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9 地方公営事業の状況

(1) 地方公営企業

ア 概況

(ア) 事業数[第111表

 平成15年度末において、地方公営企業を経営している団体数は3,174団体(企業団・一部事務組合等でのみ地方公営企業を経営している21団体を含む。)であり、その内訳は47都道府県、13大都市、3,114市町村となっている。

 これらの団体が経営している地方公営企業の事業数は1万2,476事業で、前年度末と比べると137事業減少となっている。これを事業別にみると、第94図のとおりであり、下水道事業が最も大きな割合を占め、以下、水道事業(簡易水道事業を含む。以下同じ。)、介護サービス事業、病院事業の順となっている。

第94図 地方公営企業の事業数の状況(平成15年度末)

第94図 地方公営企業の事業数の状況(平成15年度末)

(イ) 業務の状況

 地方公営企業は、住民の生活水準の向上を図るうえで大きな役割を果たしている。各事業全体の中で地方公営企業が占める割合は第26表のとおりである。

 平成15年度における主要な事業の業務の状況についてみると、次のとおりとなっている。

a 水道事業

 水道事業(用水供給事業を除く。)においては、配水能力7,253万1千m3/日、導送配水管68万7,048kmを有し、年間164億11百万m3(対前年度比1.1%減)の配水を行っている。また、給水人口は1億2,347万4千人で、全国人口に対する割合は95.9%(10年前(平成5年度)は93.8%)であり、着実に上昇している。

b 工業用水道事業

 工業用水道事業においては、配水能力2,185万m3/日、導送配水管8,254kmを有し、年間47億2百万m3(対前年度比0.6%減)の配水を行っている。また、契約水量は1,787万1千m3/日(対前年度比1.0%減)となっている。

第26表 事業全体に占める地方公営企業の割合

第26表 事業全体に占める地方公営企業の割合

c 都市高速鉄道事業

 都市高速鉄道事業においては、車両4,328両、営業路線486kmを有している。また、年間輸送人員は27億38百万人(対前年度比0.4%増)であり、着実に増加している。

d バス事業

 バス事業においては、車両9,729両、営業路線1万437kmを有している。また、年間輸送人員は11億93百万人(対前年度比3.8%減)であり、近年減少が続いている。

e 病院事業

 病院事業においては、1,003病院、病床23万8,489床を有している。また、年延患者数は2億113万7千人(対前年度比2.7%減)であり、2年連続の減少となっている。

f 下水道事業

 下水道事業においては、現在晴天時処理能力5,921万m3/日、管渠41万2,408kmを有している。また、年間有収水量(流域下水道分は除く。)は102億10百万m3(対前年度比1.8%増)であり、着実に増加している。

(ウ) 職員数[第112表

 平成15年度末における地方公営企業に従事する職員の数は40万6,496人で、前年度末と比べると1.2%減となっている。この職員数は、地方公共団体の全職員数の13.0%(前年度末13.1%)に相当している。

 これを事業別にみると、第95図のとおりであり、病院事業が最も大きな割合を占め、以下、水道事業、下水道事業、交通事業の順となっており、これら4事業で職員数全体の92.1%を占めている。また、行政改革の推進による定員管理の適正化等により、ほとんどの事業で職員数は減少している。

(エ) 決算規模等[第113表

 決算規模は20兆3,070億円で、主に建設投資額の減少により、前年度と比べると3,584億円減少(1.7%減)となっており、普通会計歳出決算額の21.9%(前年度21.8%)に相当する規模となっている。

 これを事業別にみると、第96図のとおりであり、下水道事業が最も大きな割合を占め、以下、病院事業、水道事業、交通事業の順となっている。

 また、建設投資額の推移は、第97図のとおりであり、平成15年度の額は5兆7,284億円(対前年度比8.2%減)で、普通会計の普通建設事業費の31.4%に相当する規模となっている。

