発表日 : 2月13日(木)
タイトル : 第95回電気通信技術審議会議事録
第1 開催の日時及び場所
平成8年11月25日(月) 午後2時から 於、郵政省3階第二特別会議室
第2 出席した委員等(敬称略)
1 委員
西澤 潤一(会長)、徳田 修造(会長代理)、太田 亨、金子 尚志、
國井 秀子、倉内 憲孝、小舘 香椎子、坂田 浩一、関澤 義、高橋
寛子、長尾 真、長谷川 豊明、羽鳥 光俊、森島 展一、安田 靖彦
2 専門委員
古川 弘志(地上データ放送委員会 委員長代理)
第3 出席した関係職員等の所属及び氏名
1 郵政省
堀之内 久男(大臣)
2 大臣官房
天野 定功(官房長)、高田 昭義(官房総務審議官)、甕 昭男(技術総括
審議官)、鍋倉 真一(官房審議官)、高祖 憲治(官房審議官)、長谷川 憲
正(国際部長)
3 通信政策局
木村 強(局長)、鬼頭 達男(技術政策課長)、河内 正孝(標準化推
進室長)
4 電気通信局
谷 公士(局長)、田中 征治(電波部長)、竹田 義行(計画課長)、
寺崎 明(移動通信課長)、稲田 修一(技術管理室長)
5 放送行政局
楠田 修司(局長)、小林 哲(放送技術政策課長)
6 通信総合研究所
古濱 洋治(所長)、箱石 千代彦(次長)
7 事務局
渡辺 信一(審議会室長)
第4 議題
1 一部答申 諮問第81号「携帯電話等の周波数有効利用方策」のうち「デ
ジタル方式携帯・自動車電話へのパケット通信技術の導入」
2 一部答申 諮問第83号「地上データ放送の技術的条件」のうち「副搬送
波を利用した伝送路による地上データ放送の技術的条件」
3 新規諮問 「電波利用における人体防護の在り方」
4 審議開始 「高度情報社会を展望した電気通信の標準化に関する基本方策
について」
5 その他
第5 審議の概要
1 開会
○渡辺審議会室長 それでは定刻になりましたので、第95回電気通信技術
審議会を開催致します。
(1)大臣あいさつ
○渡辺審議会室長 議事に先立ちまして、新しく郵政大臣に就任致しました堀
之内郵政大臣からごあいさつ申し上げます。
○堀之内郵政大臣 このたび郵政大臣を拝命致しました堀之内 久男でござい
ます。西澤会長を初め委員の皆様には、平素より格段のご支援とご高配を賜
り、厚く御礼申し上げます。
皆様ご存じのとおり、本年7月に科学技術振興基本法に基づき科学技術基
本計画の閣議決定が行われたところであります。郵政省と致しましても、こ
の時期を逸しないよう、ご答申頂きました情報通信研究開発基本計画に則り、
77の重点研究開発プロジェクトを推進し、研究・開発の充実を図ってまい
る所存でございます。
また、昨今の携帯電話の急速な普及に見られますように、私たちの周りで
電波の利用が急速に進んでおりますが、電波は有限で貴重な資源であること
から、効率的な周波数の利用を推進する必要があります。
他方、電波利用につきましては、電磁波による人体への影響や電波による
医療用機器の誤作動等が社会的にクローズアップされています。このため、
電波の活用方策だけでなく、いわゆる電波利用の影の部分にも十分対応し、
国民が安心して通信機器を利用できるよう、さらに研究を推進してまいりた
いと存じます。
放送につきましては、本年6月より衛星デジタル多チャンネル放送が開始
されているところであります。デジタル化を中心とした放送技術の革新によ
り、視聴者の利便性の向上、放送事業の新たな展開、産業全般への波及効果
の向上が図られるよう、今後とも積極的に施策を展開してまいる所存であり
ます。
最後になりますが、情報通信は21世紀のリーディング産業として、また
社会経済構造の改革の切り札として期待されております。郵政省と致しまし
ては、情報通信基盤の全国整備、活力ある情報通信産業の形成、研究開発の
推進等、総合的な施策の展開を図ることによって、高度情報通信社会の構築
を加速してまいりたいと存じますので、委員の皆様にもより一層のご指導と
ご支援を賜りますようお願い申し上げまして、私のごあいさつと致します。
○渡辺審議会室長 大臣は公務多忙につきまして、恐縮ですがここで退席させ
て頂きます。
〜 堀之内郵政大臣 退席 〜
それでは次に議事の確認を致します。本日の議事は議事次第にありますと
おり、4件を予定しております。まず一部答申として諮問第81号「携帯電
話等の周波数有効利用方策」のうち「デジタル方式携帯・自動車電話へのパ
ケット通信技術の導入」について。また、諮問第83号「地上データ放送の
技術的条件」のうち「副搬送波を利用した伝送路による地上データ放送の技
術的条件」についてご審議頂きます。次に新規諮問として「電波利用におけ
る人体防護の在り方」についてご審議頂きますとともに、審議開始として
「高度情報社会を展望した電気通信の標準化に関する基本方策について」ご
審議頂くこととしております。また、電気通信技術審議会平成9年の開催予
定についてお諮りすることとしております。
次に配布資料の確認をさせて頂きます。お配りしております資料は、上か
ら順に、議事次第、第94回電気通信技術審議会議事録(案)、これは委員
の方のみにお配りしております。次に本日の説明資料ですが、資料95−1
と2、これは携帯電話等周波数有効利用方策委員会報告概要及び報告でござ
います。資料95−3 答申書(案)(諮問第81号「携帯電話等の周波数
有効利用方策」のうち「デジタル方式携帯・自動車電話へのパケット通信技
術の導入」)でございます。資料95−4、5、6 地上データ放送委員会
報告概要、報告及び報告参考資料でございます。資料95−7 答申書(案)
でございます。資料95−8 諮問書(諮問第89号「電波利用における人
体防護の在り方」)。資料95−9 委員会の設置について(案)。資料9
5−10 委員会の委員長及び所属委員、専門委員の指名。資料95−11
標準化政策部会の審議開始について。資料95−12 標準化政策部会の部
会長、委員及び専門委員の指名について。資料95−13 専門委員の変更
について。資料95−14 電気通信技術審議会平成9年の開催予定につい
て(案)。以上でございます。
配布資料で漏れているものはございませんでしょうか。よろしければ、早
速ですが西澤会長、よろしくお願い致します。
2 議事
○西澤会長 それでは議事に入らせて頂きたいと思います。
最初に、前回の会合の議事録案が事務局から示されております。あとでご
らん頂きまして、ご意見等がございましたら、今週中に事務局までご連絡を
お願い致したいと思います。その後、公開ということに致します。
それではお手元の議事次第に従いまして、議事を進めさせて頂きます。
(1)一部答申 諮問第81号「携帯電話等の周波数有効利用方策」のうち「デ
ジタル方式携帯・自動車電話へのパケット通信技術の導入」
○西澤会長 まず最初に議事の1、一部答申「携帯電話等の周波数有効利用方
策」のうち「デジタル方式携帯・自動車電話へのパケット通信技術の導入」
の審議に入らせて頂きます。
