発表日 : 6月6日(金)
タイトル : 第99回電気通信技術審議会議事録
第1 開催の日時及び場所
平成9年4月24日(月) 午後3時30分から 於、郵政省12階第3
特別会議室
第2 出席した委員等(敬称略)
1 委員
西澤 潤一(会長)、徳田 修造(会長代理)、生駒 俊明、川田 隆資、
國井 秀子、倉内 憲孝、坂田 浩一、名取 晃子、長谷川 豊明、
羽鳥 光俊、原島 博、安田 靖彦
2 専門委員
上野 照剛(生体電磁環境委員会委員長)
大森 愼五(移動衛星通信システム委員会委員長)
第3 出席した関係職員等の所属及び氏名
1 郵政省
五十嵐 三津雄(事務次官)、山口 憲美(郵政審議官)
2 大臣官房
甕 昭男(技術総括審議官)、長谷川 憲正(国際部長)、
高祖 憲治(官房審議官)
3 通信政策局
木村 強(局長)、鬼頭 達男(技術政策課長)、
河内 正孝(標準化推進室長)
4 電気通信局
谷 公士(局長)、田中 征治(電波部長)、重田 憲之(電気通信技術
システム課長)、竹田 義行(計画課長)、寺崎 明(移動通信課長)、
坂田 紳一郎(衛星移動通信課長)、稲田 修一(技術管理室長)
5 放送行政局
楠田 修司(放送行政局長)
6 通信総合研究所
古濱 洋治(所長)、箱石 千代彦(次長)
7 事務局
渡辺 信一(審議会室長)
第4 議題
1 部会・委員会に所属する委員の指名
2 答申
諮問第87号「科学技術基本計画を踏まえた情報通信研究開発基本計画の
充実について」
3 答申
諮問第51号「高度情報社会を展望した電気通信の標準化に関する基本方
策について」のうち「標準化体制・制度の望ましい在り方」
4 答申
諮問第86号「PHSの周波数有効利用方策」
5 答申
諮問第89号「電波利用における人体防護の在り方」
6 一部答申
諮問第82号「非静止衛星を利用する移動衛星通信システムの技術的条件」
のうち「150MHz帯でFDMA方式をサービスリンクに使用するシステ
ムの技術的条件」及び「1600MHz帯でTDMA/FDMA方式をサー
ビスリンクに使用するシステムの技術的条件」
7 新規諮問
「アナログ電話端末設備等に求められる技術的条件」
8 新規諮問
「有線電気通信設備に関する技術的条件」
9 その他
第5 審議の概要
1 開会
○渡辺審議会室長 それでは定刻になりましたので、第99回電気通信技術
審議会を開催いたします。
初めに、委員の任期満了に伴い、去る4月1日付で委員の再任及び新任
がありまして、新たに3名の方々が委員に就任されましたのでご紹介いた
します。
日本テキサス・インスツルメンツ株式会社代表取締役社長生駒俊明委員
でございます。
○生駒委員 生駒でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○渡辺審議会室長 松下通信工業株式会社代表取締役社長川田隆資委員でご
ざいます。
○川田委員 川田でございます。よろしくお願いいたします。
○渡辺審議会室長 電気通信大学電気通信学部教授名取晃子委員でございま
す。
○名取委員 名取でございます。よろしくお願いいたします。
○渡辺審議会室長 なお、お手元に委員の名簿を配付いたしております。
それでは、次に五十嵐事務次官からごあいさつ申し上げます。
2 事務次官あいさつ
○五十嵐事務次官 事務次官の五十嵐でございます。
本日、先生方には4月1日付けで再任あるいは新任頂き、初めてお越し
頂いております。今日は本来ですと大臣がお邪魔しましてごあいさつをさ
せていただくところですが、ちょうどいま衆議院本会議で大臣が答弁をし
ているところでございまして、こちらに戻ることができませんので、大変
僣越ながら私の方から大臣にかわりまして御礼のごあいさつをさせていた
だきたいというふうに存じます。
先生方には平素電気通信、とりわけ電気通信の技術関係につきましてご
指導を賜っておりましてまことにありがとうございます。今後ともよろし
くお願いを申し上げます。
今回は20名の先生のうち17名の先生に再任をお願いいたしました。
どうぞひとつよろしくお願いを申し上げます。それから、ただいまお話の
ありました生駒委員、川田委員、名取委員には新任ということで、大変お
手数を煩わせますが、何分よろしくお願いを申し上げたいというふうに存
じます。
電気通信関係、最近手ごたえのある数字になってまいりまして、昨年の
ナポリのサミットのときに、情報通信の技術の発展というのは、その国の
経済のエンジンであるという経済宣言がなされました。まさにそういう感
じでして、1996年度、私どもいま情報通信全般の数字の予測を行って
おりますが、30兆円弱ぐらい、GDPに占める割合が6%ぐらいという
ようなマーケットになってくるという勢いになってまいりました。設備投
資につきましてはよく報道されておりましてご存じの方が多いと思います
けれども、移動体通信だけでも平成8年度1兆8,000億円という意味
では、花形産業であります自動車の1兆4,000億円の設備投資をはる
かに上回るという状況でございます。第一種電気通信事業だけでも4兆3
,000億円、それに放送等々を含めていきますと4兆8,000億円ぐ
らいが情報通信ということになります。電力が大体5兆円で、これが日本
で平成8年度トップでございますから、もう一、二年のうちに電力を抜く
ときがあるんじゃないかというふうに私どもは考えております。雇用の面
でも、特に移動体通信は地方に分散して会社ができているものですから、
分散型の雇用ということにも大変役立っているというようなことで、21
世紀を迎えるまでの間にはだんだんこれが伸びていって、とうとう10%、
そして10%を超えるという、経済構造の改革に役立つということになっ
ていくようにしたいものだ、またそうなっていただきたいものだというふ
うに私ども思っております。
いま内閣は6大改革ということを述べておりますが、これの原動力にな
るのはやはり情報通信ではないかというふうに思っているところでござい
ます。今日は、研究開発の基本計画のことでありますとか、あるいは標準
化というようなことでまたご議論を賜ったり、答申をお願いするというよ
うなことになっておりますが、21世紀が活力のある経済、そしてその経
済は情報通信が変えるという勢いになってきておりますので、私どもも一
生懸命やってまいりたいというふうに思いますので、先生方のご指導をひ
とつより一層お願いを申し上げたいと思います。
大変僣越ながら、大臣にかわりまして一言御礼のごあいさつを申し上げ
させていただきました。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
○西澤会長 ただいまは五十嵐次官ありがとうございました。新しく任命さ
れましたお3人の委員を迎えまして、我々委員一同今後とも一層審議の充
実を図ってまいりたいと考えております。
ちょうど100年前の12月、東京湾で無線電信による通信に成功した
ことは世界で第2番目、マルコーニに遅れること2年か1年であったと記
憶しておりますが、最初から世界の先行を駆けてまいった分野でございま
す。
いま、次官からもお話がありましたように、まさに21世紀を先取りし
て新しい展開が始まったと申し上げてよろしいかと思いますが、ぜひ当審
議会の審議も時代に遅れることになりませんよう、むしろ最近ではトップ
に躍り出すべき重要な責任があると考えておりますので、リーダーシップ
がとれますように努力を続けさせていただきたいと思います。また郵政省
におかれましても、当審議会の審議・運営には、これまで以上にご支援と
ご協力をお願いしたいと思います。
どうもありがとうございました。
○渡辺審議会室長 ありがとうございました。
恐縮ではございますが、事務次官は所用がございますので退席させてい
ただきます。
○五十嵐事務次官 どうぞよろしくお願いいたします。
〜 事務次官退席 〜
○渡辺審議会室長 それでは続きまして議事の確認をいたします。
本日の議事は議事次第にありますとおり、まず部会・委員会に所属する
委員の指名について。次に答申として、諮問第87号「科学技術基本計画
を踏まえた情報通信研究開発基本計画の充実について」、諮問第51号
「高度情報社会を展望した電気通信の標準化に関する基本方策について」
のうち「標準化体制・制度の望ましい在り方」、諮問第86号「PHSの
周波数有効利用方策」、諮問第89号「電波利用における人体防護の在り
方」、また一部答申として諮問第82号「非静止衛星を利用する移動衛星
通信システムの技術的条件」のうち「150MHz帯でFDMA方式をサ
ービスリンクに使用するシステムの技術的条件」及び「1,600MHz
帯でTDMA/FDMA方式をサービスリンクに使用するシステムの技術
的条件」、以上5件をご審議いただきます。
次に、新規諮問として「アナログ電話端末設備等に求められる技術的条
件」及び「有線電気通信設備に関する技術的条件」がございます。
次に配付資料の確認をいたします。お配りしてあります資料は上から順
に議事次第、第98回電気通信技術審議会議事録案、これは委員の方のみ
にお配りしております。
次に本日の説明資料ですが、まず委員名簿、資料99−1「電気通信技
術審議会委員の所属委員会等」、資料99−2、3、4でございますが、
諮問第87号に関します総合政策部会の報告概要、部会報告、答申書(案)
になっております。
次に資料99−5、6、7でございますが、諮問第51号に関する標準
化政策部会の報告概要、部会報告、答申書(案)となっております。
続きまして、資料99−8、9、10でございますが、PHS周波数有
効利用方策委員会報告概要、委員会報告、答申書(案)となっております。
また資料99−11、12、13でございますが、生体電磁環境委員会
報告概要、委員会報告、答申書(案)となっております。
次に、資料99−14、15、16でございますが、移動衛星通信シス
テム委員会報告概要、委員会報告、答申書(案)でございます。
続きまして、資料99−17、アナログ電話端末設備等に求められる技
術的条件の諮問書でございます。それに関します構成員の指名、委員会の
設置が99−18、19でございます。
資料99−20が有線電気通信設備に関する技術的条件の諮問書でござ
いまして、99−21と22が構成員の指名、委員会の設置の関係でござ
います。
最後に、99−23「専門委員の変更について」でございます。以上で
ございます。
配付資料で漏れているものはございませんでしょうか。資料が多数にな
り恐縮でございます。もしよろしければ、さっそくですが西澤会長よろし
くお願いいたします。
3 議 事
○西澤会長 それでは、議事に入らせていただきます。前回会合の議事録案
が事務局から示されております。後でごらんいただきまして、ご意見など
ございましたら、今週中でございますが、事務局までご連絡をお願いいた
します。その後公開という手続になります。
(1) 部会・委員会に所属する委員の指名
○西澤会長 まず、部会・委員会に所属する委員の指名についてであります
が、今回委員の任命がございましたので、再任の方が多くいらっしゃいま
すけれども、改めて資料99−1のとおり指名をさせていただきたいと思
いますので、各委員の先生方には引き続きよろしくお願いをしたいと思い
ます。
(2) 答申
諮問第87号「科学技術基本計画を踏まえた情報通信研究開発基本計画
の充実について」
○西澤会長 それでは、次に、議事の2番目の答申、諮問第87号「科学技
術基本計画を踏まえた情報通信研究開発基本計画の充実について」の審議
に入らせていただきます。
最初に総合政策部会の部会長をお願いしております安田先生から部会で
の検討結果についてご報告をお願いしたいと思います。安田先生、よろし
くお願いいたします。
○安田委員 それではご報告を申し上げます。まず資料でございますが、お
手元に2件ございまして99−2、これは総合政策部会報告概要でござい
ます。それから、99−3が報告の本体でございます。報告の本体の方は、
