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第2部 最近の地方財政の状況と課題

1 平成16年度の地方財政

 平成16年度の地方財政を取り巻く環境及びその運営状況は、次のとおりである。

(1) 平成16年度の経済見通しと国の予算

(ア) 経済見通しと経済財政運営の基本的態度

 「平成16年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」は、平成15年12月19日に閣議了解、平成16年1月19日に閣議決定された。

 これによると、平成15年度の我が国経済は、年度当初には踊り場的な状況が見られた後、米国をはじめ世界経済が回復する中で、輸出や生産が再び緩やかに増加していくとともに、企業収益の改善が続き、設備投資も増加するなど、企業部門が回復していくことにより、民需を中心に緩やかに回復していくものと見込まれていた。また、平成15年度の国内総生産の名目成長率は0.1%程度になると見込まれていた。

 このような情勢認識に立って、平成16年度の経済財政運営の基本的態度については、平成15年6月27日に閣議決定された「基本方針2003」に基づき、デフレ克服を目指しながら、規制、金融、税制及び歳出の各分野にわたる構造改革を一体的かつ整合的に推進し、創造的な企業活動の促進や地方経済の活性化等を通じた民間需要主導の持続的な経済成長を目指すこととし、また、日本銀行と一体となって、金融・資本市場の安定及びできる限り早期のプラスの物価上昇率実現に向け、引き続き、強力かつ総合的な取組を実施し、今後とも、経済情勢によっては、大胆かつ柔軟な政策運営を行うこととされた。

 以上のような経済財政運営の下において、平成16年度の国内総生産は500.6兆円程度、経済成長率は名目で0.5%程度、実質で1.8%程度になるものと見通された。

(イ) 国の予算

 平成15年12月5日、「平成16年度予算編成の基本方針」が閣議決定された。その中で平成16年度予算については、活力ある経済社会と持続的な財政構造の構築を図る必要があることから、制度・政策の抜本的見直しを行うとともに、政府全体の歳出を国と地方が歩調を合わせつつ抑制することにより、政府の大きさ(一般政府の支出規模の国内総支出比)を極力抑制し、持続可能な財政構造の構築を図り、将来においても我が国経済の活力を維持するため、歳出全体にわたる徹底的な見直しを行い、歳出改革を一層推進するものとされ、一般会計歳出及び一般歳出については、実質的に平成15年度の水準以下に抑制すること等を基本的考え方とすることとされた。また、歳出の見直しと構造改革の推進のため、「基本方針2003」に基づき、「政策群」の手法を活用するとともに、活力ある社会・経済の実現に向けた4分野(「人間力の向上・発揮―教育・文化、科学技術、IT」、「個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方」、「公平で安心な高齢化社会・少子化対策」、「循環型社会の構築・地球環境問題への対応」)について、これまでの実績・評価を考慮しつつ政策効果が顕著なものについて重点的かつ効率的に推進するとともに、社会資本整備、社会保障制度及び地方財政の事項についても制度・施策の見直しを行い、さらに、農林水産、ODA等については「基本方針2003」に即し歳出の見直しに取り組むこととされた。

 社会資本整備については、公共投資関係費の水準を前年度予算から3%以上削減しつつ、上記の活力ある社会・経済の実現に向けた4分野を中心に、雇用・民間需要の拡大に資する分野への重点配分を行う一方、公共事業の国庫補助負担金については、「三位一体の改革」も踏まえ、その内容を見直すとともに、公共投資関係費全体の削減を上回る縮減を行うこと等とされた。

 地方財政については、国と地方に関する「三位一体の改革」を推進することにより、地方の権限と責任を大幅に拡大し、歳入・歳出両面での地方の自由度を高めることで、真に住民に必要な行政サービスを地方が自らの責任で自主的、効率的に選択できる幅を拡大するとともに、国・地方を通じた簡素で効率的な行財政システムの構築を図ることとされた。また、「三位一体の改革」については、「基本方針2003」を踏まえ、改革工程を早期に具体化するよう取り組むこととし、平成16年度予算においても、平成15年度予算における取組の上に立って、今後3年間の取組の初年度にふさわしい成果を上げるよう、政府一丸となって取り組むこととされた。

