発表日 : 3月27日(木)
タイトル : 第96回電気通信技術審議会議事録
第1 開催の日時及び場所
平成9年1月27日(月) 午後2時から 於、郵政省3階第二特別会議室
第2 出席した委員等(敬称略)
1 委員
西澤 潤一(会長)、徳田 修造(会長代理)、金子 尚志、國井 秀子、
倉内 憲孝、河内山 重高、小舘 香椎子、坂田 浩一、高橋 寛子、
長谷川 豊明、羽鳥 光俊、宮脇 陞、森島 展一、安田 靖彦
2 専門委員
内田 國昭(小電力無線設備委員会委員長)
第3 出席した関係職員等の所属及び氏名
1 大臣官房
甕 昭男(技術総括審議官)、長谷川 憲正(国際部長)、
鍋倉 真一(官房審議官)、岡田 克行(主計課長)
2 通信政策局
木村 強(局長)、鬼頭 達男(技術政策課長)、
大寺 廣幸(通信事業振興課長)
3 電気通信局
谷 公士(局長)、田中 征治(電波部長)、竹田 義行(計画課長)、
寺崎 明(移動通信課長)
4 放送行政局
楠田 修司(局長)、小林 哲(放送技術政策課長)、
吉田 昇(デジタル放送技術開発課長)
5 通信総合研究所
箱石 千代彦(次長)
6 事務局
渡辺 信一(審議会室長)
第4 議題
1 一部答申 諮問第26号「小電力無線設備の技術的条件」のうち「補聴援
助システムの技術的条件」
2 報告「平成9年度郵政省予算(案)の概要等について」
3 報告「地上デジタルテレビ放送共同野外実験の開始について」
4 報告「衛星デジタル放送技術検討会報告について」
5 その他
第5 審議の概要
1 開会
○渡辺審議会室長 それでは定刻になりましたので、第96回電気通信技術
審議会を開催致します。
議事に先立ちまして、既に皆様ご承知のとおり、昨年12月28日に青
井舒一委員がご逝去されました。謹んでご報告致します。
それでは初めに議事の確認を致します。本日の議事は議事次第にありま
すとおり、4件を予定しております。まず一部答申の案件として諮問第2
6号「小電力無線設備の技術的条件」のうち「補聴援助システムの技術的
条件」についてご審議頂きます。次に報告案件として、「平成9年度郵政
省予算(案)の概要等について」、「地上デジタルテレビ放送共同野外実
験の開始について」及び「衛星デジタル放送技術検討会報告について」の
3件について報告致します。
続きまして、配布資料の確認をさせて頂きます。お配りしてあります資
料は、上から順に、議事次第、第95回電気通信技術審議会議事録(案)、
これは委員の方のみにお配りしております。電気通信技術審議会委員名簿。
次に本日の説明資料ですが、資料96−1、2、3。これにつきましては、
小電力無線設備委員会報告概要、同報告、答申書(案)『諮問第26号「小
電力無線設備の技術的条件」のうち「補聴援助システムの技術的条件」』
でございます。次に資料96−4 平成9年度郵政省予算(案)の概要。
資料96−5 平成9年度テレコム税制改正要望の結果。資料96−6
情報通信技術の研究開発関係予算案等の状況。資料96−7
地上デジタルテレビ放送共同野外実験の開始について。資料96−8
衛星デジタル放送技術検討会報告について。資料96−9 専門委員の変
更について。以上でございます。
配布資料で漏れているものはございませんでしょうか。よろしければ、
早速ですが西澤会長、よろしくお願い致します。
2 議事
○西澤会長 それでは議事に入らせて頂きます。
事務局からご報告ありましたように、委員として長くお務め頂きました
青井 舒一さんがご逝去されました。青井委員のご逝去は私どもにとりま
しては、大変大きな悲しみでもございますし、また我が国の情報通信技術
の発展にとりましても、大きな損失でございます。ここに皆様とともに深
く弔意を表し、青井委員のご冥福をお祈りしたいと思います。
(暫時)
それでは議事に入りたいと思います。前回会合の議事録案が事務局から
示されております。あとでご覧頂きまして、ご意見などがございましたら、
今週中に事務局までご連絡をお願いしたいと思います。その後、公開する
ことと致します。
(1) 一部答申 諮問第26号「小電力無線設備の技術的条件」のうち「補
聴援助システムの技術的条件」
○西澤会長 まず1番目の議事に入らせて頂きますが、一部答申、「小電力
無線設備の技術的条件」のうち「補聴援助システムの技術的条件」でござ
います。
最初に、小電力無線設備委員会の委員長をお願いしております専門委員
の内田先生が来てくださっておりますので、内田専門委員より委員会での
検討結果についてご報告をお願いしたいと思います。それでは内田先生、
よろしくお願い致します。
○内田委員 小電力無線設備委員会の内田でございます。諮問第26号に関
連する事項のうち、補聴援助システムの技術的条件につきまして、審議結
果を取りまとめましたので、主に資料96−1の委員会報告概要に沿いま
して、ご報告申し上げます。
最初に報告概要の1ページの2、審議の背景につきましては、答申の位
置づけを加味して少し詳しく説明させて頂きます。聴覚に障害のある難聴
者の方々は、この図1にありますように、周囲に騒音があったり、あるい
は残響が多い場所、または話し手が少し遠く離れている場合には、補聴器
を使用していても会話音を理解することに大変苦労しているそうでござい
ます。
図1に示しましたように、このたび検討致しました電波を利用した補聴
援助システムはこうした状況を改善できますので、例えば聾学校や難聴学
級の教育の場はもちろんですけれども、さらに劇場だとか病院などの公共
施設あるいは家庭内でも大いに有効活用できるものとして期待されており
ます。
次に難聴の実態等につきまして、資料の96−2の委員会報告を利用し、
もう少し詳しく説明したいと思います。資料96−2の34ページに参考
資料、オーディオ信号についての検討資料が載っております。下の方に図
がございますが、難聴の種類には2種類ございます。その1つが音の伝達
系すなわち外側の外耳と鼓膜を含む中耳に障害がある場合でありまして、
これを伝音難聴と呼んでおります。この場合はほとんどが音の増幅で対応
できるということです。この伝音難聴は難聴者のわずか5%程度だそうで
ございます。
もう1種類はこの右下の図1にもありますが、内耳あるいは聴覚神経、
大脳。特に蝸牛器官の外有毛細胞というところらしいんですけれども、そ
こに何らかの障害があるケースでございまして、音に感じることに対する
難聴。すなわち感音難聴というのだそうです。
難聴者の95%が悩んでおられるのが、この感音難聴でありまして、雑
音だとか反響音に著しく影響を受けるのが特徴的というふうに言われてお
ります。
36ページの上の方に表1が示されております。これはWHOの難聴の
聴力分類を示しています。全国で約100校ございます聾学校に在学する
約8,000人の児童の大多数がこの表の下の方の重度または最重度の難
聴だそうです。重度の難聴では、右の欄に示されておりますが、40セン
チメートル以上離れますと会話音を聞き取れない。それから耳元に接して
話してもらわなければ会話音が理解できない。それから最重度の難聴は、
大声であっても耳元に接しなければ理解できない。従って主として視覚に
頼ってコミュニケーションを行っているというのが、このWHOで分類さ
れている日常生活上の難聴の程度であります。
この表の下に1−3というのがありますが、重度あるいは最重度の難聴
は、こうした聴力レベルに関することのほか、聞こえのダイナミックレン
ジが極めて狭いとか、あるいは周波数弁別能力にも障害がある。その結果、
発言能力が発達しにくく健聴者とのコミュニケーションが困難などの点を
あわせもつのが特徴点として挙げられております。
ちなみに健聴者のダイナミックレンジは、おおよそ100dBちょっと
あると言われておりますが、重度、最重度の難聴者は約20dB以下であ
りまして、この狭いダイナミックレンジに出力音を収めるように補聴器を
フィッティングしなければならないというのが実情だそうでございます。
最近、ご承知のようにエレクトロニクスの技術の発展によりまして、補
聴器は飛躍的に進歩して、小型化・高性能化が図られているわけですが、
それでも補聴器を用いて会話音を聞く場合、距離が2メートルも離れれば
補聴器の出力が約20dB減衰して、重度あるいは最重度の難聴者のダイ
ナミックレンジから外れて、事実上補聴ができなくなるというのが実態だ
そうでございます。
次に27ページに参考資料1がございます。特に右上の表でございます
が、先ほど触れました聾学校以外の聴覚障害児の実態が、ここに表として
整理されております。普通小学校あるいは中学校に設けられた全国約50
0の難聴学級には、先ほど申しました重度、それからそれよりもちょっと
軽い準重度の難聴を中心に幅広い難聴の程度の子供さんが約1,200人
在学しております。それから難聴幼児通院施設で治療教育を受けている児
童等を含めますと、こうした専門機関で教育を受けている聴覚障害児の方
々は全国で約1万人であるということがこの表で示されております。
ちなみに我が国では老人性の難聴あるいは軽度の難聴も含めますと、約
500万人から600万人の方々が何らかの難聴で苦労されているという
ことであります。そして補聴器の市場規模でございますが、私の聞いたと