最初にページの打っていないものが7枚ほどついておりまして、その後に
別添がございます。これは平成9年度電気通信技術審議会答申(案)「情
報通信研究開発基本計画(第2版)−明日を拓く情報通信技術−」という
ものになっておりまして、この審議会からの大臣への答申の案ということ
になっております。
今日は時間の関係もございますので、99−2の報告概要を中心にご説
明をさせていただきます。
この部会に付議されました審議事項は、諮問の第87号「科学技術基本
計画を踏まえた情報通信研究開発基本計画の充実について」というもので
ございまして、部会の審議に当たりましては、報告概要の3枚目でござい
ますか、別紙1にありますような部会の構成、それから別紙2に、この下
に技術展望専門委員会及び研究評価専門委員会の2つの専門委員会を設け
まして審議の充実を図ったわけでございます。
審議は部会を6回、技術展望専門委員会を5回、研究評価専門委員会を
4回開催いたしました。また、所属する委員や専門委員並びに外部の関係
者にも広くアンケートをいたしまして、幅広く意見の聴取に努めたわけで
あります。この審議の結果が先ほど申しましたように資料99−3の別添
にありますような答申案として取りまとめたわけであります。
それでは、この答申案の概要と若干の背景につきまして、プロジェクタ
ーを用いましてご説明をいたしたいと思います。
お手元にもこの画面と同じような内容の資料が、先ほどの資料99−2
の別添としてついておりますので、そちらをご参照いただければと思いま
す。
まず情報通信研究開発基本計画でございますが、これは昨年の5月に本
審議会から答申をしたものであります。この答申は諮問の第85号「技術
創造立国に向けた情報通信技術に関する研究開発基本計画について」に対
する答申でありまして、ここでは情報通信技術の研究開発の基本的な考え
方や国の取り組むべき具体的方策をお示しいたしまして、情報通信分野の
研究開発を活性化させるために国が中心となって何をなすべきかという問
題を基本計画という形でまとめたものであります。
今回はその答申を踏まえまして、その後の状況等の変化を考慮しつつ計
画を更に充実する観点から審議を行ったものでありまして、その背景とい
たしまして、一昨年の11月に科学技術基本法が議員立法として制定され
たこと、それからそれに対して、昨年の7月には国として科学技術基本計
画というものが閣議決定をされたこと、このようなものとの整合性をとり
つつ審議を進めていくということであったわけでございます。
最初に今回の答申のポイントをまとめて簡単にご説明いたします。
まず、情報通信分野の研究開発に対して、国民の理解と支持を得るとい
うことが政府としては大事でありまして、この分野の研究開発がどのよう
な役に立つのかという社会的効用の明確化を図ったわけであります。また
国の予算を使う上でその研究資金の重点的・効率的配分ということが重要
ですので、これを判断する材料として、研究内容等を正しく把握、評価す
るための適正な研究評価方法、評価体制の確立のための考え方や、具体的
な方策について検討いたしました。
次に重点的・効率的な研究開発の推進のための新たな戦略的プロジェク
トの推進方策、また研究開発推進体制の整備のために、従来の施策の充実
に加えて新たな施策の検討も行っております。
以上のような点を審議いたしまして、今回新たな研究開発基本計画を取
りまとめた次第であります。
今回の答申案は全部で4章からできておりますが、その第1章におきま
して情報通信技術の研究開発の必要性、情報通信技術開発の現状及び研究
開発推進のための基本的な考え方を述べております。
初めに、この情報通信技術の研究開発の役割について見てみますと、光
ファイバ網、移動体通信、放送といったネットワークインフラの高度化、
電子マネーや遠隔医療といったアプリケーションの高度化がございます。
これらはネットワークとその利活用方法として一体となりまして情報通信
の高度化という形で豊かな社会の形成、経済構造改革など、先ほど次官か
ら話がありました国が推進する6大改革への貢献や国際貢献といったこと
になるかと思います。
また研究開発には新しい技術や産業の可能性、言いかえればシーズを生
み出すための基礎的、先端的研究開発があります。このような研究は天然
資源に乏しい我が国が21世紀の国際社会で発展をしていくために、情報
通信技術分野の技術に関する知的資産というものを形成するというふうに
考えられるわけであります。
続きまして、研究開発の現況につきまして、いくつかの例を見てみたい
のでありますが、まず通信・電子分野における研究開発力を日本企業に対
するアンケートにより日米を比較しますと、91年では日本優位と答えた
企業が半数を上回っていたのに対し、94年の調査では日本優位は40%
未満、30数%となりまして日米の立場が逆転した結果が出ております。
次にアジア諸国の研究開発力の動向であります。日本の民間企業に行っ
たアンケート結果によれば、アジア諸国の研究開発力に関する我が国との
関係について、NIEsを中心したアジア諸国の台頭により、今後3〜5
年程で日本の競争相手になってくると答えた企業の割合が高く、21世紀
にはアジアの多くの国々が日本の競争相手になるという認識を民間では持
っているということであります。
次に技術貿易の動向でありますが、95年度につきましては、我が国の
技術貿易収支の全体は黒字でございます。ところが情報通信分野に関して
は依然として赤字傾向になっていります。この赤字の主な原因というのが
北米に対する技術貿易収支によるものであります。そこで北米に対する技
術貿易を情報通信分野とその他とを比較した場合、その他の産業におきま
しては95年度には黒字に変わっているのに対して、通信・電子・電気計
測器工業におきましては、赤字がむしろ拡大傾向にあって、その額も1,
000億を超えているという状況であります。
次に研究開発費の動向でありますが、この情報通信分野の研究開発費に
限って日米比較をいたしますと、民間を含めた年間総額が、95年の時点
で米国が約3.6兆円、日本が約2.4兆円でありまして、この両者の比
率は3対2でありまして、むしろ1人当たりでは日本の方が多いというこ
とになっておりますが、これを政府負担額で見ますと、米国は約5,00
0億円、日本は約1,500億円ということでありまして、米国対日本の
比率は3対1となり日本の政府の負担額が依然として少ないということが
言えるわけであります。
次に諸外国の情報通信技術のプロジェクトについて見ますと、欧米、ア
ジアを含めた諸外国では、この情報通信のインフラ整備と情報通信技術の
研究開発を国家プロジェクトとして精力的に取り組んでおります。ご承知
のように米国ではHPCC計画という高速のコンピューター間通信のため
のネットワークやソフトウェアの研究などを行っておりまして、この計画
のために米国政府は年間約1,000億円強の予算を投入しております。
また欧州ではEUのプロジェクトといたしまして、研究開発費の50%を
助成するフレームワークプログラムというものがありまして、情報通信関
係につきましては年間約1,000億円弱の予算を使っております。また、
アジアにおきましてもシンガポールのIT2000構想でありますとか、
マレーシアにおけるマルチメディア・スーパー・コリドー構想、さらに隣
の韓国でも超高速情報通信網構築計画というものが政府主導で行われてお
ります。
以上のように、情報通信分野の研究開発の内外情勢を踏まえまして、我
が国としても研究開発の一層の強化が必要と考えられるわけであります。
その際の政府の果たすべき役割について考えてみますと、政府として取り
組むべき研究開発として、非常に重要だけれども民間企業だけでは実施が
困難なものを対象にすべきであるということになります。具体的には、資
料に出ているような基礎的・ハイリスクな研究等がございます。それから
公共性の高いもの、共通的・普遍性の高い研究開発、それから波及性・緊
急性の高い研究開発と、こういったものを政府が中心となって産学官の連
携で強力に推進をする必要があると考えられます。
次に情報通信技術と社会との関係について第2章で述べております。ま
ず、情報通信技術の社会に与える効用を明らかにするために21世紀の社
会像を描こうということで、21世紀に向けた6つの潮流というものを抽
出して解説をしております。その抽出された潮流として、国際化・グロー
バル化の進展、産業の成熟化・空洞化、少子化・高齢化の進展、生活・行
動様式の多様化、環境保護・エネルギー保全、情報化の進展を挙げており
ます。これに対して、情報通信技術がどのように役に立つかというものを
次に説明しております。まず最初は国際化・グローバル化の進展というも
のに対応するものですが、これらによって個人生活や産業活動のあらゆる
面で国際的な交流や取引が増大することに伴い、グローバルな通信ニーズ
が増大してまいりますと、どこにいても、あるいはどこの相手に対しても
24時間いつでも通信できる状態が求められるわけでして、世界中に通信
が可能な移動体衛星通信というものが必要になってくるだろうというわけ
であります。
次はそれを説明した図でありまして、低軌道周回衛星を用いました移動
体衛星通信システムは、グローバルなマルチメディア移動体通信を実現す
るためのシステムでありまして、その効用は説明の必要もないほど明らか
であろうと思われます。
次は産業の成熟化・空洞化に対するものであります。我が国の企業は国
際競争力を維持するために生産拠点をアジア等に移転しつつあり、国内の
産業の空洞化が進みつつあります。このような状況に対して、例えば世界
的に急増しているインターネットの利用等による新たな企業形態の登場で
ありますとか、ニュービジネスの創出というものが期待されております。
このため、現在のインターネットのいろいろな制約条件を克服し、新たな
サービスが可能となる次世代のインターネットの開発というものが強く望
まれております。
この次世代のインターネットの研究開発項目としては、不正アクセスの
防止技術等により電子マネーを安心して利用可能とする、障害・輻輳時の
迂回技術等によりネットワークの信頼性を高める、超高速のルータ技術な
どを導入して超高速大容量化を図るなどが考えられます。また、ネットワ
ーク上を流れるコンテントの著作権等の保護につきましても必要な技術開
発を進めていく必要がございます。
次は、少子・高齢化の進展に対応するものでありまして、情報通信シス
テムを利用することに慣れていない人、あるいは体に障害を持つ人でも利
用者の状態に応じた通信機能を提供するような、知的なヒューマン・コミ
ュニケーション技術というものが重要になってくると思われます。
その効用の例として、利用者の状態、能力をネットワークといいますか、
コンピューター側が自動的に認識をいたしまして、利用者に応じた適切な
機能を提供するというものが考えられます。
次は生活・行動様式の多様化に対応するものでございまして、生活・行
動様式の多様化に伴いまして、人々は個人の活動、あるいは余暇を充実す
るようになりまして、より豊かでゆとりのある生活を選択するようになる
と思われます。このため娯楽面や教養面等におきまして、より臨場感や迫
力のある映像が望まれるわけであります。
そのための研究開発と、効用を示したのがこの図であります。1階では
家族が3次元の立体テレビを楽しんでおります。一方2階では子供が象の
映像をどこからか手に入れてきて、それを翌日学校で披露するために象の
映像を加工しているところであります。要するに自由に加工ができるよう
な映像技術ということでございます。
環境保護・エネルギー保全に対するものでありますが、これは技術の進
歩に伴い必要性が高まるいわば技術開発の影の部分であります。その影の
部分の課題を解決することにより安心して暮らせる社会を構築するための
研究開発も重要であります。その一例として、各種の無線機器や電子機器
を安心して利用できるようになるという電磁環境対策があるわけでありま