最初に、携帯電話等周波数有効利用方策委員会の委員長をお願いしており
ます安田先生から、委員会での検討結果についてご報告を頂きたいと思いま
す。
○安田委員 それではご報告申し上げます。携帯電話等周波数有効利用方策委
員会は、周波数有効利用に関する検討を続けておりますが、このたびパケッ
ト通信導入についての部分がまとまりましたので、ご報告を申し上げるとい
うことでございます。
ご案内のとおり、最近、携帯電話等の伸びが非常に大きいわけでございま
して、携帯・自動車電話につきましては1,600万加入と言われておるわ
けです。またPHSにつきましては500万台近くの加入があるという状況
でございます。
一方ではインターネットの爆発的な普及に代表されますようなマルチメデ
ィアといいますか、データ通信、中身は信号的に言えばデータでありますが、
データ通信の伸びも非常に大きなものがあるわけです。
モバイルの関係でも、パーソナル・デジタル・アシスタント、PDAと言
われるような携帯情報端末等いろんな形のものが出ております。モバイルの
方でもインターネットのような、あるいは電子メールを行う。現に、いま一
部行われておるわけでありますが、今後、その辺が伸びていくだろうと予想
されるわけであります。
現在、行っておりますデータ通信は、アナログの場合はモデムをつける。
デジタルの携帯電話につきましても一種のアダプターをつける。いずれに致
しましても、音声の信号と同じような扱いをしてやっておるわけであります。
音声とデータはトラフィックの性質が非常に違います。例えば遅延に関する
許容度が大きく違うとか、いろんな性質の違いがあるわけでございます。
現在の携帯電話の料金でいきますと、データ通信の場合、多くは使ってい
て非常に高く感じられる。と言いますのは、接続していても、データの場合
は本当に情報が送られるのはわずかな時間であって、大部分の時間は情報が
送られていない。それにもかかわらず、回線使用料は取られる。現在の方式
ではこういうことになるわけです。
それは一方では周波数利用効率が非常に悪いということでありまして、そ
の周波数利用効率を上げるということと、ユーザーにとっては料金を下げる
可能性があるという両面から、パケット方式を導入することが妥当である。
結論から言いますと、そういうことになっているわけです。
パケットと回線という言葉が出ました。皆さんにご説明するまでもないと
思いますが、概要の3ページにございます。上の方が無線におけるパケット
通信の説明図でありますが、ここでは1つのチャネルを複数のユーザーが共
用することができる。パケット通信というのは、要するに郵便の小包、手紙
の封筒のようなものであります。情報を封筒に入れて、それに相手先と自分
のラベルをつけて回線に送りだす。
従って1つの回線をいろんな人で共用することができる。ラベルがついて
おりますので、1つずつの包みを区別できるわけであります。そういう使い
方ができるわけでありますが、一方ではたくさんの人が1つの回線を使えば、
当然、1人当たりに送れる情報の量は少なくなりますから、スループットの
方は下がってくるということです。逆にスループットは下がっても、たくさ
んの人で共用できるあるいは呼損がないというところに特徴があります。
一方の回線交換の方ですが、これは通話中は1つの回線を完全に一対のペ
アの人が占有してしまいます。従ってそこで実際に情報を流しているか、流
していないかに関係なく、その回線を占有する。ほかの人は使えないという
ことになるわけです。そうしますと、回線に限りがありますから、同時に使
用しようとする加入者の数が増えれば、そこで呼損が起こってしまうという
問題が起こります。そのかわり、いったん回線をつかまえれば、スループッ
トの方はほかの人の影響を受けずに使えますから、コンスタントである。こ
ういうメリット、デメリットがあるわけです。
いま申しましたパケット通信の特徴、適応領域を表示して示しましたのが
資料95−2の報告の3ページ目、表1に、いま申しましたようなことが書
いてございます。表1、パケット通信システムの特徴と適応領域。上の方が
パケットで下が回線交換の場合です。
データ通信にもいろいろありまして、インタラクティブな会話型のコンピ
ューター間通信。コンピューターと端末との間の通信等にはパケット交換が
向いております。一方、ファイル転送のような大量のデータを連続的に流す
というファイルトランスアップのような場合は、むしろ回線交換が適してお
ります。ファックス等もどちらかというと、大量のデータを一遍に流すとい
う方向になりますので、回線交換の方がいい。こういうことであります。
周波数の有効利用の点から、どのくらいのユーザーがいれば、パケット通
信のチャネルを設けるのが有効利用になるかならないかという点で、いろん
な検討を行いました。
ここで考えておりますのは、従来のデジタル型の自動車・携帯電話のシス
テムの中でフルレート。現在はフルレートとハーフレートが混在しておりま
す。フルレートと言いますのは、50kHzのバンド幅の中にキャリアを立
てまして、そこに42kbpsの伝送スピードで情報を流すのですが、その
42kbpsに3つのチャネルを乗せる。時分割でタイム・ディビジョン・
マルチプル・アクセスで3つの自動車の電話チャネルを乗せるのがフルレー
ト方式でございます。
実際は42kbpsのうちに共通部分に必要なオーバーヘッドであるとか
制御のために必要な部分を除きますと、42を3で割ったものよりもう少し
少なくなりまして、1チャネル当たり11.2kbpsという伝送スピード
になっております。
現在はさらにそれではもったいないというので、ハーフレートといいまし
て、その半分の5.6kbps。音声コーディックが進歩致しまして、そう
いう5.6kbpsのハーフレート化が現在、進められているわけでありま
す。
細かい話になりますが、パケット通信は、フルレートの11.2kbps
のチャネルを基本と致しまして、このチャネルに、10MHzのバンド幅を
取りまして、そこに110チャネル、各セルについて3つのセクターを用意
致します。各セクターについて110チャネル。その110チャネルについ
て1つのパケット用の専用チャネルを設けるのが、周波数有効利用の点で得
であるという限界点。音声も含めた全体の加入者の中で、データ通信の加入
者の割合がどのくらいになれば、専用チャネルを設けるのが得であるという
ところをトラフィック的ないろんな仮定をおいて計算致しました。
その辺を説明したものとして資料95−2の7ページにパケット方式と回
線交換の周波数利用効率の比較モデルがあります。個人ユーザーもあれば、
ビジネス用のユーザーもある。それから電子メールもあれば、World
Wide Webのホームページにアクセスするような使い方もある。ある
いは業務用の場合は、それぞれの会社のデーターベースにアクセスする。こ
こに書いてあるようないろんな仮定をおきまして計算致しました結果、1.
