発表日 : 8月19日(火)
タイトル : 8/19付:親と同居している世帯の金融資産平均保有額は約3000万円−「家計における金融資産選択に関する調査」結果−
郵政省郵政研究所は、本日、「家計における金融資産選択に関する調査」の結
果概要を取りまとめました。この調査は、家計の貯蓄行動、資産選択行動に関す
るアンケート調査で、金融の自由化や少子・高齢化など、金融・経済、社会が変
化する状況下における家計行動の実態を把握することを目的としています。
この調査は昭和63(1988)年以降2年ごとに実施しており、今回(平成
8(1996)年実施)で5回目です。本調査の特徴は、[1]貯蓄目的ごとの
金融資産の保有状況を尋ねること、[2]住宅など実物資産の保有状況に関して
尋ねること、などで、今回新たに[1]世帯主と同居している家族の金融資産の
保有状況や、[2]公的介護保険を考慮に入れた老後の生活と貯蓄との関係につ
いても尋ねました。
調査結果の概要は、次のとおりです。
1 親と同居している世帯の金融資産平均保有額は約3,000万円。
世帯主と同居し生計を共にする両親のいる世帯における一世帯あたりの金融
資産平均保有額は2,920万円、うち両親の金融資産平均保有額は1,250
万円。なお、回答者全体の一世帯あたり金融資産平均保有額は1,364万円。
2 金融資産保有の主な目的は、老後や不時の出費への備え。
貯蓄目的別の金融資産平均保有額(全世帯の平均。上記の一世帯あたり金融
資産平均保有額への寄与度を示す。)では、「老後の備え」(390万円)、
「安心」(199万円)、「不時の出費」(145万円)がベスト3。「(自
分の)介護」(53万円)は第6位。
3 介護費用の57%を公的介護保険で、足りない分は公的年金や貯蓄取崩しで
カバー。
各世帯が想定する、寝たきりになった場合の1人あたり介護費用月額は、平
均で約21万円。このうち、平均で約57%を現在検討中の公的介護保険でカ
バーすることを期待。足りない分は、「公的年金・恩給」、「貯蓄の取崩し」
でまかなうという世帯が多い。
4 8割の世帯が、公的年金のみでまかなえず、老後に備えて貯蓄するとの考え。
公的年金未受給世帯が老後(引退後)に必要と考える生活費月額は、平均で
約28万円。このうち、平均で約48%を公的年金でカバーすると回答。公的
年金のみでまかなえないので老後に備えて貯蓄するという考えの世帯は、公的
年金未受給世帯の8割を占める。
5 持ち家率は東京都区部で上昇、全国では微増。住宅取得予定資金総額は増加。
持ち家率は、東京都区部(53%)で前回調査結果より8%ポイント上昇し
たが、全国(67%)では1%ポイントに満たない微増。今後住宅取得を予定
している世帯が必要と考える資金総額の平均値は3,457万円で、前回調査
結果(3,363万円)よりも増加。
6 全世帯の実物資産保有額(時価評価額)の約8割が、居住用不動産。
実物資産の時価評価額の平均値(全世帯の平均)をみると、「居住土地」
(1,534万円)、「居住建物」(760万円)、「その他の土地・建物」
(624万円)、「その他」(41万円)の順となっており、前二者で全実物
資産の時価評価額の約78%を占める。
7 全世帯の保有資産中相続資産の占める割合は、居住用不動産で20%、金融
資産で3%。
相続経験のある世帯の割合は23%。相続した資産の時価評価額の平均値
(全世帯の平均)は、居住用不動産(460万円)が金融資産(40万円)の
10倍以上である。これが保有資産に占める割合では、居住用不動産の20%
に対し、金融資産は3%にすぎない。
<参考> 調査の概要
1 調査地域
全国
2 調査対象
世帯主年齢20歳以上の単身世帯を含む6,000世帯(層化多段無作
為抽出法で抽出。
この他に、世帯主年齢60歳以上の世帯を500世帯加重しているが、
今回の集計には含めていない。)
3 調査時期
平成8(1996)年11月下旬
4 回収数(回収率)
3,695サンプル(61.6%)
5 実施機関
(株)日本リサーチセンター