す。例えば、ペースメーカーをつけた病人が電話をしたいが、もし携帯電
話を使ったらペースメーカーに悪影響を与えるのではないか、とはいうも
のの電話のあるところまで行くのも大変だと悩んでいるときに、それを解
決するための対策を講じましたら、安心してベッドの上で携帯電話を使え
るようになるということであります。
以上、6つの潮流に対応する研究開発とその社会的効用についてご説明
をいたしました。
第3章におきましては、情報通信技術の研究開発における評価の在り方
について述べております。一般的に研究開発の評価システムの在り方とい
たしましては透明性があること、公正で客観性が高いこと、研究費や研究
人材等の研究資源の配分にこれを反映することの3つがあげられるかと思
います。また、評価の対象といたしましては、研究開発課題、研究開発機
関、研究者の3つが対象になるわけでございます。そこで情報通信分野の
評価システムの在り方について検討したわけでありますが、この情報通信
分野の特徴を踏まえた評価が必要であるということで、その評価の視点と
して、標準化・相互接続性への配慮、急速な技術革新への対応、社会的イ
ンパクトへの配慮の3つを考慮する必要があるだろうということになりま
す。
これらをもとにしまして、現在その評価の主たる対象になると思われる
通信総合研究所及び通信・放送機構の評価システムの在り方につきまして
整理をいたしております。その主なものをご紹介いたしますと、まず通信
総合研究所について、外部有識者による外部評価の導入と、急速な技術革
新に対応するためにすべてのプロジェクトに対して毎年評価を実施する必
要があるとしております。次に通信・放送機構については、機構の研究運
営に関する評価を行うための外部有識者による評価委員会を設置すべきで
あり、また評価を毎年実施します。これは、研究が公募制であるため評価
の透明性を確保するという意味で評価員の氏名の公開が必要であるとして
おります。
以上、評価につきましては、本文では非常に長く多岐にわたって述べて
おりますが、ここでは簡単に以上でご説明を終わらせていただきます。
続く第4章におきましては、これまで述べました第1章から第3章まで
を踏まえて、我が国の情報通信技術の研究開発を推進する上で、国が中心
となって行うべき具体的方策について検討した結果を述べております。ま
ず、国として推進すべき重点研究開発プロジェクトの抽出であります。こ
れは昨年5月の答申で77のプロジェクトとしてまとめたものを、その後
の技術動向やプロジェクトの実施状況等を考慮して現時点のものとしてブ
ラッシュアップしまして80のプロジェクトに再編成しております。この
重点研究開発プロジェクトは大きく3つの領域に分類できるわけでありま
して、第1がアプリケーションやコンテントの高度化をするためのアプリ
ケーション高度化技術、第2がネットワークインフラを高度化するための
ジェネリック・ネットワーク技術、第3が基礎的・先端的な研究開発を行
うファンダメンタル・リサーチであります。
更にこれを細かく分類いたしますと、いくつかの分野に分かれるわけで
ありまして、アプリケーション高度化技術におきましては、今後ウエイト
が高まると思われるコンテントを対象とするコンテント支援技術及びユー
ザの使いやすさに関するユーザ系技術の2分野と、それからジェネリック
・ネットワーク技術につきましては、光、放送、移動、衛星というように
個別なネットワーク技術と同時にその横断的・共通的なネットワーキング
技術の合計5つの分野、それからファンダメンタル・リサーチに関しまし
ては、この図に示されているようなものがあるわけであります。以上のよ
うな全部で11個の分野をつくっております。
昨年の77プロジェクトを見直した結果、今回はここにございますよう
な80プロジェクト、これを新たに提案させていただくということでござ
います。大部分は昨年のものと同じでありますが、一部修正、一部融合、
いくつかの2つ以上を融合して1つにするとか、それから新たなものをい
くつか追加するというようなことで結局80プロジェクトになったわけで
あります。これについての詳細は、お手元の資料をご参照いただければと
思います。
この重点研究開発プロジェクトの推進の問題でありますが、この分類は
技術的な観点から体系化したものでありますが、これらをそれぞれ目的を
明確化して、戦略的に推進をしていくために今回2つのことを提案してお
ります。まずその1点目は、通信・放送機構における産学官の連携による
戦略研究開発プロジェクトであります。これは21世紀の情報通信技術の
中核となる技術の研究開発として、我が国の技術水準の向上、国際競争力
の確保などを念頭に置いて、いくつかのものを戦略研究開発プロジェクト
として産学官で推進するということであります。次に2点目は、通信総合
研究所を中心にした情報通信ブレークスルー基礎研究21といたしまして、
これはまだ仮称でありますが基礎・学際領域研究を推進するものでありま
す。これは昭和63年度から実施をしております電気通信フロンティア研
究会で、これを見直して発展させたものとなっております。
先ほど述べました戦略研究開発プロジェクトでありますが、6つの戦略
研究開発プロジェクトを提案しております。全光通信技術プロジェクト、
広帯域マルチメディア移動通信技術プロジェクト、次世代LEO技術プロ
ジェクト、高効率通信ソフトウェア技術プロジェクト、次世代高機能映像
技術プロジェクト、ヒューマン・コミュニケーション技術プロジェクト、
この6つであります。なお、高効率通信ソフトウェア技術プロジェクトは、
先ほど社会的効用の説明で行いました次世代インターネットという中身で
ございます。
この戦略プロジェクトは、先ほど言いました80個の重点研究開発プロ
ジェクトのうち、それぞれのテーマに関係ある複数のプロジェクトをここ
へ持ってまいりまして、通信・放送機構のリサーチセンターを大規模拠点
化をして、効率的かつ強力に推進していこうというものであります。
次に情報通信ブレークスルー基礎研究21でございますが、これもデバ
イス、システム、利用環境という3つの重点研究領域を設定をいたしまし
て、デバイス関係では物性科学と情報通信の融合、システム関係では、生
命科学と情報通信の融合、それから利用環境におきましては、人間・社会
科学と情報通信の融合といった、それぞれの視点からの基礎的な研究開発
を推進するということにしております。
第4章におきましては、更に研究開発を推進するための制度の整備等に
つきましても言及しておりまして、情報通信技術に関しましては、研究開
発と標準化が密接に関係し、国際標準化にもつながっていくような研究開
発のアイデアを募集するという意味で、公募研究制度の創設について提案
をしております。また国際的連携の強化の観点から、国際共同研究の拡充
やG7のような国際共同実験の推進につきましても述べております。また、
地域の研究開発の強化のために地域のユニークな研究アイデアを募集して
行う地域の研究開発の強化ということを提言しております。さらに研究開
発基盤の整備といたしまして、技術開発及び標準化のための試験用ネット
ワーク、オープンテストベッドの整備につきましても提言をしております。
以上、答申案につきまして、第1章から第4章まで概略をご説明いたし
ました。諮問第87号に対する総合政策部会の部会報告は以上のとおりで
ございます。
○西澤会長 どうもありがとうございました。膨大な資料を取りまとめいた
だきまして、また丁寧にご説明いただきましてどうもありがとうございま
した。ご審議をお願いいたします。
(暫時)
まず私から伺いたいのですが、結局、先端的な仕事が過去において出た
場合には周辺で褒められたことがないものですから、この制度自体にそう
いうことをいかにして回避するかということを盛り込むことが、少なくと
も先端的なところには非常に重要であると思うんです。少し後になってか
らみんなにその重要さがわかりますから。また、一般に合議が絶対だと日
本人は思い込んでいますけれども、本当に最先端のことになら一人わかれ
ばいいということになると思います。
○安田委員 そのようなことも評価の中で述べております。先生のおっしゃ
るとおりになっているかどうかは別でございますが、要するに評価という
のは合議制だけではなく、一人の人にやらせるということも中で触れてお
りますし、そういう評価をすることも大事であるということを述べており
ます。
○西澤会長 研究の成果から選んだ人に点数をつけていけば、割り方いい人
が選べると思うんですが、いかがでしょうか。
○安田委員 評価者の評価につきましても研究しております。これは先生の
持論を前から聞いておりますから、そういうことできちんと入れておりま
す。
○西澤会長 ほかにございませんでしょうか。
(暫時)
どうもありがとうございました。それでは今の安田先生がご説明くださ
いました総合政策部会報告を了承することにいたしまして、資料99−4
に示します答申書(案)にありますように、諮問第87号に対する答申に
したいと思います。ご異議ございませんでしょうか。
(「異議なし」の声)
○西澤会長 どうもありがとうございました。それでは安田先生、総合政策
部会での検討、取りまとめ大変ありがとうございました。
ただいまの答申に関しまして、答申後の行政上の措置につきまして、郵
政省の方からご説明を伺えるということでございますので、よろしくお願
いいたします。
○木村通信政策局長 このたびは科学技術基本計画を踏まえた情報通信研究
開発基本計画の充実につきましてご答申を賜りまして、大変ありがとうご
ざいました。
昨年5月の本審議会の情報通信技術に関する研究開発基本計画に関しま
すご答申をいただいて以来、具体的施策の検討及びその実施に努めまして、
私ども行政を預かる立場からも努力してまいりました。その結果、政府の
経済構造改革特別措置におきまして、基礎科学研究と情報通信基盤が2つ
の柱となるなど、情報通信技術の研究開発の重要性が認められました。お
かげさまで今年度の研究開発予算は約317億円と、昨年度に比べまして
約70%の増ということで、ベースは小さいわけでありますけれども、伸
び率はそれこそ西澤会長がただいまおっしゃいましたようにダントツでト
ップを走っているというような状況でございました。
しかしまた、答申を承りました後におきましても、技術動向の変化や昨
年7月の科学技術基本計画の策定など、情報通信を取り巻く環境は目まぐ
るしく変化をしておりまして、刻一刻適切に対応する必要を迫られており
ます。このような状況の中、私どもがこれから情報通信分野の研究開発を
総合的かつ計画的に推進していくに際しましての貴重な指針をいただいた
わけでありまして、非常に荷が重いわけでありますけれども、さらにこの
ご答申をいただきまして、我々具体化をしていくという責務があろうかと
思いますので、その上での本当に貴重な示唆に富むご提言をただいまご答
申としていただいたというふうに感謝をいたしております。
情報通信基盤の整備と情報通信の高度化は、先ほどもお話がございまし
たように、現在政府で議論されております行政改革、経済構造改革等、6
大改革にもそのツールになるんだというようなことが言われておりますし、
また結果といたしまして、情報通信の高度化は国民生活や企業、政府活動
等さまざまな側面でもその効果が享受されるということでございます。こ
ういった施策を推進していくベースとしてエンジンとして、やはり情報通
信技術の研究開発が大切でありますので、重点的、計画的に実施できるよ
うに、本答申をいただきました後、我々も努力してまいりたいと考えてお
ります。
西澤会長をはじめとしまして、また安田部会長並びにご審議いただきま
した委員の先生方には、大変ご多忙中、何回となくご熱心にご審議をいた
だきまして、この答申をおまとめいただいたことに対しまして厚く御礼を
申し上げる次第であります。これからもよきご助言をいただきますよう、
よろしくお願いをいたします。ありがとうございました。
