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発表日  : 1998年 5月 1日(金)

タイトル : 第105回電気通信技術審議会議事録(平成10年5月1日公表)







第1 開催の日時及び場所
  平成10年3月23日(月) 午後2時00分から 於、郵政省3階第2特別
会議室
 
第2 出席した委員(敬称略)
  1 委員
   西澤 潤一、徳田 修造、青木 利晴、金子 尚志、川田 隆資、
   北城 恪太郎、國井 秀子、倉内 憲孝、小舘 香椎子、坂田 浩一、
   関澤 義、高橋 寛子、長尾 真、長谷川 豊明、羽鳥 光俊、
   原島 博、安田 靖彦
  2 専門委員
   古川 弘志(加入者系無線アクセスシステム委員会委員長代理)、高畑 文
   雄(周波数共用委員会委員長)
第3 出席した関係職員等の所属及び氏名
  1 大臣官房
   濱田 弘二(総務審議官)、甕 昭男(技術総括審議官)、高原 耕三(官
   房審議官)、高祖 憲治(専門調査官)
  2 通信政策局
   木村 強(局長)、寺崎 明(技術政策課長)、久保田 誠之(標準化推進室
   長)、松本 正夫(宇宙通信政策課長)
  3 電気通信局
   谷 公士(局長)、田中 征治(電波部長)、竹田 義行(計画課長)、
   中田 睦(基幹通信課長)、稲田 修一(移動通信課長)
  4 放送行政局
   小林 哲(放送技術政策課長)
  5 通信総合研究所
   箱石 千代彦(次長)、真鍋 武嗣(環境計測技術研究室長)
  6 事務局
   渡辺 信一(審議会室長)

第4 議題
  (1) 答申 諮問第93号「加入者系無線アクセスシステムの技術的条件」
  (2) 一部答申 諮問第55号「周波数の共用に関する技術的諸問題」のうち
      「陸上移動業務と放送業務の周波数共用問題」
  (3) 報告 「アジア・太平洋電気通信標準化機関の発足について」
  (4) 報告 「通信放送技術衛星『かけはし』について」
  (5) 報告 「航空機搭載高分解能映像レーダーの開発について」
  (6) その他


第5 審議の概要
1 開会
    ○渡辺審議会室長 それでは定刻になりましたので、第105回電気通信
     技術審議会を開催いたします。
      初めに、議事の確認をいたします。本日の議題は議事次第にあります
     とおり、まず答申として諮問第93号「加入者系無線アクセスシステム
     の技術的条件」。次に一部答申として諮問第55号「周波数の共用に関
     する技術的諸問題」のうち「陸上移動業務と放送業務の周波数共用問
     題」。
      次に、報告といたしまして「アジア・太平洋電気通信標準化機関の発
     足について」、「通信放送技術衛星『かけはし』について、「航空機搭
     載高分解能映像レーダーの開発について」、以上5件を予定しておりま
     す。
      次に、配付資料の確認をいたします。お配りしております資料は、上
     から順に議事次第、資料105−1、加入者系無線アクセスシステム委
     員会報告概要、105−2、委員会報告、105−3、委員会報告参考
     資料、105−4、答申書案でございます。
      続きまして、資料105−5、周波数共用委員会報告概要、105−
     6、委員会報告、105−7、委員会報告参考資料、105−8、答申
     書案でございます。
      次に、資料105−9、アジア・太平洋電気通信標準化機関の発足に
     ついて、資料105−10、通信放送技術衛星「かけはし」について、
     資料105−11、航空機搭載高分解能映像レーダーの開発について。
     以上でございます。
      配付資料で漏れているものはございませんでしょうか。
      よろしければ、早速ですが西澤会長、よろしくお願いいたします。
2 議事
    ○西澤会長 それでは議事に入らせていただきたいと思います。前回会合
     の議事録案が事務局から示されております。お手元に配付してございま
     すが、あとでごらんいただきまして、いつものとおり、ご意見などがご
     ざいましたならば、今月中でございます、事務局までご連絡をお願いし
     たいと思います。
      その後、修正して公開ということにさせていただきたいと思います。

