発表日 : 1998年11月10日(火)
タイトル : 第110回電気通信技術審議会議事録
第1 開催日時及び場所
平成10年9月28日(月) 午後2時00分から 於、郵政省3階第2特別
会議室
第2 出席した委員等(敬称略)
1 委員
西 澤 潤 一、徳 田 修 造、青 木 利 晴、岩 崎 欣 二、川 田 隆 資、
北 城 恪太郎、國 井 秀 子、倉 内 憲 孝、坂 田 浩 一、関 澤 義、
高 橋 寛 子、長 尾 真、長谷川 豊 明、羽 鳥 光 俊、原 島 博、
安 田 靖 彦
2 専門委員
仁 田 周 一(CISPR委員会委員長)
第3 出席した関係職員等
1 郵政省
野田 聖子(大臣)
2 大臣官房
甕 昭男(技術総括審議官)、鍋倉 真一(総務審議官)、吉崎 英雄
(国際部長)、小林 哲(専門調査官)
3 通信政策局
金澤 薫(局長)、小笠原 倫明(政策課長)、寺崎 明(技術政策課長)
4 電気通信局
天野 定功(局長)、田中 征治(電波部長)、松本 正夫(計画課長)、
仲川 史彦(電波環境課長)
5 放送行政局
品川 萬里(局長)、重田 憲之(放送技術政策課長)
6 通信総合研究所
古濱 洋治(所長)
7 郵政研究所
飯田 清(技術開発研究センター長)
8 事務局
小野寺 敦子(審議会室長)
第4 議題
(1)一 部 答 申 「国際無線障害特別委員会(CISPR)の諸規格に
ついて」のうち「情報技術装置におけるイミュニティ
特性の限度値と測定方法」(諮問第3号)
(2)審議状況報告 「地上デジタルテレビジョン放送の暫定方式策定につ
いて」
(3)報 告 「情報通信政策大綱について」
(4)報 告 「平成11年度郵政省科学技術関係経費の概算要求等
の状況について」
(5)報 告 「郵政研究所における研究活動について」
(6)そ の 他
第5 審議内容
1 開会
○小野寺審議会室長 それでは定刻になりましたので、第110回電気通信技
術審議会を開催いたします。
初めに、議事に先立ちまして、野田郵政大臣よりごあいさつ申し上げま
す。
(1) 大臣あいさつ
○野田郵政大臣 郵政大臣の野田聖子でございます。西澤会長はじめ、電気通
信技術審議会委員の皆様方には、平素から情報通信行政全般にわたり格別の
御高配を賜り、厚く御礼を申し上げます。
さて、情報通信分野におきまして、情報通信技術の進歩によりデジタル化
が進み、あらゆる情報がネットワークを通じて、瞬時に世界中を流通するグ
ローバルな高度情報通信社会の時代が到来しております。
このようなめざましい技術革新に支えられた情報通信関連産業は、グロー
バルな規模で市場と雇用を生み出すとともに、21世紀における経済社会の
発展の基盤となるものでございます。
私は、情報通信技術の研究開発や標準化を積極的に推進し、世界最先端の
高速情報通信ネットワークの構築と利用技術の開発などの諸施策を総合的に
展開することにより、日本経済への再生に取り組んでまいりたいと考えてお
ります。
なお、ネットワークの不正利用など、高度情報通信社会の影の部分の対策
についても、力を入れて取り組んでまいります。
現在、郵政省では昨年、本審議会によりご答申いただきました情報研究開
発基本計画に基づき、国が取り組むべき80の重点研究開発プロジェクトを
産学官の連携を図りつつ、強力に推進しているところでございます。
また、平成11年度予算要求におきましては、ギガビットネットワーク技
術、次世代インターネット等の基盤技術、電子政府の基盤となるシステム、
ギガビット衛星や高度道路交通システムなど、21世紀のマルチメディア社
会の創造に資する研究開発などの諸施策の実現に取り組むこととしており、
今回、特別に設置されました情報通信科学技術環境等21世紀発展基盤整備
特別枠を含め、一般会計総額では1,034億円を要求、要望しているとこ
ろでございます。
一方、国民生活に広く浸透している移動通信の分野におきましては、今後
さらなる普及・発展が期待されておりまして、新たな周波数を利用した次世
代移動通信システムの開発、導入が求められております。これについては世
界各国で利用可能なIMT−2000に沿ったシステムの実現を目指し、本
審議会においても技術基準をご検討いただいておりますので、どうかよろし
くお願いいたします。
またこれにあわせ、身近な場所における電波利用に対しましても安心して
電波を利用できる環境の整備を推進してまいります。
また、放送分野におきましては、高度情報通信社会の基盤技術であるデジ
タル技術の導入を地上、衛星、ケーブルテレビの全放送メディアにおいて2
000年を目標に推進していくことが重要であると考えております。
我が国における衛星放送、ケーブルテレビにおけるデジタル放送方式の技
術基準策定に関しましては、我が国にとって最もふさわしい技術基準として
最善の方法をご提言いただき、まことにありがとうございました。
また、現在、地上デジタル放送の技術基準についてご検討いただいており
ますが、これにあわせ、本年6月には地上デジタル放送懇談会の中間報告が
公表されたところであり、今後、最終報告に向けて各界からのご意見をいた
だき、取りまとめていくところでございます。
郵政省といたしましては、本審議会のご議論を十分に反映させ、諸制度の
整備を進めるとともに、世界中で進められている放送のデジタル化の動きに
貢献できるよう、国際共同研究などの諸施策を推進してまいりたいと考えて
おります。
本審議会に対しましては、多岐にわたる情報通信技術の課題についてご審
議をお願いしておりますが、この分野は発展の大変著しい分野でございま
す。今後とも本審議会のご意見を十分拝聴いたしまして、時代の進展に即応
した情報通信行政を推進してまいりたいと考えておりますので、委員の皆様
方のさらなるご指導を心からお願い申し上げまして、私からのごあいさつと
いたします。どうぞよろしくお願いいたします。
○小野寺審議会室長 それでは、大臣は所用がございますので、恐縮でござい
ますが、ここで退席させていただきます。
○野田郵政大臣 失礼いたします。
○小野寺審議会室長 それでは次に、本日の議事の確認をさせていただきます。
お配りしてございます資料でございますけれども、本日は一部答申に関す
る議題が1件、審議状況報告に関するものが1件、そのほかに報告として3
件を予定してございます。
一部答申といたしましては「国際無線障害特別委員会の諸規格について」
のうち「情報技術装置におけるイミュニティ特性の限度値と測定方法」のご
審議をお願いいたします。次に「地上デジタルテレビジョン放送の暫定方式
策定について」のご審議をお願いいたします。その後、私どもからの報告と
いたしまして、「情報通信政策大綱について」、「平成11年度郵政省科学
技術関係経費の概算要求等の状況について」、「郵政研究所における研究活
動について」の3件の報告をさせていただく予定でございます。
それから本日の配布資料でございますけれども、ご確認いただけますでし
ょうか。1番から3番までがCISPRのご審議の関係でございまして、一
番上から報告概要、それから報告書、それから答申書案となってございま
す。それから資料4と5が地上デジタル放送関係でございまして、4が概
要、5が暫定方式案という大部のものでございます。
その後、資料6が情報通信政策大綱、資料7が平成11年度科学技術関係
経費関係、そして資料8が郵政研究所の研究活動でございます。
資料は何か漏れているものはございませんでしょうか。それではよろしけ
れば、早速でございますけれども、西澤会長、どうぞよろしくお願いいたし
ます。
2 議事
○西澤会長 それでは議事に入らせていただきます。前回会合の議事録につき
ましては、既に委員の皆様にはご確認をいただいておりまして、公開されて
おります。
(1)一部答申
「国際無線障害特別委員会(CISPR)の諸規格について」のうち「情
報技術装置におけるイミュニティ特性の限度値と測定方法」
○西澤会長 それでは1番目、「国際無線障害特別委員会(CISPR)の諸
規格について」のうち「情報技術装置におけるイミュニティ特性の限度値と
測定方法」についての一部答申の審議に入らせていただきます。
最初に、CISPR委員会の委員長をお願いしております仁田専門委員に
おいでいただいておりますので、委員会での検討結果についてご報告をお願
いいたします。
○仁田専門委員 ただいまご紹介にあずかりましたCISPR委員会の委員長
を務めさせていただいております仁田でございます。座ったままで説明させ
ていただきます。
ご存じだと思いますけれども、このCISPR、国際無線障害特別委員会
と申し上げますのは、1934年に設立されておりまして、無線障害に関す
る国際的な合意を図ることにより、国際貿易を推進するということを目的に
しております。無線機器や各種電気機器における妨害波、つまり出るものの
許容値、測定方法についての検討、それからこれは強制ではなくて勧告とい
う形で行う国際的な審議機関でございます。
私どもCISPR委員会では、その勧告を国内規格とするために必要な技
術的検討を行っているということでございます。
今回、ご審議いただきます内容は、CISPRの勧告のうちパブリケーシ
ョン24、先程から言われています情報技術装置におけるイミュニティ特性
の限度値と測定方法を国内規格案としてまとめたものでございます。
最近は、先程の大臣のお話にもございましたように、高密度な電子回路を
利用してパソコンやワープロの小型軽量化、それから電波を発射する機器と
して携帯電話などがございまして、各種の電子機器が同じような環境で使わ
れると、これに起因する電磁障害が報告されるようになっています。こうし
