接続の基本的ルール案に関する意見及びそれに対する考え方(案)
電気通信審議会接続の円滑化に関する特別部会において、9月20日(金)に
「接続の基本的ルール案」を公表し、この案に関して広く関係者の意見を求めた
ところ、電気通信事業者、外国政府機関を含む53者から意見が提出された。
提出された意見に対する考え方は以下のとおりである。
I 基本的な考え方
1 接続ルールの見直し
【意見の概要】
ルール案において「変化に対応して柔軟に見直していくべきである」と
していることに対し、見直しの方法及び時期を明確にすべきとの意見が多
く出されている。
【考え方】
接続ルールの見直しの方法及び時期については、定期的に見直すことと
するとともに、次回の見直し時期については、今般の接続ルールによる会
計データに基づく接続料金の算定が平成11年度に行われる見込みである
ことから、平成12年度を目途に行うことが適当である。
なお、早急に見直すべき問題が生じた場合には、次回の見直し時期を待
たずに、個別に対応していく必要がある。
2 発信と着信の区別
【意見の概要】
発信は代替する市内網があるが、着信先は事業者が選択できないことか
ら、発信と着信を区別して考えるべきとの意見が出されている。
【考え方】
(1)接続ルールは、発信と着信で概念される2つの加入者系ネットワー
ク間の接続だけではなく、中継系ネットワークも含めた多様なネット
ワーク間の接続を対象としており、また、接続の義務化等の一般的な
ルールは、第一種電気通信事業者のネットワークの公共性等に着目し
たものであることから、発信と着信の区別なく適用されるべきである。
(2)また、特別な接続ルールについては、加入者回線総数の過半数を占
める不可欠設備のボトルネック性に着目したものであり、発信と着信
を区別する必要はないものと考えられる。
(3)なお、仮に、不可欠設備以外の加入者ネットワークが着信において
一定の独占性を有するとしても、
1.特定事業者以外の加入者系事業者も特定事業者と接続することが不
可欠であり、また、特定事業者との接続協定は公開されることから、
これを基本として他事業者との接続が行われていくものであること
2.加入者系事業者が特定事業者との接続において不当な条件を設定す
ることは想定されず、したがって、これを基本として接続される他事
業者との接続においてもそのような条件が設定されることは想定され
ないことから、当面は一般的な接続ルールを適用することで足りると
考えられる。
II .一般的な接続ルール
1 接続の義務化
【意見の概要】
(1)すべての第一種電気通信事業者に対して接続を義務づけることにつ
いては、「利用者利益の増進」、「インフラ的性格」等を理由として、
積極的に肯定する意見及びやむを得ないとする意見や、接続の義務化
を前提として接続を拒否できる正当な理由等について追加的な検討を
要望する意見がほとんどである。
(2)これに対し、一部の第一種電気通信事業者から、
1.接続の義務化は事業者間協議が機能しない市場支配力が存在する
場合に限定すべきであること
2.事業者間提携を阻害するおそれがあること等を理由として、特定
事業者に限定すべきとの意見が出されている。
【考え方】
以下の理由により、ルール案のとおり、すべての第一種電気通信事業者
に対して接続を義務づけることが適当である。
1.接続の義務化については、上記提出された意見の状況からほとんどの
関係者に支持されていると考えられること
2.接続を拒否できる正当な理由については、「接続を拒否し得る正当な
理由について」の項で述べるように、業務運営上の支障が生じる場合も
含まれることとしており、接続が義務化される第一種電気通信事業者の
利益にも十分な配慮がなされるものであること
3.反対意見のうち、接続の義務化を市場支配力が存在する場合に限定す
べきとの点については、接続の義務化の趣旨は、
(ア)第一種電気通信事業者のネットワークは、国民生活や社会・経済活
動の基盤となる公共性の高いものであること
(イ)電気通信サービスは、他のネットワークと接続することにより事業
展開が可能となるという特徴を有しており、接続はサービス市場にお
ける利用者利益の増進や公正有効競争の促進に大きく係わるものであ
ることから、市場支配力が存在する場合に限定することは適当ではな
いこと
4.反対意見のうち、事業者間提携を阻害するおそれがあるとの点につい
ては、事業者間提携は、ワンストップショッピングの提供や、パッケー
ジ割引の提供、共同マーケティング等、利用者へのサービス提供におい
て行うことが可能であり、接続の義務化により事業者間提携のメリット
がなくなるものではないこと
5.米英においても、特定事業者以外の電気通信事業者であっても接続義
務が課せられていること
2 接続協定の公開
【意見の概要】
(1)公正を期すため妥当な措置と考える等、接続協定の公開を妥当とす
る意見が出されている。
(2)これに対し、協定の公開を一律に義務化する合理的理由に欠ける等、
特定事業者との接続協定に限定すべきとする意見が出されている。
(3)また、付加的高機能に関する点まで公開するのは問題があるとして
公開の範囲の検討を要望する意見が出されている。
【考え方】
(1)接続協定を公開する理由は、不当な差別的取扱いを防止し、透明、
公平かつ迅速な接続を確保することであり、接続の義務化の項目でも
述べたように、
1.第一種電気通信事業者のネットワークは、国民生活や社会・経済活
動の基盤となる公共性の高いものであること
2.接続はサービス市場における利用者利益の増進や公正有効競争の促
進に大きく係わるものであることから、特定事業者との協定に限定す
ることは適当ではない。
(2)付加的高機能に関する点まで公開するのは問題があるとする意見に
ついては、公開することにより協定当事者の利益が阻害される場合に
は非公開とすべきと考えられるが、一般的に接続条件に関してそのよ
うなケースはほとんど想定されないと考えられる。
(3)米国においても、特定事業者以外の電気通信事業者であっても接続
協定は公開することとされている。
3 接続を拒否し得る正当な理由
【意見の概要】
(1)接続を拒否し得る正当な理由について明確な指針を設けるべきとす
る意見が多く出されている。
(2)また、接続の義務化に関連して、接続義務を課す場合には事業者の
業務運営に支障を来さないものであることが必要であるとする意見や、
一定の事業規模に満たない者について義務の執行を差し控えるか否か
について検討すべきとする意見が出されている。
【考え方】
(1)接続を拒否し得る正当な理由については、接続協議の円滑化を図る