  (1) 答申
   「加入者系無線アクセスシステムの技術的条件」
    ○西澤会長 答申、「加入者系無線アクセスシステムの技術的条件」に入
     らせていただきます。
      最初に、加入者系無線アクセスシステム委員会の委員長代理をお願い
     しております古川専門委員より、加入者系無線アクセスシステム委員会
     での検討結果について、ご報告をいただきたいと思います。本日は委員
     長のご都合が悪いため、古川先生にお願いしたいと思います。よろしく
     お願いいたします。
    ○古川専門委員 古川でございます。それではご説明申し上げます。
      お手元の資料、105−1が加入者系無線アクセスシステム委員会の
     報告概要でございます。それから105−2が加入者系無線アクセスシ
     ステム委員会の報告書でございます。答申案は、その26ページのとこ
     ろに、別添としてつけてございます。それから当委員会でもって、いろ
     いろ有益な資料を集めましたので、それを参考資料ということで105
     −3として、参考資料を添付させていただいております。
      それでは、お手元の資料の105−1、報告概要につきましてご説明
     申し上げたいと思います。本委員会は、電気通信審議会諮問第93号に
     あります「加入者系無線アクセスシステムの技術的条件」につきまして
     審議を行い、一般的条件それから無線設備の技術的条件及び測定法につ
     きまして、答申案を取りまとめております。
      当初、事務局の方からは、一部答申というご予定があったようでござ
     いますけれども、委員会での審議の結果は、現時点で最終的結論が一応
     得られたということで、完結答申として、早期の実用化を図りたいとい
     うことで、完結答申の形でまとめてございます。
      2の委員会の構成でございますけれども、これには別表がつけてござ
     いまして、5ページになりますけれども、そのようなことで、安藤委員
     長ほかの専門委員によって審議を進めました。なお、審議を促進いたし
     ますために、本委員会の下に分科会を設けまして審議をいたしました。
     これには小松早稲田大学教授を主任といたしまして29人でご審議いた
     だきました。
      審議経過でございますけれども、そこに書いてありますように、委員
     会は3回開催させていただきまして、分科会は6回開催いたしました。
     なお、本委員会におきまして、関係者の意見を聴取する機会を設けまし
     たけれども、所定の期日までに意見陳述の申し出がなかったために、こ
     れを行っておりません。
      それから4番目に審議の背景及び答申の位置づけでございますが、情
     報通信の利活用形態である各種のアプリケーションは、21世紀の初頭
     にかけて更に広範かつ多岐にわたるものと考えられまして、これを実現
     するためには、高度なネットワークインフラの整備が不可欠でございま
     す。そのためには、その中心的役割を果たします光ファイバ網を一部補
     完するものとして、加入者系無線アクセスシステムが注目されていると
     ころでございます。
      次のページに加入者系無線アクセスシステムの概念の絵がございます。
     真ん中辺の「基幹回線(光ファイバ等)」というところが基幹回線網で
     ございます。そこから光ファイバ等が各交換局につながっておる。ある
     いはご家庭のそばまで、電柱の方で引いてあるという状況にございます。
      そしてそのそばに無線アクセスシステムというものをつくりまして、
     一般家庭それから集合住宅、事業所等を一対多方向でもって接続しよう
     とするものが、加入者系無線アクセスシステムの一つの種類でございま
     す。したがいまして、電気通信事業者の電気通信回線設備と一般家庭等
     を無線で接続するというものでございます。
      それから左側に書いてありますシステムでございますけれども、こち
     らは一対一の対向方式を主体として書いてございまして、交換局から各
     事業所へ無線アクセスで一対一で接続していく。下の方に書いてありま
     す絵は、一対多方向の形が一部書いてございますけれども、そのような
     形で使われるものでございます。
      もとに戻っていただきまして、1ページのところでございますけれど
     も、加入者系無線アクセスシステムは、地域通信市場における競争の促
     進、マルチメディアアプリケーションの早期普及、ルーラル地域におけ
     る地域網の高度化という点で有効であると考えられ、本システムの早期
     の実用化が求められております。
      本委員会では、技術の動向それから需要動向、周波数の利用の可能性
     等を考慮いたしまして、早期に実用化することが望ましい加入者系無線
     アクセスシステムの技術的条件について検討を行いました。
      次のページにまいりまして、審議の概要のところはもうご説明しまし
     たので、省略させていただきまして、2の基本的な考え方のところにま
     いります。加入者系無線アクセスシステムの技術的条件について、以下
     の基本的な考え方に基づき、審議を行いました。
      アとしまして、機能・性能面でございますけれども、現行システム、
     これは最大6Mbpsでございます。これは22GHz帯及び26GH
     zで対向方式及び一対多方向方式で使用されているものでございますけ
     れども、この最大6Mbpsより高速の情報伝送が可能であること。す
     なわち6Mbpsより大きい伝送容量があるということで考えました。
      それからさまざまなマルチメディアアプリケーションに対応できるこ
     と。一対多方向方式の場合は、加入者収容能力の一層の向上が図れるこ
     との3点でございます。
      次のページにまいりまして、周波数利用面におきましては、基本的に
     準ミリ波帯、これは22GHz帯及び26GHz帯の利用を促進するこ
     とということでございます。それからその他の周波数についても、必要
     に応じて想定するということにしております。
      最大限周波数の効率的な利用が可能な変調方式、通信方式を採用した
     システムであること。それから複数の事業者の利用を想定し、空間的に
     周波数の最大限効率的な利用ができるようにすること。他業務との共用
     が想定されるものについては、現行の許容条件等を満足すること。こう
     いう周波数利用面についての検討を行いました。
      これらの基本的な考え方に基づきまして、方式の具体的な項目につき
     ましては、評価基準、これは8ページに評価基準がございます。たくさ
     んございますので、一例を申し上げますと、周波数帯につきましては、
     周波数割当原則において固定業務に割り当てていることとか、通信方式
     におきましては、周波数利用効率以外の条件も考慮すること。アクセス
     方式につきましては、最適なアクセス形態となるものであること等につ
     いて、そこに掲げてある表のように評価基準を決めまして、この基準に
     基づいてシステムの検討を行いました。
      なお、審議の過程で、他の周波数帯ということで、38GHz帯それ
     から準マイクロ波帯、これはPHSで使用されております1.9GHz
     のことでございますが、これを利用する要望、あるいは対向方式に関し
     ては中容量システムについても需要が見込まれるとの議論があったこと
     から、これらのシステムについても同時に検討することといたしました。
      本委員会では、これらのシステムにつきまして、形態の観点からは対
     向方式と一対多方向方式の2種類に分けまして、また伝送容量の観点か
     らは、大容量伝送と小容量伝送の2方式に分けて審議を行いました。
      具体的には、次の3つの方式について審議を行っております。最初が、
     準ミリ波帯又はミリ波帯の周波数を利用する対向方式でございます。2
     番目が、準ミリ波帯又はミリ波帯の周波数を利用する一対多方向方式で
     ございます。3番目が、準マイクロ波帯の周波数を利用する一対多方向
     方式でございます。
      6の審議結果でございますが、ここから答申案の説明に移らせていた
     だきまして、資料105−2、加入者無線委員会報告の26ページをお
     開きいただきたいと思います。
      委員会報告では、いろいろな検討過程が書いてございますけれども、
     最終的には26ページにあります別添のような形でシステムをつくるこ
     とが適当であるというふうに考えております。
      最初のところでございますが、「加入者系無線アクセスシステムの技
     術的条件」は、次のとおりとすることが適当であるということで、まず
     1番目が適用条件でございます。加入者系無線アクセスシステムは、電
     気通信事業者側に設置する無線基地局と利用者側に設置する加入者局を
     結ぶ無線伝送路(これに密接な関係がある無線伝送路を含む。)により
     構成されるということでございまして、2に技術的条件及び測定法の記
     述がございます。
      まず、2.1でございますが、先ほど申し上げました最初の準ミリ波
     帯又はミリ波帯の周波数を利用する対向方式の技術的条件でございます。
     まず、2.1.1に一般的条件ということで、通信方式、FDDの複信、