第95図 職員数の状況

第95図 職員数の状況

第96図 決算規模の推移

第96図 決算規模の推移

 これを事業別にみると、下水道事業が最も大きな割合を占め、以下、水道事業、宅地造成事業、病院事業の順となっている。建設投資額が前年度より減少した主な事業は、下水道事業(対前年度比3,188億円減少、9.4%減)、宅地造成事業(同772億円減少、16.2%減)、病院事業(同631億円減少、14.3%減)となっており、他方、施設の新設及び増改築等により、介護サービス事業が前年度と比べると増加(同27億円増加、15.2%増)している。

第97図 建設投資額の推移

第97図 建設投資額の推移

(オ) 全体の経営状況

 法適用企業と法非適用企業を合わせた全体の経営状況をみると、第27表のとおりであり、黒字事業数は全体の87.6%、赤字事業数は12.4%で、全体としては1,482億円の黒字となっている(前年度79億円の黒字)。また、黒字額が増加した主な理由については、料金収入の増加、支払利息の減少及び職員給与費の減少等によるものである。

第27表 地方公営企業全体の経営状況

第27表 地方公営企業全体の経営状況

(カ) 料金収入

 料金収入は9兆5,422億円で、前年度と比べると1,430億円増加(1.5%増)となっている。これを事業別にみると、第98図のとおりであり、病院事業が最も大きな割合を占め、以下、水道事業、下水道事業、交通事業の順となっている。

(キ) 企業債の状況

 資本的支出に充当された企業債の発行額の状況は、第99図のとおりであり、発行額は3兆2,202億円で、前年度と比べると8.3%減となっている。これを事業別にみると、下水道事業が最も大きな割合を占め、以下、水道事業、宅地造成事業、病院事業の順となっている。

第98図 料金収入の状況

第98図 料金収入の状況

第99図 企業債発行額の状況

第99図 企業債発行額の状況

第100図 企業債借入先別現在高の推移

第100図 企業債借入先別現在高の推移

 企業債借入先別現在高の推移は、第100図のとおりであり、平成15年度末の額は61兆4,861億円で、前年度末と比べると0.3%増となっている。これを借入先別にみると、政府資金が最も大きな割合を占め、以下、公営企業金融公庫資金、市中銀行資金の順となっている。

(ク) 他会計繰入金の状況

 他会計からの繰入金は3兆7,132億円で、前年度と比べると0.5%増となっている。この内訳をみると、収益的収入として2兆1,591億円(収益的収入に対する割合17.0%)、資本的収入として1兆5,540億円(資本的収入に対する割合22.6%)となっている。

 これを事業別にみると、下水道事業の繰入額が最も大きな割合(繰入額全体の58.5%)を占め、以下、病院事業(同19.7%)、水道事業(同7.4%)、交通事業(同5.6%)の順となっている。

(ケ) 法適用企業の経営状況[第114表

a 損益収支

 法適用企業の経営状況を表すものには、純損益、経常損益、総収支比率、経常収支比率等がある。純損益とは、当該年度の総合的な収支状況を表し、総収益が総費用を上回る場合の差額が純利益であり、逆に総費用が総収益を上回る場合の差額が純損失である。

 経常損益とは、純損益から固定資産売却益等の臨時的な収益(特別利益)や、過年度の職員給与費等の費用(特別損失)を除いたものをいい、当該年度の経営活動の結果を表し、経常収益が経常費用を上回る場合の差額が経常利益であり、逆に経常費用が経常収益を上回る場合の差額が経常損失である。

 総収支比率とは総費用に対する総収益の割合、ここでいう経常収支比率とは経常費用に対する経常収益の割合であり、それぞれ100%を下回ると費用が収益を上回っている状態を意味することになる。

 法適用企業の総収益(経常収益+特別利益)は10兆5,241億円、総費用(経常費用+特別損失)は10兆4,122億円となっており、この結果、純損益は1,119億円の黒字となっており、総収支比率は101.1%と前年度より1.6%ポイント上昇している。また、経常収益(営業収益+営業外収益)は10兆4,651億円、経常費用(営業費用+営業外費用)は10兆3,591億円となっており、この結果、経常損益は1,060億円の黒字となっており、経常収支比率は101.0%と前年度より1.5%ポイント上昇している。

 経常収支比率の推移をみると、平成3年度以降100%を下回る状況が続いていたが、平成15年度は13年ぶりに100%を上回った。なお、純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第28表のとおりである。

