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発表日  : 10月11日(金)

タイトル : 10/11付:「電話番号情報に関する研究会」報告書






−「発信者情報通知サービスの利用における
         発信者個人情報の保護に関するガイドライン案」について−

 郵政省では、発信電話番号通知サービスの利用に関するガイドライン案を策定
するため、平成8年(1996年)8月から、「電話番号情報に関する研究会」
(座長:堀部政男 一橋大学教授)を開催してきましたが、このたびその報告書
が取りまとめられました。
 本件については、日本電信電話株式会社の発信電話番号通知サービスの提供に
関する電話サービス契約約款の変更の認可(8.7.31)の際、電気通信審議
会の答申(8.7.26)において、電話利用者のプライバシー保護の観点から、
このサービスにより通知された電話番号が不当に利用されることを防止するため、
サービスの利用に関して、サービスの開始以前に郵政省が「ガイドライン」を制
定することが要望事項として付されていました。
 なお、報告書の概要は別紙のとおりです。

                  連絡先:電気通信局電気通信事業部
                      電気通信利用者相談室  
                      (担当:斉藤補佐、吉田係長)
                  電 話:03−3504−4831


別 紙     「電話番号情報に関する研究会」報告書の概要

1.ガイドライン案策定の趣旨

  発信電話番号通知サービスは、発信者の匿名性を前提とした従来の電話サー
 ビスを変更するものであり、利用者の電話の使い方に影響を及ぼす。特に、電
 話番号を通知することを望まない発信者のプライバシーの保護が必要である。
  我が国では、民間部門を対象とする個人情報保護法は制定されてなく、事業
 者団体等において、ガイドラインによる自主的な取組みがなされているのが現
 状である。
  そこで、発信電話番号通知サービスのような発信者に関する個人情報を通知
 する電気通信サービス(発信者情報通知サービス)の利用者を対象として、通
 知を受けた個人情報の取扱いに関するガイドライン案を定めることとした。関
 係事業者及び関係事業者団体等においては、ガイドラインを参考として、発信
 者に関する個人情報の保護に関する自主的ルールの策定を行うことが望まれる。


2.発信者情報通知サービスの利用における発信者個人情報の保護に関するガイ
 ドライン案

  別添のとおり


3.発信者個人情報の保護に向けた課題

 (1)ガイドラインの周知
    郵政省は、ガイドラインの周知を図るため、関係各省庁と十分に連携を
   図る必要がある。

 (2)発信者個人情報の取扱いに関する苦情処理・相談体制の充実
    行政機関及び電気通信事業者において、電話利用者からの苦情・相談に
   迅速、的確に対応することが必要である。

 (3)民間部門における個人情報保護法の制定に向けた取組み


 発信者情報通知サービスの利用における発信者個人情報の保護に関するガイド
ライン案

1.目的

  このガイドラインは、発信電話番号等発信者に関する個人情報を通知する電
 気通信サービス(以下「発信者情報通知サービス」という。)の利用者を対象
 として、通知を受けた個人情報の取扱いに関する基本的事項を定めることによ
 り、発信電話番号等発信者に関する個人情報及びこれに結合して保有される個
 人情報を保護することを目的とする。

2.定義

 (1)発信者個人情報
    発信者情報通知サービスにより通知される個人に関する情報であって、
   当該情報に含まれる電話番号、氏名、生年月日、その他の記述又は個人別
   に付された番号、記号その他の符号、影像又は音声により当該発信者を識
   別できるもの(当該情報のみでは識別できないが、他の情報と容易に照合
   することができ、それにより当該発信者を識別できるものを含む。)をい
   う。

 (2)事業用サービス利用者
    発信者情報通知サービスを利用する法人その他の団体及び自己が営む事
   業において発信者情報通知サービスを利用する個人をいう。ただし、国及
   び地方公共団体を除く。

 (3)記録
    コンピューター等による自動処理を行うかどうかにかかわらず、通知さ
   れた発信者個人情報を後に取り出すことができる状態で保存することをい
   う。ただし、発信者に対して折り返し通信を行う目的で一時的に発信者個
   人情報を保存する場合を除く。

3.発信者個人情報の記録の制限等

 (1)事業用サービス利用者は、発信者個人情報を記録する場合には、記録目
   的を明確にし、その目的の達成に必要な範囲内で行わなければならない。

 (2)事業用サービス利用者は、発信者個人情報の記録を行う場合、情報主体
   に対し、発信者個人情報を記録すること及び記録目的を告げなければなら
   ない。ただし、情報主体が既にこれを知っている場合はこの限りではない。

