発表日 : 1999年12月 1日(水)
タイトル : CAS機能を活用したNHKの自動表示メッセージ(意見募集)
郵政省は、受信機の設置の確認を迅速かつ的確に行い、受信料の公平負担の一
層の徹底を図るため、NHKにおいて検討しているBSデジタル放送(平成12
年12月開始予定)にCAS機能を活用した自動表示メッセージ・システムを導
入する件について、当該施策が公共放送としてのNHKにふさわしいか等の観点
から、今後の検討の参考とするため、広く御意見を募集する。
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受信料は、公共の福祉のために豊かで良い放送を行うこと等を目的として設立さ
れたNHKを運営するための特殊な負担金であり、NHKの放送を受信できる受信
設備を設置した視聴者が広く公平に負担すべきものである。しかしながら、受信機
の設置の確認困難等の理由により、BS受信者の確認が十分でない面もある。
そこで、NHKは、平成12年12月開始予定のBSデジタル放送の中で、CA
S機能を活用した自動表示メッセージを放送することにより、受信機の設置の確認
をより迅速かつ的確に行うことを予定。
郵政省としては、以下の視点から整理した結果、当該システムを導入することは、
公共放送としてのNHKの性格に照らし「適当」と考えているが、今後の行政(N
HK予算に対する郵政大臣意見、受信規約の改正の郵政大臣認可等)の参考とする
ため、郵政省として整理した考え方(別添参照)及び郵政省の結論に対する御意見
を広く募集する。
<検討の視点>
当該施策が、だれでもが視聴することができるという公共放送であるNHK
にふさわしいものであるか。
当該施策が、受信料の公平負担の考え方、受信料の在り方として適当なもの
か。
当該施策が、受信者に対して、手続の面で過度の負担を強いるものでないか。
当該施策が、BSデジタル放送の普及に対して障害とならないか。
当該施策が、受信契約の効率化の点で有効か。
平成11年(1999年)12月1日(水)〜同年12月27日(月)
(1) 書面の郵送、電子メール、又はFAXによりお寄せ下さい。
郵送
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〒100−8798
郵政省 放送行政局 国際・特別地上放送課 企画係 あて
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電子メール
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kokutoku@mpt.go.jp
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FAX
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03−3504−3396
郵政省 放送行政局 国際・特別地上放送課 企画係 あて
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(2) 以下の意見提出様式にて、御意見をお寄せ下さい。
なお、その際には、あらかじめ以下の点にご了承願います。
いただいた記載内容は、住所、電話番号を除き、すべて公開される可能性があ
ること。
個別に回答はいたしかねること。
[意見提出様式]
平成11年○月○日
郵政省放送行政局
国際・特別地上放送課企画係あて
郵便番号・住所・電話番号
氏名・年齢・性別・職種
(会社名/部署名)
CAS機能を活用したNHKの自動表示メッセージについて、郵政省とし
て整理した考え方、結論に対する意見:
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(1) 意見募集結果は、来年1月下旬を目途に公表の予定。
(2) NHK予算に対する郵政大臣意見等の検討において、意見募集結果を参考とす
る。
連絡先:放送行政局 国際・特別地上放送課
(担当:望月課長補佐、渡辺企画係長)
電 話:03ー3504−4925
(別添)
CAS機能を活用したNHKの自動表示メッセージについて
(1) NHKは、公共の福祉のために、あまねく全国において受信できるように豊
かで良い放送番組による国内放送を行うとともに、放送及びその受信の進歩発
達に必要な業務を行い、あわせて国際放送を行うことを目的として設立された
特殊法人である。
その組織・業務を維持、運営するための受信料は、特殊な負担金であり、N
HKのテレビジョン放送を受信できる受信設備(以下「受信機」という。)を
設置した視聴者が広く公平に負担すべきものである。
(2) 現在、受信機を設置した者は、遅滞なくNHKと受信契約をしなければなら
ないとされ(放送法32条、日本放送協会受信規約第3条)、また、受信契約
者が住所等を変更した場合や受信機の設置場所を変更した場合には、直ちにそ
の旨をNHKの放送局に届け出なければならないとされている(日本放送協会
受信規約第8条)。
(3) しかしながら、NHKのBS受信契約については、
平成10年度末で、NHKによると、BS放送の契約者数は推定で契約対
象者の76%程度となっており、また、外観からアンテナを確認できないこ
となどによって、未契約の理由の約半分を受信機の設置の確認困難が占めて
いると思われる状況にある。
また、こうした実状から、必ずしも受信機の設置後遅滞なく契約書がNH
Kに提出される状況になく、受信機の設置後契約を締結するまでに時間を要
している現状にある。
(4) なお、NHKのBS放送のスクランブル化について昨年実施した意見募集の