3%のデータ加入者比率になれば、従来のような回線交換よりも、パケット
専用チャネルを設ける方が周波数有効利用につながるという結論になりまし
た。
次に、それでは将来のデータ通信の需要の予測はどうなるかということで
あります。
その前に、ただいま申しました結論の部分として、11ページの表4がご
ざいます。これを見て頂きますと、パケット専用チャネルを設けるのが得に
なるような限界のデータ加入者比率というものが、トラフィックのパターン
として電子メールプラスホームページアクセス、あるいは個人ユースとビジ
ネスユースとの比率の問題などとした場合が示されております。
いずれにしても個人ユースだけの場合が一番厳しいわけであります。その
ときの条件が1.3%ということになります。
これは1つの結論ですが、これからデータ通信の需要予測はどうなるか。
これもなかなか、いままで需要予測は幾つも行われていますが、大抵当たっ
ていないのでありまして、今回も難しいのでありますが、何かのレグナンス
になるものを参考にしながら予測する方法として、あるパソコン通信ネット
ワークの加入者の推移を1991年から95年まで調べたわけです。13ペ
ージの表5をを見ていただけますでしょうか。1991年、一番上のところ
に書いてありますが、205万加入、92年が35万加入と95年までの5
年間のパソコン通信の加入者の推移が書いてあります。これを91年を1と
して、倍率でいきますと、92年が1.7、2.3、3.1、4.7という
具合になるわけです。この割合と同じような割合で、携帯電話を使ったデー
タ通信の伸びが同じような推移を取るという仮定をおきまして、現在の19
96年の古い時点ですが、携帯電話の加入者数が1,362万、この計算を
やった時点ではこういう数字でした。
携帯電話の加入者の伸びというのは、以前ここでご報告致しました一部答
申の中で、データではなくて携帯電話の加入者の伸びを予測しております。
その予測に対して、データ通信の割合がパソコン通信ネットワークで伸びた
のと同じような割合で伸びると仮定してパーセントを掛けてやる。そう致し
ましたのが、この下の数字であります。
ただ、これだけですと、最近のインターネットの爆発的な急激の伸びは入
ってきませんので、さらにその辺のところを加味して予測致しましたのが、
一番下に書いてある「全加入者数に占めるデータ通信を行う加入者数の推移」
というものであります。
こういう結果を見てみますと、現在、既に1.3%を超えているわけであ
ります。将来、さらにパーセントが増えてくるということでございますので、
データ通信用の専用チャネルを設ける必要性、妥当性がこれで示されるわけ
でございます。
その辺のところを示したのは、概要の2ページ目に図が書いてございます。
これは横軸に来年を起点として、2000年までの年が取ってあります。縦
軸が全加入者に対するデータ通信を行う加入者の割合。太い線が1.3%と
いう限界のパーセンテージ。これより上に行けば、データ通信専用チャネル
を設ける意味が出てくるというわけであります。
これらは予測でありまして幅が非常に大きいわけであります。予測の下限
の方、一点鎖線でいきましても現在、既に超えておりまして、さらにだんだ
ん増えてくるという予測になるわけであります。上限の方ははるかにこれを
超えるというわけであります。
そこでそういうデータ通信チャネルを設ける妥当性が出てくる。データ通
信チャネルの具体的なものは、現在のデジタル携帯・自動車電話のものと基
本的には同じ。そのフルレートの信号構成と同じに致します。1つのチャネ
ルをデータ専用チャネルとして使って、それを複数のデータ通信の加入者で
共用する。
ずっと増えてくれば、さらにそれを1本ではなくて2本、3本と増やすこ
とは当然、考えられると思うわけでございます。当面は、1チャネル設ける。
先ほど言いました110チャネルのうちに1チャネル設けるというわけであ
ります。
最後に、この技術的条件ということで概要の(4)に述べてあります。こ
れを読み上げますが、パケット通信方式の技術的条件については現行のデジ
タル方式携帯・自動車電話システムの技術的条件(平成2年度電気通信技術
審議会答申)に基づいたフルレートを基本単位とした構成とし、送信速度は
フルレート同様に11.2kbpsを原則とするということになっておりま
す。
以上、簡単でございましたが、ご報告致しました。
○西澤会長 どうもありがとうございました。ただいまのご報告につきまして、
ご審議をお願いしたいと思います。
ご質問ございませんでしょうか。
今度のデジタル携帯・自動車電話等によりますパケット通信とPHSとは
どういう関係になるか、ご説明頂けますか。
○安田委員 PHSにつきましては、現在、また別に検討が進んでおります。
ですから一応、別物とお考え頂きたいと思います。PHSの方はもっとスピ
ードが速くできると思います。詳しいことは省側からお願いできますか。
○寺崎移動通信課長 移動通信課長でございます。PHSの方は32チャネル、
32kbpsでやっておりまして、データ通信、基本的には回線交換という
ことで、標準方式のPIAFSというのが民間規格で、いま作成されており
ます。PHSの中でパケットをやっていこうという話はまだ、具体的な検討
にはのっておりません。
○西澤会長 ほかにございませんでしょうか。
それではご質問、ご意見がないようでございますので、携帯電話等周波数
有効利用方策委員会報告を了承させて頂くことに致しまして、資料95−3
に示した答申書の案にありますように、諮問第81号に対する一部答申とし
たいと思いますが、ご異議はございませんでしょうか。
よろうしゅうございますか。それではご異議がないようでございますので、
本件を一部答申することにさせて頂きます。安田先生、携帯電話等周波数有
効利用方策委員会でのご検討と取りまとめ、ありがとうございました。
ただいまの答申に関しまして、答申後の行政上の措置につきましては、郵
政省側からご説明を頂けるそうでございますので、よろしくお願い致します。
○谷電気通信局長 電気通信局長の谷でございます。ただいまは携帯電話等の
周波数有効利用方策の一部答申として、デジタル方式携帯・自動車電話への
パケット通信技術に関するご答申を頂きまして、まことにありがとうござい
ました。先ほど安田先生からのお話にもございましたように、最近の携帯電
話等の移動通信分野における成長ぶりというのはまことに目を見張るものが
ございます。
このことは国民の利便あるいは経済の活性化という観点からは、大変結構
なことでございますけれども、反面、携帯電話等の周波数が逼迫しつつある
という事態等も招いております。このような状況に対応するため既に本年4
月、2000年までの携帯電話等の周波数利用方策について一部ご答申を頂
いたわけでございます。今回のご答申は、それを受けてのものであると理解
しております。パケット通信方式は複数のユーザーで同一チャネルを使用す
るので、周波数の利用効率が高く、そのため携帯電話等の急速な需要に対応
することが可能でありまして、郵政省としても大変結構なことと考えており
ます。
私どもと致しましては、ただいま頂戴致しましたご答申を受けまして、で
きるだけ早期に関連規定の改正等の措置を取っていきたいと考えております。
委員の皆様、専門委員の皆様、大変ご多忙にもかかわらず、熱心にご審議頂
きまして、今回のご答申をおまとめ頂きましたことに対して、改めて厚くお
礼を申し上げます。
私どもと致しましては、今後とも携帯電話等の周波数有効利用を積極的に
推進していく所存でございますので、引き続き、積極的なご審議をお願い致
します。まことにありがとうございました。
(2)一部答申 諮問第83号「地上データ放送の技術的条件」のうち「副搬送
波を利用した伝送路による地上データ放送の技術的条件」
○西澤会長 それでは次の審議に入らせて頂きたいと思います。
一部答申「地上データ放送の技術的条件」のうち「副搬送波を利用した伝
送路による地上データ放送の技術的条件」の審議に入らせて頂きます。
最初に地上データ放送委員会の委員長代理をお願いしております専門委員