     周波数分割複信方式のことでございます。それから周波数は22GHz、
     26GHz、38GHz帯とする。それから変調方式としては、4値以
     上の多値変調方式とするということでございますが、ここではその一例
     として4相以上の位相変調方式とか、その他のことが書いてございます。
     この辺は事業者の選択に任せる旨が、委員会報告の方には記載されてご
     ざいます。
      4番目の主信号方式の伝送容量でございますが、156Mbps以下
     であることということでございます。それから空中線電力につきまして
     は、500mW以下であること。なお、この範囲で送信電力制御を使用
     できるものであることということにしております。それから共用の問題
     につきましては、他の加入者無線及び他業務の無線局と共用できること
     ということでございます。
      2.1.2に無線設備の技術的条件が記載してございまして、そこに
     は送信周波数の許容偏差等の記載がございます。これは現在の技術で十
     分実現できる規格ということで規定してございまして、送信周波数の許
     容偏差、それから占用周波数帯幅の許容値につきましては、変調方式ご
     とに占有周波数帯幅の許容値を規定しております。次が空中線電力の許
     容偏差、スプリアス強度の許容値、そこまでが送信設備の技術的条件で
     ございます。
      受信設備につきましては、副次的に発する電波の限度ということで、
     そこに記載のとおりの技術的条件を設けたいというものでございます。
      3番目の空中線系でございますが、アの送信空中線の特性でございま
     すけれども、そこに数式等が書いてございますが、空中線電力から発射
     されます実効輻射電力が次の値以下となるものであるという意味でござ
     います。イに偏波部がありますが、これは垂直偏波、水平偏波を使う。
     その他の規制としましては、監視制御機能を有することといったような
     ことが書いてございます。
      あと2.1.3に測定法ということで、周波数の許容偏差、占有周波
     数帯幅、スプリアス発射強度、空中線電力の偏差、受信装置の副次的に
     発生する電波についての測定法が記載してございます。
      次に、先ほど2番目に申し上げました準ミリ波帯、又はミリ波帯の周
     波数を利用する一対多方向の方式でございます。
      一般的条件につきましても、先程とほとんど同じでございますけれど
     も、こちらの場合には、FDD、周波数分割複信方式それからTDD、
     時分割の複信方式といったものも認めるということでございます。
      2番目に多元接続方式としては、TDMA方式であること。周波数帯
     は先ほどのものと同じでございます。
      変調方式につきましては、使い勝手の良さを上げるために、GMSK
     の方式も認めることで書いてございます。
      それから5番目の空中線電力は同じ500mW以下でございます。そ
     して電力制御の使用をできるようにするということでございます。
      次のページにまいりまして、6の共用でございますが、他の加入者無
     線及び他業務の無線局と共用できることといたしております。
      無線設備の技術的条件でございますけれども、これも送信設備につき
     ましては、先ほどの規定と同じでございます。ただ、占有周波数帯幅に
     つきましては、GMSKの規定が、違う値が書いてございます。受信設
     備、空中線系、その他とありますが、説明は省略させていただきます。
      2.2.3に測定法がございまして、これは先ほどのものと同じでご
     ざいます。
      それから3番目が、先ほど申し上げました準マイクロ波帯、PHSの
     周波数帯を使用する一対多方向方式でございまして、これも2.3.1
     の一般的条件ということで、必要な機能として4項目掲げてございます
     が、ここに書いてあります規定は、現在のPHSの規定と、おおむね同
     じでございます。2の無線周波数帯もそうでございます。それから3の
     キャリア周波数間隔、次のアクセス方式とか伝送方式、多重数、通信方
     式についてもほぼ同じでございまして、PHSと若干違っておりますの
     が、10の空中線電力の規定でございます。基地局は160mW以下、
     加入者局は80mW以下であることとございます。あと(11)、(1
     2)も同じでございます。それから無線設備の条件につきましても、送
     信設備が31ページに、32ページに受信設備が(2)として書いてご
     ざいますが、これらの規定は基本的にPHSの規定に基づいたものでご
     ざいます。
      ただ、32ページの一番下に3の空中線というのがございますが、こ
     こが絶対利得が22dBi以下であり、筐体とは分離することができる
     ことということで、PHSの端末では2.14dBiで一体型というよ
     うな規定がありますけれども、こちらは分離ができるということで異な
     っております。
      それから2.3.3の測定法につきましては、これも従来の例になら
     って、測定法を決めております。以上でございます。
    ○西澤会長 どうもありがとうございました。ただいまのご説明に関しま
     して、ご質問、ご意見お願いいたします。
    ○安田委員 ちょっと細かい点でございますが、資料105−2の別添の
     26ページ。そこの最初に書いてある対向方式の場合のいろいろな条件
     がございますが、それと28ページの一対多方向方式で書いてある一般
     条件とで違っているところもあるのですが、その理由をお伺いしたいと
     思います。
      例えば変調方式でいきますと、対向方式の場合は4相以上の位相変調
     方式、4値以上の周波数偏移変調方式又は16値以上の直交振幅変調と
     あります。それから28ページの一対多の場合は、GMSK、4相以上
     の位相偏移変調方式又は16値以上の直交振幅変調方式ということで、
     周波数偏移がないですね。
      それからその上のところも、通信方式でも一対多の場合はFDD方式
     又はTDD方式。それに対して対向方式ではFDD方式。
      一対多ということになると、そのシステムはTDD方式というのは、
     こちらでTDD方式が使えて、対向方式でTDD方式が使えないのはど
     ういう理由であるかとか、細かいですけれども、おわかりになりました
     ら、お願いします。
    ○古川専門委員 それではお答えいたします。本来ですと、これは電気通
     信技術審議会でございますので、技術的に同じものであれば、盛り込む
     のが当然なのでございますが。私どもが今回審議いたしましたときには、
     各ユーザーの方からいろいろ利用形態についてのご希望を取ったわけで
     ございます。その中で、皆様方がお使いになりたい希望のものについて、
     問題がないかを検討いたしておりますので、若干、その辺の不ぞろいが
     ございます。
    ○安田委員 そういうことで、技術基準というのはよろしいんでございま
     すか。
    ○古川専門委員 先ほど最初にご説明申し上げましたように、早期に実現
     を図りたいということで、今、皆様方の希望に合うものをまとめようと
     いう点に注目したものですから、若干、その辺は技術的には不ぞろいに
     なっております。
      その辺は技術的に、確かに先生のおっしゃるように、同じものであれ
     ば規定すべきなのでございますが、ご要望がないものも規定してもしよ
     うがないだろうということで、このような形にまとめさせていただきま
     した。
    ○安田委員 一般的に考えますと、TDD方式、タイム・ディビジョン・
     デュープレックスは、一対多方向での方がむしろ使いにくいような気が
     するのです。一対一の方がやりやすいんじゃないかなと。それを一対一
     でTDDを採用しないで一対多の方でやるというのは、そういう装置が
     できているからだということのご説明のようでありますが、ちょっとど
     うかなという感じがしたわけであります。これが使いやすいか、使いに
     くいかも私の個人的な考えで、そうじゃないということであるのかもし
     れません。
    ○西澤会長 郵政省の方で少し前向きに、言い方が悪いのですがトラブル
     も覚悟するぐらいのつもりでトライをしてみようということだと思うの
     ですね。ですからこれで最終的ということではなく、あとで直す必要が
     あれば直してゆくのだろうと思います。
      それではほかにございませんでしょうか。
      (暫時)
      それでは、ご異議がないようでございますから、本件を答申すること
     とさせていただきたいと思います。
      先ほど申し上げましたように、むしろどんどん先へいくということの
     方が少し力が足りなかったという点もあったようでございますが、今回
     かなり意欲的なご提言であるというふうに私は受け取っております。
      これで本件を答申させていただきたいと思います。古川専門委員、そ
     れからきょうはご欠席でございますが、委員長その他加入者系無線アク
     セスシステム委員会でのご検討、お取りまとめ、どうもありがとうござ
     いました。