 (3)事業用サービス利用者は、コンピューター等による自動処理により発信
   者個人情報の記録を行う電話番号について、誰もが知り得る簡便でわかり
   やすい方法で周知しなければならない。

4.発信者個人情報の利用の制限

  事業用サービス利用者は、記録目的の範囲を超えて、発信者個人情報を利用
 してはならない。

5.発信者個人情報の提供の制限

  事業用サービス利用者は、発信者個人情報を外部へ提供してはならない。た
 だし、次のいずれかに該当する場合には、記録目的にかかわらず、当該個人情
 報を外部へ提供することができる。
 (1)発信者が外部への提供について同意した場合
 (2)法令の規定により提供が求められた場合

6.不当な差別的取扱いの制限

  事業用サービス利用者は、発信者情報通知サービスの利用に際し、不当な差
 別的取扱いを行ってはならない。

7.発信者個人情報の適正管理

 (1)事業用サービス利用者は、記録目的に応じて発信者個人情報の正確性を
   保つよう努めなければならない。

 (2)事業用サービス利用者は、発信者個人情報への不当なアクセス、その紛
   失、破壊、改ざん、漏洩等に対して適切な保護措置を講じなければならな
   い。

 (3)事業用サービス利用者は、発信者個人情報の処理を外部に委託する場合
   には、契約等の法律行為に基づき、当該発信者個人情報に関する秘密の保
   持等に関する事項を明確にし、個人情報の保護に十分配慮しなければなら
   ない。

8.事業用サービス利用者の発信者個人情報の開示及び訂正・削除

 (1)事業用サービス利用者は、情報主体から自己に関する発信者個人情報の
   開示の請求があった場合、本人であることを確認した上でこれに応じなけ
   ればならない。

 (2)事業用サービス利用者は、発信者個人情報に誤りがあって、情報主体か
   ら訂正・削除を求められた場合、正当な理由なく、その請求を拒んではな
   らない。

 (3)事業用サービス利用者は、発信者個人情報の誤りを訂正・削除するまで
   は、その情報を利用してはならない。

電話番号情報に関する研究会
報告書
                             平成8年10月
                            郵政省電気通信局

はじめに

 近年の電気通信サービスの高度化・多様化の進展、社会の情報化に伴うプライ
バシーや個人情報に関する意識の高まり等によって、個人情報の保護の重要性が
増大している。
 郵政大臣は、日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)の発信電話番
号通知サービスに関する契約約款の申請について、平成8年(1996年)7月
26日の電気通信審議会の答申を受けて、同月31日に認可した。この答申には、
個人情報保護の観点から、「本サービスにより通知された電話番号が不当に利用
されることを防止するため、本サービスの開始以前に郵政省が『ガイドライン』
を制定すること」が要望事項の一つとして付されている。
 「電話番号情報に関する研究会」は、上記の要望事項を受けて、発信電話番号
通知サービスのような発信者に関する個人情報を着信者に通知する電気通信サー
ビスにおける発信者の個人情報の保護の在り方について、ガイドライン案を策定
するために開催された。
 研究会では、電気通信事業者、発信電話番号通知サービスの利用が想定される
事業者、関係事業者団体、消費者団体、有識者から、ヒアリングを行うとともに、
郵便、ファックス、インターネットを通じて一般利用者から寄せられた意見を参
考にした。さらに、NTTの発信電話番号通知サービスに関する電気通信審議会
における議論、公聴会における公述人の意見等を踏まえて検討を行った。
 この報告書においては、ガイドライン案を示すとともに、関係事業者及び関係
事業者団体等における自主ルールの的確な策定・運用に資するため、ガイドライ
ン案に関する解説を加えた。


              目     次

はじめに

1 ガイドライン案策定の趣旨

2 発信者情報通知サービスの利用における発信者
  個人情報の保護に関するガイドライン案

3 発信者個人情報の保護に向けた課題
 (1)ガイドラインの周知
 (2)発信者個人情報の取扱いに関する苦情処理・相談体制の充実
 (3)民間部門における個人情報保護法の制定に向けた取組み