ころによりますと補聴器の販売台数は年間で約40万台。1年あたり約4、
5%ずつこの二、三年伸びているというふうに聞いております。
以上が難聴に関する実態でございますが、ここで、現在聾学校でどんな
補聴援助システムが使われているか、あるいは小電力無線設備によります
補聴援助システムの適用例はどうかにつきまして資料96−1の報告概要
2ページに戻ってご説明させて頂きます。
2ページに補聴援助システムの概要を図で示してございます。補聴援助
システムの適用例をお示ししました。上の図の2が家庭内のほか、映画館、
劇場、病院等の公共施設などで聴覚障害者へ、もっぱら一方向通信型で情
報を伝送するシステムの例でございます。欧米の幾つかの国では、既に福
祉用電波というのが割り当てられておりまして聴覚障害者のために役立て
られているというふうに聞いております。
例えば米国では70MHz帯が割り当てられておりまして、既に公共施
設等で図2のような、特に右側のようなシステムが実用化されているとの
ことでございます。それから図3は聾学校等の教育の場で使用する電波に
よる集団補聴援助システムの適用例を示したものでございます。これまで
も筑波大学等で40MHzの微弱電波を使って、ほぼ図3と同様な実験が
行われております。
先日1月に入ってから神奈川県立平塚聾学校を訪問する機会がございま
した。そこでは磁気誘導式の集団補聴ループシステムというものが使われ
ておりました。どんなシステムかと申しますと、幾つかの教室、体育館の
床、それに校庭の一部にループが張りめぐられております。先生の音声や
子供さんの音声は40MHzなどの電波で図の左側にシステム図がついて
おりますが、ここの中央装置にFMの電波で送られます。中央装置で受信
した音声信号は、図の左側の「送信機」と書いてございますが、ここから
電波をとばすのではなく、その信号電流を教室の床のループに流して教室
内に磁界を形成させるというシステムでございます。そして難聴児童の誘
導コイル組込み型の補聴器で音声信号を受信して、ループ内ならば少し遠
くても会話音が児童に届けられる。そんなシステムが平塚聾学校で使われ
ておりました。
このシステムは難聴児童同士の相互通話も可能になっていますが、ほと
んどの聾学校に導入されているようです。ただ微弱電波であるという制限
とか、あるいはループ敷設に伴います設置工事の大変さ、それからコスト
高。それからループの外側に出ますと一切聞こえなくなるというのが、こ
のループ式の難点であるという問題点が校長先生からも指摘されておりま
した。当然のことながら、一般家庭で家の中にこういう磁気誘導式のルー
プシステムを設置するのは極めて困難だと私は思います。
そういう点から見ましても、今回検討しました小電力無線設備によりま
す補聴援助システムの早期実用化が期待されていることを実感した次第で
ございます。
最後に次のページの3ページに技術的条件の概要を示しました。3ペー
ジの上の表に記しましたように、普通、補聴器の帯域というのは、200
Hzから7kHzになっているわけですけれども、補聴援助システムに求
められるオーディオ信号の伝送帯域としましては、ワイドとナロー、スー
パーナローの3種類が必要であるというふうに議論を致しました。
帯域10kHzのワイドは、十分高い音域まで再生可能とすることによ
りまして、それほど重度ではない難聴者が劇場やホール等でいろいろなこ
とを楽しめるようにしようというシステムでございます。
その他は、例えば聾学校や難聴学級等で比較的多くのチャンネルを必要
としたり、あるいは難聴児童同士の相互通話を可能とするため、より多く
のチャンネル確保を主眼というふうにしたのが、帯域7kHzのナローと
帯域5kHzのスーパーナローでございます。
この補聴援助システムは表の下にも若干書いてございますが、想定され
る無線局の取り扱いから考えまして、一の筐体に収めるような構造という
ようなことが原則になろうかと思いますが、ポケット型や耳かけ型の補聴
器に組み込まれることも考えて、少し柔軟な措置が必要かと思われます。
次に(2)の主な技術的条件でございますが、表にその主なものを掲げ
ました。まず周波数帯ですが、回路構成の容易さや小型化、それから電池
寿命を考慮致しまして、米国でも70MHz帯が使われておるわけですが、
今回も70MHz帯が妥当というふうなご提案でございます。回路設計の
検討等では、すべて75MHzということで検討資料をつくりました。
通信方式につきましては、ここに掲げている周波数変調のほか、MCA
の方式やデジタル方式も比較・検討しましたが、現時点では回路構成が複
雑になったり、あるいはコストがちょっと高い、消費電力に難点がある、
耳かけ型の補聴器にも組み込むには構造が大きくなるというような難点が
ありますので、その点、当面有利な周波数変調方式を取り上げさせて頂き
ました。
それから補聴援助システムの適用例から考えまして、屋外及び公共施設
内でのサービスエリアは大体30メートルから50メートルまでが妥当と
思われます。従いまして、それに見合う回線設計をしまして、空中線電力
は10mW以下が妥当という結論でございます。家庭内だとか、普通の教
室の中では1mWで十分かと思われます。
こういう結論から周波数だとか、空中線電力の許容偏差、それから段の
下の方にあります隣接チャネル漏洩電力の条件。測定法につきましては既
に実用化されております特定小電力の70MHz帯のラジオマイクの規格
を準用致しました。
それから表の中段に最大周波数偏移あるいはチャネル間隔等が書いてご
ざいますが、ワイドとナローとスーパーナローの場合に必要と思われます
無線システムとしてのダイナミックレンジ、それから通常よく使われてお
りますIFフィルターの通過帯域幅等、最適なものを考慮致しまして、オ
ーディオ信号帯域ごとに表の中段のような規格と致しました。
それから分厚い方の資料には載っておるのですが、この補聴援助システ
ムとFM放送、それからVHFのテレビジョン放送、航空機のマーカービ
ーコン等の干渉についても検討しました。その結果は参考資料の方に添付
してございます。
以上が補聴援助システムに関する委員会報告でございます。最後にもう
一言申し上げたいと思います。私は平塚聾学校を訪問したり、筑波大学あ
るいは大学付属の聾学校の皆さんが文部省の補助金で実施した研究の報告
書を読ませて頂きました。そのときの感想をちょっとだけ一言つけ加えさ
せて頂ければありがたいと思うのです。
感じたことは4つございます。
1つは乳幼児にとって、聞くことというのは、単に1つの感覚の成熟、
訓練のための活動ではなくて、人間形成につながる全人的な活動というふ
うに見るべきだろうということ。
2つめは重度の難聴者であっても、まだ残存している聞く能力を最大限
に開発して、聞く力を獲得させることが聴覚障害教育に携わる者の大切な
使命だと考えるということ。
3つ目が、補聴というのは個人の補聴器のレベルではなくて、もっと相
互通話が可能なコミュニケーションのシステムとしてとらまえていく必要
があるということ。
それから最後ですが、補聴器は薬事法に基づく医療器具でありますが、
この補聴援助システムが補聴器と十分調和のとれたものにする必要がある
ということが、学校の校長先生あるいは携わっている報告書の中に書かれ
ておりました。私、非常に感銘を受けました。
今日のご説明では聾学校等の専門教育機関での利用を少し強調しすぎた
きらいがありますが、公共施設あるいは家庭内での利用にも大いに役立つ
ものというふうに思いますので、ぜひ、この補聴援助システムが低コスト
で、かつ低消費電力、小型化、それから混信のないものが実用されまして、
難聴で苦労されている方々の期待に少しでも応えられればというふうに思
った次第でございます。大変長くなって申しわけありませんが以上でござ
います。
○西澤会長 どうもありがとうございました。それではただいまのご報告に
つきまして、ご審議をお願い致します。
(暫時)
ございませんでしょうか。
それではご質問もないようですので、小電力無線設備委員会報告を了承
させて頂くことと致しまして、資料96−3に示す答申書の案にあります
ように、諮問第26号に対する一部答申としたいと思いますが、ご異議ご
ざいませんでしょうか。
(暫時)
よろしゅうございますか。それではご異議ないようですので、本件を一
部答申することにさせて頂きたいと思います。内田先生、小電力無線設備
委員会でのご検討と取りまとめ、大変ありがとうございました。
ただいまの答申に関しまして、答申後の行政上の措置につきましては、
郵政省側からご説明を伺えるということでございますので、よろしくお願
い致します。
○谷電気通信局長 電気通信局長の谷でございます。ただいまはご答申を頂
き、まことにありがとうございました。いま、内田委員長からも大変詳し
くご説明を頂きましたように、補聴援助システムにつきましては、家庭内、
劇場、病院などの公共施設におきまして、周囲の騒音の影響を受けずに聴
取することができるということに加えまして、聾学校、難聴学級におきま
して、教師の声を確実に生徒の耳元に届けるために必要なシステムとして、
全国聾学校校長会を初めとして、聴覚障害者団体などから広く望まれてい