(2) 一部答申
  「周波数の共用に関する技術的諸問題」のうち「陸上移動業務と放送業務の周
  波数共用問題」
 
    ○西澤会長 それでは次の2番目でございますが、諮問第55号「周波数
     の共用に関する技術的諸問題」のうち「陸上移動業務と放送業務の周波
     数共用問題」についての一部答申の審議に入らせていただきたいと思い
     ます。
      最初に、周波数共用委員会の委員長であります高畑専門委員から、周
     波数共用委員会での検討結果についてご報告をお願いしたいと思いま
     す。よろしくお願いします。
    ○高畑専門委員 早稲田大学の高畑です。周波数共用委員会関係の資料で
     ございますけれども、資料105−5が報告概要でございまして、10
     5−6が報告、105−7が報告をまとめるに当たって、いろいろ詳細
     な検討を行いましたので、その膨大な資料がついております。105−
     8が答申書の案という表書きでございます。一部答申の具体的内容につ
     きましては、105−6の報告の別添ということでついております。時
     間の関係もありますので、今回は資料105−5、報告概要についてご
     説明をしたいと思います。
      1ページ目、審議事項でございますけれども、「周波数の共用に関す
     る技術的諸問題」ということで、無線通信において周波数というのは限
     られておりますので、それをいかに有効に利用していくかということを
     検討する場所が、周波数共用委員会でございます。つまり、異なるサー
     ビスで同じ周波数をいかに使っていくかというのが本委員会の課題でご
     ざいます。
      以前、平成3年には、今回とは違った形の周波数の共用ということで
     取りまとめをいたしました。今回は地上デジタル放送等の放送に必要な
     周波数に配慮しつつ特定の地域で移動通信に利用する。つまり、移動通
     信と地上テレビジョン放送の2つのサービスが同じ周波数帯で共用でき
     ないかということを検討した次第であります。
      委員会の構成ですけれども、委員会の下に、先ほど議事1の説明をし
     ていただきました古川専門委員を主任とする答申等起草グループを設け
     て、円滑な審議を行いました。5ページ目が答申等起草グループの構
     成、その前の4ページ目が周波数共用委員会の構成でございます。
      審議経過でございますけれども、委員会は2回、起草グループの打ち
     合わせは5回開催しまして、審議を行いました。
      続きまして、4番の審議の概要ということで、検討の対象ですけれど
     も、これは先ほど概略を申しましたけれども、地上デジタル放送等の放
     送に必要な周波数の確保を考慮した上での、陸上移動業務と放送業務の
     周波数の共用でございます。つまり共用ということは、お互いに混信を
     与えることなく使用できるということについて検討するため、テレビジ
     ョン放送用の周波数の一部をその地域で移動体通信に利用する共用形態
     を検討の対象としました。
      2番目として、それではどのような周波数帯を共用として考えるかと
     いうことですけれども、これはテレビジョン放送用の周波数のうち、U
     HF帯、470MHzから770MHzまでを検討の対象としておりま
     す。
      3番目として、検討対象とするテレビジョン放送システムでございま
     すけれども、現行で運用されている放送としてアナログの標準テレビジ
     ョン放送方式のシステムを審議の対象としました。なお、デジタル放送
     については、現在、規格を策定中であるということから明確な数値が出
     ておりませんので、検討の対象とはいたしておりません。
      2ページ目に入りまして、テレビジョン放送を受信する場所によりま
     してもいろいろな状況が考えられるということで、標準的に強い電波で
     受けられる場合と、放送エリアの端におきまして、ブースタ、アンプを
     入れまして使用する場合の受信、そういう2つの場合について検討を加
     えております。
      4.2が周波数共用条件ということで、これは先行しているサービス
     がテレビジョン放送ですので、それに対して移動通信が妨害を与えない
     レベルというのがどの程度であるかということを検討しております。
      妨害を与える側としては、狭帯域システムとしては、PDC方式の携
     帯・自動車電話及び自営の無線ということでございます。広帯域システ
     ムとしてはPHS及び自営用の無線システム。これは特に画像ですけれ
     ども、そういうものを検討しております。
      実際には、理論的検討の他に実際の実験も行いまして、その画像に妨
     害が出る範囲、限界を検証しております。
      その妨害を与えるレベルというものがどの程度かというのが、1番に
     表の形で書いてあります。ここではアンテナに入ってくるところの許容
     電界強度を、それも先ほど申しましたように、標準的な個別受信とその
     サービスエリアの端での受信ということで、どのぐらいの電界強度で入
     れば、テレビジョンの放送に混信、影響を与えないかという数値をこの
     表に書いております。
      電界強度の他に、テレビジョン受信機端子電力を記述してありますが、
     サービスエリアの端の場合はブースタに入ってくる電力がどのぐらいか
     ということを示してあります。これは非常に小さい値になっております
     けれども、こういう値で妨害を与えても、テレビジョンには影響がない
     ということでございます。細かい数値の読み上げは省略させていただき
     ます。
      そして縦軸の方ですが、これは4種類書いてありますから、この説明
     をいたします。同一チャネルというのは、その地域でその周波数を使っ
     たテレビの放送が行われているところです。そこにおいて同じ周波数で
     陸上通信システムを使用する場合には、この値を守ることで妨害を与え
     ないようにということになっています。
      隣接チャネルというのは、隣のチャネルを使った放送が行われている
     場合、つまり、6MHz離れているところを使おうとする場合は、この
     値が許容レベルとなります。
      次隣接チャネルは、これは更にもう一つ離れたところの周波数という
     ことです。このように、地域ごとに、必ずしもUHF帯のチャネルすべ
     てが使われているわけではありませんので、その使われ方によって、許
     容される電力が違うという状況です。
      影像チャネルというのは、目的としている周波数よりも更に117.
     5MHz高い周波数ということで規定されております。
      このように妨害を与えないレベルというのを計算しているわけでござ
     いますけれども、これは表の上に書いてありますように、6MHz帯域
     の総和ということになっております。移動通信システムでもいろいろな
     方式が考えられまして、その下の1)、2)というふうに書かれております
     けれども、非常に帯域が狭い、伝送速度が小さいような移動通信システ
     ムを用いる場合には、若干、周波数のぶつかり方によって混信の度合い
     が違うということで、補正をすることができるということも実験的に確
     かめられております。
      2)としては、都市雑音等が許容干渉レベルより高い場合があります。
     上の表のように、許容の干渉レベルを考えましても、実際上には都市雑
     音でそれが埋もれてしまうという場合もございまして、その場合には必
     ずしもこの数値ではなくて、もともと雑音の方が大きいという状態があ
     りますので、そういうものも考慮することができるというふうに思って
     おります。
      以上が許容干渉レベルということでございましたけれども、共用に当
     たって考慮すべき事項として1)から7)まで列挙されております。
      まず陸上移動業務の局の空中線電力ということで、当然のことながら、
     テレビ放送に対して影響を与えないということで、電力が小さい方がい
     いということが書いてあります。
      2項目として陸上移動業務の局の周波数ということで、これはできる
     限りテレビジョン放送に近接した周波数を使わないように、複数のチャ
     ンネルを切りかえる、選択できるようにする必要があるということです。
      3番目として、陸上移動業務の局の使用場所ということで、これも陸
     上移動業務の局から出る周波数の波が、テレビを受信しているところに
     ダイレクトに届かないように、遮へいされている場所が望ましい。
      4番目が陸上移動業務の局の空中線系。これもテレビの受信アンテナ
     がかなり高いところにあるということを考えますと、陸上移動業務の局
     のアンテナ高は可能な限り低い方がいいということです。
      5番目が干渉防止機能。これはどのような周波数のテレビジョンチャ
     ンネルが使われているかというのを検知する機能が必要であるというこ
     とです。
      6番目が放送局の中継用受信設備への配慮ということで、中継用受信
     設備がある場合には、混信を避けるということが必要でございますので、
     関係者間によって調整を行うことが望ましい。
      7番目として、これは実際に周波数共用を実現する際には、関係者間
     で調整を行うことや野外実験によって実態調査を行うことが望ましいと
     いうようなことが書いてあります。
      先ほどの表に示しました許容干渉レベルというものは、数値が基準内
     だからといって、すぐに共用が可能かというと、必ずしもそうではあり
