高速デジタルアクセス技術に関する研究会/中間報告書(案) 目 次

第2章 MDF等での接続によるDSLサービスの試験的な実施までに規定すべき条件

 NTT地域会社の加入者回線に複数の接続事業者が接続して、各々の事業者がアナログ電話信号とDSL信号とを同一芯線へ重畳する場合、また複数方式のDSLが同時に提供される場合の影響については、世界的にもデータがない状況である。したがって、接続の技術的な条件の規定にあたっては慎重な検討が必要である。

 本章ではMDF等での接続によるDSLサービスの試験的な実施に必要となる最小限の技術的条件を記述する。

第1節 基本的考え方

  1. 接続の技術的条件の検討にあたっては、DSLサービスの実施にあたり想定される全ての技術的課題について検証する必要があることから、NTT地域会社は可能な限り接続事業者からの要望に応じ、多様な接続形態でDSLサービスを実施できるようにすることが望ましい。

    (1) 試験的なDSLサービスの実施にあたっての基本的方針について
     1 接続箇所及び提供するDSLの方式等について
     NTT地域会社は原則として、接続事業者のMDF等での接続によるDSLサービスの試験的な実施にあたっては、既存サービスへの影響を考慮しながら、接続事業者から要望のある全ての接続箇所及びDSLの方式等について、特別な理由がある場合(注)を除き、これらを実施しなければならない。

    「特別な理由がある場合」とは、電気通信事業法(昭和59年法律第86号)の第38条に規定されている場合を指すものとする。

     2 試験的なDSLサービスの実施エリアについて
     接続事業者のMDF等での試験的な接続によるDSLサービスの実施エリアについては、開始当初は、NTT地域会社が計画している実施エリアを基本とするが、DSLサービスの円滑な全国展開に向けて、可能な限りエリアを順次拡大されることが望ましい。
     しかしながら、試験的なDSLサービスであることから、実施エリアを必要以上に拡大する必要はないものと考えられる。ただし、NTT地域会社は接続事業者から要望があったエリアについては、接続事業者がそのエリアでDSLサービスの提供ができるように努めなければならない。なお、実施エリアの拡大に際しては、その旨を郵政省へ報告することが望まれる。

     3 試験的なDSLサービスの実施の位置付け
     MDF等での試験的な接続によるDSLサービスは、接続事業者がDSLサービスを本格的に実施可能かを検討するために行われるものである。したがって、この試験的なDSLサービスの間に特段の技術的問題等が生じなければ、接続事業者は本格的なDSLサービスに移行できる。

     4 試験的なDSLサービスの実施にあたっての留意点
     試験的なDSLサービスを通じて得られたデータによっては、接続事業者が本格的なDSLサービスを行うことが不可能になることがある。この場合、接続事業者に経済的損害や、事業計画の見直しといった問題が生じることが想定される。その際に接続事業者とNTT地域会社の間でトラブルが生じないように、接続事業者が試験的なDSLサービスの実施前に事業者間で十分な協議を行う必要がある。

    (2) ADSL以外の方式によるMDF等での接続によるサービスの実施について
     1  接続事業者が試験的なDSLサービスの間にADSL以外の方式によるMDF等での接続によるサービスの実施を要望する場合は、NTT地域会社は接続事業者と速やかに協議を行い、特別な理由がある場合を除き、その要望に応じなければならない。

     2  NTT地域会社が平成11年12月より実施予定の試験的なDSLサービスの期間終了直前または終了後、接続事業者がMDF等での接続によるサービスの実施を要望する場合についても、NTT地域会社は速やかに協議を行い、特別な理由がある場合を除き、試験サービスを実施しそのサービスの提供可能性を検討しなければならない。

    (3) DSLサービスの事業展開に必要な情報の開示について
     1  接続事業者は、DSLサービスの事業展開に向け、実施可能なエリアや実施可能な芯線数等の情報から、そのサービスの事業性を判断する必要がある。また、DSLサービスの事業展開は、ISDNの提供状況や加入者回線の光ファイバ化計画と密接な関係があると考えられることから、NTT地域会社は接続事業者の要求に応じて、その事業展開に必要となる情報(ISDN回線の敷設状況、光ファイバ化の現状及び今後の計画等)について、可能な限りその事業者に対して提供しなければならない。

     2  特にメタル加入者回線の存続はDSLサービス提供の必要条件であることから、NTT地域会社は、接続事業者がDSLサービスに用いているメタル加入者回線を含む、全てのメタル加入者回線の撤去に関する情報について、その回線の撤去を開始する一定期間前(5年前程度が望ましい)までに情報を開示しなければならない。ただし、一定期間の年数については、近年の情報通信の急激な進展等を考慮し、本研究会の最終報告書の取りまとめまでに再度検討する。