るシステムでございまして、今回のご答申は、関係者にとりまして、まこ
とに喜ばしい朗報となるものと考えているわけでございます。
また、今回の審議に当たりましては、補聴援助システムは携帯電話など
一般の会話主体の通信と違いまして、人間の耳に近い補聴器の特性に合わ
せる必要があることに加えまして、集団用システムでは多くの周波数が必
要となりますことから、周波数の有効利用の観点からも、十分なご検討を
行って頂きまして、大変感謝をしておるところでございます。
今般のご答申を頂きまして、できる限り早期に関係省令の改正を行いま
して、免許を要しない無線局として補聴援助システムの制度化を図ってま
いる所存でございます。委員の皆様初め、関係の皆様方におかれましては、
ご多忙中にもかかわらず、ご熱心にご審議を頂きまして、4カ月という大
変短い期間内にご答申をとりまとめて頂きましたことにつきまして、改め
て厚くお礼を申し上げる次第でございます。本当にありがとうございまし
た。
(2) 報告「平成9年度郵政省予算(案)の概要等について」
○西澤会長 それでは次に入ってよろしゅうございますか。
2番目、報告でございますが、平成9年度郵政省予算(案)の概要等に
つきまして、資料95−4、資料95−5、資料95−6につきまして、
郵政省側からご説明をよろしくお願い致します。
○岡田主計課長 主計課長の岡田でございます。私からは資料96−4に基
づきまして、郵政省所管予算(案)の概要につきまして、ご報告させて頂
きたいと思います。
資料の1ページは平成9年度予算予定額の概要ということでございます。
一般会計でございますが、平成9年度の歳出は837億3,000万円
ということでございまして、8年度の予算額が631億7,000万円で
したので、205億6,000万円、32.5%の増ということになりま
した。この伸び率は57年度にゼロシーリングが始まって以来、最高の伸
びとなっておりまして、金額ももちろん最高でございます。
政府全体の一般歳出予算が43兆8,000億円ですので、政府全体で
は1.5%ですが、郵政省関係では32.5%の伸びということになりま
した。これは情報通信行政の重要性を認識して頂いたものというふうに評
価してございます。
このように大きく伸びた理由でございますけれども、まず一般財源の中
に夏のシーリングの段階で経済構造改革特別措置が盛り込まれまして、郵
政の場合はシーリング段階で88億円予定されていたわけですが、それら
の施策がすべて認められたということ。それから2つ目の電波利用料財源
でございますが、これも携帯電話やPHSの基地局が伸びておりまして、
利用料が伸びているということ。それに見合って、支出も増えているとい
うことでございます。3点目に公共投資重点化枠。これが45億円から9
2億円になっていますが、これも公共投資の重点配分ということで、郵政
関係の情報通信関係にかなり重点的に配分されたということ。以上3つの
要素がございまして、このように大幅な伸びということになりました。
それから2点目が無利子融資、低利融資でございますが、これは1,3
00億円の内数ということでございまして、この中に光ファイバーの低利
融資511億円分が含まれております。
それから財政投融資は1兆3,110億円の内数ということでございま
す。
産業投資特別会計につきましては、情報通信分野の新規事業創出の促進
等。これが12億円でございますが、これはテレコム投資事業組合分が1
0億円、それから有線テレビ番組充実用が2億円という内訳になっており
ます。
基盤センターの関係の情報通信基盤技術の研究促進でございますが、こ
れは8年度と同額の260億円でございます。
2ページに837億円の内訳を円グラフで示しております。物件費が約
70%、人件費が30%でございまして、通信総合研究所の研究開発経費
が166億8,000万円、電波監視業務等が154億円、電気通信格差
是正事業が97億円、通信・放送機構関係経費、主として研究開発ですが、
この関係が65億円。それから光ファイバーのこちらの方は基金造成のた
めの助成金でございますが、これが30億5,000万円、国際放送の関
係といった中身でございます。
3ページでございますが、郵政省の一般会計予算の推移をまとめてござ
います。平成5年度が415億円で9年度が837億円ですから、全体的
には2倍程度になっておりますが、シェアは0.06%から0.11%と
伸びておりますが、もともとの予算規模が小さいので、このような状況と
いうことになっております。
下のグラフは一般財源、電波利用料財源、公共投資重点化枠の3つに分
類したものでございます。
4ページは郵政事業特別会計の関係でございます。郵便、貯金、保険の
3事業とも順調な経営状況になっておりまして、1カ所だけご紹介します
と、郵便事業損益の推移の欄がございますが、平成9年度275億円の黒
字を予定しておりまして、トータルでは2,130億円の累積利益という
状況でございます。3事業とも極めて順調な経営状況でございまして、郵
便については消費税のアップ分を料金に上乗せすることなく、内部努力で
カバーしていこうという予算で、このような状況になっております。
5ページ以降は個々の施策について、主な施策を紹介してございます。
時間の関係がございますので、新規あるいは重要施策を中心にご説明して
いきたいと思います。
まず情報通信行政関係の中の情報通信の高度化による経済構造の改革関
係でございます。総額で100億円ですが、大きな施策としましては、マ
ルチメディア・パイロットタウン構想。これは予算要求段階では、通信放
送研究成果展開事業と呼んでおりましたが、大学キャンパス、住宅の情報
化ですとか、農村のCATV化ですとか、こういった事柄につきまして、
関係省庁と連携しながら推進していこうというものでございまして、マル
チメディア・パイロットタウンモデルとして、この4事業。市役所、キャ
ンパス、住宅、農村。こういった事業について展開していく予定でござい
ます。
それから2点目は通産省と連携致しまして、行政、教育、医療、防災等
の複合的機能を持った地域産業・地域住民参加型の情報通信システムを構
築するという先進的情報通信システムモデル都市構築事業でございますが、
この関係の予算が10億円でございます。
6ページの(3)投資事業組合を活用した通信・放送新規事業への答申の
促進でございますが、これは産投の10億円を利用致しまして、リスクの
高い創業・スタートアップ段階の情報通信ベンチャー企業に対する資金供
給の円滑化を図るため、投資事業組合を活用した通信・放送新規事業への
出資制度を創設ということでございまして、通信放送機構に投資事業組合
をつくっていこうという施策でございます。
それから4番目は光ファイバネットワークの全国整備の加速でございま
して、融資枠は510億6,000万円。これは8年度が420億円でし
たから、約90億円の増ということでございます。利子補給の方は30億
5,000万円。これも8年度は25億円ですから、5億円ほどの増額と
いうことになっております。
それから5番目が電気通信格差是正事業で、これは従来から重点的に進
めている施策でございますが、特に移動通信用鉄塔施設整備事業につきま
して、一般会計で35億5,000万円の予算を計上してございますが、
これは平成8年が18億6,000万円でしたので、約倍増ということで
ございます。
それから大きな2番目が国民生活の質的向上と地方振興ということでご
ざいまして、291億9,000万円でございます。4つほど施策が載っ
ておりますけれども、そのうち(3)字幕番組・解説番組の制作促進関係
でございますが、この字幕番組・解説番組の制作促進につきましては、現
在も機構の基金から利子の運用という形で2,000万円弱の助成を行っ
ているわけでございますが、それでは十分ではないということで、来年度
予算では字幕放送・解説放送の拡充を図るため、直接、助成を行っていこ
うということで一般会計から約1億3,000万円の助成を行うものでご
ざいます。
それから大きな3番目が情報通信技術の研究開発ということでございま
して、研究開発につきましては、科学技術基本的計画で新たな研究開発シ
ステムの構築、政府研究開発投資の拡充を図ることとされているわけです
が、それを請けまして、情報通信分野においても、取り組みを強化してい
こうというものでございまして、一般会計で111億8,000万円の予
算を計上してございます。
主な中身と致しまして、大きく2つございまして、(1)が重点研究開
発プロジェクトの推進でございます。これは当審議会でご答申を頂きまし
た情報通信技術に関する研究開発の基本計画を受けまして、取り組んでい
く重点研究開発プロジェクトということでございますが、その関係で91
億円。主な研究テーマの例と致しましては、ここに載っておりますが、次
世代インターネットに関する研究開発ということでございまして、インタ
ーネット上での電子商取引、電子マネーですとか、そういったビジネスア
プリケーションを普及、発展させるため、安全性・信頼性が高く、超高速
・大容量化にも対応し得る次世代インターネットに関する研究開発を行う。
8億9,000万円でございます。
それから総合的な研究開発体制の整備ということで、産学官の連携の強