     ませんで、これからいろいろな技術開発をしていく必要があります。4.
     3として、ここでは項目しか挙げておりませんけれども、干渉除去技術、
     空中線制御技術、ゾーン構成技術、干渉防止技術等の高度化について、
     今後、研究開発を進める必要があるということです。
      これらの技術の詳細につきましては、資料105−6にあります委員
     会報告に記述しております。更には資料105−7の参考資料の方に、
     技術開発すべき項目の内容について具体的な例を書いてございます。
      資料105−6の一部答申というところで、若干、ご説明いたします。
     別添としてついておりますけれども、構成員の次に、諮問第55号「周
     波数の共用に関する技術的諸問題」のうち「陸上移動業務と放送業務の
     周波数共用問題」という1枚の表書きがありまして、その次に一部答申
     案がついております。
      内容的には、今ご説明しました項目がすべて網羅されており、またこ
     の表に出ておりました数値がどのような根拠から算出されているかとい
     うのが、1ページ目、2の共用条件の(1)に書いてあります。(2)
     の共用に当たり考慮すべき事項というのは、先ほどの概要と全く同じで
     す。
      4ページ目の3ですけれども、今後研究開発すべき共用技術というこ
     とで、先ほどは項目だけの列挙でございましたけれども、ここではそれ
     ぞれ1から4まで若干の説明でございますけれども、それぞれの技術の
     内容について概略が書いてあるという状況でございます。
      非常に大雑把でございますけれども、以上で周波数共用委員会の報告
     について、説明を終了させていただきたいと思います。
    ○西澤会長 どうもありがとうございました。それではただいまのご報告
     につきまして、ご審議をお願いいたします。
    ○安田委員 周波数の共用ということは、貴重な資源である電波を有効に
     使うということは大変結構な方向でありまして、その方向で検討をされ
     たことは大変結構だと思います。
      ところで、実態として、このテレビジョン放送を使っていない、つま
     りチャネルが使われていないところで、そのチャネルを使用して移動通
     信を行うという感じなのでしょうか。ちょっとよくわからないのです
     が・・・。
      一般論として言いますと、移動体のために周波数が足りないような地
     域というのは、テレビジョンのチャンネルもたくさん使っているのでは
     ないかなと。それが空いているような地域は、移動体の方のチャンネル
     数も空いているのではないかなというような感じがしております。
      そうではなくて、これが有効であるということのご説明を、もしあっ
     たら、いただければと思います。
    ○高畑専門委員 参考資料の方に、どのぐらい周波数が使われているかと
     いうことで、実際の測定結果がございます。例えば資料105−7の1
     27ページ目から測定結果の例ということで、127、128、129、
     131ページというふうにずっと並んでおりますけれども、測定ポイン
     ト、これは都内ですが、各測定ポイントで実際に測った結果でございま
     す。
      例えば128ページの図7のAというところで、ビルの高さが135
     メートルというところですけれども、横にチャネル数を取りまして、縦
     軸に受信レベルというのを取りますと、棒が立っているところは使われ
     ている周波数だということでございます。それが下の方にゼロ以下なん
     ていうところもあり、歯抜けになっているところが結構あります。1つ
     のチャンネルが6MHzですが、こういうふうに見ていきますと、都内
     でもかなり使える周波数があるということでございまして、必ずしも移
     動体通信の周波数が足りないような場所でUHFのテレビジョン放送用
     チャネルがたくさん使われているということではなくて、実際に測定し
     ましても、このようにかなり使用できる場所があるということで、非常
     に有効だというふうに考えています。
    ○西澤会長 安田先生のおっしゃる状態には、まだなっていませんが、も
     っと使い出すと、本当に使用できるところがなくなってしまうわけです
     ね。ですから周波数帯が非常にすいているところでは、こんなことをし
     なくてもいいという、言い過ぎかもしれませんが、十分あきがあるとい
     うことではないかと思います。
    ○安田委員 やはり都会で有効なのだと思いましたが、都会でも結構あい
     ているという話でありますので、大変結構なことだと思います。
    ○長谷川委員 ただ、都会でもこの報告書にもありましたように、今、放
     送の地上デジタルをやろうということになっておりまして、今、都会で
     はUHFは少ないのですが、恐らく地上デジタルをやるとなると、都会
     でもUHFを使うことになるだろうと思います。
      この報告書にも述べられておりますけれども、地上デジタルというの
     は、最大の課題になってまいりまして、そういう周波数を確保した上で
     ということが前提になっております。放送には、映像のみならず、音声
     も含めて地上デジタルという課題がございますので、ぜひそういうもの
     のための周波数を確保した上で、共用をお願いしたい。
      その後に所要の検討についてはいろいろ項目がございますので、その
     辺については共用できるような研究が、今後進められることを大いに歓
     迎したいというふうに思っております。
    ○西澤会長 混信が起こっては困ります。自動的にあいているところを選
     択していくようなやり方はどうでしょうか。
    ○高畑専門委員 先ほどの概要のところにありましたように、キャリアセ
     ンスといいまして、使われている周波数を使わないように選定をしてい
     くということで、そういうのは避けられると考えております。
      デジタル放送との干渉については、今回取り上げてございませんけれ
     ども、いずれそういうのを取り上げる必要が出てくると考えております。
    ○西澤会長 ほかにご意見、ご質問はございませんでしょうか。
      それではご質問もないようでございますので、周波数共用委員会報告
     を了承することにさせていただきまして、資料105−8に示しました
     答申書の案にありますように、諮問第55号に対する一部答申としたい
     と思います。ご異議ございませんでしょうか。
      (暫時)
      それでは本件を答申することにしたいと思います。専門委員の高畑先
     生及び周波数共用委員会での検討と取りまとめ、どうもありがとうござ
     いました。
      ただいまの答申並びに議事(1)で答申いたしました加入者無線アク
     セスシステムの2つの答申に関しまして、答申後の行政後の措置につき
     まして、省側からご説明を伺えるということでございますので、よろし
     くお願いいたします。
    ○谷電気通信局長 電気通信局長の谷でございます。
      ただいまは2件のご答申をいただきまして、まことにありがとうござ
     いました。
      まず、最初にご答申いただいた「加入者系無線アクセスシステムの技
     術的条件」についてのご答申でございますけれども、加入者系無線アク
     セスシステムは、情報通信ネットワークインフラの中心的な役割を果た
     します光ファイバー網とかかわっているものでありまして、地域通信市
     場における競争の促進、マルチメディアアプリケーションの早期普及、
     ルーラル地域における地域網の高度化の観点で有効であると考えられま
     すことから、最近、その早期実用化が求められてきているところでござ
     います。
      したがいまして、私どもといたしましては、ご答申に基づき、その速
     やかな導入に向けまして、関係規則の改正を行ってまいりたいと考えて
     おります。
      続きまして、「周波数共用に関する技術的条件」のうち「陸上移動業
     務と放送業務の周波数共用問題」についてのご答申をいただいたわけで
     ございますが、近年、特に移動通信をはじめとする無線利用の急速な伸
     びておりまして、周波数の逼迫の度合いがますますすすんできておりま
     す。
      これを緩和する方策といたしましては、新たに使用可能な周波数を用
     意するということが最も効果的であることはもちろんでございますけれ
     ども、限られました周波数の有効活用の観点から、今回の陸上移動業務
     と放送業務間の周波数共用という取り扱いは、周波数逼迫に対応するた
     めに、まことに適切な方策であると考えております。
      また、この周波数共用問題につきましては、平成9年3月に再改定さ
     れました政府の規制緩和推進計画の中で、通信と放送の周波数帯域の共
     用化の検討という形で盛り込まれておるものでございまして、政府とし
     ても公約を果たすこととなるわけでございます。
      今回のご答申の内容につきましては、今後、具体的な周波数共用を必
     要とする場合の審査基準等の策定に反映させてまいりますとともに、周
     波数共用技術に関する研究開発課題につきましては、今後の電波関係の
     政策立案などに反映させてまいりたいと考えております。
      委員の皆様、それから専門委員の皆様におかれましては、大変ご多忙
     中にもかかわりませず熱心にご審議いただきまして、今回のご答申をお
     まとめいただきました。そのご尽力に対しまして、改めて厚く御礼申し
     上げます。本当にありがとうございました。
                