た電子機器のみならず、自動車のエンジン、それから鉄道の架線、電子機
器、各種の電子機器から発射される不要なノイズが存在していますが、今回
のイミュニティと申しますのは、エミッションとの対比でして、あらゆる電
気、電子機器等がエネルギー量を扱っております限り、外部に電磁界を出
す、あるいは外部の電磁界を受けるということで、このCISPR委員会で
も、従来は主としてエミッション、つまり機器から出る不要電磁波の規制を
行ってまいりましたが、今回、イミュニティ、特に情報機器のイミュニティ
を取りまとめるに至ったということでございます。
イミュニティというのは、各機器が本来、有している機能を外部からの電
磁界つまり妨害波に対して影響されずに、その機能を発揮する。つまり耐
力、耐性、妨害波に耐えることのできる能力というものでございます。
こういう背景に基づき、パソコンやファクシミリ、いわゆるこういう情報
機器におけるイミュニティの限度値と測定法を審議してまいりましたのが、
今回のCISPR委員会の報告でございます。
それでは、お手元にございます資料で110−1というのがございます
が、それにのっとりまして、簡単にご報告させていただきます。
この委員会の構成ですが、第4分科会というところに作業班を設けまし
て、そのメンバーは別表の一番最後のページの方に第4分科会作業班名簿が
ございます。
審議経過ですが、情報技術装置におけるイミュニティ特性の限度値と測定
方法について、平成10年3月から作業班を4回開催し、審議を行ってまい
りました。
本年の9月14日に第30回電気通信技術審議会CISPR委員会を開き
まして、第4分科会の報告とともに、情報技術装置におけるイミュニティ特
性の限度値と測定方法に関する答申案を取りまとめいたしました。これに関
する意見聴取を当日予定しておりましたが、特に意見陳述等の申し入れはご
ざいませんでした。
今回の審議でございますが、1997年9月に発行されましたCISPR
パブリケーション24に準拠しまして、国内規格をできるだけCISPR国
際規格に整合させるべきとの考えに基づき、技術検討を行ってきました。ま
ず、このパブリケーション24の日本語訳をつくりまして、これを国内規格
とした場合の問題点を各作業班員が提案、検討するという形で行ってまいり
ました。
ここで審議の概要ですが、まずこれの適用範囲と目的ですが、本規格にお
きましては、平成8年電気通信技術審議会答申諮問第3号「国際無線障害特
別委員会(CISPR)の諸規格について」のうち「情報技術装置からの妨
害波の許容値と測定法」、これは先程のエミョションの方でございますが、
記述されている情報技術装置に適用されまして、ここで定義されております
情報技術装置へいわゆるノイズを加えた場合の耐性及びイミュニティ試験の
要求事項というものを定義しております。
極めて細かい話になりますが、諸外国では電源コンセントに接地が使用さ
れておりますが、我が国では非接地型の電源コンセントを使用する機器が多
いので、ESD(静電気放電)の試験の際に、除電ブラシを用いて放電箇所
への静電気による影響を回避する。つまり静電気を放電させた場所にそのま
ま静電気がたまっていることによる影響を防ぐために、その試験の後、除電
ブラシによってその静電気を放電させているという措置を講ずる必要があり
ますので、そういうのを盛り込んであるということでございます。
それから各ポートといいますのは、ここには「対象装置と外部電磁環境と
の境界点」と載っておりますが、要するに信号線が出ている、電源線が入っ
ている、それから通信線が出ている、筐体があるという境界のところでござ
います。信号線のその装置への接続箇所、電源のその装置への接続箇所を
ポートといっているわけですが、そういうところに静電気放電、ESD(エ
レクトロサチックディスチャーデス)、それから電気的ファストトランジェ
ント(エレクトリックファストトランジェント)、それから連続無線周波妨
害(連続放射妨害、連続伝導妨害)、伝導と放射というのは、伝導は線を伝
わってくる妨害。それから放射はいわゆる空間を伝わってくる妨害でござい
ますが、そういうもの。それから電源周波数の磁界、サージ、電圧ディップ
及び短時間停電、これは電圧が低下するということです。そういう試験を行
うことにする。
それから試験時の条件としては、一般的な条件としましては、典型的な普
通の使用状態を再現する代表的なモードで、すべての主な機能を動作させた
状態で実施する。それから供試装置の動作モード等について個別条件がござ
います。プログラムを働かせる、あるいは普通の動作条件。プリントアウト
したらどんな字を打つというようなことに関する個別条件は、一般条件の該
当事項に優先するものとしております。
それから性能判定といたしましては、3段階の評価。つまりA、B、Cと
いう評価がございまして、Aというのは性能障害が起こる。若干、性能が落
ちるようになる。Bというのは、機能喪失、働かなくなる。Cというのは、
誤動作には至りますが、性能障害、機能障害、両方とも含んだものでござい
ます。そういうふうに分かれております。
ただし、この試験の後、性能低下、機能障害等が起こりました後も、その
機器としては故障はしていない、外部から加えられた妨害が取り除かれた段
階では元の機能に戻ると、そういう条件でA、B、Cという判定をしており
ます。
審議結果としまして、国際無線障害特別委員会の諸規格についてのうち、
情報技術装置におけるイミュニティの限度値と測定方法について審議の結
果、別添の110−2ということがございますけれども、そこに答申案を取
りまとめました。
これは関係団体において規格として取り入れることがのぞまれております
が、現在、日本電子工業振興協会、日本事務機械工業会、通信機械工業会、
日本電子機械工業会という工業会で、これを自主規格としてそれぞれの業界
の規格として設定されることを検討しておられるということを伺っておりま
す。
それから最後ですが、こういったイミュニティのテストというのは、本
来、製品の性能ですので、業界の方々は自らテストして、現実にはより厳し
いテストを行っておられます。これをスタンダードにすることで、最低限こ
れだけはやらなければいけないということとして広く世の中に普及したいと
いうことで、こういうことを取りまとめているということでございます。以
上でございます。少し長くなりました。
○西澤会長 どうもありがとうございました。ただいまのご説明に関しまし
て、ご審議お願いします。
(暫時)
○西澤会長 ございませんでしょうか。よろしゅうございましょうか。それで
は、ご質問がないようですので、答申させていただきたいと思います。
仁田先生、CISPR委員会の検討と取りまとめ、本当にありがとうござ
いました。
それでは、いまの答申につきまして、その後の行政上の措置につきまし
て、省側からご説明をいただけるということですので、よろしくお願いいた
します。
○天野電気通信局長 電気通信局長の天野でございます。ただいまCISPR
の諸規格の一部答申といたしまして、情報技術装置におけるイミュニティ特
性の限度値と測定方法につきましてご答申いただきましたことに対しまし
て、一言お礼のごあいさつを申し上げたいと思います。
昨今、無線機器、中でも携帯電話が非常に爆発的に普及しております。こ
れは国際的にそうなのでありますが、利便性を国民が等しく供与できるよう
になったことは、大変喜ばしいと思っております。
しかしながら、その一方ではこういった無線機器あるいは電子機器から放
射させる不要電波による機器の障害や人体に与える影響等に対するご利用者
からの不安や心配が深刻な問題となって表面化しているところでございま
す。
私ども行政の立場といたしましては、このような不要電波の問題に対しま
しても積極的に取り組んでいかなければならないというふうに考えておりま
して、このような諮問をさせていただいたわけでございますが、この問題は
電波を出す側と電波を受ける側の調和の問題でございまして、そのための基
準を整備推進し、だれもが安心して利用できる情報環境の構築を図っていか
なければならないというふうに考えているところでございます。
ただいまいただきました答申につきましては、情報機器における受ける側
の基準を定めたものでありますが、これは国内規格としては初めてのもので
ございます。郵政省といたしましても、これが関係の機器製造者や関係の団
体において早期に導入されまして、効果的に活用されていくことを期待して
おります。今後、その内容が広く理解され、そして周知が図られるよう、私
どもも努力していきたいと考えております。
委員の皆様方あるいは専門委員の皆様方におかれましては、大変ご多忙中
にもかかわらずご熱心にご審議いただきまして、ただいまご答申をいただき
ましたことに対しまして、厚く御礼申し上げまして、ごあいさつとさせてい
ただきます。
○西澤会長 どうもありがとうございました。
(2)審議状況報告
「地上デジタルテレビジョン放送の暫定方式策定について」
○西澤会長 それでは、次の審議に入らせていただきます。「地上デジタルテ
レビジョン放送の暫定方式策定について」であります。
本件はデジタル放送システム委員会における検討におきまして、地上デジ
タルテレビジョン放送の暫定方式を取りまとめたということでございますの
で、ご報告をいただくということでございます。
それでは、まずデジタル放送システム委員会の委員長をお願いしておりま
す安田先生、ご説明をお願いいたします。
○安田委員 それでは、ご説明させていただきます。資料は110−4が概要
