発表日 : 12月25日(木)
タイトル : 12/25付:インターネット上の情報流通ルール
−「電気通信サービスにおける情報流通ルールに関する研究会」報告書−
郵政省では、電気通信サービスにおける情報流通ルールの在り方等を検討する
ため、平成9年(1997年)10月から、「電気通信サービスにおける情報流
通ルールに関する研究会」(座長:堀部 政男中央大学教授)を開催してきまし
たが、このたび、その報告書「インターネット上の情報流通ルールについて」が
取りまとめられました。報告書の概要は別紙のとおりです。
また、取りまとめられました報告書について、平成10年3月31日(火)
まで、電子メール等により、広く御意見を受け付けることとしましたので、
下記のあて先まで自由に御意見をお寄せ下さい。いただいた御意見につきまして
は、今後の行政の参考にさせていただきます。
記
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インターネット
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internet@mpt.go.jp
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FAX
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郵政省電気通信局電気通信利用環境整備室
03−3595−2008
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郵 送
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〒100-90(平成10年2月から 〒100-8798)
郵政省電気通信局電気通信利用環境整備室
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連絡先:電気通信局電気通信事業部
業務課電気通信利用環境整備室
(担当:守下課長補佐、中溝係長)
電 話:03−3504−4831
別紙
「インターネット上の情報流通ルール」の概要
− 電気通信サービスにおける情報流通ルールに関する研究会報告書 −
1 インターネット上の情報流通ルールの必要性
(1)インターネットは、個人の自己表現の発展、情報による学術・文化的価値
の創出、経済取引の利便性の向上等、我々の文化的・経済的・社会的生活を
豊かにしている一方、違法又は有害な情報の流通が問題視されている。イン
ターネットを誰もが安心して利用できるコミュニケーションの手段とするた
めには、情報の自由な流通を確保しつつ、インターネット上の情報流通に関
するルール作りを行っていくことが不可欠であり、利用者、プロバイダー、
政府その他の各当事者が、ルール形成のために積極的な役割を果たす責務が
ある。
(2)検討に当たっては、通信内容に秘密性のない(公然性のある)インターネ
ットのWWW(ワールド・ワイド・ウェブ)等について、従来の1対1の通
信とは別に検討を加える。
(3)違法なコンテントと有害なコンテントは区別して検討する必要がある。
2 諸外国における情報流通ルールの議論の状況
(1)アメリカ
連邦最高裁のCDA法違憲判決(1997年6月)後、自主規制による対
応及び技術的対応を推進していく方向を明確に打ち出している。また、第三
者のコンテントに対するプロバイダーの責任については、CDA法に免責規
定が設けられたが、その解釈にも争いがあるところであり、今後の動向に注
目していく必要がある。
(2)イギリス
名誉毀損法の改正等により、既存の法律がインターネット上の情報流通に
適用があることを明確にしている。さらに、同法改正により、一定の場合、
第三者のコンテントに対するプロバイダーの責任を免除している。
(3)ドイツ
通称マルチメディア法(1997年8月施行)の中で、刑法等を改正して、
インターネット上の情報流通に適用があることを明確にし、また第三者のコ
ンテントに対するプロバイダーの責任規定及び免責規定を設け、さらに、青
少年保護のための仕組み等を定めた。
(4)フランス
インターネット上の情報流通については一般法の適用がある。また、プロ
バイダーの責任等については、電気通信規制法の改正により対応したが、行
