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発表日  : 9月20日(金)

タイトル : 接続の基本的ルール案(本文)






            平成8年9月20日

             電気通信審議会
          接続の円滑化に関する特別部会

              目  次

第I章 現状
1 現行制度
2 接続料金の現状
3 接続協議の現状

第II章 基本的な考え方
1 接続の基本的ルール
2 接続の基本的ルールの策定に当たっての基本的な考え方
3 接続の基本的ルールの概要

第III章 第一種電気通信事業者に関する一般的な接続ルール
1 接続の義務化
2 接続協定の公開
3 裁定手続の活用の容易化
4 第二種電気通信事業者の取扱い

第IV章 特定事業者に関する特別な接続ルール
   第1節 総論
1 特別な接続ルールの必要性
2 特別な接続ルールを適用していくべき事業者の範囲
3 特別な接続ルールの適用対象となる設備の範囲
4 特別な接続ルールの内容
   第2節 接続に関する料金表・約款
1 接続に関する料金表・約款の作成・認可手続
2 認可された料金表・約款の扱い
3 料金表・約款によらない個別協定の扱い
4 他事業者による料金表・約款手続の利用
   第3節 接続会計制度の創設
1 接続会計の必要性
2 接続会計の基本的枠組み
3 収益・費用計上の基準
4 接続会計における設備の区分
5 接続会計報告書の公表等
   第4節 接続料金の算定
1 接続料金算定の考え方
2 料金体系
3 接続装置の使用料等の算定方式
4 その他


   第5節 技術的条件
1 技術的条件についての基本的考え方
2 技術的条件として規定すべき範囲

   第6節 アンバンドル
1 アンバンドルについての考え方
2 アンバンドルの方法

   第7節 接続関連費用の負担の在り方
1 接続関連費用の負担の現状
2 接続関連費用の負担の考え方
3 その他

   第8節 番号ポータビリティ
1 番号ポータビリティの確保の意義
2 番号ポータビリティの具体的な内容

   第9節 網機能提供計画
1 網機能提供計画の制度化
2 網機能提供計画の記載事項
3 アンバンドルについて
4 網機能提供計画の策定手続等

   第10節 反競争的行為の防止
1 現行制度
2 業務改善命令の要件及び手続の見直し

第V章 その他
1 多数事業者間接続の取扱い
2 相互接続と業務委託の関係
3 赤字負担の在り方
4 新ルールへの移行までの経過措置

   (参考図)
     別紙1  接続ルールのフローチャート
        I  第一種電気通信事業者の場合
        II 特定事業者の場合
          (1)新規サービスの場合
          (2)既存サービスの場合
          (3)個別協定の場合
     別紙2  不可欠設備管理収支型接続会計の概念図
     別紙3  接続会計の設備区分のイメージ
     別紙4  アンバンドルの対応図
     別紙5  接続関連費用の負担の在り方



             接続の基本的ルール案

第I章 現状

1 現行制度
  電気通信事業分野においては、競争導入による多様な形態での複数の電気通
 信事業者の参入を前提に、これらの事業者のネットワークが接続されることが、
 利用者の利便を増進し、公共の利益に適うとの観点から、電気通信事業法にお
 いて、接続に関する制度を設けている。
  現在の接続に関する制度は、原則として接続は事業者間の協議に委ねること
 とし、接続を義務として規定せず、例外的に、当事者間の接続協議が不調に終
 わった場合に公共の利益を確保するための手段として、郵政大臣による接続命
 令、裁定手続が規定されている。
  また、接続条件に関しても、同様の考え方から、事業者間合意によるものと
 し、一方当事者が不当な条件を設定することを防止する観点から、合意された
 接続協定について、認可を要することとされている。

2 接続料金の現状
  市内交換機の接続料金を国際的に比較すると、現在NTTが他事業者に提示
 している接続料金は、4.05円/3分(平成6年度決算ベース)であるが、
 米国の場合、FCCが本年8月に決定した接続ルールにおいては約0.2円〜
 0.4円(0.2セント〜0.4セント)/1分とされており、また、英国B
 Tの場合は約1.1円(0.758ペンス)/1分となっており、我が国の接
 続料金は、我が国と同様に競争原理を導入している米国及び英国と比べて高い
 水準にある。

3 接続協議の現状
  NTT地域通信網のように他事業者にとって当該ネットワークとの接続が不
 可欠な設備との接続に関しては、当該設備を有する事業者は接続協議において
 圧倒的に優位な立場にあることから、接続協議が円滑に進んでいない事例が生
 じており、事業者間協議を原則とする現行制度は必ずしも有効に機能しないも
 のとなっている。

(1)協議期間の長期化
   例えば、NTT地域通信網との接続に関して、接続協議が長期化している
  事例が生じている。
   具体的には、長距離系NCC(新規参入事業者)のVPNサービスに関す
  る長距離系NCCとNTTとの協議については、平成元年9月に長距離系N
  CCから接続の申入れを行って以降、接続協定の締結まで5年以上を費やし
  ている。
   この間、長距離系NCCは平成6年11月に郵政大臣に接続命令の申立て
  を行い、これを受けて同年12月に郵政大臣がNTTに対し接続命令を行い、
  平成7年4月に接続協定が締結されるという経緯をたどっている。

(2)接続料金の算定根拠に関する問題
   NTT地域通信網の接続料金の対象となる費用の範囲について、長距離系
  NCCとNTTは、平成5年の事業者間接続料金の導入に関する協議以来、
  4年間にわたって協議を行ってきており、平成7年11月にNTTの商品の
  販売活動に関する費用等を除外することに合意したが、試験研究費の扱いな
  どについて現在なお協議が行われている。

(3)ネットワークの改造に関する問題
   NTT地域通信網に接続する場合、NTTのネットワークが接続を前提と
  した構造となっていないため、新たな形態での接続の場合、ネットワークの
  改造に概ね2年を要している。
   例えば、NTTは平成7年9月にアクセス系のオープン化として加入者交
  換機接続の実施方針を明らかにしたが、平成8年1月に接続協定締結の申込
  みのあった地域系NCCのNTT加入者交換機接続は平成9年12月末実施
  の予定であり、申込みから数えて実施まで概ね2年を要する状況にある。
   また、接続のためのネットワークの改造費用が発生するとして、他事業者
  はNTTからその費用負担を求められているが、このような費用負担は、特
  に事業基盤が確立していない新規参入事業者にとっては、大きな負担となる。
  現在、複数のCATV事業者が電話サービスに関してNTTと接続協議を行
  っているが、ネットワークの改造費用の負担の在り方が論点の一つとなって
  いる。
   なお、本特別部会において実施した海外調査によれば、米国及び英国にお
  いては、ネットワークの改造に関するこのような問題は、大きな問題とはな
  っていない模様である。