とともに、接続行政の公正な運営を確保する観点から、接続ルール施
行までに、可能な限り類型化して定めることが適当である。
(2)正当な理由の具体的な内容について、ルール案ではネットワークへ
の損傷を与えるおそれがある場合及び不当な条件での接続の提供を求
められる場合を挙げているが、意見として出されている業務運営上の
支障が生じる場合も含まれると考えられる。
(3)なお、小規模事業者については、接続に応じることにより業務運営
上の支障が生じることが比較的多い可能性はあるが、義務化の趣旨に
鑑み、規模にかかわらず業務運営上支障がなければ接続に応じるべき
ものである。
4 接続ルールの対象サービス
【意見の概要】
(1)ルール案は電話系サービスを意識しているが、データ系サービスへ
の配慮をすべきとする意見や、今後提供されるOCNのような新サー
ビスにも適用すべきとする意見が出されている。
(2)これに対し、ルールは電話サービスに適用し、他サービスについて
は自主的に準用すべきとする意見が出されている。
【考え方】
ネットワークの機能の利用方法を特定のサービスに限定することは、接
続事業者による利用者ニーズに対応した様々なサービスの提供が制約され
るおそれがあることから、接続ルールの対象を特定のサービスに限定する
ことは適当でなく、今後のサービスの多様化・高度化に対応できるルール
とすることが必要である。
5 会計の整理の義務づけ
【意見の概要】
すべての第一種電気通信事業者は、基本的に接続に関する会計を整理し、
この結果に基づき料金表・約款を作成することが望ましいとの意見が出さ
れている。
【考え方】
(1)不可欠設備を有する特定事業者以外の事業者の間の接続については、
当事者間協議により、円滑に接続条件に合意することが期待されるも
のであり、このようなケースにおいて、会計を整理し、その結果に基
づき料金表・約款を作成することを義務づけることは適当ではないと
考えられる。
(2)ただし、接続協議の円滑化という観点から、接続料金の算定の考え
方について他事業者から説明を求められれば、可能な範囲で説明を行
うことが望ましい。
6 標準的な協議期間
【意見の概要】
接続の迅速化を図る観点から、事業者間協議について標準的期間を定め
ることを検討すべきとの意見や、相互接続交渉期間を勧告すべきとの意見
が出されている。
【考え方】
(1)接続協議に要する期間は可能な限り短いことが望ましいが、多様な
事業者による多様な接続形態が想定されることから、接続協議期間を
一律に定めることは適当でない。
(2)なお、今回のルール案では、接続の義務化、裁定手続の柔軟な利用
手段を定めており、これらにより、協議の意図的な長期化には対応が
可能である。
7 第二種電気通信事業者に対する接続義務化
【意見の概要】
すべての第二種電気通信事業者又は特別第二種電気通信事業者に対して
接続を義務づけるべきとする意見が出されている。
【考え方】
(1)第二種電気通信事業者は、電気通信回線設備を第一種電気通信事業
者に依存していることや、第一種電気通信事業者のサービスとの差別
化を図りながら、多種多用なサービスを提供するところに事業として
の特性があることから、第二種電気通信事業者に対してまで接続を義
務化することは必要性に乏しく、適当でない。
(2)なお、特別第二種電気通信事業者については、現行電気通信事業法
において、接続に関して不当に差別的な取扱いを行っている場合には
業務改善命令を出し得ることとされている。
8 第二種電気通信事業者が利用者約款により接続する場合の卸料金の導入
【意見の概要】
(1)卸料金の導入が必要であると断定すべきである等、卸料金を導入す
べきとする意見が出されている。
(2)これに対し、第一種電気通信事業者の経営上の問題であるとする意
見、ユーザに提供している各種サービスを効果的に利用すべきとする
意見等、卸料金の導入のルール化に否定的な意見が出されている。
(3)また、第一種電気通信事業者の設備投資意欲を維持するようにすべ
きとの意見が出されている。
(4)更に、市内サービスの再販を認めるべきである等、再販をルール化
すべきとする意見や、データ系サービスにおいて特定事業者と第二種
電気通信事業者との間で公正有効競争が成立するようなルール策定を
要望するとの意見が出されている。
【考え方】
(1)接続料金については、一般の利用者向けサービスとのコスト上の相
違が前提とされた料金設定を行うこととしているが、第二種電気通信
事業者と第一種電気通信事業者との間の接続については、実態として
利用者約款において行われることが多いことから、第一種電気通信事
業者が利用者約款においていわゆる卸料金を設定することが、透明、
公平かつ迅速な接続という観点から望ましい。
(2)第二種電気通信事業者によるネットワークの調達の局面においても、
公正有効競争の促進の観点から、米国のように、特定事業者に関して
は、卸料金の導入が検討されるべきである。
(3)ただし、卸料金の設定に当たっては、第一種電気通信事業者がイン
フラ整備のインセンティブを維持できるよう配慮する必要がある。
III.特別な接続ルール
1 総論
(1)特定事業者を決定するための加入者回線占有率
【意見の概要】
(1)50%という基準は妥当とする意見を含め、ルール案の特定事業者
の定義は妥当とする意見が多く出されている。
(2)これに対し、50%の基準は厳格すぎるため潜在的に市場支配的地
位にあるネットワーク運営者が除外されているという意見や、他事業
者の選択可能性が少ないという意味で70%が適当とする意見が出さ
れている。
(3)また、特定事業者のグループ企業である事業者についても、特定事
業者に準じた扱いをすべきとする意見が出されている。
【考え方】
(1)特定事業者を決定するための加入者回線占有率については、
1.加入者回線の過半数を有していれば、常に他事業者より多くの加入
者回線を有していることから、交渉上優位な立場に立つこと
2.独占禁止法における「独占的状態」の基準においても50%超とい
う基準が採用されていること
3.意見が出されている70%超という基準については根拠が明確にさ
れていないこと
4.市場支配力という観点からは、独占禁止法における合併の重点的審
査対象案件の基準は25%であり、EU相互接続指令案においても2
5%という基準が設定されていることから、50%を下回る基準とす
ることも考えられるが、特別な接続ルールは独占的なボトルネック設
備である「不可欠設備」を有し、圧倒的な市場支配力を有する事業者
に対するものであることから、ルール案で示した50%超という基準