でございまして、主としてこの概要に従ってやらせていただきます。110
−5が暫定方式案ということで、本体でございます。109ページぐらいに
わたる大部なものでございまして、その後に参考資料というのが幾つかつい
ております。
それでは、110−4の概要に従いまして、ご説明させていただきます。
デジタル放送システム委員会は諮問第74号、これは平成6年6月に出たわ
けでありますが、「デジタル放送方式に係る技術的条件」の諮問に関連する
さまざまなデジタル放送実用化のための技術基準策定に向け、その放送方式
の技術的条件について検討を重ねてきたところでございます。その結果とし
て、平成7年7月には衛星デジタル放送方式、これは27MHz帯域を使う
いわゆるCSデジタル放送でございますが、それの技術的条件を一部答申と
して取りまとめました。また、平成8年5月には有線テレビジョン放送にお
けるデジタル放送方式の技術的条件、さらに本年の2月になりますと、いわ
ゆるBSデジタル放送の技術的条件につきまして、答申を取りまとめてご報
告したところでございます。
本日お話しする地上デジタルテレビジョン放送方式でありますが、これに
つきましては、伝送部分に関する暫定方式原案を、昨年の9月に取りまとめ
ておりまして、やはり電技審でご報告させていただいております。
その原案に基づきまして、室内実験、野外基礎伝送実験等の結果を踏まえ
まして検討を進めてきたわけでありますが、その結果、情報源符号化方式や
多重化方式等も含めまして、改めて地上デジタルテレビジョン放送の暫定方
式として取りまとめましたので、本日ご報告させていただくということにな
るわけです。
今回まとめました暫定方式は、これは暫定方式原案と同じでございます
が、変調方式に直交周波数分割多重方式、マルチキャリア方式のOFDM方
式を使っておるということでございます。それから情報源符号化方式、多重
化方式には、国際標準でありますMPEG2を採用いたしました。その主な
特長を、報告概要の資料に4つばかり書いてございます。
まず、現行の6MHzのスペーシングの中に1チャネルの高精細度テレビ
ジョン放送や多チャンネル放送、これは標準テレビジョン放送の品質で3チ
ャンネル程度でありますが、そういったものが実現可能であるということで
ございます。
それから良好な移動受信が可能となりますので、固定受信向けと携帯・移
動受信向けの番組を随時組み合わせた放送や携帯端末での部分受信が可能で
あるということでございます。
それからマルチパスによる妨害に強いOFDM変調方式を使っております
ことから、シングルフリケンシーネットワークということで、隣接放送区域
内において、同一番組ならば同一周波数を使えるということで、周波数利用
効率が全体としてよくなるというものでございますが、これが実現できます
と、周波数有効利用が実現可能であるということでございます。
それから国内における他のデジタル放送メディア、CSであるとかBSあ
るいは有線テレビ、そういったものとの整合性を確保するとともに、今後の
通信やコンピュータとの融合によるマルチメディア放送にも対応可能なよう
に考慮してございます。
こういうところが特長でございまして、この暫定方式を基にいたしまし
て、今後、東京タワーを送信地点として実用規模の実証実験を実施するとと
もに、審議を進めまして、平成11年春ごろを目途に最終的な放送方式を取
りまとめるというつもりにしておるところでございます。
次のページ以降は技術的な内容で少し中身が細かくなりますので、ちょっ
と飛ばしていただきまして、15ページ目に「地上デジタルテレビジョン放
送の暫定方式について」というのがございます。これでまずちょっと概要を
ご説明しておきたいと思います。
これは前々から何度か説明していることでありますが、暫定方式の基本構
造。これはいろいろなメディアがございますが、そのメディア横断的に使え
る階層の部分と、それからメディアごとに対応が必要な階層の部分の2つに
大きく分けておりまして、上の方のメディア横断的な階層につきましては、
情報源符号化、これは映像符号化と音声符号化でございますが、これはMP
EG2ということでメディア横断的に決めてあります。インターオペラビリ
ティを確保した形になっております。それから多重化方式についても、MP
EG2のシステムズというものを使います。伝送路符号化につきましては、
そのメディアごとに違った対応ということになるわけであります。今回は、
先程申しましたように、OFDMという方式を使っておるということであり
ます。
次のページを見ていただきますと、暫定方式の主な特長というのがござい
まして、これは先程口で申し上げましたことでありますが、第1番目で、高
精細度テレビジョン放送等の高品質な放送や多チャンネル放送が可能です。
従来のアナログ1チャンネルのスペーシングである6MHzの中に、従来は
アナログ1チャンネルしか映っていなかったのが、スタンダードテレビジョ
ンの品質のテレビジョン放送ですと3チャンネル、番組3つ、それから高精
細度テレビシジョン放送ですと1チャンネル、これだけ送れますよというこ
とです。
それから良好な携帯・移動受信が可能ということでありますが、ここに図
で示してあるとおりでありまして、これは変調方式や強力な誤り訂正機能等
の採用における、いろいろな工夫がここに入っているわけです。そういうこ
とによって、これは日本の方式の独特な点でありますが、移動受信に強い方
式となっております。
次、3番目が、さまざまな運用形態を随時組み合わせた放送が可能である
ということなわけですが、いま、先程言ったような、SDTV3番組、また
はHDTV1番組という取りあわせも可能でありますし、同じ6MHzの中
に携帯・移動受信向けの番組と固定受信向けの番組を同時に配置することも
可能であります。
ここに伝送に必要とする周波数帯域幅を縦線で13個に分けてあります
が、これも日本方式の特長でありまして、OFDMの周波数帯域を13個の
スペクトルセグメントに分けるんです。約430kHz程度に分けまして、
それぞれの中で独立の変調方式が決められるということによって、階層とい
う言葉には語弊があるかもしれませんが、ここでは階層伝送ということを可
能にしておるということでございまして、あるセグメトは非常に余りに強い
ということでございまして、そのかわり送れるデータ量は少ない。別のセグ
メントは、送れるデータ量は多いけれども、誤りには余り強くない。だから
条件のいいときしか使えないとか、そういう使い方ができるわけであります。
次にSFN(単一周波数中継)という説明がそこに出ております。これは
一目でおわかりのとおり、隣接した放送局で同じチャンネル、同じ周波数で
同じ番組の放送をやることが可能であります。
ところが、従来では、隣同士では干渉がありますので、そういったことは
できませんので、隣同士では違った周波数を使わなきゃいけませんでした。
したがって、全体として周波数配置ということを考えますと、周波数の有効
利用ということが、非常にこのシングルフリケンシーネットワークというこ
とによって可能になるわけであります。
それから5番目に、本暫定方式と国内における他のメディアとの整合性と
いうことで、これも先程ご説明しましたように、なるべく共通にできるとこ
ろはメディア共通的にやりましょうということであります。
次のページに地上、BS、CSデジタルテレビジョン放送の方式の比較と
いうのがございます。これはいろいろ細かいことがありますが、最初の情報
源符号化方式で映像符号化方式というのは、全3メディアにわたりまして、
MPEG−2 Videoということで同じものが使われる。映像フォーマ
ットにつきましては、地上デジタルテレビジョン放送は、先ごろ定めました
BSデジタル放送と同じ映像フォーマットになるようにしたわけであります。
ちなみにCSデジタル放送は早く決めたために、映像フォーマットの種類
が非常に少のうございまして、480プログレッシブというのと480イン
ターレースの2種類しかない。そこで、これはもう既に電技審でお諮りして
いると思いますが、CSデジタル放送につきましても、より高品位のテレビ
ジョン放送をしたいという希望がありますので、これらを追加する方向でい
ま、検討を進めておる段階でございます。したがって、将来的には恐らく映
像フォーマットは、これらのすべてのメディア、全部共通になるだろうとい
うふうに思っております。
それから限定受信方式、これは暗号化の問題でありますが、これはMUL
TI2という方式でこれも共通であります。それから多重化方式、これはM
PEG−2 Systemsということで、これも共通。
言い忘れましたが、音声符号化方式につきましては、MPEG−2 Au
dioのAACという方式。これはBSと同じでありますが、CSデジタル
放送は、そのAACが当時、使える状態ではなかったものですから、BCと
いう、もう少し効率の悪い方式になっております。
それから伝送路符号化方式でありますが、これがメディアごとに違うとい
うことでございまして、CSデジタル放送ではQPSK、4相位相変調だけ
を使っておりましたが、BSデジタル放送ではトレリス8相位相変調、それ
からQPSK、BPSKと8値、4値、2値の切りかえが可能な状態の変調
方式を使っております。それに対して地上デジタルテレビジョン放送では、
今回、ディファレンシャルQPSK、それからQPSK、これらは4値です
ね。それから16値のQAM(16QAM)、64値のQAM(64QAM)
という種類。それからさらに制御信号につきましては、ディファレンシャル