第28表 法適用企業の経営状況

第28表 法適用企業の経営状況

b 累積欠損金

 過去の年度から通算した純損益における損失の累積額である累積欠損金は4兆4,981億円で、前年度と比べると5.1%減となっている。また、累積欠損金合計額に占める割合が大きい事業は、交通事業(累積欠損金合計額の51.7%)、病院事業(同36.0%)等である。

c 不良債務

 貸借対照表日現在において、流動負債の額が流動資産の額(翌年度へ繰り越される支出の財源充当額を除く。)を上回る場合の当該超過額である不良債務は3,481億円で、前年度と比べると1.9%増となっており、平成10年度以降、年々増加傾向にある。不良債務の大きい事業は、交通事業(不良債務額全体の60.8%)、病院事業(同21.3%)、下水道事業(同8.1%)である。

d 資本収支

 建設投資や企業債の償還金等の支出である資本的支出は5兆4,141億円で、前年度と比べると2.0%減となっている。これに対する財源は、企業債等の外部資金が3兆1,698億円、損益勘定留保資金等の内部資金が2兆1,032億円、財源不足額は1,411億円となっている。

 資本的支出のうち建設改良費は2兆9,649億円で、前年度と比べると8.1%減となっている。建設改良費が大きい事業は、水道事業(建設改良費全体の39.3%)、下水道事業(同26.6%)、病院事業(同12.8%)である。

(コ) 法非適用企業の経営状況[第116表

 法非適用企業の実質収支をみると、黒字事業数は法非適用企業全体の96.3%、赤字事業数は3.7%を占めており、全体では363億円の黒字(前年度622億円の黒字)となっている。

(サ) 財政再建等の状況

 地方公営企業法(昭和27年法律第292号)第49条の規定に基づく財政再建(いわゆる準用再建)については、交通事業において1事業が再建を行っていたが、平成11年度に計画どおり完了している。

 また、工業用水道事業においては、平成14年度から水利権の転用等を伴う未稼動資産等の整理により抜本的な経営健全化策に取り組む地方公共団体を対象として未稼動資産等整理経営健全化対策を講じており、平成15年度末現在において1団体2施設が取組を行っている。

 さらに、病院事業においては、平成13年度末において医業収益に対する不良債務の比率が10%以上の病院事業を経営する団体のうち、経営努力の徹底により収支の均衡を図ることが可能なものについて、平成14年度から15団体を対象に新たな経営健全化措置が実施されている。

イ 事業別状況[第111表〜第116表

(ア) 水道事業

a 事業数

(a) 上水道事業

 地方公共団体が経営する上水道事業で、平成15年度決算対象となるものは、1,956事業であり、このうち、末端給水事業は1,870事業(うち建設中3事業)、用水供給事業は86事業(同14事業)である。これを経営主体別にみると、末端給水事業は、都県営が4事業、大都市営が13事業、市営が604事業、町村営が1,175事業、企業団営等が74事業であり、用水供給事業は、府県営が23事業、企業団営等が63事業となっている。

(b) 簡易水道事業

 地方公共団体が経営する簡易水道事業で、平成15年度決算対象となるものは、1,587事業(うち法適用32事業)である。これを経営主体別にみると、町村営が1,396事業で全体の88.0%を占め、以下、市営が180事業、一部事務組合営等が8事業、大都市営が2事業、県営が1事業となっている。

b 経営規模

 水道事業の給水人口(用水供給事業を除く。)は、平成15年度末で1億23百万人(上水道事業1億18百万人、簡易水道事業5百万人)であり、前年度と比べると0.3%増となっている。また、平成15年度の年間総有収水量(用水供給事業を含む。)は191億20百万m3(前年度192億45百万m3)、給水人口1人当たり1日平均有収水量(用水供給事業を除く。)は323l(同328l)と、近年、減少傾向にある。

c 経営状況

(a) 法適用企業

第29表 水道事業(法適用企業)の経営状況

第29表 水道事業(法適用企業)の経営状況

(i) 損益収支

 上水道事業及び法適用の簡易水道事業の総収益は3兆1,922億円、総費用は3兆156億円となっており、この結果、純損益は1,765億円の黒字(前年度1,492億円の黒字)、総収支比率は105.9%となっている。また、経常収益は3兆1,813億円、経常費用は3兆75億円となっており、この結果、経常損益は1,739億円の黒字、経常収支比率は105.8%となっている。純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第29表のとおりである。