1 ガイドライン案策定の趣旨
  これまでの電話サービスは、発信者はいつでも通話を望む相手方に電話をか
 けることができるのに対し、着信者は誰からかかってきたかわからないまま電
 話に出なければならないというシステムで利用されてきた。発信電話番号通知
 サービスは、発信電話番号を着信者に通知することにより、発信者の匿名性を
 前提とした従来のシステムを変更するものである。今日、電話は、生活、ビジ
 ネスに不可欠なコミュニケーション手段とな っており、そのシステムの変更
 は、利用者の電話の使い方及び国民生活に影響を及ぼすことになる。そのため、
 電話をかける際に、電話番号を通知することを望まない発信者のプライバシー、
 個人情報をどのように保護するかが検討される必要がある。
  ところが、我が国では、民間部門を対象とする個人情報保護法は制定されて
 なく、関係事業者及び関係事業者団体等において、ガイドラインによる自主的
 な取組みがなされているのが現状である。
  このガイドライン案は、発信電話番号通知サービス等発信者に関する個人情
 報を通知する関係事業者及び関係事業者団体等が発信者に関する個人情報の保
 護のルールを策定するに当たり、その指針となることを期待して策定したもの
 である。今後このガイドライン案を参考として、より詳細かつ具体的なルール
 が、関係事業者が記録する個人情報の種類、事業の内容等を勘案して策定され
 ることが望まれる。


2 発信者情報通知サービスの利用における
            発信者個人情報の保護に関するガイドライン案
(解説)
 1 「発信者情報通知サービス」とは、NTTが導入する発信電話番号通知サ
  ービス、既にISDN、移動電話、PHSで導入されている「発信者番号通
  知」といった発信電話番号を相手方に通知するサービスの他、発信者名等広
  く発信者に関する個人情報を着信者に通知する電話サービスをいう。我が国
  では、当面は電話番号を通知するサービスのみが実施されることになるが、
  アメリカやカナダにおいて、既に発信者名の通知サービスが開始されている
  こと、今後技術的には氏名等電話番号以外の発信者情報の通知も可能となる
  ことから、発信電話番号を含む個人情報一般を保護すべき対象範囲とするた
  め、「発信者情報通知サービス」という表現を用いている。

 2 発信者情報通知サービスによって通知される電話番号等の個人情報は、氏
  名、住所、生年月日又は商品購入の事実、金銭借入の事実等の取引に関する
  個人情報その他の個人情報に結合され、顧客データベース等として保有され
  ることが多いと考えられる。したがって、このガイドライン案は、発信者情
  報通知サービスによって通知される発信者の個人情報自体の取扱いについて
  定めるものであるが、これにより、発信者の個人情報に結合して保有される
  個人情報一般の保護にも役立つことを目的とする。


1.目的                               
 このガイドラインは、発信電話番号等発信者に関する個人情報を通知する電
気通信サービス(以下「発信者情報通知サービス」という。)の利用者を対象
として、通知を受けた個人情報の取扱いに関する基本的事項を定めることによ
り、発信電話番号等発信者に関する個人情報及びこれに結合して保有される個
人情報を保護することを目的とする。
2.定義
(1)発信者個人情報                         
  発信者情報通知サービスにより通知される個人に関する情報であって、当
 該情報に含まれる電話番号、氏名、生年月日、その他の記述又は個人別に付
 された番号、記号その他の符号、影像又は音声により当該発信者を識別でき
 るもの(当該情報のみでは識別できないが、他の情報と容易に照合すること
 ができ、それにより当該発信者を識別できるものを含む。)をいう。   

(2)事業用サービス利用者                      
  発信者情報通知サービスを利用する法人その他の団体及び自己が営む事業
 において発信者情報通知サービスを利用する個人をいう。ただし、国及び地
 方公共団体を除く。                         