のバイナリPSK(DBPSK)と、非常に他種類の変調方式を使える状態
にしてあります。
誤り訂正符号につきましては、内符号は畳込み符号、これはおおよそ共通
であります。それから外符号もリード・ソロモン符号、これも共通でありま
す。
伝送路帯域幅でございますが、先程から6MHzと言っております。これ
は6MHzのスペーシングということで、実際の地上デジタルテレビジョン
放送のスペクトルは、約5.6MHzに押さえるようにしてあります。約4
00kHzのガードバンドをチャンネル間に設けるということであります。
BSデジタル放送が34.5、CSデジタル放送では27MHz。したが
って、送り得る最高のビットレート、これは条件によって送り得るビット
レートは変わるんでございますけれども、最高だけを取りますと、地上デジ
タルテレビジョン放送では23Mbps、BSデジタル放送は51Mbps
、CSデジタル放送は34Mbpsとなっております。
搬送波ですが、BSとCSはいわゆるシングルキャリア、従来の普通の変
調方式とお考えいただければと思います。それに対して地上デジタルテレビ
ジョン放送はOFDMということでマルチキャリア。実際、どのくらいのキ
ャリア数かというと、最高は5,000以上。相当の数のキャリアを立てる
わけでございます。
以上が概要でございまして、次に元へ戻りまして、2ページ以降に詳しい
ものが書いてあります。かなり技術的に細かい話もあるものですから、この
辺は余り詳しくは触れない方がよろしいのではないかと思いますので、簡単
に触れていきます。
最初に2ページの上に要求条件がございますが、地上デジタルテレビジョ
ン放送に関する要求条件。これは先程言っているようなことでありまして、
いずれもこういう条件を満足している。
それから周波数の条件でありますが、適用周波数領域は現行のテレビジョ
ン放送、地上系の周波数を対象とするということで、放送方式としてはUH
FとVHFを対象とするよう考慮しております。
伝送帯域幅は、いまご説明申し上げましたように、5.6MHzといたし
ます。ただし、中心周波数につきましては、アナログ放送の特殊事情の関係
で、中心周波数をちょうど伝送帯域の真ん中に置くのではなく、中心より高
い方に150kHzほどずらすことによって、アナログ放送への妨害が、よ
り軽減できるということであります。
次に所要電界強度、これは非常に話が細かくなってまいりますが、所要電
界強度をいろいろ測定して決めたわけでございます。そこにございますよう
に、周波数170、470、770というもので、64QAMの場合につい
て所要電界強度。これも畳込み符号の符号化レートをどう取るかによって変
わってくるわけでございまして、符号化レートを高くすると、所要電界強度
が高くなるということで、ここに書いてあるとおりの数字になったわけでご
ざいます。
それから搬送周波数許容値とありますが、搬送周波数の変動の許容値とお
考えいただきたいものです。これについても検討した結果、そこに表として
あがっておりますように、モードというのが3つ取ってあるんですが、その
モードごとに違った値でありまして、このような値になっております。
それから妨害波による干渉に対する受信機の主観評価。これは大変大事な
問題で、アナログで現行の放送が行われている中をすきまをぬってデジタル
を導入していくということになると、お互いの干渉というのが非常に重要な
問題になるということで、いろいろな試験をして、その辺のところを調べて
いるわけであります。
これもいろいろな場合について取っておりまして、これをいまいちいちご
説明できませんが、最初は希望波がアナログで妨害波がデジタルの場合、評
価として主観評価をやりまして、主観評価の評価値が最高5でございますけ
れども、4.5、4、3.5の場合について、同一チャンネルの場合、妨害
波が下側の場合、妨害波が上側の場合、それぞれについて必要とされるDU
比を取ったのが、この値であります。
それから希望波がデジタル、妨害波がアナログの場合につきましては、こ
のアナログの妨害によってデジタル信号が誤りを受けない、基本的にエラー
フリーとなる条件を求めたのが、この表でございます。
それから次のページの3.2伝送路符号化方式、これがOFDMの一番大
事なところでありますが、これも全部詳しく説明すると大変細かい話になる
ものですが、伝送路符号化方式の技術的方式としては、MPEG−2 Sy
stemsで規定されておるトランスポートストリームという情報を入れる
パケットがありますが、それを入力信号といたしまして、それをまとめて、
いくつかのトランスポートストリームをまとめてOFDM信号の1つのセグ
メントにするというようなことをやっております。このセグメントを13個
組み合わせて全体のシステムができるようになっているということでありま
す。
先程から申しておりますように、階層として、セグメントごとに変調方式
等を変えまして、異なる伝送特性の階層を組み合わせた階層伝送ということ
が可能になるようにしているわけですが、その階層数は3階層まで取れるよ
うにしております。各階層ごとに、あと時間インターリーブや周波数イン
ターリーブをかけまして、干渉や遅延といったもの、マルチパスに強くする
ようにしているわけです。特に時間インターリーブを加えているところが特
長であります。
それから6ページの下のところに図がございますが、右のところに階層伝
送をしている絵がございます。下の方、真ん中のところに1つだけ独立した
セグメントがありますが、例えばこの真ん中だけに独立したセグメントを設
けてやりまして、ここで基本的な情報伝送をやろうとすると、部分受信とい
うことで、周りは取らないで、真ん中のセグメントだけを受信するような受
信機、簡単な受信機が考えられまして、部分受信しようじゃないかというよ
うなことをやっているわけです。
ですから、ここだけは独立でありまして、部分受信以外のところは周波数
についてインターリーブをかけましてごちゃごちゃにまぜ合わせます。それ
から時間インターリーブもやるということでございます。
7ページ目にOFDMのセグメントのパラメータがありまして、最初に
モード1、モード2、モード3というのがありますが、最初のモード1とい
うのは、マルチキャリアの間隔が約4kHzということで、比較的間隔が
長い。モード3の方は、逆に1kHzで間隔が狭い。どういう違いがあるか
というと、モード1の方が移動受信に向いているわけです。モード3は固定
受信。モード2というのがその中間ということで、どちらの特長も備えてい
るということであります。
このモード3の場合を例にとりますと、全部でキャリアの数が1セグメン
トで432。これが13セグメントですから、トータルでは432掛ける1
3倍という大変な数になるわけです。
なぜこういうことをやるかというと、情報をパラレル伝送する。パラレル
伝送すると、1つ1つのキャリアにのっかる情報のシンボルの区間、長さと
いうのは非常に長くなるわけです。長くなりますから、マルチパス等で遅延
波が来ても、そのシンボルの区間の長さよりもずっと短いということで、そ
の影響を受けにくいというのが、OFDMの特長なわけであります。あとは
細かくなりますので、この辺の表はながめていただくということにしまし
て、それから9ページ目に伝送路符号化の基本構成がありまして、ここにい
ろいろブロック図が書いてあります。切ったり張ったりいろいろなことをや
りまてし、かなり複雑でありますが、こういう系統図で伝送路符号化が構成
されるということでございます。
それでは10ページ目。多重化方式は、先程から言っているとおり、MP
EG−2 Systemsに準じておりますので、ほかのメディアと同じで
す。
トランスポートストリームのフレーム構成というのがありますが、いくつ
かの制御信号、伝送制御信号の追加などをしておるということです。それか
ら伝送制御信号の運用ということ、それから限定受信方式、これも他の方式
と同様でございます。
それから情報源符号化の映像符号化、11ページでありますが、映像入力
フォーマット、これは先程説明したとおりでありまして、基本的にBSデジ
タル放送と同じです。
それから符号化方式につきましても、MPEG2のMain Profi
leを使ったものであります。
それから音声符号化につきましては、これも先程言いましたが、MPEG
−2 AAC Audioという効率のいいものです。
それから13ページ目の3.5.3データ符号化でありますが、データ符
号化につきましては、BSデジタル放送を主な対象として検討中のデータ符
号化方式との共通性を十分考慮した方式を定めるということで、まだこれは
今後の課題になっております。
想定される受信機。これは6MHz全体の受信が可能な13セグメント受
信機と、それから真ん中の部分受信ということで、1セグメントのみを受信
する狭帯域受信機というものが考えられるということでございます。
一応こういうことで暫定方式の概要ということなんですが、これは昨年9
月に伝送方式部分だけの暫定方式原案というのがありまして、それとどこが
違うかということなんでありますが、これは本体の方、110−5の資料の
暫定方式案というのがありますが、これの109ページというのが本文の終
わりでありまして、その次に参考資料が出ております。参考資料の1を見て
いただきますと、暫定方式において原案から変更された事項というのが記載
されております。これも細かく言いだすときりがございませんので簡単に見
てみますと、1つは先程モードが3つあると申しましたが、暫定方式原案で
