発表日 : 1999年 1月22日(金)
タイトル : NTTドコモに対する料金変更命令
郵政省は、本日、エヌ・ティ・ティ移動通信網株式会社ほか8社が届け出た
「複数回線複合割引」に係る料金について、当該料金を変更すべきことを命ず
ることとしました。
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郵政省は、本日、電気通信事業法(昭和59年法律第86号。以下「法」とい
う。)第31条第1項の規定に基づき平成10年(1998年)11月24日付け
でエヌ・ティ・ティ移動通信網株式会社ほか8社(グループ全9社。以下「NTT
ドコモ」という。)が届け出た自動車携帯電話サービス及びPHSサービスの「複
数回線複合割引」(概要別紙1)に係る料金について、同条第2項の規定に基づき
料金の変更を命ずること(命令の概要別紙2)に関し、別紙3のとおり電気通信審
議会から諮問のとおり料金の変更を命ずることを適当とする旨の答申を受けました。
料金変更命令は、本日、NTTドコモに対して通知する予定です。
なお、本件については、平成11年(1999年)1月20日に、法第95条第
1項の規定に基づきNTTドコモを当事者とする聴聞(主宰者:齊藤 忠夫 東京
大学大学院工学系研究科教授・電気通信審議会電気通信事業部会長)を行いました。
聴聞におけるNTTドコモの主張、それに対する郵政省の考え方は別紙4のとおり
です。
また、聴聞において、NTTドコモから郵政省に対して質問及び要望があったこ
とから、本日、別紙5の内容で文書により回答を行う予定です。
連絡先:電気通信局電気通信事業部業務課
担 当:岡崎課長補佐、蒲生係長(料金制度)
藤江課長補佐、藤岡係長(移動通信)
電 話:03−3504−4830
別紙1
NTTドコモの「複数回線複合割引」の概要
1 届出者: エヌ・ティ・ティ移動通信網株式会社ほか8社(NTTドコモ)
2 届出日: 平成10年11月24日(火)
3 届出の内容
家族等(異名義の契約者を含む)が携帯電話とPHSを複数(5台まで)契約
する場合、基本使用料(注1)について、以下の割引を行うというもの。
主回線(1台目:注2)につき基本使用料の5%割引+長期契約割引(注3)
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副回線(2台目以降)につき基本使用料の15%割引
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(注1) 基本使用料(月額)は、標準プランの場合、携帯電話が4,600円、
PHSが2,700円
(注2) 主回線は携帯電話のみ、副回線は携帯電話又はPHS
(注3) 長期契約割引は長期利用者に自動的に適用され、割引率は次のとお
り。
携帯電話
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PHS
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1年超〜2年以下
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7%
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6月超〜1年以下
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100円
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2年超〜3年以下
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8%
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1年超〜3年以下
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200円
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3年超〜4年以下
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10%
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3年超
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300円
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4年超〜5年以下