(3)記録                              
  コンピューター等による自動処理を行うかどうかにかかわらず、通知され
 た発信者個人情報を後に取り出すことができる状態で保存することをいう。
 ただし、発信者に対して折り返し通信を行う目的で一時的に発信者個人情報
 を保存する場合を除く。
(解説)
 1 「発信者個人情報」について
   このガイドライン案の対象となる個人情報を定義することにより、ガイド
  ライン案の適用範囲を明確にするため、個人情報のうち、発信者情報通知サ
  ービスによって通知される個人情報を「発信者個人情報」とする。当面は、
  NTTの発信電話番号通知サービスの他、ISDN、移動電話、PHS等に
  よって通知される電話番号が対象となるが、将来においては、電話サービス
  において、発信者の氏名、個人別番号、顔写真等の個人情報を伝達すること
  も技術的には可能となることが予想されるため、個人情報の保護を徹底する
  観点から幅広く保護の対象とする。このガイドライン案は、発信者情報通知
  サービスで発信者個人情報が相手方に通知されることによって、個人のプラ
  イバシーの侵害や個人が抱く不安感に対応することを目的としていることか
  ら、自然人に関する情報を対象とし、法人又は法人格を有しない団体に関す
  る情報は対象としていない。

 2 「事業用サービス利用者」について
  (1)法人その他の団体が発信者情報通知サービスを利用する場合、又は個
    人事業者が自己が営む事業において発信者情報通知サービスを利用する
    場合、網羅的・集中的 に大量の発信者個人情報を取り扱うことが予想
    され、また、法人その他の団体が、発信者個人情報のコンピューター処
    理やデータベース処理等を行うことにより、個人情報の蓄積、編集、複
    写、加工がいっそう容易となり、個人のプライバシーを侵害するおそれ
    が高まる。そこで、このガイドライン案においては、発信者情報通知サ
    ービスの事業用利用者を対象とすることとする。
     「法人その他の団体」には、企業等の営利法人、公益法人、特殊法人、
    その他の任意団体を含む。「事業において」とは、「事業に関連して」
    という意味であり、顧客から取引に関する注文を電話で受け付ける等直
    接の事業目的のために発信者情報通知サービスを利用する場合はもちろ
    ん、顧客からの問い合わせや相談の窓口で利用する等事業の過程で利用
    する場合を含む。また、法人その他の団体が営む業務については、営利
    目的があるかどうかを問わない。
     これに対し、個人が日常生活において発信者情報通知サービスを利用
    する場合には、通話の当事者間の信頼関係により個人情報が保護される
    のが通常であること、コンピューター処理やデータベース処理により、
    網羅的・集中的に大量の個人情報を取り扱うことは稀であることにかん
    がみ、発信者個人情報の取扱いは基本的にこれらの利用者の良識に委ね
    ることとし、このガイドライン案の対象外とする。

  (2)国の行政機関については、既に「行政機関の保有する電子計算機処理
    に係る個人情報の保護に関する法律」(昭和63年法律第95号)が制
    定され、電子計算機処理が行われる個人情報の保有、利用、外部への提
    供、情報の開示・訂正、苦情処理等について規定が設けられている。ま
    た、地方公共団体については、同法第26条において「個人情報の適切
    な取扱いを確保するための必要な施策の策定、実施に関する努力義務」
    が課されているうえ、平成8年4月1日現在、既に1202の地方公共
    団体(一部事務組合を含む。)において、個人情報に関する条例が制定
    されている。また、このような条例が制定されていない地方公共団体に
    おいても、個人情報は、地方公務員法第34条の守秘義務規定で保護さ
    れる。そこで、国及び地方公共団体については、このガイドライン案の
    対象外とする。


 3 「記録」について
  (1)従来OECD8原則(注1)等においては個人情報の「収集」に関し
    て制限を設けている。しかし、発信者情報通知サービスにおいては、通
    常の場合、収集目的にかかわらず、電話に出る前に発信者個人情報が通
    知されるため、「収集」に関する制限にはなじまない。そこで、通知さ
    れた個人情報の「記録」について制限の規定を設けることとする。(注
    2)

  (2)発信電話番号を一時的に端末に保存する、通知された相手の電話番号
    をメモする等後で折り返し電話をかける目的で備忘のため一時的に保存
    する場合は、個人のプライバシーを侵害するおそれがないので、「記録」
    の定義から除く。


(注1) 経済協力開発機構(OECD)の「プライバシー保護と個人データの
    国際流通についてのガイドラインに関する理事会勧告」(1980年9
    月23日採択)の附属文書のガイドラインに掲げられている国内適用に
    関する8項目の基本原則をいう。

(注2)「個人データ処理に係る個人の保護及び当該データの自由な移動に関す
   る1995年10月24日の欧州議会及び理事会の95/46/EC指令」
   第2条は、「個人データ処理」の定義の中で、「収集(collection)」と
   「記録(recording)」を分けている。