際には、受信料不払者が存在することは不公平という意見があった(個人の方
からの意見19件中5件)。検討の中で、スクランブル化は行わないものの、
NHKは、公平な受信料徴収の徹底のために、デジタル技術を活用する新しい
方策を検討すると意見を述べており、郵政省としても、国民の理解が得られる
ような方策の検討を着実に行うことを期待するとしている(平成11年3月3
0日)。
(詳細については別紙1及び別紙2参照)
(1) 目的
BSデジタル・テレビジョン放送の受信機の設置の確認を視聴者からの連
絡をもとに、より迅速かつ的確に行う。
上記の設置の確認をもとに、速やかに契約勧奨を行い、受信契約率の向上
及び受信契約の早期締結化を図る。
これにより、受信料の公平負担の一層の徹底が図られ、視聴者全員で負担
する受信料の趣旨に合致する。
(2) 実施方法
NHKのBSデジタル・テレビジョン放送(標準テレビジョン放送2チャン
ネル、高精細度テレビジョン放送1チャンネル)において受信機の設置をNH
Kに連絡するよう促すメッセージをテレビ画面に表示することにより、視聴者
に呼びかける。
受信機購入者に対し、ICカードが受信機に挿入されるようNHKのBS
デジタル放送のチャンネルのテレビ画面にメッセージを表示すること等によ
り注意喚起するとともに、フリーダイヤルや同封はがきでICカードのID
番号等をNHK等に連絡するよう注意喚起。
受信機購入後1ヶ月の間に連絡がない場合には、「NHKへのBS受信機
設置の連絡をお願いしてます。フリーダイヤル0120−××××××にご
連絡下さい」といった趣旨のメッセージが、テレビ画面の左下隅に表示され
る。表示面積、表示時間等は、以下のとおり。(詳細については別紙1及び
別紙2参照)
・表示面積:半透明枠、テレビ画面の9分の1(縦3分の1、横3分の1)
程度
・表示時間:NHKのBSデジタル放送のチャンネルに合わせる毎に15
分間(その間、視聴者側の操作では消去できない。)
視聴者から所定の連絡があった場合には、NHKにおいて、速やかにメッ
セージが受信機の画面に表示されないように措置をとる。この場合、受信機
の設置の確認はできることから、受信料の支払いの有無にかかわらずメッセ
ージが表示されないようにする。なお、連絡ミス等により設置の確認ができ
ない場合には、メッセージを再表示する。
(3) 運用経費
本システム導入のためには、受信機設置者からの連絡受付費用等、一定の経
費が必要となるが、NHKによれば、業務の効率的な実施により現行経費のな
かで賄っていくこととし、システム導入により視聴者に新たな財政的負担増を
求めることはない、としている。
NHKが、本システムを導入した場合、受信契約率の向上及び受信契約の早期
締結化による受信料の公平負担の一層の徹底が期待できるが、一方で、当該施策
は、テレビ画面に自動的にメッセージを出すなど全く新しい施策であり、また、
例えば、今後、受信契約締結の必要がない2台目のテレビ受信機購入者等(アナ
ログ受信機をデジタル受信機に変更する者、既存のデジタル受信機を買い換える
者を含む。)に対しても、デジタル放送受信機に付属するICカードの番号をN
HKに通知することをお願いすることとなる等、視聴者に新たな手続的な負担(
手間)を与えることも考えられる。
そこで、郵政省としては、次のような基本的視点から本施策の妥当性について
検討を行った。
<検討の視点>
当該施策が、だれでもが視聴することができるという公共放送であるNH
Kにふさわしいものであるか。
当該施策が、受信料の公平負担の考え方、受信料の在り方として適当なも
のか。
当該施策が、受信者に対して、手続の面で過度の負担を強いるものでない
か。
当該施策が、BSデジタル放送の普及に対して障害とならないか。
当該施策が、受信契約の効率化の点で有効か。
なお、本システムの導入に要する経費(費用対効果)については、現在NHK
において受信料の値上げにつながらない範囲において検討しているので、郵政省
の検討の視点からは、はずしてある。
郵政省としては、前記の各視点から検討した結果を下記表のとおり整理し、受
信料の公平負担の一層の徹底を図る観点から、NHKが当該CAS機能を活用し
た限定受信メッセージ・システムを導入することは「適当」と考える。
視点
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考え方(郵政省としての現在の整理)
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公共放送で
あるNHKに
ふさわしいも
のか
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だれでも手軽かつ容易に視聴できるというNHKの放送の基本
的性質に変化は生じない。
ア)メッセージの表示について、表示面積、表示位置、表示時間
等が工夫されており、テレビ画面や字幕・テロップが全く見え
なくなるスクランブル放送のような運用ではないこと。
また、表示方法については、今後、視聴者の意向を踏まえ、
絶えず見直す用意があること。
イ)連絡があれば速やかに表示を消去することとしていること。
ウ)NHKへの連絡方法についても、電話の他、はがき、FAX
等が確保されており、手段が容易であること。
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受信料の公
平負担の考え
方や受信料の
在り方として
適当なものか
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受信料は、公共の福祉のために豊かで良い放送番組による国内