はモードは2つだったんです。キャリア間隔が2kHz間隔のモード2とい
うのを追加したわけです。こういうことで、より柔軟性を持たせました。
それからビットインターリーブ長を暫定方式原案の8倍に伸ばしまして、
より干渉に強くいたしました。
それからセグメント帯域幅も細かい変更がございまして、暫定方式原案で
は432kHzという間隔だったんです。それを今回はもうちょっと減らし
まして、429弱ですか。要するに6MHzという間隔を14セグメントで
ちょうど分ける。そのうちの13セグメントだけを使って、1セグメントは
ガードバンドとして残しておく。
将来は、全部デジタルになると、その残ったガードバンドのところの1セ
グメントも情報伝送に使える可能性があるということで、ちょうどそこのと
ころ、ぴたっと14セグメントで6MHzを分けてやる。そうすると、割っ
てみると14分の6,000ということで428.何とかというふうになる
のであります。
それからコンティニュアルパイロット信号は、原案ではそのまま何もつか
わないで、本当のパイロット信号だったんですが、これはもったいないとい
うことで、制御信号などをこれにのせるようにしようということになりまし
た。
それから時間インターリーブ長も大きくすることでございます。
それからTMCCのフレーム同期の取り方、極性を周波数だとか時間で両
方ともときどき極性反転をやるという複雑なことをやっていたんですが、こ
れを周波数からの反転をやめたということでございます。
それから階層数でありますが、4階層取っておりましたのを、その必要は
ないということで、より簡単にして、3階層にしました。以上が原案から変
更した部分でございます。
大変長くなって恐縮でしたが、以上、ご説明を終わります。
○西澤会長 どうもありがとうございました。それではご意見、ご質問お願い
いたします。
○原島委員 非常に細かなところまで決める作業、大変だと思っておりまし
て、ちょっとお伺いしたいんですが、階層伝送、部分受信がかなり特長にな
っているかと思うんですが、伝送の方では階層的なことをいろいろやりなが
ら、符号化の方では階層符号化は採用しない。Main Profileが
入るだけで採用しないというふうに理解しますが、ちょっと考えると、符号
化でも階層にしておいた方が柔軟性があるんではないかという気がいたしま
すが。
○安田委員 まさにそのとおりで、私もそう思っていたんでございますけれど
も、なかなかそうもできなかったということであります。
○原島委員 それは何かBSデジタル放送との対応とか、あるいは階層符号化
にすると、それぞれの階層ごとであったりして、どうしても品質が悪くなっ
てしまうとか、そういうことでございますか。
○安田委員 余り複雑になりすぎるということかもしれませんね。
実際の作業はARIBで専門家が集まってやっているわけですが、その辺
の作業で、階層符号化を使うというところまでは至らなかったようでござい
ます。
それから私に言わせると、ここでいう階層伝送というのは本来、「階層伝
送」じゃないんです。これは異なるチャンネルが独立してあるだけだという
わけで、「階層」というのは、お互いに関係のある状態で使っているのでな
いと、「階層符号化」、「階層伝送」とも言わないと思うんでございますけ
れども、これは、定義の問題で、そういうのを階層伝送というんだというの
であれば、それはそれでいいでしょうということです。
それから先程説明を落としたんでございますけれども、日米欧の比較が暫
定方式案の概要の最後に出ております。せっかくですから、説明させていた
だいてよろしゅうございましょうか。
日本の暫定方式とそれから欧州のDVB−T。大きく言いますと、米国方
式と欧州方式は非常に違う。日本方式と欧州方式はかなり近い。米国方式は
シングルキャリアの方式でありまして、従来のアナログ方式の延長である8
値のVSBで、それに対して欧州はOFDM。むしろ日本が欧州のものを参
考にしたわけですが、ただ、後からやりましたために、よりきめ細かい芸当
をやるということで、セグメント化ということは、日本の方式の独自なとこ
ろであります。そういうことで、先程から問題になっている階層伝送という
ことがやれる。つまり、違った品質のものを同時に送ることができます。
それから周波数インターリーブは欧州方式もやっておるんですが、日本の
方式はさらに時間インターリーブを追加して、マルチパス等に、より強くな
った。欧州方式も移動受信は不可能ではないんですが、日本方式の方がより
移動受信ということに強くなっております。
それから先程説明いたしましたような部分受信ということが可能になっ
て、一部だけを取り出す様な簡単な受信機が可能になった。そのようなとこ
ろが特長でございます。
○坂田委員 暫定方式の「暫定」の意味は。
○安田委員 これは、私が答えた方がいいのか、郵政省の方からお願いできま
すか。
○重田放送技術政策課長 放送技術政策課長の重田です。基本的には本日暫定
方式をご了解いただいた後、500ワット程度の実際に使うようなパワーを
東京タワーから出しまして、実証試験をやろうと思っております。実証試験
の結果を得た上で、できたら来年の春、答申をいただくと考えておりまし
て、そういう意味でございます。
○西澤会長 日本のが一番いいというのを聞いて、私も大変安心したんです
が、その移行過程というもの、やがて日本方式に集まってくることを期待す
るわけですが、アダプターみたいなもので機器の転用は可能なものでしょ
うか。
一番端的な例でいえば、日本の機械を向こうへ持っていったときとか、向こ
うの機械を日本に持ってきたときとか。例えば受信機にアダプターをつける
だけで間に合うということもあるし、アウトプットの方もまたアダプターで
合わせるということが現実には必要なわけです。そのことに関するお考えは
いかがでしょうか。
○安田委員 伝送部分というのは、国ごとに違いますので、そこの部分につい
てはやはりその国独自のものをアダプターとしてつけないといけないと思い
ます。
それから伝送フォーマットにつきましても、必ずしも同じではないところ
がありまして、ヨーロッパでは元々7MHzないし8MHzという広いバン
ドをアナログ時代から使っております。そういうことで、ヨーロッパ方式が
そのまま使えるかどうか、私もハイヤーレイヤーの部分まで整合性があるか
についてはどうでしたかな。
○重田放送技術政策課長 事務局から説明させていただきます。ハイヤーレイ
ヤーにつきましては、基本的には整合性をとる方向でご審議をいただいてお
ります。
伝送方式につきましては、先生おっしゃるように、例えば日本方式をい
ま、アナログでPALをやっているようなところ、7MHz、8MHzのと
ころに持っていきますと、7MHz、8MHzとして改良して導入を図って
いくということになると思います。
○西澤会長 場合によれば、伝送方式まで変えてしまう可能性はあり得るわけ
ですね。なかなか難しいことではありますが。
○重田放送技術政策課長 基本的には、先程安田先生にご説明いただきました
ように、アメリカがシングルキャリア方式を取っておりまして、ヨーロッパ
と日本がマルチキャリアを取っておるということでございまして、ヨーロッ
パと比べますと、日本方式が改良版といった方がいいと思います。我々とし
ては日本方式の普及をできるだけ図って行きたいとは思っております。
ついでに国際普及という観点で説明しますと、シンガポールが年内にデジ
タル放送の方式を決めたいということでいま、検討しているわけでございま
す。そこにアメリカ方式とヨーロッパ方式と日本方式が競争しています。日
本方式は本日暫定方式を決めていただきましたけれども、ヨーロッパ方式は
3年前に放送規定を決めておりまして、アメリカは2年前に放送方式を決め
ております。
シンガホールでは欧米とも今年の6月ごろ実験をやっております。わが国
も8月の終わりから9月の初めにかけまして、実験をしております。
シンガポールのデジタル放送は、移動体を中心にサービスをしたいと考え
ておりまして、シングルキャリア方式でしたら、マルチパスに非常に弱いで
すから、余りいい結果は出なかったようでございます。まだ内々の話でござ
いますけれども。
あとはヨーロッパと日本方式はどうかということでございますけれども、
先程先生からご説明があったように、日本方式というのは時間インターリー
ブも入れておりますので、ヨーロッパでかなり受信品質が落ちたところで
も、日本方式というのは非常にいい品質であったということで、受信品質が
かなり悪くなる場所がかなり限られております。そういうことで、まだ公表
はされておりませんけれども、技術の観点だけから見ますと、日本方式が一
番よかったということが内々にはわかっております。
しかし、放送方式の普及につきましては技術以外の要素として、経済協力
とかいろいろな要素がありますので、日本としても今後非常に頑張っていか
なければいかんだろうと思っております。以上でございます。
○西澤会長 こういう決定が日本の貿易にすごく大きな影響が出てくると考え
ていいですね。
○重田放送技術政策課長 そうですね。かなりインパクトがあると思います。
○西澤会長 どうもありがとうございました。ほかにございませんでしょうか。
それではご質問がないようでございますから、今回、安田先生をはじめ関
係の皆様に大変短い期間で地上デジタルテレビジョン放送の暫定方式を取り
まとめいただきまして、大変ありがとうございました。また引き続き、委員
会でのご検討をお願いいたします。
(3)報告
「情報通信政策大綱について」
○西澤会長 それでは3番目に入らせていただきますが、「情報通信政策大綱