(4)第二種電気通信事業者に関する問題
   NTTと第二種電気通信事業者との接続について、ユーザー・網インタフ
  ェース以外での接続の在り方、網機能のアンバンドル等を巡り、接続協議が
  円滑に進まない等の事例が生じている。
   例えば、NTTのINS−P(ISDNパケット通信サービス)と複数の
  特別第二種電気通信事業者との協議については、接続インタフェースの在り
  方を巡り、協議が長期化し、特別第二種電気通信事業者のサービス開始は協
  議開始から2年、機能によってはサービス開始まで4年を費やしている。ま
  た、第二種電気通信事業者によるファクシミリ網の無鳴動着信機能(ファク
  シミリ通信を受信する際に、ベルを鳴らさず自動受信させる機能)の利用に
  ついては、平成3年以来、約6年間の協議が行われ、平成8年度末に実現さ
  れる予定である。

(5)その他
   平成6年度以降、デジタル携帯電話事業者、PHS電話事業者及びCAT
  V通信事業者の新規参入が行われ、第一種電気通信事業者数は急激に増加し、
  平成6年4月1日時点では86社であったが、平成8年9月1日時点では1
  31社となっている。
   従来、サービス提供は、ニ事業者のネットワークが接続されることにより
  行われることが一般的であったが、このような多数の事業者の参入に伴い、
  三事業者、四事業者のネットワークが接続されることを通じてサービスが提
  供されるようになってきている。
   このような中で、PHS電話については、携帯電話との接続について、暫
  定的な方式によりサービス開始後1年後の本年7月に実現したが、本格的な
  方式は平成9年末実施の予定であるほか、現在でも依存型PHS電話と接続
  型PHS電話相互間の利用や国際電話及びNTTのフリーダイヤルサービス
  の利用ができない状況が生じている。


第II章 基本的な考え方

1 接続の基本的ルール
  現行制度の枠組みの下で生じている第I章で述べたような現状や問題に対処
 し、今後電気通信サービスの多様化・高度化、料金の一層の低廉化を実現して
 いくためには、原則として事業者間の協議に委ねる現行制度を見直し、接続に
 関し利用者利益及び公正有効競争条件を制度的に確保するための措置を講じる
 必要がある。
  接続の基本的ルールとは、このような措置の総称と考えるべきである。

2 接続の基本的ルールの策定に当たっての基本的な考え方
(1)基本原則
   接続の基本的ルールとして定めるべき具体的な内容を検討するに当たって
  は、上記1で述べたような接続の基本的ルールの性格にかんがみ、
  1. 利用者利益を増進させるものであること。
  2. 公正かつ有効な競争を促進させるものであること。
  を、基本的な原則とすべきである。

(2)具体的な目的
   上記(1)の基本原則に則り、接続の基本的ルールは、次の具体的な目的
  を実現するものであるべきである。
  1.利用者利益の増進
   (ア)料金の低廉化につながるものであること。
   (イ)エンドエンドのシームレスサービスの提供を確保するものであるこ
     と。
   (ウ)マルチメディア化に対応した新しいサービスの提供を可能とするも
     のであること。

  2.公正かつ有効な競争の促進
   (ア)透明、公平、迅速かつ合理的な接続を実現するものであること。
   (イ)円滑な接続を阻害する反競争的な行為を防止するものであること。

(3)情報の非対称性への対応
   事業者間において接続費用や技術情報などの接続条件に関する情報の非対
  称性が存在する場合には、合理的な接続条件を設定することが困難となる。
   したがって、接続の基本的ルールにおいては、情報を公開させることや、
  挙証責任を情報を有する事業者が負うこととするなどにより、情報の非対称
  性に可能な限り対応するための措置を講じるべきである。

(4)国際的な調和
   今後、我が国の電気通信市場に外国事業者が参入し、また、我が国の電気
  通信事業者が外国の電気通信市場に参入するといったグローバルな競争が展
  開されていくことを念頭に、WTOにおける議論や、我が国と同様に競争原
  理を導入している米国及び英国の接続ルール化への取組み、更には、EUに
  おける欧州レベルでの接続ルール化に関する動向を踏まえつつ、可能な限り
  国際的に調和のとれた制度を構築していくべきである。

(5)接続の基本的ルールの柔軟な見直し
   電気通信市場は、急速な技術革新等による変化の激しい分野であり、接続
  の基本的ルールについても、具体的事例を積み重ねる中で、このような変化
  に対応して柔軟に見直していくべきである。


3 接続の基本的ルールの概要
  以上の基本的な考え方に基づき、以下の内容を骨子とする基本的な接続ルー
 ルを策定することが適当である。

(1)一般的なルールと特別なルール
   第一種電気通信事業者すべてについて適用されるルールを定めるとともに、
  NTT地域通信網のような他事業者のサービス提供に不可欠な設備を有する
  事業者に対する特別なルールを追加的に定める。

(2)一般的な接続ルール
   第一種電気通信事業者に対し接続を義務づけるとともに、接続協定の閲覧
  等の措置を行う。

(3)特別な接続ルール
   他事業者のサービス提供に不可欠な設備を有する事業者に対し、以下を義
  務づけることとする。
  1.接続条件の料金表・約款化
   (ア)技術的に可能なすべての不可欠設備上のポイントにおける接続が提
     供されること。(接続のための建物・管路等の提供等を含む。)
   (イ)接続料金が、接続会計の結果に基づき、適正に算定されていること。
   (ウ)不可欠設備の構成要素や機能のアンバンドル(細分化)された形態
     及び接続料金による接続の提供。
   (エ)不可欠設備との接続条件は、自己の同様なサービスより不利でない
     条件であること。
   (オ)接続の技術的条件を記載すること。
   (カ)番号ポータビリティの提供。
   (キ)番号案内サービス、番号データベース等へのアクセス。
   (ク)緊急通報の提供。