 平成16年度予算は、以上のような方針により編成され、平成15年12月24日に概算の閣議決定が行われた後、平成16年1月19日に第159回国会に提出された。

 これによると、平成16年度の国の一般会計予算の規模は82兆1,109億円で、前年度当初予算と比べると3,218億円の増加(0.4%増)となっており、うち一般歳出の規模は47兆6,320億円で、前年度当初予算と比べると398億円(0.1%増)となった。なお、「平成16年度予算編成の基本方針」において、前年度当初予算から3%以上削減することとされた公共投資関係費については、3.3%減の8兆6,149億円となった。また、公債の発行予定額は36兆5,900億円で、前年度当初発行予定額と比べると1,450億円の増加(0.4%増)となっており、公債依存度は44.6%となった。

 他方、財政投融資計画については、財政投融資改革の趣旨を踏まえ、中小企業対策などセーフティ・ネットの構築等、真に必要な資金需要には的確に対応しつつ、対象事業の一層の重点化を図ることとされ、計画規模は20兆4,894億円、前年度計画額と比べると2兆9,221億円の減少(12.5%減)となった。

(2) 地方財政計画

 平成16年度の地方財政計画は、極めて厳しい地方財政の現状等を踏まえ、歳出面においては、「基本方針2003」に沿って、歳出全般にわたり徹底した見直しを行うことにより歳出総額の計画的な抑制を図る一方、当面の重要課題である人間力の向上・発揮(教育・文化、科学技術、IT)、個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方の形成、少子・高齢化対策、循環型社会の構築・地球環境問題への対応等に財源の重点的配分を図ることとし、歳入面においては、地方税負担の公平適正化の推進と地方交付税の所要額の確保を図ることを基本とするとともに、引き続き生ずることとなった大幅な財源不足について、地方財政の運営上支障が生じないよう適切な補てん措置を講じることとし、次の方針に基づき策定された。

(1) 地方税については、恒久的な減税を引き続き実施するとともに、現下の経済・財政状況等を踏まえつつ、持続的な経済社会の活性化を実現するための「あるべき税制」の構築に向け、所得譲与税の創設、個人住民税均等割の見直し、商業地等に係る固定資産税・都市計画税の条例減額制度の創設、課税自主権の拡大その他の所要の措置を講じる。

(2) 地方財源不足見込額について、地方財政の運営に支障が生じることのないよう、次の措置を講じる。

1)恒久的な減税に伴う影響額及び平成15年度税制改正に伴う減収額以外の地方財源不足(以下「通常収支に係る財源不足」という。)の見込額12兆2,530億円については、次の措置を講じる。

ア 平成16年度から平成18年度までの間においては、この間に予定されている交付税特別会計借入金の償還を平成22年度以降に繰り延べることとしたうえで、なお生ずる財源不足のうち建設地方債(財源対策債)の増発等を除いた残余については国と地方が折半して補てんすることとし、国負担分については、国の一般会計からの加算により、地方負担分については地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)により補てん措置を講じる。

 臨時財政対策債の元利償還金相当額については、その全額を後年度地方交付税の基準財政需要額に算入する。

 これらの措置を「地方交付税法」第6条の3第2項の制度改正として講じ、所要の法改正を行うこととする。

 なお、平成5年度の投資的経費に係る国庫補助負担率の見直しに関し一般会計から交付税特別会計に繰り入れることとしていた額等2,981億円については法律の定めるところにより、平成17年度以降の地方交付税の総額に加算することとする。

イ これに基づき、交付税特別会計借入金の償還繰延べ後の平成16年度の通常収支に係る財源不足見込額10兆1,723億円については、次により完全に補てんする。

(ア) 地方交付税については、国の一般会計加算により4兆1,818億円(うち、地方交付税法附則第4条の2第2項の加算額1,685億円、同条第4項の加算額11億円、同条第8項の加算額1,246億円、臨時財政対策特例加算額3兆8,876億円)増額する。