の古川先生にお越し頂いております。古川専門委員から委員会での検討結果
について、ご報告をお願いしたいと思います。よろしくお願い致します。
○古川専門委員 専門委員の古川でございます。坂庭委員長が欠席でございま
すので、委員長代理としてご報告申し上げさせて頂きます。
お手元の資料は、資料95−4、95−5。それには別添の厚い冊子がつ
いております。それから95−6。この3つでございます。
本来ですと報告書によるのですが、分量が多いため報告概要ということで
資料95−4にまとめてございますので、これに基づきまして地上データ放
送委員会の検討結果についてご報告申し上げます。
審議事項と致しましては、諮問第83号、昨年9月に頂いた地上データ放
送の技術的条件がございます。その中で副搬送波を利用した伝送路による地
上データ放送の技術的条件と、その他の伝送路による地上データ放送の技術
的条件につきまして審議を行いました。
委員会の構成でございますけれども、7ページに別表をつけてございます
坂庭委員長以下17名の専門委員によって実施致しました。
まず審議の背景でございますが、放送の利用につきましては、いろんな形
の多様化、高度化が進展致しております。特に衛星データ放送につきまして
は、放送衛星に関しまして平成5年6月に、また通信衛星に関しましては平
成6年6月に一部答申が行われまして、それぞれデータ放送が実施されてお
ります。ニュース等の文字、図形情報のほかにいろんな情報提供をやれるよ
うになっています。
一方、地上テレビジョン放送につきましては、こちらのメディアも使いま
して、多重したいということで、既に垂直帰線消去期間を利用致しました伝
送路の問題は済んでおるのでございますが、副搬送波を利用した伝送路また
は新たな伝送路を用いることによってデータ伝送を行いたいという必要があ
るわけでございます。
審議に当たりましては、既存の放送との両立性、整合性を図りつつ、かつ
今後のデジタル放送の導入を踏まえまして、地上テレビジョン放送によるデ
ータ放送の円滑な導入に資するために、地上データ放送の技術的条件のうち
副搬送波を利用した伝送路による地上データ放送の技術的条件を検討したわ
けでございます。
答申の位置づけと致しましては、この副搬送波を利用しました伝送路によ
りまして、各種のデータが伝送できまして、番組内容が柔軟な放送サービス
の実現が可能となること。また、将来的には多様なサービスの展開に対する
拡張性に富んだ地上データ放送が可能になるということでございます。
審議経過でございますが、昨年11月に垂直帰線消去期間を利用致しまし
た技術的条件について審議会として一部答申したところでございます。その
答申以降、副搬送波を利用致しました技術的条件につきまして、審議を行っ
たところでございます。アからエに掲げてありますように、4回の委員会を
開催致しております。
第4回目には、技術的条件に係る検討条件というものの審議を行いました。
5回目には室内実験の検討、審議。6回目には野外国定受信実験あるいは移
動受信実験の検討を踏まえた審議を行いまして、7回目に委員会の報告と一
部答申案を取りまとめております。
なお、第3回目に地上データ放送の技術的条件につきまして、全般にわた
りまして、帰線消去の期間を利用するもの、副搬送波を利用するもの、その
ほかの伝送路を利用するものにつきまして、外部の意見を聴取致しましたけ
れども、所定の期日までに意見の申し出はございませんでした。
5番目に審議の概要でございます。まず最初が音声副搬送波を利用した伝
送路による地上データ放送でございまして、その検討条件を[1]から[3]
に記載してあります。[1]が高速走行移動受信での利用においても良好に
受信ができること。[2]が既存テレビジョン受信機に妨害を与えないこと。
[3]が下層階、これはプロトコルの階層のことでございますが、下位階層
においては既に制度化されている「ファクシミリ多重放送」との整合を図る
こと。それから上位階層におきましては、これも既に制度化・実用化さてお
ります垂直帰線消去期間を利用致しました地上データ放送、VBI(バーチ
カル・ブランキング・インターバル)方式での整合を図ることと致します。
具体的な技術的条件の検討でございますけれども、まず音声副搬送波の周
波数と最大周波数偏移の問題でございます。四角に囲んでありますのは、結
論でございます。地上データ放送の音声副搬送波方式に適切な音声副搬送波、
以下「データ信号副搬送波」と申しますけれども、その周波数やデータ信号
による主搬送波の最大周波数偏移につきましては、4.5fHと7.5fH。
fHと申しますのは、水平同期の周波数でございまして、15.73kHz。
具体的にはもっと細かい数字になりますが、約15.73kHzでございま
す。したがいまして、搬送波の周波数はそれぞれ70.804kHz、11
8.007kHzという搬送波になります。それぞれの最大周波数偏移は妨
害を受けたり与えたりということで関係致しますけれども、4.5fHにつ
きましては±3kHz、7.5fHにつきましては±6kHzが適当である
ということでございます。
まず4.5fHのデータ副搬送波の周波数偏移の拡大についてでございま
すけれども、これは既に当審議会の第15号答申によりまして、ファクシミ
リ放送を多重する場合の基準につきましては、4.5fHで±2kHzの周
波数偏移とすることが適当であるということでございました。これは当時の
受信機の性能等も実験の結果求めて、こういう値が出ておったわけでござい
ます。その後、受信機の性能向上等を踏まえまして、各種の実験を行いまし
た結果、これの拡大ができるということで、±3kHzでも両立性があるこ
とが確認されました。この問題につきましては、実際の放送波を使った野外
実験等でも確認されております。
次のページにまいりまして、7.5fHのデータ信号副搬送波の追加と偏
移でございます。4.5と7.5の間には、5.5と6.5というfHも利
用することが考えられるわけでございますけれども、これは先般のファクシ
ミリ放送の多重のときにいろいろ検討した結果、5.5と6.5fHのもの
については、4.5、7.5fHのものよりも妨害を受けやすいということ
で除外しております。7.5については、検討致したのでございますが、そ
の当時では7.5は使えなかったというものでございます。
このたびは7.5におきましても両立性の実験の結果、±6kHzの偏移
を行っても妨害を与えないということが確認されております。
(ウ)でございますけれども、データ信号の伝送特性でございます。デー
タ信号へ妨害を与える要因と致しましては、低受信入力電圧、インパルス雑
音、バズ妨害。これは先ほどの15.73という水平同期信号の周波数が漏
れて入ってくるという妨害でございます。同一または隣接チャネルの混信及
び反射波というものがございます。
これらを考慮致しまして、ビット誤り率あるいはパケット誤り率を室内実
験、野外実験により調査致しましたけれども、特段、問題のないことが確認
されております。
それからテレビ放送の場合には、当然、CATVの設備というもので再放
送される形が多くあります。こういうデータ放送をした場合に、CATV設
備への妨害がどうかということで実施致しました。これも受信実験、室内実
験等を行いまして、問題ないということがわかっております。
そのほか、今回考えました副搬送波を利用致しました方式というものは、
移動性があるものですから、主なサービス形態としては、移動受信が主たる
ものになるだろうということも考えますと、ますますCATV受信というも
のに対しては問題ないということに結論づけております。
それから送信の技術基準でございますけれども、プロトコルの階層モデル
でございます。別図でございまして、6ページに書いてございます。階層は
7レイヤーございまして、階層1が伝送路。階層2がパケットといいますか、
データライン。階層3がデータパケット。階層4がデータグループ。階層5
が番組。階層6が提示。階層7が応用といったレイヤー分けに致しましたと
きに、階層1、2に相当致しますところだけは伝送路によりますので、4.