  2.接続に関する会計報告書の作成・公表
  3.網機能提供計画の作成・公表
  4.不可欠設備との接続に必要な情報の提供 等


第III章 第一種電気通信事業者に関する一般的な接続ルール

1 接続の義務化
  第I章で述べたように、多数の事業者が複雑に接続する競争環境下において
 は、事業者間の協議のみでは、必ずしも公共の利益に適う接続が確保されない
 可能性がある。
  したがって、利用者利便の増進及び公正かつ有効な競争の促進の観点から、
 いわゆる公益事業特権を認められて構築される公共的なインフラストラクチャ
 ーである第一種電気通信事業者のネットワークについては、利用者に対する役
 務提供義務(電気通信事業法第34条)と同様に、正当な理由がある場合を除
 き、他事業者に対する接続協定の締結を義務づけることが適当である。
  接続を拒否し得る正当な理由については、具体的事例に則して判断されるべ
 きであるが、典型的な例としては、自らのネットワークを損傷し、又はその機
 能に障害を与えるおそれがある場合や不当な条件での接続の提供を求められる
 場合が該当する。
  接続を義務化する趣旨にかんがみ、その違反に対しては、他事業者からの申
 告等に基づき、行政措置としての業務改善命令による対応を行うこととすべき
 である(業務改善命令の見直しについては第IV章第10節参照)。
  正当な理由を示さずに接続の申入れを拒否することは、その行為そのものが
 業務改善命令の対象となり得る。

2 接続協定の公開
  第I章で述べたように、多数の事業者が複雑に接続する競争環境下において、
 不当な差別的取扱いを防止し、透明、公平、迅速かつ合理的な接続を確保する
 観点から、認可された接続協定は、閲覧に供されることとすべきである。

3 裁定手続の活用の容易化
  現行制度においては、接続条件に関して事業者間で協議が調わないために接
 続協定を締結できない場合でも、接続協定の締結命令の申立てを行い、当該命
 令を受けた後でなければ接続条件に関する裁定の申請ができない仕組みとなっ
 ている。
  このような仕組みにおいては、裁定手続に要する期間に加えて、接続命令手
 続に相当の期間を要することとなり、事業者間の紛争の迅速な解決を図り、迅
 速な接続を確保することにより競争を促進するという裁定制度の趣旨が十分生
 かされないおそれがある。
  この点については、上記1の接続の義務化により、接続条件に関して事業者
 間で協議が調わない場合に直ちに裁定の申請が可能となることから、事業者間
 の紛争の迅速な解決のために裁定手続を活用することが容易となる。

4 第ニ種電気通信事業者の取扱い
  第ニ種電気通信事業者が、第一種電気通信事業者から電気通信回線設備を調
 達して構築しているネットワークについても、利用者利便の増進及び公正かつ
 有効な競争の促進という観点からは、第一種電気通信事業者のネットワークと
 区別して取り扱うべき合理的な理由はないので、第ニ種電気通信事業者も第一
 種電気通信事業者のネットワークに対して、他の第一種電気通信事業者と同様
 に自己のネットワークの接続を求めることができることとすべきである。
  他方、第ニ種電気通信事業者は、電気通信回線設備を第一種電気通信事業者
 に依存していることや、第一種電気通信事業者のサービスとの差別化を図りな
 がら、多種多様なサービスを提供するところに事業としての特性があることか
 ら、第ニ種電気通信事業者に対してまで接続を義務化する必要性は乏しいもの
 と考えられる。
  なお、第ニ種電気通信事業者が、以下で述べる接続ルールに従って接続する
 場合のほか、利用者約款により接続する場合も想定されるが、この場合におい
 ては、一般の利用者向けサービスとのコスト上の相違を考慮した第ニ種電気通
 信事業者向けの卸料金の導入を検討する必要がある。

第IV章 特定事業者に関する特別な接続ルール

第1節 総論

1 特別な接続ルールの必要性
  電気通信サービスの利用者は、加入者回線(電話の場合、保安器、配線盤等
 加入者側に設置される回線の終端装置と加入者交換機との間の伝送路)で事業
 者のネットワークとつながっており、利用者間で通信を行う場合、途中でどの
 ようなネットワークを経由しても、最終的には加入者回線を経由しなければ当
 該利用者にはつながらない構造となっている。
  このため加入者回線を有する事業者は、接続の提供という観点からは、当該
 加入者回線によりネットワークにつながれている利用者に対する他事業者から
 のアクセスを独占しているとみることができる。
  このように、加入者回線を相当な規模で有する事業者のネットワークへの接
 続は、他事業者の事業展開上不可欠であり、また、利用者の利便性の確保とい
 う観点からも当該ネットワークの利用が確保されることが不可欠であることか
 ら、その接続条件は、競争の促進及び利用者利便の増進の観点から極めて重要
 なものとなっている。
  また、相当規模の加入者回線を有する事業者は、接続協議において圧倒的に
 優位な立場に立ち得ることから、事業者間協議により合理的な条件に合意する
 ことが期待しにくい構造となっている。
  したがって、このようなネットワークへの透明、公平、迅速かつ合理的な条
 件による接続を確保することにより、競争を促進し、かつ、利用者利便の増進
 を図るため、第III章の一般的な接続ルールに加え、特別な接続ルールを策
 定し、当該事業者に適用していくことが必要である。

2 特別な接続ルールを適用していくべき事業者の範囲
  特別な接続ルールを適用していくべき事業者(以下「特定事業者」という。)
 の範囲については、接続協議において圧倒的に優位な立場に立ち得るとの観点
 から、一定の市場において加入者回線総数の50%を超える規模の加入者回線
 を有する事業者とすることが適当である。
  一定の市場については、社会経済生活圏としての一体性及び現在のネットワ
 ーク構成を考慮し、都道府県を単位とすることが適当である。
  なお、移動体通信事業者については、基地局間又は基地局と交換局間の伝送
 路を有しておらず、この部分は業務委託という形で固定通信事業者の設備を使
 用しており、また、移動体通信事業者が扱う通信のほとんどは固定通信事業者
 との間のものであることから、移動体通信事業者は固定通信事業者への依存度
 が高い。
  したがって、特別な接続ルールの適用の対象は、当面固定通信事業者に限る
 こととし、移動体通信事業者の加入者回線は、特定事業者を決定するための加
 入者回線総数には含めないこととすることが適当である。

3 特別な接続ルールの適用対象となる設備の範囲
  特別な接続ルールの適用対象となる設備(以下「不可欠設備」という。)は、
 現在の一般的なネットワーク構成を考慮し、特定事業者の有する設備のうち、
 加入者回線と一体として構成される概ね県域をカバーする設備とする。

