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発表日  : 4月2日(火)

タイトル : 第87回電気通信技術審議会議事録…3






  ○安田委員 大変重要な役割を仰せつかりまして、身の引き締まる思いでお
   ります。
    委員の選定につきましても、いろいろご疑問をいただきました。そのご
   疑問にこたえるべく真剣に取り組ませていただきたいと思っています。
    情報通信技術研究開発基本計画ということを、これから5月までの短い
   時間で策定をしていかなければいけないわけで、基本方針としては、先ほ
   ど鬼頭課長からご説明がありました諮問理由等に沿ってやっていくつもり
   でおります。皆さんのご意見を反映させながら部会で十分に議論していた
   だくつもりです。
    ここでちょっと私なりの感想を申し上げますと、戦後、日本は敗戦で非
   常に荒廃していた産業を復興させるべく政府はいろんな役割を担ったと思
   うんですが、最初は石炭産業、エネルギーがまず大事だということで石炭
   産業の育成、それから、船舶、鉄鋼、繊維、それから自動車、それから情
   報と、いろいろその時々に応じて一番重要だと思われる産業にウエートを
   置いてその育成を図ってきたと思います。目標が非常にはっきりしていた
   こともあって、政策は立てやすかったと思います。実際に産業振興のため
   のインフラ、このインフラというのは鉄道であるとか道路であるとか、そ
   れから港湾、空港といったような土建関連の環境整備にこれまでは重点が
   置かれてきた。最近になってその辺の事情が少し変わりつつあるというこ
   とでありまして、科学技術振興ということは随分前から何度も言われてい
   るんですが、それはかなりリップサービスの面があり、実際に我が国の科
   学技術関連に使われている資金の中で政府の占める割合というのは、欧米
   に比べてはるかに小さいという状況がずっと続いてきました。今、欧米に
   キャッチアップしたと我々は一応感じているわけですが、実はすぐ後ろに
   は我々にキャッチアップしようとしている国々がたくさんあり、キャッチ
   アップしたと思っている欧米は、我が国は本当にキャッチアップしている
   のかと。つまり、最初のフロンティアにある国というのは次々に新しい産
   業の芽を自分で出していかなければいけないんですが、我が国からそうい
   う産業の芽になるような基礎的な技術開発がこれまでどのくらいあったか
   ということを考えてみると、非常に寒心にたえないところがあると思いま
   す。政治家の皆さんもそういったことに最近気がついてきており、昨年の
   11月には科学技術基本法が制定をされ、これから本腰を入れていこうと
   いうことのようでございます。そういったことに対応して、この情報通信
   基本計画もあるのではないかと私は認識しています。
    フロンティア型でこれからやっていかなければいけないということにな
   ると、先ほども言いましたように創造的な研究開発をやらなければいけな
   い。創造的な研究開発というのは実は、大企業が直接やるわけでもなけれ
   ば、全体の大学マスとしての大学がやるわけでもない。それぞれの組織の
   中にいる、あるいは組織の中にいなくてもいいんですが、個々の人間が、
   創造的な人間が種を持っており、その種を発芽させて、そしてそれを育て
   て大木にしていかなければいけないんです。種そのものは日本中どこにで
   もあると思います。別に、日本人が創造力がないと私は思っていません。
   問題は、発芽させる環境、それを育てる環境が今までなかった、環境の整
   備が十分でなかったと思います。政府の役割が環境整備にあるという点は
   従来と同じですが、その環境整備の対象が今度違ってきた。その対象をち
   ゃんと選択をして、適切な施策を打っていく必要があると、私の基本的な
   認識はそういうところにあります。
    産官学がそれぞれ役割をもって、分担して研究開発をやる必要がありま
   すが、何といっても、創造的な研究は大学の役割が非常に大きいと思いま
   す。従来、日本の大学はもうだめだと、大学人自身がそう言ってましたが、
   私は必ずしもそうでもないと思います。例えば卑近な例を挙げますが、M
   PEG2というのが最近有名になっていますが、MPEG2自体は映像符
   号化の標準化であり、その標準化自体には別に新しいものは全然生まれて
   いません。画像符号化に関しては30年以上の研究の歴史があり、これま
   でたくさんの研究が行われてきました。その中から適切なものを選択し、
   組織化をして、パラメーターの最適化を図るというのが標準化の役割であ
   り、標準化されたこと自体は非常に大事なことですが、それ自体は新しい
   ことではない。その30年の画像符号化の研究の中には、最終的にMPE
   G2で選択されたような非常に基本的な技術を出したところが幾つかあり
   ますが、その例をちょっと挙げさせていただきますと、例えばディスクリ
   ート・コサイン・トランスフォームという手法が使われております。これ
   はもっと広く考えると、直交変換という方式です。直交変換を画像に初め
   て適用したのは、当時KDDにおられ、その後東京工業大学に移られ、そ
   の後芝浦工大に行かれました榎本先生のグループです。最初やられたとき
   はKDDですから大学ではありませんが、すぐ大学に移られましたので、
   大学でやったようなものです。
    それから、動き補償フレーム間符号化というのがありますが、これに使
   われているブロックマッチングという方式は、東大の滝先生のグループで
   世界で初めて出され、現在それが取り入れられています。
    さらに、スケラビリティーというので、いろんな大きさの画像を符号化
   しておき、いろんな大きさのディスプレーに対応できるような符号化が考
   えられていますが、ここで使われている階層的符号化という概念は、実を
   いうと私が世界で初めて出したわけであります。この階層的符号化も非常
   に広い概念であり、いろんなところに使われている。例えば、デジタル放
   送におけるグレースフル・ディグラデーションであるとか、あるいはAT
   Mにおけるセル・ロス対策といったようなところで使われています。
    そういう具合に、画像符号化の中でも基本的な技術というのが、実はメ
   ーカーでもなければNTTの研究所でもなく、大学で出たということをま
   ずご記憶をいただきたいと思います。その辺についてはご異論がありまし
   たら後で(笑)。
    結局、日本というのは、せっかく芽が出てもそれを十分に育て上げる環
   境がないというところが一番問題だろう。その環境整備ということに今後
   大いに意を使っていただきたいと思うわけでありまして、情報通信の基本
   計画ということから多少離れましたが、そういうことを盛り込んだ情報通
   信基本計画を作れればいいのではないかと考えています。
    ちょっと趣旨が外れたかもしれませんが、私の抱負とさせていただきた
   いと思います。