 累積欠損金は1,335億円で、前年度と比べると4.9%増となっている。また、不良債務は16億円で、前年度と比べると66.8%増となっている。

(ii) 資本収支

 資本的支出は、第101図のとおりであり、平成15年度の額は1兆9,165億円で、前年度と比べると0.7%減となっている。これに対する財源は、外部資金が8,812億円、内部資金が1兆295億円で、財源不足額は58億円となっている。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は1兆1,641億円で、前年度と比べると5.0%減、企業債償還金は6,686億円で、前年度と比べると9.2%増となっている。

(iii) 給水原価と料金

 有収水量1m3当たりの給水原価(用水供給事業を除く。)は180.38円で、前年度と比べると1.0%減となっている。給水原価の内訳をみると、資本費が69.42円、職員給与費が32.38円、受水費が30.80円、その他の経費が47.78円となっている。これに対して1m3当たりの供給単価は173.24円であり、供給単価が給水原価を7.14円下回る状態となっている。

 また、平成15年度中に料金改定を実施した水道事業(用水供給事業を含む。)は122事業(前年度166事業)で、営業中の事業の6.2%となっている。

(b) 法非適用企業

 法非適用の簡易水道事業の実質収支をみると、黒字事業が1,513事業で115億円の黒字、赤字事業が34事業で10億円の赤字となっており、差引105億円の黒字となっている。

(イ) 工業用水道事業

a 事業数及び経営規模

 地方公共団体が経営する工業用水道事業で、平成15年度決算対象となるものは、152事業(うち建設中8事業)である。これを経営主体別にみると、都道府県営が41事業、大都市営が7事業、市営が54事業、町村営が41事業、企業団営が9事業となっている。

第101図 水道事業(法適用企業)の資本的支出及びその財源

第101図 水道事業(法適用企業)の資本的支出及びその財源

 施設数は272施設、給水先事業所数は6,231箇所、年間総配水量は47億2百万m3となっている。また、施設利用率(1日平均配水量を現在配水能力で除したもの)の平均は58.8%(前年度59.2%)となっている。

b 経営状況

(a) 損益収支

 工業用水道事業の総収益は1,656億円、総費用は1,492億円となっており、この結果、純損益は164億円の黒字(前年度180億円の黒字)、総収支比率は111.0%となっている。また、経常収益は1,618億円、経常費用は1,483億円となっており、この結果、経常損益は135億円の黒字、経常収支比率は109.1%となっている。なお、純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第30表のとおりである。

 累積欠損金は216億円で、前年度と比べると0.4%増となっている。

(b) 資本収支

 資本的支出は1,462億円で、前年度と比べると3.2%増となっている。これに対する財源は、外部資金が723億円、内部資金が734億円で、財源不足額は5億円となっている。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は598億円で、前年度と比べると6.4%減、企業債償還金は432億円で、前年度と比べると3.1%増となっている。

(c) 給水原価と供給単価

 有収水量1m3当たりの給水原価は31.59円(資本費16.41円、職員給与費4.73円、その他の経費10.45円)となっており、これに対して1m3当たりの供給単価は30.27円であり、供給単価が給水原価を1.32円下回る状態となっている。

 これを補助事業と単独事業に分けてみると、単独事業では供給単価(13.67円)が給水原価(12.03円)を1.64円上回るのに対して、補助事業では供給単価(34.39円)が給水原価(36.44円)を2.05円下回っている。

第30表 工業用水道事業の経営状況

第30表 工業用水道事業の経営状況

(ウ) 交通事業

a 事業数及び経営規模

 地方公共団体が経営する交通事業で、平成15年度決算対象となるものは、120事業(うち未開業1事業)である。これを事業別にみると、バスが47事業、都市高速鉄道(地下鉄)が10事業、路面電車が5事業、モノレール等が2事業、船舶が56事業となっている。