4 特別な接続ルールの内容
(1)接続条件の料金表・約款化
   不可欠設備との接続に関しては、透明、公平、迅速かつ合理的な接続を確
  保する観点から、接続料金、接続の技術的条件などの接続条件に関して料金
  表・約款を作成し、認可を得ることを義務づけることが適当である。
   この場合、料金表・約款に定める条件については、合理的な接続条件及び
  公正有効競争を可能とすることを確保する観点から、以下の基準を満たすよ
  う作成されるべきである。

  1.技術的に接続が可能なすべての不可欠設備上のポイントにおける接続が
   提供されること。
    この基準には、次の内容が含まれる。
  (ア)他事業者が不可欠設備上のポイントまで伝送路を設置するために必要
    な建物・管路・電柱を提供すること。
  (イ)上記(ア)の建物の提供には、物理的コロケーション(他事業者が接
    続用設備を設置)、仮想的コロケーション(特定事業者が接続用設備を
    設置)のいずれの提供も可能とすること。
  (ウ)不可欠設備上のポイントから他事業者の要請に基づく地点(他事業者
    の建物を含む。)までの伝送路の設置が含まれていること。

  2.接続料金が、接続会計の結果に基づき、適正に算定されていること。

  3.他事業者が、特定事業者の不可欠設備の構成要素や機能のうち必要なも
   ののみをアンバンドル(細分化)して使用することができるような形態及
   び料金表により接続が提供されること。

  4.不可欠設備との接続条件は、特定事業者の同様なサービスより不利でな
   い条件であること。

  5.接続の技術的条件を記載すること。

  6.特定事業者の利用者が他事業者に加入を変更する場合に、当該利用者が
   同一の番号を保持すること(以下「番号ポータビリティ」という。)が確
   保されること。
    ただし、他事業者が、特定事業者に対して番号ポータビリティを提供し
   ない場合には、他事業者からの番号ポータビリティの提供の申入れを拒否
   することは認められる。

  7.他事業者の要請に基づき、番号に関する以下の業務が提供されること。
   (ア)特定事業者の番号案内サービスへのアクセス
   (イ)特定事業者の番号データベースへのアクセス
   (ウ)特定事業者の番号案内サービスにおける他事業者の利用者の番号案
     内の実施及び特定事業者の電話帳への他事業者の利用者の番号の掲載

  8.他事業者の要請に基づき、当該事業者のネットワークから発信された緊
   急通報を警察及び消防機関に伝送・着信させることが提供されること。

(2)接続に関する会計報告書の作成・公表
   不可欠設備に係る接続料金について、透明、公平かつ合理的な料金の算定
  を確保し、接続料金の合理性に関する他事業者等への判断材料を提供するた
  め、特定事業者に対し、不可欠設備との接続に関する会計報告書の作成・公
  表を義務づけることが適当である。

(3)網機能提供計画の作成・公表
   不可欠設備との接続においては、不可欠設備のネットワークの改造のため
  に多大の時間と費用を要する場合があることから、現在の不可欠設備を前提
  として合理的な接続条件を確保するだけでは不十分である。このため、特定
  事業者のネットワークの開発段階において、他事業者が今後開発されるネッ
  トワーク機能の情報の提供を受け、また、他事業者の意見が当該開発に反映
  されることを確保する必要がある。
   したがって、特定事業者に対し、網機能提供計画を作成し、公表すること
  を義務づけることが適当である。

(4)不可欠設備との接続に必要な情報の提供
   上記の料金表・約款、接続に関する会計報告書及び網機能提供計画に記載
  される情報以外にも、他事業者が不可欠設備への接続を検討し、又は実際に
  接続を行い、運用する際に必要となる情報がある場合には、公平かつ迅速な
  接続が確保されないことから、特定事業者に対し、不可欠設備との接続に必
  要な情報の提供を義務づけることが適当である。


第2節 接続に関する料金表・約款

1 接続に関する料金表・約款の作成・認可手続
  第1節で述べたように、不可欠設備との接続に関しては、接続条件に関して
 料金表・約款を作成し、認可を得ることを義務づけることが適当であるが、透
 明、公平、迅速かつ合理的な接続を確保する観点から、料金表・約款の作成、
 認可手続については、次のとおりとすることが適当である。

(1)特定事業者は、不可欠設備との接続に関する料金表・約款を作成し、認可
  申請を行う。
   料金表においては、第3節の会計制度において定められる会計上の区分を
  ベースとして算定される、アンバンドルされた料金体系を設定する。

(2)料金表については、接続会計結果に基づき毎年見直し、必要に応じて変更
  の認可申請を行う。
   約款については、接続の技術的条件などその内容を変更すべき事情が生じ
  た場合には、速やかに変更の認可申請を行う。

(3)郵政大臣は、申請資料を一般の閲覧に供する。

(4)他事業者等は、申請及び下記(5)の意見に関して郵政大臣に対して意見
  を述べることができる。

(5)特定事業者は、上記(4)の意見に関して意見を述べることができる。

(6)郵政大臣は、上記(4)、(5)の意見に基づき不認可とする場合には、
  業務改善命令を出すことができる。

(7)軽微な事項については、認可を得ることを要しない。ただし、他事業者等
  の検討が可能となるよう事前に届出を行うとともに、公表することとし、当
  該届出に関して他事業者等は、意見を述べることができる。
   また、郵政大臣は、当該届出に対して、業務改善命令を出すことができる。

(8)事業者は、約款により接続を行った場合には、届出を行う。

(9)行政手続法に基づき、認可手続に関し、標準処理期間及び審査基準を定め
  る。

2 認可された料金表・約款の扱い
  認可された料金表・約款が、その後の事情変更により合理性を欠くに至った
 場合には、他事業者等の苦情申告等に基づき、業務改善命令を出すことを可能
 とする。

3 料金表・約款によらない個別協定の扱い
  不可欠設備に関する接続条件については、料金表・約款に定めることを原則
 とするが、新サービスなどであって料金表・約款によらない特殊な条件で接続
 することについて他事業者から申込がある場合には、個別に接続協定の認可を
 得て、これによる接続を提供することができる。個別の接続協定は、その条件
 が第1節4(1)の基準を満たさなければならないものとする。

4 他事業者による料金表・約款手続の利用
  多数の事業者による接続の円滑化等の観点から、他事業者についても、任意
 により料金表・約款を作成し、認可を得ることができることとし、認可を得た
 料金表・約款に定める条件で接続を提供する場合には、個別の接続協定の締結、
 認可を要せず、届出を行うこととする。