3.発信者個人情報の記録の制限等                   
(1)事業用サービス利用者は、発信者個人情報を記録する場合には、記録目
  的を明確にし、その目的の達成に必要な範囲内で行わなければならない。

(2)事業用サービス利用者は、発信者個人情報の記録を行う場合、情報主体
  に対し、発信者個人情報を記録すること及び記録目的を告げなければなら
  ない。ただし、情報主体が既にこれを知っている場合はこの限りではない
  。

(3)事業用サービス利用者は、コンピューター等による自動処理により発信
  者個人情報の記録を行う電話番号について、誰もが知り得る簡便でわかり
  やすい方法で周知しなければならない。               
(解説)
 1 事業用サービス利用者は、発信者個人情報の記録を行うに当たっては、記
  録目的、記録する情報の種類、範囲、保存期間、保存方法、開示手続、外部
  への提供の有無等を可能な限り明確にしておくことが必要である。
   「情報主体」とは、電気通信事業者と電話サービス契約を締結した者に限
  定されるものではなく、発信者個人情報の帰属主体と認められる者を指す。
  例えば、妻が夫名義の加入電話から自己の名で通信販売の申込みをした場合
  には、その電話番号は妻に関する個人情報として記録されるのであるから情
  報主体は妻となる。発信者に着目して「情報主体」としている。

 2 情報主体に対する告知に当たっては、発信者個人情報が記録されることが
  容易に理解できるような表現で行われることが必要である。例えば、電話で
  注文を受けた顧客をデータベースに登録する場合には、「当社をご利用いた
  だいたお客様として登録させていただきます。」という告知を行うことが考
  えられる。
   「情報主体が既にこれを知っている場合」とは、具体的には、以前に発信
  者個人情報を記録する旨の告知を受けて顧客として登録された者が、再度事
  業用サービス利用者に電話をかけた場合等が考えられる。

 3 事業用サービス利用者は、コンピューター等による自動処理を利用して発
  信者情報通知サービスを利用する場合には、発信者個人情報が網羅的に記録
  されるため、個人情報の保護にとりわけ留意する必要がある。具体的には、
  事業用サービス利用者が当該電話番号をパンフレットや広告等で宣伝する場
  合には、発信者情報通知サービスを利用していることを示す「受信マーク」
  を付けること等が考えられる。この場合、電気通信事業者においても、簡潔
  でわかりやすい統一マークを制定して、その周知に努める等の協力が必要で
  ある。

4.発信者個人情報の利用の制限                    
 事業用サービス利用者は、記録目的の範囲を超えて、発信者個人情報を利用
してはならない。                           
(解説)
 事業用サービス利用者は、発信者個人情報を記録された目的の範囲内で利用し
なければならない。
 また、事業用サービス利用者は、情報主体に告知した記録目的を不当に拡大解
釈してはならない。最近、企業経営の多角化が進展しているが、同一企業の内部
においても、相互に関連しない部門の間で、発信者個人情報を共同利用すること
が、記録目的との関係で、認められない場合があることに留意すべきである。

5.発信者個人情報の提供の制限                    
 事業用サービス利用者は、発信者個人情報を外部へ提供してはならない。た
だし、次のいずれかに該当する場合には、記録目的にかかわらず、当該個人情
報を外部へ提供することができる。                   

(1)発信者が外部への提供について同意した場合            
(2)法令の規定により提供が求められた場合              
(解説)
 1 発信者個人情報の保護について最も懸念されるのは、事業用サービス利用
  者が、発信者個人情報やその他の個人情報を記録し、これをデータベース化
  して、情報主体に無断で第三者にリース・転売することである。そこで、発
  信者個人情報の外部への提供は原則として禁止することとする。ただし、本
  人が第三者への提供について同意した等本人の利益を害するおそれがない場
  合には、例外的に外部への提供ができるものとする。
   事業用サービス利用者が外部への提供について、情報主体の同意を得よう
  とする場合には、提供先、提供される個人情報、提供先での利用目的、提供
  に同意しない場合の不利益等について、できるかぎり具体的に明示すること
  が必要である。

 2 提供を求める根拠となる法令の規定としては、刑事訴訟法第197条2項、
  弁護士法第23条の2、麻薬取締法第58条の3から第58条の5の規定等
  が挙げられる。