が適当である。
(2)また、特定事業者との接続は特別なルールによって公平性が確保さ
れることから、特定事業者のグループ企業である事業者が特定事業者
の圧倒的な市場支配力を背景として接続協議において優位に立つこと
はないと考えられる。
(3)なお、接続ルールの見直し時に、この基準についても、実態を踏ま
えて見直すことが適当である。
(2)特定事業者を決定するための加入者回線占有率を算定する市場の範囲
【意見の概要】
(1)直接的に都道府県という基準を妥当とする意見は出されていないが、
ルール案の特定事業者の定義は妥当とする意見が多く出されている。
(2)他方、「各事業者の業務区域単位」で判断すべきとする意見が出さ
れている。
【考え方】
(1)都道府県は社会経済生活圏として一体性を有していることから、通
信サービスの大半を占める電話トラフィックは、約8割が同一都道府
県内に終始している。
(2)こういった利用実態を踏まえ、ネットワークは概ね都道府県を構成
単位として形成されており、このようなネットワーク構成を前提とし
て、現時点においては、接続は、都道府県単位で行われることが一般
的となっている。
(3)このため、特定事業者を決定するための加入者回線占有率を算定す
る市場の範囲については、都道府県とすることが適当である。
(4)なお、平成10年から本格的な加入者交換機レベルでの接続が行わ
れるなど、都道府県より小さい区域を単位とする接続が増加すること
が予想されることから、上述した接続ルールの見直し時に、実態を踏
まえて見直すことが適当である。
(3)特定事業者を決定するための加入者回線総数の算定における事業者の取
扱い
【意見の概要】
(1)移動体通信事業者を含めないこととすることは妥当とする意見を含
め、ルール案の特定事業者の定義は妥当とする意見が多く出されてい
る。
(2)これに対し、移動体通信の急激な進展を踏まえ、携帯電話及びPH
Sを加えるべき等、移動体通信事業者を含めるべきとする意見が出さ
れている。
(3)また、固定通信と移動通信の市場を区分し、それぞれの市場で特定
事業者を判断すべきとする意見が出されている。
【考え方】
(1)特定事業者を決定するための加入者回線総数の算定における移動体
通信事業者の取扱いについては、
1.移動体通信事業者は基地局間又は基地局と交換局との間の伝送路に
固定通信事業者の設備を使用しており、また、移動体通信事業者が扱
う通信の約86%は固定通信事業者との間のものであり、固定通信事
業者への依存度が高いこと
2.米国においても、移動体通信事業者は接続ルールにおいて当面LE
C(地域電話会社)に含めない取扱いが行われていることから、ルー
ル案のとおり当面は算定に含めないこととすることが適当である。
(2)なお、上述した接続ルールの見直し時に、移動体通信事業者の取扱
いについて、実態を踏まえて見直すことが適当である。
(4)不可欠設備の範囲
【意見の概要】
(1)不可欠設備の範囲は妥当であるとする意見、更には、特定事業者の
県内・県間の設備と一体として接続するような場合には県間部分の接
続に関しても対象に含めるべきとする意見や特定事業者の長距離ネッ
トワークについても自社営業部門と他事業者を同一条件とすべきとす
る意見が出されている。
(2)これに対し、ボトルネック性という意味で一体をなすのは市内設備
であるとする意見が出されている。
(3)また、ある県でシェア50%を超え、他の県ではシェアが50%以
下の場合でも両県において特定事業者とすべきとの意見が出されてい
る。
(4)更に、不可欠設備について、運用支援システムを含めるべきとする
意見や具体的な設備を明記すべきとする意見が出されている。
【考え方】
(1)不可欠設備の範囲については、
1.上述したように、概ね都道府県を構成単位として加入者回線と一体
として構成されるネットワークが形成されていること
2.接続の実態も、都道府県単位で行われていること
3.県間通信設備については、他事業者との代替性が高いことから、ル
ール案のとおり概ね県域をカバーする設備とすることが適当である。
(2)ただし、国際通信事業者のように、中継交換機の上位階層の交換機
において接続しており、他事業者の設備を利用することが困難な場合
については、当該交換機と中継交換機との間の設備についても、接続
料金の算定、技術的条件の開示、接続関連費用の負担等について特別
な接続ルールの考え方に基づいて接続が行われることが望ましい。
(3)また、ある県でシェア50%を超え、他の県ではシェアが50%以
下の場合については、両県の設備がネットワークとしてつながってい
れば、シェアが50%を超える県の設備との接続において交渉上優位
な立場に立ち得ることを背景として、シェアが50%以下の県の設備
との接続においても同様の立場に立ち得ることから、シェアが50%
以下の県の設備についても不可欠設備として扱うことが適当である。
(4)接続に関する会計の対象となる具体的な設備や料金表・約款におい
て接続条件を明確化すべき具体的な設備や機能については、電話網及
び専用網に関しては接続ルール別紙3及び別紙4において考え方が示
されているところであり、その他の設備についても、これに沿って判
断され、接続ルールが施行されるまでに明記されることとなる。
なお、これらの設備には、故障監視等の不可欠設備の運営支援シス
テムも含まれる。
(5)なお、不可欠設備の範囲については、上述した接続ルールの見直し
時に、実態を踏まえて見直すことが適当である。
2 料金表・約款化
(1)局舎・電柱・管路の提供
【意見の概要】
(1)他事業者が接続に必要な設備をコロケーションする場合、スペース
の効率的使用及びセキュリティの確保のため、特定事業者に対する保
守委託が望ましいとの意見が出されている。
(2)また、管路等の空き情報の開示を義務化すべきとする意見が出され
ている。
【考え方】
(1)コロケーションについては、セキュリティの確保等の観点から、特
定事業者による保守受託の形態で行うことも認められるべきである。
(2)また、管路等の空き情報については、接続ルール第IV章第1節4
(4)において提供が義務づけられる不可欠設備との接続に必要な情
報に含まれるものである。
(2)接続に要する期間
【意見の概要】
接続の迅速化を図る観点から、接続に要する期間の規定を新たに設ける
べきとの意見が出されている。
【考え方】
迅速な接続を確保するために、接続に要する標準的な期間を定めること
が適当である。
具体的な期間については、事業者及び接続方法により異なると考えられ