連絡先:郵政研究所第二経営経済研究部
(担当:牧 主任研究官)
電話:3224−7327
資料 「家計における金融資産選択に関する調査」結果概要
調査の目的
郵政研究所は、家計の貯蓄行動や資産選択行動の現状や、将来どう変化するか
について研究しており、昭和63(1988)年以降2年毎に、家計の貯蓄行動
に関するアンケート調査を行っている。今回は第5回目(平成8(1996)年
11月実施)であり、金融の自由化や少子・高齢化の進展など、金融・経済、社
会が変化する状況下での家計行動の実態を把握することを目的としている。(実
査(株)日本リサーチセンター)
1 金融資産保有額
世帯主と同居し生計を共にする世帯主(又はその配偶者)の両親と子供(自ら
収入を得ている子供に限る)の金融資産平均保有額は、それぞれ1,250万円
と592万円。両親、子供の保有額を回答した世帯の金融資産平均保有額は、そ
れぞれ2,920万円、1,949万円。
なお、回答世帯全体の一世帯あたり金融資産平均保有額は1,364万円(中
央値は774万円)で、世帯主の年齢階層が上がるにしたがって、平均額は大き
くなっている。
<図表1> 世帯主年齢階層別一世帯あたり金融資産平均保有額(省略)
※ 金融資産平均保有額は、前回の調査結果と比べて大幅に増加した
(1,018万円→1,364万円)が、これは、
[1]金融資産別保有額の捕捉率を高めるため(精査したところ前回調査結
果は捕捉率が過少である疑いが濃い)金融資産の分類の仕方や定義を含
めて質問形式を今回調査において大幅に変更したこと
[2]世帯主と同居し生計を共にしている世帯主の両親や子供の保有状況を、
今回新たに詳しく調査したことなど、調査方法の変更に主に起因するも
のであり、金融資産平均保有額については、前回と今回との調査結
果の比較は全く意味をなさないと思われるので、注意されたい。
2 目的別金融資産保有額
主な貯蓄目的別に各世帯の金融資産平均保有額をみると、全世帯の平均保有額
(回答世帯の平均保有額に、全世帯数に占める回答世帯数の割合を掛けた数値。
これにより、全世帯でみた各貯蓄目的別保有額の総保有額への寄与度が比較可能
となる。)では、「老後の生活に備えるため」が、他の目的を引き離して最も大
きい。今回の調査で新たに選択肢に付加した「寝たきり等要介護状態になった時
の出費に備えて」も6番目に大きく、老後のための貯蓄が、全世帯でみた金融資
産保有額の中で、他の目的と比較して高い割合を占めていることがわかる。
<図表2> 目的別金融資産平均保有額
([ ]内は前回の結果。単位:万円。)
貯蓄目的(N)
|
回答世帯の平均
|
全世帯の平均
|
老後の生活に備えるため(1,684)
|
855[691]
|
390[299]
|
特に目的はないが貯蓄をしていれ
ば安心だから (1,641)
|
448[465]
|
199[148]
|
病気、災害、その他不時の出費に
備えるため (1,375)
|
390[271]
|
145[124]
|
マイホームの取得のため ( 360)
|
611[557]
|
59[ 64]
|
子供の教育費に (1,047)
|
194[194]
|
55[ 56]
|
寝たきり等要介護状態になった時
の出費に備えて ( 389)
|
503[ −]
|
53[ −]
|
子供の結婚資金に ( 500)
|
289[280]
|
39[ 46]
|
レジャー資金に ( 399)
|
83[ 52]
|
9[ 5]
|
(N=3,695)
注:「寝たきり等要介護状態になった時の出費に備えて」は、
「病気、災害、その他不時の出費に備えるため」の内数である。
3 介護費用の負担と貯蓄(新規調査項目)
各世帯は、世帯主又はその配偶者が他人に介護してもらう場合、1人につき1
か月あたり平均で約21万円かかると考えており、この費用のうち平均で約57
%を、現在導入が検討されている公的介護保険でカバーすることを期待している。
公的介護保険でまかなうことができない費用の分をカバーする予定の収入源
