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発表日  : 2000年12月22日(金)

タイトル : 第一種電気通信事業者5社に対する料金変更命令






 郵政省は、平成12年9月20日に電気通信事業法(昭和59年法律第86号。
以下「法」という。)第96条の2の規定に基づき社団法人テレコムサービス協会
及び同協会会員7社から意見申出(意見申出の概要 別紙1)のあった、第一種電
気通信事業者5社(エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社(以下「N
TT−C」という。)、株式会社ディーディーアイ(以下「KDDI」という。)、
日本テレコム株式会社(以下「JT」という。)並びに東日本電信電話株式会社及
び西日本電信電話株式会社(以下「東・西NTT」という。))の料金に対して法
第31条第2項の規定に基づく料金の変更を命ずること(命令の概要 別紙2)に
関し、電気通信審議会から諮問のとおり料金の変更を命ずることを適当とする旨の
答申を本日受けました。
 料金変更命令は、本日、当該第一種電気通信事業者5社に対して行う予定です。

 なお、本件については、平成12年12月8日に、法第95条第1項の規定に基
づき当該第一種電気通信事業者5社を当事者とする聴聞(主宰者 齊藤 忠夫 電
気通信審議会委員)を行いました。聴聞における当該第一種電気通信事業者5社の
主張、それに対する郵政省の考え方は別紙3のとおりです。




                  連絡先:電気通信局電気通信事業部業務課
                  (担当:藤江補佐、大角係長、鈴木係長)
                  電 話:03−3504−4831


                                  別紙1                意見申出の概要 1 意見申出日 平成12年9月20日(水) 2 意見申出者及び対象事業者   意見申出者及び対象事業者の画像 3 意見申出の内容 (1)申出内容    意見申出対象事業者各社が、一般ユーザ向けの割引サービスと同等以上の提   供条件による二種事業者向け異名義割引サービスを提供すること   ア NTT−Cの対象サービス  「Arcstarビジネス割引」   イ KDDIの対象サービス   「KDDIまる特割引」   ウ JTの対象サービス     「JワンズスーパーIIPlus」   エ 東・西NTTの対象サービス 「ワリマックス」 (2)主な申出理由   ア 本件意見申出の対象となる一種事業者は、本年4月以降二種事業者向けの    割引サービスの割引率を据え置いたまま一般ユーザ向けにこれまでの割引率    を上回る内容のサービスの新設等を行った結果、二種事業者から利用者を奪    いつつある。   イ 二種事業者としては、本件については、一種事業者と二種事業者間の公正    競争の観点から、以下の問題があると考える。   ・ 月額30万円以上支払う一般ユーザには割引率が30%であるのに対し、    月額数億円以上支払う二種事業者に対する割引率が25%に留まっているの    は、割引制度としての合理性がなく、二種事業者を不当に差別するものであ    る。   ・ このような不合理かつ差別的な割引サービスの設定を看過することは、今    後の競争政策において重要な役割を果たすと考えられる卸料金制度の芽を摘    むこととなると考えられる。
  意見申出の対象となった第一種電気通信事業者の料金の概要 1NTT−Cの提供するもの  「スーパーテレワイズ」H8.6〜
同一名義の回線群
異名義の回線群
県内・県間市外の通話が対象
県内・県間市外の通話が対象
 月額定額料 
 月額通話料 
 割引率 
 月額定額料 
 月額通話料 
 割引率 
30万円
20%
60万円
25%
60万円
25%
 「Arcstarビジネス割引」H12.4〜(新規)
同一名義の回線群
 異名義の回線群 
県間市外、国際の通話が対象
認めていない
 月額定額料 
月額合計通話料
 割引率 
無し
1万円以上3万円未満   
25%
3万円以上30万円未満   
28%
30万円以上       
30%

2KDDI及びJTの提供するもの
 KDDI「一括割引プラン」H8.7〜  JT「JワンズスーパーワイドPlus」H8.7〜
同一名義の回線群
異名義の回線群
県内・県間市外の通話が対象