○西澤会長 どうもありがとうございました。
(3) 答申
諮問第51号「高度情報社会を展望した電気通信の標準化に関する基本
方策について」のうち「標準化体制・制度の望ましい在り方」
○西澤会長 それでは、次の議題に入らせていただきます。議事の(3)で
ありますが、答申「高度情報社会を展望した電気通信の標準化に関する基
本方策について」のうち「標準化体制・制度の望ましい在り方」の審議に
入らせていただきます。
最初に標準化政策部会の部会長をお願いしております羽鳥先生から部会
での検討結果についてご報告をお願いしたいと思います。よろしくお願い
いたします。
○羽鳥委員 それでは諮問第51号「高度情報社会を展望した電気通信の標
準化に関する基本方策について」に関する標準化政策部会における審議の
結果についてご報告させていただきます。
標準化政策部会では、昨年11月の審議再開以降5回の部会を開催いた
しまして、国際競争時代における標準化体制・制度の望ましい在り方につ
いて精力的な審議を行ってまいったわけでございます。今回の答申案を取
りまとめました新構成員、それから審議経過等につきましては、資料99
−5に概要がございます。1ページ目から2ページ目にかけまして経過等
が書いてございます。それから3ページ目に構成員のリストのとおり、高
橋委員、原島委員にも入っていただいて審議していただいたわけでござい
ます。
その答申案の概要について簡単にご説明させていただきます。答申案は、
第1章標準化の取組強化の必要性、審議開始の背景でございます。第2章
が今後の標準化推進の在り方、これは課題への具体的対処を与えているも
のでございます。それから第3章、情報通信標準化の推進方策等につき、
ここで取りまとめ、そして提言を述べております。以上の3章構成でござ
います。その他細かい情報等は参考資料として後ろに添付しております。
まず、第1章の標準化の取組強化の必要性についてでございますが、今
回の審議再開の最も大きな背景として、欧米における標準化の戦略的推進
がございます。ご案内のとおり、米国においては軍用技術を初め、政府で
開発した技術の民間転用、デファクト標準化をねらう活発な民間活動によ
りまして、コンピューター関連技術等におきまして非常に強い市場競争力
を有しております。一方、欧州ではETSIを核といたしまして、官民一
体となった標準化活動が展開されております。さらに研究開発プロジェク
トへの資金補助の条件に標準化活動への寄与を加えたり、標準化につなが
る実験等を行うプロジェクトに欧州委員会が資金補助をするなどいたしま
して、研究開発、実証実験及び標準化を一体的に推進する体制が確立いた
しております。このような欧州における標準化活動の代表的成功例がデジ
タル携帯電話のGSMでありまして、世界約80カ国で利用されておりま
す。
一方、我が国の国際的な技術競争力を比較してみますと、まず通信・電
子・電気計測器工業の技術貿易額については、対米国を中心に輸入超過と
なっております。また企業間の技術アライアンスにつきましても、我が国
企業を含んだ技術提携が減少傾向にございます。一方、米国企業同士の技
術提携の比率は増大しております。ここでも米国企業の技術的優位性が拡
大していることがうかがえます。
現在の情報通信分野の標準化活動を取り巻く環境を考えますと、このよ
うな欧米における標準化の戦略的推進や我が国の技術競争力の低下への懸
念のほか、アジア地域としての連携が不十分であったのではないかという
ことのほか、国際標準化機関であるITUの活動の限界といった問題、あ
るいは円滑な相互接続に必要な技術標準の不足や政府が行う研究開発と標
準化の関連づけの不足など、多くの課題が山積していると言えます。
よって、今回、国際競争時代における我が国の標準化の在り方を考える
ため、今後のグローバル標準化活動への取組方、アジア地域における連携
方策、国内標準化体制の強化及び今後我が国として特に重点的に標準化に
取り組むべき課題についてご審議をいただき、その結果を答申案の第2章
としてまとめております。
最初にグローバル標準化への取組方ですが、基本となる国際電気通信連
合(ITU)は、1国1票の全世界平等主義や言語問題等に起因する標準
化作業の遅れが問題となっており、その活動の改善が求められております。
我が国としてもITUの作業の遅れを最小限とし、その活動の優位性を保
つためにも新しい作業方法、体制の導入やITUの標準化活動全体の枠組
みの見直しなど、その活動の改善に向けた取組に積極的に貢献し、これを
リードしていくことが必要となっております。
またITUなどの公的標準化ばかりでなく、実質的な国際標準化活動を
行っているいわゆるフォーラム活動につきましても積極的にこれを活用す
ることが適当であります。また、できる限り我が国主導でフォーラム活動
を設立し、そのような活動を世界に向けてオープンとし、その活動をリー
ドしつつ、情報を発信していくことが重要であります。また標準化と国際
普及を念頭に、より早い段階から国際的なパートナーづくりに心がけ、国
際的にオープンな研究開発、標準化を進めるとともに、よりユーザの視点
に立った使いやすい標準の作成に努めることにより国際的な受け入れられ
やすい標準を作成することが可能となると考えられます。
一方、今後の国際社会を考えた場合、高度成長を続けるアジアは非常に
重要な役割を果たすと考えられます。このため我が国の国際的プレゼンツ
の向上を考えた場合、アジア・太平洋諸国との連携は非常に重要な要素と
なります。アジア・太平洋諸国の標準化に関する考え方も変わってきてい
るが、残念ながら現在のところ文化、宗教の違い、あるいは経済、技術格
差等さまざまな分散要因を抱え、また標準化に対する意識もまだ十分に醸
成されているとは言えない状況であるため、地域として標準化に関する相
互連携は十分に行われてきていないという現状でございます。
このため今後のアジア・太平洋地域における標準化推進に向け、研修や
セミナーの開催を通した人材育成やインターネット等を活用した標準化に
関する情報共有の推進、あるいはハンドブックや共同提案の作成など、共
同作業を進めることにより標準化に関するアジア・太平洋全体のスキルア
ップを図ることがまず重要となります。またそれらの活動とあわせ、将来
地域としてより組織的なアプローチが可能となるように、標準化関連業務
を専門的に行う地域組織の設立に向けた検討に積極的に取り組んでいく必
要がございます。
このようなグローバルなレベル、あるいはアジア・太平洋地域での標準
化活動の強化に積極的に取り組む一方で、これらに対応した国内体制の整
備も進めなければなりません。そこでまず国内においても民間企業におけ
る人材育成を進め、国際標準化活動をリードできる人材を育てるとともに、
我が国の標準化活動の真のオープン化を目指し、可能な限り英語使用の拡
大を進めることにより我が国の標準化活動の国際的評価の向上を図ってい
くことが必要であると考えております。
また、国内の電気通信事業者間の円滑な相互接続を確保するために必要
な詳細かつ実装可能な技術仕様を作成するため、国内標準化団体等におけ
る検討体制の整備やHATS推進会議のようなものを考えておりますが、
相互接続試験の実施体制の強化を図るとともに、標準化の促進につながる
実証実験用のテストベッドの整備につきましても検討していく必要があり
ます。
さらに、将来有望な技術について研究開発と標準化を関連づけて、より
一体的に行うことにより、国際競争力のある技術を戦略的に育てることを
目的とするような制度。例えば重要分野の標準化への貢献を前提として研
究開発プロジェクトを公募する。標準創造型研究開発制度の創設を目指し、
これにより我が国の標準化活動体制を全体的に活性化していくことも重要
でございます。
一方、どのような分野について重点的に標準化を行うべきかについて明
らかにするため、委員の皆様方から出された意見をもとに重点標準化課題
を取りまとめました。資料の方をごらんになっていただければと存じます
が、重点的に標準化を行うべき技術課題として10分野45課題を挙げて
おりますが、さらにその中からIMT−2000/FPLMTS、ATM
ネットワーク高度利用技術、統合ネットワーク管理技術、次世代放送シス
テム技術などの16課題、図中に網かけをした部分を特に重点的に取り組
むべき課題として抽出しております。今後これらの技術分野につき、国全
体として積極的かつ戦略的に標準化に取り組んでいく必要があると考えて
おります。
最後になりますが、第3章として国際競争時代における情報通信標準化
の推進方策として、これまでの議論を整理したまとめの章を設けておりま
す。
まず基本的な考え方といたしまして、新産業創出、産業競争力確保の手
段として標準化をとらえ、外国との連携も重視しつつ、民間主導のオープ
ンな標準化を推進するとともに、研究開発から実証実験、そして標準化ま
でを一体的に行い、ユーザ指向の使いやすい標準を速やかに提供すること
を今後の標準化政策の基本方針として掲げております。そして、その基本
方針のもと、取り組むべき具体的な標準化推進方策として、まず国が実施
すべき施策としては、研究開発と標準化の一体的推進のための標準創造型
研究開発制度の導入、迅速に詳細な標準の作成を可能とするための標準化
オープンテストベッドの整備支援などが挙げられます。また民間が実施す
べき施策としては、民間標準化団体等の機能強化による実際に実装可能な
技術仕様を円滑に作成する体制の整備、標準化に携わる人材の育成強化、
標準化活動のオープン化のための英語使用の拡大などを挙げております。
そして最後に官民一体となって取り組むべき国際協力強化策として、ア
ジア・太平洋電気通信標準化機構(ATSI(アッツィー))設立構想へ
の対応を初めとしたアジア・太平洋地域における連携・協力体制強化策の
推進、ITUの改革による国際公的標準化の推進を挙げております。
以上が今後の国際競争社会における我が国の情報通信標準化基本方策に
関する本答申案の概要でございます。
○西澤会長 どうもありがとうございました。ただいまのご報告につきまし
て、ご審議をお願いいたします。
○坂田委員 先ほどGSMのようにヨーロッパ諸国が標準化を推進して、国
際的にも中国も含めてできちゃっていると、まさに今おっしゃった点が日
本において欠けていたと思いますので、ぜひ産官一体となってさらに進め
ることがより一層重要だと私も認識しておりますので、まあ委員の皆さん
方も含めて、鋭意こういう点についてやはりいくべきじゃないかというふ
うに思いますので、省側でもぜひ頑張ってほしいなと、こういうふうに思
います。
○西澤会長 ありがとうございました。ほかにございませんでしょうか。
それではまたいろいろとこういうものもご議論いただくことがあろうか
と思いますが、ただいまの標準化政策部会の報告を了承することにいたし
まして、資料99−7に示します答申書の(案)にありますように、諮問
第51号に対する答申にしたいと思いますが、ご異議ございませんでしょ
うか。
(「異議なし」の声)
○西澤会長 それでは、ご異議がないようでございますので、本件を答申す
ることにいたします。羽鳥先生、標準化政策部会でのご検討と取りまとめ
をいただきましてどうもありがとうございました。
ただいまの答申に関しまして、答申後の行政上の措置につきまして、郵
政省の方からご説明を伺えるということでございますので、よろしくお願
いいたします。木村局長、お願いします。
○木村通信政策局長 高度情報社会を展望いたしました電気通信の標準化に
関する基本方策につきましてただいまご答申をいただきました。まことに
ありがとうございました。高度情報通信サービスの円滑な導入を図る上で、
相互接続性、相互運用性の確保のための標準化はまず考えなければならな
い重要な課題と心得ておりまして、これまでもこのような観点から本審議
会で2度の一部答申をいただいております。郵政省としましても各種施策