化ですとか、競争的資金の拡充等、総合的な研究開発体制を整備する。こ
れが20億8,000万円でございますが、代表的な例と致しましては、
マルチメディア・バーチャル・ラボを。これは12億8,000万円でご
ざいまして、そのほか詳細につきましては、この後、技術政策課長から詳
しい説明がございます。
それからグローバルな情報通信社会の構築関係で、23億7,000万
円。国際化の関係の予算ということでございます。
9ページ以降は郵政事業関係でございまして、説明は省略致しますが、
主なものとしまして、情報通信を活用した21世紀の郵便局づくりを行っ
ていこうということでございまして、郵政事業の電子化を諮り、21世紀
の郵便局づくりを推進していくというものです。
施策としては、郵便貯金オンラインシステムの相互開放ですとか、郵便
貯金磁気カードのICカード移行のための実証実験ですとか、電気通信技
術を使いまして、郵便局におけるワンストップ行政サービスの実験を行っ
ていこうとか、その下にありますようなインターネットを活用した電子郵
便局の開設等、郵政事業関係におきましても、情報通信を最大限活用した
郵便局づくりを行っていく。そういったものが主な施策として載っており
ます。
12ページ以降は、その他の重要施策につきまして、項目ごとに要求額、
予定額を入れた資料でございます。以上、概要をご説明しました。
○大寺通信事業振興課長 引き続きまして、資料96−5に基づきまして、
平成9年度テレコム税制改正要望の結果をご報告致します。
今回の税制改正につきましては、厳しい財政事情の中、経済構造改革あ
るいは研究開発を促進するという側面について、税制面で支援していこう
という大きな流れがございまして、私どもの場合、情報通信関係につきま
しても、インターネットとか、あるいはマルチメディアの分野でのニュー
ビジネス、ベンチャービジネスをどう支援していくか。あるいは中小企業
や国際間の研究交流をどう支援していくか。そういう観点からの税制が新
制度として得られました。
まずニュービジネスにつきましては、ストックオプション導入円滑化税
制の創設でございますが、事業に新規性があり将来的には非常に発展しそ
うな、そういうベンチャーに対して、経営者であるとかあるいは技術人を
外部から登用するために、商法の特例を設けてストックオプション制度を
導入することにしております。そのために税制面でも支援していこうとい
うことでございます。
下の方の図にありますように、例えば1株100円で株式を取得すると
いう権利を付し、例えば店頭公開後、その株価が1,800円になった段
階で株を取得した場合、1,800円引く100円で、1,700円の利
益が出るということで、通常ですとその時点で課税されるわけですが、こ
れを非課税にする。そして最終的にその株を譲渡する段階で申告分離課税
をするという制度の導入を今度、認めて頂いたわけでございます。
次のページは、一定の試験研究を行う中小ベンチャー企業について、そ
の企業にいろいろな個人投資家が投資しやすいようにということで設けら
れたいわゆるエンジェル税制でございます。ここにございますように、い
わゆる株式投資をするわけですが、失敗することもあります。現時点では、
当該年度において、株式の損益通算することしかできないんですが、今回
はその翌年度3年間、損益通算できる、いわゆる株式損失の繰越控除制度
が導入されることになりました。
3番目ですけれども、従来、私どもの通信総合研究所と民間企業等との
共同研究の場合には、試験研究費の税額控除が認められていましたが、今
回、海外の国立試験研究所ですとか大学等との共同研究におきましても、
試験研究費の6%の税額控除という措置を認めて頂くことになりました。
4以下でございますが、周波数の逼迫対策という観点で、公共業務用デ
ジタル移動通信システムが追加されました。その他のものにつきましても
継続されております。
5番目は、光ファイバーを家庭までという観点で、電気通信事業者とと
もにCATV、有線テレビジョン放送事業者におきましても、そういうこ
とが必要なわけなんですが、今回、そのCATV事業者のセンター設備に
ついても、地方税について、課税標準の特例が認められました。
6番目ですが、基盤技術研究開発促進税制におきましても、延長・拡充
等が認められ、最後のページでございますが、その他のものにつきまして
も、非常に今回厳しい折衝がございましたけれども、延長が認められると
いう状況になっております。以上でございます。
○鬼頭技術政策課長 技術政策課長でございます。資料96−6につきまし
ては、予算の関係、先ほど主計課長の方からご説明申し上げましたが、若
干、研究開発ということで科学技術関係に絞って整理致しております。
一般会計の科学技術関係経費ということで、これは先ほどの説明と若干
数字が違う部分がございますが、研究所の人件費等も含めて計上している
ということで、数字が大きくなっております。いわゆる科学技術基本計画
で5年間で総額17兆円を目指している数字に相当するものでございます
が、一般会計としましては、郵政省の場合、平成9年度317億円という
ことで、8年度に比べ1.7倍ということになっております。
その内訳については、研究実施主体別に分けておりますが、通信総合研
究所の予算が約200億円で1.4倍に増えております。この中では先ほ
どの説明にありましたマルチメディア・バーチャル・ラボ等のほかに、通
商産業省の電子技術総合研究所との共同研究である脳機能の研究ですとか、
あるいは昨今の携帯電話等の電磁環境問題等に対応するための生体・各種
機器に関する電磁環境対策といった項目が新たに入っております。
それから2番目は、通信・放送機構におきまして、民間とか大学の力と
連携しながら、研究開発を実施致しておりますが、この経費としまして約
63億円。これは前年度に比べ約2倍に増えております。この中で次世代
インターネットを初め通信・放送融合ネットワークですとか、次世代放送
方式の研究開発等々に取り組み、さらに平成8年度から開始致しました公
募研究制度につきましても、4億8千万円の予算が8億円に増額という形
で認められております。
それからその他というところでは、本省の直轄の経費でございますが、
電波利用料を使いました周波数逼迫対策技術試験等の実施に必要な経費等
54億円となっております。
2ページ目の一番上に予算に関連しまして、いわゆる研究開発関係の組
織関係ということで、通信総合研究所の横須賀無線通信研究センターがあ
ります。これは横須賀に移動通信研究のメッカをつくろうということで、
横須賀リサーチパークという構想が推進されておりますが、そこに研究所
の研究センターを展開しようというもので、これが認められております。
それから2の方で産業投資特別会計のところに基盤センターへの産投の
出融資、260億円というのがございますが、金額は8年度と同じでござ
いますが、内容的に2つの新しい制度が認められております。一つは研究
開発型企業出資ということで、これは中小中堅企業、ベンチャー等を対象
とした研究開発への出資ができるというもの。もう一つは同じような企業
に向けた融資でございます。特別融資と申しますのは、従来の融資は成功
度に応じて利子がゼロから100%に変わるわけですが、今回のものは元
本も含めて成功度に応じて変わる。ですから失敗すれば、元本も返さなく
て良いわけですが、成功した場合にはそれ相当のプレミアムをつけてもら
うといったような新しい制度を導入するということで認められております。
さらに財政投融資の関係では、25%の特別融資制度ということで、社
会性・公共性の高い新技術開発について、こういった融資制度が認められ
ております。
3ページ目は税制関係でございますが、これは先ほどの通信事業振興課
長の説明にありましたので、省略させて頂きます。以上でございます。
○西澤会長 どうもありがとうございました。大変大きな仕事が増えたよう
でございますが、ご説明に対しまして、ご意見、ご質問をお願い致します。
○坂田委員 77の重点研究開発プロジェクトのうちどのぐらい、予算に反
映されたのですか。
○鬼頭技術政策課長 正確なところはなかなか申し上げにくいのですが、お
よそ53程度だと考えております。
少しだけでも着手したものをどの程度含めるかというところで、なかな
か評価しづらい部分がございますが、私どもが内部で整理しているところ
では、その程度の着手率だというふうに考えております。
○倉内委員 先ほどストックオプションの話。ほかの分野でもいろいろ議論
されていると思いますけれども、郵政としては、これ以外にもあるのかど
うか。あるいはほかの関係ではどういう範疇のものが今年からこういった
新しい制度にのっていくのかどうか。その辺を伺いたいのですが。
○大寺通信事業振興課長 ストックオプション制度自身はアメリカでは広く
導入されておりますが、残念ながら、日本におきましては、いわゆる一般
の事業会社については認められておりません。これは株主の平等性という
ことを尊重したいということでございまして、法務省の方では平成9年度
に、私どもや後から申し上げます通産省の状況を見て、導入の可否につい
て検討したいというふうに言っております。
