優先接続(注1)は、電話サービスの提供に関し、地域通信網事業者(加入
者回線を含む地域通信網を設置しサービスを提供する事業者)が接続事業者
(地域通信網に接続しサービスを提供する事業者)に対して提供する機能であ
り、加入者が接続事業者のサービスを利用する場合に、あらかじめ当該接続事
業者を選択して地域通信網事業者に登録しておけば、当該事業者の事業者識別
番号のダイヤリングを省略して通話を可能とする仕組みである(資料編1〜3
参照)。
現行のダイヤル方法は、NTTの国内電話サービスを利用する場合は事業者
識別番号は不要であるが、NTTの地域網と接続して国内の中継電話サービス
を提供する長距離系NCC等(注2)の場合は最初に4桁の事業者識別番号を
ダイヤルする必要がある。また、国際電話サービスについてはKDD及び国際
系NCC(注3)ともに、最初に3又は4桁の事業者識別番号をダイヤルする
必要がある。
なお、国際電話サービスを提供する事業者の事業者識別番号は、当該通話が
国際通話であることを識別するための番号(国際プレフィックス)の役割を兼
ねており、後述のとおり、優先接続を国際通話に導入することを検討する際に
は、この点にも配慮する必要がある。
事業者・サービス
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現行のダイヤル方法
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NTTの市外電話
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06−234−5678
市外局番−市内局番−加入者番号
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長距離系NCCの市外電話
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00XY+06−234−5678
 ̄ ̄ ̄ ̄
事業者識別番号+同上
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KDD及び国際系NCCの
国際電話
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00XY+44−234−5678
 ̄ ̄ ̄ ̄
事業者識別番号+国番号+同上
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優先接続は、現状のNTTと他事業者とのダイヤル桁数を同等にするととも
に、通話ごとの事業者識別番号のダイヤルを不要とするためのものである。
(注1)優先接続
米国では、優先接続を、ダイヤル桁数を同等にする点に着目し
て「ダイヤリング・パリティ」と呼称している。また、EUでは、
事前に事業者を選択するという趣旨で、「プレセレクション」と
呼称している。
なお、「優先接続」という用語は一般には意味が分かりにくい
ので、例えば「事前登録制」(事前選択制)という用語が適当と
も考えられるが、本中間報告書では、とりあえず、従来から我が
国で用いられている「優先接続」という用語を用いることとする。
(注2)長距離系NCC等
長距離系NCCとは、国内の長距離通話サービスを事業の主軸と
する第二電電(株)、日本テレコム(株)及び日本高速通信(株)を指
す。この3社に、本年から関東地域を業務区域としNTTの地域
網に接続する方式で長距離通話サービスを開始している東京通信
ネットワーク(株)や今後同様のサービスを提供する第一種電気通
信事業者を加えて、長距離系NCC等と呼ぶこととする。
(注3)国際系NCC
国際系NCCとは、日本テレコム(株)及び国際デジタル通信(株)
を指す。この2社に1985年以前から国際電話サービスを提供し
ているKDDや今後同様のサービスを提供する第一種電気通信事業
者を加えて、国際系事業者と呼ぶこととする。
1) NTTの再編成
NTTは1997年6月に改正された法律に基づき、1999年夏にも、
下の図のように再編成されることが予定されている。これは現在のNTTを
地域通信(県内)部門と長距離通信(県間)部門に分離し、さらに、地域通
信部門を東西に分離するとともに、長距離通信部門の会社は完全民営化する
ことにより、我が国の通信市場における公正有効競争の促進を図ることを目
的としている。
2) NTT再編成後の長距離NTTの事業者識別番号の取扱い
NTTの再編成後は、長距離NTTは他の長距離系NCCや国際系事業者
と同様に、事業者識別番号を取得し地域NTTの地域網に接続して各種の電
気通信サービスを提供することとなる。
このため、事業者識別番号について何らの措置も講じない場合は、既存N
TT利用者が長距離NTTの長距離通話サービスを利用する際に、最初に新
たに4桁の事業者識別番号をダイヤルすることが必要となり、これは、NT
T再編成に伴いサービスの提供条件を低下させることとなり好ましくないこ
とである。
こうした、既存のNTT利用者の不利益を回避するため、地域NTTが長
距離NTTに接続する場合に限り事業者識別番号を不要とする取扱いも考え
られるが、それは、長距離NTTと競争関係に立つ長距離系NCC等との公
正競争条件の確保という観点からは好ましいことではない。
そこで、NTT再編成に関連し、利用者利便の維持・向上と公正有効競争
の促進との双方の観点から、優先接続の導入について検討する必要が生じて
いる。
優先接続は、これまで米国、オーストラリア、カナダ、韓国、ドイツ等で導
入済みであり、またEUにおいても2000年までの導入が検討されていると
ころであり、近年、国際的にも電気通信分野における公正競争条件として重視
されてきている。
導入済みの各国の優先接続制度には、その細部について各国の電気通信市場
の実態等に応じたバリエーションがあるが、先行各国の事例(資料編4参照)
をも参考として我が国の実態に応じた優先接続の在り方を検討する必要がある。