県内・県間市外の通話が対象
 月額定額料 
 月額通話料 
 割引率 
 月額定額料 
 月額通話料 
 割引率 
25万円
20%
(12.5%)
25万円
20%
(12.5%)
50万円
25%
(15%)
50万円
25%
(15%)
注( )内は、KDDIの国際通話に対する割引率。
 KDDI「KDDIまる得割引」H12.4〜  JT「JワンズスーパーIIPlus」H12.5〜
   (割引率改定)
同一名義の回線群
 異名義の回線群 
県間市外、国際の通話が対象
認めていない
 月額定額料 
月額合計通話料
 割引率 
無し
5千円以上3万円未満   
25%
3万円以上20万円未満
28%
20万円以上
30%

3東・西NTTの提供するもの「ワリマックス」H12.10〜
同一名義の回線群
 異名義の回線群 
県内市外、市内の通話が対象
認めていない
月額定額料
月額合計通話料
市内割引率
県内市外割引率
無し
1万円以上3万円未満
25%
3万円以上20万円未満
28%
20万円以上100万円未満
30%
100万円以上500万円未満
10%
500万円以上1,000万円未満 
12%
1,000万円以上
15%


                                  別紙2               料金変更命令の概要  電気通信事業法(昭和59年法律第86号。以下「法」という。)第31条第1 項の規定に基づき、下記1の5社が届け出た料金について同条第2項の規定に基づ き、下記2のように変更すべきことを命ずる。 1 料金変更命令の対象となる料金  1 NTT−Cの「Arcstarビジネス割引」  2 KDDIの「KDDIまる得割引」  3 JTの「JワンズスーパーIIPlus」  4 東・西NTTの「ワリマックス」 2 料金変更命令の内容 (1)NTT−C、KDDI及びJT    平成13年3月31日までに、下記3の理由の趣旨を踏まえ、上記113   のサービスについて、同一名義による回線群と同様の内容を異名義による回線   群についても適用するよう料金に係る提供条件を是正すること。    ただし、上記の期日までに、料金課金システムの対応が困難であり、上記1   13に係る提供条件の是正に支障があるため、上記命令が実現できない場合   には、当該料金システムの変更が完了するまでの間、既存の第ニ種電気通信事   業者向け異名義割引サービスの料金課金システムを活用すること等により、上   記113の最大の割引率に係る提供条件と同様の内容を第ニ種電気通信事業   者に確保した上で、料金の変更を行うことを可とする。 (2)東・西NTT    平成13年12月31日までに、「ワリマックス」サービスについて、同一   名義による回線群と同様の内容を異名義による回線群についても適用するよう   料金に係る提供条件を是正すること。    また、平成13年3月31日までに、料金課金システムの変更等の準備が整   い料金に係る提供条件の是正が可能となるまでの間の代替措置を検討し、郵政   省にその内容を報告すること。 3 料金変更命令の理由   上記114の料金は、回線群を単位として通話料を最大で30%割り引くも  のであるが、本サービスは、異名義による回線群に対して割引を認めていないた  め、第二種電気通信事業者による再販が禁じられている。   このことは、第二種電気通信事業者に対し不当な差別的取扱いをし、かつ、不  当な競争を引き起こしているものであることから、法第31条第2項第2号及び  第3号の規定に該当するものと認められる。
                                  別紙3          料金変更命令に関する当事者の主張と            それに対する郵政省の考え方 1 郵政省は、NTT−Cの「Arcstarビジネス割引」、KDDIの「まる得割引」、  JTの「JワンズスーパーIIPlus」及び東・西NTTの「ワリマックス」に  ついて、社団法人テレコムサービス協会ほか7社からの意見申出に基づき調査し  た結果、これらの料金は、同一名義による回線群の利用料を最大で30%割り引  くものであるが、異名義による回線群に対しては割引を認めていないため、第二  種電気通信事業者の再販が禁じられており、第二種電気通信事業者に対し不当な  差別的取扱いをし、かつ、不当な競争を引き起こしているものであることから、  法第31条第2項に基づき料金の変更を命ずることとした。 