通産省では、一昨年にこの制度が認められています。それはいわゆるニ
ュービジネスに限定した形で認められているという状況になっています。
以上です。
○國井委員 日本は、全体的にソフトの技術水準が世界に比べて下がってき
ているというか、余り上がっていないという感じがするんですけれども、
今回の研究開発の中で、これを見るだけではわからないんですけれども、
ソフトウェアの研究開発投資関係は増えているんですか。増えているんだ
ろうと期待しておりますが。そういう面はいかがでしょうか。
○鬼頭技術政策課長 ソフトというタイトルは載っておりませんが、情報通
信の技術、研究開発はかなりの部分がソフトウェアの研究開発になってお
りまして。この中でも例えば次世代インターネットのようなものは、プロ
トコルとか、ソフトの開発がかなりの比重を占めるものでございます。そ
ういったものが幾つかのプロジェクトの中でございまして、ソフトの比重
は総体的に高くなっているという状況にございます。
○國井委員 そういう統計データというのは余りないんですか。
○鬼頭技術政策課長 ここがソフトとか、ここがハードとか、そういう分け
方ではなくどちらかというと、私どもの立場からしますと、あくまでも情
報通信という切り口で、そのために必要なハード、ソフト、両方の技術を
組み合わせて研究開発をしていこう、あるいはして頂こうというとらえ方
でございまして、これはソフト、これはハードというとらえ方はしていな
いというのが実情でございます。
○國井委員 とにかく、やはり世の中どんどん進んでいくのにレベルが上が
っていないということが非常に気になっていますので、ぜひともその辺の
折衝をお願いしたいということです。それからちょっと細かくなって申し
わけないんですけれども、資料96−6で通信総合研究所さんの方から出
ている情報通信の高度化のための脳機能の研究とありますね。この脳機能
の研究というのは、どのように情報通信に役にたつのですか。
○箱石通信総合研究所次長 通信総合研究所次長の箱石です。人間の生体の
情報伝達機能とか処理機能については、我々の扱っている一般の人工的な
情報通信機器の1つのモデルであるという観点から、人間の生体情報、脳
機能の研究というのを研究所でやっております。
例えば脳から出てくる微弱な磁界を取り出して、脳のどの部位が活性化
しているのかなどということを研究テーマの1つとして掲げてやっている
わけです。この研究もそれに関連する研究として、今般予算を頂き通産省
と共同実験をやるようになったというものでございます。
○國井委員 それは何か情報通信のアーキテクチャーに生かされるというよ
うなものですか。
○箱石通信総合研究所次長 最終的にはアーキテクチャーというところまで
いくと思いますが、いまのところは人間の信号の伝達の具合とかをやって
います。研究者、研究所には大体、光学系と理学系が多いのですが、この
関係はメディカルドクターがやっておりまして、だんだん情報通信基盤と
いうような光学系の人と融合的な研究ができていくだろうと期待しながら
やっているわけでございます。
○木村通信政策局長 今の説明に補足させていただきます。予算関係で大変
新しい時代を展望して情報通信関係が増えたわけですが、特徴点は経済構
造改革特別措置ということで、これには、いま、國井先生おっしゃったよ
うに、ソフトも含めた使い勝手の良い予算だと考えております。今まで郵
政省は、大体箱ものについては情報通信に関し公民館を建てるという施設
整備費みたいなものがあって電話回線がひかれているという程度の話なら、
これまでの公共事業重点化枠で確保できていたんですけれども、それでは
地方公共団体に流れてたり、企業がやるという場合に非常に使い勝手が悪
いということだったのですが。不動産的な施設整備費以外に端末なんかも
入ってくるようになりました。
また、それにあわせてソフトの予算というものも一緒に郵政省が議論し
てつけられるようになったということで、額もさることながら質的にも情
報通信として本当に使い勝手の良い生きた金になるような仕組みになって
いるということでございます。
従って研究開発についても、ソフトも含めた研究開発を郵政省でも知恵
を出してやれるようになりましたし、それを具体的に事業として活用する
面でも道が開けたということで、その辺は大きな前進であり、委員の先生
方、当審議会のご支援のたまものだということで、先ほど話が出ました研
究開発基本計画の77プロジェクト、先ほど53程度と言いましたけれど
も、77のうち53も入るというのは、なかなか政府の予算としては難し
かったわけです。そういう面ではしっかりと入れて頂いて、形があらわれ
てきたということでございまして、当審議会のご審議の結果だということ
で、行政官としてもこれを反映した予算ができて、これから国会の審議が
あるということは、非常に責任は重くなりますけれども、喜んでおるとこ
ろでございます。以上、補足でございます。
○小舘委員 2番目のところに基盤研究推進制度で公募研究の予算等の拡充
ということで、郵政省の一般会計の科学技術関係経費が17倍になるとい
うことがあり大変うれしいことであり、ご努力に感謝申し上げたいと思い
ます。先日も、ある学会の理事会で科学技術推進ということで各省庁が大
変予算をとって頂いているという話がありました。そのご努力には非常に
感謝するけれども、その予算がどういう形で具体的に研究に従事している
者のところに割り当てられていくのか。それが大変不透明であるという非
常に厳しい意見が出ました。
各省庁にある審議会なるものが隠れ蓑になっているのではないかという
ようなご意見も出ておりました。私どものように近いところにおります者
は、決してそんなことはないということは大変良くわかりますけれども、
まだ、一般にはその辺の理解がなかなかなされておりません。
そういう点からいって、公募研究の予算が増えてきたということは、大
変好ましいことだと思いますが、この公募研究制度を非常に広く周知して
頂くような方向でのご努力を頂きませんと、せっかくこういう形で増やし
て頂いた予算がまた逆の心配を生んでいくような形になるかと思いますの
で。大変僣越な発言かと思いますけれども、ぜひよろしくお願いしたいと
思います。
○甕技術総括審議官 ご指摘のとおり研究開発予算は非常に増えております。
私どもも研究の課題の発掘の段階から、実際に研究のテーマを選定する、
また研究が始まったあとの評価、この辺をいろいろやっていく必要がある
と考えておりまして、その不透明性については、この研究全体がどうなっ
ているかということを当審議会でもいろいろご審議頂いております。
またほかのいろいろな研究会がありますので、そこでできるだけ意見が
入った形のそういうテーマの全貌を明らかにしていくということが1つ。
それから公募研究のように非常に広くテーマを公募するという制度。これ
は最近、非常にはやりというとおかしいんですけれども、いろいろな方の
アイデアをそこに出して頂くという制度で非常に良いのではないかという
ふうに考えておりまして、ほかの省庁も公募研究制度を非常に充実しつつ
ありますけれども、郵政省もどんどんこれを充実して、いろいろなアイデ
アが集まるようにしていきたいと考えております。
昨年からこの公募研究制度が始まったのですが、非常に人気が高く10
倍程度の倍率になっております。選定が大変ですけれども、選定委員会を
この中に作っておりまして、選定委員会の先生方も非常にご苦労されてお
りますけれども、非常に熱心なご議論をして頂き、できるだけ公平な審査
をして頂いております。
それから研究をどんどん進めていくに当たって、評価という面がありま
す。私どもの通信総合研究所が、いま、非常に大きな予算を使っておりま
して、やはり外部評価が重要である。外部の先生方による評価、外人も含
めてですが、それをきちんとやっていこうということで、もう既にその評
価委員会の機能はスタートしておりますが、研究員の立場からも、そうい
う非常にすばらしい先生方の評価があるということで、緊張はしておりま
すけれども、逆に研究意欲が出てくるということもありますので、そうい
うところを大いに活用していきたいと考えております。
またこれからもよろしくご指導頂きたいと思います。
○西澤会長 私が申し上げる柄じゃないんですけれども、研究を増やして頂
くと同時に配分評価を適正にやらなければいけない。今、甕さんからすば
らしい方がやってくださっているということだったんですけれども、実際、
郵政省はいいんでしょうが、ほかにもいろいろ批判があるわけで、ご存じ
のとおりだろうと思うんですね。
それで中山太郎さんあたりが中心になって、前から評価組織をつくろう
という話をしていましてね。場合によると、省庁横断的に評価をする人た
ちの能力を評価するという制度をつくろうという話を、いま、盛んにやっ
ておりますので、かなりまじめに考えられているようです。
さて、ほかにございませんでしょうか。
(暫時)
よろしいですか。
それではありがとうございました。ぜひ有効に使って、後々プラスにな
るようにしていきたいと考えております。
(3) 報告「地上デジタルテレビ放送共同野外実験の開始について」
○西澤会長 それでは3番目、報告に入らせて頂きますが、地上デジタルテ