(イ) 地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)を4兆1,905億円発行する。

(ウ) 建設地方債(財源対策債)を1兆8,000億円増発する。

2)恒久的な減税に伴う地方財政への影響額3兆3,296億円については、次の措置を講じる。

ア 恒久的な減税の実施による地方税の減収1兆7,991億円について、その4分の3相当額を国と地方のたばこ税の税率変更による地方たばこ税の増収措置(1,179億円)、法人税の地方交付税率の引上げによる増収措置(3,575億円)及び地方特例交付金(8,739億円)により、その4分の1相当額を地方財政法第5条の特例となる地方債(減税補てん債、4,498億円)により完全に補てんする。

イ 恒久的な減税の実施による地方交付税への影響額1兆5,305億円のうち、平成16年度に新たに発生する地方交付税の減収1兆4,271億円については、交付税特別会計借入金により措置し、その償還は国と地方が折半して負担することにより完全に補てんする。

 また、平成11年度以降地方交付税への影響額の補てん対策として措置した交付税特別会計借入金に係る利子相当額のうち国負担分508億円は一般会計からの繰入れにより、地方負担分526億円は交付税特別会計借入金により措置する。

3)平成15年度税制改正に伴う平成16年度の地方税及び地方交付税の減収額6,479億円については、次の措置を講じる。

ア 地方税の減収3,521億円については、減税補てん債の発行により完全に補てんする。

イ 地方交付税の減収2,958億円については、交付税特別会計借入金により完全に補てんする。

4)上記の結果、平成16年度の地方交付税については、16兆8,861億円(前年度に比し6.5%減)を確保する。

(3) 三位一体の改革の一環として、次のとおり国庫補助負担金の一般財源化と、これに対応した税源移譲等の措置を講じることとする。

1)平成16年度に行われる児童保護費等負担金のうち公立保育所運営費分等の国庫補助負担金の一般財源化及び平成15年度に行われた国庫補助負担金の一般財源化に対応して所得譲与税を創設し、税源移譲する。

 所得譲与税は、平成18年度までに所得税から個人住民税への本格的な税源移譲を実施するまでの間の暫定措置として、所得税の一部を、使途を限定しない一般財源として地方へ譲与するものであり、人口により都道府県及び市町村(一部事務組合等を除く。)へ譲与する。

2)義務教育費国庫負担金及び公立養護学校教育費国庫負担金のうち退職手当及び児童手当に係る部分については、暫定的に一般財源化を行うこととし、税源移譲予定特例交付金を設け、税源移譲までの各年度の退職手当等の支給に必要な額を確保することとし、人口を基準として都道府県に交付する。

(4) 地方債については、地方財源の不足に対処するための措置を講じるとともに、極めて厳しい地方財政の状況の下で、その健全性の確保に留意しつつ、地方公共団体が個性豊かで活力ある地域社会の構築を目指して、それぞれの地域の特性を活かした魅力あふれる地域づくり、ITを活用した住民生活の向上と地域経済の活性化、地域資源の有効活用等による地域再生、災害等に強く安全な地域づくり等の当面する政策課題に重点的・効率的に対応しうるよう所要額を確保する。この結果、地方債計画の規模は17兆4,843億円(対前年度比5.4%減,普通会計分14兆1,448億円、公営企業会計等分3兆3,395億円)とする。

(5) 社会経済情勢の推移等に即応して使用料・手数料等の適正化を図る。

(6) 地域経済の振興や雇用の安定を図りつつ、個性と活力ある地域社会の構築、住民に身近な社会資本の整備、災害に強い安全なまちづくり、総合的な地域福祉施策の充実、農山漁村地域の活性化等を図ることとし、財源の重点的配分を行う。