ることから特定事業者が約款において定めることとし、約款の策定手続に
おける他事業者等の意見反映の過程において、その意見を十分に考慮する
こととする。
(3)他事業者による料金表・約款手続の利用
【意見の概要】
(1)他事業者による料金表・約款手続の利用については、多数の事業者
による接続の円滑化等の観点から適切な内容であるとの意見が多く出
されている。
(2)また、他事業者による当該手続の利用に際しては、接続会計制度に
基づく料金算定、毎年の見直し、資料の公開、アンバンドル等を要し
ないこととする等簡易に利用できるようにすべき、あるいは、簡便な
料金算定方法によることを可能とすべきとの意見が多く出されている。
【考え方】
(1)他事業者による料金表・約款作成の手続の利用を促進し、多数事業
者間の接続を円滑化する観点から、他事業者が当該手続を利用する場
合の当該事業者の負担の軽減を図ることとする。
具体的には、特定事業者に課された特別なルールである接続会計制
度に基づく料金算定、毎年の見直し、アンバンドル等の実施は要しな
いものとする。
(2)他方、手続きの透明性確保の観点から、申請資料の閲覧及び他事業
者等の意見を述べる機会の確保については特別なルールを適用するこ
ととする。
3 接続会計制度の創設
(1)会計分離の基本方針及び費用帰属の手法
【意見の概要】
(1)営業会計との分離のために特定事業者に「不可欠設備管理収支型」
の接続会計制度を義務づけることについては、賛成する意見がほとん
どである。
(2)設備部門と営業部門との間の共通費・間接費帰属の手法について、
ABC手法の導入に賛成する意見が多く、その内容と実施時期を明示
し正当性検証のため他事業者への照会を行うべきとの意見も出されて
いる。
一方、こうした費用帰属手法等の導入に際しては、費用対効果、設
備の共有等の実態、システム面の準備等の考慮が実務上重要であると
の意見や、ABC手法の全面適用はルール運用コストのミニマイズの
観点から適当でないとの意見、費用帰属手法の選択には各手法の得失
を明らかにするなど更に検討が必要であるとの意見も出されている。
(3)接続会計と同じく公正有効競争上の理由から導入されているNTT
事業部制収支の必要性やその接続会計との関係を明らかにすべきであ
るとの意見も出されている。
【考え方】
(1)接続会計における費用帰属の適正化については、ルール案において
も「ABC手法などを導入」としており、得失を考慮したABC以外
の手法の利用・併用も想定されている。
費用帰属の具体的内容については、郵政省において、事業者、有識
者等の参加や意見も得て速やかに策定作業に着手し、接続会計が平成
10年度を目途に実施できるよう準備することとする。
(2)NTT事業部制収支は、NTTが独占的な地域通信業務と競争的な
長距離通信業務とを一体的に運営している特異な市場構造を踏まえて、
競争的分野と独占的分野に対応するよう長距離通信事業部と地域通信
事業部とを会計分離するとともに、11の地域通信事業部の財政状態
及び経営成績を明らかにすることでその経営の効率化の促進を図るこ
とを目的として導入されたものである。
これに対し、今回のルールにおける接続会計は、一定規模(都道府
県)の市場において加入者回線の過半を有する特定事業者の不可欠設
備との適正な接続の確保のため、その使用料金を合理的に算定するこ
とを目的としたものである。
したがって、両者はその目的、手段を異にしており、各々、政策目
的を果たす上で必要なものである。
接続料金は、これまで、NTT事業部制収支における地域通信事業
部の費用を基礎として算定されてきているが、実態として接続ルール
第I章の現状分析で指摘されたような問題が生じており、第IV章第
3節に述べられたとおり、接続料金の算定に特化した会計制度の創設
が求められているところである。
(2)接続会計及び料金算定に関する情報の開示
【意見の概要】
(1)接続会計に関する報告や特定事業者の接続料金算定に関する情報を
開示・閲覧することについては、情報の非対称性に対処する等の趣旨
から賛成する意見が多く出されている。
(2)一方、情報開示に当たっては株主利益等への配慮が必要であるとの
意見や、詳細なコストデータの公開は競合他社に特定事業者の経営内
容を公開することとなり公正競争上の問題があるとの意見も出されて
いる。
(3)これに対しては、営利事業としての守秘義務に触れるデータや主張
の開示はできないというのは疑問が多く、主張・論拠を広く公開する
ことで誰もが納得できる公平な結論が得られやすくなるとの意見も出
されている。
【考え方】
(1)特定事業者の接続料金は、他事業者の経営に大きな影響を与えるば
かりでなく、最終的には利用者料金を左右する性格のものである。し
たがって、接続料金算定に関する情報について、企業・株主利益保護
の名目で安易に開示を制限することは適当でないと考えられる。
(2)一方、商法において、会計の帳簿及び書類の閲覧は、単独株主権と
してではなく少数株主権(持株比率3%以上)として規定されており、
これは、いわゆる「会社荒らし」的権利の濫用を防止する趣旨である
こと、また、競業者の閲覧請求に対してはこれを拒否できるとされて
いることに鑑みれば、「帳簿及び書類(商業帳簿、日記帳、仕訳帳、
元帳、補助帳その他商法上作成を義務づけられていない帳簿及び書類
(伝票、領収証、会計に影響ある契約書を含む。)と解されている。)」
を直ちに一般に公表させたり、多数の他事業者に閲覧させることには
慎重さも求められる。
(3)したがって、接続会計報告書や料金表・約款申請資料におけるコス
ト等の一般への開示に当たっては、会計の内容や料金算定の適正性を
他事業者が判定可能となるよう、十分な詳細度の勘定科目や附属明細
表等を上記商法規定にも配慮して定めることとする。
4 接続料金の算定
(1)料金算定の方針及び営業費・試験研究費の扱いについて
【意見の概要】
(1)接続料金の算定を接続会計の結果に基づき設備毎に区分された費用
に基づいて行うことについては、これに賛成の意見が多く出されてい
る。
他方、後述の長期増分費用方式の導入を求める関係者からは、この
算定方法は特定事業者の実績原価・歴史的原価を基礎としており、不
効率性の排除の点で適当でないとの意見が出されている。なお、これ
に対し、歴史的原価に基づく算定を積極的に評価する意見も出されて
いる。
(2)接続料金原価の範囲に関し、ルール案が営業費・試験研究費の大宗
が除外されるとしたことに対し、このような費用範囲のルール化は必
要であるといった意見や、かかる費用の除外は適当であるとする賛成
意見が出されている。