2 本件処分に関して、NTT−C等当事者より聴聞を行ったところ、当事者から   は以下の主張がなされた。  (1) 以下の理由から、法第31条第2項第2号(不当な差別的取扱い)に該当    しない。   ア・ コスト的な観点からみれば、一般大口ユーザ向け割引と異名義割引では、     サービスの対象ユーザ及び提供内容が異なり、全く同じ条件での適用は困     難である。    ・ 異名義割引サービスは、小口・低利用ユーザが多いため、一回線当たり     の収入が低く、一般大口ユーザ向けサービスとはコスト構造(利益率)が     異なる。    ・ 第二種事業者による異名義回線群を認めれば、第二種事業者を介した一     般利用者はすべて30%の割引を享受することが可能となり、その影響は     大きい。   イ・ 今回の不利益処分が一般大口ユーザ向け割引サービスすべてに対する異     名義の提供につながるのであれば、今後の大口ユーザ向け割引サービスの     制限的提供につながり、エンドユーザの利便性が低下する。    ・ 同様に第一種事業者は割引サービス提供、タリフの値下げ等に際し、常     に第二種事業者の事業が成り立ち得る環境を考慮する義務を負わなければ     ならなくなる。   ウ・ どのような提供条件で選択的割引サービスを提供するかは、各事業者の     経営判断により決定されるべきである。  (2) 以下の理由から、法第31条第2項第3号(不当な競争を引き起こす料金)    に該当しない。   ア・ 第二種事業者の提供サービスは支払代行業務であり、事業法における電     気通信役務には該当しない。第二種事業者自身の約款で自社サービスを支     払代行と位置付け、「電話サービスは電話会社が責任を持って提供」と明     記している。    ・ 第二種事業者の行為を電気通信役務とすれば、同一の役務を二つの事業     者が提供していることになるとの疑問が生ずる。   イ・ 既存サービスにおいて異名義回線群の割引を認めたのは、他の第一種事     業者との競争のためである。(第二種事業者を市場から排除する意図はな     かった。)    ・ 大口ユーザ向け割引サービスであるArcstarビジネス割引と個人〜小口     法人ユーザを対象とする異名義割引サービスとは、競争関係にない。現行     異名義割引サービスからArcstarビジネス割引へのエンドユーザ移行はほ     とんど起きていない。  (3) その他   ア 料金変更命令の実施に係る具体的な基準をより明確に示すべき。   イ 異名義割引サービス拡大の料金変更命令を出す前に、規制ルール及び事業    者間取引ルールの整理が必要である。   ウ 事業者間割引料金(キャリアズレート)のルール見直しの結論を待たずし    て、異名義割引サービスの拡大をすることになり、新たに料金システムの改    造等、第一種電気通信事業者に多大な投資を強いるものである。   エ 公正競争確保の点で、命令の対象が同種の割引サービスを提供している第    一種電気通信事業者すべてではなく、5社に限定されるとすれば問題がある    と考える。 3 郵政省としては、当事者の主張について以下のように考えているところである。  (1) 上記2の当事者主張中(2)ア(第二種事業者役務の電気通信役務該当性)に    ついて   ア 当事者は、第二種事業者の提供サービスは支払代行業務であり、電気通信    事業法上の電気通信役務には該当しないため、事業者間の不当な競争という    概念は生じ得ないと主張している。   イ しかし、以下のとおり、第一種事業者の異名義回線群に対する割引を利用    して割引サービスを提供している第二種事業者は、当該回線群を構成する個    々のエンドユーザに対して、第二種事業者の契約約款・料金表に基づき、自    らの電気通信役務(割引サービス)を提供しているものであり、その役務は    「電気通信役務」に該当し、当該役務提供者が法第31条第2項第3号の不    当競争の対象となり得る「電気通信事業者」であると考える。   