに沿った、生活
に役立つものとして展開されることを期待する。
(イ) 我が国でも利用者利益の向上と産業の発展のために、一層の競争促進
策が必要である。現状は、分離・分割論との関係で中途半端な状況にある。
(ウ) 事業区分の廃止等参入の自由化を図るよう規制緩和が必要ではないか。
(エ) NTTの分離・分割については、双方の主張に一定の根拠があると思
われ、俄には判断しがたい。
(オ) 消費者問題対策として、情報教育の充実、情報倫理の確立、消費者の
権利を確保する諸制度の整備のほか、誰もが利用可能な料金、日本全国
での安定供給の確保などユニバーサルサービスの要件の確保が必要であ
る。
イ 質疑応答
地域格差、消費者間の格差の問題について質疑が行われた。主な回答は
次のとおり。
(ア) ユニバーサルサービスの確保は必要だが、一定の幅であれば電話料金
の地域格差はあり得ないか検討する必要がある。この問題に限らず、地
域格差については、色々な意見があり得る。
(イ) マルチメディアの進展に伴う情報リテラシーなど消費者の間での格差
の発生の問題については、今後学校教育により一定程度行われることが
期待され、公的支援と消費者の自助努力がうまくミックスされることが
望ましい。
(4) 社団法人情報通信設備協会 玉野義雄会長
ア 意見
(ア) 電話番号付与権の利用、顧客情報の利用、ネットワーク部門との連携、
公衆電話の設置など、NTTの市内回線網を有する第一種電気通信事業
者としての優越的な地位を利用した不公正な端末機器販売が行われてお
り、政府措置(端末機器販売に係る公正有効競争確保のための措置の部
分)は十分な効果を上げているとは言いがたい。会員の不信感は根強く
残っている。
(イ) NTTの端末機器に関する業務の範囲については、各種端末機器の開
発及び各種の通信システム構築に関するコンサルタント業務に限定し、
端末機器の販売・工事保守については、他の公共事業(電気・ガス・水
道)と同様、原則として端末機器販売業者に委ねる体制を確立すべきで
ある。
(ウ) 仮に端末機器販売について分離会社方式が検討される場合には、NT
T本体が行うコンサルタント業務等よって生じる端末機器販売について
も、その別会社が競争原理の下、対等の条件で他の端末機器事業者との
間で透明な公正有効競争が行われる仕組みとすべきである。
イ 質疑応答
NTTの端末機器の不公正販売に関して質疑が行われた。主な回答は次
のとおり。
(ア) NTTの端末機器販売については、分離・分割以前の問題としてとら
えている。
(イ) (社)情報通信設備協会の会員の大半が通信機械工業会に加盟している
メーカの販売店であり、NTTの分離・分割については、通信機械工業
会の立場に同調していかざるを得ない。
(ウ) 本年10月に実施した会員企業への不公正販売事例に関するアンケート
結果については、集計中であり、12月にも公表したい。
〔その他〕
次回は、11月29日(月)午前10時から開催。
関係者からのヒアリングとして、日本電信電話株式会社の児島仁社長及び国際
電信電話株式会社の市原博社長の意見を伺うとともに、大阪会場及び福岡会場に
係る地方ヒアリングの結果報告が行われる予定。
(文責:電気通信審議会事務局。速報につき、事後修正の可能性あり)