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12%
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5年超
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15%
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(注4) 携帯電話は、終日プランのみ(土日夜限定利用契約を除く。)
PHSはテレメトリングを除く。
4 実施期日: 平成10年12月1日(火)
別紙2
料 金 変 更 命 令 の 概 要
電気通信事業法第31条第1項の規定に基づき、平成10年11月24日付けで
NTTドコモが届け出た自動車携帯電話サービス及びPHSサービスの基本使用料
に係る複数回線複合割引に係る料金について、同条第2項の規定に基づき、平成1
1年6月1日までに、下記理由の趣旨を踏まえ、副回線の割引の条件を変更するこ
とにより、特定の者に対し不当な差別的取扱いがある点を是正することを命ずる。
(理由)
本件複数回線複合割引は、主回線及び副回線の基本使用料をそれぞれ5%及び1
5%割引くものであるが、副回線の割引率は、長期契約割引相当分を含むものとし
ているにもかかわらず、契約期間によらず一律に割引くことには合理性がないこと
から、当該複数回線複合割引の利用者に対し不当な差別的取扱いをするものであり、
電気通信事業法第31条第2項第2号の規定に該当するものと認められる。
別紙3
(答 申)
平成11年1月22日付け諮問第1号をもって諮問された事案について、審議の
結果、下記のとおり答申する。
記
エヌ・ティ・ティ移動通信網株式会社ほか8社(以下「NTTドコモ」とい
う。)の複数回線複合割引に係る料金については、諮問のとおりその変更を命ずる
ことが適当と認められる。
なお、現時点では今回の料金設定が電気通信事業法第31条第2項第3号に該当
するとは断定できないが、今後のNTTドコモとその他の電気通信事業者(以下
「他事業者」という。)との間の公正有効競争条件の確保状況を注視していくため、
NTTドコモにおいて以下の措置が講じられるよう配慮することを要望する。
1 本件複数回線複合割引に係る料金に係るサービス(変更前を含む。)の四半期
ごとの利用状況(契約数、契約回線数)及び年度ごとの収支状況について、サー
ビス開始後3年間、郵政省に報告すること。
2 複合割引サービスに関する他事業者からの業務提携申込み及びそれへの対応の
状況について随時郵政省に報告すること。
別紙4
料金変更命令に関するNTTドコモの主張と
それに対する郵政省の考え方
1 郵政省は、NTTドコモの「複数回線複合割引」について、DDIポケット等
全40社の電気通信事業者の意見申出に基づき調査した結果、副回線の割引率は
長期契約割引相当分を含むとしているにもかかわらず、契約期間によらず一律に
割り引くことには合理性がないことから、不当な差別的取り扱いに該当するので、
電気通信事業法第31条第2項に基づき料金の変更を命ずることとした。
2 本件処分に関して、NTTドコモより聴聞を行ったところ、NTTドコモから
は、以下の主張がなされた。
(1) 本サービスは、顧客の選択により利用され、長期利用が見込まれるサービス
で、副回線の割引率でみている長期契約による営業コストの低減といった割引
原資の顧客への還元方法は、本来、事業者の判断に委ねられるべき営業政策の
問題であり、また、他社の類似サービス(複数回線割引)では、50%を超え
る割引率が設定されている状況下において、上記のような理由で変更命令が発
出されることには異議がある。
(2) 移動通信のような競争分野においては、本来、自由な競争が行われるべきで
あり、著しく合理性の欠ける料金でない限り認められるとしないと、規制緩和
の流れに逆行するものと考える。
(3) 現在のように我が国の移動通信市場が拡大し、世界に例を見ない著しい成長
を遂げた大きな要因として、認可制から届出制への移行が挙げられるが、仮に
今回、料金変更命令が発出されると、今後、新たな料金の設定等の際には、郵
政省に事前に相談しなければならないこととなり、ユーザ・ニーズを指向した
機動的・弾力的な料金設定ができなくなるおそれがある。
(4) 今回他の電気通信事業者から出された意見申出においても、「長期契約割引
の適用に関して料金が差別的なものである」との指摘はないところであり、ま
た現在までのところ、このような顧客の苦情はなく、逆に家族での利用が便利
になったとの声が寄せられている状況において、料金変更命令が発出されるこ
とについては、不自然であると感じる。
