発表日 : 1998年 7月24日(金)
タイトル : 電気通信分野における新たな料金制度の運用の在り方
−「新たな料金制度の運用等の在り方に関する研究会」中間取りまとめ−
郵政省では、電気通信料金について、原則届出制とするとともに、インセンティ
ブ規制として上限価格方式を導入することとした新たな料金制度の下における意見
申出制度の手続、上限価格方式の具体的内容、情報公開の在り方等について検討す
るため、平成10年(1998年)4月から「新たな料金制度の運用等の在り方に
関する研究会」(座長:堀部政男 中央大学法学部教授)を開催してまいりました。
このたび、新たな料金制度の運用の在り方について、中間取りまとめが整理され
ました。中間取りまとめの概要は別紙のとおりです。
また、本中間取りまとめについて、平成10月8月17日(月)まで、書面、電
子メール等により、広く御意見を受け付けることとしましたので、下記のあて先ま
で自由に御意見をお寄せください。いただいた御意見につきましては、上記研究会
における「最終取りまとめ」の検討、作成の参考にさせていただくとともに、その
内容は、取りまとめ次第公表させていただきます。
記
インターネット
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ryoukin@mpt.go.jp
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FAX
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郵政省電気通信局電気通信事業部業務課
03−3595−2008
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郵 送
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〒100-8798
郵政省電気通信局電気通信事業部業務課
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連絡先:電気通信局電気通信事業部業務課
(担当:岡崎課長補佐、蒲生係長)
電 話:03−3504−4830
電気通信分野における新たな料金制度の運用
の在り方について[中間取りまとめ](要旨)
「新たな料金制度の運用等の在り方に関する研究会」
1 原則認可制から原則届出制へ移行
第一種電気通信事業者は、電気通信役務に関する料金を定め又は変更する場合
には、その実施前に届け出るものとする。
2 料金変更命令の発動要件の明確化
料金の適正性を確保するため、次の要件に該当する場合には、行政は、料金の
変更を命じることとする。
1) 料金の額の算出方法が適正かつ明確に定められていないとき
2) 特定の者に対し不当な差別的取扱いをするものであるとき
3) 他の電気通信事業者との間に不当な競争を引き起こすものであり、その他社
会的経済的事情に照らして著しく不適当であるため、利用者の利益を阻害する
ものであるとき
3 意見申出制度の導入
利用者や競争事業者は、行政に対して、電気通信役務に関する料金その他の提
供条件について苦情その他の意見の申出を行うことができることとする。
4 上限価格方式の導入
競争が必ずしも十分でない地域通信市場における電話サービス等基本的なサー
ビスについては、事業者に自主的な経営効率化インセンティブを与えるため、上
限価格方式を導入する。
1 事前届出期間
事業者は、事前に料金設定・改定の内容を積極的に利用者に周知することが求
められるとともに、行政において利用者からの問い合わせや意見申出に適切に対
応するため、同程度の情報を同時期に届け出ることが必要である。具体的な事前
届出期間としては1〜2週間程度とすることが妥当ではないかと考えられるが、
極力短縮化すべきとの意見もあるので、今後、パブリックコメントを踏まえて、
更に検討することとする。
2 届出事項
利用者の適切な選択に資する情報や、事後的に利用者等が料金の妥当性を判断
するために必要な情報が届出事項として公表されることが必要である。具体的な
届出事項としては次の事項が考えられる。なお、収支見通しについては、今後、
パブリックコメントを踏まえて、更に検討することとする。
1) 料金の案(新旧対照表)
2) 実施時期
3) 料金の設定・改定の理由(収支見通し等)