(3) 報告
  「アジア・太平洋電気通信標準化機関の発足について」

    ○西澤会長 それでは次の議題に入らせていただきます。
      議事3の報告でございますが、「アジア・太平洋電気通信標準化機関
     の発足について」でございます。これも省側からご説明をいただきたい
     と思います。
    ○久保田標準化推進室長 標準化推進室長の久保田でございます。よろし
     くお願いいたします。
      資料105−9に基づきまして、アジア・太平洋電気通信標準化機関
     につきまして、ご報告申し上げたいと思います。
      1枚目に、これまでの経緯を簡単にまとめてございます。
      アジア地域におきましては、電気通信の標準化につきまして非常に関
     心が高まっているところでございますけれども、昨年2月に東京におき
     まして、APTが主催いたします「標準化に関する地域協力会合」が開
     催されまして、その中で標準化活動につきましての意見交換が行われた
     わけでございます。
      APTにつきましては、欄外に注がございますけれども、アジア・太
     平洋地域の33カ国、地域としては、マカオ、香港等でございますけれ
     ども、電気通信の主管庁、電気通信事業者等で構成いたします地域の電
     気通信機構でございます。
      この協力会合の中で、日本からアジア・太平洋地域におきます標準化
     組織の設立を提唱したわけであります。
      この標準化組織は、こちらにございますように、国際標準化活動への
     寄与、いわゆるアップストリーム活動のみならず、アジア地域特有の問
     題がございます。国別の技術的なポテンシャルに非常に差があるという
     こともございまして、標準化に関する情報共有あるいは人材育成、国際
     標準の補完の検討を含む幅広い相互協力を実施するということで、アジ
     ア・太平洋地域特有の問題にも対応しているものとしまして提案をして
     きたわけでございます。この会合以降、この組織の実現方法等を検討し
     ますアドホック・グループの議長国としまして、APTの加盟各国との
     調整を行ってきたところでございます。
      (2)でございますけれども、昨年11月、バンコクにおきまして、
     APTの管理委員会、これは年次総会に相当いたします会合でございま
     すけれども、このアドホック・グループから報告を行いまして、APT
     の下に「アジア・太平洋電気通信標準化機関」(ASTAP:アスタッ
     プ)と申しますが、このAPT Standardization Programを設立すると
     いうことが承認されたわけでございます。
      (3)にまいりますけれども、ことしの2月13、14日に同じくバ
     ンコクで第1回総会が開催されまして、標準化課題の設定、ラポータの
     指名等が行われたわけでございます。この会合には21カ国から75名
     が参加いたしました。この中で、先ほどございましたASTAPという
     英語の略称についても審議されまして、決定したところでございます。
      なお、日本からはこの会合に26名が参加しておりまして、およそ3
     分の1が日本人ということでございました。
      2ページ目にまいりますけれども、ASTAPのあらましということ
     でございます。
      (1)活動の概要ということでございますけれども、先ほど簡単にご
     説明いたしましたけれども、ITUに対します標準化提案の検討を行う
     ほか、グローバル標準、これはITUに限りませんけれども、グローバ
     ル標準を補完する技術仕様の作成、地域での標準化に関する専門知識の
     向上等に関する活動ということで、非常に幅広い活動を行う予定でござ
     います。
      (2)でございますけれども、1)といたしまして、標準化課題ごとに
     Expert Groupを設置するということで、取りまとめがラポータを中心に
     電子メールなど電子的手段を活用しまして、標準化活動を効率的に実施
     するということでございます。これはアジア各国が、非常に今、経費節
     減に追われているということでございまして、旅費の軽減をまず図って
     くれという要望にこたえたものでございます。
      それから2)でございますけれども、総会、これはASTAP Forumと
     呼ぶということになりましたけれども、これは年に1回以上開催すると
     いうことでしたけれども、これ以外の会合、Expert Groupの会合等につ
     きましては、どのように運営するかということは、それぞれのExpert 
     Groupに任されるというようなことでございまして、取りまとめをします
     ラポータが権限を有するという形になってございます。
      それから標準化課題、(3)でございますけれども、第1回総会にお
     きましては議長が決まっていなかったということもございますので、日
     本からの暫定議長の進行で標準化テーマを議論いたしまして、4ページ
     にございます3部門14課題が承認されたところでございます。
      4ページをご覧いただきたいのですが、印刷の都合でハッチングが薄
     くなっているかもしれませんけれども、上からITSそれからIMT−
     2000それからワイヤレスローカルループ(WLL)、それから最後
     の、デジタル放送につきまして、これは日本から提案したテーマでござ
     いますけれども、日本提案のテーマはいずれもラポータの選出ともに承
     認をされております。非常に幅広い分野になっておりまして、大きく3
     部門というような取りまとめをしてございます。
      それから若干、補足いたしますと、デジタル放送につきまして、これ
     は明確に書いてございますけれども、主に地上系のデジタル放送を念頭
     に置くというような議論がされております。
      次に2ページ目の参加資格でございます。このASTAPにどういう
     方が参加するかということでございますけれども、原則といたしまして、
     APTの構成員であるということでございますけれども、APT地域外
     の企業等からもゲストとして参加可能であるということでございます。
      2ページ目の下の方にございますように、加盟国は現在、29カ国、
     加盟地域は4地域、香港、マカオの他、例えばクック諸島などのところ
     が入ってございます。
      それからAPT域内の電気通信事業者39社、うち日本企業7社。A
     PT域内の企業、主にメーカーさんでございますけれども、32社で日
     本企業は15社でございます。
      ただこの電気通信事業者あるいは企業、製造業者につきましては、欧
     米に本拠がございます欧米系の会社が既に含まれておりまして、今回も
     9社の欧米系のメーカーの代表の方が参加されていらっしゃいます。
      それから3ページ目にまいりまして、2つほど補足がございますけれ
     ども、顧問会議でございます。ASTAPの標準化活動まだこれからと
     いう段階でございますので、いろいろと助言をいただかなければならな
     いということで、アドバイザリーボードといっておりましたけれども、
     顧問会議の設置が承認されました。今後、このメンバーにつきましては、
     顧問の就任ということで、事務総長からお願いするという予定でござい
     まして、5名から10名程度ということでございます。
      人選につきましては、ステアリングミーティングが開かれまして、そ
     こでいろいろ名前が出たのですけれども、ITU−Tでの役職者の方、
     具体的にいいますとITU−Tのイルマー局長でありますとか、各SG
     の議長クラスの方をお願いしたらどうかということで、今回、そこまで
     のお話となっております。
      それから(6)でございますけれども、次回の総会につきましては、
     ことし8月にバンコクで開催することが仮決定されておりまして、その
     際の議長はオーストラリアから選出されるということになっております。
      以上、簡単でございますけれども、ASTAPの発足につきましてご
     報告申し上げます。
    ○西澤会長 どうもありがとうございました。ただいまのご説明にご意見、
     ご質問などございませんでしょうか。
      前から申し上げておりますけれども、大変結構な企画でございますの
     で、多いに効果を上げていくことを期待したいと思います。