ウ なぜなら、通常、回線群割引サービスにおいては、   (ア)第二種事業者が代表契約者になることにより初めて、一般利用者は当該     サービスを利用できるようになること      すなわち、第二種事業者は、第一種事業者から一定の条件で当該異名義     割引サービスに係る公衆網(電気通信設備)を利用できる権限を取得し、     当該電気通信設備を用いて一般利用者の通信を媒介し、一般利用者の通信     の用に供していること   (イ)第二種事業者の役務を利用できるか否かは利用者の申し込みを第二種事     業が承諾するか否かにかかっていること   (ウ)第二種事業者は自社ブランドの割引サービスを開発し、独自に料金表を     設けて利用者に提供していること(参考1参照)   (エ)第二種事業者は第一種事業者から異名義割引に係る「回線群」について、     利用者からの料金徴収を待たずに第一種事業者に対して料金の前払いを行     い、エンドユーザからの料金回収リスクを負担する再販売の形態をとって     いること(参考2参照)   (オ)第二種事業者は実態として利用者からサービス全般に対する問い合わせ     やクレームの処理を行うなど利用者と直接接触し自ら顧客管理を行ってい     ること   (カ)当初、第一種事業者は、当該サービスは特別第二種に限って提供を認め、     第一種事業者は特別第二種の役務を「電話再販」と認識していたと考えら     れるところ、特別第二種制度の変更に伴い、一定の要件の下で一般第二種     事業者に拡大されたが、特別第二種と一般第二種の役務提供の形態には本     質的な差異はないこと   (キ)一種電事業者の約款において、第二種事業者が代表者である場合につい     て、「経理的基礎を有しているものであること」等特別の規定を設けてい     るが、当該規定は、第二種事業者としての資格でなく、一般のユーザと同     じ立場で利用する場合には必要がなく、「他人の通信の媒介」を「他人の     需要に応ずるために提供」する第二種事業者の資格として利用するとしな     ければ説明がつかないこと    から、第一種事業者の異名義割引サービスに基づき第二種事業者が提供する    割引サービスは、法第2条第3号で規定する「電気通信役務」に該当すると    考えられるからである。   エ これについては、当事者より、現行の回線群割引を使った第二種事業者自    身の約款の中に自社サービスを支払代行と位置づけ、「電話サービスは電話    会社が責任を持って提供」と明記しているものがある旨の指摘があった。     しかし、このような約款上の表現をすべての第二種事業者が行っている訳    ではなく、また、意見申出者によれば、当該規定はサービス導入時に第一種    事業者から盛り込むよう強く要請されたもので、不本意ながらもそのような    表現で規定せざるを得なかった事情があった旨郵政省に述べている。     このような事情の存否は、証拠によって確定することができるものではな    いが、第一種事業者の第二種事業者に対する優越的な立場を考慮すると、十    分可能性があると考えることが妥当である。     すなわち、第一種事業者の約款によれば、第二種事業者であれば誰でも回    線群割引の適用を受けられるわけでなく、前述のとおり第一種事業者が、「    一定の経理的基礎を有している者であること」等の基準に適合するかを審査    し、承諾したものについてだけ、異名義割引料金の適用を受けられることと    なっており、第二種事業者は、この承諾を得られなければ、そもそも本サー    ビスの提供を行うことができないという立場にあるため、第一種事業者から    様々な要請を受けた場合、受け入れざるを得ない立場にあったと考えられる    ためである。     なお、当該第二種事業者の約款には、事業の性格を適切に表現していない    部分が見受けられるため、今後適正化が図られることが望ましい。   オ また、「同一の役務を二つの事業者が提供していることになる」との当事    者の主張については、前述のとおりエンドユーザに電気通信役務を提供して    いるのは、第二種事業者であり、エンドユーザが第一種事業者と第二種事業    者の双方から同一の電気通信役務の提供を受けているものではない。    当該当事者の主張の根拠は、「第二種事業者が一括支払いを怠った場合に、    第一種事業者が直接エンドユーザへ通信料を請求できること」を根拠として    いる。     しかし、第二種事業者が支払いを怠らない限り、第一種事業者のエンドユ    ーザに対する請求権は発生せず、そのような二重の関係は、通常は存在せず、    第二種事業者が第一種事業者の支払いを怠るという異常の場合のみに限られ、    通常の役務提供における二重性があるわけでない。     