(5) 本サービスの利用者は、既に全国で約25万加入(平成11年1月17日現
在)に達しており、これらの顧客は一律15%の割引が受けられるという前提
で契約しているのものである。本サービスは昨年12月から実施したものであ
り、短期間における料金変更は料金の安定性を欠き、顧客との間で大きな混乱
を招くおそれがあることを懸念しており、今回の料金変更命令に当たっては、
これらの点を踏まえ、十分に慎重な検討をいただきたい。
3 郵政省としては、NTTドコモの主張について以下のように考えているところ
である。
(1) 上記2のNTTドコモ主張中(1)及び(4)について
1) まず、NTTドコモは、本件割引サービスには一定の合理性があると主張
するとともに、行政が割引原資の利用者への還元方法といった「本来、事業
者の判断に委ねられるべき営業政策の問題」を取り上げ、他の電気通信事業
者や利用者の具体的な指摘がないにもかかわらず変更命令を発出することは
問題であると主張している。これは本件割引サービスの内容に係わる指摘で
ある。
2) そもそも、割引料金は、利用者の電気通信サービスの利用を促進するため、
利用者の利用形態に合わせた多様な料金メニューを提供するものであり、割
引のメニューの増加は、基本的には、利用者利益の増大に資するものである
が、同じサービスの提供に対して、複数の料金を設定するものであり、その
設定方法いかんによっては、利用者間の公平を損なう料金が設定されること
となる場合もあり得る。そこで、割引料金を適用される利用者と適用されな
い利用者との間の公平性が損なわれないよう、割引の対象、割引の考え方、
具体的な割引額等が合理的で、料金体系全体の中で整合的であることが求め
られるものである。
この点については、一義的には電気通信事業者が自らの責任で判断して割
引料金を設定し、利用者の理解を得るべきものであり、現に、これまで各電
気通信事業者とも自らの経営判断に基づき、合理的な割引料金設定をしてき
ているのではないかと考えられる。
3) しかしながら、本件については、「契約期間の長期化に伴って貸倒れコス
ト等営業コストが低減化するので、契約期間に応じた割引料金を設定し、そ
れにより、利用者に契約期間の長期化へのインセンティブを付与する」とい
う長期契約割引本来の考え方に基づかず、長期契約相当分を契約期間によら
ず一律に割り引いている点で、合理性に欠けると言わざるをえない。NTT
ドコモの「割引原資の還元方法は、本来事業者の営業政策の問題」という主
張は、割引の設定方法如何によって利用者間の公平を損なうおそれがある場
合には、現在の法制度は、そのような事業者の料金設定を容認していないと
いうことを看過した議論であり、首肯しがたい。
また、本件割引においては、副回線の契約期間を長期化するためのインセ
ンティブ措置を講じていないのに、主回線に引きずられる形で副回線の「長
期利用が見込まれるサービス」とすることには無理があると考える。
さらに、NTTドコモは、他社の類似サービスに言及しているが、他社の
類似サービスはすべて複数回線割引と長期契約割引を重畳適用している。こ
れは、各社とも割引原資及びその還元方法につき、整合性の取れるようにす
ることにより、利用者間の公平を確保しているものと考えられる。
なお、複数回線割引や長期契約割引を実施するか否かやその期間、割引率
(例えば50%超とすること)等をどうするかといった点は、場合によって
は、増分収支検証が必要とされることがあるとしても、基本的にはまさに事
業者の経営判断に委ねられるべき事項であると考える。
4) 他の電気通信事業者からの指摘がないという点については、意見申出のあ
った事業者も割引の合理性について疑問を呈しており、また、聴聞における
参加人の中には、「割引の根拠に長期契約等に伴う営業費等の削減が含まれ
ることに契約期間が反映されない一律割引は、差別的料金に該当する」とい
う見解を示している事業者もいる。
また、今までのところ利用者の苦情は寄せられていないとのことであるが、
合理的な理由がなく特定の利用者の料金だけが割り引きされれば、それがな
ければ料金全体の引き下げというメリットを享受できたかもしれない他の利
用者の利益を損なうこととなる場合もあるため、割引料金については、特に、
利用の公平の観点からのチェックが必要と従来からされており、現に、ある
特定の料金プランに長期割引を重畳適用しなかったために利用者から苦情が
寄せられ、電気通信事業者が自主的に是正した例もあることから、現在まで
のところ利用者から苦情がないという理由で変更命令を行うべきではないと
することは適当ではない。
(2) 上記2のNTTドコモ主張中(2)、(3)及び(5)について