に取り組んでまいったところであります。
今日、情報通信分野におきます世界的な市場競争の活発化に伴いまして、
市場競争力確保の手段の一つとして特に標準化の問題が注目されておりま
す。今回国際競争力確保のための標準化という新たな視点から精力的にご
審議をいただき、このような充実した答申をいただきましたことは、我が
国の情報通信標準化政策の具体的な道筋を考える上で画期的なことである
と考えております。特に我が国のすぐれた技術をより効果的に世界市場を
リードする標準に育てていくため、今回ご提言いただきました標準創造型
研究開発制度の創設に向け、早急に検討を進めてまいる考えでございます。
またアジア諸国との今後の連携強化の重要性にかんがみ、ご提言いただ
きましたアジア地域における標準化に関する組織的な協力体制、ATSI
といいましょうか、の確立を目指した取組につきましても積極的に推進し
てまいりたいと考えております。
そのほかにも標準化オープンテストベッドの整備支援を初めとして、具
体的な提言が数多く盛り込まれておりまして、これを受けまして、私ども
積極的に具体的に取り組んでいく考えでございます。羽鳥先生を初めとい
たしまして、関係委員の先生方にはご多忙中にもかかわらず、幾度となく
熱心にご審議を賜りまして、このような答申をまとめていただきましたこ
とにつきまして、改めて御礼を申し上げる次第でございます。大変ありが
とうございました。
○西澤会長 どうもありがとうございました。
(4) 答申
諮問第86号「PHSの周波数有効利用方策」
○西澤会長 それでは次に議事の(4)の答申、諮問第86号「PHSの周
波数有効利用方策」の審議に入らせていただきます。
最初にPHS周波数有効利用方策委員会の委員長をお願いしておりまし
た、再びまた羽鳥先生から委員会での検討結果についてご報告をお願いい
たします。
○羽鳥委員 それでは、PHS周波数利用方策委員会からのご報告をさせて
いただきます。
概要99−8に審議事項、審議経過、それから審議結果等についてまと
めてございます。それから委員会の構成でございますが、99−9、報告
書の方の2ページ、そこに委員会の構成、そして3ページに分科会の構成
員の方々の名簿がございます。なお、この委員会は第2回まで斎藤忠夫先
生がお手伝いになられた委員会でございまして、最終的な取りまとめを私
がお手伝いさせていただいた次第でございます。
スライドをごらんになっていただくとおわかりいただけるかと思います
が、一番左側が95年7月で一番右側が97年3月ということでサービス
開始後1年9カ月で、縦軸の方を見ますと602万加入となっております
が、大変急速に伸びてきたということがおわかりいただけるかと思います。
OHPに使わせていただいております資料のコピーが99−8の後ろのと
ころ、すなわち10ページの次からコピーがつけてございますので、細か
い文字等につきましてはコピーをごらんになっていただければと存じます。
次のOHPはPHSの事業者分布を示しているものでございます。これ
は全国で28事業者がサービスを提供中であるということを示しておりま
す。
海外でのPHSの普及状況でございますが、日本を含め世界14カ国で
PHSの採用を決定していただいているということを示しております。国
内外のPHSの動向を踏まえ、今後のPHSの安定した発展を確保するた
めに今回の検討が役に立ってほしいということでございます。
答申の構成でございますが、第1章PHSの需要予測、それから第2章
PHSの周波数利用効率、第3章PHSの周波数有効利用方策、そして第
3章の中に周波数有効利用方策の抽出、各方策に対する見通しと評価、そ
して提言という順番でまとめてございます。
PHSの需要予測でございますが、公衆用PHSはサービス開始後の立
ち上がりが大変急激な増加を示しているということをご紹介いただきまし
たが、そのような急激な増加に合うコンペルツ曲線、通常ロジスティック
曲線というのが使われることが多いわけでございますけれども、急激な増
加を示す場合に適しているコンペルツ曲線に沿って需要が推移するものと
して示したものがそのグラフでございます。2本線が引いてございまして、
2000年度末、それから2010年度末の数字が上に書いてございます。
PHSの周波数利用効率でございますけれども、公衆用PHSの加入者
収容数はどうなっているか。千代田区の昼間人口密度をもとに、全国1M
Hz当たりの収容能力を推定いたしますと、1MHz当たり54万加入と
いうことになります。現在、公衆用周波数として12MHzが用意されて
おりますので、12MHz当たりの加入者収容数というのは全国で約64
8万加入という計算になります。これは全国的に人口密度が高いと想定し
て算出した場合ということでございます。
自営用PHSの所用周波数帯域でございますけれども、家庭用デジタル
コードレス電話機につきましては、2000年度末に3MHz、2010
年度末に3.4MHz、事業所用システムといたしましては、2000年
度末に約6MHz、そして2010年度末に14.6MHzということを
予測しております。事業所用と家庭用とのトラフィックの重なりはないと
想定されるため、事業所用の所用周波数帯域が自営用所用周波数帯域と想
定いたします。
PHSの周波数有効利用方策でございますが、導入すべき周波数有効利
用方策でございます。公衆用PHSと自営用PHSのそれぞれについて周
波数有効利用方策の見通しと評価を行ったものでございます。特に公衆用
PHSについては、需要予測及び加入者収容数によると、今後周波数の逼
迫(ひっぱく)が予想されるため、以下の周波数有効利用方策を早急に実
施していくことが必要でございます。
小ゾーン化の推進。それからアダプティブアレーアンテナ。ベースステ
ーションのアンテナとしてアダプティブアレーアンテナ技術を導入いたし
まして、ヌルゾーンをつくって干渉に強くするということ。それから3番
目として基地局間の無線の同期を導入することによって、周波数有効利用
能力が高まる。それから4番目として、公衆用PHSによる自営用周波数
帯域の利用。それから公衆用PHSの追加割当てということでございます。
これは、従来固定局で使用していた周波数のうち、少なくとも3MHz程
度を公衆用PHSで使用できるよう措置をしたいというもので、自営用周
波数帯を公衆用でも使えるようにしたい、そして幅も左右に広げたいとい
うものであります。
加入者収容数は現在648万。下の横線でハッチングがかけてある部分
でございますけれども、648万というのが先ほどご説明いたしました収
容能力であります。先ほど予測をいたしましたコンペルツ曲線というのは、
もう97年のうちにそれを超え始めております。したがって、その加入者
収容数をいかにして増やしていくかということでございますけれども、そ
の横線の上の少し色の濃い部分が自営用周波数の使用追加割当てでここま
でいくだろうということ。1.4から1.5倍ぐらいにできるということ。
それからその上の点々で振ってあるところは小ゾーン化の推進。これは1
00メートル半径ぐらいの小ゾーンというのを基本にしているわけでござ
いますけれども、現在その普及を早めるという観点から500メートルぐ
らいの大ゾーンでサービスを行っていらっしゃる事業者もあるわけでござ
います。この小ゾーン化の推進によって1.8倍ぐらいと。それから基地
局無線同期導入によって1.2倍ぐらい。それから自営システムによる公
衆サービスによって1.05倍と。それからアダプティブアレーアンテナ
の導入によって1.2倍と、こういう周波数有効利用方策を導入して、今
後5年間の周波数需要に対応をとると、加入者収容数は約4倍の2,55
8万加入ということになって、その予測する需要に対して対応可能である
ということを述べております。
なお、以前パーソナルデジタルセルラーにつきまして本審議会でご報告
があったわけでございますけれども、そこでは採り上げられたのはハーフ
レート化。それからスポットゾーンと申しまして、非常に小さなセルを非
常にトラフィックの多いところにはスポットゾーンを設ける。このうちハ
ーフレート化は、PHSにつきましては、せっかく使っている32kbp
sというスピードはしばらく財産として持っていたいと。それからスポッ
トゾーンというのは半径100メートルぐらいですけれども、これはPH
Sは最初からそういうゾーンでございますので、これはPHSには当ては
まらないということで、先ほどご説明したような手法を使って約4倍の能
力にしたいということであります。
それらの改善策につきましては、概要の4ページ目のところにやや説明
がございますので、必要に応じてご参照いただければと思います。
最後にPHSの周波数有効利用方策の将来的な周波数有効利用方策でご
ざいますけれども、今後5年程度は前述の方策を実施すれば大丈夫だろう
と。それ以後の方策といたしまして、PHS周波数の21世紀以降の将来
的な対策といたしましては、IMT−2000での使用を考慮いたしまし
て、1,895MHzより低い周波数をPHSで利用することにつきまし
ても検討をすることが適当であろうということをあらわしております。
どうもありがとうございました。以上でございます。
○西澤会長 どうもありがとうございました。それでは、ただいまのご説明
に関しましてご審議をお願いしたいと思います。
○坂田委員 自営と公衆を使っての公衆サービスという点についての技術開
発等が非常にこれから問題になるんだろうと思うんですが、これについて
はやはり普遍的にオープンの形でしていかないと自営とのいろいろな点に
ついて問題が残る点が懸念されますが、その点はいかがでしょうか。
○羽鳥委員 先ほどご紹介した4ページをちょっとごらんになっていただき
ますと、そこに公衆用PHSによる自営用周波数帯域の利用、[4]でご
ざいますけれども、公衆用PHSと自営用PHSの周波数のアンバランス
を是正する方策として、公衆用PHSの空中線電力及び空中線の絶対利得
を自営用PHSと同じ条件で運用します。この同じ条件ということは、電
力が小さい、それから利得が小さいアンテナを使うということでございま
すけれども、自営用PHSと同じ条件で運用するという条件のもとで、現
在、自営用PHSで使用している周波数帯を公衆用PHSでも利用可能と
するべきであると。さらに公衆用サービスが提供できる自営システムの導
入を推進するべきであるということを概要の中に述べておりますけれども、
ご質問にそれで十分答えたことになっておりましょうか。
○坂田委員 技術的な面でオープンになるかどうかというのが普遍的に大丈
夫かなということが非常に気になっているんですけれども。
○寺崎移動通信課長 自営のシステム仕様が、いろいろメーカーによって若
干違うところがあったりしているんですけれども、そこも現在ちょっと標
準化をきちっとやりましょうということで電波産業会の方でも検討が進ん
でおりますので問題ないというふうに考えております。
○西澤会長 どうもありがとうございました。ほかにございませんでしょう
か。
○坂田委員 携帯とPHSの両方を足すと2010年ではどの程度と考えて
いるんですか。
○寺崎移動通信課長 ちょっと私ども事務局で詰めさせた立場上、また周波
数を扱っており、周波数が不足するとまずいという立場から、かなりどち
らかというと多目の予測をしているところもあるんですけれども、201
0年のときにどうなるのかという考え方を見たときに、15歳以下の方は
端末をお持ちにならないと。それから65歳以上の方はご夫婦で1台端末
をお持ちになる。それから15歳から65歳の間の方は基本的には端末を
お持ちになるというような、そういう想定で一応はじいております。ちょ
っとそれは本当にそうなるかどうかというところはあると思うんですけれ
ども。
○坂田委員 ありがとうございました。
○西澤会長 ほかにございませんでしょうか。
(暫時)
日本の普及もいいんですが、どうも東南アジアはもっと速いスピードで
