電気通信審議会接続の円滑化に関する特別部会第10回会合議事要旨(平成8年11月22日公表)





1 日時
  平成8年10月30日(水)午後1時33分〜4時27分

2 場所
  郵政省審議会会議室(郵政省12階)

3 出席者
 (1)特別部会
  ア 委員
    増澤高雄(部会長)、齊藤忠夫、篠原滋子、園山重道、醍醐聰、百崎英
  イ 専門委員
    青井浩也、浅野正一郎、伊東晋、井上伸雄、大野幸夫、酒井善則、坂庭
   好一、佐藤治正、関口博正、手塚仙夫、三谷政昭

 (2)事務局
    渡辺信一審議会室長

 (3)郵政省
    谷公士電気通信局長 他

4 議題
  関係者からのヒアリング
  (1)日本電信電話株式会社 副社長 井上 秀一
  (2)DDI東京ポケット電話株式会社 社長 日沖 昭
  (3)社団法人テレコムサービス協会 会長 一力 健
  (4)株式会社タイタス・コミュニケーションズ 社長 木暮 浩明
  (5)株式会社ジュピターテレコム 社長 西村 泰重

5 模様
  関係者からのヒアリングの後、次のような質疑応答等があった。

  (1)日本電信電話株式会社 副社長 井上 秀一

   ア 特定事業者の定義には加入電話のほか、携帯電話、PHSも対象に加
    えるべきとのNTTの意見に関して、PHSや携帯電話にボトルネック
    独占性があるのかどうかということについて質問があり、携帯電話もP
    HSもいわゆる加入者系を押さえているという意味で、固定電話と同じ
    ような形になってくるのではないかとの回答があった。

   イ 既存のPHS事業者の設備を使わないと新しいPHS事業者のサービ
    スが参入できないということはなく、そこが固定電話とPHSや携帯電
    話との違いであり、数だけでは議論できないのではないかとの質問があ
    り、以下のような回答があった。

    ・ PHSの事業者がほかのPHS事業者の設備を使って参入してくる
     可能性はないかもしれない。しかし、PHS事業者のお客様にかけた
     いというような通常の通話を考えると、特定事業者の範囲を定める際
     の分母の中に携帯電話とPHSを入れてもいいのではないかという趣
     旨である。

   ウ トータルとして何%の加入者があるというのも一つの尺度ではあるが、
    競争促進という観点からは、新規参入したい人がどれだけ特定事業者の
    設備に依存しなければサービスが実現できないかという点が最も重要と
    考えているとの委員からの意見があった。

   エ 携帯・携帯間のトラヒックの回数ベースのシェアは数%であり、また、
    携帯・固定間であれば、片側ではNTTの加入線回線に依存していると
    いうことが一種のエッセンシャル・ファシリティになっているという現
    実を踏まえて、実態で考えないといけないのではないか、また、今現在、
    他事業者が事業展開する時に、実態からみてNTTの加入者回線以下は
    不可欠設備となっているのは動かせない事実ではないかとの質問があり、
    以下のような回答があった。

    ・ 実態論は十分意識しているが、加入者系というのが一つのサービス
     としてかなり不可欠的なニュアンスでずっと議論されてきた。したが
     って、携帯にしろPHSにしろ、固定電話を一々引くのと同じように、
     一つの加入者系として存在することから、それらを引くことで、加入
     者系という点でのいわゆるボトルネック性は十分除去されると考える。

    ・ いろいろなところで選択の幅ができれば、それはもうある面でボト
     ルネックはなくなるのではないかと考えている。したがって、ほかに
     選択性があれば、ルールについては余り規制色のないような、特定事
     業者という形でやらなくても、一つの営業ベースというか事業者ベー
     スという形で十分担保していけるのではないか。

   オ 接続装置の使用料の算定方法について、ルール案では、個別積上げで
    いくべきだという考え方だが、仮にそれが困難であって、何らかの創設
    費に保守費等の費用の比率を乗じる場合であっても、現行は全社平均値
    で乗じているが、これを接続会計により算出した値を用いて、接続との
    関連性を基本に置いた比率で乗じていくべきだとしており、こうした方
    法については、賛同しているのかとの質問があり、以下のような回答が
    あった。

    ・ 原則的に、創設費に費用比率を掛けるというやり方であり、新しい
     装置がほとんどのものについては、そうした形をとらざるを得ない。

    ・ 例えば、営業費用関係を除くとか、それから特化して別なNTTだ
     けで使っているものや、例えば付加サービス等に使っているものは除
     くとか、そういうようなことをして全社平均で使っているという形に
     なっている。

    ・ 相互接続用のコストからの全国平均であり、そういう意味では、大
     体趣旨は答申の趣旨になっていると思う。

   カ 接続関連費用の負担に関して、他事業者から要望を受けてネットワー
    クの改造、接続専用設備の設置を行ったときに、NTTユーザはその機
    能、装置を使用しないとのことだが、NTTユーザがその設備を利用し
    てNCC等の他事業者へつなげたときには、その設備を通るような気が
    するが、それは違うのかとの質問があり、以下のような回答があった。

