電気通信審議会
NTTの在り方についての特別部会
第10回会合議事要旨
1 日時
平成7年10月24日(火) 午後2時〜4時
2 場所
郵政省審議会会議室(郵政省12階)
3 出席者(敬称略)
(1) 特別部会
(ア) 委員・臨時委員
伊東光晴(部会長)、月尾嘉男(部会長代理)、新井明、岩山保雄、加藤真代、後藤守正、酒巻英雄、藤井義弘、齊藤忠夫
(イ) 専門委員
岩原紳作、鬼木甫、黒川和美、多賀谷一照、若杉敬明
(2) 事務局
佐村知子審議会室長
(3) 郵政省
五十嵐三津雄電気通信局長 ほか
4 議題
(1) 公開の取扱いについて
(2) 関係者からのヒアリング
- 株式会社シナジー幾何学 粟田政憲社長
- 株式会社東急ケーブルテレビジョン 松井清武社長
- 株式会社セガ・エンタープライゼス 大川功会長
(3) 書面ヒアリングの実施について
5 模様
(1) 公開の取扱いについては、次のように決定された。
ア 議事要旨を作成し、公開する。
イ 本特別部会は、その性格上、
1.不公表の企業財務情報など企業秘密に関わる情報を扱うこと
2.自由闊達な議論が妨げられる恐れがあり、審議会の円滑な運営が阻害される場合があること
から、会合と議事録は非公開とする。
ウ 会合終了後、毎回部会長(又は部会長代理)が記者会見を行い、模様を紹介する。
エ ファクトに関する資料は、企業秘密に関するものを除き、原則公開する。
(2) 関係者からのヒアリングについては、次のア〜ウの諸氏から行われた。
ア 株式会社シナジー幾何学 粟田政憲社長
(ア) 意見
-
- 当社は、本の編集のほか、5年前からCD−ROMの制作を行っており、今後、日米で、本・ネットワーク・ビデオという多様な事業を展開していく。
- 我が国の通信インフラは不備であり、また競争力がなく、それがコンテンツプロバイダー産業の発展を妨げている。
- 米国では、回線使用料が安く、例えば、コンピュータグラフィックスで映画を作る場合に、毎日、遠方にいる監督のところに映像を伝送してレビューを受けるというようなことが行われている。日本には、そうした環境が整っていない。
CD−ROMについても、日米はほぼ同時期にスタートしたが、現在までの間に、米国は20倍に成長したのに対し、日本は3〜4倍に過ぎない。これは、日本では通信インフラの分野の競争が激しくなかったため、米国との間に格差が存在するからと考える。
- NTTの在り方については、国際競争の激化に耐え得る環境をつくり、インフラの量、質、料金の向上を図り、回線の大容量化・高度化・高サービスの提供を可能とするために、NTTを分割して地域独占を排除するとともに、他業態の参入を促進し、もっと競争を行わせるべきである。
(イ) 質疑応答
- 日本の競争をどう見るかとの質問があり、次のような回答があった。
(回答)
日本の競争は、NTTの掌の上に乗った競争である。
日本は、利用者に繋がる部分の料金が高いので、そこにぶら下がる産業にも影響している。大規模なパソコン通信ネットのユーザの数も米国とは桁違いである。
- 「分割」の意味についての質問があり、次のような回答があった。
(回答)
自分たちのような小企業が系列に入らずに伸びていくには、最終的に利用者に繋がるところのサービス・料金が一番重要である。そこがNTTだけというのが困る。NTTは巨大すぎるので、分割しないと本当の競争にならない。
- NTTの子会社がアプリケーションの分野に出てくることについての質問ががあり、次のような回答があった。
(回答)
1. 垂直統合を排除することで、米国はうまくいった。
2. 基本的には、垂直統合は望ましくないと考える。系列化していくと、競争原理が働かなくなり、ダイナミズムが失われると考える。
3. 日本は通信では鎖国状態にあるが、回りには黒船が来ている。
国内の競争を活性化させることによって、国際的な競争力の向上を図ることが大切である。
イ 株式会社東急ケーブルテレビジョン 松井清武社長
(ア) 意見
- 都市型CATVは、NTT地域網に比べると規模が非常に小さい。CATV電話サービスを実施している事業者は今はゼロだが、通信事業への参入に向けて努力している。
- NTTが市内網のオ−プン化と言っているが、それはずっと前から決まっていたことである。CATV電話網とNTT網の接続について は、接続料金、技術開示等についての問題が残されたままであり、市内網のオ−プン化は現実に は進んでいない。
- 政府措置は、十分な効果は挙がっていない。究極的な要因は、NTTが地域網を独占していることにある。
当社も 3,000kmのケーブルを有しており、通信に参入したいが、直ちにNTTに対抗する通信網になれる訳ではない。現段階では、ボトルネックの解消に有効に機能するのは相当に困難である。
- NTTは、長距離と地域を分離し、地域網も競争促進のために複数にすべきである。