6.不当な差別的取扱いの制限                     
 事業用サービス利用者は、発信者情報通知サービスの利用に際し、不当な差
別的取扱いを行ってはならない。                    
(解説)
 電気通信審議会の公聴会や研究会のヒアリングにおいて、消費者団体等から、
企業等の消費者相談窓口において、電話番号を非通知とする者や苦情・相談を行
う特定の者が差別を受けることを懸念する意見があった。これに対応するために
は、不当な差別的取扱いを行ってはならないことを明示する必要がある。
 何が「不当な」差別的取扱いに当たるかは、事業用サービス利用者の事業の内
容、発信者情報通知サービスの利用の態様、収集・記録する個人情報の種類等の
具体的事情によって決定される。
 なお、国や地方公共団体の行政サービスにおいて、番号を非通知とする者や苦
情・相談を行う特定の者に対して、行政サービスを拒否したり、遅延させたりす
ることは、憲法、国家公務員法、地方公務員法等の趣旨にかんがみ、公務員の職
務上の義務に違反することは言うまでもないことである。

7.発信者個人情報の適正管理                     
(1)事業用サービス利用者は、記録目的に応じて発信者個人情報の正確性を
  保つよう努めなければならない。                  

(2)事業用サービス利用者は、発信者個人情報への不当なアクセス、その紛
  失、破壊改ざん、漏洩等に対して適切な保護措置を講じなければならない
  。

(3)事業用サービス利用者は、発信者個人情報の処理を外部に委託する場合
  には、契約等の法律行為に基づき、当該発信者個人情報に関する秘密の保
  持等に関する事項を明確にし、個人情報の保護に十分配慮しなければなら
  ない。
(解説)
 1 事業用サービス利用者が誤った発信者個人情報を記録した場合、その利用、
  提供により、情報主体に関して不正確な認識、評価が行われ、個人の権利利
  益が侵害される可能性が高い。また、一度ネットワークに乗せられた個人情
  報は、編集、加工、複写等により、一瞬のうちに広範囲に伝播することから、
  情報主体が予期しない形で損害を被ることや誤りの訂正に困難を来たすこと
  が想定される。そのため、事業用サービス利用者は、発信者個人情報の正確
  な記録、保存に努める必要がある。

 2 事業用サービス利用者が記録した発信者個人情報に対する不当なアクセス、
  その紛失、破壊、改ざん、漏洩等が生じると、データベースの編集、加工、
  複写等により、情報主体に不利益が及ぶ可能性が高い。そのため、事業用サ
  ービス利用者は、自己が保有する発信者個人情報の取扱いについて、より確
  実で慎重な取扱いをすることが求められる。具体的には、データ保護に関す
  る社内基準や責任体制の確立、ハッカー対策等が重要である。

 3 近年情報化の進展に伴い、企業等における個人情報の収集・記録がますま
  す進んでいる。企業等においては、経営の効率化や顧客サービスの向上のた
  め、電話応対業務等を外部に委託するケースも多い。そこで、発信者個人情
  報の処理を外部に委託する場合には、委託先において個人情報の処理に関し
  てトラブルを生じることがないよう必要な措置を講じるべきである。具体的
  には、委託先の選定について基準を設けること、委託先との契約において、
  秘密の保持義務、外部への提供の禁止、委託処理の期間を明記すること、処
  理の終了後は直ちに発信者個人情報を返還すること等を明記すること等が適
  当である。

8.事業用サービス利用者の発信者個人情報の開示及び訂正・削除     
(1)事業用サービス利用者は、情報主体から自己に関する発信者個人情報の
  開示の請求があった場合、本人であることを確認した上でこれに応じなけ
  ればならない。                          

(2)事業用サービス利用者は、発信者個人情報に誤りがあって、情報主体か
  ら訂正・削除を求められた場合、正当な理由なく、その請求を拒んではな
  らない。                             

(3)事業用サービス利用者は、発信者個人情報の誤りを訂正・削除するまで
  は、その情報を利用してはならない。                
(解説)
 1 情報主体が、自己に関する情報に疑念をいだいたような場合、その情報に
  ついて自ら確認することを可能とするため、事業用サービス利用者としては、
  自己情報の開示の請求に応じる必要がある。このため、情報主体が、簡便に
  情報開示の請求ができるよう対応窓口を設置すること、請求があった場合に
  は可能な限り迅速に対応すること等が求められる。
   発信者個人情報は、通常の場合、氏名、住所、取引歴等その他の個人情報
  に結合された顧客データベースの形で管理されると思われるが、事業用サー
  ビス利用者としては開示を求められる場合に備えて、発信者個人情報の原デ
  ータを識別できるようにしておくことが必要である。