1) 次に、NTTドコモは、「移動通信のような競争分野においては、本来、
自由な競争が行われるべきであり」、認可制から届出制に移行したのに変更
命令が発出されれば、「今後、新たな料金の設定等の際には、郵政省に事前
に相談しなければならないこと」になり、「お客様との間で、大きな混乱を
招くおそれがある」ことから料金変更命令を発出すべきではないと主張して
いる。これらは、いずれも、料金制度上の問題の指摘と考えられる。
2) 現行料金制度については、昨年5月の電気通信事業法改正において、近時
の電気通信分野における競争の進展や利用者ニーズの多様化に対応し、電気
通信事業者が創意工夫を活かしながら自由に料金設定ができるようにするた
め、認可制から原則届出制に規制緩和されたところである(移動体通信分野
については、既に平成8年12月より届出制を実施。)。
届出制においては、認可制とは異なり、行政が事前の審査をしないので、
事業者が創意工夫を活かしながら、機動的・弾力的に料金設定ができること
となるが、電気通信サービスは、国民生活・経済に必要不可欠で、公共性の
高いサービスであることから、公正かつ合理的で利用者の利益に適合する料
金とするために、事後的チェックが必要とされている。先般の法改正では、
行政が事後的チェックとして行う変更命令の基準の明確化(注)や利用者、
他の電気通信事業者の意見が適切に料金に反映されるよう意見申出制度の創
設など手続面の整備があわせて行われた。
(注)料金変更命令の基準の改正
・旧電気通信事業法第36条第2項
郵政大臣は、第31条第3項の規定により届け出た料金が利用者の利益
を阻害していると認めるときは、第一種電気通信事業者に対し、相当の期
限を定め、当該料金を変更すべきことを命ずることができる。
・新電気通信事業法第31条第2項
郵政大臣は、前項の規定により届け出た料金が次の各号のいずれかに該
当すると認めるときは、第一種電気通信事業者に対し、相当の期限を定め、
当該料金を変更すべきことを命ずることができる。
一 料金の額の算出方法が適正かつ明確に定められていないとき。
二 特定の者に対し不当な差別的取扱いをするものであるとき。
三 他の電気通信事業者との間に不当な競争を引き起こすものであり、その
他社会的経済的事情に照らして著しく不適当であるため、利用者の利益を
阻害するものであるとき。
このように、電気通信事業法においては、届出−料金変更命令という事後
的規制という手法を採用しているものであり、現行料金制度が届出制に変更
されたことをもって、電気通信料金が何の制約もなく、自由に設定できるこ
ととなったものと解することはできないものである。むしろ、電気通信事業
法は、届出制の下においても、料金が「利用の公平」や「公正競争」といっ
た必要最小限度のルールに基づいて設定されるべきとしており、例えば、認
可制が届出制になったことにより、不当な差別的料金が容認されたと解する
ことはできない。
3) 今回のNTTドコモの「複数回線複合割引サービス」については、新たに
整備された制度に基づき、NTTドコモの競争事業者等から変更命令を出す
べきとの意見申出がなされ、それを受けて行政が調査した結果、割引料金の
根拠に長期契約に伴うコスト削減を含めながら、契約期間が反映されない一
律割引を行うという不合理な点があったため、利用の公平を確保する観点か
ら料金の変更を命ずる必要があると判断されたものである。
このようなNTTドコモの不合理な料金について変更命令が出されること
をもって、それを一般化して、今般の変更命令が規制緩和の流れに逆行し、
料金制度自体を事前審査に戻すものという主張には理由がない。ルールに従
った通常の合理的な料金であれば、事業者において、何ら制約なく料金設定
ができるものである。
なお、今回のケースにおいては、料金が不合理であることは明白であり、
法の運用について特段不明確な点があるものではないが、一般的な料金変更
命令の基準の運用の在り方については、「新たな料金制度の運用等の在り方
に関する研究会報告書(平成10年9月8日)」において基本的な考え方の
整理や電気通信事業者等の意見を踏まえた問題事例の考察が行われていると
ころである。今後、具体的事例に応じた個別的判断を積み重ねることにより
これを充実させ、より詳細で明確な運用基準(ガイドライン)の策定に努め
て参りたい。
4) また、届出制においては、事後的規制なので既に料金が適用されている利
用者との間で混乱が生じるおそれがあるという問題については、制度改正の
時にも議論があり、その問題を回避するため、例えば、十分な事前の届出期
間を設けるべきという意見や行政による料金実施の差止制度を設けるべきと
いう意見などもあったところであるが、できるだけ事業者が機動的な料金設