  ○西澤会長 どうもありがとうございました。

  ○関本委員 あんまり大人げがないから言いたくないんですが(笑)、私は
   コムサットでダイテックというプロジェクトをやったのが1965年です。
   デジタルテレビジョン・コンプレッション、これはデルタPCMを使い、
   その当時はまだ32メガビットでした。帰ってきて1969年に、6.3
   メガでカラーテレビを送ろうということで、ネテックというやり方もやり
   ました。だから学校の先生方もやられたし我々もやった。正に産官学が一
   緒になってやっていかなければいけない申し上げたい。
    それから、メーカーは基礎研究はやってませんというのは大きな間違い
   で、1ミリぐらいの線虫の細胞にレーザーパルスを当てて、いわゆるバイ
   オテクノロジーを使ったバイオチップをつくるかとか、あるいはカーボン
   のナノチューブというのがあり、これは物を入れることによって半導体に
   なるという、その辺の問題もやってます。みんなが一緒になってやるんだ
   という形の中で、しかしウエートは当然学校の先生方に私は期待したいの
   は、本当に基本的な研究というか、創造的研究をやっていただき、それで、
   みんなが一緒になって我々と製品化していくということができれば一番い
   いんじゃないかと思います。

  ○西澤会長 大変熱心なご議論ですが、ほかにございますでしょうか。
    要するに産も官も学も一生懸命やりましょうということだと私は考えて
   おります。よろしくお願いをしたいと思います。

  ○安田委員 おっしゃるとおりでございまして、一般に大学はだめだと言わ
   れているので、そうでもありませんよというつもりで言ったので、産業界
   やその他が悪いと言っているわけでございませんので。産官学がそれぞれ
   の役割に応じて、しっかりした体制で取り組みたいと、こういうことでご
   ざいます。