1)投資的経費に係る地方単独事業費については、中期的に事業規模の計画的抑制を図ることとし、平成16年度においては、国の公共投資関係費の取扱い等も勘案しつつ、前年度に比し9.5%減額することとする一方で、地域活性化事業、合併特例事業及び防災対策事業などにより、引き続き、地域の自立や活性化につながる基盤整備を重点的・効率的に推進する。

2)一般行政経費に係る地方単独事業費については、地方公共団体の自助努力を促す観点から既定の行政経費の縮減を図る一方、人間力の向上・発揮(教育・文化、科学技術、IT)、個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方の形成、循環型社会の構築・地球環境問題への対応、少子・高齢化対策、市町村合併の推進等の分野に係る施策に財源の重点的配分を図る。

3)消防力の充実、自然災害の防止、震災対策の推進及び治安維持対策等住民生活の安全を確保するための施策を推進する。

4)過疎地域の自立促進のための施策等に対し所要の財政措置を講じる。

(7) 地方公共団体の公債費負担の軽減を図るため、普通会計における高利の公的資金に係る地方債等に対する特別交付税措置及び一定の公営企業金融公庫資金の借換え措置を講じる。

(8) 地方公営企業の経営基盤の強化、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、社会経済情勢の変化に対応した新たな事業の展開等を図るため、経費負担区分等に基づき、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行う。

(9) 地方行財政運営の合理化を図ることとし、一般職の定員削減を行う等定員管理の合理化を図るとともに、事務事業の見直し、民間委託等の推進など行財政運営全般にわたる改革を推進する。

 以上のような方針に基づいて策定した平成16年度の地方財政計画の規模は、84兆6,669億円で、前年度と比べると1兆5,438億円減少(1.8%減)となった。

 歳入についてみると、地方税は32兆3,231億円で、前年度と比べると1,506億円増加(0.5%増)(道府県税1.9%増、市町村税0.6%減)、地方譲与税は1兆1,452億円で、前年度と比べると4,513億円増加(65.0%増)、地方特例交付金は1兆1,048億円で、前年度と比べると986億円増加(9.8%増)、地方交付税は16兆8,861億円で、前年度と比べると1兆1,832億円減少(6.5%減)、国庫支出金は12兆1,238億円で、前年度と比べると1,362億円減少(1.1%減)、地方債(普通会計分)は14兆1,448億円で、前年度と比べると9,270億円減少(6.2%減)となった。

 一方、歳出についてみると、給与関係経費は22兆9,990億円で、前年度と比べると4,393億円減少(1.9%減)となった。なお、地方財政計画全体の職員数については、一般職員(義務教育教職員、警察官、消防職員、非義務制学校の教員を除く職員)について、国家公務員の定員削減の方針に準じ、10,369人を縮減するとともに、保健師の増員、施設増に伴う所要の増員等に義務教育教職員、警察官、消防職員、非義務制学校の教員の増減員を加え、10,980人の減員を見込んだ。一般行政経費は21兆8,833億円で、前年度と比べると8,570億円増加(4.1%増)、公債費は13兆6,779億円で、前年度と比べると894億円減少(0.6%減)、投資的経費は21兆3,283億円で、前年度と比べると1兆9,585億円減少(8.4%減)となっており、投資的経費のうち、公共事業費中の普通建設事業費は6兆6,419億円で、前年度と比べると5,133億円減少(7.2%減)、地方単独事業費は13兆4,700億円で、前年度と比べると1兆4,100億円減少(9.5%減)となった。

(3) 財政運営の経過

(ア) 経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004

 平成16年6月4日、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」(以下「基本方針2004」という。)が閣議決定された。