他方、費用のルール化に当たり日本電信電話株式会社法上の電気通
信技術研究の責務及び業務運営上のインセンティブを考慮することを
要望する意見や、試験研究費を一律に除外することは接続や網全体を
将来的に維持する研究開発費を特定事業者のみが負担することになり
研究開発のフリーライドとインセンティブ阻害をもたらす場合がある
との意見が出されている。
【考え方】
(1)今回のルールの下での接続料金算定における特定事業者の試験研究
費については、接続会計の考え方に従い、不可欠設備の管理運営に必
要な試験研究費を特定事業者が明確にした上で、他事業者とユーザー
営業部門とが同一の条件で負担すべきものとして不可欠設備管理部門
の費用に計上する。特定事業者のユーザー営業部門に帰属する試験研
究費はこうした趣旨から除外される。
(2)一方、特殊会社であるNTTには日本電信電話株式会社法に基づく
「電気通信技術に関する実用化研究及び基礎的研究の推進並びに成果
普及」の責務があり、後者の基礎研究については、その性格上、上記
のような区分が困難な面がある。
(3)法律に定められたNTTの責務への配慮は必要であるが、他方、N
TTが現実に行っている基礎研究のどれだけの部分がこうした責務の
遂行のために行われているのかという検証のないままに、特定事業者
であるNTTの基礎研究費用(あるいはその一定割合)を無条件で接
続原価に含めて他事業者の負担を求めることは適当でない。
(4)今回のルールの適用に際しては、NTTの基礎研究費用についても、
一律に除外するものではないが、上記接続会計の考え方に従い、不可
欠設備管理部門への帰属の明確化が可能なもののみ接続料金原価への
算入を認め、それ以外のものは除外することとする。
(2)長期増分費用方式の検討とスケジュール
【意見の概要】
(1)長期増分費用方式については、特定事業者の過去の不可欠設備運営
の不経済性により生じた費用が接続料金原価に算入されることがない
等の理由により、その早期導入が望ましく、モデルの作成に早急に着
手すべきとの意見が多く出されている。
(2)さらに、長期増分費用方式の検討方法及び検討期間、導入時期等を
含めたスケジュールを具体的に明示すべきとの意見も多く出されてい
る。
【考え方】
(1)長期増分費用方式による料金算定は、接続会計の結果を基に変換計
算を行うアプローチと、会計記録と離れた技術モデルを構築し推計を
行うアプローチとに大別される。これらについては、その算定に相当
期間の準備を要するものであることから、接続ルールの見直し時期ま
でに、郵政省において、事業者、有識者等の参加や意見も得て検討を
行なうことが適当である。検討期間においては、
1.外国のモデル(米国4例、英国2例)の内容解析
2.計算の前提となる不可欠設備に関するフォワード・ルッキングな
コスト・データの収集
3.現実性のあるモデルの構築
等の作業を行うことが必要である。
(2)長期増分費用方式の扱いについては、上記作業の結果を踏まえ、接
続ルール見直し時に決定することとする。
(3)不可欠設備の効率化インセンティブ
【意見の概要】
特定事業者の不可欠設備の運営の効率化について、長期増分費用方式の
ような将来コストに基づくモデルの作成やプライスキャップ規制等のイン
センティブ規制を導入して特定事業者の合理化努力を促す必要があるとの
意見や、構造的に合理化努力や経済性の追求が図られる手法の早期導入が
望ましいとの意見が出されている。
【考え方】
(1)今回のルールに基づく接続会計と接続料金算定においては、ABC
手法の導入などにより「接続との関連性」を厳密に反映した費用帰属
を行うこととされている。また、料金表・約款の認可に当たり、不可
欠設備運営の著しい不経済性により生じた費用が接続原価に算入され
ることのないよう制度の適正な運用を行うこととされている。
(2)長期増分費用方式については、接続ルールの見直し時期までに所要
の作業を行い、接続ルール見直し時にその扱いを決定する。
(3)インセンティブ規制については、政府の「規制緩和推進計画」の方
針に沿って、今後の公正有効競争環境の整備の状況も踏まえ、料金規
制の更なる弾力化を図る過程で検討していくこととする。
(4)料金算定と料金適用との間のタイムラグ及び不可欠設備運営の効率化利
益の扱い
【意見の概要】
(1)料金算定年度と料金適用年度との間にタイムラグが生じることから
料金表・約款の適用時期及びこれに伴う精算の方法等についてあらか
じめ規定することが必要であるとの意見が出されている。
(2)また、不可欠設備運営の効率化により生じた特定事業者の利益につ
いて、これを他事業者に還元することは妥当であるとの意見や料金原
価の低減としてユーザー料金及び接続料金に反映すべきとの意見が出
されている。これに対し、こうした利益は、第一義的に利用者に還元
し、次に特定事業者の効率化インセンティブを確保することが必要で、
その上で必要に応じて他事業者への還元を検討すべきとの意見も出さ
れている。
【考え方】
(1)特定事業者は、前年度の接続会計の結果に基づき料金表を見直し、
その改訂を行った場合には、当該年度の期首に遡って新料金を適用し
て他事業者の支払済額との精算を行うこととする。
(2)特定事業者の不可欠設備運営の効率化や稼働率の向上によって同設
備の管理部門に生じた、所定の資本コストを上回る利益は、同一条件
で営業部門と他事業者とに還元され、最終的には各々の利用者に還元
される。
その取扱いの具体的内容については、接続料金に適用される資本コ
スト水準の設定方法とともに料金算定要領において定めることとする。
5 技術的条件
【意見の概要】
(1)接続に必要となるすべての技術的条件を約款に規定することを義務
づけることについては、「透明性の確保」、「利用者及び公正有効競
争条件の確保」等を理由として、肯定する意見が多く、これを前提と
して技術的条件の変更・追加に係る約款改正の迅速性の確保を要望す
る意見がほとんどである。
(2)他方、一部の第一種電気通信事業者から、すべての技術的条件を約
款に規定すると、変更の都度、約款の改正が必要となり、接続の迅速
化を阻害することから、約款への記載は標準的な接続パターンの基本
的内容とすべきとの意見が出されている。
(3)技術的条件は、基本的には、TTC等の標準に可能な限り準拠する
とともに、標準に該当するものがない場合はその技術の公の場での標
準化を促すような規定を追加する意見が出されている。
(4)NTTがサービスインしたサービスで、外販許可が下りず、対向装
置を用意できないことがあることから、外販許可の迅速化も「10.