  ○西澤会長 企業が基礎研究をしちゃいけないとか、できるはずがないとお
   っしゃる方がいらっしゃいます。これは真っ赤な間違いであります。要す
   るに、やっちゃいけないなんていうはずはないんで、ただ、学にもやらせ
   ていただきたいということだと思います。
    大分ご熱心なご議論がございましたが、安田先生、どうぞ、関本委員の
   ご意見なども踏まえ、部会における審議を進めていただきたいと思います。
   どうぞよろしくお願いします。

(3)審議状況報告
  ○西澤会長 それでは、次の議題に入らせていただきます。
    審議状況報告「国際電気通信連合電気通信標準化部門の活動への対処に
   ついて」です。本件は電気通信標準化委員会において審議を行っていると
   ころですが、今回、委員会において審議事項の取りまとめを行ったという
   ことです。これについてご報告をお願いします。
    電気通信標準化委員会委員長の安田先生、たびたびで申しわけありませ
   んが、よろしくお願いします。

  ○安田委員 それでは、ご報告を申し上げます。
    電気通信標準化委員会、これは諮問2号の「国際電気通信連合標準化部
   門(ITU−T)の活動への対処について」という諮問について審議を行
   っており、ITU−Tにおける通信技術の標準化活動に対する我が国の意
   見の取りまとめ等を行っています。
    ITU−Tでは、技術分野の15の研究委員会、SGと呼んでいますが、
   SG1の「サービス定義」からSG15の「伝送システム及び装置」まで
   の15の研究委員会を中心として、電気通信網の高度化に必要な各種技術
   の国際標準化活動を進める一方、社会ニーズにより的確に対応した標準化
   活動が進められるように、優先順位と戦略等を取り扱うTSAG(テレコ
   ミュニケーション・スタンダード・アドバイザリー・グループ)を設置し
   て、その作業方法等の改善に努めています。
    さらに、ITU−TとITU−Rの間に、両方に関係のあるものについ
   ての調整を図るために、ICG(部門間調整グループ)を設けています。
    また、複数のSGにわたる事項についてSG間の調整を図るために、J
   CG(合同調整グループ)を設けています。
    本委員会では、我が国の技術が国際標準として最大限に反映されるよう
   に、11の専門委員会を設けて議論をしています。
    さらに、重点的に標準化活動を推進すべき技術分野については、別に分
   科会を設置して、効率的に審議を進めるよう従来から努めています。例え
   ば、マルチメディアサービスの標準化活動に積極的に対応すべく昨年新設
   されたVOD分科会といったようなもの、現在それを加えて11個の分科
   会が設置されており、積極的な活動を行っています。
    さらに、先ほどのICGに対応して、無線通信委員会と電気通信標準委
   員会両方にかかわりがあるということで、FPLMTSという将来の陸上
   移動通信システム関連の合同連絡会議とオーディオビジュアル関係の合同
   連絡会議を設けています。
    1994年の5月から95年の12月までにわたり新規に勧告化された
   勧告数が合計で220、改定されたものが114、合計334の勧告が取
   り扱われました。
    また、通信ネットワーク上でビデオ・オン・デマンド等の高度な映像サ
   ービスの提供を可能とするB−ISDN技術や、1つの個人番号により各
   種の通信サービスを世界中どこででも利用できるようにするためのUPT
   (ユニバーサル・パーソナル・テレコミュニケーション)といった技術等
   については、特に重点的に標準化活動を行うべき6つの技術分野と定めて
   おり、積極的な対応を図っています。
    これらの技術の中から一つだけ代表的な例を取り上げてご説明します。
    オーディオビジュアル・マルチメディアです。このマルチメディアサー
   ビスは、画像情報のほかに音声データ情報をあわせて多様なサービスを簡
   単に利用できるようにすることを目的としており、より高品質な画像、音
   声情報等を効率的に符号化するための技術の標準化が進められています。
   特に、昨年勧告されたMPEG2方式、ITUでの正式な勧告名はH.2
   62ですが、これについてはハイビジョンクラスの映像伝送サービス等、
   これからの多様なマルチメディアサービスを実現する上での中核的な技術
   として注目されています。
    また、現在それぞれのメーカー独自の標準で商品化が図られているテレ
   ビ電話に関する標準を統合し、使い勝手を向上するための標準を本年中に
   作成すべく作業を進めています。
    また、急速に普及しつつあるパソコン端末にテレビ会議機能を付加する
   ことにより、気軽に利用できるパソコン会議システムとして提供するため
   の標準の作成も進められています。
    一方で、移動体通信を利用したマルチメディアサービスに対するニーズ
   も今後拡大をしていくと考えられますが、これらのサービスの実現に向け
   て、画像、音声情報の低速符号化技術の標準化についても鋭意作業を進め
   ているところです。
    当委員会の今後の対応について簡単に述べますが、まず世界情報通信基
   盤、GIIの構築に向けて、多様な標準が早急に必要とされている現状に
   かんがみて、社会ニーズに合った標準を的確に提供していくことができる
   よう、勧告化作業への一層の寄与を図っていくとともに、ITUにおける
   標準化プロセスの改善に積極的に対応していくことにしています。
    また、本年10月にITU−Tの総会である世界電気通信標準化会議が
   開催される予定となっていますので、本会議に向けた対処についても検討
   を行っていくことにしています。9月の当審議会においてその対処方針の
   ご審議をいただくことになろうかと思いますが、その節はよろしくお願い
   します。
    以上、簡単ですが電気通信標準化委員会の1年半にわたる作業の状況等
   についてご説明しました。