 「基本方針2004」においては、平成16年度をバブル崩壊後の負の遺産からの脱却に目途をつけるための「集中調整期間の仕上げの年」と位置づけたうえで、「金融再生プログラム」を着実に推進し、金融システムを強化するとともに、「基本方針2003」など、これまでに策定されてきた施策を引き続き着実に実行することにより、構造改革の成果を我が国の隅々にまで浸透させることとしている。そのうえで、平成17年度及び平成18年度を新たな成長に向けた基盤の重点強化を図るための「重点強化期間」と位置づけつつ、(1)「官から民へ」、「国から地方へ」の徹底、(2)政府部門の本格的な改革(「官の改革」)の強化、(3)民間の成長力を強化するための改革(「民の改革」)の推進、(4)「人間力」の抜本的強化、(5)「持続的な安全・安心」の確立の5つの改革に取り組むこととしている。

 具体的には、「『官から民へ』、『国から地方へ』の徹底」については、郵政民営化を着実に実施し、規制改革・国及び地方公共団体の事務事業の民間開放を積極的に推進するとともに、地域の真の自立を図るために三位一体の改革や市町村合併等を着実に推進することとしている。「『官の改革』の強化」については、国民に理解される分かりやすい予算への転換を図るとともに、公的債務管理の充実を通じた市場の安定を図り、併せて公務員制度や特殊法人等の行政改革、包括的かつ抜本的な税制改革等に取り組むこととしている。「『民の改革』の推進」については、将来の人口減少や少子高齢化の下での成長戦略の確立、起業等を促進するための新しい企業法制の整備、金融システムの一層の改革の推進等を掲げている。「『人間力』の抜本的強化」については、若年者の雇用・就業対策の推進、障害者の雇用・就業及び自立の支援、利用者の立場に立った雇用関連事業の再編、教育現場の活性化等を図ることとしている。「『持続的な安全・安心』の確立」については、社会保障制度の総合的改革、少子化対策の充実、健康・介護予防の推進、治安・安全の確保、循環型社会の構築に向けた地球環境の保全、持続的な発展基盤の確保等を進めていくこととしている。

(イ) 平成16年度補正予算(第1号)

 平成16年度補正予算(第1号)は、平成16年12月20日に閣議決定され、平成17年1月21日に第162回国会に提出され、2月1日に成立した。

 この補正予算においては、歳出面では、災害対策費1兆3,618億円、義務的経費5,957億円、地方交付税交付金1兆1,686億円、改革推進公共投資事業償還時補助等8,642億円等を追加計上したほか、既定経費の節減9,258億円、予備費の減額500億円の修正減少額を計上した。また、歳入面では、最近までの収入実績等を勘案し、租税及印紙収入2兆2,940億円の増収を見込むとともに、前年度剰余金受入1兆4,910億円を計上したほか、その他収入9,828億円の増収を見込んだ。

 この結果、一般会計予算の規模は、歳入歳出とも平成16年度当初予算に対し4兆7,678億円増加し、86兆8,787億円となった。

(ウ) 平成16年度補正予算(第1号)に係る地方財政補正措置

 平成16年度補正予算(第1号)の編成により、国税の増収見込み等に伴い地方交付税の増加が見込まれたとともに、災害復旧事業の追加等に伴う地方負担の増加が生じた結果、以下の地方財政補正措置が講じられた。

a 地方交付税の追加等

(i) 平成16年度地方交付税の総額に、普通交付税の調整額の復活に要する額639億円及び特別交付税の増加に要する額701億円を加え、1,340億円を加算する措置を講じる。なお、特別交付税については、平成16年度の台風や地震による災害の状況にかんがみ、国の補正予算により増加する地方交付税の額の6%相当額を、当初予算額に加算して交付することとする。

(ii) 国の補正予算により増加する平成16年度分の地方交付税の額1兆1,686億円(平成15年度精算分4,388億円、平成16年度国税五税の自然増に伴うもの7,298億円)については、上記(i)の1,340億円を交付することとしたうえで、残余の額1兆347億円について平成17年度分として交付すべき地方交付税の総額に加算して交付する措置を講ずることとする。

b 追加の財政需要等に対する財政措置

(i) 国の補正予算により平成16年度に追加されることとなる災害復旧事業等投資的経費に係る地方負担額(普通会計分4,559億円)については、原則として、地方債(充当率100%)を充当することとし、後年度においてその元利償還金の全額を基準財政需要額に算入することとする。