その他接続に必要な事項」の中に明確に入れてほしいとの意見が出さ
れている。
【考え方】
(1)約款に記載する技術的条件の範囲については、公正中立性・透明性
確保の観点から、接続に必要となるすべての技術的条件を約款に規定
することを特定事業者に義務づけることが適当である。
(2)技術的条件の変更・追加に伴う約款改正の迅速化の確保については、
公正中立性・透明性が確保される範囲において、徒に長期間を要する
ことがないよう、迅速な手続きとすることが必要である。なお、番号
方式のような他の法令に基づき規定される約款記載事項の変更等につ
いては、届け出による等とすることが適当である。
(3)なお、英国では、事業者、メーカー及びユーザが実装可能な技術仕
様(それにより製品化することが可能となるような詳細な技術仕様)
について協議する場としてNICC(Network Interoperability
Consultative Committee)が設立されている。我が国としても、今
後より一層円滑な相互接続を推進していくためには、国際的な動向も
踏まえ、事業者、メーカー等の関係者が協議を行い、実装可能な技術
仕様を策定、公開し、円滑な利用を可能とする体制を確立するべきで
ある。
(4)外販許可の迅速化については、不当な外販許可の遅延は反競争的行
為に該当する。なお、NTTは平成7年8月30日、ハード開示(販
売権の許諾)を含め、「網の相互接続に不可欠な技術をはじめとする
NTTの技術は、原則としていつでも適正な対価を前提として開示す
る。」旨を公表し、標準的な事務処理期間(許諾の判断を1ヶ月以内、
対価の合意等を含む契約完了を3ヶ月以内)を定めている。
6 網構成設備・機能の細分化(アンバンドル)
【意見の概要】
(1)アンバンドルの規定については、「多様な接続形態の実現」、「競
争の促進」等を理由として、積極的に肯定する意見がほとんどである。
(2)データ通信網構成設備など個別のアンバンドル要素の追加を要望す
る意見が多く出されている。
(3)一部の第一種電気通信事業者から、アンバンドルの単位は網構成設
備ごとの区分とすべきとの意見が出されている。
(4)「特定事業者は技術的に実現不可能であることを一定期間内に示せ
ない場合には、技術的に可能とみなす。」とあるが、この一定期間に
ついて明確化した方がよいとの意見が出されている。
【考え方】
(1)アンバンドルの単位については、他事業者が多様な接続を実現し、
競争の促進及び相互接続の推進の観点から、網構成設備ごとのアンバ
ンドルに限定することなく、機能ごとのアンバンドル等についても積
極的に推進するべきである。
(2)個別のアンバンドル要素の追加については、他事業者からの要望に
基づき、技術的に実現可能なものについては特定事業者がアンバンド
ルを提供することを義務付けており、これにより技術やサービスの進
展に応じた多様なアンバンドルの進展が可能である。
(3)特定事業者が技術的に実現可能か否かを判断するための期間はでき
る限り短いことが望ましいが、具体的な期間については接続方法によ
り異なると考えられることから、特定事業者が約款において定めるこ
ととし、約款の策定手続における他事業者等の意見反映の過程におい
て、その意見を十分に考慮することとする。なお、NTTは、同社が
公表している「相互接続ガイドブック」において、接続申込に対する
標準的な回答期間を、NTT網の改造を要する場合、申込受付から4
ヶ月以内としている。
7 接続関連費用の負担の在り方
【意見の概要】
(1)「基本的な接続機能を提供するために発生するネットワークの改造
費用については、ネットワークが本来有すべき機能を備えるための費
用とみて、改造を施した設備に一般的に発生する費用として取り扱う」
旨のルール案の考え方については、競争促進的である等、妥当とする
意見が多く出されている。
(2)更に、接続用交換機(IGS)、PHS接続装置、加入者交換機接
続のための網改造費等の取扱いについて明記すべきとの意見が出され
ている。
(3)これに対し、現在のネットワークでは、他事業者の要望によりネッ
トワークの改造、接続専用の設備の設置を実施しており、これらは接
続事業者の負担とすべきとの意見が出されている。
(4)また、費用の回収方法に関して、利用者料金として回収するか否か
は特定事業者の判断に委ねるものとする意見、他事業者のトラフィッ
クの実績が予測を下回ればこの事業者は本来負担すべきコストより少
額を負担するに過ぎないことから、接続料金に含めるべきとする意見、
競争事業者に転嫁すべきではないとする意見等が出されている。
【考え方】
(1)基本的な接続機能を提供するために発生するネットワークの改造費
用については、ネットワークが本来有すべき機能を備えるための費用
とみて、改造を施した設備に一般的に発生する費用として取り扱うと
のルール案の考え方については、妥当とする意見が多く出されており、
明確な反対意見は出されていないことから、ルール案のとおりとする。
(2)この場合、1.ZCに設置されるIGS、2.PHS接続装置のう
ちISDNと同様のインタフェースに係る部分及び3.GC接続のた
めの網改造費については、「基本的な接続機能」に含まれると考えら
れる。
その他の設備についても、網改造や接続装置の具体的な内容に即し
て個別に判断されるべきである。
(3)なお、接続協定に基づき既に行われた網改造や既に設置された設備
については、特定事業者がこれを前提として投資を行ってきているこ
とから、経過的な措置を考慮する必要がある。
(4)費用の回収に関しては、ルール案において「改造を施した設備を利
用する者から利用者料金及び接続料金という形で公平に回収される」
としたのは、「改造を施した設備に一般的に発生する費用」であるこ