4) 適用地域・期間(限定がある場合)
5) その他参考となる事項
1 意見申出の方法
意見申出制度の円滑な運用のために、意見申出を行う場合の申出事項としては、
次の事項を記載した書面を提出することが適当であると考えられる。
1) 氏名、住所、連絡先
2) 申出対象事業者、対象サービス、対象料金
3) 申出理由(根拠)
4) 具体的改善策
2 意見申出に対する調査
意見申出があった場合、行政としては、電気通信事業法上の報告徴収権をより
積極的に活用するなどにより、当該事業者から料金の妥当性を説明するための原
価情報等の開示を求めることとなる。
3 意見申出に対する処理
行政は、意見申出に基づいて料金の妥当性について検証し、適切に処理を行っ
た上で、意見申出者に処理の結果及びその判断の理由を通知するとともに、原則
としてその通知した内容について公開する必要があると考えられる。
料金変更命令の発動要件として、法律上3項目が挙げられており、その概要は
次のとおりであるが、具体的適用については、今後個別ケースごとに判断してい
く必要がある。
(1) 料金の額の算出方法が適正かつ明確に定められていない料金
料金の額の算出方法が、定額又は定率により、適正かつ明確に示されること
が求められる。
(2) 特定の者に対し不当な差別的取扱いとなる料金
「不当な差別的取扱い」とは合理的かつ妥当な理由なく特定の利用者を優遇
又は冷遇することであり、合理的かつ妥当な理由があるかどうかは、当該サー
ビスのコスト・効用、公正競争条件の確保、社会政策上の観点、社会通念等に
照らしながら総合的に判断することとなる。例えば、1)大口利用者向け料金、
2)地域別料金、3)選択割引などが、「不当差別」に該当しないかどうかが問題
となり得る。
(3) 不当な競争を引き起こす料金
「不当な競争を引き起こす」料金とは、当該料金が設定されることにより、
電気通信事業者(第二種電気通信事業者を含む。)間の公正な競争を阻害する
こととなる料金と考えられ、公正競争阻害性の判断に当たっては、当該事業者
の料金設定の意図や市場支配力、当該料金設定が競争事業者に与える効果等を
総合的に考慮して判断する必要がある。例えば、1)不当低料金、2)差別料金な
どが問題となり得る。
(4) 社会的経済的事情に照らして著しく不適当な料金
市場メカニズムが有効に機能しないことによる独占的・寡占的な料金設定や
社会福祉等の観点から不適当な料金設定が行われた場合についても、電気通信
サービスの公共性から、料金の適正さを確保する必要があり、社会的事情や経
済的事情に照らして、著しく不適当であるため利用者の利益を阻害するような
料金が該当することとなる。例えば、1)不当に高額な料金、2)利用者の適切な
選択を妨げる料金などが問題となり得る。
1 上限価格方式の概要
競争が十分進展していないサービスであって、利用者の利益に及ぼす影響が
大きい役務を特定電気通信役務とし、その特定電気通信役務の種別ごとに、行
政が、適正な原価や物価等の経済事情を考慮して、適切な料金水準である基準
料金指数を設定する。基準料金指数以下の料金は届出対象料金となり、基準料
金指数を超える料金は認可対象料金となる。
2 特定電気通信役務の範囲・種別
(1) 特定電気通信役務の範囲は、指定電気通信設備を用いて提供する都道府県
内の通信サービスのうち、次のものとすることが適当と考えられる。
1) 電話役務(番号案内サービスを含む。)
2) ISDN役務(番号案内サービスを含む。)
3) 専用役務(利用者に及ぼす影響が比較的小さいもの(映像伝送、放送専
用等)は除く。)
なお、付加機能(サービス)の取扱いについては、パブリックコメントを
踏まえて引き続き検討するとともに、新サービスについては、個別ケースご
とに判断することとなる。
(2) 特定電気通信役務の種別
利用者間の公平性の確保や、競争制限的な内部相互補助を防止するため、特
定電気通信役務に次の種別を設け、行政が種別ごとに適切な料金水準である基
準料金指数を設ける。
3 基準料金指数の算定方法等
(1) 基準料金指数の算定
基準料金指数の算定は、次に掲げる式により算定するものとする。
基準料金指数 = 前期の基準料金指数×(1+前年度の消費者物価指数変動率
− 生産性向上見込率(X)±外生的要因)
初回の基準料金指数は、導入時の料金水準を100として表す。