     3  接続事業者は、原則として、加入者回線が光ファイバ化された場合は、DSLサービスの継続が不可能となることを前提として事業展開を図ることになるが、DSLサービス開始前に光ファイバ化後の事業計画についても検討しておく必要がある。また、郵政省は光ファイバ化後におけるNTT地域会社の対応の在り方についても今後早急に検討する必要がある。

    (4)  試験的なDSLサービスの提供にあたっての公平性の確保
        接続事業者がMDF等での試験的な接続によりDSLサービスを実施する場合において、NTT地域会社が接続事業者に対して故意に芯線の収容環境を悪化させる等の公平性に欠く対応があってはならない。こうした観点から接続事業者が公平性の確保の状況を確認する方策について、研究会の最終報告書の取りまとめまでに検討を行う必要がある。

    (5) 接続事業者のNTT地域会社の加入者交換局舎内への立入りについて
        接続事業者が、コロケーションしているDSL装置の点検や、試験サービスの実施状況等を確認するために、NTT地域会社の加入者交換局舎内への立入りを要望する場合は、NTT地域会社は局舎内の他の装置等に対するセキュリティを確保しつつ速やかにこの要望に応じなければならない。

第2節 接続の技術的条件

 本節では、MDF等での接続によるDSLサービスの試験実施に必要となる接続の条件を規定する。
  1. 電話品質の保証のための条件について
    (1)  DSL信号とアナログ電話信号とを同一芯線に重畳する場合には、電話品質を保証するための条件を規定する必要がある。この電話品質の保証のための条件は、スプリッタを設置する者がNTT地域会社であるか、接続事業者であるかに応じ規定する。

    (2)  各項目に関する数値等については、メタル加入者回線を所有しているNTT地域会社が規定する。

    (3)  なお、試験的なDSLサービスの間に電話品質に重大な影響が生じた場合は、NTT地域会社と接続事業者が協議の上、新たな条件を追加することができるものとする。

     1 接続事業者がスプリッタを設置する場合
     (A) 電話信号での利用領域(0.3〜4kHz)でのスプリッタの入出力間(図2−1のA点〜B点間)における周波数特性
    <理由:音声品質の低下を防止するため>

     (B) スプリッタ(図2−1のA点)の雷サージ耐量
    <理由:加入者回線から侵入する雷サージによりスプリッタが故障し、電話サービスが中断することを防ぐため>

     (C) 直流抵抗、挿入損失、不平衡減衰量等の電気的特性
    <理由:電話品質を保証するため>

    図2−1

     2 NTT地域会社がスプリッタを設置する場合
     (A) NTT地域会社の交換機(加入者回路)からみた(図2−2のC点からみた)接続事業者のDSLモデム(局内側)を含むインピーダンス特性(リターンロス)
    <理由:電話におけるスプリッタ入出力間周波数特性を保証するため>

     (B) DSLモデム(局内側)からの雷サージ出力
    <理由:DSLモデム(局内側)の電源系から侵入する雷サージの回り込みにより、スプリッタが故障し電話サービスが中断することを防ぐため>

     (C) 容量、不整合減衰量等の電気的特性
    <理由:電話品質を保証するため>

    図2−2

  2. ISDNのクロック供給について
    (1)  DSLサービスを実施するにあたり、接続事業者がITU標準のG.992.1(G.dmt)及びG.992.2(G.lite)の両AnnexCに準拠した装置を採用する場合、当該接続事業者はNTT地域会社からISDNのデータ送出周期400Hzと同期をとる必要がある。NTT地域会社は、接続事業者からクロック供給の要望があった場合には、速やかに協議を行い、特別な理由がある場合を除き、その供給に応じなければならない。

  3. ユーザ宅内における事業者間の接続の条件について
    (1)  現在、DSLモデム及びスプリッタについては、異なるベンダが製造するDSL装置間の互換性がないことから、当面の間は宅内のDSLモデムと局内DSLモデムは同一のベンダ製かつ同一の仕様の装置を設置することになると考えられる。

    (2)  したがって、接続事業者がユーザ宅内のDSLモデムとスプリッタを設置する場合、宅内スプリッタの局側(図2−3のD点)に、NTT地域会社と接続事業者の接続箇所が存在することになると考えられる。そこで、この接続箇所における接続の条件を規定する必要がある。