とから、特定事業者と他事業者が同等の条件で負担することになると
の趣旨であり、その意味で、意見が出されているように、その費用を
特定事業者が利用者料金として回収するかどうかは特定事業者の経営
判断の問題である。
8 番号ポータビリティ
【意見の概要】
(1)番号ポータビリティについては、「利用者利益の増進」、「競争の
促進」等を理由として、積極的に肯定する意見がほとんどである。
(2)番号ポータビリティの具体的内容において、実現時期、番号管理及
び費用負担等の実現のための検討について追加的な検討を要望する意
見が出されている。
(3)着信課金サービス用番号等の高度サービス番号のポータビリティは、
実現が容易であり、早期に実現すべきとの意見が出されている。
(4)新規参入事業者が自身のネットワーク設備を構築するとき、完全な
番号ポータビリティを実施するためには高価な高度インテリジェント
ネットワーク(AIN)を導入しなければならないことをFCCは考
慮し損なったとの意見もあった。
【考え方】
(1)番号ポータビリティについては、技術的側面のみならず、番号管理、
費用負担等、多角的な検討を十分に行う必要がある。
(2)番号管理に関しては、郵政省において、有識者、専門家、事業者等
を含めて検討することとする。
(3)具体的な実現方式、費用負担等については、2年間を目途として、
郵政省において、関係事業者等の参加を得て、検討を行うことが必要
である。
(4)検討終了後の2年以内(平成12年度目途)のできるだけ早い時期
に番号ポータビリティの導入を行う。
9 網機能提供計画
(1)網機能提供計画における特定事業者の自己使用の網機能の公表範囲につ
いて
【意見の概要】
(1)自己使用の網機能については基本的にすべて公表対象とすべきとす
るルール案を支持する意見がいくつか出されている。
(2)他方、相互接続条件に影響を及ぼす可能性のない自己使用の網機能
は、企業のサービス・技術開発意欲の観点から、開示になじまないと
の意見が出されている。
(3)また、公表範囲を明確化する必要があるとの意見も出されている。
【考え方】
(1)特定事業者と他事業者との公正有効競争条件を確保し、円滑な接続
を推進するためには、相互接続条件に影響を及ぼす可能性のある自己
使用の網機能に限らず、他事業者が特定事業者の自己使用の網機能を
用いたサービスをユーザーに提供すること等が見込まれる場合も含め、
幅広く公表すべきである。
(2)なお、特定事業者のサービス開発インセンティブが維持され、特定
事業者と他事業者との間で健全なサービス開発競争が行われるよう、
制度の具体的運用において配慮する必要がある。
(3)また、網機能の具体的な公表範囲については、上記の考え方に沿っ
て、郵政省において関係事業者の意見を踏まえ、接続ルールが施行さ
れるまでに決定することとする。
(2)網機能提供計画における他事業者の負担費用の公表について
【意見の概要】
(1)特定事業者は算定方式・費用項目を公表するとともに、概算費用を
可能な限り詳細に公表するよう努めるべきとするルール案の内容は、
透明性の確保のために有効であり評価できるとの意見が出されている。
(2)他方、概算費用の開示については、現実的な困難性に配慮する必要
があるとの意見が出されている。
【考え方】
(1)他事業者の負担費用(網改造費用等)の算定の透明性・適正さの確
保の観点から、ルール案のとおり、特定事業者は網機能提供計画にお
いて、算定方式・費用項目を公表するとともに、概算費用を可能な限
り詳細に公表するよう努めるべきである。
(2)なお、概算費用の開示については現実的な困難性に配慮する必要が
あるとの意見については、一定の前提条件付き(例 特定事業者のみ
が当該網機能を利用すると仮定した場合)であれば、事業者間のすり
合わせがなくとも概算費用の公表は可能であると考えられることから、
ルール案の内容は適当である。
IV.その他
1 多数事業者間接続
【意見の概要】
(1)多数事業者間の接続については、今回のルール案で接続の円滑化が
可能となるとする意見もあったが、隣接する二者間のみの契約により
他の事業者との条件をカバーするという考え方など、簡素な手続きを
定めるべきとの意見が多く出されている。
また、事業者統一の共通協定の作成及びそのためのワーキング・グ
ループの設置や、共通協定及び料金表・約款による接続についての届
出制への移行を実施することを検討すべきとの意見も出されている。
(2)なお、事業者間の責任範囲を明確にするため、エンド・エンド料金
設定事業者と他事業者とが、直接的もしくは間接的な契約関係を有す
ることとするべきとの意見も出されている。
【考え方】
(1)多数事業者間の接続については、第一種電気通信事業者に対する接
続の義務化、接続協定の公開、料金表・約款手続の利用及び裁定手続
の活用の容易化等によって、接続の円滑化が図られると考える。
(2)さらに、多数事業者間の接続が今後ますます増加することに鑑み、
事業者統一の標準協定等により多数事業者間接続に対応する仕組みに
ついて、郵政省においてワーキング・グループ等を設置し、事業者等
の参加を得て、検討することとする。
(3)なお、その際、利用者に対する責任が不明確となり利用者の利益が
害されること及び事業者が予想外の責任を負うこと等を防止するため
に、少なくとも、
1.利用者との関係で各事業者の責任の範囲が明確であること
2.事業者間において責任の範囲が明確であること
等の要件を満たす必要がある。
2 赤字負担(ユニバーサルサービス)の取扱い
【意見の概要】
ユニバーサルサービスの範囲とそれにかかるコストを明確にした上で競
争中立的な負担の在り方を決定すべき等、ユニバーサルサービス負担の
在り方について検討すべきとする意見が多く出されている。
【考え方】