レビ放送共同野外実験の開始について、省側からご説明お願いします。
○吉田デジタル放送技術開発課長 デジタル放送技術開発課長の吉田でござ
います。資料96−7でございますが、地上の放送のデジタル化につきま
しては、2000年から2005年の間に我が国では放送開始ということ
を目標としているということで現在作業を進めております。
地上のデジタル放送の方式については、安田先生に委員長になって頂い
て、当審議会のデジタル放送システム委員会で、現在審議中でございます。
本件はその審議と並行して方式を決定するための野外実験を開始したとい
うことでございます。
なお、デジタル放送システム委員会では、これより前にCSのデジタル
放送の方式と、CATVのデジタル放送の方式。この2つの一部答申を既
に頂いております。今度は地上放送の番だということで、いま、ご審議頂
いているところでございます。
地上の放送につきましては、急にこの一、二年、欧米の動きが早うござ
いまして、我が国におきましては若干、遅れておりまして、まだ方式の開
発中ということで、完全にできた方式を検証するというところまでいって
おりません。それを幾らかでも加速しようということでここ半年ぐらい、
審議会の審議でご議論頂いたところでございます。
その結果、ここに書いておりますように、平成10年に暫定放送方式を
何とか提案できるというぐらいのスケジュールで、いま、審議が進んでお
ります。
野外実験は先週21日から電波を出しております。デジタル方式の特徴
ですが、現在、我が国で検討している方式の特徴としまして、1つめは高
画質化。これはゴーストに特に強うございまして、それからHDTVとい
った品質も放送可能であるということ。
2番目として、多チャンネル化が可能だと。現行のテレビの品質であれ
ばアナログ放送の1チャンネル分でデジタルで3チャンネル程度とれると
いうこと。
3番目は高機能化でございますが、通信との融合等とも書いております
が、双方向機能とか、あるいはコンピューター等との連携等でマルチメデ
ィアのサービスが可能ということ。
4番目が移動体テレビサービスの実現と書いてありますが、走行中の自
動車でもテレビ放送をきちんと受けることができること。技術的にはそう
いうのが可能になります。
5番目に単一周波数中継が可能であること。「周波数有効利用」と書い
てありますが、これは現在のアナログのテレビ放送が、親局、例えば東京
タワーですが、そこからの電波を受けて周辺山間地の中継局で再放送して
いるわけですが、混信を防ぐために周波数をその都度変えて、たくさんの
周波数を使っておりますが、これを同じ周波数でできるということから、
周波数有効利用につながる。こういった特徴をもつものでございます。
実験の内容は、地上デジタル放送共同実験連絡会というのを設置してお
りまして、私どもの通信総合研究所、それからNHK放送技術研究所、次
世代デジタルテレビジョン放送システム研究所。これは民放、NHK、そ
れからメーカー各社に入って頂いて共同でつくって頂いているところでご
ざいます。こういった3社で実施しております。従って実質上、関係者ほ
とんど参加の形でこの実験を始めております。
次のページが実験のイメージでございます。東京地区でこのような形で
実施しています。送信電力は30ワットや100ワットと小そうございま
す。送信場所は、通信総合研究所、これは小金井にございます。それから
NHKの渋谷放送センターと世田谷区砧の放送技術研究所。この3局で送
信しております。エリアがこのように多少重なるところがございまして、
2局重なった場合の受信状況であるとか、3局同じ周波数で重なった場合
の受信状況であるとか。基礎実験から始めて、そういう具体的な受信例に
ついての実証実験をするということでございます。
なお、ちなみに実験の放送自体はUHFの第19チャンネルを使ってや
っております。それから単一周波数中継をやるためには、各局間のネット
ワーク、一部光ファイバー、一部無線で構成しております。
以上がおおよその概要でございまして、実験の内容につきましては、3
ページ目に共同実験の項目を書かせて頂いております。大きくいって、新
しいこのデジタル方式のサービスエリアがどのような形になるのかについ
ての測定。同じ周波数でサテライト局放送ができるものですから、そうい
う単一周波数中継の実験。これはゴースト関係、同期の関係も含めており
ます。それから3番目に移動体向けの放送実験。走行中の自動車でどの程
度、受けられるかというようなものを大きな柱として実験が開始されまし
た。
4ページ目は方式全体の概要でございますが、今回、本方式開発のため
の実験と申しましたが、実はデジタル放送のための放送方式というのは、
ここの表以外にももうちょっとたくさんの要素から構成されております。
世界的には例えば情報源符号化方式は映像についてはMPEG−2のビデ
オを使うとか、あるいはここに書いてある多重方式。これは日本とヨーロ
ッパはMPEG−2システムズを使うとか。あるいは誤り訂正方式である
とか、いろいろな要素があるのですが、そういうことはかなり日本独自の
ものというよりも日米欧共通でございます。
ただ一番下に書いてあります変調方式。電波に乗せる形だけが、それぞ
れの国の事情、あるいは周波数そのものも違うということです。一番下の
図は、我が国で開発中のもので、ゴーストに強く、単一周波数中継も可能
で、移動体受信も可能な方式ということでございます。
5ページ目は先ほど申しました地上のテレビのデジタル放送の特徴です。
冒頭の説明とだぶりましたが、ちょっと詳しくご説明させて頂きました。
1番目の高画質化、多チャンネル化、2番目の高機能化というのは、日米
欧共通でそういう機能を持っております。
それから移動体マルチメディアサービスについてはいまのところ、日本
の方式だけが対応できるということになっております。それから4番目の
単一周波数中継の実現につきましては、日本とヨーロッパの方式が対応で
きると。アメリカの方式はこれはちょっと対応が難しいということになっ
ております。
大体、まだ開発中でございますので、決めのところまでは申せませんが、
このようなことで実験が始まったというご報告をさせて頂きました。
○西澤会長 どうもありがとうございました。それではただいまのご説明に
ついてご質問、ご意見ございませんでしょうか。
(暫時)
今回の方式、規格が外国、ヨーロッパあるいはアメリカとどういうふう
な違いがありますでしょうか。同じか違うかということをちょっとご説明
頂きたいと思います。
○吉田デジタル放送技術開発課長 最後に特徴のところで申しましたけれど
も、かなりの部分は同じでございますが、最後、電波にのせる形がちょっ
と違います。これはそれぞれの国で周波数自体も違っているところもござ
いますし、それからどうしても現在のアナログ放送に影響を受けます。例
えばヨーロッパでは、いま、NTSCでなくてPAL方式を使っているの
ですが、これは1チャンネルが8メガヘルツ対応でございまして、日本と
アメリカは6メガヘルツ。こういったことで、それぞれ前提条件が少し違
います。先ほどの特徴以外に違うところもございます。ここだけは各国と
もそろわないかなと思います。
ただIC化すれば、多分この辺はチューナーのところですから、2つ3
つ一緒に入れるというのも将来的には可能かと思います。あとの部分はほ
とんどMPEGに始まりまして、多重の方式、その他、かなり共通な部分
が多うございます。
○西澤会長 この間、雑誌に出ていたのは、海外輸出する場合に、海外規格
と違うとかえって困るじゃないかという話もあったんですけれども、その
点はどんなふうにお考えですか。
○吉田デジタル放送技術開発課長 利用者からみれば全部同じに越したこと
はないかなとは思います。ただちょっと乱暴な言い方かもしれませんが、
通信で線を通して端末同士でヨーロッパと日本で通信する場合に全く互換
性がなければ大問題なのでございますが、放送の場合ある意味で国ごとに
閉じているといいますか背景が違うかと思います。
それから先ほど申しましたような、日本では例えばゴーストに強くある
いはそれ以上の画像品質がどうしても必要でございますので、多少、元々
各国で周波数が違うということも背景にあって、機能的にもちょっとねら
うところが違う。
それからヨーロッパ、アメリカみたいに大陸でほとんど平野とか丘だけ
のところでぴょっと飛ばすのに一番適したやり方と、日本のようにちょっ
といけばすぐ山があるというところでは方式がおのずと違いまして。それ
を仮に同じ方式でやってしまいますと、周波数的にも非常に苦しいことに
なりますし、受信機にもゴーストが出てしまったりといろいろな問題が出
ております。
従ってある程度は仕方ないと思います。仮に海外赴任とかになれば、先
ほど申しましたように、全体の中ではほんの一部だけのICチップでござ
いまして、そこは2台装備するとか、いろいろなものが出てこようかなと
思っております。
○西澤会長 むしろ金子委員の方、ご質問みたいなことはどうなんですか。
○金子委員 特にないんですけれども、ちょっとご質問をひとつ。これです
ね、暫定方式をと、こういうことをおっしゃるのですが、4ページに書い
てある細かい装備は1つのやつをマルチキャリアにしてというのはどうい
