発表日 : 1999年10月 6日(水)
タイトル : 米国の規制緩和等に関する要望事項(郵政省関連)
本日、日本政府は米国の規制緩和等に関する要望事項を米国政府に伝達した。本
件要望事項は、「強化されたイニシアティブ」の下で97年より行われている日米
規制緩和対話において、日本政府から提起する要望事項をまとめたものである。当
省関連の要望事項は別添のとおり。
(参考)
「強化されたイニシアティブ」は、97年6月のデンバーサミットに際して日米
両国首脳の際に決定され、電気通信、住宅、医療機器、金融サービス、エネルギー
の5つの分野別会合及び規制緩和・競争政策等作業部会の6つの課長級の専門家会
合及び次官級の上級会合を設置している。
連絡先
官房国際部国際経済課
(斎藤補佐、古賀係長)
Tel:03−3504−4086
別添
1999年電気通信分野対米規制緩和要望(要約)
(1) 外国事業者等の米国市場参入に関する審査基準
米国政府は、外国事業者の米国市場参入に係るFCC規則にある「通商上
の懸念」、「外交政策」及び「競争に対する非常に高い危険」という裁量の
幅が広く恣意的な運用が可能な審査基準を撤廃されたい。
(2) ベンチマークに関するFCC規則
ITUにおいて国際精算料金の勧告案が作成されたところ、米国政府は、
一方的に決めている関連のFCC規則を削除されたい。
(3) 州レベルの規制
米国政府は、州ごとに異なる免許申請手続等による申請者の過度の負担を
解消するために適切な措置を講じられたい。
(1) 州際アクセス・チャージ
米国政府は、我が国政府の政策決定と同時期に州際アクセスチャージへの
長期増分費用方式の導入に関する成案を得るよう、検討スケジュールを前倒
しされたい。
(2) モデル作成の透明性
米国政府は、FCCにおける長期増分費用モデル作成作業の透明性を確保
されたい。
(3) 接続料算定方式等へのアクセス
米国政府は、各州における接続料及びその算定方式について、外国の関心
を有する者の容易なアクセスを確保されたい。
3.インターネットサービスに係る国際回線費用負担の在り方
|
米国政府は、APECでの調査結果を踏まえ、インターネットの国際回線
費用負担の是正を図るための措置を速やかに講じられたい。
民間主導で設立された新たなICANN管理体制の下で、gTLDの登録
・管理業務への公正な競争導入に向けて、米国政府は、NSI社の支配的地
位の濫用を防止するセーフガードを設ける等、必要な措置を講じられたい。
米国政府は、我が国の企業が発注した商用衛星に係る技術情報を速やかに
入手できるように、輸出許可及びTAA許可に係る処理等を改善されたい。
米国の規制緩和等に関する日本国政府の要望事項(郵政省関連部分抜粋)
(1) 外国事業者等の米国市場参入に関する審査基準
外国事業者の米国市場参入に際し、連邦通信委員会(FCC)規則にある
「公共の利益」(「外交政策」、「通商上の懸念」)及び「競争に対する非
常に高い危険」などの審査基準を理由として認証を拒否することが可能であ
り、実際に我が国の電気通信事業者による米国の国際通信事業への参入の認
証が、「通商上の懸念」を理由に大幅に遅延した例がある。
また、これまでの対話の過程で、日本政府が再三求めてきた「通商上の懸
念を理由とする認証拒否」に関する米国政府の見解は、未だに示されていな
い。
米国政府は、「外交政策」、「通商上の懸念」及び「競争に対する非常に
高い危険」という裁量の幅が広く恣意的な運用が可能な審査基準を撤廃され
たい。
(2) ベンチマークに関するFCC規則
国際電気通信連合(ITU)電気通信標準化研究委員会において、国際精
算料金の勧告案が作成された。米国政府は、一方的に決めている (i)国際精
算料金に関するFCC規則、及び、(ii)外国事業者の米国市場参入に関する
FCC規則パラ179〜214、を削除されたい。
(3) 州レベルの規制
米国では、各州ごとの事業免許申請の手続やフォーマット、報告様式・内
容等が統一されておらず、新たに参入する事業者にとっては過度の負担とな
っている。
米国政府は、州ごとに異なる免許申請手続等による申請者の過度の負担を
解消するために適切な措置を講ずるべきである。
(1) 州際アクセス・チャージ
我が国では、長期増分費用(Long Run Incremental Cost:LRIC)方
式について、できるだけ早期に導入することができるよう、2000年春の
通常国会に所要の法律案を提出することとしている。
日米規制緩和対話の過程で、米国政府は、LRIC方式が接続料引下げに
最も効果的であり、日本における早期導入を主張していたが、米国州際アク
セス・チャージへのLRIC方式導入は、2001年2月8日期限のLEC
(Local Exchange Carrier)によるコスト調査以降に検討するとのスケジュ
ールとなっている。
米国政府は、我が国政府の政策決定と同時期(2000年春の法案提出に
先立つ時期)に導入に関する成案を得るよう、スケジュールを前倒しされた
い。
(2) モデル作成の透明性
我が国では、本年7月に「長期増分費用モデル研究会」による報告書案及