(ii) 介護給付費、生活保護費、老人医療給付費等地方債の対象とならない経費(2,637億円)については、追加財政需要額(5,100億円)の取崩しにより対応することとする。

(エ) 予備費使用に係る地方財政補正措置

 平成16年度においては、国の補正予算による措置のほか、国直轄災害復旧事業等について国の予備費使用による措置が講じられたが、これにより平成16年度に追加されることとなる災害復旧事業等投資的経費に係る地方負担額(普通会計分128億円)については、原則として上記の国の補正予算により追加される地方負担額に対する措置と同様の措置を講じることとされた。

(4) 地方公共団体の予算

 平成16年度の地方公共団体の普通会計予算(9月補正後)の状況は、第39表のとおりであり、普通会計予算の総額(都道府県及び市町村の単純合計)は前年度と比べると1.2%減となった。

 主な内訳をみると、歳入では、地方税が前年度と比べて1.0%増、地方交付税6.5%減、国庫支出金4.1%減、地方債10.5%減となった。一方、歳出では、普通建設事業費が前年度と比べ9.8%減となった。

第39表 平成16年度普通会計予算の状況(9月補正後) その1 歳入

第39表 平成16年度普通会計予算の状況(9月補正後) その1 歳入

第39表 平成16年度普通会計予算の状況(9月補正後) その2 歳出(性質別)

第39表 平成16年度普通会計予算の状況(9月補正後) その2 歳出(性質別)

 なお、第39表の数値は、前年度からの繰越事業に係るものを含んでいる。

(5) 個別団体における財政健全化

 近年の地方財政は、我が国の経済の厳しい状況を反映して、地方税収等が低迷する一方で、数次の景気対策による公共事業の追加や、減税の実施等により、借入金残高が急増するなど、極めて厳しい状況にある。この結果、平成15年度決算における経常収支比率は、前年度よりも1.3%ポイント低下したものの、89.0%と依然高い水準にとどまっている。また、起債制限比率も、前年度と同率の11.6%と引き続き高い水準となっており、財政構造の硬直化が進んでいる。また、平成16年度も、公債費の増加等が見込まれ、引き続き極めて厳しい財政運営が続いている。

 各地方公共団体においては、このような厳しい財政状況を踏まえて、一層の事務事業の見直し、組織・機構の簡素効率化、外郭団体の統廃合等、定員管理・給与の適正化、民間委託等の推進など、自主的な行財政改革に積極的に取り組むとともに、独自課税の検討、地方税の徴収確保や使用料・手数料の適正化等歳入の確保に努めるなど、財政運営の健全化に努めている。

 同時に、近年、公債費負担の増大等により、地域の重要政策課題に十分対応できない地方公共団体が増加することが懸念されていることから、昭和62年度以降、自主的に財政構造の健全化を図るための公債費負担適正化計画を策定した市町村に対しては、計画的に公債費負担の適正化を推進しつつ、必要な事業費を確保することができるよう、財政上の支援措置が講じられている。

 この措置については、平成11年度以降は、起債制限比率(過去3か年平均)が14%以上、又は今後2年度以内に14%以上となる見込みの市町村(一部事務組合等を除く。)で公債費負担適正化計画を策定した団体が対象とされている。平成16年度までに計画の策定を行った団体数は530団体、このうち279団体は既に計画を完了しているところである。

 さらに、平成16年度においては、平成14年度の起債制限比率(過去3か年平均)が全国平均以上、平成14年度の経常収支比率が全国平均以上又は平成14年度の財政力指数(過去3か年平均)が全国平均以下の団体の普通会計の公的資金に係る利率7%以上の地方債について、当該地方債の利子の利率5%を超える部分について特別交付税措置が講じられた。

(6) 地方公営企業等に関する財政措置

ア 地方公営企業

 地方公営企業については、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の着実な整備を推進するとともに、社会経済情勢の変化に対応した新たな事業の展開を支援し、併せて地方公営企業の経営健全化等を推進するなど経営基盤の一層の強化を図る必要がある。