- 地域を分割しても独占だとの意見があるが、CATVも地域的にみれば独占状態ではあるものの、当社の場合、周辺に都市型CATVが誕生したため、非常に強い影響を受け、加入料の値下げに踏み切った。たとえ地域独占であっても、相互の有効競争は成り立ち得る。
(イ) 質疑応答
- NTTとの接続交渉の状況について質問があり、次のような回答があった。
(回答)
まだ交渉を始めていないが、最寄りの局で接続可能ではないかと考えている。料金が大きな問題である。
- CATV電話の番号体系について質問があり、次のような回答があった。
(回答)
当社のエリア全体で1つのMAであることが望ましいが、今後検討していきたい。
- 隣接CATVとの電話の接続について質問があり、次のような回答があった。
(回答)
現状では相互の格差もあり、具体化するのは難しいが、将来は当然考える。
- CATVとは別の電話用のネットワークの構築について質問があり、次のような回答があった。
(回答)
できるだけ、現状のネットワークを前提に参入したいと考えている。
- NTT基本料の水準とCATV電話の収益性の関係について質問があり、次のような回答があった。
(回答)
現在余っている帯域で、できる範囲で参入したい。料金はこれからだが、できればCATV同様定額制にしたい。
- 新たなサービスについて質問があり、次のような回答があった。
(回答)
第1段階は通常の電話だが、オン・デマンドサービスもやっていきたい。
ウ 株式会社セガ・エンタープライゼス 大川功会長
(ア) 意見
- コンテンツ会社として …通信料金の低廉化、通信速度・容量の向上を
ビジネスソフト会社として…地位の向上(下請け的存在からの脱却)、情報通信分野向け公共投資の公正な配分を
特別二種事業者として …公正な価格による公−専−公接続の実現、ネットワーク利用促進のために料金の改善を望む。
- 日本は元気がないが、IT(情報技術)/IS(情報サービス)産業が起爆剤となる。米国ではGNPの10%以上を占めている。IT/IS産業は、あらゆる産業を変化させ、価値観さえ変える。
教育水準についても、通信料金が米国の5倍だと、米国人は日本人の5倍の情報を手に入れられる。これは国家の盛衰につながる、国家百年の計に関わる問題である。
- NTTは、真の民間企業ではない。経営陣に責任と、それに見合う権限が与えられていない。価格決定権や人事権に制約がある。株式会社化されたが、民営化はされていない。
- NTTは、独占時代に築いたポジションの上にあぐらをかいている。
今までの「国家と企業の時代」が「企業と個人の時代」になり、さらに「個人の時代」になろうとしている。個人の様々な要求に、スピーディに対応できる訳がない。体質改善が必要である。
- NTTは、第一種事業のみならず、IT産業のどの分野においても、ほぼ最大のプレーヤー。「親の総取り」状態の改善が必要である。
- 行政については、極力規制を排除し、過保護をやめるべき。業界全体の育成を図って欲しい。独占の排除とNTT法の廃止をパッケージで行うべきである。
- NTTの分離・分割は当然必要。今のNTTは、とてもスピードのある経営ができるサイズではない。企業体質を変えていく必要がある。
また、企業は、「人」であり、経営は人の心をつかむこと。ホテルの従業員の質の向上には隣にホテルを建てるのが一番。20万人以上の人、100 年以上の歴史があるNTTの体質改善には、分割という外科療法が必要である。
国を挙げてこの問題に取り組むべき。NTTの分割が困難なら代替案として、NCCの結集による第2NTTの創設も考えるべきである。
(イ) 質疑応答
- 垂直統合についての考え方について質問があり、次のような回答があった。
(回答)
米国のようにアンバンドリングして欲しい。また、下(通信インフラ)が分かれれば、上も小さくなる。ただし、「NTT」という暖簾 は非常に強力であり、太刀打ちが難しい。
- 分割の理由について質問があり、次のような回答があった。
(回答)
大きすぎるという経営管理上の問題と、自由競争をやってもらわなければ困るという問題がある。地域分割し、相互参入して競争を促進させるべき。
-
- スムースな意思決定が可能な会社の規模について質問があり、次のような回答があった。
(回答)
5,000 人規模の会社でも、何をやっているか把握仕切れない。また、ソフトウェア会社は大きくできない。
(3) 書面ヒアリングの実施について
消費者団体、経済団体、ソフト・コンテンツ事業者、メーカ、電気通信事 業者、放送事業者、CATV事業者等 3,101者に対して、書面ヒアリングを行うことが決定された。10月25日付けで発送し、意見提出期限は11月27日。
〔その他〕
次回は、11月6日(月)午後2時から開催。
関係者からのヒアリングとして、日本放送協会の川口会長、日本民間放送連盟の磯崎会長の意見を伺うとともに、醍醐聰専門委員から、NTTの経営財務状況についての発表が行われる予定。
(文責:電気通信審議会事務局。速報につき、事後修正の可能性あり)