第3節 接続会計制度の創設

1 接続会計の必要性
  現在、NTTの接続料金は、接続に関する会計制度が整備されていないため、
 電気通信事業会計規則(役務別損益明細表等)及び料金算定要領(電気通信事
 業法第31条の認可に関し具体的な料金算定方法を定めた通達)等のユーザー
 料金の算定に係る基準を準用して算定する、あるいは、ユーザー料金の額をそ
 のまま接続料金に適用する等して設定されている。
  網使用料については、NTTの事業部制収支における地域通信事業部の費用
 を基礎として社内の勘定科目の細目毎に配賦計算を行った結果に基づき算定さ
 れている(長距離系NCC、地域系)あるいは、ユーザー料金と同様の課金が
 行われている(携帯電話、PHS)等事業者の種別毎に決定されている。
  また、接続に際して生じるNTT網の改造費用、接続装置及び付加に要する
 費用については、NTTが所要額とその年割額を積算し、原則的にその全額(
 事業者によっては半額)をNCCが負担している。
  このように、接続に関する会計制度が整備されていないことが、事業者間に
 おいて対立を生じ、ひいては接続協議が難航、長期化する一因となっている。
 したがって、今後、接続会計制度の創設とこれに基づく料金の算定とが緊急の
 課題となっている。

2 接続会計の基本的枠組み
(1)上記の要請を踏まえて、接続料金の適正な算定に資するため、接続に関す
  る会計の基準を国が定め、特定事業者に対して、接続会計の整理を義務づけ
  ることが適当である。

(2)接続会計の基本的な枠組みとしては以下の2つのタイプが考えられる。
  1.特定事業者の収益・費用の総額から、他事業者との接続に関わる部分を
   抽出した接続収支を示す方式。
    この場合、接続料金は、不可欠設備の管理運営に関わる要素とユーザー
   への営業活動等に関わる要素とが一体となった特定事業者の費用に基づき
   算定される。

  2.特定事業者の会計を、不可欠設備を管理運営する部門(不可欠設備管理
   部門)とその設備を利用してユーザーにサービス提供を行う営業部門とに
   区分し、不可欠設備管理部門が自社の営業部門と他事業者とに対して不可
   欠設備を同一条件(料金)で提供する方式。
    この場合、不可欠設備管理部門の収支が接続収支となり、不可欠設備の
   管理運営に要する費用のみから接続料金を算定することが可能となるとと
   もに、不可欠設備の利用に係る特定事業者自身と他事業者の支払いとが比
   較可能な形で明らかになる。

(3)上記2.の枠組みは1.と比較して、以下のような利点を持つと考えられ
  るので、「不可欠設備管理収支型」の枠組みを採用することが適当である。
  1.網使用料が不可欠設備管理部門の費用を基に算定されることにより、会
   計結果と接続料金算定の関連が明確になる。
  2.特定事業者が、不可欠設備の利用に関して、他事業者を自社の営業部門
   と同様に扱うことが会計上で明確となる。
  3.設備に着目した収支計算であるので、設備毎にアンバンドルされた料金
   算定のための費用集計・区分が容易である。

(4)接続会計は、不可欠設備の使用料(網使用料)に関わる収支を対象とする
  ほか、ネットワークの改造や接続装置に関わる収支も対象とし、その収支の
  状況を把握することが適当である。

3 収益・費用計上の基準
  不可欠設備管理部門の収益としては、自社の営業部門及び他事業者からの接
 続料金収入(前者については社内取引)を計上する。
  また、同部門の費用としては、不可欠設備の維持・管理に係る償却・除却費、
 保守費等の費用、接続に関連した他部門との共通費・間接費及び資本コストを
 計上する。なお、共通費・間接費の計上に際しては、当該共通・間接部門の活
 動量を的確に表す尺度(コスト・ドライバ)に基づき費用帰属を行うABC
 (アクティビティ・ベースト・コスティング)手法などを導入する。これによ
 り、接続との関連性を反映した費用帰属を可能とする。

4 接続会計における設備の区分
  不可欠設備管理部門の費用は、アンバンドルされた接続料金算定の根拠デー
 タとするため、交換機、伝送路等の設備単位(NTT電話網で十数項目程度)
 に集計・区分するものとする。その際、他事業者のサービス提供に必要でない
 設備の費用が接続料金原価に含まれることのないよう、設備の種類・用途に関
 して厳密な区分を決定する。

5 接続会計報告書の公表等
  特定事業者に、毎年度、接続会計に関する報告書を郵政大臣に提出するとと
 もに公表することを義務づける。提出する報告書については、接続会計のルー
 ルに基づいて適正に作成された旨の公認会計士による計算結果の証明を付する
 こととする。

(注)ABC(アクティビティ・ベースト・コスティング)手法
   企業等における諸活動(アクティビティ)から発生するコストを個々に集
  計し、この活動量を計量的に表現するコスト・ドライバに基づいて製品やサ
  ービスなどの原価計算対象に賦課する手法


第4節 接続料金の算定

1 接続料金算定の考え方
(1)接続料金の算定については、NTTを例にとればユーザー料金と同様の考
  え方に立って総括原価方式に準拠して行われている。この方法については、
  他事業者から、接続に関連のない費用も負担させられているのではないか、
  接続料金原価への配賦が恣意的ではないか、といった意見が出されている。
  また、アンバンドルに関する基準が未整備であるという問題も指摘されてい
  る。

(2)適正な接続料金の算定のためには、新たに創設する接続会計との連携を前
  提に、郵政大臣が接続料金の算定要領を定め、特定事業者に対しこれに従っ
  た料金算定を義務づけることが適当である。

(3)具体的には、接続料金原価は、接続会計において設備の区分ごとに集計・
  区分した費用を基礎として算定しなければならないこととする。これにより、
  営業費や試験研究費の太宗は接続に関連がないため接続料金原価から除外さ
  れる。
   また、不可欠設備管理部門と他部門との間の共通費や間接費も、ABC手
  法の導入などにより、「接続との関連性」を厳密に反映して適正に帰属させ
  ることとする。

(4)これらにより、接続に関連して発生した費用のみを基礎とした料金の算定
  が可能となる。この点で長期増分費用方式と同様の視点に基づくアプローチ
  と考えられる。また、郵政大臣は料金表・約款の認可に当たり、特定事業者
  の不可欠設備運営の著しい不経済性により生じた費用が接続料金原価に算入
  されることのないよう制度の適正な運用を行うことが適当である。

