第2回接続の円滑化に関する特別部会公表資料(日本テレコム株式会社)
NTT地域通信網に係る相互接続のルールについて
平成8年5月15日
日本テレコム株式会社
はじめに
平成8年2月29日に電気通信審議会が答申した「日本電信電話株式会社の在
り方について−情報通信産業のダイナミズムの創出について−」は、当社がかね
てより主張してきた内容に沿ったものであり、大きく評価できるものであります。
このうち、規制緩和については、既に「第2次情報通信改革」としてその計画が
発表されており、接続の推進については今回スタートしました。これらの推進に
あたっては、残るNTTの再編成と一体となって行うことが、よりその実効を上
げるものと考えます。
さて、当社は、昭和61年8月はじめてNCCとして専用サービスを開始しま
したが、そのときにNTTと「相互接続協定」及び「相互接続協定の専用役務に
関する細目協定」を締結したのを手始めに、現在まで各種の協定を締結・改定し
ています。(別紙1)
相互接続の条件に関しては、各協定の締結・改定の度に協議に多大の時間を費
やすほか、市外電話サービスにエンドエンド料金を導入してからは、毎年アクセ
スチャージ改定協議を行っています。
中継系としてスタートし、加入者回線の殆どの部分をNTTの地域通信網に頼
らなければならない当社にとっては、接続に要する時間とコストが事業展開に決
定的な影響を与えますが、過去には接続に関してNTTとの間でいくつかの大き
なトラブルが発生している(別紙2)ため、相互接続の基本的なルールが策定さ
れることは、接続の当事者として高く評価出来るものであります。
貴特別部会において、将来の日本の電気通信の発展に寄与する公平かつ正当な
「接続ルール」の策定がなされることを切に希望するものでありますが、下記に
当社の考え方を述べさせていただきます。
記
1.接続の基本的ルールとして策定すべき事項に関する意見
(1)接続の義務化
法令等を整備した上で、可及的速やかに実行に移すことを希望するが、
単なる精神条項ではなく、接続がなされない等の場合の救済措置等を検討
する必要がある。
(2)接続条件の料金表・約款化
1 手続き
事業者向け約款として、郵政大臣が認可すべきであるが、接続事業者
からの意見聴取を実施していただきたい。また、毎年料金を改定するこ
とを、予めルール化すべきである。
2 アンバンドル化した料金表
事業者向け約款の料金表は、接続階梯別、サービス別、機能別にアン
バンドルし、接続をしようとする事業者が判断できるものでなければな
らない。
3 費用範囲
営業費、研究開発費等は、事業者向け料金の算定費用から控除すべき
である。また、控除費用に連動する管理費、共通費なども同じく控除す
べきである。
4 網改造費用について
接続のために必要なNTTの網改造費用については、必要性(例えば
IGS)や負担のあり方(移動体は50%、その他は接続事業者100
%負担となっている)等について適切なルール化を行うべきである。
5 赤字負担のあり方
赤字負担は、黒字配当と裏腹であるので、例えば電話番号案内の赤字
はNTTの経営のなかで処理すべきものと考える。さもないと、電話帳
の黒字から配当を受けなければならない。しかし、次項の会計が正確に
行われることを前提に、ユニバーサルサービスに係る赤字負担について
は、範囲を明確にした上で接続事業者が応分の負担をすることも考えら
れる。
6 その他
接続費用は全費用か、長期増分費用か。
報酬率はどうあるべきか。
費用の単金への展開方法(セットアップチャージ)等
(3)接続に関する会計方法・基準
1 会計方法
接続料金はアンバンドル化されることが必要であるが、そのためには
現在のような経費を固定資産額比等で配分するのではなく積み上げで把
握し、直課を基本とすべきである(現在は経費の約80%が配賦)。地
域事業部の費用が伝票の段階で、役務別に、階梯別に、TS/NTS別
(トラフィック比例かどうか)に把握できていなければ、設備別機能別
に有効な細分料金はつくれない。
2 配賦基準
直課を基本としても、なお配賦しなければならない費用については、
合理的な基準で一義的に定めるべきである。
3 開示について
現在のNTTの会計方法は、実態が開示されていないため不明な点が
多い。開示が是非とも必要であるが、公表すべきものを増やすこと、公
表しないものでも、守秘契約を取り交わした上で事業者には開示するも
のの基準を作るべきである。