(複数回答)として、「公的年金・恩給」を挙げる世帯の割合が最も高いが、
「貯蓄の取崩し」、「民間生損保や郵便局の保険、個人年金」、「民間生損保や
郵便局の介護保険」など金融資産蓄積による自助努力を前提とする収入源を挙げ
る世帯も相当の割合を占めている。
<図表3> 他人に介護してもらう場合、1人あたりかかると思う費用(月額)
(省略)
<図表4> 公的介護保険で介護費用の何%がカバーされることを期待するか
(省略)
<図表5> 公的介護保険でまかなわれない費用をカバーする収入源(複数回答)
(省略)
4 老後の生活、公的年金と貯蓄(新規調査項目)
公的年金未受給世帯が老後(引退後)に必要と考える生活費月額は平均約28
万円で、平均値でみると、この生活費の約48%を公的年金でカバーし、老後の
収入としては、生活費に充当する額に加えて更に月額でプラス20万円程度を希
望している。
老後の生活と公的年金、貯蓄との関係についての考えをみると、年金未受給世
帯の8割が、公的年金のみでは老後の生活をまかなえないので貯蓄をすると回答
しており、公的年金のみでまかなえるので貯蓄をしないという世帯は、7%弱に
すぎない。
<図表6> 老後の生活費と公的年金への期待度(公的年金未受給世帯のみ回答)
老後(引退後)に必要と考える生活費月額(平均値)
|
27.5 万円
|
上記費用を公的年金で何%程度まかなえるか(平均値)
|
47.8 %
|
上記の生活費月額に加えて、老後の収入として
月額いくら程度欲しいか(平均値)
|
+19.8 万円
|
(N=2,345)
<図表7> 老後の生活、公的年金と貯蓄との関係についての考え
(公的年金未受給世帯のみ回答)
(単位:%)
+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|公的年金のみではまかなえない|82.0 |
| | +−−−−−−−−−−−−−−−−−+
| | |老後に備えて貯蓄する 79.8 |
| | +−−−−−−−−−−−−−−−−−+
| | |子供等に援助してもらう |
| | |ので貯蓄しない 2.2 |
+−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|公的年金のみでまかなえる | 8.8 |
| | +−−−−−−−−−−−−−−−−−+
| | |子供の世代には公的年金 |
| | |があてにならないので、 |
| | |子供のために貯蓄する 2.1 |
| | +−−−−−−−−−−−−−−−−−+
| | |貯蓄しない 6.7 |
+−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|不明 | 9.2 |
+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
(N=2,345)
5 持ち家率と住宅ローン
持ち家(借地一戸建、マンションを含む)の世帯の割合は67%で前回よりも
微増。東京都区部では、前回調査と比較して8%ポイント上昇している。
持ち家の取得方法をみると、全国では、前回調査よりも「自身で購入」の割合
が若干低くなり、その分「相続又は譲渡」の割合が高くなっている。東京都区部
では、「自身で購入」の割合が前回調査よりも6%ポイント上昇している。
<図表8> 持ち家率と持ち家の取得方法
([ ]内は前回調査の結果。単位:%)
都市規模(N)
|
持ち家率
|
東京都区部 (308)
|
52.6[44.2]
|
11大都市 (642)
|
76.3[53.6]
|
全国 (3,695)
|
66.9[66.3]
|
|
自身で購入
|
相続又は譲渡
|
64.1[58.1]
|
27.8[25.6]
|
76.3[74.1]
|
18.4[20.2]
|
66.3[70.1]
|
27.1[23.3]
|
|
住宅ローンを返済している世帯の割合は20%(前回22%)、住宅ローンを
保有している世帯の現在の残高の平均額は1,401万円(前回1,418万円)