 これらによる年間輸送人員は40億人、1日平均1,103万人(対前年度比0.9%減)である。1日平均輸送人員を事業別にみると、バスが327万人(対前年度比3.8%減)、都市高速鉄道が750万人(同0.4%増)、路面電車が15万人(同同数)、その他が11万人(同同数)となっている。

 公営交通が国内の旅客輸送機関に占める割合を輸送人員からみると、第102図のとおりであり、バスについては25.2%、地下鉄については56.9%となっている。

b 経営状況

(a) 法適用企業

(i) 損益収支

 法適用の交通事業の総収益は8,150億円[7,788億円]、総費用は8,905億円となっており、この結果、純損益は756億円の赤字[1,118億円の赤字]、総収支比率は91.5%[87.4%]となっている。また、経常収益は8,100億円[7,737億円]、経常費用は8,858億円となっており、この結果、経常損益は758億円の赤字[1,120億円の赤字]、経常収支比率は91.4%[87.4%]となっている。なお、純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第31表のとおりである。([ ]内は、平成15年度から都市高速鉄道事業における特例債元金償還金補助金の受入勘定を資本的収支勘定から収益的収支勘定に財務処理の変更を行った影響を除いた決算数値を示している。以下、交通事業の項において同じ。)

 累積欠損金は2兆3,245億円で、前年度と比べると13.6%減となっている。一方、不良債務は2,116億円で、前年度と比べると0.7%減となっている。

 これを事業別にみると、バス事業においては、料金収入の減少等により、経常損益は65億円の赤字となっている。また、累積欠損金は1,956億円で、前年度と比べると0.9%減となっており、不良債務は859億円で、前年度と比べると8.2%減となっている。なお、純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第32表のとおりである。

第102図 バス、地下鉄における公営交通事業の地位

第102図 バス、地下鉄における公営交通事業の地位

第31表 交通事業(法適用企業)の経営状況

第31表 交通事業(法適用企業)の経営状況

 都市高速鉄道事業においては、経常損益は678億円の赤字[1,040億円の赤字]となっている。また、累積欠損金は2兆832億円で、前年度と比べると15.1%減となっており、不良債務は925億円で、前年度と比べると1.4%増となっている。なお、純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第33表のとおりである。

(ii) 資本収支

 法適用の交通事業の資本的支出は5,830億円(うち都市高速鉄道事業5,329億円、バス事業451億円)で、前年度と比べると0.5%減となっている。これに対する財源は、外部資金が3,976億円[4,146億円]、内部資金が1,253億円で、財源不足額は601億円[431億円]となっている。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は2,735億円(うち都市高速鉄道事業2,530億円、バス事業183億円)で、前年度と比べると5.2%減、企業債償還金は2,736億円(うち都市高速鉄道事業2,502億円、バス事業208億円)で、前年度と比べると1.7%増となっている。

第32表 交通事業のうちバス事業の経営状況

第32表 交通事業のうちバス事業の経営状況

第33表 交通事業のうち都市高速鉄道事業の経営状況

第33表 交通事業のうち都市高速鉄道事業の経営状況

(b) 法非適用企業

 交通事業における法非適用企業は船舶運航事業の47事業で、実質収支をみると、黒字事業が42事業で4億円の黒字、赤字事業は5事業で3億円の赤字となっている。

(エ) 電気事業

a 事業数及び経営規模

 地方公共団体が経営する電気事業で、平成15年度決算対象となるものは、130事業であり、法適用企業が33事業、法非適用企業が97事業である。これを経営主体別にみると、都道府県営が33事業、指定都市営が13事業、市営が46事業、町村営が15事業、一部事務組合営が23事業となっている。施設数は492施設で、最大出力の合計は391万9千kW(建設中を含む。)、年間発電電力量は174億80百万kWh、年間売電電力量は142億20百万kWhとなっている。