(5)なお、長期増分費用方式については、将来的なコスト・データの迅速かつ
  確実な入手、十分に現実性のある経済・技術モデルの作成等の前提条件を含
  めて、引き続き検討を行うこととする。

2 料金体系
  料金体系については、他事業者が設備のうちの接続に必要な部分又は機能だ
 けを利用し、その費用のみを負担すれば足りるよう、設備の構成要素や機能を
 アンバンドルしたものとする。また、アンバンドルされた設備・機能の料金は
 上記第3節のとおり会計上区分されたコスト・データを基礎に、回線数ごと、
 通話回数ごと、通話時間ごと等の費用発生の態様を考慮し、適正に算定されな
 ければならないこととする。

3 接続装置の使用料等の算定方式
(1)他事業者から網使用料とは別個に費用を回収することとなる接続装置等の
  使用料については、現在のNTTの場合、内部的に計算された創設費(機器
  購入費に取付費及び諸掛費を加えた額)及び全社平均比率を用いた保守・営
  業費等を基にした費用等から成る年間使用料を算定する方式に拠っている。
   しかし、この方式には、機器購入費等創設費の価額に関する正規の会計情
  報がない、創設費に乗じる保守・営業費比率の根拠が不明確である、耐用年
  数経過後も減価償却費に対応する年経費を支払っている等の問題が指摘され
  ている。

(2)したがって、現在の方式を見直し、原則として当該装置に関する償却・除
  却費、保守費等の会計数値を個別的に積み上げる算定方式を適用することが
  適当である。
   なお、費用の個別把握が著しく困難な場合には、現行方式を踏襲した方法
  も認められるが、その際にも、創設費に乗じる保守費等の費用の比率は全社
  平均値ではなく接続会計により算出された値を用い、また、耐用年数経過後
  は減価償却費相当の減額を行うこと等の改善を図ることが適当である。

4 その他
  不可欠設備運営の効率化によって生じた特定事業者の利益の他事業者への還
 元についての基準を定めることが適当である。

  (注) 長期増分費用方式
      接続によるトラヒックの増加により追加的に必要となる設備の増加
     額等の将来的かつ経済的な費用(長期増分費用)を計算し、これを基
     礎として接続料金を定める方式。


第5節 技術的条件

1 技術的条件についての基本的な考え方
  現在の事業者間協議による相互接続においては、必ずしもすべての技術的条
 件が明らかにされていないこと等から、相互接続が円滑に進展していない事例
 が生じている。
  他事業者、参入を計画する者が自ら接続の技術的な検討を行うことを容易に
 するとともに、接続に要する期間を短縮するためには、接続において必要とな
 る技術的条件が明確にされ、公開されることが必要である。
  このため、接続条件の透明性を確保し、接続を推進する観点から、特定事業
 者に対し技術的条件を約款に規定することを義務づけることが適当である。

2 技術的条件として規定すべき範囲
(1)接続に必要な技術的条件を規定するにあたっては、技術的条件全体につい
  て他事業者等の意見を反映させること及び特定事業者による一方的な内容の
  決定・変更を防止することを可能とする必要がある。この点を踏まえ、透明
  性、公平性、迅速性の確保の観点から、接続に必要となる技術的条件はすべ
  て約款に規定し明確にする必要がある。

(2)具体的には、接続を実現するために必要な以下の項目について、接続の態
  様毎に接続に必要な技術的条件をすべて規定することが適当である。
  1.接続形態
  2.接続対象範囲
  3.番号方式
  4.網構成
  5.信号方式
  6.接続シーケンス
  7.課金方式
  8.試験方式
  9.物理的・電気的条件
 10.その他接続に必要な事項

(3)なお、すべての技術的条件の変更・追加について約款の改正が必要となる
  ことから、約款の改正に際しての迅速性の確保が必要である。


第6節 アンバンドル

1 アンバンドルについての考え方
  アンバンドルとは、他事業者が特定事業者の網構成設備や機能のうち、必要
 なもののみを細分化して使用できるようにすることである。これは他事業者が
 多様な接続を実現するために必要なものであることから、基本的には他事業者
 の要望に基づいて行われるべきである。また、競争の促進及び相互接続の推進
 の観点から、積極的にこれを推進すべきである。
  このため、特定事業者は、他事業者が要望する網構成設備及び機能について、
 技術的に可能な場合にはアンバンドルして提供しなければならないこととする。
  これにより、技術やサービスの進展に対応して、他事業者の要望に応じて、
 多様なアンバンドルが進んでいくことになると考えられる。
  なお、特定事業者が技術的に実現不可能であることを一定期間内に示せない
 場合には、技術的に可能とみなすことが適当である。

2 アンバンドルの方法
  アンバンドルの義務化により、今後多様なアンバンドルが進展していくと考
 えられるが、アンバンドルを円滑に推進するためには、現時点において他事業
 者がサービス提供上必要であり、また、これを利用できない場合にサービスの
 提供が阻害されるおそれがあると判断されるものについては、当初からアンバ
 ンドルとして規定し、特定事業者に提供を義務づけるのが適当である。この場
 合、接続の分界点において技術的に明確に区分することが可能である網構成設
 備に着目してアンバンドルすることが適当である。
  以上を踏まえ、特定事業者に対し、以下の網構成設備について、当面、最低
 限のものとして、アンバンドルして提供することを義務づけることが適当であ
 る。
  なお、技術やサービスの進展に応じ、最低限のものとしてアンバンドルする
 ことが適当であると認められるものは、これを追加するものとする。
 1.加入者側終端装置(加入者側に設置される加入者回線の終端装置)
 2.加入者回線(加入者交換機と加入者側終端装置間の伝送路)
 3.加入者交換機
 4.中継交換機
 5.市内伝送設備(加入者交換機同士を接続する伝送設備)
 6.中継伝送設備(加入者交換機と中継交換機を接続する伝送設備)
 7.信号網


第7節 接続関連費用の負担の在り方

1 接続関連費用の負担の現状
  第I章で述べたとおり、NTTのネットワークは、必ずしも接続を前提とし
 た構造になっていないため、他事業者から接続の要望がある場合には、当該接
 続のためにNTTのネットワークを改造する必要が生じ、このための費用が発
 生している。
  これらの費用は、新サービスを提供する事業者や事業基盤が確立していない
 新規参入事業者にとっては大きな負担となり得るものであり、この負担の在り
 方について合理的なルールを策定することが求められている。