    (3)  当初規定する条件は以下の事項を含む必要最小限の条件とする。ただし、試験サービス開始後に、電話サービスの品質に重大な影響が生じた場合は、NTT地域会社と接続事業者が協議の上、新たな条件を追加することができるものとする。

     (A) 電話サービス利用領域でのスプリッタの入出力間における周波数特性

     (B) 直流抵抗、挿入損失、不平衡減衰量等の電気的特性

    図2−3

    (4)  また、接続事業者よりD点以外の箇所で接続したいとの要望があった場合には、NTT地域会社は速やかに協議を行い、特別な理由がある場合を除き、その接続に応じなければならない。その時規定する接続の条件は必要最小限とし、かつその条件を開示しなければならない。

  4. 漏えい対策のための技術的条件について
    (1)  事業用電気通信設備規則(昭和60年郵政省令第30号)の第20条の2(注)の規定に基づき、NTT地域会社はDSLとISDN間及びDSL相互間等における信号の漏えいに関し、郵政大臣の確認を受けて基準を定め、その基準を維持するよう努めなければならない。

     事業用電気通信設備規則(昭和60年郵政省令第30号)の第20条の2
     「電気通信事業者は、郵政大臣が別に告示するところに従い端末設備等と交換設備又は専用設備との間の電気通信回線に伝送される信号の漏えいに関し、郵政大臣の確認を受けて基準を定め、その基準を維持するように努めなければならない。」

    (2)  上述の漏えい対策に関し、試験的なDSLサービスの間は幅広い技術について検証を行うために、DSLの変復調方式、スペクトルマスク等について特段の基準を規定せず、容易に漏えいを与えないこと又は受けないこと、及び無視できない漏えいが発生した場合には直ちに対処すること等の定性的な規定とすることが妥当であると考えられる。接続事業者が行う試験的なDSLサービスから得られる様々なデータを元に研究会で検討を行い、研究会の最終報告書取りまとめまでに漏えい対策の基準を規定するものとする。

    (3)  NTT地域会社及び接続事業者は、漏えい対策及び漏えい発生時の速やかな対応に備えて、試験的なDSLサービスの実施前に相互に必要な情報を交換しなければならない。この試験的なDSLサービス実施中に実際に、他のサービスへの漏えい等が生じた場合は、漏えいに関する対処(第2章第2節7.参照)にしたがって、両者は直ちに漏えいを防止するように対処しなければならない。

    (4)  NTT地域会社は、試験的なDSLサービスの間、一定期間(概ね1ヶ月)ごとに、その期間内に発生した漏えい等の概要及びその対処方法について、郵政大臣に報告しなければならない。ただし、対処後に漏えいの改善が図られた場合は、NTT地域会社及び接続事業者はDSLサービスを速やかに再開することとする。

    (5)  郵政省は、試験的なDSLサービスの間に生じた漏えいの概要及びその対処方法の情報を開示し、接続事業者等が情報を共有化するための方策について検討することが必要である。

  5. 芯線の収容について
    (1)  従来から行われているDSLの実験等の結果から、DSLとISDN間の信号の漏えい対策の1つの方法として、芯線収容時にDSL用芯線とISDN用芯線を同一カッド内に収容せず、一つ飛びカッド又は二つ飛びカッドに収容する方法がある。

    (2)  しかしながら、DSL用芯線の収容方法を指定するなどの収容制限を行うと、DSLサービスを収容可能な芯線が限定され、結果的にDSLサービスの提供が制限されることになる。

    (3)  そこで、試験的なDSLサービスの実施にあたっては、なるべく多くのユーザがDSLサービスを利用できるようにするため、原則として、芯線の収容制限は行わないこととする。ただし、収容制限を行わないことにより、他のサービスへの信号の漏えいが生じた場合は、漏えいに関する対処(第2章第2節7.参照)にしたがって対処する。

    (4)  芯線の収容が適正に行われたものであるかを接続事業者が確認する方策について、研究会の最終報告書の取りまとめまでに検討する必要がある。

  6. ブリッジタップ等の取り外しについて
    (1)  加入者回線には、配線をし易くするために未使用の分岐ケーブルの分岐(ブリッジタップ)が残されていることがあるが、DSL信号がここで反射することでDSLの通信速度の低下を招くなどの悪影響を及ぼすことが明らかとなっている。

    (2)  また、加入者回線には異なる径のケーブルの接続とハンダ付けによる接続ではない、いわゆる手ひねり接続の箇所がある。そのため、その箇所の前後での抵抗値の違いから回線内にノイズを発生することがある。

    (3)  試験的なDSLサービスの実施にあたり、接続事業者からブリッジタップ等の取り外しの要望があった場合は、NTT地域会社は速やかに協議を行い、特別な理由がある場合を除き、その要望に応じなければならない。