について」でございます。これは郵政省からのご説明でございます。よろし
くお願いいたします。
○小笠原政策課長 政策課長の小笠原でございます。資料110−6と右上に
打ちました資料に基づきまして、ご説明させていただきます。この情報通信
政策大綱と申しますのは、今年の8月に概算要求を前にいたしまして作成し
たものでございまして、おおよそ2000年ぐらいを見通しまして、短・長
期的な私どもの政策取組み方針をまとめたものでございます。
冒頭、郵政大臣からお話がありました予算その他につきましても、この政
策大綱を踏まえまして要求したものでございます。今年度の大綱の特徴でご
ざいますが、表紙の副題に「デジタル革命による日本経済の再生」と書いて
ございますが、現内閣と申しますか、日本の最大の課題でございます経済再
生ということに、情報通信政策の分野からどういう観点から役に立てるかと
いうことを基本に作成したものでございます。
表紙をめくっていだたきますと、前書き的な文章が書いてございます。真
ん中に1)、2)、3)と書いてございますように、基本的には3つの柱、特に経
済再生に寄与するという観点から、新規産業・雇用の創出、それから21世
紀の発展基盤の整 備、少子・高齢化への対応という3本の柱に、以下申し
述べます政策を立てているということでございます。
それから3の2行目でございますが、今回の大綱の特徴といたしまして、
大臣からも特に強い指示をいただいているところでございますが、他省庁と
の連携、協力を積極的に推進していきたいということでございます。
先程大臣の方からございましたように、8月末に1,034億円の概算要
求を出させていただいておりますが、そのうち人件費を除く政策経費が約8
00億円弱ございます。そのうちのおおよそ4分の1、約200億円ぐらい
が他省庁と協力あるいは連携して進める施策となってございまして、こうし
た考え方は今後の2次補正でも配慮していきたいと考えているところでござ
います。
それからここに書いてございませんが、もう一つの特徴は、これも大臣か
ら特にご指示をいただいたところでございますが、いろいろな施策につきま
して、国民の皆さんにわかりやすくいつまでに何ができるのかということを
示す。できる限りそういう配慮をしているところでございます。
2ページ以下が個別の政策でございますが、時間に限りもありますので、
極めて簡略にご説明させていただきたいと思います。
まず新規産業・雇用の創出というところでございますけれども、2つ、
「インターネット市場の拡大」、それから「21世紀のマルチメディアの創
造」と書いてございますが、この2つの分野で、日本経済の雇用を創出して
いきたいと考えてございます。
まず左側のインターネットでございますけれども、パソコン市場、かなり
伸び悩んでいる中でも、インターネットだけは右肩上がりで伸びていくとい
う状況でございますが、この分野でさまざまなベンチャービジネスを初めと
した新しい産業を創出していきたいということです。(2)の政策効果にご
ざいますが、2000年度において新しい市場規模1.4兆円、雇用効果7
万人を創出することを期待いたしまして、下に書いてございますような次世
代のインターネット、例えば2001年度までに現状の1,000倍以上の
速度で信頼性の高いインターネットを実現する等の施策を進めたいと考えて
いるところでございます。
それから右側の21世紀のマルチメディアの創造でございますが、特に無
線を活用したビジネス。先程ご審議にもございましたけれども、地上放送の
デジタル化あるいはITS、そのほか次世代の携帯電話といったような相当
大きな端末機市場あるいはサービス市場が期待されている分野でございます。
(2)に書いてございますように、2000年度に市場規模1.6兆円、雇
用効果6万人というものを期待しているところでございます。
個別なさまざまな施策は省略いたしますが、いずれにいたしましても、2
000年から21世紀初頭のできるだけ早い時期に新しいサービスを世に出
していくべく努力をしたい、この審議会の先生方にもよろしくご指導をお願
いしたいと考えているところでございます。
それから次でございますけれども、21世紀の発展基盤の整備ということ
でございますが、これは国も地方もいろいろな公的分野で我が国全体の情報
化を先導していきたいというふうに考えているところでございまして、左側
に電子政府の実現と人材育成と書いてございます。(1)政策目標の1)に2
1世紀初頭に電子政府を実現、2)21世紀の我が国を担う若年齢層の情報活
用能力の向上と書いてございますけれども、この主要な施策の1)に書いてご
ざいますが、例えば申請手続の電子化システムの開発、これは運輸省と共同
で進めておりますし、環境行政や災害対応の電子化に関する研究は環境庁あ
るいは消防庁、この他政府内6省庁と行政の情報化に役立つシステムを開発
しているところでございます。
それから1つ飛びまして3)に公共施設におけるインターネットの利用促進
という項目がございますが、特にこの中では教育用インターネット、特に小
中学校におけるインターネットの導入ということにつきまして、引き続き、
特に10月末に提出予定の2次補正予算も含めまして、それも視野に入れま
して検討を進めているところでございます。
それから右側の地域経済の活性化というところでございますが、地域の活
性化を進めていきたいということで、(2)の政策効果にございますよう
に、2000年度までに先導的なシステムを300自治体。全国、約3,3
00の自治体の1割に導入する。それから同じく2000年度までに9割以
上の市町村で携帯・自動車電話を利用可能とする。3)に書いてございますよ
うに、2000年度までにケーブルテレビの普及率を20%とする。こうい
うことを目指しまして、下に書いておりますような施策を着実に推進してい
きたいと考えているところでございます。
それから最後、その次のページ、少子・高齢化への対応というところでご
ざいますが、だれもが安心して利用できる情報環境の整備と書いてございま
す。(1)の政策目標というところに書いてございますように、高齢者の方
あるいは障害を持たれている方々が情報通信を使いまして社会参画、お仕事
についたりさまざまな情報にアクセスしたりということを支援していきたい
ということで、例えば介護サービスの拡充につきましては、厚生省と共同で
プロジェクトを進めているところであります。
それから少子化への対応ということで、女性が働きながら子育てができる
環境の整備ということで、具体的にはテレワークということでございますけ
れども、そうした施策を労働省とも共同してやっていきたいと考えてござい
ます。
それから不正利用対策等、デジタル社会の影の部分の対応につきまして
は、大臣も先程のあいさつでも申しておりましたけれども、こういったネガ
ティブな面についても十分対応していきたい。(2)の政策効果にございま
すように、来年度中に郵政局をバリアフリー化する。それから2001年度
までにテレワーク人口を現在の3倍程度まで増加させることを目標として施
策を展開していきたいというふうに考えているところでございます。
大体以上でございます。
○西澤会長 どうもありがとうございました。ただいまのご説明にご質問をお
願いします。
(暫時)
○西澤会長 この間も申し上げたんですが、こういう情報が自由に取れる世の
中になったときに、例えば子どもたちに対する非常に大きなマイナスも出て
き得るわけです。そういうことは、早くから調査をやっておかなければいけ
ないんじゃないかということがあると思うんですが、そこのところはいかが
でしょうか。
大臣は文部大臣と相談して何かやるとは言っておられましたけれども。
○小笠原政策課長 先程もちょっと触れさせていただきましたが、私どもの大
臣の方から文部大臣の方へ学校インターネットの導入を積極的に進めるとい
うことにつきまして、ぜひ協力して進めていきたいということを文部大臣に
お願いしておりまして、文部大臣からもぜひ一緒にやりましょうというよう
なことをお話しいただいているというふうに聞いております。
いま、会長の方からお話しがありました、じゃあインターネットを使って
学校教育をやるということになったときに、アダルトやバイオレンスの情報
をどうやって排除するかということでございます。
そういったことにつきましては、以前からフィルタリングといった研究を
進めておりまして、そういった成果も今後の学校インターネットの導入につ
きましては、ぜひ活用していただきたい。まだそのプロジェクトは完了して
いるわけではございませんけれども、さらに現場での使用も含めて充実した
ものにしていきたいというふうに考えているところでございます。
○西澤会長 ただ、こういうのは頭で考えてどれを規制したらいいかというこ
とはなかなか決めにくいところがあると思うんです。むしろそれをやると、
逆にいうと非常にマイナスの面も出てくるので、やはり本来的にいえば、小
規模の実験、実験といったら、人間相手でよろしくない発言だと思うんです
が、いずれにしましても、そういう場合による偶然の事故みたいなものを追
跡調査することによって、これはやめた方がいいということをかためていく
ということが必要だろうと思うんです。
そういう追跡調査をやる研究機関というのは、例えば文部省でしたら、国
立教育研究所があるんでございますけれども、そういうようなものをうまく
活用なさるということはお考えにないのでしょうか。
○小笠原政策課長 具体的なプロジェクトにつきましては、私もどういうふう
な形で進んでいるかというのは承知しておりませんが、会長ご指摘の面も含
