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第5章 今後の課題について

   わが国では、民間部門を対象とした一般的な個人情報保護法は存在せず、各
  業界ごとに行政機関や民間団体がガイドラインを作成し、事業者による自主規
  制を促すということで対応してきており、現行の個人情報保護ガイドラインも
  まさにその一環であった。前述のように、こうした手法は、各業界で扱う個人
  情報の内容や利用方法等に応じた柔軟な対応を可能にするという点で優れてい
  るが、業界団体に加盟しないアウトサイダーには規律が及ばず、また強制力が
  ないため実効性が必ずしもあるとは言えないという問題がある。本改訂ガイド
  ライン案は、情報の種類ごとに個別具体的な規定を設けることにより、できる
  だけその実効性を高めることを企図するものであるが、単なるガイドラインに
  とどまる限り、上記のような弱点があることは否めない。また、ガイドライン
  について明確な法的根拠のない現状は、行政の透明性の観点からも望ましくな
  いので、少なくともガイドラインの法的根拠を設ける必要があるとの見解もあ
  る。
   こうしたことから、今回は現行の個人情報保護ガイドラインの改訂で対応す
  るとしても、早期に何らかの法制度整備が必要となってくると考えられる。そ
  の場合、民間全体を対象とした個人情報保護法の制定を検討することが望まし
  いが、業種にかかわらず一律の規制を設けることには慎重論もあり、政府全体
  として取り組む状況には至っていない。電気通信事業においては、他人の通信
  (情報)を取り扱うことから、「通信の秘密」はもちろんのこと、その他の利
  用者に関する個人情報(プライバシー)についても、その法的保護が特に強く
  求められている(EUにおいて一般的な個人データ保護指令に加えて電気通信
  個人データ保護指令が特別に定められたのも、電気通信分野における個人情報
  保護の重要性を背景とするものと思われる。)。また、サービスの高度化・多
  様化が進む中で、個人情報の取扱いが複雑化し、「通信の秘密」と個人情報と
  の境界があいまいとなるなど、一定の個人情報にも「通信の秘密」に準じた法
  的保護を及ぼす必要性も出てきている。さらに、競争の進展により事業者の数
  もインターネットプロバイダーを中心に急激に増加しており、自主規制だけで
  対処することが必ずしも可能とは言えなくなっている。
   本研究会においては、ガイドラインの改訂案を検討する過程において、電気
  通信事業における個人情報の適切な取扱いの内容をできるだけ具体的に明らか
  にすべく、有識者、電気通信事業者及び一般の利用者からの意見も参考にしつ
  つ検討を行い、一定の成果を得ることができた。今後は、この内容をさらに深
  く検討するとともに、実効性のあるプライバシー保護及び行政の透明性の観点
  から、電気通信分野における個人情報保護の法制化についてもできるだけ速や
  かに検討を行うことが必要である。

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