  7. 漏えいに関する対処について
    (1)  芯線間で漏えいが生じた場合、新たに提供された通信サービス側において信号漏えい防止等の対処をすることが通例とされている。

    (2)  しかしながら、DSLサービスは線路設備環境や収容環境等によって、その提供が制限されたり伝送速度が低下する場合があることが一般的であるため、DSLサービスと他の回線サービスの間で漏えいが生じた場合には、DSLサービスの側において漏えい防止等の対処を行うこととする。この対処方針については、NTT地域会社が自ら行うDSL試験サービスについても同様の扱いとする。

    (3)  ただし、漏えいによってDSLサービスが提供できないか又は通信品質が低下する等の場合には、NTT地域会社は接続事業者からの要望に基づき、漏えいが最小限になるようなDSL用芯線の収容先変更を含め、可能な限りの措置を構じなければならない。

    (4)  また、上述の対処がNTT地域会社によって適正に運用されているかを接続事業者が確認する方策について、研究会の最終報告書の取りまとめまでに検討を行う必要がある。

    (5)  なお、DSL相互間で漏えいが生じた場合はITU標準を優先し、DSLが共にITU標準方式であった場合にはAnnexCを優先する。また、同一方式間又は非標準方式間で信号の漏えいが生じた場合には、当事者間で協議し解決を図ることとする。

    (6)  漏えいによってDSLサービスが提供できない場合又はサービス途中に伝送速度が低下した場合に備え、サービス提供前に各事業者はそのサービス内容と事業者の責務について、利用者に十分周知しておく必要がある。


  8. コロケーションについて
    (1)  DSLサービスの提供にあたっては、接続事業者はスプリッタ、DSLAM、ルータ等の設備をNTT地域会社の加入者交換局舎内にコロケーションする必要があるが、設備の設置が可能な空間は限られていることから、後発の接続事業者が要望するコロケーションが実施できない可能性がある。

    (2)  現在、既に指定設備との接続に関するコロケーションのためのルールが存在していることから、DSLサービスの試験的実施に関するコロケーションについても当該ルールに基づき行われるものと考えられる。

    (3)  このコロケーションルールでは、装置の設置工事並びに保守運用についてはNTT地域会社に委託することになっている。しかしながら、接続事業者によるより低廉かつ品質の良いサービスの提供に向けては、工事・保守運用レベルでのコスト削減と円滑な保守の確保が重要であり、そのために装置の設置工事及び保守を自社で行いたいとの要望がある。

    (4)  基本的には、接続事業者からNTT地域会社に対して、電話局舎内で工事、保守及び運用等を自ら実施したいとの要望がある場合には、NTT地域会社は速やかに協議を行い、特別な理由がある場合を除き、その要望に応じることが望ましい。

    (5)  しかしながら、接続事業者が工事、保守及び運用を行うことについては、NTT地域会社の加入者交換局舎内及び他事業者のコロケーション設備のセキュリティ確保の観点から検討が必要であるとともに、既存の指定設備との接続に関するコロケーションルールの見直しが必要となる。

    (6)  したがって、当該問題に関しては研究会の最終報告書を取りまとめるまでに整理することを目途として、検討することが望まれる。

  9. 責任範囲等の明確化について
    (1)  接続事業者がスプリッタ等を設置し、DSL信号とアナログ電話信号とを重畳する場合、接続事業者の設置する設備に起因する電話の故障等について、ユーザからNTT地域会社に連絡が寄せられる可能性がある(図2−4)。

    (2)  また、アクセス系設備の保守を行うにあたっては、NTT地域会社と接続事業者の連携対応が必要となる。このような点に配慮して、DSLサービスの実施にあたっては、アクセス系設備の保守やユーザからの故障申告等に直ちに対応できるように、NTT地域会社と接続事業者間でそれぞれの責任範囲の明確化、故障等の対処方法等について、事前に協議を行わなければならない。

    図2−4

  10. その他
    (1)  その他、本研究会中間報告書で特段の規定をしていない条件については、原則として事業者間の協議に委ねる。しかしながら、研究会の最終報告書を取りまとめる前までに検討すべき技術的課題が生じた場合は、研究会にて速やかに検討を行う。

第3節 端末設備の接続の条件

  1.  現在、異なるベンダが製造するDSL装置間で互換性をとることが困難なことから、ユーザ宅内に設置するDSLモデム等の端末装置は、当面の間、NTT地域会社の加入者交換局舎内に設置するDSLモデムと同一ベンダ製かつ同一仕様の装置になると考えられる。そのため、ユーザ宅に設置される端末装置は、DSLサービスを実施する電気通信事業者が自ら設置する場合と、電気通信事業者が指定するDSLサービス用の端末装置をユーザが直接購入する場合が想定される。