(4)接続の技術的条件
基本的に約款に盛り込むべきであるが、技術の進歩に対し足かせになる
恐れもある。このため見直しを定例化すべきである。
(5)局舎の提供、電柱・管路等の使用に関する条件
1 約款への盛り込み
現在は、業務委託で条件が整理されているが、提供の義務付けととも
に、約款化すべきであると考える。他の接続料金と同様に、接続事業者
からの意見聴取、接続料金と同様の費用算定ルールを使用すべきである。
2 POIの位置
現在POIはNTTの局舎内とされているが、接続事業者の局舎等で
もよいこととすれば電柱・管路を必要とすることはあまりなくなる。そ
の場合、接続用伝送路の費用負担のあり方を整理する必要がある。
(6)番号ポータビリティの実施方法
1 ポータビリティの範囲
全ての加入者番号にポータビリティを持たせようとすると、膨大なデ
ータベースの構築と運用に多額の費用を要し、事業者の負担限度を越す
恐れがある。また、番号体系を事業者識別に使ったり、事業者毎の番号
割当などが出来なくなるという問題が出てくる。従って、実施について
は、利用者の意見を聞くことを含めて十分な時間をかける必要がある。
2 高度機能のポータビリティ
フリーコールのような高度サービスについては、システム的にデータ
ベースを有していることからアメリカなどでも例があり、早期に実施す
べきと考える。
2.接続の基本ルールに関する意見
(1)相互接続と業務委託の関係
双方の境界が曖昧である。同じNTTの地域網と接続しても当社の場合
は、事業法第38条の相互接続が適用となり、国際系事業者の場合は第1
5条の業務委託となる。出来れば同じルールの下に置くべきである。
(2)複雑な接続への対応
現在の相互接続は2者間の接続を前提としており、接続は設備だけでな
く役務の接続として運用しているため、3者以上の接続の場合には、料金
を誰が設定するのか、料金を設定していない事業者のユーザーに対する責
任など、複雑かつ高度なサービスの提供が難しくなってきている。
(3)新会計制度への移行措置
アンバンドル化された事業者料金を設定するために、新たな会計制度を
導入すると考えられるが、経理システムを改修することが必要となるため、
実施には相当の期間を要すると考えられるので、その間の措置について考
慮する必要がある。
(4)網機能情報の開示
公社時代には、設備構成や網機能などがかなり開示されていたが、現在
では、例えばGCの位置すら部外者には分からない。アンバンドル化した
機能を開示するとともに接続の技術的条件、提供条件を合わせて提示すべ
きである。NTTの地域網は電気通信サービスのボトルネックであること
を考慮して、電気通信の発展のために可能な限りオープンにしていくべき
である。
以上
別紙1
日本テレコム株式会社(JT)と日本電信電話株式会社(NTT)との
相互接続協定の体系について
昭和61年7月28日締結・10回変更
+− 相互接続の専用役務等に関する細目協定
|
|+−−−− JT −−−−− NTT −+
|| 専用 +−−−−−+ |
||フレームリレー| 中継線 | 専用 |
|| セルリレー | 接 続 | |
|| 電話 +−−−−−+ |
|+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|
昭和61年7月28日締結・14| 昭和62年6月22日締結・11回変更
回変更相互接続協定書−−相互接続の電話役務に関する細目協定
(旧日本テレコム締結)|
|+−− JT −−−−− NTT −−+
|| +−−−−−+ |
|| | 中継線 | 電話 |
|| 電話 | 接 続 | ISDN |
|| +−−−−−+ 専用 |
|+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|
+− 昭和63年6月17日締結・1回変更
公衆電話(加入者線接続)に係る電話役
務に関する細目協定
+−− JT −−−−− NTT −−+
| +−−−−−+ |
| | 加入者 | 電話 |
| 電話 | 接 続 | ISDN |
| +−−−−−+ |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
昭和62年3月30日締結・3回変更 昭和62年3月30日締結・1回変更
相互接続協定書−−−−−相互接続に関する細目協定
(旧鉄道通信締結)
+−− JT −−−−− NTT −−+