定ができるようにするという観点から、1週間前に届け出れば、新しい料金
を実施することができるとされたところである。
したがって、既に料金が適用されている利用者との間で混乱を生じること
はある程度やむを得ないことであり、それをもって変更命令の発出を差し控
え、不当な料金を放置するべきではないと考える。
4 なお、本件について、不当な競争を引き起こすものであるとの参加人の主張に
ついては、現時点で、今回の割引サービスが市場価格に比べ著しく有利とは言え
ないが、NTTドコモは、シェア、技術力、資金力等において卓越した地位にあ
ると共に、携帯・PHSを兼営する唯一の電気通信事業者であり、また、他の電
気通信事業者が業務提携等により同様のサービスを提供することは必ずしも容易
でないので、本サービスの市場に及ぼす影響等につき注視していくことが必要で
あると判断したところである。
別紙5
NTTドコモからの質問・要望及び郵政省の回答
1 合理性の判断については、「移動通信のような競争分野の料金」と「独占分野
の料金」とで、それぞれ差異なく今回のように厳格に判断し料金変更命令を発動
する考えか。
2 料金の合理性の判断についての行政の裁量権があまりにも大きいと思われるの
で、不合理な料金及び不当競争となる料金について、事業者が運用できるガイド
ラインを策定していただきたい。
(例:英国のOFTELが策定している「公正取引条項の運用に関するガイドラ
イン」)
1 上記1の1への回答
1 電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第31条第2項第2号において
は、郵政大臣が料金の変更を命令することができる基準のひとつとして、「特
定の者に対して不当な差別的取扱いをするものであるとき」と規定しているが、
この場合において、「不当な差別的取扱い」とは、合理的かつ妥当な理由なく
特定の利用者を優遇又は冷遇することと解しているところである。
2 合理的かつ妥当な理由があるかどうかは、当該サービスのコスト・効用、公
正競争条件の確保、社会政策上の観点、社会通念等に照らしながら総合的に判
断する必要があると考える。
3 したがって、本号の適用が問題となるサービスに応じて個別の判断が行われ
るものであり、一般的に論じることは困難ではあるが、当該サービスをめぐる
市場環境等に応じて、「利用の公平の確保」についての社会的要請も異なり、
それに対応した運用が求められると考えている。
4 なお、本号は、電気通信サービス一般について、その公共性に着目して、利
用の公平を図る必要があるとの考えに基づく規定であるので、独占分野以外の
料金であっても、料金の不当性が明白で、利用者の公平を確保するため必要と
考えられる場合には、変更命令を出すこともあり得るものである。
2 上記1の2への回答
1 料金変更命令の基準については、昨年の法改正により、改正前の電気通信
事業法第36条第2項で「届け出た料金が利用者の利益を阻害していると認め
るとき」と規定されていたものを、改正後の電気通信事業法第31条第2項で、
1) 料金の額の算出方法が適正かつ明確に定められていないとき
2) 特定の者に対し不当な差別的取扱いをするものであるとき
3) 他の事業者との間に不当な競争を引き起こすものであり、その他社会的経
済的事情に照らして著しく不適当であるため、利用者の利益を阻害するもの
であるとき
とより具体的なものとされたところであるが、今回の変更命令は、この新しい
基準に基づき調査した結果、割引の考え方に合理性がないことが明白で、不当
な差別的取扱いに該当すると判断したことによるものであり、行政の裁量権が
大きいものではない。
2 このような料金変更命令の基準の具体的適用については、NTTドコモの意
見書でも言及があった「新たな料金制度の運用等の在り方に関する研究会報告
書(平成10年9月8日)」において、基本的な考え方を整理するとともに電
気通信事業者等からの意見も参考にしながら問題事例の考察が試みられている
ところであり、OFTELがガイドラインで定めている項目とほぼ同様の議論
を行っているので、電気通信事業者においても、これらを参考としながら、法
が定めている最低限の基準を遵守する努力を払っていただきたいと考える。
3 なお、今後、事業者の創意工夫により様々な料金サービスが出てくることが
想定されるので、現時点でそれら全てに備えた詳細な基準を作ることは困難で
あると考えているが、料金変更命令基準の具体的運用のガイドラインの策定に
より、事業者があらかじめ料金決定上留意すべき点を明らかにすることの必要
性については、認識しており、今回のケースのような具体的な事例に応じて個
別的な判断を積み重ねることにより、より詳細で明確な基準を作るべく努力し
て参りたい。