  2.  したがって、端末設備の接続箇所は図2−5のE点又はF点となり、試験的なDSLサービスの実施にあたって、それぞれの接続箇所での端末設備の接続条件を規定する必要がある。

  3.  なお、電気通信事業者が指定する端末装置をユーザが直接購入する場合は、電気通信事業者が特段の理由がない限りDSLサービスの提供を継続しなければならない等の、ユーザ利益を損ねないためのルールについて検討する必要がある。

  4.  DSL端末設備の接続条件の規定にあたっては、技術開発の進歩が著しく、将来端末等の仕様変更がある可能性が高いことを踏まえ、接続条件の設定が将来の仕様を排除するものにならないよう配慮する必要がある。また、電気通信事業者ごとに多様な技術が利用可能となるような環境が望まれることから、共通的な基準(技術基準)として規定するよりもDSLサービスを提供する電気通信事業者ごとの技術的条件として規定することが妥当である。

  5.  第二種電気通信事業者がユーザ宅内のDSLモデム等を設置する際、電気通信事業法上、第二種電気通信事業者は端末設備の接続の条件を規定する必要がない。この場合は、第一種電気通信事業者の設備に影響を与えないようにするため、第一種電気通信事業者と第二種電気通信事業者の接続箇所(第2章第2節3.参照)における接続条件で担保することになる。

図2-5

第4節 適正な接続料又はユーザ向け料金の設定等について

 接続事業者がDSLサービスを提供するにあたり、加入者回線に係る接続料又はユーザ向け料金並びにコロケーション料金等は接続事業者の事業計画や収益に与える影響が大きい。このことから、NTT地域会社がこれらの料金を設定する場合、以下の事項について算定根拠の情報開示又は検証がなされることが必要である。

(1) 加入者回線の費用負担
 電話サービスを利用しているユーザは毎月加入者回線の費用を支払っているが、加入者回線においてDSL信号とアナログ電話信号が同一芯線に重畳される場合、これに加えて接続事業者又はユーザがNTT地域会社にDSLサービスのための回線使用料を支払うことは不要との意見がある。このことから、コストベースでなされるべき加入者回線の費用負担の具体的な扱いについて、今後十分な議論を行う必要がある。

(2) クロック利用料金
 接続事業者がITU標準のG.992.1(G.dmt)及びG.992.2(G.lite)の両AnnexCに準拠した装置を採用する場合、当該事業者はNTT地域会社からのISDNのデータ送出周期400Hzと同期を取る必要がある。接続事業者がクロック供給を要望する場合、接続事業者はNTT地域会社にクロック利用料金を支払うことになるが、この料金について適正な算定根拠の情報開示及び検証がなされることが必要である。

(3) MDF装置の新設又は改修費用
 MDF装置の新設又は改修が必要になった場合は、その目的によりNTT地域会社又は接続事業者が費用を負担することとなる。この費用を接続事業者が負担する場合には、この費用の適正な算定根拠の情報開示及び検証がなされることが必要である。

(4) 回線の収容変更費用
 DSLサービスを新規に提供し、又は既に提供している場合において、ISDNからの信号の漏えいにより、DSLサービスの提供に制限が生じたり、伝送速度が低下する等の問題が生じることが想定される。このような場合、当該DSLサービスで使用芯線を漏えいの影響の少ない位置にある芯線に変更することで、DSLサービスの品質改善を図ることができる場合がある。こうした収容芯線変更の費用について適正な算定根拠の情報開示及び検証がなされることが必要である。

(5) コロケーション費用
 接続事業者のDSL装置をNTT地域会社の加入者交換局舎内にコロケーションする場合、占有する面積に応じたコロケーション費用が接続事業者に課せられることになるが、この費用の算定にあたっては既存のコロケーションルールに基づいて行われなければならない。

 また、接続事業者がNTT局舎に設置する自社のDSLAM等の電気通信設備について、その保守をNTT地域会社の預かり保守とする場合、接続事業者はNTT地域会社に対し委託保守費用、委託運用費用を支払うことになる。これらの費用について適正な算定根拠の情報開示及び検証がなされることが必要である。

(6) DSLサービス提供にかかるその他の諸費用等
 上記以外の事項についても、接続事業者がNTT地域会社に何らかの費用を支払う場合は、それらの費用について適正な算定根拠の情報開示及び検証がなされることが必要である。


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