  ○西澤会長 どうもありがとうございました。
    ただいまのご報告について、ご審議をお願いします。

  ○関本委員 今、標準化で問題になっているのは、アメリカは、どちらかと
   いうとデファクト・スタンダードという形で今あるものを押しつけてこよ
   うとする。一方、ヨーロッパなりITUは、ITU規格的なものをやろう
   とする。
   この対立があるわけですが、この辺については何か議論ありましたか。

  ○河内標準化推進室長 この問題についてはITUの中でも非常に真剣に議
   論が行われており、特に先ほど安田委員長からお話がありましたTSAG
   というITU−Tの戦略を議論するところで、この問題が扱われています。
   特に、ITUは非常に図体が大きくて、非常に多くのアウトプットを出し
   てきていますが、やはりスピードという点でどうしても追いついていって
   いないところがあります。これに対応するために今議論されているのが、
   タスクフォース制度というものです。すなわちITUの中に小回りのきく
   フォーラムというのをたくさん作り、フォーラムでアウトプットを出せる
   ものはどんどん出し、ITUの形として認めていこうというようなもの、
   それから、現在いろいろ世界で行われている民間のフォーラムとも積極的
   に連携をとって、ITUがそういう民間活動を敵視するのではなく、むし
   ろ一緒にやっていこうというような形での連携をとっていこうと、そのよ
   うな議論が行われています。

  ○西澤会長 ほかにございませんでしょうか。
   やはり、先んずれば人を制するということで、標準化の問題も早く研究を
   済ませて早くやると。もちろん間違ったら直すということが必要ですが。
   そういう意味でも、日本がぜひ先鞭をとるように、これから安田先生、ど
   うぞよろしくリーダーシップを発揮していただきたいと思います。

  ○安田委員 ちょっと話がそれるかもしれませんが、日本があまり先鞭をと
   るのはまた難しい問題があります。ファックスがうまくいったのは、ファ
   ックスは日本だけが非常に重視しており、世界はちょっと軽視をしていた
   面がある。ヨーロッパなんか特に軽視をしていました。そのために日本の
   提案が、うまく、すーっと通ってしまった面があるんですが、

  ○関本委員 すーっと通ってないですよ。

  ○安田委員 それでも相当苦労して通したということですから、もともと世
   界中が、欧米が重視しているものについては、標準化というのは非常に難
   しいという感触を私は受けています。その辺を克服しながら、日本の主張
   を取り入れてもらわなければいけないと考えています。



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