    ・ NTTが料金設定をしているNTTのサービスを受ける場合には使
     わないという趣旨である。

   キ ルールの監視機関は、政策立案機関から独立した中立的、公的な第三
    者機関であるべきとの意見について、一般にこういった政策立案とその
    政策の実施過程を監視する機関を分離すべきか、一体的にやるべきかと
    いうことの一つの重要な判断のポイントは、利益相反があるのかどうか
    が大きいと思うが、こうした接続ルールの運営監視を行う主体が、政策
    立案機関から独立した主体である必然性、必要性というのはどういうと
    ころにあるのか、この接続ルールの場合に、政策を決める主体とそれを
    運営監視する機関が別々でないといけないというロジックはどこから出
    てくるのかとの質問があり、以下のような回答があった。

    ・ 政策として、新規参入を育成しようだとか、どうやって競争を導入
     するかとか、いろいろやられるが、そのようなスタンスとルールの中
     で両者の利害が一致しない場合、協議が一致しない場合に出てくる機
     能を一緒にしておかない方がその政策的な判断が入り込まないでいい
     のではないかということである。

   ク もともとこの接続ルールは、新しい参入を促し、早期のサービス開始
    を促すもので、このルールが厳正におこなわれているかどうかをモニタ
    ーするということは、政策目的の実現ということで、これは不離一体の
    ものであって、背反する要素は何もないのではないかとの質問があり、
    以下のような回答があった。

    ・ モニターをされることは結構だと思う。審判機能を中心とした実行
     機能を持つところには、大きな長期的な戦略を持って政策を立案する
     ようなところと一定の違いをもつことにより、政策に引っ張られない
     運営をしてほしいということである。

   ケ 接続の基本的ルールは、事業者に対して制約を課すが、逆にみれば行
    政もこれにより一種の制約を課されているわけであり、接続の基本的ル
    ール案では、手続き的なことも明確にしていることは、事業者間の交渉
    について透明性を求めるが、事業者と行政との関係についても透明な形
    でやっていただこうという意味があり、そういう意味ではルールは予見
    可能性、安定性を担保するためのものであるということではないかとの
    質問があり、以下のような回答があった。

   ・ 別に公的な機関でないものを求めているわけではなくて、公的な機関
    だが、それを政策的な部隊と離したほうがいいのではないかということ
    である。

   コ 技術的条件の約款への記載に関して、「全てを約款に記載すると、変
    更の都度、約款の改正が必要となり、接続の迅速化を阻害することから」
    というのは、要するに監督官庁の許認可が遅れるということを言ってい
    るのか、それとも、自己使用網については、開発意欲を削がないために
    開示を一部はずしたいということとも関連しているのかとの質問があり、
    以下のような回答があった。

   ・ 現実に遅れるだろうということで、標準的、基本的なものについては、
    約款という形である程度きちっとした扱いが必要だろうと思うが、その
    他については、技術の進歩等があるので、いわゆる技術参考書に出すよ
    うなスピード感がある程度必要なのではないかということである。

   サ これに対し、すべてというところに問題があるということなのかとの
    質問があり、これを肯定する回答があった。

   シ アンバンドル化の範囲について、機能をアンバンドル化してしまわな
    いというのは、何か合理的な理由があるのかとの質問があり、以下のよ
    うな回答があった。

   ・ ルール案には、アンバンドル化として、技術的に可能なものをアンバ
    ンドル化する、会計制度をつくる、料金を算定するという3点セットで
    書かれている。基本的にこういう3点セットでできるものは、網機能構
    成のものがほとんどである。基本的には網構成設備ごとの区分として、
    あとはものによって、できるできないというのが決まってくる。

   ス 今後検討すべき事項として、ユニバーサルサービスの確保の仕組みが
    何度か出てくるが、その確保の仕方について、何か考えがあるのかとの
    質問があり、以下のような回答があった。

   ・ 今までは、ユニバーサルサービスというのをNTT全体の経営の中で
    やってきたつもりであり、これは今までどおりやっていきたいと考えて
    いるが、この接続ルールでそういう部分について配慮してするものと、
    ユーザー料金を含めた全体の仕組みをどう見直していくかが、非常に大
    きな問題としてある。これは諸外国でも非常に論議されており、そうい
    う点を今後十分頭に置いて接続ルールをつくっていただきたい。

  (2)DDI東京ポケット電話株式会社 社長 日沖 昭

   ア 接続関連費用の負担の在り方について、「基本的な接続機能かどうか
    を判断するためのガイドラインを設けることが望ましい」とあるが、ガ
    イドラインについて具体的な案はあるのかとの質問があり、以下のよう
    な回答があった。

   ・ PHS接続装置の費用について、問題となっているハードの費用を含
    むか否かといった点についてのガイドラインが望まれる。しかし、他の
    事業者まで含めた一般的なガイドラインについての案は持っていない。

   イ 新ルールへの移行までの経過措置について、何か特に主張したいこと
    はないかとの質問があり、以下のような回答があった。

   ・ 新ルールの実現までに1年半〜2年かかると思うが、接続装置の費用
    負担は非常に大きいため、目安のつく部分については、早期に実現して
    いただきたい。