1) 生産性向上見込率(X)は、需要及び合理的な将来原価の予測に基づき、
電気通信分野に特有の生産性向上見込率を算出することにより算定する。
2) 生産性向上見込率(X)は、3年ごとに見直すこととする。
(2) 料金指数の算出
料金指数は、特定電気通信役務の種別ごとに、次に掲げる式により算出す
るものとする。なお、導入時の料金水準を100とする。
(Ptは改定後料金、Pt-1は改定前料金、Sは前年度の供給実績)
5 その他
(1) 基準料金指数以下の料金の届出
事前届出期間については、当面1か月とすることが適当である。また、通
常の届出事項に加え、料金指数が基準料金指数を満たすことをを示す資料を
併せて届け出ることが必要となる。
(2) 基準料金指数超の料金の認可
基準料金指数を超える料金の認可においては、超えることとなる特別な事
情及び料金変更命令の発動要件に該当しないことを事前に審査することとな
る。
(3) 会計情報の取扱い
特定電気通信役務については、毎年度、そのサービス及び種別ごとの原価
情報が、行政に報告され、企業秘密に該当するもの以外はできるだけ公開さ
れることが適当であると考えられる。
(4) サービス品質低下の防止
事業者がサービス品質に関する情報を公開することにより、社会的な検証
を通じて、サービス品質の低下が防止されることが望まれる。
(6) 基準料金指数の適用開始時期
基準料金指数の適用開始時期については、来年(平成11年)夏の日本電
信電話株式会社の再編成後、平成11年度中を目途とすることが適当と考え
られる。
1 電気通信事業者の情報公開
(1) 料金設定・改定時の届出に係る情報提供
料金の概要が把握できる程度の情報(第II章2に記述する事項)が行政に
届けられ、公開されることが求められる。
(2) 意見申出等に対応した料金の妥当性の説明に係る情報開示
事業者は、届け出た料金につき、利用者・他の事業者からの意見申出や行
政から職権に基づく料金の妥当性についての説明が求められた場合には、そ
れに対応した情報の開示が必要となる。
(3) 電気通信事業法に基づく義務的な会計情報の公表
料金の妥当性を判断するための基礎的データとして、新しい料金制度の下で
も引き続き、現在行われている会計情報の公表を求める必要がある。
(4) 事業者による定期的又は随時の任意的な情報提供
利用者の適切なサービス選択等に資するため、事業者が次のような項目を、
任意的に情報提供することが期待される。
1) サービス品質(故障件数、呼損率、回線復旧に要する時間等)
2) 意見・苦情の内容件数、利用者の満足度
3) サービス向上策
4) 中長期的な経営ビジョン
(5) 利用者の個別的要請に対応した情報提供
料金の多様化・複雑化や新しいサービスの登場に対応して、「お客様相談
窓口」の整備等利用者のニーズに対応した分かりやすくきめの細かい対応が
求められる。
(6) 事業者の市場支配力と情報公開の関係
市場支配力を有する事業者は、情報公開の程度についても、他の事業者に
比べ、より広い範囲で、かつより詳細なものが求められるべきものと考えら
れ、今後、新しい料金制度の運用を通じて、制度的な対応を検討していくべ
きであると考えられる。
(7) 情報公開の方法
国民・利用者が適時かつ容易に情報を得ることができるよう、より有効な
手段による情報公開を行う必要がある。特に、情報にアクセスする方法や公
開されている情報のメニューについて広く周知を図っていくことが重要であ
る。
2 行政の情報公開
(1) 事業者からの情報
事業者から行政に届け出られたり、報告される事項については、基本的に
不開示情報を除き原則公開されることが適当である。
(2) 不開示情報について
開示すると事業者の権利、競争上の地位など正当な利益を侵害するおそれ
がある情報や特定の個人を識別することができる情報については不開示とす
る必要がある。不開示情報の範囲についは、明確な基準がなく、今後の料金
制度の運用を通じて明確にしていくことが求められる。
(3) 行政措置に関する情報
行政は、料金変更命令、基準料金指数の設定、意見申出等の行政処分につ
いては、その理由や根拠についても公開し、明確にしていくことが求められ
る。
(4) 情報公開の方法
今後、行政はオンラインによる情報アクセスの利便性を一層向上させると
ともに、郵便、ファックスなどを活用した情報公開の方法についても検討す
べきであると考えられる。