めまして、ぜひ子どもたちの教育にとってよりいいものにするよう努力して
いきたいと思います。
○原島委員 最近、いろいろなところで出ております21世紀への課題あるい
は政策という中によく出てくるキーワードとして、地球環境問題にどう対応
するかということがありますが、今回、余りそういう面が入っていないの
は、どちらかというと、1事業年中に我が国経済を回復軌道という、そこに
かなり重点が置かれているというふうに考えていいんですか。もう少し長期
的には、地球環境問題がいろいろ入ってくるんではないかというふうに思う
のですが、いかがでしょうか。
○小笠原政策課長 環境問題に情報通信がどういうふうに役立つかというのは
大変難しい問題でございますが、私どもでは例えばテレワークを推進するな
どということが、大きく言えば、二酸化炭素の排出量を軽減することにもつ
ながるんではないかというふうに考えております。
ただ、もう少し具体的に申しますと、例えば今申し上げました資料の4
ページでございますが、主要な施策の1)、電子政府の基盤化のシステム共同
開発というところで、3行目に環境行政云々とございます。実はこれは環境
庁と共同いたしまして、衛星による大気や水面、湖や川や海面の汚染状況を
衛星を使って広域的にあるいはリアルタイムにモニタリングするというよう
な研究を来年度から開始すべく概算要求に盛り込んでおります。
こういったところも環境分野との関係では重要な部分かと思っております。
○西澤会長 割にすぐきくのは、例えば在庫があったときに、ある会社が関西
に在庫を持っている。ほかの会社が関東に在庫を持っているときに、それを
バーターするというようなことをやれば非常に効果があるわけです。ですか
らそういうのをどこかでいろいろと想定して研究するようにしていかなけれ
ばならないんじゃないでしょうか。
○原島委員 今までの経済がかなり物を中心にできていたので、こういう情報
を中心にすることによって、どのような貢献ができるかというのは、これか
らかなり重要な問題になるんではないかと個人的には思っております。
○北城委員 新産業支援のお話、非常にいいと思うんでございますけれども、
ベンチャー企業の支援というのも非常にいいと思いますが。資料編の6ペー
ジの後ろのところにベンチャー企業の研究人材確保、資金確保に対する総合
的支援と書いてあります。実はここのところが非常に大事ではないかという
ふうに思うのです。
一部の研究等を行っても、ベンチャーを行おうという人がたくさん出てこ
ないと、なかなか実際の変化が出てこないと思うんですが、税制等について
は、具体的にもっとベンチャー企業経営者が出てきやすい環境をつくられる
ようなことをこれから具体的に検討されるんでしょうか。
○小笠原政策課長 ここに書いてございますのは、今年、法律を新規立法いた
しまして、ここに書いてございます投資事業組合というものをつくって、そ
こが、これは実をいいますと、国の出資とそれから民間の出資も仰いで、そ
こに民間のベンチャーキャピタルのお知恵もお借りしてというようなスキー
ムをつくったばかりでございまして、これは5月に設立されたばかりでござ
います。
したがいまして、当面としては、新しく発足した投資事業組合というもの
を活用して、ベンチャー企業の方の起業のお手伝いをこれからしていきたい
というふうに考えているところでございます。
○倉内委員 この資料についての質問なんでございますけれども、資料編に出
ておる予算金額というのは、来年度の概算要求か何かの金額ですか。
○小笠原政策課長 個別に出ているもの。例えば予算何点何億円と書いてある
ものでございますが、これは8月下旬に提出しました来年度の概算要求の個
別の金額でございます。ただ、これも先程の大臣のあいさつにもあったかも
しれませんが、今年の予算編成は非常に変則的でございまして、このほか
に、実をいいますと、先程8月末に提出しました概算要求は1,034億円
と申しましたが、10月末に、これは今年度の2次補正ということで、さら
に1,031億円を要求することになっております。
したがいまして、郵政省の施策の具体的な姿としては、これプラス、もう
一つそれと同じぐらい大きな要求が別にありますということになります。
○西澤会長 よろしゅうございますか。
ベンチャーなんかがアメリカではどんどんやれるのに、どうして日本がな
かなかやりにくいかということも、余り知られていないんですね。我々見て
回って、聞いて回ってもつかみ切れないと感じますけれども、北城先生など
に、そういうものを紹介していただけると非常にありがたいんじゃないかと
思いますが。
○北城委員 やはり、いろいろ施策が必要だと思うんです。アメリカはベンチ
ャーキャピタリストもいますし、ベンチャーキャピタリストがいるというこ
とは、ベンチャーキャピタルを出せる人もいますし、ベンチャーキャピタル
が投資に失敗したときの税制上の優遇もあるし、それから企業経営者とが、
そこで働く人たちのストックオプションも、一部、日本は制度ができていま
すけれども、アメリカに比べて優遇度が不十分なところもありますので、日
本がなかなかベンチャービジネスが出ていないという現状を踏まえると、ア
メリカを上回るぐらいの優遇策を用意した方がいいんじゃないかというふう
に思っているので、そういう意味では、まだまだ税制を含めて、ベンチャー
ビジネスが出にくい環境にあるんじゃないかと思っておりますので、制度と
して取り上げていただいたのは非常にいいことなので、さらにそういう制度
が拡充されるように働きかけていただければという気持ちでおります。
○西澤会長 どうもありがとうございました。ほかにございませんでしょうか。
それでは次の項に入らせていただきたいと思います。
(4)報告
「平成11年度郵政省科学技術関係経費の概算要求等の状況について」
○西澤会長 次の項は、「平成11年度郵政省科学技術関係経費の概算要求等
の状況について」でございます。省側からご説明お願いします。
○寺崎技術政策課長 技術政策課長の寺崎でございます。資料110−7に基
づきまして、ご説明させていただきたいと思います。
今の情報通信政策大綱の話と重なるところがございますけれども、いわゆ
る科学技術関係経費ということで、その金額をお話しする前に、郵政省の一
般会計の状況を見ていただく上で、19ページを開いていただきたいと思い
ます。
そこに情報通信行政関係経費一般会計とございますが、いま、政策課長の話
がありましたとおり、10年度の予算額881.4億円に対しまして、11
年度要求額が898.5億円。これに先程、大臣からお話しがありました情
報通信科学技術環境等21世紀発展基盤整備特別枠、政府全体で1,500
億円ありますけれども、その中で郵政省から135.4億円要求させていた
だいております。この898.5億円プラス135.4億円で、一般会計の
一番下の行に参考で書いてある1,033.9億円の要求ということで、情
報通信行政関係では初めて正予算で1,000億円を超えた金額を要望させ
ていただいている状況になっております。
それから景気対策臨時緊急特別枠要望、俗にいう第2次補正といわれてい
る金額が、いまの参考の2行上で、1,031.1と書いてありまして、括
弧で「具体的内容は、10月末までに提出」となっておりますけれども、別
途、あと1,031.1億円を要求できるという状況になっているというこ
とでございます。
郵政省全体の金額がそういったような中で、科学技術関係の経費は、1
ページ目の平成11年度郵政省科学技術関係経費の概算要求の状況で、一般
会計が498億9,500万円ということでございます。昨年度は括弧内の
345億4,700万円ですから、44.4%増ということで、研究開発経
費としましては相当伸びを示しているところでございます。
要求額、それから特別枠(要望額)とありますが、特別枠というのは、先
程の135.4億円の中で科学技術関係経費が126億200万円という意
味でございます。
それから一般会計498億9,500万円の内訳でございますけれども、
通信総合研究所予算が232億7,100万円ということでございまして、
研究所予算につきましても11%増ということでございます。
その他、あと通信・放送機構関係の経費、それから本省経費と2と3に記
載のとおりでございまして、以上、この3つを合わせまして498億9,5
00万円。それから別途、産業投資特別会計ということで260億円。これ
は前年同額になっております。
この産業投資特別会計と一般会計を合わせますと、郵政省の科学技術関係
経費が、一番下の欄になりますけれども、合計で758億9,500万円と
いうことで、昨年度が605億4,700万円ですので、約25.4%増と
いうことになります。
一般会計が44%伸びているにもかかわらず、ここが25%増になるとい
うのは、産業投資特別会計が昨年度同額ということになっている関係上、
パーセンテージが落ちているということです。
時間の関係で、あとの個別の案件の説明は省略しますけれども、10年度
までなくて、11年度から新しく要求させていただくものだけ、項目だけで
も紹介させていただきたいと思います。
主要なものでございますけれども、2ページ目を開いていただきまして、
補正予算でつけていただきましたギガビットネットワークのさらに研究開発
経費として7億円、それから3ページで、ギガビット衛星ネットワークの開
発を新しく出しております。それからITSの関係でございますけれども、
20億円、これも新規で出させていただいております。
それから4ページ目、マルチメディア・プラットホーム、こういったもの