なお、この第一種事業者とエンドユーザとの契約は、第二種事業者がエン    ドユーザとの契約を結ぶ際に、第二種事業者が事実上代行して手続を行って    おり、この点からも第二種事業者が独自の立場でエンドユーザに役務提供を    していることが伺える。  (2) 上記2の当事者主張中(1)ア(不当な差別的取扱いの該当性)について   ア 当事者は、異名義割引を認めていない一般大口ユーザ向け割引サービスと    従来認めている異名義割引サービスでは、利用層、回線当たりの収入、コス    ト構造が異なり、したがって提供条件が異なったとしても「不当な差別的取    扱い」には該当しないと主張している。   イ 不当な差別的取扱いとは、合理的かつ妥当な理由無く、特定の利用者を優    遇又は冷遇するもので、合理的かつ妥当な理由があるかどうかは、当該サー    ビスのコスト・効用、社会政策上の観点、社会通念等に照らしながら総合的    に判断することになる。   ウ 本件において、当事者各社は一般利用者の回線群に対する割引については、    大口ユーザが対象ユーザであるが、第二種事業者を対象とする異名義回線群    では、小口・低利用ユーザが多く、コスト構造が異なると主張している。     しかし、そもそも回線群単位の割引サービスは、その回線群全体の通話料    に対してボリュームディスカウントする形態の割引であり、回線群を構成す    る各回線の通話料の額自体に着目した割引ではない。    したがって、本件において回線群を構成する各回線のユーザ層の比較が重    要であるとはいえないと考える。   エ 当事者各社が一般利用者の回線群に対する割引に関して、大口ユーザが対    象ユーザであると主張している点については、回線群割引サービスの利用者    に着目したときに、それが大口ユーザである保証はない。    なぜなら、当該割引は契約約款・料金表において、   (ア)利用者を法人・企業に限定しておらず、一般個人も利用可能であること   (イ)月額定額料や最低保証通話料がないため、小口利用でも割引が受けられ     ること   (ウ)月額合計通話料が5千円又は1万円以上あれば25%以上の割引が受け     られること    とされているため、ユーザ層は必ずしも大口企業ユーザに限られず、小規模    企業や一般ユーザも対象となり得るからである。   オ 他方、第二種事業者を対象とする異名義回線群に対しては、小口・低利用    ユーザが多く、一般大口ユーザ向けサービスとはコスト構造が異なるため同    じ条件とはできないと当事者は主張している。     しかし、これについても、   (ア)仮に一回線当たりの収入が低いとしても、回線群割引のとりまとめを行     う代表者単位でみると、回線数が多いため回線群の合計では一般利用者よ     り多額の収入をもたらす場合があること   (イ)例えば、第二種事業者は、異名義割引について第一種事業者に対して月     平均約1.3億円の市外通話料金を支払っており、一般利用者において最     大割引率(30%)が適用される場合の通話料月額が20万円〜30万円     以上とされていることと比較しても高額であること   (ウ)コスト構造の違いは、単に料金割引に対する価格弾性の違いだけに着目     するのではなく、コスト削減の要素も勘案すべきであること   (エ)具体的には、第二種事業者は第一種事業者に代わり利用者獲得のための     マーケティング、営業活動や、請求書発行、料金回収等を行うとともに、     料金回収の貸し倒れや未収金が回収されるまでの金利負担などのコストを     負担していること   (オ)平成8年に開始された既存の回線群割引サービスにおいては、第二種向     け異名義割引と一般利用者に対する割引とで同率の割引を提供していたこ     と   (カ)その割引の実態においては、第二種事業者も通話料に応じて割引率が逓     増する仕組みを設けているため、回線群を構成する各回線のユーザにおい     てもトラヒック増加のインセンティブが働くと考えられること    等を総合的に勘案すると、当事者の主張は妥当ではない。   カ 以上のように一般利用者の回線群に対する割引では、回線群を構成する各    回線の収入如何に関わらず、回線群全体の通話料に対して割引を認めている。     しかるに、回線群をまとめるという意味では同様に実質的な大口利用者で    もある第二種事業者を対象とする異名義回線群に対しては、回線群を構成す    る各回線のユーザとして小口利用者が多いといったことを根拠にサービスの    適用が禁止されている。