(4) 報告
  「通信放送技術衛星『かけはし』について」

    ○西澤会長 どうもありがとうございました。それでは次の議事に入らせ
     ていただきますが、報告でございまして、通信放送技術衛星「かけは
     し」について、省側からご説明をお願いいたします。
    ○松本宇宙通信政策課長 宇宙通信政策課長の松本でございます。
      資料105−10でございます。通信放送技術衛星「かけはし」(C
     OMETS)についてということでございますが、「かけはし」につき
     ましては、先にこの電技審でも打ち上げについてご紹介申し上げました
     が、平成10年2月21日土曜日、宇宙開発事業団の種子島宇宙セン
     ターから打ち上げられたわけでございますが、新聞報道等で皆様ご存じ
     だと思いますが、H−IIロケットの第2段ロケットの第2回目の燃焼時
     間が予定より短かったということで、当初、投入する予定でございまし
     た静止トランスファー軌道という長楕円軌道に投入することができず、
     結果的に静止軌道に投入されなかったという状況にございます。
      この表の中に、予定された静止トランスファー軌道と実際の投入軌道
     というのが書いてございますが、遠地点の高度が3万6,000キロに
     対しまして1,900キロということで、大変、地球のすぐ近くを周回
     するような軌道に投入されてしまったということでございます。
      この打ち上げの失敗の原因につきましては、宇宙開発委員会技術評価
     部会において宇宙開発事業団の報告を受けながらその原因究明を続けて
     おりますが、これまで報告された情報は、別紙2に絵がございますが、
     これも新聞報道でご存じかと思いますが、2段目のロケットのエンジン
     の燃焼室、下の方に図がございますが、燃焼室の一部から燃焼したガス
     が外部に漏れ出して、その周辺にございます電子機器等を破壊した。そ
     の結果、燃料供給がストップしてエンジンの燃焼が停止したという原因
     が推定されております。
      ただ、現在、この燃焼ガスが漏れたわけですが、この漏れた原因が、
     どういう理由でここに亀裂が生じたかというようなことについて、宇宙
     開発事業団の方で現在、原因究明が続けられているところでございます。
      1ページ目に戻っていただきまして、こういった軌道に投入されたと
     いうことで、この軌道では、地球上の約1,900kmを回っているよ
     うな軌道でございまして、いわゆる通信・放送実験を行うことは困難だ
     ということで、それから衛星の状態そのものは一応、動いているのでは
     ないかというような宇宙開発事業団からの報告がございました。
      そういうことを踏まえまして、郵政省といたしましては、この「かけ
     はし」を開発し打ち上げた成果ができるだけ得られますように、このよ
     うな軌道上で可能な限り実験を行うということで、事故後直ちに関係者
     と協力いたしまして、軌道を移しまして得られる実験がないかというこ
     とについて検討を行ったところでございます。
      その結果を3月4日の宇宙開発委員会に報告いたしまして、同日、宇
     宙開発事業団の方でも、この軌道変更計画について委員会に報告いたし
     ました。委員会では3月6日金曜日でございますが、この計画を了承い
     たしております。
      具体的な軌道の変更計画でございますが、4ページ目の別紙1をご覧
     いただければと思いますが、上の方に軌道の絵が書いてございます。投
     入直後の軌道は約1,900kmと250kmという非常に地球の周辺、
     近いところでございますが、これを衛星に搭載いたしておりますアポ
     ジーモーター、アポジーエンジンというのがございます。本来、このア
     ポジーエンジンというのは、3万6,000kmの遠地点に到達いたし
     ましたときに、静止軌道に投入するために噴射させるロケットでござい
     ますが、この搭載しておりますロケットを非常に低い1,900kmの
     軌道から、できるだけ地球から遠地点を上げようという軌道変換に使お
     うということでございます。今の試算では、1万7,700km程度の
     ところまで上げ得るのではないかということでございます。
      このような軌道に変更いたしまして、下の表にございますが、2日に
     1回、約90分間の実験ができるような軌道に投入し得るのではないか、
     あるいは投入したいという軌道変更計画を策定いたしました。こういう
     軌道に変更するということで、これを8回にわたって徐々に軌道、遠地
     点の高度を上げていくということでございます。
      既に第2回目までが終わっておりまして、この表の左に書いておりま
     すように、当初、近地点は250kmでございましたが、400km。
     遠地点が1,900kmから2,500kmという軌道に、2回にわた
     って変更されております。
      この軌道変換を今後更に5月にかけまして、あと6回行っていくとい
     うような予定になっているわけでございます。
      1ページ目に戻っていただきまして、今のような概要が1ページ目の
     下の方に書いてございます。実験をやるためには、できるだけ衛星が見
     える時間が長く取れるということで、可視時間が長いことということ。
     それから今、衛星の軌道停止角度は約30度でございますが、この衛星
     の仰角が時間とともに南にずれていきまして、最悪、南半球の方に移っ
     てしまうということがありますので、衛星の寿命まで実験できるように、
     遠地点ができるだけ北半球側にあるということ。あるいは周期的に日本
     で実験が可能となる。準回帰軌道のような軌道である。こういった条件
     を満たすように、軌道変更計画を策定したわけでございます。
      次のページに、先ほど図で説明しました最終の目標軌道というものが
     掲げてございます。遠地点が1万7,700キロ、近地点が500キロ
     というようなものでございます。
      なお、この軌道変更をするために8回にわたってアポジーモーターを
     噴射するわけでございますが、太陽電池パドルを広げたままでアポジー
     モーターを噴射いたしますと、パドルが破損してしまう、あるいはもぎ
     取れてしまうということもございまして、噴射するたびにこれを一たん
     収納いたします。そしてまた終わった直後に開くということでございま
     すので、大変リスクのあるオペレーションだということでございます。
      3に、先ほどもう既にご説明いたしましたが、2回にわたって実施し
     た軌道変更の結果が示されております。ハッチングをしているところが
     ございますが、これがそれぞれ大きく変わった点でございます。
      第1回目はどちらかといいますと近地点を低いところから400キロ
     まで持ち上げた。第2回目から、今度は遠地点をできるだけ上に上げて
     いくということでございます。こういった変更を既に2回行っておりま
     す。
      3ページ目でございますが、今後の通信・放送の実験でございます。
     先ほど申し上げましたように、衛星の軌道の周期、最大、うまくいって
     も2日間で1回90分の実験が約5カ月間程度しかできないという軌道
     でございます。この間、衛星はバンアレン帯を通過しておりますので、
     太陽電池が放射線の影響を受けまして、発生電力が徐々に低下してまい
     ります。そういうこともございまして、5カ月間という期間に限られて
     まいりますので、この間をいかに有効に実験に使うかということが今現
     在、大きな課題になっているわけでございます。
      この件につきましても、先ほど申し上げました検討グループの中で検
     討いたしましたが、まず第1に、軌道上での衛星に搭載されております
     中継器・アンテナの特性測定を第一にやる。宇宙に持っていきました電
     子機器が動いているかどうかというのは、宇宙開発の中でも大きな開発
     の成果でございますので、それを第一にやるということでございます。
      それから次に、通信実験に必要な衛星を介した地球局の特性測定をや
     る。3番目に、その他の通信実験をできる限り行っていくという準備を
     整えようとしているところでございます。
      当初、静止衛星を想定しておりましたので、地球局に追尾機能等がご
     ざいません。地球局にそういったものを追加する必要がございますの
     で、そういった準備を進めているという状況でございます。
      簡単でございますが、以上でございます。
    ○西澤会長 どうもありがとうございました。ただいまのご説明にご質問、
     ご意見ございませんでしょうか。
    ○箱石通信総合研究所次長 研究所でございますが、補足させていただき
     ます。
      私どもはCOMETSの実験実施部隊としまして、鹿島にチームを持
     っております。軌道の専門家も鹿島の方にいるのですが、打ち上げが成
     功しなかったということを受けまして、所長をヘッドにしましてCOM
     ETSの対策会議というのを所内に設けております。本省、郵政省と連
     絡を取ったり、NASDAの中にも対策会議ができておりますので、そ
     ちらの方にも参加しています。
      現在までのところ、2ページに第1回目と第2回目の変更の状況を表
     にしていただいておりますけれども、変更でねらったところと実際の軌
     道が1キロぐらいしかずれていないということで、大変うまくいってい
     るというように考えております。例えば第1回目の変更の近地点高度が、
     目標値が391kmであったのに対して、軌道の変更後が390kmと
     1kmしかずれていないわけです。
      それから第2回目の遠地点高度も、ねらったところが2,493km
     に対して、変更後が2,492kmということで1キロしかずれていま
     せん。
      ただ、今、ご説明にもございましたように、まだまだリスキーな部分
     もございますので、うまくいくことを期待しています。
      それから地球局、またこれもご説明ありましたけれども、静止衛星を
     予定していましたので、追尾機能がございませんので、追尾機能を持た
     せるべく改修の検討もしています。
      これでできる限りの実験はやりたいと思っているわけでございますけ
     れども、どうしても部分的にはできない実験も出てこようかと思います
     ので、そういった積み残しになるであろう実験についてどういうふうに
     していくのかということも、ただいま検討させていただいているところ
     でございます。以上でございます。
    ○西澤会長 どうもありがとうございました。ではご質問、ご意見お願い
     します。
      (暫時)
      これは、予算はどこに上がることになるわけですか。つまり予算がな
     くなってしまうわけですね、簡単に言えば。
    ○箱石通信総合研究所次長 平成10年度の予算というのは、政府原案、
     衆議院を通過したものにはつけていただいておりますので、その範囲内
     でうまくやり繰りをしながら、COMETSについてはできるだけのこ
     とをやっていきたいと考えております。
    ○西澤会長 次のものをつくるということではないわけですね。
    ○箱石通信総合研究所次長 積み残しの実験について、今後どうするのか
     というのは、これを飛び越えた大きな議論になる可能性がございます。
    ○西澤会長 損失を科学技術庁で補てんをするとか、あるいは保険が入
     ってくるとかということはないわけですね。
    ○箱石通信総合研究所次長 私どもそこまでは今、ございませんで、実験
     をする立場からいいますと、こういう不具合にも備えて、もう少し余裕
     のある実験計画を国としてつくっていくことができれば、一番いいこと
     だなと思っております。
    ○西澤会長 ただ、逆にいいますと、最初の1発で失敗するのは、当然あ
     り得ることですが、これは4回目ですね。
    ○箱石通信総合研究所次長 ETS−VIの際にも大分苦労いたしました。
    ○西澤会長 それから大体アメリカでもそうですが、大分経験を積んでか
     ら失敗するというのは、悪い言葉でいうと、たるんでいるという指摘も
     あります。郵政省の失敗ではないのですけれども、我々もエンジニアと
     して大いに心しなければならないと思います。ほかにございませんでし
     ょうか。
      (暫時)
      それではどうもありがとうございました。