政による規律及びプロバイダーの刑事責任の免除に関する規定が、憲法院に
より無効とされ、プロバイダーに利用者へのフィルタリング技術の提供を義
務づける規定のみが残っている。
(5)オーストラリア
政府が、[1]プロバイダーの規約に基づく自主規制の枠組みの構築、
[2]レイティング(注1)及びフィルタリング(注2)技術の活用、[3]
児童ポルノなどの違法なコンテントから子どもを守るための「ホットライン」
の創設、[4]インターネット等の十分な理解と有効な活用ためのコミュニ
ティ教育の推進を提言する報告を行っており、また、国際協調のための活動
を積極的に行っている。
(6)EU
平成9年(1997年)11月に、「未成年と人間の尊厳の保護に関する
欧州委員会報告書」及び「インターネットの安全利用の促進に関する委員会
行動計画(案)」を発表し、自主規制の枠組み、レイティング及びフィルタ
リング技術の活用等を推進していく方向に進んでいる。
(7)その他、OECD、APEC等で議論が行われている。
3 情報流通ルールの具体的な在り方
(1)自己責任の原則の確認
発信者は、公然性を有する通信における情報発信に伴う責任とリスクを十
分に認識して利用すべきであり、その自覚を高めるための情報社会教育を推
進していくことが重要である。また、受信者においても、インターネット上
の情報の中には信頼性の低いものや犯罪性のあるものもあることを自覚し、
自己防衛に努めることが必要である。
(2)違法な情報発信に対する現行法の適用
オフラインで違法なものはオンラインでも違法であり、違法な情報流通に
対しては、まずは、現行法の適用で対応すべきである。さらに新たな法的措
置を講ずることについては、インターネットの進展を見守りつつ、表現の自
由と名誉・プライバシーの保護、青少年保護等他の利益の保護との調和を図
りながら、今後ともその在り方を検討していく必要がある。
(3)プロバイダーによる自主的対応
プロバイダーには、情報流通のルール形成に貢献する責務がある。しかし、
利用者が違法又は有害なコンテントを発信している場合、プロバイダーが法
的にいかなる責任を負うかは明確ではなく、これを何らかの形で明らかにし
ていく必要がある。法律によりプロバイダーの責任を規定することについて
は、国内及び海外の動向を見据えつつ、なお慎重に検討すべきであり、当面
はプロバイダーの自主的対応に期待していくことが適当である。その際、プ
ロバイダーが利用者のコンテントに問題があることを理由に、発信者への注
意喚起、削除、利用停止及び契約解除等の措置をとることは、電気通信事業
法(第3条、第4条、第7条及び第34条)上、可能であると考えられる。
(4)発信者情報開示(匿名性の制限)の検討
公然性を有する通信においては、通信の秘密として保護すべき利益と当該
通信によって被害を受けた者の救済の利益との比較衡量により、一定の要件
の下で適正な手続に従って発信者を特定する情報を開示することを可能とす
る手段を設けることを検討すべきである。1対1の通信においても、一定の
場合には同様に開示が認められる余地があり、そのための要件や手続を検討
すべきである。
(5)受信者の選択を可能とする技術的手段の活用
レイティング及びフィルタリング技術の活用及び普及のための施策を推進
していく必要がある。その際、表現の自由に配慮してあくまで受信者の自由
意思に基づいて進めていくことが大切である。また、迷惑通信対策として、
電子メールの受信拒否機能の導入を進めていくことも必要である。
(6)苦情処理窓口の明確化
プロバイダーによる苦情処理窓口の明確化を図るとともに、苦情処理ホッ
トラインの創設や各専門機関の苦情受付窓口との連携等を進めていくことが
課題である。
(7)今後の動向等を踏まえた検討の推進
インターネット上の情報流通ルールの在り方については、我が国のみなら
ず、諸外国においても様々な議論があり、未だ確定した考えはない状況にあ
る。今後とも、本研究会での検討結果を踏まえつつ、国内外での議論の動向
を見極めながら、調和のとれたルールを形成すべく、さらに努力を続ける必
要がある。
(注1)レイティング・・・インターネット上を流通するコンテントについ
て、一定の基準に基づいて格付けをおこなうこ
と。
(注2)フィルタリング・・受信者側の設定により、格付けされたコンテン
トを自動的に選別して、受け取りたくないコン
テントを遮断すること。