うことなんですか。
○吉田デジタル放送技術開発課長 ちょっと聞き取れなかったんですが、マ
ルチキャリアのご質問でございましょうか。
○金子委員 4ページの下に書いてある図、それから後ろに書いてあります
3波程度入りますという、この3という数と一体どういう関係にあるのか
なと。
○吉田デジタル放送技術開発課長 これは先ほどちょっと申し上げましたが、
方式の中でも一番違うのが変調方式であるというご説明をしまして、その
変調方式のところを説明した絵でございます。現在のアナログの1チャン
ネルは6メガヘルツの帯域でできておりますが、この中にどんな形で電波
が入るかというようなご説明を致しました。
例をいえば、アメリカはアナログと同じような変調方式をとっておりま
す。従ってこういうマルチキャリアの形ではございません。それからヨー
ロッパと日本は、日本はまだ決まっておりませんが、いま開発中のものは
ヨーロッパと同様に、こういうマルチキャリアと申しまして、電波がこの
中で細かくみれば6メガの中に2,000本ぐらいキャリアが並んでいま
す。あるいは、8,000本という方式もあるのでございますが小さいキ
ャリアがたくさん並んでいる。それぞれのキャリアに変調をかけて情報を
全部合わせて並行的に送っているという感じでございます。
これは安田先生の言でございますが、コンピューターが処理能力を高速
化した画像コンピューターなどを作るために、並列処理というのをやりま
したけれども、それと同じように映像をデジタルで送るとなると、すごい
容量が必要なんですが、それを2,000台CPUを並べるとか、8,0
00台並べるという形で1つ1つのCPUの負荷を軽くしまして処理をす
る。これにより、例えば地上で特有なゴーストであるとか、反射によるマ
ルチパスであるとか、そういったものを避けようというアイデアでござい
ます。
それと3チャンネルというのは、5ページ目の1、2、3チャンネルと
れるかどうかということかと思いますが、これはデジタルの場合アナログ
1チャンネル分の帯域で、アナログの3チャンネル分に相当する情報が送
れるという意味でございます。
○金子委員 わかりました。要は1つの放送チャンネルで幾つもの放送キャ
リアを使っておると。こういうことになるんですか。
○吉田デジタル放送技術開発課長 そうでございます。
○西澤会長 ほかにございませんでしょうか。
それでは次に入らさせて頂きたいと思います。
(4) 報告「衛星デジタル放送技術検討会報告について」
○西澤会長 4番目であります。衛星デジタル放送技術検討会報告について。
これも省側からご説明お願い致します。
○小林放送技術政策課長 放送技術政策課長の小林でございます。
本件は資料のサブタイトルにありますように、BS−4後発機段階にお
ける衛星デジタル放送技術の技術的展望ということを行ったものでござい
まして、昨年7月から12月まで検討会を設けまして、衛星デジタル放送
技術検討会、座長の羽鳥先生の検討会を設けまして、検討した内容でござ
います。
この検討会の開催に至りますまでには、放送衛星、BSを使った放送に
関してのいろいろな検討がございました。平成5年5月の電波監理審議会
の中で、ここに3点記載してございますけれども、平成9年を目途に8チ
ャンネルのBSの放送を開始するということ、また、この時点から3年以
内に後発機4チャンネルの事業主体を決定すること、また、その時点では、
デジタル方式は技術的に時期尚早であるという内容の答申がありました。
その後デジタル技術の急速な発展など事情の変化がございまして、昨年
5月、電波監理審議会の答申の中で放送普及基本計画の一部改正というこ
とが審議されまして、答申が得られました。
その内容が、まずBS−4先発機と後発機の取り扱いを分けるというこ
とであります。現在、静止軌道上にはBS−3という放送衛星があります
が、今年の3月、4月期に次の放送衛星が打ち上がります衛星をBS−4
先発機というふうに呼んでおりますけれども、もう一つの後発機という概
念と取り扱いを分けるということが1点目でございます。
2点目には、今年の春に上がりますBS−4の先発機が、BS−3の放
送を引き継ぐ形で平成9年を目途に放送を開始し、NHK2系統、日本衛
星放送1系統、ハイビジョンの試験放送1系統を引き継ぐということを決
定したわけです。
また、3点目としまして、BS−4後発機、これは上記の4系統以外の
放送を行う衛星ということになりますが、それについては、できる限り早
期に放送を開始するということで、具体的な取り扱いについてはその時点
から1年程度で検討をするということの答申を頂きました。
その答申を受けまして、昨年から衛星デジタル放送技術検討会とういも
のとBS−4後発機検討会という2つの検討会が進んでおります。ご報告
させて頂く内容は、その前段の技術検討会の内容でございます。
3枚紙の1ページ目の第2パラグラフでございますが、この検討会では、
できる限り早期にということを、BS−4後発機の運用時期を2000年
頃と想定するというふうに読み替えまして、2000年頃の想定と201
0年頃までの技術進展を考慮した上で、2000年頃の技術動向の検討あ
るいは技術的可能性の検討をしたというものでございます。
この検討を進めるに当たりましては、メンバー8名の学識経験者による
検討会を行ったわけですが、それだけではなく国内を初め、米国、韓国そ
の他の状況を実際にメンバーの方々にごらん頂いたり、専門のいろいろな
方々からご意見を伺うということを行った上で報告書をまとめました。報
告書の概要が2ページにございます。
BS−4後発機という衛星に焦点をあてて議論致しましたので、全般的
なことは省かせて頂いておりますけれども、2000年頃ということを考
えますと、今後の衛星デジタル放送技術の動向としては、゜1ムの後段に
BS放送においてはその特性を生かすことにより1トランスポンダで2チ
ャンネルのデジタルHDTV放送が技術的に可能になるという結論に至り
ました。現在、1トランスポンダで1チャンネルのデジタルHDTVに相
当するハイビジョン放送1チャンネルが放送されていますが、2000年
頃には2チャンネルが技術的に可能となります。
報告書の3ページの中ほどに四角で囲んでいる部分がございます。20
00年頃の技術展望の中で、(1)伝送容量につきましては、高能率伝送
技術により1トランスポンダ当たり39Mbps程度の情報伝送が技術的
に可能であるという指摘がございます。
5ページ目にデジタルHDTVの符号化技術の進展について書かれてお
りまして、(2)で30Mbps程度でデジタルHDTVの符号化が既に
実現されることから、2000年頃には18Mbps程度でデジタルHD
TVの放送が技術的に可能であるとなっております。
なお、この18Mbpsという数字は米国で最近決定されましたATV
(Advanced TV)の方式の伝送容量、18Mbpsを考慮して
の数字でございます。
ここまでの議論はデジタルHDTVというふうに呼んでおります1,1
25本の走査線の飛び越し走査方式を想定しておりますが、同じ報告書の
6ページの上の方に高画質化技術の進展状況についても触れておりまして、
プログレッシブ方式による高画質化技術は既に走査線525本のシステム
が可能な状況にあり、さらに2000年頃には750本のシステムも技術
的に可能であります通称525Pというふうに呼んでおりますプログレッ
シブ方式の525本のシステムについても言及しております。
また要約の方に戻って頂きまして、1の[2]のところで放送端末につ
いては製品が2000年頃には実現可能であろうということ、これはデジ
タルHDTV放送等に対応可能な製品ということですが、それが2000
年頃には実現可能であるということです。また番組の制作につきましても、
多彩な高精細度映像番組の制作が技術的に可能であるという結論を得てお
ります。
この技術検討会の1つの特徴として、現在、既にBSにはかなり多数の
視聴者が存在しているということを考慮し、既存の放送端末への対応も検
討致しました。大きく分けまして、MUSE放送端末とその他の放送端末
ということに分けて検討しておりますけれども、MUSE放送端末につき
ましては、アダプターを追加することによってデジタルHDTV放送等の
新たなデジタル放送の受信が可能であるというふうに結論づけております。
このアダプターを追加しているイメージが次の3ページ目の真ん中ほど
の絵でございます。MUSE放送端末、通称ハイビジョン受像機として売
られているものに対して、外部にアダプターを接続することにより、この
絵で言いますと、アダプターの部分と同等のものがハイビジョン受像機の
方のチューナー、MUSEレコーダーの部分であり、それと置きかわる形
での接続が考えられるというものでございます。
なお、ハイビジョン受像機のコストの8割以上が高精細度ディスプレイ
部分に当たるということで、すなわち置きかわる部分はそれほど大きくな
く、また仮にアダプターを追加したとしても、高精細度ディスプレイ部分、
この部分は有効に活用できるという結論になっております。
また、同じ絵の下の方にございますように、その他の既存の放送端末に
おきましても、このアダプターが活用することができるというふうに考え