(5) 報告
  「航空機搭載高分解能映像レーダーの開発について」

    ○西澤会長 次は5番目でございますが、「航空機搭載高分解能映像レー
     ダーの開発について」、省側からご説明をお願いいたします。
    ○真鍋通信総合研究所環境計測技術研究室長 通信総合研究所地球環境計
     測技術研究室長の真鍋と申します。着席して説明させていただきます。
      それでは資料105−11、航空機搭載高分解能レーダーの開発につ
     いて、ご報告申し上げます。
      通信総合研究所では、地球環境計測技術の研究開発の一環として、宇
     宙開発事業団と共同で航空機搭載高分解能映像レーダーの開発を進めて
     おりましたが、このたびシステムが完成し、目的性能が得られることが
     確認できましたので、ご報告いたします。
      このレーダーは、マイクロ波帯のXバンド、これは9.5GHzの周
     波数帯でございますが、とLバンド、これは1.2GHzの周波数でご
     ざいますが、この2周波の合成開口レーダーから構成されておりまして、
     それぞれの周波数で偏波を利用したポラリメトリ機能を持つ他、Xバン
     ドでは主従2つのアンテナによるインタフェロメトリ機能により地球の
     高さ情報を含む3次元の映像を取得することができるなど、世界的に見
     ても最先端の多機能を備えた航空機搭載型の映像レーダーでございます。
      このレーダーの開発につきましては、Lバンドのシステムの開発につ
     きましては宇宙開発事業団、Xバンドのシステムの開発については通信
     総合研究所がそれぞれ分担して開発を進めてまいりました。
      本レーダーについて簡単にご説明申し上げます。ご存じのことと思い
     ますが、電磁波を用いて対象物に直接触れることなく遠隔計測する技術
     はリモートセンシングと呼ばれ、特に最近、地球環境問題への関心の高
     まりとともに、気象現象や災害、環境破壊など地球環境を取り巻くいろ
     いろな現象を広範にわたって迅速に計測できることから、特に人工衛星
     や航空機を用いたリモートセンシング技術に大きな期待がかけられてお
     ります。
      中でもマイクロ波を用いたリモートセンサーの1つであります合成開
     口レーダー、これはSynthetic Aperture RadarということからSARと
     も呼ばれておりますが、これは航空機や人工衛星からマイクロ波を放射
     して地表面あるいは地球の対象物からの反射散乱されて戻ってくるエ
     コーを受信するレーダーでございまして、特殊な信号処理を用いること
     によりまして、地上波対象物の影響を非常に高い分解能で観測すること
     ができます。
      合成開口レーダーで得られます画像は、後程資料でお示しいたします
     が、一見、航空写真のような画像に見えますが、マイクロ波帯の電波を
     用いたレーダーであることから、例えば雲などの天候に左右されない。
     あるいは夜でも昼間でも同じように映像が取得することができるなど、
     マイクロ波の反射・散乱特性により、航空写真では得ることができない
     ような対象物の詳細な情報を得ることができます。
      このような合成開口レーダーは、既にスペースシャトルや、我が国の
     地球観測衛星ふよう1号、JERS−Iでございますが、これを初めとす
     る衛星に既に搭載されて、威力を発揮しているところですが、今回のよ
     うに航空機に搭載した場合、非常に高い分解能と、航空機特有の機動性
     という衛星に搭載した場合にはない特徴を生かすことができます。
      このレーダーは、資料の3ページ目の上の写真にお示しいたしました
     ように、航空機、これはGulfStreamIIといいます双発のター
     ボファンジェットエンジンを搭載した航空機でございますが、これに搭
     載されております。
      上の写真の航空機の前部に2つ小型の風洞のようなものがぶら下がっ
     ておりますが、これがXバンドのアンテナでございます。それから真ん
     中に1つ飛び出したようなところがございますが、これがLバンドのア
     ンテナでございます。これらのアンテナからそれぞれ電波を放射いたし
     まして、地上から反射してくる電波を受信して、画像を取得するという
     レーダーでございます。
      この航空機はターボファンジェット機でございまして、高度約6,0
     00mから最大1万2,000mの高さの高度まで飛ぶことができまし
     て、このような高い高度から地上の対象物の約1.5mの高い分解能で
     観測することができます。
      これまで通信総合研究所では予備的な飛行観測実験を行い、都市部や
     山岳部あるいはオホーツク海の流氷などの海洋や鳥取砂丘、それから中
     部関東地方の植生などを観測した結果、本レーダーの優れた機能を既に
     確認してまいりました。
      それでは図の説明をさせていただきます。3ページの下の方の図でご
     ざいますが、これは昨年9月の飛行観測で観測した画像でございますが、
     この大きな画像、ご覧になってわかると思いますが、これは東京の羽田
     国際空港の画像でございます。
      これは航空写真と非常によく似ているように思われますが、マイクロ
     波のXバンド、すなわち9.5GHzのマイクロ波で撮った画像でござ
     います。このように非常に鮮明な、航空写真と見まちがうような鮮明な
     画像が撮れるということがご覧になっていただけると思います。
      例えばこの写真の左下の方に示しておりますが、これはマイクロ波の
     レーダーで飛行場に駐機しております飛行機、これは多分ジャンボジェ
     ット機だと思われますが、ジャンボジェット機が飛行場に駐機している
     状態がよく見えるということがご覧いただけると思います。この左下の
     四角い部分で、飛行機が駐機していることが確認できます。
      このようにこのレーダーを用いることによって、地上の非常に細かい
     高度を約1.5mの分解能で観測できるということが確認できると思い
     ます。
      それから次のページの写真でございます。これも昨年の9月に観測実
     験で観測したデータの一例をお示ししたものでございます。これは長野
     県白馬村で、この2月に冬季オリンピックのスキーのジャンプ競技ある
     いはスキーの大回転の競技などが行われたスキー競技会場付近の山でご
     ざいます。
      ちょうど真ん中の下の方に山が張り出しておりますが、これは八方尾
     根のスキー場でございまして、この画像の真ん中あたりに、かなり縮小
     した画像で、かつコピーの画像でございますので、余り鮮明にご覧いた
     だけないかと思いますが、ちょうど真ん中の部分に、冬季オリンピック
     で用いられましたスキーのジャンプ競技のジャンプ台が鮮明に見えます。
     これは実際に元の合成開口レーダーの画像で見ますと、ジャンプ台のス
     ロープからスタンドまで、非常に細かく見ることができます。
      それからその下の画像でございますが、これは伊豆諸島の三原山の火
     口付近の画像、これも昨年9月にXバンドのレーダーで観測したもので
     ございます。
      この画像、ご覧いただいてわかりますように、火口周辺の細かい地形、
     特に溶岩が流れた後等を鮮明に観測できているということがわかると思
     います。
      この画像について特に注目いたしますことは、この画像を取得したと
     き、航空機から山の山頂付近を目で観測しておったわけでありますが、
     そのときには下は非常に厚い雲がかかっておりまして、山を直接、目で
     は全く確認することができなかったということでございます。すなわち
     航空写真でもこのような画像は撮ることができなかったということでご
     ざいますが、そのような悪天候の環境でございましても、晴天時と全く
     同じように、このような鮮明な画像を撮ることができるということで、
     マイクロ波を用いた合成開口レーダーの非常に優秀な威力を確認できた
     ということでございます。
      説明書の2ページに移りまして、このたびこのように日本各地で観測
     を行ってまいりました。特に図には示しておりませんが、昨年、日本海
     で座礁いたしましたロシアのナホトカ号によります原油流出の際には、
     海上に広がります原油に関しますデータをこのレーダーにより取得しま
     して、関係機関に配布しております。
      今後、通信総合研究所ではこのレーダーを用いまして、映像レーダー
     を火山噴火、洪水、地震などの自然災害や都市災害のモニター、海洋油
     汚染の監視、船舶の救難などに役立てるための研究を行うことを予定し
     ております。
      また地形や地質、植生や土地利用の観測、波浪や海氷などの海洋現象、
     土壌水分や積雪などの水文過程等の定量的観測などを行い、森林破壊、
     土壌破壊その他地球温暖化等の地球温暖化問題の解明のための基礎技術
     として開発していくことを考えております。
      特にこの世界的にも最高クラスの機能を持った航空機搭載レーダーを
     当所だけではなくて外部の方にも有効に利用していただくことを考えま
     して、私どもでは地球科学技術フォーラムの中にも、地球観測委員会の
     下に外部の研究機関や大学の先生方を委員といたします共同利用のため
     のワーキンググループを設置いたしまして、共同観測のための計画の策
     定や今後のデータ配布を進めていこうと考えております。
      以上、簡単でございますが、以上でございます。
    ○西澤会長 どうもありがとうございました。ただいまのご説明に何かご
     質問ございますでしょうか。
    ○安田委員 地球観測衛星などでも、もう合成開口レーダーが進んでいる、
     あるいは計画があるという段階だと思うのですが、それの分解能はどの
     くらいでございますか。
    ○真鍋通信総合研究所環境計測技術研究室長 現在、既に例えば我が国で
     やっておりますものとしましては地球観測衛星JERS−I、ふよう1号
     というのがございますが、あれに合成開口レーダーが積まれております。
      ただ衛星から観測しました場合、分解能が約10メートル以上と、余
     り大きな分解能ということではありません。
    ○安田委員 相対的に言うと。一番、10kmで1.2mでしょう。そう
     すると、数十km上空から見て10mの方が分解能、そっちの方がいい
     んではないですか。
    ○真鍋通信総合研究所環境計測技術研究室長 そういう意味ではございま
     せん。合成開口レーダーと申しますのは、原理的には、距離が変わって
     も分解能は落ちないという非常に優秀なレーダーでございます。そうい
     う意味で、衛星から観測する観測するには非常に適しているわけでござ
     いますが。ただ、距離が長くなりますと、戻ってくる電波の強度が弱く
     なりますので、現実的には大きなアンテナを使わなくてはいけない。大
     きなアンテナを使うと分解能が下がるという特性を持っております。そ
     ういう制約から、衛星では余り高い分解能を取ることができませんので、
     航空機を使いますと、非常に高い分解能が得られるということです。
    ○安田委員 航空機でこの程度の分解能というのは、世界的に見てもない
     ということでしょうか。
    ○真鍋通信総合研究所環境計測技術研究室長 現在、世界最高クラスのも
     のになります。
    ○西澤会長 今の最初の方の空港の図面ですね、ここに入れ込みになって
     いるものは、機械で拡大して撮られたものか、あるいは写真を拡大され
     たものか、説明がなかったように思うのですが。
    ○真鍋通信総合研究所環境計測技術研究室長 これはもともとこの画像自
     体は、本に載せるために縮小しているわけでございまして、縮小します
     と当然、実際、この中にこの画像があるわけでございますが、この部分
     をわかりやすく示すために少し拡大してお示ししております。
    ○西澤会長 例えばテレビ画像みたいにして拡大縮小することではないの
     ですか。
    ○真鍋通信総合研究所環境計測技術研究室長 ではございません
    ○羽鳥委員 1つ教えていただけますか。三原山の火口の中が真っ黒に見
     えているとか、その上の白馬の上の方の画面は白くて下側の方の斜面は
     黒っぽく、日が当たっているように見えているような気がするのですけ
     れども、日が当たっているというようなのと関係ないのでしょうか。
    ○真鍋通信総合研究所環境計測技術研究室長 これはマイクロ波、レー
     ダーで見た特徴でございまして、マイクロ波のレーダーで山の斜面がご
     ざいますと、レーダーが当たっている方からの反射が強く出てきて、裏
     側の斜面からの反射は弱くなるということで、裏側が割と。実際には反
     射波は戻ってきているのですが、若干、暗く見えるのです。
    ○原島委員 真下ではなくて。
    ○真鍋通信総合研究所環境計測技術研究室長 斜面の傾きぐあいによりま
     して、反射強度が弱くなってくることから、こういう濃淡の様子が出て
     くるということでございます。
    ○原島委員 そうすると、三原山の火口の中には電波が届いていない。
    ○真鍋通信総合研究所環境計測技術研究室長 これは多分、火口の中に電
     波届いているのだと思いますが、ダイナミックレンジが大きな信号にな
     っておりますので。反射域が弱くなってくるところからは当然、画像が
     暗くなってくるわけでございます。
    ○西澤会長 ほかにございますでしょうか。
      それではどうもありがとうございました。

(6) その他

    ○西澤会長 以上で予定された議題は終了致しますが、その他の項で何か
     事務局からご発言ありますでしょうか。
    ○渡辺審議会室長 特にございません。
    ○西澤会長 それでは委員の先生方、何かご発言ございますでしょうか。
     ございませんでしょうか。

3 閉会

    ○西澤会長 それでは以上をもって閉会でございますが、本日は熱心なご
     審議をいただきましてどうもありがとうございました。

第6 議決事項
   (1) 答 申 諮問第93号「加入者系無線アクセスシステムの技術的条
  件」
   (2)一部答申 諮問第55号「周波数の共用に関する技術的諸問題」のうち
  「陸上移動業務と放送業務の周波数共用問題」



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