| +−−−−−+ |
| 専用 | 加入者 | 専用 |
| 電話 | 線接続 | |
| +−−−−−+ |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
別紙2
相互接続をめぐるトラブルについて
1.ISDNの事例
昭和63年
|
4月
|
相互接続協議開始
|
平成元年
|
12月
|
デジタル通信モード 協議開始
|
平成2年
|
6月
7月
11月
|
通話モード 接続合意
通話モード サービス開始
デジタル通信モード 接続合意
|
平成4年
|
2月
8月
10月
|
デジタル通信モード の相互接続仕様について合意
NTT よりISDN接続料の要求
デジタル通信モード の接続試験完了
|
平成5年
|
10月
|
通話モード に関する事業者間料金合意
|
平成7年
|
10月
12月
|
アクセスチャージの秒課金移行合意
デジタル通信モード の接続について再申し入れ
|
平成8年
|
3月
現在
|
改造費及びアクセスチャージ回答
5月中の網改造契約締結に向けて協議中
|
2.VPNの事例【解決済み】
平成元年
|
9月
|
NCC−VPNの接続協議開始
|
平成2年
|
10月
|
NTT の要望により検討案を1つに絞る
|
平成3年
|
10月
11月
|
NTT より県内呼のルーチング にNTT のデータベース
を利用する案の提示(開発期間は2年)
NCC より県内外呼ともNCC のデータベースを利用す
る案を提示、併せて開発期間の短縮を要望
|
平成4年
|
4月
11月
|
協議が整わないためNCC よりリルーチング方式による妥協
案を提示
リルーチング方式での接続について合意
|
平成5年
|
3月
|
リルーチング方式での相互接続仕様について合意
|
平成6年
|
11月
12月
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県内呼の料金設定権について意見対立
接続協定の締結命令を申立て
NTTに対し接続命令
|
平成7年
|
3月
5月
|
VPNの相互接続について合意
NCC−VPNサービス開始
|
3.フリーホンの事例
平成3年
|
|
郵政省の番号研究会で「01B0の番号を中継系事業者が仕様可能
である」との整理がなされる
|
平成4年
|
5月
|
NCC より0130タイプのフリーホン接続についての協議を申
入れ
|
平成5年
|
11月
|
NTT 社内で事業領域問題、番号のポータビリティ問題を議論す
る必要があり、すぐに協議に応じられないとのコメント
NCC より番号のポータビリティは将来課題とすることで協議再
開依頼
|
平成6年
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5月
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NTT より一定期間方式を変更しない条件で協議に応じても良い
という回答あり
|
平成7年
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3月
5月
8月
|
VPN接続合意の中で信号網接続の協議開始を合意
番号研究会報告書
上記を受けて再申入れ
|
平成8年
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3月
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NCC GS折り返し及びリルーチング方式について創設費提示
|
4.フレームリレーの事例【解決済み】
平成4年
|
10月
|
NCCよりフレームリレーの網間接続及び伝送路接続を依頼
|
平成6年
|
6月
9月
10月
11月
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網間接続の協議実施について合意
伝送路接続は、異役務接続が未整理という理由でNTTは協議拒否
NTT より伝送路接続の協議開始の申入れ
NTT より伝送路接続はフレームリレーに限定にしたいとの条件
接続協定の締結命令申立てを申請
NTT は伝送路接続の受け入れを表明
申立ての取り下げ
サービス開始
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