5の周波数偏移の拡大したもの。あるいは7.5fHのものを利用するとい
うことに致しまして、そのほかの問題につきましては、ファクシミリのとき
の答申に準拠することが適切であるというふうに結論づけております。
なお、諮問第15号の答申におきましては、FM多重放送におきまして変
調方式としてL−MSKという振幅制御のMSK方式を採用致しております。
これはステレオチャネルに対する妨害を軽減するという意味から、こういう
変調方式が取られたわけでございます。今回の変調方式と致しましては、差
動4相PSK。特にL−MSK方式を取らなくても大丈夫ということで、第
15号答申と同じようなものと致しております。
5ページに戻りまして、地上データ放送のVBI方式との整合でございま
す。先ほどの階層の3以上でございますけれども、こちらにつきましては既
にでき上がっております地上データ放送のVBI方式に準拠することが適当
です。ただし伝送データの送出タイミングと時計校正の位置につきましては、
一方はブラッキングを使っております方式でございまして、こちらの搬送波
の方は連続的な時間を使った方式でございます。これは違った方式を採用し
たいと思いますけれども、そのほかにつきましては、地上データ放送のVB
I方式と同じにすることが適切であるという結論を得ております。
枠で囲みました下に書いてありますように、既にありますVBI方式に準
拠することが適当であるということと、ただいま申し上げました伝送データ
の送出タイミングと時計校正については別途定めることとしたということで
ございます。
以上が副搬送波方式の検討結果でございまして、(3)に書いてあります
のは、その他の伝送路を利用した地上データ放送の技術的条件というもので
ございます。この伝送方式と致しましては、いろいろ、いま実験等が行われ
ております。例えば映像キャリア周波数の直交変調方式を使う、あるいは映
像副搬送波方式を使う等いろいろ検討されております。これらの問題につき
ましては、今後の技術進展がまだいろいろとあろうということが想定できま
す。
したがいまして、またVBI方式、それから今回まとめました音声副搬送
波方式の地上データ方式の実用化状況、今後のデジタル技術の進展、放送の
多様化の動向等の進展等を踏まえて、必要な時点で検討を行うことが適当で
あると考えております。
以上の結果でございますけれども、ここには書いてございませんが、報告
書に書いてございます。審議の結果と致しましては、「地上データ放送の技
術的条件」のうち「音声副搬送波を利用した伝送路による地上データ放送の
技術的条件」につきまして、別添の厚い冊子にまとめたところでございます。
なお、先ほど申し上げましたように、その他の伝送路を利用致しました地
上データ放送の技術的条件につきましては、今後のデジタル技術の動向や放
送の多様化の動向等を見まして、必要な時点で検討を行うことが適当かと思
います。
したがいまして、地上データ放送の技術的条件につきましては、本一部答
申をもって完結することとしたらいかがかというふうに考えます。以上でご
ざいます。
○西澤会長 どうもありがとうございました。
それではただいまのご報告につきまして、ご審議をお願いします。ご質問、
ご意見お願いします。
○安田委員 ただいまのお話にもありましたように、データ放送の関連のもの
は随分いろんなものがございます。ファクシミリ放送であるとか、文字放送
であるとか。信号の送り方もテレビジョンの垂直帰線の期間を利用するとか、
サブキャリアを利用するとか、FM多重とかいろいろございます。
既に標準が設定されてから、時間の経っているものもあるわけで、その利
用状況はどうなっているのか。その辺のところを教えて頂きたい。
○古川専門委員 省側の方からお願いしたいと思います。
○小林放送技術政策課長 放送技術政策課長の小林でございます。利用状況に
つきましては、データ多重、文字多重に類するものとしましては、約10年
前にテレビジョンに文字多重というものでテレテキストのサービスが始まっ
ております。ご承知のとおり、必ずしも一般に広く普及しているという状況
にはありませんが、着実に伸びている状況にあります。
また、データ多重につきましては、先ほどの報告にもございましたように、
平成5年にBS、放送衛星を使いましたデータ多重ということで、ご答申を
頂きまして、現在、衛星デジタル音楽放送、通称セントギガがファミコンの
ソフトウエアとの伝送の事業を行っております。
また、平成6年にご答申頂きました通信衛星を使ったCSデータ放送、こ
れにつきましても、株式会社ジパング・アンド・スカイ・コミュニケーショ
ン、この会社は今年10月にミュージックバードという会社と合併しており
ますけれども、そちらがデータを送る事業を行っております。
地上のデータ放送につきましては、昨年、ちょうど1年ほど前に垂直帰線
消去期間を利用したいわゆるVBI方式のご答申を頂きまして、今年10月
1日から株式会社電子新聞及び株式会社テレビ東京がそれぞれ行っておりま
す。電子新聞はEニュースという呼び名で呼んでおりますし、テレビ東京の
方はITビジョンというふうに呼んでおりますサービスを開始しております。
また先般、来年の春からサービスを開始するということで、同じ方式を用
いまして、全国朝日放送がデータ放送を行うということで、ただいま準備を
進めているところでございます。
もう一つ質問の中にありましたファクシミリ放送につきましては、諮問第
15号の答申を頂いておりましたけれども、事業化に至っておりませんでし
た。今回の音声副搬送波方式でこのファクシミリ放送のためにご答申頂いた
内容を拡充して、データ放送というものにして、さらに多様な放送に応えら
れるようにしていきたいというふうにしたものでございます。以上でござい
ます。
○西澤会長 VBIに比べると、かなり通信量は多いわけですか。
○小林放送技術政策課長 放送技術政策課長の小林でございます。お答え致し
ます。VBI方式は1チャネル当たり177kbpsで4チャネル取れる方
式でございます。今回ご答申頂きました音声副搬送波方式は16kbpsで
2チャネルということですので、同等ということだと思いますが、変調方式
が違っておりまして、移動受信に適しているということで、また別の用途が
考えられるのではなかろうかと思っております。
○西澤会長 ほかにございませんでしょうか。
それではほかにご意見もないようでございますので、地上データ放送委員
会報告を了承することに致しまして、資料95−7に示す答申書の案にあり
ますように、諮問第83号に対する一部答申としたいと思います。ご異議ご
ざいませんでしょうか。
それではご異議がないようでございますので、本件を一部答申ということ
にさせて頂きます。
古川専門委員、委員会での検討と報告、ありがとうございました。ただい
まの答申に関しまして、答申後の行政上の措置につきまして、郵政省側から
ご説明を伺えるということでございます。よろしくお願い致します。
○楠田放送行政局長 放送行政局長の楠田でございます。このたびは地上デー
タ放送の技術的条件につきまして、一部答申を頂きまして、まことにありが
とうございました。昨年11月に一部答申を頂きました地上データ放送のV