本件はこれに着目して「差別的取扱い」がなされて    いると認識し、その是正を求めているものである。   キ なお、当事者の「第二種事業者による異名義回線群を認めれば、第二種事    業者を介した一般利用者はすべて30%の割引を享受することが可能となる」    旨の主張は、例えば既存の異名義割引において第二種事業者が第一種事業者    から25%割引等の条件で調達し、第二種事業者の利用者に対して10〜2    0%などの割引を提供している実態があることからも分かるように、第二種    事業者自らの営業コスト等が必ず発生し、それを考慮した料金設定とならざ    るを得ないことからみると妥当でない。  (3) 上記2の当事者主張中(2)イ(不当な競争を引き起こす料金の該当性)につ    いて   ア 当事者は、一般大口ユーザ向けの割引サービスと、異名義割引サービスは    利用層が異なるため、競争関係になく、ユーザ移行はほとんど生じておらず、    不当な競争は引き起こしていないと主張している。   イ 不当な競争を引き起こす料金とは、当該料金が設定されることにより、第    二種事業者を含む電気通信事業者間の公正な競争を阻害することとなる料金    であり、公正競争阻害性の判断に当たっては、当該事業者の料金設定の意図    や市場支配力、当該料金設定が競争事業者に与える効果等を総合的に判断す    ることになる。   ウ   (ア)従来より、第一種事業者は、既存の回線群割引サービスにおいては、一     般利用者の回線群に対する割引と同様に第二種事業者向けに異名義回線群     に対しても割引を提供している経緯がある。   (イ)また、平成9年当時の資料からみて、異名義割引が第二種事業者による     再販業務であるという認識が第一種事業者側に存在していたと考えられる。   (ウ)それにもかかわらず、今回、各社とも、回線群に対する割引という同じ     サービス形態であるのに、一般利用者の回線群に対しては、割引の設定等     を行ったが、第二種事業者による異名義割引による再販を禁じたため、第     一種事業者は第二種事業者に対し競争環境としての事業基盤を損なってい     る。   エ 市場支配力     第二種事業者は、第一種事業者の設定するサービスの提供条件に従わざる    を得ないという構造上の関係を考慮すれば、第一種事業者各社は第二種事業    者に対して支配的な立場に立っていると考えられる。   オ 競争事業者に与える効果   (ア)第一種事業者各社は、一般利用者の回線群に係る割引を提供等する際、     第二種事業者に対して、再販ビジネスを行い得る機会を与えず、異名義割     引による再販を禁じている(注)。      この意味で、第一種事業者は、第二種事業者に対し競争環境としての事     業基盤を損なっており、第一種事業者各社は、競争事業者である第二種事     業者に対し不利益を与えていると認められる。    (注)参考3に示すとおり、資料左側のNTT−C「スーパーテレワイズ」      等においては異名義回線群に対して割引を認めているが、資料右側の「      Arcstarビジネス割引」等においては異名義の回線群に対する割引を認      めておらず、サービスの適用が禁止されている。       仮に、「Arcstarビジネス割引」等の回線群割引サービスにおいて異      名義回線群に対する割引を行わなくてよいということになると、同じ回      線群割引である既存の「スーパーテレワイズ」等においても異名義回線      群に対する割引を廃止することも可能ということになるが、その場合に      は、第二種事業者は再販サービスの事業基盤を失うことになる。       本資料において「再販を禁ずる」旨の表現は、この趣旨で記述してい      る。   (イ)また、第一種事業者各社の現状と第二種事業者への影響をみると、実際     にも競争事業者に不利益を与えなかったとはいえない。      NTT−Cは「現行異名義割引サービスからArcstarビジネス割引への     エンドユーザ移行はほとんど起きていない」あるいは「大口ユーザ向け割     引サービスであるArcstarビジネス割引と個人〜小口法人ユーザを対象と     する異名義割引サービスとは、競争関係にない」と主張している。      