で、いずれも前回の調査結果と比較して若干減少した。東京都区部においては、
住宅ローンを返済している世帯の割合が上昇している一方で、住宅ローンの残高
の平均額は大きく減少している。
以上の結果から、東京都区部においては、地価の下落等によって新規に住宅を
購入することが容易になったこと(←住宅ローン残高の平均額の減少)を背景と
して、持ち家の自己取得が促進され(←住宅ローン保有世帯が増加等)、その結
果として持ち家率が上昇したのではないかと推測される。(ただし、調査時期か
らは、消費税率引上げを控えての駆込み需要が寄与している可能性も否定できな
い。)
<図表9> 住宅ローンの保有状況
([ ]内は前回調査の結果)
都市規模(N)
|
住宅ローン保有世帯の
割合 (単位:%)
|
住宅ローン現在残高
(単位:万円)
|
東京都区部(308)
|
16.2[14.4]
|
1,901.4[2,031.3]
|
11大都市(642)
|
18.7[16.3]
|
1,594.6[1,557.8]
|
全国 (3,695)
|
19.9[21.9]
|
1,400.7[1,418.4]
|
注:住宅ローン現在残高は、住宅ローン保有世帯の平均値。
今後住宅取得を予定している世帯が、取得に必要と考える資金の総額の平均値
は、3,457万円で、前々回の調査結果(3,753万円)より減少した前回
の調査結果(3,363万円)と比べて増加した。
東京都区部においては、前々回から前回にかけて劇的に減少したが、今回は増
加に転じている。仮に前出の持ち家率の上昇に、前々回から前回にかけての減少
が影響しているとすれば、今回の調査結果をみる限り、東京都区部において今後
更に持ち家率の上昇傾向が続くかどうかは微妙なところである。
<図表10> 住宅取得に必要と考える資金総額
(単位:万円)
都市規模(N)
|
回答者の平均
金額
|
東京都区部 (51)
|
4,302.1
|
11大都市 (127)
|
3,666.8
|
全国 (621)
|
3,456.5
|
|
前回調査
|
前々回調査
|
4,003.4
|
6,123.6
|
3,982.7
|
3,881.7
|
3,362.6
|
3,753.1
|
|
6 実物資産保有額
各世帯が現在保有する実物資産の時価評価額をみると、全世帯の平均値では、
居住土地・建物の評価額が前回調査の結果より減少しているものの、依然として
実物資産の8割弱を占めていることがわかる。
<図表11> 実物資産保有額(時価評価額)
([ ]内は前回調査の結果。単位:万円)
実物資産の種類(N)
|
回答者の平均値
|
全世帯の平均値
|
現在居住している土地(2,178)
|
2,605[3,077]
|
1,534[1,791]
|
現在居住している建物(2,370)
|
1,185[1,244]
|
760[ 788]
|
その他の土地および建物(468)
|
4,911[4,549]
|
624[ 505]
|
その他(貴金属等) (268)
|
561[ 553]
|
41[ 37]
|
7 相続資産保有額
すでに遺産を受け取ったとする世帯の割合は23%で、前回調査より約3パーセ
ントポイント上昇した。相続資産の時価評価額について全世帯の平均値でみると、
居住用土地・建物が、前回調査よりも大きく時価評価額を下げたにもかかわらず、
金融資産の10倍以上となっている。また、時価評価額の全世帯平均値を用いて現
在保有資産に占める相続資産の割合をみると、居住用土地・建物では約20%を占
めるのに対して、金融資産では約3%にすぎない。
<図表12> 相続資産の時価評価額
([ ]内は前回調査の結果)
相続資産の種類(N)
|
回答者の平均値
(単位:万円)
|
全世帯の平均値
(A)
(単位:万円)
|
A/各資産保有
額の全世帯平均
(単位:%)
|
現在居住の土地・建物(656)
|
2592[3228]
|
460[477]
|
20[19]
|
金融資産 (185)
|
799[ 929]
|
40[ 35]
|
3[ 3]
|