地域における競争の進展状況を踏まえ、ユニバーサルサービス確保のた
めの方策について検討する必要がある。
このため、郵政省において、マルチメディア化の進展も踏まえつつ、ユ
ニバーサルサービスの範囲及びそのコスト等について、今後2年を目途に
検討を行うことが適当である。
3 経過措置
【意見の概要】
(1)新ルールへの移行までの経過措置としては、円滑な接続による利用
者利益の増進及び公正有効競争の促進という今回のルール化の意義を
最大限に尊重した、積極的な採用を図るべきとの意見がほとんどであ
る。
(2)他方、可能なものから順次実施することが現実的であるとする意見
や、急激な財務への影響は回避する必要があるとの意見も出されてい
る。
【考え方】
事業者間において、可能な限り新ルールの趣旨を踏まえた接続協定を締
結すること、及び接続協定の認可、接続命令・裁定の基準として今般のル
ールを可能な限り適用すること等、可能なものから順次実施することが適
当である。
V.関連意見
1 規制緩和
【意見の概要】
(1)料金規制等の全ての規制について一種と二種が同等となるよう配慮
する必要がある等、第一種電気通信事業者と第二種電気通信事業者の
区分の見直しについて意見が出されている。
(2)接続協定について、公開がルール化されることから認可制を見直す
ことについて意見が出されている。
【考え方】
(1)第一種電気通信事業は、国民生活等に不可欠なサービスを提供する
公共性の高い事業であり、同事業の許可は公益事業特権の付与と一体
となっていることから現行の規制が行われているのに対し、第二種電
気通信事業者は、第一種電気通信事業者から設備提供を受けて役務を
提供する事業であることから、参入は登録又は届出で足りる等、第一
種電気通信事業に比べて簡便な制度となっており、現行の規制は有効
と考えられる。
(2)第一種電気通信事業者に対する料金規制については、政府の「規制
緩和推進計画」において、「公正有効な競争環境が整い次第、認可制
を見直す」旨の方針が決定されており、この方針に基づき、引き続き
公正有効競争環境の整備を図り、その成果を踏まえ、料金規制の更な
る弾力化について検討を進めていくことが適当である。
(3)接続協定については、公開により不当な条件が防止されるとは言え
ないことから、現行認可制を維持することが適当である。
なお、他事業者が任意で料金表・約款を作成することを可能として
おり、認可を得た料金表・約款に定める条件で接続を提供する場合に
は、個別の認可は必要としないこととしており、この制度を有効に活
用することが適当である。
2 接続ルールの策定・執行手続
【意見の概要】
(1)ルールの執行を政策立案機関から独立した中立的、公的な第三者機
関で行うことについて検討を要望する意見、従前の通信行政からルー
ルの策定・監視ならびに仲裁機能を切り離し、これらを担う独立した
透明性のある機関を設置することも十分検討に値するとの意見等、接
続ルールに関して第三者機関の設置の検討を要望する意見が出されて
いる。
(2)これに対し、業務を所管する省庁が責任をもってあたることが当然
であるとの意見、電気通信審議会及び郵政省がより積極的に関与すべ
きとの意見等、郵政省及び電気通信審議会において実施すべきとする
意見が出されている。
(3)また、裁定担当者の中立性、裁定プロセスやその公開が満たされる
限り、誰が裁定するかは重要な問題ではないとする意見が出されてい
る。
【考え方】
(1)通信行政においては、接続行政のほか、参入政策、料金を含む電気
通信サービスに関する消費者利益の保護行政、情報通信産業の振興等
の行政が行われているが、以下のとおり、接続行政以外の通信行政と
接続行政との間において利益相反の問題が生じるものではないと考え
られる。
(ア)料金規制などの電気通信サービスに関する消費者利益の保護に関
する行政については、接続行政の目的である利用者利益の増進及び
公正有効競争の促進と軌を一にするものであること
(イ)情報通信基盤の整備促進などの情報通信産業の振興行政について
は、情報通信産業全体の活性化を目指すものであり、新規参入事業
者の育成や既存事業者の保護を意味するものではないことから、公
正有効競争の促進と矛盾するものではないこと
(2)また、接続ルールの恣意的な運用が行われるとの意見については、
提出された意見の中にもあるように、ルールの執行において透明性及
びデュープロセスを十分確保することによって、そのような運用を防
止できると考えられる。
なお、行政決定については、最終的には、司法的救済に訴えること
が可能である。
(3)また、電気通信のように急速な技術革新による変化の激しい分野に
おいては、ルールの策定機能においてルールの不断の見直しが不可欠
であり、このため、ルールの運用状況に関する情報を的確に把握する
必要があり、また、ルールの執行機能においては、ルールの内容を熟
知し、的確かつ迅速に対応する必要があることから、両者を一体とし
て行うことが適当である。
また、仮にこれらの機能を別々の機関で実施する場合、専門的な知
識を有するスタッフを双方の機関で相当数確保する必要が生じ、行政
コストが大きくなるという点についても考慮することが必要である。
(4)したがって、接続ルールの策定・執行に関する行政における透明性
及びデュープロセスの確保を図るため、以下のような措置をとること
が適当である。
1.接続ルールの見直し、接続約款の認可など接続ルールの策定・執行
に関して措置を講じる場合には、原則として、審議会に諮問すべきこ
ととすること
2.審議会においては、関係者に対して意見を述べる機会を与えるとと
もに、当該意見をどのように取り扱ったかを明らかにすること
3.審議会の会議については、審議過程の透明性を確保するため、原則
として、議事内容を明らかにすること