NTT−Cは、この移行は回線数では約2.5万回線、移行比率は回線     ベースで2%、金額ベースで4%と主張している。      一方で、意見申出者は、意見申出をした7社のNTT−Cに対する割引     対象額は、Arcstarビジネス割引が設定される直前の本年3月から9月ま     での間で約2.8億円(13%)減少していると主張している。      なお、東・西NTTについては、始まったばかりのサービスということ     もあり、第二種事業者の顧客への影響は現時点では未知数であるが、競争     事業者に不利益を与える可能性はあると考えられる。   カ 「利用者の利益を阻害する」について   (ア)第二種事業者を対象とする異名義回線群に対しては割引を提供せず、第     二種事業者による異名義割引による再販を禁止することは、利用者にとっ     て事業者選択の機会を狭めることになる。   (イ)また、第二種事業者が提供する割引サービスから第一種事業者が提供す     る一般利用者に対する回線群割引サービスに比較的回線単価の高い顧客が     移行すると、第二種事業者において従来と同等の割引が維持できなくなり、     利用者に直接的な損害を及ぼす可能性もある。   (ウ)仮に、このような禁止がない場合には、第二種事業者の割引サービスの     割引率が拡大され、利用者に還元される可能性が生じるが、再販の禁止に     よってその道が塞がれることとなるため、この点でも利用者利益が阻害さ     れていると考えられる。   キ 以上のように、今回の料金は、   (ア)競争事業者に与える影響については、その評価について当事者と意見申     出者との間で意見の対立があるものの、その影響がないとは断定できない     こと   (イ)第二種事業者に対する異名義回線群に対する割引を過去には設定してい     たのに、先般の新割引設定等の際には、第二種事業者に対して、異名義割     引による再販を禁じていること   (ウ)第一種事業者と第二種事業者の構造的な関係から第一種事業者は第二種     事業者に対して支配的な立場にあること   (エ)利用者利益を阻害していること     から、総合的に勘案すると不当な競争を引き起こすものと認められる。  (4) 上記2の当事者主張中(1)イ(異名義割引の提供が求められる範囲)につい   て   ア 当事者は、大口割引サービスすべてについて異名義割引を設けなければな    らなくなる、あるいは常に第二種事業者の事業が成り立ち得るようにしなけ    ればならなくなると主張している。   イ 一般大口ユーザ向けサービスにおいて回線群に係る割引サービスを提供し    ていながら、第二種事業者向けの回線群割引サービスが提供されない場合に    は、第一種事業者から公衆網を調達して第二種事業者が利用者に低廉な料金    でサービスを提供するための基盤がなくなり、当該サービス提供の道を閉ざ    すことになるため、第二種事業者向けの回線群割引サービスが設定されてい    る必要がある。   ウ また、回線群割引以外の割引サービスについては、各サービスの割引の目    的等から判断するものであり一概には言えないが、第二種事業者向けの異名    義での割引サービスを必ず設定しなければならないものではないと考えてい    る。その具体的ルールについては、現在電気通信審議会「接続ルールの見直    し」において事業者向け割引料金(キャリアズレート)の実現方策として検    討が進められているところである。   エ なお、今回の命令は、第二種事業者が第一種事業者の回線群割引サービス    を利用することによって、公衆網再販の道を開くとの競争環境の整備を図る    観点から行うものであって、第二種事業者の経営自体を保証しようとする性    格のものではない。  (5) 上記2の当事者主張中(1)ウ(割引サービスの提供条件と経営判断)につい   て   ア 当事者は、どのような提供条件で選択的割引サービスを実施するかは、各    事業者の経営判断であると主張している。   イ 現行料金制度が届出制に変更されたことによって、各事業者の経営判断等    により電気通信料金を自由に料金設定できることとなったが、その料金は、    「利用の公平」や「不当競争の防止」といった必要最低限度のルールに基づ    いて設定されるべきものであり、法律上もこれに抵触する場合には料金変更    命令による事後的な是正が可能となっている。  (6) 上記2の当事者主張中(3)ア(料金変更命令の運用基準)について     当事者は、料金変更命令の実施に係る具体的な運用基準をより明確に示す    べきと主張している。     料金変更命令の基準については、平成10年5月の電気通信事業法の改正    により、従来「利用者の利益を阻害しているとき」との要件を「不当な差別    的取扱いをするもの」、「不当な競争を引き起こすもの」など具体的なもの    としつつ、同年9月の『新たな料金制度の運用の在り方に関する研究会』報    告書を通じて問題事例を示している。     電気通信サービスの料金は、利用者ニーズに応じて多種多様なものとなっ    ており、現時点でそれらすべてに備えた詳細な基準や定量的な基準を作りに    くいという面がある。     したがって、料金変更命令の運用基準の策定に当たっては、今回のような    具体的な事例に応じて個別的な判断を積み重ねることにより、より詳細で明    確な基準を作っていくよう努力する考えである。  (7) 上記2の当事者主張中(3)イ及びウ(事業者向け割引に関するルール設    定)について     当事者は、料金変更命令を出す前に事業者向け割引に関するルール設定が    必要である、また、料金システムの改造等第一種事業者に多大な負担を強い    る旨主張している。     公衆網の事業者向け割引(キャリアズレート)の一般的ルールについては、    現在、電気通信審議会で議論が行われている。しかしながら、本事案は、個    別の紛争事案として法第96条の2第1項の規定に基づき料金の是正を求め    る意見申出が行われたものであって、制度上ルールの制定を待たないと料金    変更命令が行えないものでないし、また、現実にそのような運用を行えば、    意見申出者の救済を図ることが困難となることから、ルール制定前とはいえ    個別に判断することはやむを得ない。     また、料金の変更に伴って、電気通信事業者において料金システム変更の    費用が発生することについては、料金変更命令が、公益確保の観点から行わ    れる以上やむを得ないものと考える。  (8) 上記2の当事者主張中(3)エ(他事業者への対応)について     当事者は、料金変更命令は5社に限定されることなく、他事業者も対象と    すべきと主張している。     今回の料金変更命令は、社団法人テレコムサービス協会及び同協会会員7    社からの具体的な意見申出を踏まえて審査し、判断したものであるため、意    見申出の対象である第一種電気通信事業者5社に対して是正を求めるもので    ある。     しかしながら、他の第一種電気通信事業者についても、基本的な考え方は    同じであるため、当該事業者が回線群を単位とする割引サービスを提供して    いる場合には、本事案と同様に第ニ種電気通信事業者向けの異名義割引サー    ビスの提供が行われる必要がある。     したがって、本事案を踏まえた解釈を当該事業者に伝達するなどの対応を    検討していく考えである。
                                      参考 1              二 種 事 業 者 各 社 の 料 金 表 の 例
企業名
月額利用額
その他
〜1万円
〜3万円
〜5万円
〜10万円
10万円〜
インテック
16%
20%
テレコムサービス(株)
10%
20%
三菱情報電機ネットワーク
16%
18%
20%
日本総合研究所
16%
18%
20%
月額¥500/回線
25%
東洋情報システム
16%
18%
20%
月額¥500/回線
25%
インテリジェント・テレコム
0%
15%
20%
京セラ
コミュニケーションズ
0%
10%
〜30
30〜
15%
20%


                                                 参考 2 二種事業者の提供するサービスの料金請求等フロー(例)の画像
                                                       参考 3 一種事業者が提供している回線群を単位とする割引サービスの概要の画像
一種事業者が提供している回線群を単位とする割引サービスの概要の画像
                                                   参考 4 回線群を単位とする割引サービスの種別の図


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