BI方式につきましては、先ほど放送技術政策課長がご説明申し上げました
ように、現在、実用化されている状況にございます。
今回、答申を頂きました音声副搬送波方式による地上データ放送では、特
に移動受信における利用が期待されておるところでございます。
郵政省と致しましては、本答申を受けまして、音声副搬送波方式による地
上データ放送の実用化に向けまして、関係省令等の改正を来春をめどに行う
べく対応を図ってまいりたいと思っております。
これによりまして、また新たなサービスの実用化がされるところを期待し
ておるところでございます。
昨年、9月の諮問後、1年2カ月にわたりまして委員の皆様方初め関係各
委員にはご多忙中にもかかわらず、ご熱心に審議頂きまして本答申を頂きま
したことに対しまして、改めて厚く御礼を申し上げます。まことにありがと
うございました。
(3)新規諮問 「電波利用における人体防護の在り方」
○西澤会長 それでは次の新規諮問に入らせて頂きます。「電波利用における
人体防護の在り方」についてであります。
まず諮問内容につきまして、省側からご説明をお願いしたいと思います。
○稲田技術管理室長 技術管理室長の稲田です。まず資料95−8でございま
すけれども、4ページに人体の電波防護に関する我が国での取り組みについ
てまとめてございます。そもそも人体の電波防護でございますけれども、こ
れは電波利用におきまして人体が電磁波にさらされた場合には熱作用によっ
て熱が体の中に発生致しまして、人体に好ましくない作用が起こるわけです。
こういった好ましくない作用を及ぼさないようにすることを「人体の電波防
護」というふうに言っております。
いままでの人体の電波防護の対応でございますけれども、平成2年6月に
電気通信技術審議会から電波利用における人体の防護指針をご答申頂いてお
ります。この答申に基づきまして平成5年9月、電波利用システム開発セン
ター、現在の電波産業会でございますけれども、ここが電波防護標準規格を
策定致しております。これが民間のガイドラインということで電気通信事業
者、無線機器製造メーカーから利用されているところでございます。
3ページ、電波利用における人体の防護指針。電気通信技術審議会から平
成2年6月にご答申頂いたものでございますけれども、この概要をまとめて
おります。この答申では、指針値というものをまとめております。指針値の
例としては、3ページの下に書いてございますけれども、横軸に周波数、縦
軸に電界強度ということを書いております。
条件PとGがあります。条件Pというのは防護指針の考え方に従って管理
できる環境。例えば無線を使っております職場等で無線についてよく知って
いる人たちがそういう電波をよく管理している環境を「条件P」と呼んでお
ります。それに該当しない環境、一般の方たちが立ち入る場所等が「条件G」
に該当するわけでございます。それぞれにおきまして指針値という電界強度
を定めておりまして、こういった電界強度以下であったらば安全だろうとい
うことにしております。
この指針値を定めるに 当たっては10倍の安全率を取っております。そ
ういう意味では、指針値を超えても直ちに人体に影響を及ぼすものではない
ような形で定めておるところでございます。
4ページの2の(3)でございます。こういった電波防護指針につきまし
て、今年3月、郵政省の方で「人体の電波防護の在り方に関する調査研究会」
を開いて、我が国の防護指針と諸外国の防護指針とを比較検討して、こうい
うものについて見直しが必要かどうかを検討して頂いております。
提言の内容でございますけれども、1点目としては現行指針の基本的部分
の改訂は不要である。2番目と致しまして、携帯電話のように身体の近くで
使用する機器からの電波に対しては具体的な指針が必要である。3番目とし
まして、電波の人体への影響に関しましてさらに研究を推進することが必要
である。こういう提言を頂いているところでございます。
5ページは諸外国における人体の電波防護の取り組み方について、概況を
まとめております。アメリカにおきましては今年8月、FCC規則、FCC
というのは、連邦通信委員会という日本でいうと郵政省に相当する機関でご
ざいます。この規則が改正されまして、幅広い無線局に関しまして、電波防
護指針を満たすかどうかの評価義務が規則によって課せられるようなことに
なっております。携帯電話端末についても、機器認定の前に評価義務が課せ
られることになっております。この改正規則は来年1月1日から施行予定と
いう状況になっております。
欧州におきましては平成6年に欧州電気標準化委員会、CENELECと
言っておりますけれども、ここが3年の期限つきで電波防護指針に関する欧
州暫定標準を策定しております。
今年の5月、ドイツにおきまして電波防護指針が法制化されている模様で
ございます。ただこれにつきましては、移動する無線局には適用がなされて
おりませんで、固定されている無線局についてのみ適用があるということで、
電波防護指針が法制化されているようでございます。
国際機関については、この分野では国際非電離放射線防護委員会、ICN
IRPというふうに我々は略語で言っておりますけれども、ここがWHO(
世界保健機関)と協力しまして、電磁波の問題について研究しております。
このICNIRPが今年の4月に声明を出しております。その声明の中で、
電磁波への人体ばく露の制限というのは、電波防護指針以下とすべきという
勧告が出されているところでございます。
諮問理由でございますけれども、いま説明したようなところを諮問理由の
ところでまとめてございます。携帯電話等が非常に普及してきたということ。
特に携帯電話の端末が小型化致しまして、頭部のすぐそばで電波が出ている
ということもございます。こういうものについて具体的な指針が必要である。
あるいは電波利用の拡大に伴いまして、より高い周波数の電波利用が今後、
進展していくということで、こういうものに対して人体の影響について研究
する必要がある。あるいは諸外国で電波防護について、こういうものが法令
化されているということもございます。
そういうことを踏まえまして、答申を希望する事項と致しましては、1点
目、低電力放射源等に対する電波防護指針及びその適用のために必要な電磁
環境の測定法・推定法ということで携帯電話等耳元で使うけれども、ただし
電力は低いものについての電波防護指針についてご審議を頂くということ。
2番目と致しまして、今後の電波防護指針の取り扱い方についてご審議頂く
ということ。3点目と致しまして、電波の人体への影響に関する今後の研究
項目。こういうものについて答申をお願いしたいというふうに考えておりま
す。
答申を希望する時期と致しましては、来年3月ごろ。答申が得られたとき
の行政上の措置と致しましては、低電力放射源等電波利用における人体の安
全性確保のためのガイドラインあるいは基準の作成。あるいは電波の人体へ
の影響に関する今後の研究。これにつきましては、私ども大蔵省に来年度か
らこういうものの研究をするということで予算要求しているところでござい
ます。そういう研究をするに当たっての1つのガイドラインとして、使って
いきたいというふうに考えております。以上でございます。
○西澤会長 どうもありがとうございました。ただいまのご説明に関しまして、