いっておりますから、ぜひ負けないようによろしくお願いいたします。
それではただいまのPHS周波数有効利用方策委員会報告を了承するこ
とといたしまして、資料99−10に示す答申書(案)にありますように、
諮問第86号に対する答申としたいと思いますが、ご異議はございません
でしょうか。
(「異議なし」の声)
○西澤会長 それではご異議がないようでございますので、本件を答申する
ことにいたします。羽鳥先生、PHS周波数有効利用方策委員会での検討
と取りまとめ、ありがとうございました。
ただいまの答申に関しまして、答申後の行政上の措置につきまして、郵
政省からご説明があるそうでございます。それでは谷局長、よろしくお願
いします。
○谷電気通信局長 電気通信局長の谷でございます。
ただいまはPHSの周波数有効利用方策のご答申をいただきまして、ま
ことにありがとうございました。
ご案内のとおりPHSはサービス開始以来、わずか1年9カ月で600
万加入を超えるという、まさに記録的な伸びを示しておりますけれども、
その一方で周波数事情が非常に厳しくなってきているという事情がござい
まして、今回のご審議をお願いした次第でございました。今回のご答申で
はPHSの需要は今後さらに伸び続けて2000年度末には約1,500
万加入から2,000万加入に達すると予測されました一方で、いろいろ
ご検討いただきました各種の周波数有効利用方策を実施することによりま
して、今後5年程度の周波数需要は賄えるというご答申をいただいたわけ
でございまして、私ども大変心強く安堵(あんど)いたした次第でござい
ます。
ご報告にもございましたように、このPHSは我が国で開発されました
システムとしては初めて海外におきましてもアジア、あるいは南米を中心
として13カ国で採用が決定しているものでございまして、今回のご答申
はこれらの動きに対しましても良い影響を与えることができるものと大変
喜ばしく思っている次第でございます。今後とも一層の周波数有効利用に
ついて取り組んでまいりたいと思いますので、引き続きよろしくご指導の
ほどお願い申し上げます。
羽鳥先生初め、委員の皆様、専門委員の皆様には1年近くにわたりまし
てご多忙中にもかかわらず大変ご熱心にご審議をいただき、このご答申を
おまとめいただきましたことに対しまして、改めて厚くお礼申し上げる次
第でございます。まことにありがとうございました。
○西澤会長 どうもありがとうございました。
(5) 答申
諮問第89号「電波利用における人体防護の在り方」
○西澤会長 それでは、次の議事の(5)の答申、諮問第89号「電波利用
における人体防護の在り方」の審議に入らせていただきます。
最初に生体電磁環境委員会の委員長をお願いしております専門委員の上
野先生にお越しをいただいておりますので、委員会での検討結果につきま
してご報告をいただきたいと思います。
○上野専門委員 上野でございます。いまOHPの原稿のコピーを皆様に回
しております。
生体電磁環境委員会におきまして、電波利用における人体防護の在り方
につきまして検討行いました結果について、ただいまからご報告申し上げ
ます。
審議事項でございますけれども、低電力放射線源等に対する電波防護指
針の設定及びその適用のために必要な電磁環境の測定法と推定法に関する
ものでございます。もう一つは、その電波防護指針の今後の取扱いについ
て検討いたしました。最後に電波の人体への影響に関する今後の研究項目
についての提言を行っております。
もともとこの電波利用における人体の防護指針に関しましては、平成2
年6月に大越先生を委員長といたしまして、この本審議会より答申されて
おります。その中で人体の防護指針の在り方の基本的な考え方が示されて
いるところですが、ご存じのように携帯電話の急速な普及がありました。
それからそれと同時に測定技術が非常に進歩いたしまして、これから述べ
ますSARという体の中で特定の場所に電磁波が吸収されますけれども、
それを測定する技術が進歩しておりまして、また諸外国における規制導入
の動きがございまして、それとマッチングするためにも早急に考える必要
があるということ。あと健康への影響が世の中大変高まっておりますから、
そういうことを勘案いたしまして、ただいま申し上げました3つの項目に
ついて検討を行ってまいりました。
21名の委員の構成でこれまで4回の審議を行ってきましたけれども、
特に第3回、平成9年3月24日には外部の関係者からの意見の聴取を行
いまして、それで貴重なご意見を賜りまして、それをまた加味いたしまし
て、最終的に平成9年4月14日に第4回の委員会を開きまして答申案を
取りまとめたものでございます。
まず、最初にこの骨子を申し上げます。防護指針の一番の論点は、ここ
にありますように、まず全体の何もない白いところが平成2年の防護指針
でございますけれども、ここで低電力放射源という項目を削除いたしまし
て、新たに局所吸収指針という項目を設けたわけでございます。ここに大
きく3つの柱がありまして、全身平均のSAR、局所SARと接触電流の
項目でございます。なお、この低電力放射源という前の指針は自動的に、
今回新しく検討いたしました局所吸収指針に包括されるというわけで自動
的に削除いたしました。
まずSARでございますけれども、SARというのはここにございます
ように、スペシック・アブソープション・レイトの略でございまして、比
吸収率ということでございます。生体が電磁界にさらされますと、単位質
量の組織に単位時間に吸収される電流エネルギーの量を言っております。
単位はW/kgでございまして、これをもとに定量的に評価するわけでご
ざいます。
SARというのは一般的には人の基礎代謝量をもとに検討されておりま
す。まず動物実験によりますと、その数値が大体4W/kgから8W/k
gになりますと行動に少し異常が起こるという、そのぎりぎりのスレシュ
ホールドがあります。それから勘案いたしまして10倍の安全率を見越し
まして、それで0.4W/kgであれば大丈夫であるということで、ここ
でこの案をつくっております。なお、人間の基礎代謝量は大体100Wで
ございます。普通の状態で100Wございまして、0.4W/kgにいた
しますと体重50キロの人は20Wですね。60kgの人は24W、70
kgの体重の方は28Wになりまして、これは大体100Wから考えます
と普通の基礎代謝量の4分の1程度ということで問題はないというわけで
ございます。
そういうことで全身平均のSAR、0.4W/kgというのは、非常に
科学的根拠がある共通の認識として確立されたものとなっております。
そういうわけで、今回、まず全身平均のSARというのは、ここでまた
2つ考えておりまして、管理環境と一般的に何も知らない状況で使う一般
環境でございますけれども、まず0.4W/kgでございますけれども、
一般環境はこれに5分の1を掛けておりまして、0.08W/kgになっ
てございます。また局所SARに関しましては、任意の10gの組織を持
ってきまして、その10g組織に対して、例えば体の場合は脳を含めまし
て10W/kgのSAR、手足に関しましては20W/kgとなるわけで
ございます。10W/kgの場合は、これは組織10g当たりに0.1W
でございます。それを一般環境の場合はそれを2W/kg、手足の場合は
4W/kgとするわけでございます。
また接触電流に関しましては、これは実際アースをしていないような場
合に、接触ハザードが防止されていない場合、手を触れた場合に直接電流
が流れますけれども、それは100kHzから100MHzまでの周波数
では100mAでございまして、一般環境の場合は45mAにしておりま
す。これは電流の場合は5倍の安全率をとっておりまして、それで45と
いう数字になっております。
それで今度、測定法と推定法でございますけれども、一般的に測定法に
関しましては、ファントム実験を用いましていろいろな項目が測定可能で
ございまして、現在各国できちっとした標準化の機関でこのファントムを
使ったSARの測定法とか、またコンピューターを使った方法で体の内部
のSARを推定する方法が検討されている段階でございます。
これはその一例でございまして、ファントムを使いまして、ずっと下の
方に携帯電話を置きまして、その頭の中のSARの分布を推定する方法の
一例でございます。
今後の電波防護指針の取扱いに関してはいろいろなことを勘案する必要
がございます。例えばここに書いておりますように、最近の信頼できる学
術的知見に基づく防護措置の確実な実施、また新しく開発する電波利用シ
ステムの安全性の担保、諸外国における動向との整合性の確保、電波利用
に関する国民の安心感の醸成等を勘案し、結論といたしまして、一般国民
の安全性を考慮した規制を導入することが望ましいのではないかと思って
おります。またそのためには合理性を配慮した規制導入の必要性がござい
ますけれども、その場合、十分な周知期間を置く必要があろうかと思って
おります。
まず規制の導入をするかしないかにもかかわらず、それと関係なく、何
しろ人体に対する安全性の面でございますから、最後に今後の研究の方向
も提言しております。
まず一つは、爆露(ばくろ)評価、まあドシメトリ及びその爆露システ
ムの研究でございまして、これはより正確な方法で推定、測定する方法を
開発する必要がございます。
また生物学的な研究としましては、物理学的な、又は生物学的影響の研
究、人体に対する影響等を解明するために、まず遺伝子レベル、がん、免
疫系、神経系の影響に関する研究を進めていく必要があろうかと思います。
また疫学調査でございますけれども、これから長期にわたる疾病把握を
行える研究計画の検討、又はその体制が整備されましたら、きちっとした
格好で疫学を調査を行う必要があろうとも思っております。
以上でございます。
○西澤会長 どうもありがとうございました。ただいまのご報告に関しまし
て、ご審議をお願いいたします。
(暫時)
これに関連する事項として強い電界とか、強い磁界という、どっちかと
いうとスタティックなものの方でもいろいろな問題があるやに聞いており
ますけれども、それとの連携はとっていらっしゃるんですか。
○上野専門委員 私自身はどっちかというと強い磁界の問題とかいろいろ研
究しておりますけれども、ここで高周波帯域の問題を中心に扱っておりま
す。ただし30kHzとか低いところも、一応パルス磁場の問題とか、こ
こでやった800MHzと1.5GHzが中心でございますけれども、そ
の変調波なんかもありますから、特にそういうことが細胞のカルシウム放
出吸収とか、細胞内のシグナル伝達なんかで非常に世界的に話題になって
いるんです。あとがんが発生するかどうかとか、そういったところも勘案
しまして、基礎研究をさらに検討する必要があろうかと思っております。
○西澤会長 ほかにございませんでしょうか。
○國井委員 電磁波防護のエプロンとか出ていますよね。そういうのが余り
役に立たないとかという話もあるんですけれども、きかないという話もあ
りますけれども、そういうものについての研究とか、あるいは指針とかは
ございますか。
○上野専門委員 個人的には、あれはほとんど役に立っていません。何もや
る必要はないと思っています。
○西澤会長 ほかにございませんでしょうか。
(暫時)
それではご質問がないようでございますので、生体電磁環境委員会報告
として了承することにいたしまして、資料99−13に示します答申書
(案)にありますように、諮問第89号に対する答申といたしたいと思い
ます。よろしゅうございましょうか。
(「異議なし」の声)
○西澤会長 それではご異議がないようでございますので、本件を答申する
ことにさせていただきます。
上野専門委員、生体電磁環境委員会での検討と取りまとめ、ありがとう
ございました。
ただいまの答申に関しまして、答申後の行政上の措置につきまして、省
側からご説明を伺えるということでございますので、谷局長よろしくお願
いします。
○谷電気通信局長 ただいまは電波利用における人体防護の在り方につきま