びモデル案を公表しパブリック・コメントを招請した。
一方、米国では、パブリック・コメントを招請したのは、FCCが自ら作
成した加入者回線部分に限られ、交換伝送装置等のネットワーク部分につい
ては一部事業者が民間のコンサルタントに作成させたモデル(HAIモデル)
をパブリック・コメントも招請せず採用するなど、モデルやデータに関する
作成作業の透明性が確保されていない。
米国政府は、FCCにおける長期増分費用モデル作成作業の透明性を確保
されたい。
特に、確実な作成スケジュールのコミット及びHAIモデルを含むモデル
全体プログラムとデータを公表しパブリック・コメントの招請を行われたい。
(3) 接続料算定方式等へのアクセス
我が国では、東西NTTの指定電気通信設備の接続料及び算定方式につい
ては、接続約款や郵政省令等により公表し、接続約款はホームページに掲載
(和・英両方)し、英語版CD−ROMも頒布している。
一方、米国では、連邦通信法に各州の公益事業委員会は、接続協定等を承
認後10日以内に公衆の閲覧等に供すると規定されているが、接続料やその
算定方式に関する情報にアクセスする方法が明らかでなく、それらに関する
情報を入手することが、事実上困難である。
連邦政府は、各州における接続料及びその算定方式(使用したモデルの公
開を含む)について、外国の関心を有する者の容易なアクセスを確保された
い。
3.インターネットサービスに係る国際回線費用負担の在り方
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インターネットは、今や全世界的に普及し、米国から他国へのアクセスも
相当量存在すると考えられる。しかし、インターネットに係る国際回線費用
は、米国外の事業者が一方的に負担しているという現状にあり、我が国政府
やアジアの通信事業者は、その是正を米国政府及び米国通信事業者に求めて
きた。本年5月の共同現状報告においては、米国政府は、APECが進めて
いるインターネットのトラフィックフロー、コスト構造等に関する調査に、
積極的に参加する旨記載されている。
米国政府は、インターネットの国際回線費用負担の是正を図るため、その
調査結果を踏まえ、インターネットに係る国際回線費用負担の改善措置を速
やかに講ずるべきである。
“.com”、“.org”、“.net”といった一般トップレベル・ドメイン(g
eneric Top Level Domain:gTLD)を持つドメインネームは国際的な共有財
産であり、非営利の国際的な民間団体であるICANN(Internet Corpor
ation for Assigned Names and Numbers)による新たな管理体制により、
公正な競争環境の下で登録・管理が行われるべきである。しかしながら米国
のNSI(Network Solutions Inc.)社は、ICANN管理体制下になく、
未だ実質的に支配的立場にある。また、新たに登録業務を行う全ての登録事
業者が、NSI社のデータベースを共有して登録業務を行うためのシステム
(Shared Registration System:SRS)を利用する際、NSI社とのライセ
ンス合意が必要となる。このことは、差別的行為に対するセーフガードが無
い状況では、NSI社の支配的地位の濫用につながる恐れがある。
民間主導で設立された新たなICANN管理体制の下で、gTLDの登録
・管理業務への公正な競争導入に向けて、米国政府は、NSI社の支配的地
位の濫用を防止するセーフガードを設ける等、必要な措置を講ずるべきであ
る。
米国による商用衛星の輸出に係る権限が1999年3月に商務省から国務
省に移管された結果、商用衛星及び関連物資に係る輸出及び技術情報移転に
ついて、国務省の許可が必要となった。
(a)右移管により、我が国の衛星通信事業者が自ら発注した衛生の技術
情報を得るのに長期間を要することとなり、衛星打ち上げ計画にも影響が出
ている。(i)米国政府は、我が国の企業が発注した商用衛星に係る技術情報
を速やかに入手できるように、米国衛星メーカーから発注者に対する技術援
助協定(Technical Assistance Agreement:TAA)の許可及び輸出許可
に係る処理期間を極力短縮するとともに、(ii)TAA許可後も個々の技術情
報を受ける都度に必要とされる政府機関の事前承認の手続を簡素化されたい。
(b)また、移管に伴う商用衛星の関連物資に係る輸出に関する規制強化
が我が国にも適用される場合、我が国の企業が米国から商用衛星の関連物資
を輸入する際に問題が生じる可能性もある。(i)米国政府は、我が国企業が発
注した商用衛星の関連物資の技術情報を得る際に、長期間を要することのな
いよう、適切な措置を講じられたい。(ii)更に、1999年国防授権法(Pu
blic Law 105-261)によれば、商用衛星及び関連物資に係る輸出に関する規
制強化はNATO加盟国及び非NATO主要同盟国には適用されない(sec.
1514.b)こととなっているところ、本件規制強化の適用範囲を明確にされた
い。