ご意見、ご質問お願い致します。
○坂田委員 諸外国でやったのは、条件PやGというように区分して指針値が
設けられているのか、それとも……。その辺はどういうふうだったのでしょ
うか。
○稲田技術管理室長 まずアメリカ、それから国際標準になっております国際
非電離放射線防護委員会あるいはヨーロッパの欧州電気標準化委員会、こう
いうところにつきましては、それぞれ呼び方は違っておるのですが、職業的
な環境あるいは一般的な環境。あるいは管理された環境、管理されていない
環境、そういう区分で2段階になっているのが通例でございます。
○西澤会長 ほかにございませんでしょうか。
それでは、ご質問がないようでございますので、郵政省からの説明を了承
致しまして、本件諮問をお受けすることとさせて頂きたいと思います。この
諮問に関する審議体制につきましては、既に資料95−9にお配りしており
ますように生体電磁環境委員会を設置致しまして、調査することとさせて頂
きたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。
それではご異議ないようでございますので、生体電磁環境委員会を設置い
たすことと致します。ただいま設置致しました委員会の所属委員並びに専門
委員の指名につきましては、既にお配りしてあります資料95−10のとお
りと致したいと思います。ご承知おきくださるようお願い致します。
(4)審議開始 「高度情報社会を展望した電気通信の標準化に関する基本方策
について」
○西澤会長 それでは4番目、新しい審議の開始でございますが「高度情報社
会を展望した電気通信の標準化に関する基本方策について」でございます。
本件につきましては、既に設置されている標準化政策部会におきまして、電
気通信の標準化方策の一部として新たに審議を開始するものでございます。
それではその内容につきまして、郵政省側からご説明をお願いしたいと思
います。
○河内標準化推進室長 標準化推進室長の河内でございます。まず、経緯から
ご説明させて頂きます。諮問第51号は平成2年5月に諮問が出されました。
その諮問書は3ページに別紙という形でつけてございます。
中長期的な観点から今後の電気通信の発展を考慮しつつ、我が国の電気通
信の標準化のあり方、総合的な標準化ビジョン等を明らかにするとともに、
円滑かつ効率的な標準化活動のための諸施策について諮問を行う。非常に幅
広い観点での諮問が行われているものでございます。
これに基づきまして、標準化政策部会の中で1年ぐらい検討が行われまし
て、翌3年3月に望ましい標準化推進方策、標準化ガイドラインということ
で今後開発すべきあるいは今後標準化すべき事項についての項目。特にどの
部分が重要なのかということをご答申頂いております。これは一部答申でご
ざいまして、その後、若干活動を休止しまして、その後の技術の開発、世の
中の変化に合わせまして平成6年6月に審議を再び開始しております。
この結果につきましては、平成7年5月に情報通信標準化プログラム、相
互接続性・相互運用性の推進方策等一部答申を頂いております。ここにおき
ましては、2010年のファイバー・トゥー・ザ・ホーム、そういう時代を
見据えた際には、2000年までに一体どういうことをやらなくてはいけな
いのかという観点から48分野、325項目につきまして、それを実現する
ための標準化の重要度あるいはスケジュールをご答申頂いております。
この2つの一部答申を踏まえまして、今回は国際競争時代における我が国
の標準化のあり方ということ、いままでは主に標準のそのものの中身あるい
はスケジュール、国内的なそれをどういうふうに適用していくかという観点、
それからITU等が中心でございました。今回は、外に向かってどう我が国
の技術を打ち出していくのかということでご審議頂こうというものでござい
ます。
審議開始の背景でございますが、4ページのところに図のような形で示し
てございます。まず大きな背景と致しまして、上のところに書いてございま
すが、情報通信がグローバル化している。我が国一国の中で議論していたの
では、とてももたない。さらには情報通信市場が拡大していくとともに、従
来のような各国のプラグキャリアあるいは国が事業を行っているというとこ
ろから、情報通信市場自身が非常に競争的になっているということ、さらに
は通信、放送、情報処理というさまざまなプレーヤーが入り乱れて、その新
しい技術を標準なり製品にしてきている。
そういう状況の中でデファクト標準という動きも活発になってきている。
デファクト標準を含む国際的な標準化の中で、いかに我が国が主導権をにぎ
るか、これが非常に重要な事項になってきているということでございます。
その中で我が国あるいは国内、国際における課題はどういうものなのかと
いうことで、左側に国際的課題が書いてございます。我が国の場合「欧州と
米国の狭間に立たされる日本」と書いてございます。あるいはアジア域内で
の連携が不十分ではないかという問題意識を持っております。
それにつきましては次の5ページの参考資料にごく簡単に書いてございま
す。まず米国における標準化戦略、その行い方でございますけれども、軍用
の技術として国は非常に大規模な研究開発を長期的に行う。それを民間にど
んどん転用して、オープンな形で標準化の仲間づくりを広げていく。こうい
うようなことで、非常にアメリカは重要な技術について優位に立っておりま
す。
そこに例として書いてございますが、インターネットの関連技術あるいは
イリジウム等の衛星技術、CALSや暗号方式、さらにはGPS等もあるか
と思います。このようにアメリカの国が長期的に開発したものが、いま世界
にどんどんデファクト的に広がっているという状況があります。
もちろん日本の中でもファクシミリや光ファイバー、MPEG、DVD等
ございますけれども、ややアメリカの状況等を見ますと散発的な状況なのか
という危惧が感じられます。
一方、欧州の方でございますが、ここは何といいましても、欧州の電気通
信標準化機構、ETSIと呼んでおりますけれども、ここに32カ国、41
の主管庁、64のキャリア、230のメーカーが集まる。これだけ先端的な
ものがこの機構に集まりまして、しかも各国、政府、EU、メーカーからの
大量のお金が流れ込んでいるということで、その前段階としましても標準化
の広報プロジェクトあるいは研究開発のプロジェクト等が行われて、その結
果が機能的に標準になってきている。
その経過を踏まえまして、世界市場にうって出る。特に携帯のデジタル電
話でございますGSMが世界を制覇したということで、彼らも自信を深めて
いるところでございます。
こういう状況の中で欧州とアメリカが成長著しいアジア市場にどんどん入
ってきて、仲間づくりを進めているという状況にあろうかと思います。
4ページ左側の国際的課題ですけれども、欧州、アメリカの狭間の中で日
本とアジア域内の連携というのも、いま少し不十分ということでございます。
もちろん日本はITU等の中で中心的な活動も行っております。ITU自
身が通信のインフラ部分のみに限定されているということもございまして、
いまどんどん伸びてきている分野の中でなかなか十分な活動ができないとい
う悩みがございます。