2 接続関連費用の負担の考え方
(1)ネットワークの改造費用
   接続が確保されることが、競争を促進し、利用者利便の増進を通じて公共
  の利益に適うとの観点から、基本的な接続機能を提供するために発生するネ
  ットワークの改造費用については、事業者間接続に固有の費用としてではな
  く、ネットワークが本来有すべき機能を備えるための費用とみるべきである。
   したがって、基本的な接続機能を提供するために発生するネットワークの
  改造費用については、改造を施した設備に一般的に発生する費用として扱う
  ことが適当である。
   この結果、基本的な接続機能を提供するために発生するネットワークの改
  造費用については、改造を施した設備を利用する者から利用者料金及び接続
  料金という形で公平に回収されることになる。
   基本的な接続機能を提供するために発生するネットワークの改造費用には、
  少なくとも、

  1.第6節において当面最低限のアンバンドルと考えられるものとして列挙
   されている網構成設備ごとにアンバンドルするためのもの

  2.上記1.にいう網構成設備の分界点において他事業者が共通に利用可能
   な接続インタフェースを提供するためのもの
  が該当する。

(2)接続装置
   接続装置についても、上記(1)と同様に、基本的な接続機能を提供する
  ためのものについては、事業者間接続に固有の費用としてではなく、ネット
  ワークが本来有すべき機能を備えるための費用として扱うこととし、利用者
  料金及び接続料金により公平に回収すべきである。具体的には、少なくとも、
  第6節において当面最低限のアンバンドルと考えられるものとして列挙され
  ているネットワークの構成要素の分界点において他事業者が共通に利用可能
  な接続インタフェースを提供するためのものが該当する。

(3)接続用伝送路
   接続用伝送路の費用については、原則として、他事業者が負担すべきであ
  る。
   ただし、他事業者がCATV電話のように加入者系事業者である場合には、
  接続用伝送路は双方の事業者が自らのサービスを提供するために相互に利用
  するものとみなすことができることから、特定事業者と他事業者のどちらが
  実際に設置するかに係わりなく、次のいずれかの方法により負担する。
  1.双方の事業者がトラフィックの量に応じて負担する。
  2.双方のネットワークの合理的な中間地点に接続ポイントを設定し、当該
   接続ポイントまでの伝送路の費用はそれぞれが負担する。

(4)上記以外の費用
   上記以外の接続関連費用については、ネットワークが本来有すべき機能と
  みなし得るのか等、その性格に応じて個別に検討すべきである。

3 その他
  第I章で述べたように、米国や英国ではネットワークの改造費用の負担は大
 きな問題となっていない模様であることから、今後、円滑な相互接続を確保す
 るため我が国におけるネットワークの在り方に関して引き続き検討を行ってい
 くことが求められる。


第8節 番号ポータビリティ

1 番号ポータビリティの確保の意義
  特定事業者の加入者は、番号変更に伴う周知等のコストを考慮し、事業者を
 変更する際に番号が変わる場合には、事業者を変更しない可能性があることか
 ら、特定事業者が競争上の優位性を保持し続けることとなる。
  したがって、競争の促進及び利用者利便の増進の観点から、特定事業者の利
 用者が他事業者に加入を変更する場合に、番号ポータビリティが確保されるこ
 とが求められる。

2 番号ポータビリティの具体的な内容
(1)番号ポータビリティを確保すべき番号については、
  1.一般加入電話番号
  2.ISDN番号
  3.着信課金サービス用番号
  とすべきである。

(2)上記(1)1.及び2.の番号については、現時点においては、住所変更
  の場合には番号が変わることが一般的であることから、同一住所において事
  業者を変更する場合に限るべきである。

(3)CATV電話サービスや地域系NCCの双方向の電話サービスが概ね2年
  以内に開始される予定であること等から、特定事業者において、平成10年
  中の導入を目途に、今後、具体的な実現方式、実施時期等を含む実施計画を
  策定すべきである。

(4)具体的な実現方式については、次の要件を満たすものとすべきである。
  1.番号ポータビリティの導入に際して、既存の網サービス、機能、能力を
   従来どおり提供すること。
  2.番号資源の効率的利用を図ること。
  3.番号ポータビリティの導入に際して、事業者が提供するサービス品質及
   びネットワークの信頼性について、不合理な低下をきたさないこと。
  4.番号ポータビリティの提供を受けている利用者とそれ以外の利用者との
   間で、サービス品質、ネットワークの信頼性について、不合理な差が生じ
   ないこと。


第9節 網機能提供計画

1 網機能提供計画の制度化
(1)接続を前提としない網構築の問題点
   他事業者との接続を行う際に、網改造のため多大の時間・費用を要するこ
  となどから円滑な接続が妨げられ、公正有効競争条件が確保されないおそれ
  がある。また、接続を前提とする場合でも、他事業者の意見が反映されない
  ときには、円滑な接続が妨げられるおそれがある。

(2)網機能提供計画の意義
   不可欠設備を有する特定事業者が存在する電気通信市場においては、他事
  業者は当該特定事業者の網機能を使ってサービスを提供せざるを得ない。
   このような状況の中で、サービス開発に関する特定事業者と他事業者の公
  正有効競争条件を確保し、円滑な接続を推進するためには、特定事業者に対
  し、不可欠設備に関する網機能の追加・変更に関する情報を記載した網機能
  提供計画の公表を義務づけることが適当である。

2 網機能提供計画の記載事項
(1)網機能提供計画の記載事項及び公表時期
   網機能提供計画には、他事業者が接続可能性を検討できる程度の詳細な情
  報を記載する必要がある。また、公表時期については、網機能の詳細仕様等
  がある程度固まる時期及び網機能提供計画の公表を受けて関係者が検討に要
  する期間を考慮すると、特定事業者は、網改造着手の遅くとも半年前までに、
  当該詳細な情報を網機能提供計画に記載する必要がある。

(2)負担すべき費用の扱い
   他事業者の接続申込みの判断には、負担すべき費用の水準は極めて重要な
  要因であることから、特定事業者は、網機能提供計画公表の段階で、他事業
  者が負担すべき費用について、その算定の透明性を高めるために算定方式・
  費用項目を示すとともに、他事業者の接続申込みの判断の目安となるよう、
  概算費用を可能な限り詳細に示すよう努めるべきである。