してご答申をいただきまして、まことにありがとうございました。
昨今の携帯電話に代表されます移動体通信の急速な普及に伴いまして、
無線機から発射される電波が人体に与える影響につきまして、世間の関心
が非常に高まってきております。中でも今回ご答申いただきましたような
携帯電話のように広く全国民レベルで使用され、かつ身体の極めて近くで
用いられておりますこういう無線機器に対する電波防護指針の策定とその
規制の必要性まで含めました今後の取扱いにつきましては、人体の安全性
という極めて重要な視点を含むものでありまして、また、安心して電波を
利用していただける環境を整備する上で必要不可欠なものでございます。
したがいまして、この問題に関しましては可及的速やかにその対応策を講
じていくべきであると考えております。ご答申をいただきましたので、こ
の趣旨を踏まえまして、さっそく電波関係法令の改正を含めた施策の検討
を開始いたしますとともに、動物実験等の研究の推進につきましても積極
的に取り組んでまいりたいと考えております。
委員の皆様、上野先生初め、専門委員の皆様、大変ご多忙の中にもかか
わりませず、熱心にご審議いただきまして、このような難しい問題につき
ましてご答申をおまとめいただきましたことに対して改めて厚くお礼を申
し上げたいと思います。私ども今後とも良好な電波環境の維持に積極的に
取り組んでまいりたいと思いますので、引き続きよろしくご指導をお願い
したいと思います。本当にありがとうございました。
○西澤会長 どうもありがとうございました。
(6) 一部答申
諮問第82号「非静止衛星を利用する移動衛星通信システムの技術的条
件」のうち「150MHz帯でFDMA方式をサービスリンクに使用する
システムの技術的条件」及び「1,600MHz帯でTDMA/FDMA
方式をサービスリンクに使用するシステムの技術的条件」
○西澤会長 それでは次に議事の(6)番目の一部答申、諮問第82号「非
静止衛星を利用する移動衛星通信システムの技術的条件」のうち「150
MHz帯でFDMA方式をサービスリンクに使用するシステムの技術的条
件」及び「1,600MHz帯でTDMA/FDMA方式をサービスリン
クに使用するシステムの技術的条件」の審議に入らせていただきます。
最初に移動衛星通信システム委員会の委員長であります大森専門委員に
お越しいただいておりますので、委員会での検討結果についてご報告をお
願いしたいと思います。大森専門委員、よろしくお願いいたします。
○大森専門委員 移動衛星通信システム委員会の委員長を仰せつかりました
大森でございます。
さっそく委員会の報告をさせていただきたいと思います。
お手元の資料の99−15及び99−14が関連する資料でございます。
厚い方の99−15が報告書案でございます。厚い資料ですので概略とい
うことで99−14、報告概要をおつけしておりますので、ご説明は14
の報告概要により行わせていただきたいと思います。
移動衛星通信システム委員会では、諮問第82号「非静止衛星を利用す
る移動衛星通信システムの技術的条件」のうち「150MHz帯でFDM
A方式をサービスリンクに使用するシステムの技術的条件」及び「1,6
00MHz帯でTDMA/FDMA方式をサービスリンクに使用するシス
テムの技術的条件」について審議を行いまして答申案をまとめました。
次に、この審議の背景ですけれども、衛星通信システムには主として高
度3万6,000キロメートルの静止軌道上の静止衛星を使用するもの。
これは現在のほとんどの衛星通信システムは静止衛星を用いているわけで
すが、近年それよりも低い高度の軌道、すなわちロー・アース・オービッ
ト(Low Earth Orbit)ということでLEOと称されてお
りますけれども、その非静止衛星を用いるシステムが続々と提案されてお
ります。このLEO衛星を使用する通信システムでは、衛星と地上の距離
が短い、つまり高度が低いということで小型で低出力の地球局を使用する
ことが可能となるほか、電波の届かないブラインドエリアがほとんどなく
なるということで、どこからでもアクセスできるといった特徴をいかして、
ビル影であるとか、地形によってサービスが制約される地上系の通信網を
補完する。あるいはグローバルな情報通信ネットワーク実現のためのシス
テムとして期待されているわけでございます。
LEO衛星を使用する通信システム、以下LEOシステムと言わせてい
ただきますけれども、これについてはITUの無線通信部門においても携
帯移動地球局の技術基準が現在審議されておりまして、我が国においても
当該サービスが行われるという動きがある状況でございます。
審議経過ですけれども、このLEOシステムと申しますのは、大別して
2つに分けられております。1つが1GHz以上の周波数の電波を使用し、
音声及びデータ通信をサービス対象としたいわゆる大規模LEOと1GH
z未満の周波数の電波を使用し、データ通信をサービス対象とした小規模
LEOに区分されますけれども、本委員会では審議の促進を図るために小
規模LEO分科会と大規模LEOの分科会を2つ設置いたしまして並行し
て審議を進めてまいりました。
委員会では各分科会の報告に基づきまして、委員会報告並びに答申案を
取りまとめてございます。
今回は、今後同様のシステムの提案が現在計画されているわけですけれ
ども、一般的条件で規定した要件以外を有する他のシステムについては個
別に審議するということで、今回は具体的な2つのシステム、大規模LE
O1つ、小規模LEO1つについて具体的な審議を行いました。
審議概要はOHPの方でご説明したいと思いますが、まず最初の小規模
LEOの方についてでございます。これは具体的なシステム例として、オ
ーブコムというシステムを技術的な検討、審議を行いました。背景は上に
書いてございますけれども、米国とかカナダにおいて商用のLEOシステ
ムの実用化がされておりまして、このオーブコムというシステムは既に一
部運用を始めております。ところがこの使用周波数150MHz帯は、我
が国でも既存の地上系の通信システムが既にサービスを行っておりますの
で、その無線局との周波数共用という点で、本委員会ではその部分につい
ての審議に、かなりの労力が払われました。
審議事項の結果につきましては、報告概要、資料99−14の3ページ
にまとめてございます。オーブコムシステムの技術的条件であります。そ
のうちの特に周波数の共用条件、これは一般的条件の中の最後の項ですが、
周波数共用条件というところで主な技術的な検討をしまして膨大な干渉計
算を行いそれについて審議を行いました。その結果がここに示してござい
ます。
具体的には数字は報告書を見ていただきたいんですが、結果的にどうい
う条件を加えたかといいますと、全体の通信量を制限する、あるいは特定
周波数の送信時間率を制限するということで、干渉がある一定のパーセン
ト、0.1%であるとか、個々のケースで計算したわけですが、そういっ
た値に収まるように数値を決めております。
次に審議の対象となったオーブコムのシステムのイメージですけれども、
オーブコムシステムと申しますのは、衛星を36基使ってシステムが全体
が構築されております。衛星の高度は約750キロメートルですので、1
回同じ衛星が同じ場所に回ってくる周期は約90分ということになってお
ります。フィーダリンク局は日本でサービスが開始されますと、このフィ
ーダリンク局が国内にも設置されまして、衛星そのものが日本国内での周
波数、当該のバンドの周波数が使われているか使われていないかを常にモ
ニターいたしまして、使われていない周波数チャンネルを自ら選択してそ
こで通信を行うといったようなシステムになっておりまして、既存のシス
テム、周波数と共存できるようなシステムをこれ自体が持っております。
このサービスは音声ではなく低速のデータ、いわゆるメッセージであると
か低速データで音声は対象になっていません。
次は大規模LEOと称されるシステムですが、これは具体的にはイリジ
ウムシステムという米国で提案されたシステムの構築が進んでおりますイ
リジウムというシステムでございます。
審議事項は、一般的な条件、技術的要件等は、やはり報告概要の5ペー
ジにまとめてございます。このイリジウムのシステムにつきましては、オ
ーブコムの場合のような、既に日本の国内で周波数が使われていると、特
定のシステムと干渉するということは今のところございませんので、オー
ブコムのような詳細な周波数共用の技術的検討は行ってはおりませんが、
それ以外を除いては基本的にオーブコムと同じような技術的な検討を加え
て、その結果がここに書いてございます。
イリジウムシステムのイメージですけれども、衛星の数は全部で66基、
6面の軌道に11個ずつ配置して、トータルで66基の衛星が上がるとい
うわけでございます。これにつきましても軌道の高度は、つまり衛星の高
度は780キロで約800キロ程度ということでありますので、軌道の周
期もオーブコムと同様に約100分といったことになっております。これ
につきましても、我が国でサービス開始の予定であり、ここで書いてあり
ます遠隔追跡コマンド局等が国内に設置されることになっております。
以上で報告を終わります。
○西澤会長 どうもありがとうございました。それでは、ただいまのご報告
に関しまして、ご審議をお願いいたします。
○安田委員 先ほどのオーブコムの説明のなかで、携帯移動地球局は人工衛
星局の制御信号を受信してうんぬんという部分がありましたね。受信しよ
うと思ったときに地上システム側で既に電波を使用している場合には妨害
がある可能性はないんですか。そうするとその制御すらできないというこ
とにならないのかなということなんですがね。
○大森専門委員 人工衛星からの電波は、地上のシステムと共用していない
ので問題はありません。地上のシステムがこのオーブコムの人工衛星に干
渉するということであれば、むしろそういうケースよりもオーブコムが地
上に与えるケースの方が大きいという前提というか、そういう条件が成り
立つということで検討を行っております。
○安田委員 ああ、そうですか。
(暫時)
○西澤会長 よろしゅうございましょうか。それでは、ほかにご質問がない
ようでございますので、この移動衛星通信システム委員会報告を了承する
ことにさせていただきまして、資料99−16に示します答申書(案)に
ありますように、諮問第82号に対する答申としたいと思います。よろし
ゅうございましょうか。
(「異議なし」の声)
○西澤会長 それではご異議がないようでございますので、本件を答申する
ことにさせていただきます。
大森専門委員、移動衛星通信システム委員会での検討と取りまとめ、あ
りがとうございました。
ただいまの答申に関しまして、答申後の行政上の措置につきまして、省
側からご説明が伺えるということでございますので、よろしくお願いいた
します。谷局長、よろしくお願いします。
○谷電気通信局長 ただいまは非静止衛星を利用する移動衛星通信システム
の技術的条件の一部につきましてご答申をいただきまして、まことにあり
がとうございました。
この非静止衛星を利用する移動衛星通信システムでございますけれども、
非静止衛星を用いてグローバルな通信を提供することが可能でありますこ
とから、ユーザにとりましては、いつでもどこでもだれとでも通信ができ
るというメリットをもたらします一方、従来の通信システムの枠を超える
ものといたしまして、その制度的な条件について世界各国が関心を持って
対応しているものでございます。同時にこのシステムは技術的条件の策定
につきましても、先ほどご報告がございましたように、オーブコムシステ
ムにつきましては、既存の陸上移動局との周波数共用条件の問題でござい
ますとか、あるいはイリジウムシステムにつきましては、端末設備の技術
的条件に関する国際標準との整合性に関連する問題でありますとか、非常
に困難な重要な問題点をいくつか掲げているわけでございまして、しかし