一方、国内的課題としてマルチメディアにおけるシステム。マルチメディ
ア分野という新しい融合分野がどんどん広がっておりますけれども、ここに
対応するような形での標準化のシステムがいまいち足りないのかと。さらに
は研究開発と標準化活動というものの連携にも若干の不足があるということ。
こういうこと等を背景にしまして、国際時代における我が国の情報通信標
準化戦略をもう一度考えてみる必要があるということでございます。具体的
には星のところに書いてございますように、我が国における標準化活動制度
の望ましいあり方。重点的に日本としてどんな分野の標準化を進めるべきか、
あるいは推進方策等につきまして、特にデファクト標準という状況の中で、
どういうふうな推進方策があるのだろうか。さらにはアジア諸国等の具体的
協力、連携方策。ITU等の取り組み方というような観点でご審議を頂けれ
ばということでございます。
いま2ページ目、3の重点事項についてご説明いたしました。そういうよ
うなことにつきましてご審議頂きまして、来年5月ごろに答申を頂ければと
いうことでございます。
この答申をもちまして、前回の2つの一部答申と合わせて最終的な取りま
とめであるということでお願いできればというふうに考えているところでご
ざいます。以上です。
○西澤会長 どうもありがとうございました。ただいまのご説明に関しまして、
ご意見、ご質問をお願い致します。
○高橋委員 国際標準というのは日本がこれから大いに貢献していかなければ
いけないところだと思いますが、今回の標準化政策部会でいろんな分野で新
しい角度から戦略を考えていくというのは非常に適当、むしろもう少し早く
てもよかったのではないかという感じを持っております。積極的に進めてい
くべきだというように思います。
○河内標準化推進室長 先生のおっしゃるとおり、まさにこの問題、非常に重
要かつ緊急性を求められる問題でございます。我々としてもこの問題につき
まして、先生方のいろんなサゼスチョンを頂きながら、至急答申を頂きまし
て、実現に向けて進めていきたいと思います。
○西澤会長 この分野は日本は割と昔から進んでいたと思っていたのですが、
最近元気がないので少しがっかりしているところですけれども。結局、民間
のフォーラム活動への対応が弱いんですか。
○河内標準化推進室長 そうですね。例えば民間でフォーラム活動と呼ばれて
いるものは、世界で50以上ございます。アメリカで大体その6割以上が中
心の本部があるわけですけれども、そこでどんどん世界のメーカーを集めて、
非常に早いスピードで標準がつくられている。それがすぐ製品になって出て
きているという状況であります。
有名なところではATM技術をやっておりますATMフォーラムやパソコ
ン向けの赤外線通信等をやっていますIrDA。それから政府機関が参加し
ていますので、厳密にはフォーラムとは言えませんけれども、インターネッ
トのソサエティーというところがそのフォーラム活動として非常に影響力の
あるものとして存在しております。
○西澤会長 こういうものを例えば日本でやるとした場合、日本でやっている
のは幾つぐらいあるのでしょうか。
○河内標準化推進室長 日本の中では、大体10個弱のこういう活動がござい
ます。ただ残念なところは、多くのものがアメリカあるいは世界のフォーラ
ム活動の下請的といいますか、日本支部的な活動にとどまっているというと
ころでございまして、なかなか日本発で世界にうってでるPIAFSのよう
なPLAでのものはございますけれども、そういうものの数が少ないところ
が悩みでございます。
○安田委員 こういうことをやるのは大変大事なことでございますし大いにや
って頂きたいのでございますが、政府の役割というのが、アメリカでいえば、
インターネットの場合は軍のお金を使ってやっているわけです。それは政府
の役割としては、お金を出したというのが政府の役割であって、あれこれど
うのこうのと細かく取り仕切ったわけではないと思うんです。つまり研究費
を出して、大学が中心になってインターネット、パケット網等をつくり上げ
ました。そういう研究費を通じての間接的な役割を大いにやって頂きたい。
余り直接的にああだこうだと取り仕切ると、かえって阻害するという面が
あるのではないかと思います。もっとも日本の大学がそれにこたえるだけの
体制になっているかどうかというのは、これはまた非常に大きな問題でござ
いますけれども、その辺をいろいろお考え頂きたいと思います。
○甕技術総括審議官 確かに安田委員の言われるとおりだと思います。先ほど
も研究開発で標準化のつなぎのところが非常に重要だというお話がありまし
た。研究開発が進んでいないと、標準化も進まないというところで。基礎研
究の問題もあります。また応用研究の問題もありますけれども、標準化の分
野はどちらかといったら開発研究や応用研究のところのてこ入れだというよ
うに考えております。
私どももその辺、標準化が進まないのは研究に国からの資金も完全に少な
いのかという感じも持っており、その辺のところは意識的に考えております。
それからもう一つ、標準化活動はやはり人材の問題がありまして。国際的
に会議を仕切る、根回しをするという人材、研究のバックグラウンドをもっ
た人材が国際的に立ち回るということが必要ですので、ぜひ大学または民間
企業の中で標準化活動。これは非常に地道な活動でありますので、そういう
人材が育つように、ぜひ企業の方もサポートをよろしくお願いしたいと思っ
ております。
○西澤会長 これは日本の社会共通の現象で、何とかしなければいかんとも思
うんですけれども。私たちはハード提供組ですから、ぜひむしろソフトの先
生方に、頑張ってやって頂く必要があると思います。そういう意味では安田
先生、よろしくお願い致します。
それでは、本件につきましては標準化政策部会でのご審議を頂くことにな
るわけであります。標準化政策部会の部会長並びに委員、専門委員につきま
しては、資料95−12に示してありますとおり、指名させて頂きたいと思
いますので、よろしくお願い致します。
それでは部会長として羽鳥先生に部会でのご審議、よろしくお願い致しま
す。
(5)その他
○西澤会長 それでは議題5、その他に入ります。諮問第1号を所掌する無線
通信委員会、諮問第2号を所掌する電気通信標準化委員会及び諮問第10号
を所掌する航空無線通信委員会等の委員会構成員につきましては、異動等が
ございました。これは資料95−13にお配りしてありますとおりで改めて
ご指名をさせて頂きますので、よろしくお願い致します。
それでは次に平成9年の電気通信技術審議会の開催予定につきましては、
お手元に資料が配布してございます。これに従って開催したいと考えており
ますので、どうぞよろしくお願い致します。
以上でございますが、何か事務局の方からこれ以外にお話はございますで
しょうか。
○渡辺審議会室長 ございません。
○西澤会長 では、先生方の方から何かご発言ございますでしょうか。
3 閉 会
○西澤会長 それでは、ないようでございますので、本日は熱心なご審議を頂
きましてありがとうございました。以上をもちまして、本日の会合は終了と
させて頂きたいと思います。どうもありがとうございました。
第6 議決事項
1 新規諮問
「電波利用における人体防護の在り方」