放送を行うこと等を目的として設立されたNHKについて、その
組織・業務を維持、運営するための特殊な負担金であり、NHK
の放送を受信できる受信設備を設置した視聴者が広く公平に負担
すべきもの。したがって、受信契約率の向上等による公平負担の
一層の徹底は、望ましいこと。
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受信料の支払の有無にかかわらず、連絡があった場合には、一
律に表示を消去することから、未払者への支払い強制になるもの
ではないこと。
あくまで、契約の前提となる受信機の設置を確認するための措
置であり、現行の放送法の考え方(「受信機を設置した者は契約
をしなければならない。」)の範囲内にあると言える。
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受信者に対
して、手続の
面で過度の負
担を強いるも
のでないか
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受信者に対して、手続面で過度の負担を強いるものではない。
ア)地上放送の受信契約者が新たにBS受信機を購入しBSの受
信契約を締結する場合には、もともと、受信契約書の提出義務
があることから、基本的には、手続面で新たな負担は生じない
こと。
イ)受信機設置後1ヶ月間は非表示であるので、連絡に要する時
間として十分であり、余裕を持って連絡できること。
ウ)受取人払いはがき、フリーダイヤルとすることで、連絡上、
視聴者に財政的負担をかけるものではないこと。
エ)連絡ミス等により受信機設置確認ができずメッセージを再表
示する場合を除き、1回の受信機購入につき、基本的に1回限
りの連絡ですむこと
オ)なお、2台目以降のBS受信機購入など新たな契約締結の必
要がない場合(注)については、現行に比し、テレビ受信機購
入時に連絡する必要性が新たに生じるが、
・上記、イ〜エの措置は同様であることから、受信者の許容の
範囲にあると判断されること。
・民間の有料放送のスクランブルを解除するためには、視聴者
は各有料放送事業者にICカードのID番号を知らせる必要
があるところ、本自動表示メッセージ・システムに要する連
絡とこの民間有料放送に要する連絡とが一括して処理できれ
ば手続面の負担は少なくなること。
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BSデジタ
ル放送の普及
に対して障害
とならないか
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アナログ受信機からデジタル受信機に機種変更する際に、新た
にNHKに連絡する必要が生じるが、上記 イ〜オと同様の理由
により、手続面で過度の負担となるものではなく、デジタル放送
普及の支障になることもないと考えられる。
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CAS機能自体は、BSデジタル放送受信機の標準装備になる
と思われるので、メッセージを消去するのに新たな機材購入が必
要となるものではない。また、CAS機能を受信機に装備しても
デジタル放送受信用アダプター等の価格にもほとんど影響を与え
ない範囲に収まると思われることから、受信機の購入等の点にお
いても、普及の障害とならないと思われること。
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受信契約の
効率化の点で
有効か
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受信機の所在の確認がより迅速かつ的確に行われることから、
NHKによれば、受信契約の締結が全体的に早期化すること、ま
た、本メッセージ利用により受信契約率が向上すると推測される
こと。
なお、今後、CATVのデジタル化が進めば、CATV経由で
視聴している視聴者に対しても長期的には効果が及ぶものと期待
されること。
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(注)受信規約においては、受信機を設置した者は、遅滞なく放送受信契約書をN
HKの放送局に提出しなければならないとされる一方、新規に契約することを
要しない場合(同一世帯において、2台目の受信機を設置した場合で、衛星普
通契約等への契約の種別変更がないとき等)には契約書を提出する必要はない
とされている(日本放送協会受信規約第3条)。アナログ受信機をデジタル受
信機に変更する場合や既存のBSデジタル受信機を買い換える場合も、受信料
は変化しないことから、基本的には、契約書の提出は必要ない。
(参考)
用語の解説
○ CAS(Conditional Access System:限定受信方式)
受信契約をした視聴者のテレビ受信機のみが受信可能となるよう放送を行うため
の方式。デジタル放送においては、受信機本体に差し込む形態のICカードにより
管理を行う。
なお、BSデジタル放送が受信できるテレビ受信機(アダプターを含む)には、
この限定受信方式が標準搭載される見込みである。
○ 自動表示メッセージ
CASの機能を活用して、ある一定の受信機に対し特定のメッセージを画面に表
示させるもの。
放送事業者の意図により、受信者側では消去できない形にすることが可能。
別紙1
テレビ画面の9分の1程度の範囲(文字数17文字×4行程度)に半透明(透明
度80%)の下地。ただし、実際には受像機メーカーの違いで若干異なる。
別紙2