 2 事業用サービス利用者は、誤りのある発信者個人情報については、情報主
  体の権利利益に不測の損害が生じることを防止するため、速やかに訂正・削
  除を行うべきである。ただし、事後的な訂正を行うことが実質的に不可能と
  認められる等の正当な理由がある場合にはこの限りではない。

 3 事業用サービス利用者は、発信者個人情報の誤りが判明した場合には、発
  信者に不利益を及ぼすことを防止するため、訂正・削除を行うまでの間、当
  該発信者個人情報を利用してはならない。


3 発信者個人情報の保護に向けた課題

(1)ガイドラインの周知
   発信者情報通知サービスは、これまでの電話サービスを大きく変更すると
  ともに、電話を使うあらゆる事業者・個人が利用することができる。そこで、
  このガイドライン案は、発信者に関する個人情報及びこれに結合して保有さ
  れる個人情報の保護を図ることを目的として、発信者情報通知サービスの利
  用者を対象に、通知を受けた発信者個人情報の取扱いに関する基本的事項を
  定めたものであり、広く周知することが望まれる。前述のように、我が国で
  は民間部門を対象とする個人情報保護法が制定されてなく、いくつかの省庁、
  事業者及び事業者団体等において、ガイドラインによる自主的な取組みがな
  されているのが現状である。また、事業用サービス利用者は、電話を使うあ
  らゆる業種、業態にわたっている。したがって、郵政省としては、ガイドラ
  インの周知を図るため、関係各省庁に必要な情報提供を行う等して、十分に
  連携をとる必要がある。関係各省庁においても、ガイドラインの趣旨を踏ま
  えて、可能な限り、適切な対応策を講ずることが期待される。また、事業用
  サービス利用者である事業者及び事業者団体等においても、ガイドラインの
  内容を十分に検討して、必要な対応策をとることが期待される。

(2)発信者個人情報の取扱いに関する苦情処理・相談体制の充実
   これまで述べてきたように、発信者情報通知サービスの導入は、従来の電
  話サービスを変更するものであり、ガイドラインの遵守について、利用者か
  らの苦情・相談が増加する可能性がある。発信者情報通知サービスが円滑に
  利用されるためには、発信者個人情報の保護に関する苦情・相談が迅速かつ
  的確に処理される必要がある。したがって、まず、発信者情報通知サービス
  を提供する電気通信事業者は、専用の利用者相談窓口や受付電話を設置する
  等して、利用者からの苦情・相談に迅速・的確に対応することが必要である。
  また、郵政省においても、電気通信分野における苦情・相談の受付窓口の明
  確化を図るとともに、苦情処理・相談事例の蓄積や分析を行う等苦情処理・
  相談体制の充実を図る必要がある。
   なお、ガイドラインはその性格上強制力を持つものではないこと等を踏ま
  え、ガイドラインに違反した悪質な事業用サービス利用者について、その氏
  名の公表や発信者情報通知サービスの利用を制限すること等の方策について
  も、今後、検討していく必要がある。

(3)民間部門における個人情報保護法の制定に向けた取組み
   最近の欧州連合(EU)における個人情報保護法制の整備への取組み(注)
  等を踏まえると、我が国においても、民間部門における個人情報保護法の制
  定に向けて、関係各省庁が連携を取り合っていくことが喫緊の課題となって
  いる。

 (注) 前記EU指令は、構成国がこの指令に適合するように、1995年10
    月24日から3年以内に国内法制を整備することを義務づけている。ま
    た、この指令では、個人データについて、十分なレベルの保護(adequate
    level of protection)が確保されていない第三国へのデータの移転を
    禁止している。


            委 員 名 簿
           (敬称略、五十音順)

     ほりべ  まさお 
座 長  堀 部  政 男   一橋大学法学部教授

     たがや  かずてる
委 員  多賀谷  一 照   千葉大学法経学部教授

     なおえ  しげひこ
委 員  直 江  重 彦   中央大学総合政策学部教授

     にいみ  いくふみ
委 員  新 美  育 文   明治大学法学部教授

     ふじわら しずお
委 員  藤 原  静 雄   国学院大学法学部教授



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