今回これらの点につきまして詳細なご検討をいただきました上、明確な結
論をお示しいただきました。これによりまして、このシステムの受入れ体
制についての大きな関門の一つがクリアされたわけでございます。
今後、私どもといたしましては、ご答申の趣旨を踏まえまして、速やか
に関係省令の整備等を進めてまいりたいと考えております。
委員の皆様、それから大森委員長初め、専門委員の皆様には、大変ご多
忙のところご熱心にご審議をいただきまして今回のご答申をおまとめいた
だきましたことに対しまして、改めて厚くお礼を申し上げる次第でござい
ます。まことにありがとうございました。
○西澤会長 どうもありがとうございました。
(7)新規諮問
「アナログ電話端末設備等に求められる技術的条件」
○西澤会長 それでは次に、議事の(7)番目でありますが、新規諮問「ア
ナログ電話端末設備等に求められる技術的条件」に入らせていただきます。
それでは最初に省側からご説明をお願いいたします。
○重田電気通信技術システム課長 電気通信技術システム課長の重田でござ
います。よろしくお願いします。
それでは、資料の99−17に基づきましてご説明させていただきます。
1枚めくっていただきまして、2枚目、3枚目に文章と絵がございますの
で、それを見ながらご説明したいと思います。
近年、技術の進展に伴い情報通信分野におきましても急速にデジタル化
・マルチメディア化が進展しておりますが、アナログ電話端末が接続され
るネットワークにつきましても、既存のアナログ伝送路設備や交換設備を
光ケーブル伝送路設備・デジタル交換設備へ更新することによりまして、
網制御技術の高度化等が図られているとともにデジタル化が完了しつつあ
るところであるということでございます。3枚目をちょっと見ていただき
ますと、今から申し上げることはどういう前提を置いているかといいます
と、右側に端末がありまして、左側にネットワーク、電気通信回線設備が
ございます。その端末とネットワークのインターフェースのところは、端
末がアナログでございますので、アナログのインターフェースでございま
す。今申し上げましたデジタル化が進んでいるというのは、左側の電気通
信回線設備のところでございまして、まだここは伝送路も交換機もアナロ
グタイプが残っておりまして、本年度末には交換機と伝送路のデジタル化
が完了するということでございます。
文章に戻っていただきますと、端末設備の技術基準につきましては、い
わゆるネットワーク・ハームの防止について規定されておりますが、現在
のアナログ電話端末設備等の技術基準はアナログの伝送路と交換設備の使
用を前提としております。先ほどの絵にございましたように、これがデジ
タル化されますといろいろな関係の規定が緩和されますけれども、アナロ
グの部分があるということで、アナログを前提にして関係規定をつくって
いるということでございます。
しかながら、先ほど申しましたように、アナログの伝送路設備等のデジ
タル化とか、交換設備における網制御の高度化、これは例えば特定の加入
者に着信が集中する場合に、現在では発側の交換機で輻輳制御ができると
いうようなことも既にやっております。
以上のことから、ネットワークの環境変化に対応いたしまして、アナロ
グ電話端末設備等に関して、先ほどの絵で申しますと端末側と回線設備側
のインターフェースのところの送出電力とか、自動再発信等の条件の緩和
について検討することが可能となっております。
これらの条件の見直しに当たりましては、ITU−Tにおける国際標準
とか、海外の技術基準との調和、米国とか英国とかにつきましては、例え
ば自動再発信の規定につきまして我が国よりかなり緩和されているとか、
そういうこともございますので、こういう国際動向との調和を図りつつ、
ユーザにおける端末選択の自由度の拡大とか、ネットワークへのアクセス
の一層の容易化ということが非常に大きな項目でございますので、そうい
う利便性の向上を実現していくことが重要であるというふうに考えており
ます。
以上の観点から、アナログ電話端末設備等を取り巻く環境の変化等を踏
まえまして、アナログ電話端末設備等に求められる技術的条件について諮
問をお願いするものでございます。
答申を希望する時期といたしましては、本年の9月。答申が得られまし
た場合につきましては、関係省令等を改正してまいりたいというふうに考
えております。
以上でございます。
○西澤会長 どうもありがとうございました。ただいまのご説明に関しまし
て、ご意見、ご質問をお願いいたします。
○倉内委員 ちょっと質問ですけれども、最近ADSLとかXDSLとか、
この端末とそれから加入者系の交換機との間を、搬送のような形で利用す
るような、そういったことが議論されたりしているようですけれども、そ
ういったことに対する技術基準もこの中に含まれることになるんでしょう
か。
○重田電気通信技術システム課長 基本的には実は今の技術基準というのは、
ネットワークのOSIレベルでいきますと、非常にフィジカルレイヤに近
いところだけを規定しております。インターフェースとしてはおっしゃる
とおりでございますけれども、規定のレベルといたしましては、ほとんど
が技術基準に規定していないところということになります。
(暫時)
○西澤会長 よろしゅうございましょうか。それではご質問ないようでござ
いますので、郵政省側からのご説明を了承いたしまして、本件諮問をお受
けするということにさせていただきたいと思います。
この諮問に対する審議体制につきましては、資料99−18に示してお
りますとおり、アナログ電話端末設備委員会を設置することにいたしまし
て、また調査の促進を図るために分科会を置くことができることといたし
たいと思いますが、よろしゅうございましょうか。
(「異議なし」の声)
○西澤会長 それでは、ご異議がないようでございますので、アナログ電話
端末設備委員会を設置することといたします。
ただいま設置いたしました委員会の委員長及び専門委員の指名につきま
しては、資料99−19のとおりにしたいと思いますので、ご承知おきい
ただきたいと思います。
(8) 新規諮問
「有線電気通信設備に関する技術的条件」
○西澤会長 それでは、次の新規諮問に入らせていただきます。議事9番で
あります。「有線電気通信設備に関する技術的条件」でございます。これ
もまず最初に省側からご説明願います。重田課長、よろしくお願いします。
○重田電気通信技術システム課長 それでは、引き続き資料99−20に基
づきましてご説明させていただきます。
この諮問第91号でございますけれども、近年電気通信事業者等が有線
電気通信設備の整備を進める際に、電力関係の電気事業者等と共同で地中
線路の構築を行うということが増加しております。しかしながら、これら
の設備を設置することが可能な空間は、マンホールとか、管路とか、そう
いうところで限られたものであるため、今後予想される通信需要の増大に
伴う新規設備の設置につきましては、限定された空間を効率的に利用する
ことが必要であるというふうに認識しております。
一方、電気通信用の線と電力用の線を接近させて設置する場合は、有線
電気通信法において他の物件への損傷防止等を目的としまして、技術基準
で一定の離隔距離をおいて設置することが必要であるということでござい
ます。これは3枚目の絵を見ていただきますと、地中管路がございますけ
れども、地中管路、マンホールを例に上の方に絵を書いております。地中
管路におきましては堅ろうな隔壁を、この資料ではケーブルを囲っている
ところでチューブみたいな部分ですけれども、これによりまして安全性が
保たれるということで、くっつけるところまでいっていいわけでございま
す。一方マンホール側につきましては、こういうものがないということで、
現状の規定では60センチ以上離してくださいという規定がございます。
文章の方に戻らせていただきます。こういう状況でございますけれども、
通信ケーブルの性能の向上、例えばどういうことかといいますと、ケーブ
ル外皮の強度が向上したということで、破壊強度とか難燃性、燃えにくい
ということ、そういう性能の向上によりまして、一定の条件下では現在の
規定値よりも接近させてもいいだろうということが技術的にわかってまい
りました。これは社団法人の日本電気協会の方で電気技術基準調査委員会
というものがございまして、昨年の12月にそういうデータが得られてお
ります。こういうことが可能になりつつございますので、これらの環境変
化等を踏まえまして、技術基準を現状に即した内容に見直すために有線電
気通信設備に関する技術的条件について諮問させていただきたいというこ
とでございます。また、これとあわせまして、計量法の改正が平成4年に
行われておりまして、この計量法の改正に基づいて、今回の有線電気通信
法の技術基準の単位系を新しいものに変更してまいろうということもお願
いしたいと思っております。
答申を希望とする時期でございますけれども、本年の9月ころというこ
とで、答申が得られましたら有線電気通信設備令施行規則という技術基準
を定めている省令などがございますので、これらを改正してまいりたいと
いうふうに考えております。
以上でございます。
○西澤会長 どうもありがとうございました。ただいまの説明に関しまして、
ご意見、ご質問をお願いいたします。
よろしゅうございましょうか。それでは、ご質問ないようでございます
ので、郵政省側からの説明を了承いたしまして、本件諮問をお受けするこ
ととさせていただきたいと思います。
この諮問に対する審議体制につきましては、資料99−21に示しまし
たとおり、有線電気通信設備委員会を設置することにさせていただきまし
て、また調査の促進を図るため、分科会を置くことができるようにしたい
というふうに思っておりますが、いかがでしょうか。よろしゅうございま
しょうか。
(「異議なし」の声)
○西澤会長 それでは、ご異議ないようでございますので、有線電気通信設
備委員会を設置することといたします。
ただいま設置しました委員会の委員長及び所属専門委員の指名につきま
しては、既に配付してございます資料99−22のとおりといたしたいと
思いますのでご承知おき願いたいと思います。
(9) その他
○西澤会長 それでは、今日予定したものは全部終わりまして、その他の項
に入らせていただきますが、まずこれに関しましては、諮問第64号を所
掌する移動機端末設備委員会の構成につきましては若干変更がございまし
て、これは専門委員の異動により資料99−23にありますように、お二
人追加したということにさせていただきたいと思います。
これ以外に何か事務局からご発言ありますでしょうか。
○渡辺審議会室長 特にございませんが、本日の配布資料は量が大変多くな
っております。そのままお席に残していただきましたら後ほど送付いたし
ますので、どうぞよろしくお願いいたします。
4 閉会
○西澤会長 委員の先生方から何かご発言ございますでしょうか。
(暫時)
それでは、特にないようでございます。本日もご熱心なご審議をいただ
きましてありがとうございました。
それでは、これで会を終わらせていただきます。どうもありがとうござ
いました。
第6 議決事項
1 答申
諮問第87号「科学技術基本計画を踏まえた情報通信研究開発基本計画の
充実について」
2 答申 諮問第51号「高度情報社会を展望した電気通信の標準化に関する
基本方策について」のうち「標準化体制・制度の望ましい在り方」
3 答申 諮問第86号「PHSの周波数有効利用方策」
4 答申
諮問第89号「電波利用における人体防護の在り方」
5 一部答申
諮問第82号「非静止衛星を利用する移動衛星通信システムの技術的条件」
のうち「150MHz帯でFDMA方式をサービスリンクに使用するシステ
ムの技術的条件」及び「1600MHz帯でTDMA/FDMA方式をサー
ビスリンクに使用するシステムの技術的条件」
6 新規諮問
「アナログ電話端末設備等に求められる技術的条件」
7 新規諮問
「有線電気通信設備に関する技術的条件」