   ウ 交換機の持つべき妥当な機能について、何か提案があれば、NTTが
    示すものと比較ができると思うが、そのような用意はあるかとの質問が
    あり、以下のような回答があった。

   ・ 交換機について、接続に必要となる費用はソフト部分だけである、と
    いう点は方向性として出せると思う。また、NTTも我々もデータベー
    スを構築しており、コストの点でも単純な比較はできると思う。

  (3) 社団法人テレコムサービス協会 会長 一力 健

   ア 「基本的ルールに欠けている視点」として料金のことにしか触れてい
    ないが、接続の技術的条件等、二種事業者として他に述べたいことはな
    いかとの質問があり、以下のような回答があった。

   ・ 接続の基本的ルール案において、二種業の認知度が高まっているとこ
    ろは非常に評価している。ここでは、設定していただきたい条件の最重
    要課題を提案したものである。

   イ 電話サービスとデータ系サービスという2つの領域を言われているが、
    21世紀までいくと、データ系サービスということでまとめられるかと
    の質問があり、以下のような回答があった。

   ・ 要するに線を多様な目的のために使うということであり、一種事業者
    も二種事業者も頭を絞っていろいろやっていけばたくさん出てくるだろ
    う。そのためのルールと理解している。

   ウ 将来もっと新しいサービスがでてくる可能性があり、ルール案はその
    点について検討しきれていない面があるかもしれないので、この点につ
    いて何か意見があるかとの質問があり、以下のような回答があった。

   ・ 二種事業者の中にインターネットサービスプロバイダーが入って、
    1000社を越えようという勢いだが、NTTがOCNをやる場合には
    卸しと小売りという会計分離をして接続のルールも決めてやっていかな
    いといけないといった問題があり、グローバルな意味での発展を考えた
    場合、ルールが確定していないと大問題になるという認識を持っている。

  (4)株式会社タイタス・コミュニケーションズ 社長 木暮 浩明

   ア 相互接続を発信と着信に分けて議論すべきだという点については、現
    実の問題として長距離系と市内系の問題があり、加入者を持つ事業者と
    いう立場からは分かるが、長距離事業者の立場に立てば、発信と着信を
    区分する必要はあるのかとの質問があり、以下のような回答があった。

   ・ 例えばNTTの発信の部分をアンバンドルすることで、他事業者にと
    って使い勝手のよいものになるということは一見良さそうだが、逆に言
    うと代替する市内網のインフラ構築という投資が抑制されてしまうとい
    う効果を持つおそれがある。NTTの市内網に非効率性があるならば、
    長距離系NCCも代替する市内網を構築する方向に動くべきではないか。

   イ ABC手法を取り入れた総括原価方式でも限界があり、長期増分費用
    方式を採用すべきとのことだが、今回のルール案でも接続に関連した費
    用のみを基礎とした料金の算定を目指しており、長期増分費用方式と同
    様の視点にたったアプローチをとっていると考えており、この点につい
    てどう考えるかとの質問があり、以下のような回答があった。

   ・ 計算のベースとして、過去に実際に投資されたものをベースにするか
    将来的なコストでやるかは天と地ほどに違うと思う。過去に発生したコ
    ストを基本とする限りは、その事業者の非効率的な投資が結果として報
    われるということになるなど不合理であると考えている。

   ウ 接続ルールだけで特定事業者の非効率性が排除できるものではないの
    ではないかとの質問があり、以下のような回答があった。

   ・ 接続料金の算定方法だけで非効率性が十分に排除できるとは思われな
    いが、効率性を求めるインセンティブになり得ると思う。

   エ 日本で長期増分費用方式を採用すると、イギリスやアメリカと異なり、
    急速に人件費が上がっていることから、歴史的原価に比べて高くなるの
    ではないかとの質問があり、以下のような回答があった。

   ・ やってみないと分からないが、私どものラフな計算では、それでも一
    定の割合で安くなる。工事費はイギリスに比べて高くなると思うが、N
    TTが購入している交換機は、他事業者が購入するレベルよりも相当高
    いと思う。それから、伝送装置も高いと思う。

  (5)株式会社ジュピターテレコム 社長 西村 泰重

    接続関連費用について、現在NTTから37億円強の年間経費の相互分
   担の申し出を受けているとのことだったが、これはどういう費用であって、
   今回のルール案で解決しそうなのか、また、解決できないならばどのよう
   にしたら良いのかとの質問があり、以下のような回答があった。

   ・ 37億円の内容については、NTTの全国約5000カ所の交換機の
    ソフトウェアの改造費用であり、主として料金計算に関するものである
    と理解している。NTT側からの提案としては、そのほぼ5割をNTT
    が負担し、残りを新規参入事業者で按分するというものである。私ども
    の基本的な主張は、私どもの交換機の日本化費用については自分たちで
    負担するので、NTTの改造費は、NTTが自社で負担すべきというこ
    とである。


      (文責:電気通信審議会事務局。事後修正の可能性あり。)