 このため、平成16年度においては、次のような措置を講じた。

 企業会計と一般会計との間における経費負担区分の原則等に基づく公営企業繰出金については、地方財政計画において3兆797億円(前年度3兆2,052億円)を計上した。

 また、地方公営企業の建設改良等に要する地方債については、地方債計画において公営企業会計等分3兆3,395億円(前年度3兆4,127億円)を計上するとともに、既往債の利子を軽減する観点から、公営企業借換債について1,100億円(前年度700億円)を計上した。

 さらに、各事業における財政措置のうち主なものは以下のとおりである。

(ア) 簡易水道事業及び下水道事業(流域下水道、小規模集合排水処理施設及び個別排水処理施設に係るものに限る。)については、前年度に引き続き、事業年度における一般会計からの繰出しに代えて、臨時的に公営企業債(臨時措置分)を措置することとし、当該臨時措置分に係る公営企業債の元利償還金については、その全額(流域下水道のうち地方単独事業に係るものを除く。)を後年度において基準財政需要額に算入することとした。

(イ) 水道事業については、トリハロメタン対策やクリプトスポリジウム対策等、公共水域の汚濁に起因する水質安全対策について、所要の地方財政措置を講じることとした。また、資本費の増嵩により厳しい経営状況にある水道事業又は工業用水道事業のうち、独立行政法人水資源機構の予算の範囲内において承認を受け、割賦負担元金の繰上償還を行い割賦負担利息の軽減を図ろうとする事業者に対して、所要の地方債措置を講じることとした。

(ウ) 交通事業については、地下鉄の安全性の向上を図るため、地下駅火災対策並びに安全性向上対策について、所要の地方財政措置を講じることとした。また、「三位一体の改革」における国庫補助負担金の改革の一環として、平成16年度から地下鉄事業特例債制度における公営地下高速鉄道事業助成金を廃止したが、当該助成金の対象とされていた事業費については、所要の地方交付税措置を講じることとした。さらに、経営健全化支援計画を策定し経営健全化に取り組む地方公営企業に準ずる第三セクター方式による都市鉄道事業に対し、地方公共団体が財政支援を行う場合、当該財政支援に対して地方債措置を講じることとした。

(エ) 下水道事業については、平成16年度以降実施される更新事業について、雨水・汚水比率の実績を踏まえ、資本費に対する財政措置の見直しを行うこととした。また、下水道事業債の元金償還期間と減価償却期間との差により生じる資金不足を補うため、資本費平準化債の対象要件を拡大するとともに、経費が割高となる団体に対する高資本費対策を拡充することとした。

イ 国民健康保険事業

 国民健康保険事業の厳しい財政状況に配意し、平成13年度に決定された医療制度改革大綱や、平成14年度の健康保険法の改正等を踏まえ、国民健康保険に対して、財政基盤の強化や広域化等のための支援措置を次のとおり講じることとした。

(ア) 市町村国保の広域化や市町村合併の際の保険料標準化等を無利子貸付等により支援するため、平成14年度及び15年度に引き続き国民健康保険広域化等支援基金(3年間で総額300億円、平成16年度100億円(国1/2、都道府県1/2))を造成することとした。

(イ) 低所得者を多く抱える保険者を支援する観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が低所得者数等に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用に対し、国及び都道府県が一部を負担することとし(国1/2、都道府県1/4、市町村1/4)、所要額について地方交付税措置を講じることとした。

(ウ) 高額医療費共同事業については、市町村国保の拠出金に対し、国及び都道府県が一部を負担することとし(国1/4、都道府県1/4、市町村国保1/2)、所要額について地方交付税措置を講じることとした。

(エ) 国保財政安定化支援事業については、国保財政の健全化に向けた市町村一般会計からの繰出しについて、引き続き所要の地方財政措置(1,000億円)を講じることとした。


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