(3)自己使用の網機能の扱い
   上記(1)の考え方に従い、網機能提供計画を公表する場合において、特
  定事業者の自己使用の網機能(特定事業者が自らエンドユーザー向けに提供
  しているか又は提供を予定しているサービスに用いる機能)については、企
  業秘密事項であり公表対象になじまないとの考え方もある。
   しかし、公正有効競争条件の確保、円滑な接続の推進という網機能提供計
  画の趣旨にかんがみ、特定事業者と他事業者との網機能利用の同等性の検証
  を可能とするとともに、網機能公表に当たっての特定事業者の恣意を排除す
  るため、特定事業者の網機能については、可能な限りオープンにされ、基本
  的に公表対象とすべきである。
   したがって、特定事業者は、自己使用の網機能についても、その性格上他
  事業者の利用が到底見込まれないものを除き、網機能提供計画の策定等の段
  階において、その概要等を公表するとともに、その後の他事業者の意見反映
  手続において、他事業者からさらに詳細な情報の開示要求があった自己使用
  の網機能については、当該他事業者に詳細な情報を開示することが適当であ
  る。

3 アンバンドルについて
  特定事業者に網機能提供計画策定を義務づけても、当該計画にアンバンドル
 に関する記載がないと、どのような接続を行うかを他事業者が検討するのに支
 障を来す。したがって、網機能提供計画において、アンバンドルの有無及び程
 度に関する情報を公表することが必要である。具体的な方法としては、新しい
 技術やサービスの登場を契機に網機能提供計画への網機能の記載が行われるの
 で、特定事業者に対し、まず最低限基本的な伝送・交換に係る機能等について
 アンバンドルを義務づける。
  その上で、それ以外は他事業者が特定事業者と同等の条件でサービスを提供
 できるレベルにまでアンバンドルすることを基本的考え方として、他事業者の
 意見反映手続の過程でできるだけアンバンドルを促進する。

4 網機能提供計画の策定手続等
(1)他事業者の意見反映及び国の関与
   特定事業者と他事業者の公正有効競争条件を確保し、円滑な接続を推進す
  る観点から、網機能提供計画に他事業者の意見を反映させるための手続を整
  え、さらに他事業者の意見反映を担保するための国による関与の手続を整え
  る必要がある。
   具体的な方法としては、網機能提供計画に他事業者の意見を反映させるた
  め、特定事業者に対し、説明会の開催、他事業者の意見に対する回答(他事
  業者からの要求による網機能に関するさらに詳細な情報の開示も含む。)及
  び他事業者からの意見に関する処理状況についての郵政大臣への報告を義務
  づけることが適当である。また、網機能提供計画の内容に関して、他事業者
  の意見が反映されることを担保するため、網機能提供計画への他事業者の意
  見反映手続において、特定事業者と他事業者との協議が不調に終わった場合、
  郵政大臣が勧告等の形で関与すべきである。

(2)網機能提供計画の公表方法
   網機能提供計画については、関心を有する者がその内容を知ることができ
  るとともに、さらに詳細な情報を希望する者にはこれを提供することが必要
  であるため、その概要を官報において公表するとともに、特定事業者の営業
  所等において全体を閲覧に供することが適当である。

第10節 反競争的行為の防止

1 現行制度
  現在、電気通信事業法第36条においては、「第一種電気通信事業者が接続
 の提供について特定の電気通信事業者に対し不当な差別的取扱いを行っている
 ため、公共の利益が著しく阻害されるおそれがあると認めるとき」に業務改善
 命令が可能とされているが、この要件においては、
 1.接続の意図的な遅延
 2.接続に不要な書類の提出要求
 といった円滑な接続を阻害する行為に対して的確に対応することは困難な状況
 にある。

2 業務改善命令の要件及び手続の見直し
  上記1の状況を踏まえ、現行業務改善命令要件を抜本的に見直し、円滑な接
 続を阻害する反競争的な行為に対し、的確に対応することを可能とする。
  なお、この措置は、特定事業者のほか他事業者の接続についても適用するこ
 ととする。
  これと併せて、苦情申告窓口の設置、業務改善命令の具体的な運用基準の作
 成等業務改善命令の決定手続の整備を行うべきである。


第V章 その他

1 多数事業者間接続の取扱い
  今後、多数の事業者が複雑に接続されていく状況において、接続協定の締結
 が円滑に行われることが、競争の促進及び利用者利便の増進の観点から必要で
 あるが、第III章において述べた第一種電気通信事業者に対する接続の義務
 化、接続協定の公開、料金表・約款手続の利用及び裁定手続の活用の容易化等
 によって、多数事業者間の接続の円滑化が図られる。

2 相互接続と業務委託の関係
  現在業務委託されているもののうち、恒久的にネットワークを物理的に連結
 する形態のものについては、接続と同様の問題が生じるおそれがあるため、接
 続ルールの準用を可能とすべきである。
  具体的には、国際電気通信事業者の国内伝送業務が該当する。

3 赤字負担の在り方
  特定事業者のサービスの赤字については、原則として他事業者に負担を求め
 ることは認めるべきではなく、仮に、赤字負担に一定の合理性がある場合にお
 いても、負担の水準については、赤字解消に向けて経営改善努力を行うことを
 考慮して決定されるべきである。

4 新ルールへの移行までの経過措置
  事業者間において、可能な限り今般のルールの趣旨を踏まえた接続協定を締
 結すること、及び接続協定の認可、接続命令・裁定の基準として今般のルール
 を可能な限り適用することにより、現行制度下において実施可能なものについ
 ては早急な実現を図るべきである。


別 紙1        接続ルールのフローチャート

I.第一種電気通信事業者の場合
接続ルールのフローチャート第一種電気通信事業者の場合
II−1.特定事業者の場合
 (1)新規サービスの場合
接続ルールのフローチャート特定事業者の場合新規サービスの場合
II−2.特定事業者の場合
 (2)既存サービスの場合
接続ルールのフローチャート特定事業者の場合既存サービスの場合
II−3.特定事業者の場合
 (3)個別協定の場合(第一種電気通信種事業者と同じ)
接続ルールのフローチャート特定事業者の場合個別協定の場合(第一種電気通信種事業者と同じ)
別 紙2     不可欠整備管理収支型接続会計の概念図
不可欠整備管理収支型接続会計の概念図
別 紙3   接続会計の設備区分のイメージ(NTT電話網の場合)
接続会計の設備区分のイメージ(NTT電話網の場合)
別 紙4         アンバンドルの対応図
アンバンドルの対応図
別 紙5        接続関連費用の負担の在り方
接続関連費用の負担の在り方



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