の開発も新しく出させていただいております。4ページの下でございますけ
れども、GIS構築のための情報通信技術の開発、これも10億円出させて
いただいております。それから5ページでございますけれども、不正アクセ
ス発信源追跡技術の開発、それから次世代の住宅情報化、こういったような
予算も出させていただいております。
6ページ目へ移りまして、先端的光波利用基盤技術の開発といったものに
も4.5億円出させていただいております。
10ページになりますが、公募研究の関係でございますけれども、研究開
発環境の整備促進ということで、(1)の2)ギガビットネットワーク利活用
研究開発制度の創設ということで、公募研究に追加させていただいておりま
す。
それから12ページですが、研究開発成果の実証実験プロジェクトという
ことで、1)都市コミュニティ研究成果展開事業、一般会計28億円、新規で
出させていただいております。それから2)で公共電気通信システムの共同開
発、こういったものも新規ではありませんけれども、大きく予算額を伸ばさ
せていただいております。
それから14ページですが、国際的連携の強化。ここで1)でございますけ
れども、デジタル放送方式の国際共同研究ということで、これは新規ではあ
りませんけれども、昨年の額から大幅に伸びた額を計上させていただいてお
ります。それから次でございますけれども、アジア広域圏衛星通信システム
の調査・開発といった問題を新規として取り上げさせていただいております。
個別の案件につきましての説明は省略させていただきますけれども、他の
省庁との連携の具合について御説明いたしますと、26ページ、先程の情報
通信科学技術環境等21世紀発展基盤整備特別枠1,500億円のうちの1
35.4億円を、郵政省が要求しておりますけれども、ほかの省庁と連携し
ている項目をまとめておりますので、ご参考までにごらんいただければと思
います。以上でございます。
○西澤会長 どうもありがとうございました。ただいまのご説明に関しまし
て、ご質問、ご意見をお願いいたします。
ございませんでしょうか。甕審議官をはじめ、多くの方々に大変たくさん
予算を取ってきていただいて、これから大いに期待ができると思います。ど
うもありがとうございました。
○寺崎技術政策課長 また、いま、大蔵省と折衝中でございますので、年末に
向けまして、またいろいろとご指導、ご支援賜りますようお願い申し上げた
いと思います。
(5)報告
「郵政研究所における研究活動について」
○西澤会長 それでは、次に入らせていただきます。
「郵政研究所における研究活動について」、省側からご説明お願いいたします。
○飯田郵政研究所技術開発研究センター長 郵政研究所の飯田でございます。
それでは、資料110−8に基づきまして、ご説明させていただきます。
郵政研究所は、目的といたしましては、ここに書いてございますように、
郵政行政に関する基礎的な調査研究ということでございまして、郵政省にも
う一つ通信総合研究所がございますけれども、そこでやっておる通信の技術
の研究以外のことをやっているというふうにいえばわかりやすいかと思いま
す。
これは昭和63年にできまして、現在は所長は経済学の専門家であります
岡野先生にお願いいたしております。
次に、どういう分野の研究をやっているかということでございますけれど
も、大きく分けまして、郵便事業に関係いたします郵便・物流系の研究、そ
れから貯金、保険に関係いたします金融・経済系の研究、それから情報通信
系の研究、それから技術開発系の研究、これは主に郵便の関係でございます。
ほかに逓信博物館というのがございまして、そこでは郵政文化系の研究を
やっておくということで、この審議会は電気通信技術審議会でございます
が、私どもの研究所は電気通信もやっておりますし、技術もやっております
けれども、電気通信技術そのものは、直接には目的としていないということ
でございます。
それでは具体的な研究のいくつかをごく簡単にご紹介させていただきます
最初に、情報通信研究系の研究でございますけれども、1つは情報通信経済
に関する基礎的な研究でございます。それからもう一つ、情報通信の利用動
向に関する研究というのをやっておりまして、これは利用者の意識調査等を
踏まえたものであります。ほかに海外の情報政策等の研究もいたしておりま
す。
具体的な研究テーマをこの関係で2つだけご紹介申し上げます。1つは電
気通信トラヒックの特性でございますけれども、これにつきましては、加入
電話や携帯電話のトラヒックの特徴について研究いたしておりまして、これ
は接続料金でございますとか、ユニバーサルサービスのコストの算定といっ
たものの基礎的な費用として役に立っておるものでございます。
それからもう一つは、放送が青少年に与える影響。先程も会長の方からこ
れに関係したようなご発言がございましたけれども、青少年へのアンケート
の実施などをやりまして、暴力シーンの問題などを研究いたしております。
以上、ご紹介しましたのは情報通信系の研究でございますが、次は技術開
発系の研究。郵便の機械化等の研究でございますけれども、郵便処理の機械
化・情報化に関する研究を1つやっております。それからこれと重なる面が
ありますけれども、郵便システムの高度化に関する研究をやっております。
さらに新サービスの開発に向けましたハイブリッドメールであるとか、そう
いう電気通信と郵便との融合したような新しいサービスを研究いたしており
ます。
その中から2つだけご紹介させていだたきたいと思います。1つは大型郵
便物の機械化でございますが、ご存じのとおり、今年から書状、レターサイ
ズのものにつきましては、7けたの新番号制ということで、配達員がやりま
す道順組み立てという作業まで区分機の中でやるようになりましたけれど
も、大型の郵便物につきましては、まだそういうことがやられていないとい
うことで、大型郵便物の機械化というのが1つの課題になっております。
これは現在、フラット区分機というものをつくっていろいろやっておりま
すけれども、これは映像がございますので、映像をごらんいただきたいと思
います。一、二分のものでございます。
(以下は、説明用ビデオ上映中の説明)
こういう大きな封筒に入ったものですね。最大400掛ける300掛ける
50という大きさのものでございます。こういうふうにいろいろな形のもの
がございまして、それゆえに機械化というのがなかなか難しい部分がござい
ます。機械化を困難にするような条件というのがいろいろございまして、現
在はまだ完全な機械になっておりませんけれども、これは機械に供給する部
分でございます。1通1通供給いたしております。大きさの異なるものを1
つの機械で扱うというところに難しさがございます。
これは2通一緒に送られてきたところを抜き取ったところでございます。
これはバーコードを読み込むところの装置でございます。バーコードは紫
外線で発光するような目に見えないようなもの、これは現在ある書状のもの
と同じでございますけれども、これを使っております。
これは区分の棚に送り込む搬送の部分でございます。区分すべきところに
来たらトレーが傾きまして、下に落としております。
郵便物を集積します箱を扱うのも自動的にやっておりまして、将来的には
区分機の関係で全く人手を要しないようにということで、全自動化を図るこ
とを目的に研究開発を進めております。
(ビデオ上映終了)
以上、ご紹介しましたのが大型郵便物の機械化でございますけれども、も
う一つ、データキャリアの郵便事業への応用に関する研究をやっておりまし
て、これは現在、記録郵便物、代表的なのは書留でございますけれども、こ
れはバーコードを使いまして、バーコードを読み取らせるというのを人手で
やっておりますが、人手がかかる、あるいはそういう作業に漏れが生じると
いうことがございまして、無線のキャリア、無線のタグを使いまして、これ
を処理するということを考えております。
上の方が現在のシステムでございます。下の方が新しく考えておるシステ
ムでございまして、入力、自動査数と書いてございますけれども、そこの部
分を無線タグを使いまして、たくさんの郵便物を束ねたまま、どういう郵便
物がそこを通っていったかということを自動的にチェックするということ
で、これは無線技術の応用でございますが、これは自動車が料金所などを通
るときに、同じような技術を使うことが現在、実験等進んでおるように聞い
ておりますけれども、そういったものに比べますと、書留の場合は非常に密
度が高いということで、電波の波長に比べますと、はるかにタグの間隔が小
さい。
以上、私どもの研究所でやっておりますことを簡単にご紹介させていただ
きました。
○西澤会長 どうもありがとうございました。
それでは、ただいまのご説明に関しまして、ご意見やご質問はございませ
んでしょうか。
(暫時)
○西澤会長 それでは、以上で予定した議題は終わりでございます。
(6)その他
○西澤会長 議事の6番の「その他」でございますが、事務局の方から何かご
発言ございますでしょうか。
○小野寺審議会室長 特にございません。
○西澤会長 それでは、先生方から何かご発言ございますか。
3 閉会
○西澤会長 ございませんでしょうか。それでは、以上で議事を全部終了させ
ていただきます。
本日は、ご熱心なご審議をいただきまして、どうもありがとうございまし
た。以上で、本日の会議を終了させていただきます。
第6 議決事項
(1)一 部 答 申 「国際無線障害特別委員会(CISPR)の諸規格につ
いて」のうち「情報技術装置におけるイミュニティ特性
の限度値と測定方法」(諮問第3号)