ておりまして、結果としまして、2ページ目の[4]ですが、アダプター
のコストについて、アダプターのLSIに多くの需要が認められることか
ら大幅な低廉化が期待できます。また、既存のアンテナ等の利用も可能と
考えられます。
最後に、3番として3つの今後考慮すべき事項を述べております。一つ
目が将来の拡張性。特にコンピューターとの整合性等について留意する必
要があること。また2番目としては、実証実験が必要ということ。3番目
として国際標準化を図る観点から国際協調が必要だということとあわせて、
日本が先導的に取り組んできた高精細度映像関連技術等については、その
技術力を維持し、向上させることに配意することが肝要であるということ
が指摘されております。
なお、この検討会の結果は、並行して行われておりますBS−4後発機
検討会におけるこの衛星の利用方法、放送方式等の検討に反映させて頂い
ております。
以上、この検討会は技術的な可能性の検討を行ったわけでありますが、
全体の結論が得られれば、当審議会で技術的条件のご審議等を頂く必要が
あると考えておりますので、その辺りも含めて報告をさせて頂きました。
以上でございます。
○西澤会長 どうもありがとうございました。ただいまのご説明に対して、
ご意見、ご質問をお願い致します。
○河内山委員 別紙に書いてありますデジタルHDTVというもの。これの
イメージといいますか。例えば構想としては200万画素ぐらいのもので
あるとか。あるいは走査線が先ほどおっしゃった1,000本程度のもの
をイメージしたものであるとか。このHDTVそのもののイメージについ
てご説明頂きたいと思うのですが。
○小林放送技術政策課長 ここで言っておりますデジタルHDTVは、いま
のハイビジョン放送、すなわち走査線1,125本のインターレースとい
いますか、飛び越し走査の放送方式ですけれども、その放送方式をデジタ
ル化したものというふうにイメージしております。
○河内山委員 撮像をしているのは200万画素程度ということですか。ハ
イビジョンカメラはそうなっていますよね。これのフル伝送という意味な
んですね。
○小林放送技術政策課長 それをデジタル画像圧縮して伝送するものです。
○倉内委員 この関係をよく知らないで質問させて頂きますけれども、先ほ
ど地上デジタルとか衛星デジタル、両方の話がたまたま出ておるのですが。
先ほどの両方のお話を聞いていると、地上デジタルの方はとにかく現在の
品質・レベルで多チャンネル化してデジタル化し、衛星デジタルの方はい
まよりも高品質のものをねらっておると。そういうふうに方向として考え
ておられるように思うんですけれども、そういうことではございませんか。
○小林放送技術政策課長 衛星でどういう方式を採用すべきかについては、
いま検討を行っている段階にあります。この技術検討会におきましては、
技術の可能性を展望したということでありまして、2000年頃を見た場
合にはデジタルHDTV、1,125本クラスの走査線の飛び越し走査ク
ラスのデジタル放送までできると予測されます。従ってそれよりも走査線
数の少ないもの。例えば525本のプログレッシブというものも技術的に
は可能であるとみておりまして、当然ながら525本のインターレースも
技術的には既に実現しており可能性はあるわけです。
ただこれをどのように選択し今後決めていくかについては、現在議論さ
れているという状況にあります。
○吉田デジタル放送技術開発課長 地上テレビのデジタル化も同じような状
況でございまして、いまのテレビと同じ品質であれば3チャンネル伝送で
きる能力があります。それをフルに使えば、いま話がありましたデジタル
HDTVを1チャンネル送れる能力があるということになります。また、
その中間も可能でございます。方式策定上はそのどれにも対応できるよう
に、1つの技術でどれにも対応できるように作業が進められております。
ちなみにアメリカ、イギリスの地上テレビのデジタル化の方式も同じよ
うな感じでございまして、どちらにも大体対応できるという感じでござい
ます。
○坂田委員 アダプターが利用されるという点で、普及に努めているように
伺えるんですけれども、この開発並びにコストの見通しというのはかなり
着実に進んでおられるのか、その辺を伺いたいのですが。
○小林放送技術政策課長 オフィシャルには非常に申し上げにくくて、最終
的には各メーカーさんが商品化の段階でどのようなオプションをつけてい
くかとか、ユーザーに渡る段階での価格というのはバラエティがあり得る
と思っておりますが、このアダプターの基本となります部分はデジタルH
DTVまで想定しますと、そのデジタルHDTVの信号を処理できるMP
EG−2のデコーダー、これが中心的なものになると思っております。M
PEG−2の汎用性、また現実にBSを既にごらんになっている方が1,
000万というオーダーであるということ、それからテレビの買いかえ需
要が毎年約1,000万のオーダーにあるということから考えますと、か
なりの量産効果が期待できると期待しておりまして、2000年頃にはそ
のMPEG−2のデジタルHDTVクラスを処理できるもののLSIが1
チップないし2チップでできるとされていることから、低廉化はかなり進
むのではないかと想定しております。
○西澤会長 非常に広範囲な技術を必要とするということは、逆に言うと波
及効果が多いということですね。NHKさんの方でいくと今度は番組をつ
くられる方が大変お忙しくなるんですね。
○長谷川委員 いま、多チャンネル化でソフトが必要ということで。何とか
頑張らなきゃしようがないなと思っております。
○西澤会長 よろしゅうございましょうか。
(暫時)
それではどうもありがとうございました。
(5) その他
○西澤会長 その他でございますが、諮問第88号を所掌する無線設備測定
委員会及びワイヤレスカードシステム委員会の構成につきましては、資料
96−9に示しますとおり変更したいと思っております。ごらん頂けます
でしょうか。よろしゅうございましょうか。
(暫時)
以上でございますが、何かほかにございますでしょうか。
○木村通信政策局長 情報通信21世紀ビジョンの策定ということで、先般、
私どもの大臣の方から情報通信の長期ビジョンを策定するように指示があ
りました。その趣旨は、いまも当審議会でご議論がありましたけれども、
1つ目は現下の経済情勢を克服し、高齢化社会においても活力のある日本
を築いていくために情報通信の高度化が不可欠であるということで、先ほ
どお話に出ましたように予算であるとか税制であるということで形にあら
われてくるようになったというのが1つでございます。
それから2つ目は、いままさにお話にありましたように、急速な技術進
歩を初めとしたグローバルな競争状態の出現という状況下で、NTTの再
編成というものも1つの大きな形としてしっかりと出てまいりました。そ
れからいまご議論がありましたように、地上、衛星のいわゆる放送のデジ
タル化ということで本当の大きな変革期を迎えようとしているということ
で、これまでもいろいろなビジョンをつくってきていたわけですけれども、
状況の変化が非常に大きくなったという要素が出てまいりましたので、こ
ういった状況、環境の変化を見まして、21世紀の2010年ぐらいを頭
においた長期ビジョンというものをつくって、企業あるいは国民の皆様に
21世紀がどうなっていくのかという共通の認識を持つ、あるいはそれを
示していくというのがいまの行政の大きな課題ではなかろうかということ
で、民間の方々からもそういう要請もございまして、大臣が身近にそうい
う感じも持たれたのか事務当局の方に、先般指示がございました。
従いまして、我々電気通信局、放送行政局ともよく相談をしながら大臣
の指示を踏まえ、その内容等につきまして事務的にどういう形が良いのか
という議論は致しております。いずれに致しましても、これは大きな問題
でございますので2月に予定しております電気通信審議会の方に大臣から
諮問させて頂こうということで、できるだけ早い時期に答申を頂いて、そ
れこそ国の内外に21世紀の日本というものを情報通信をベースにした利
用というのを示してまいる必要があろうというふうに考えております。
当然、その中には当審議会でご議論頂きました技術の関係、あるいは標
準化の問題等々、非常に大きな変化の核は当審議会で議論して頂く内容で
ございますので、よく連携をとりながら参考にあるいは尊重し活用させて
頂くなどして、きちんと取り込んでいきたいとこのように考えております
ので、ご支援のほどよろしくお願いを致します。若干、時期が早くなりま
したが、こういう場でしっかりとお話ししておかないと、また、新聞なん
かに出て、俺は聞いていなかったということになっても役所として問題が
あろうということで、お時間を頂きました。
そういう趣旨でビジョンの策定に3局あげて取り組んでまいりますので、
よろしくお願い致します。
○西澤会長 事務局、よろしゅうございますか。
○渡辺審議会室長 ございません。
3 閉 会
○西澤会長 それでは、以上で議事が全部済んだようでございます。今日は
何か特に大事な問題がたくさん議論されたような気もしますが、どうもあ
りがとうございました。以上をもちまして、今日の会合を終わりとさせて
頂きます。