 上記のうち稼働中の水力発電施設は295施設、ごみ発電施設は141施設、スーパーごみ発電施設は4施設、ごみ固形燃料発電施設2施設、風力発電施設29施設であり、自家消費部分を含む最大出力の合計は水力発電施設で255万kW、ごみ発電施設で107万kW、スーパーごみ発電施設で9万9千kW、ごみ固形燃料発電施設で18,590kW、風力発電施設で42,850kW、年間発電電力量は、水力発電施設で95億94百万kWh、ごみ発電施設で53億53百万kWh、スーパーごみ発電施設で5億21百万kWh、ごみ固形燃料発電施設で70,299千kWh、風力発電施設で61,063千kWh、年間売電電力量は、水力発電施設で95億2百万kWh、ごみ発電施設で23億32百万kWh、スーパーごみ発電施設で3億98百万kWh、ごみ固形燃料発電施設で48,507千kWh、風力発電施設で59,834千kWhとなっている。

b 経営状況

(a) 法適用企業

(i) 損益収支

 法適用の電気事業の総収益は930億円、総費用は841億円となっており、この結果、純損益は89億円の黒字、総収支比率は110.6%となっている。また、経常収益は929億円、経常費用は827億円となっており、この結果、経常損益は102億円の黒字、経常収支比率は112.4%となっている。また、累積欠損金は3億円となっており、不良債務を有する事業はない。なお、純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第34表のとおりである。

第34表 電気事業(法適用企業)の経営状況

第34表 電気事業(法適用企業)の経営状況

(ii) 資本収支

 資本的支出は462億円で、前年度と比べると13.6%増となっている。これに対する財源は、外部資金が77億円、内部資金が375億円で、財源不足額は10億円となっている。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は146億円で、前年度と比べると18.6%減、企業債償還金は141億円で、前年度と比べると3.7%増となっている。

(b) 法非適用企業

 電気事業における法非適用企業は、ごみ発電事業、スーパーごみ発電事業、風力発電事業、水力発電事業及びごみ固形燃料発電事業の97事業で、実質収支をみると97事業すべてにおいて黒字となっており、黒字額は17億円となっている。

(オ) ガス事業

a 事業数及び経営規模

 地方公共団体が経営するガス事業で、平成15年度決算対象となるものは、58事業である。これを経営主体別にみると、県営が1事業、大都市営が1事業、市営が27事業、町村営が26事業、企業団営が3事業となっている。公営ガス事業の供給戸数(契約数)は111万戸(前年度114万戸)で、供給区域内戸数に対する普及率は74.2%となっている。また、販売量は335億52百万MJで、前年度と比べると0.4%増となっている。

 ガス事業全体に占める公営ガス事業の割合をみると、事業数で25.3%、需要戸数で4.1%、販売量で2.8%となっている。なお、民間大手4社を除いた割合では、需要戸数で14.3%、販売量で13.2%となっている。

b 経営状況

(a) 損益収支

 ガス事業の総収益は967億円、総費用は965億円となっており、この結果、純損益は2億円の黒字、総収支比率は100.2%となっている。また、経常収益は958億円、経常費用は956億円となっており、この結果、経常損益は1億円の黒字、経常収支比率は100.1%となっている。なお、純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第35表のとおりである。

 累積欠損金は295億円で、前年度と比べると7.2%増となるとともに、不良債務は20億円生じている。

第35表 ガス事業の経営状況

第35表 ガス事業の経営状況

(b) 資本収支

 資本的支出は368億円で、前年度と比べると14.8%減となっている。これに対する財源は、外部資金が99億円、内部資金が269億円で、財源不足額は生じていない。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は173億円で、前年度と比べると12.9%減、企業債償還金は122億円で、前年度と比べると5.2%減となっている。

(カ) 病院事業

a 事業数及び経営規模

 地方公共団体が経営する病院事業(地方公営企業法を適用する病院事業数)で、平成15年度決算対象となるものは、754事業であり、これらの事業が有する病院(以下「自治体病院」という。)数は1,003病院(うち建設中3病院)である。これを経営主体別にみると、都道府県立が225病院(47都道府県)、大都市立が34病院(13大都市)、市立が288病院(265市)、町村立が317病院(316町村)及び一部事務組合等立が139病院(113組合)となっている。

 自治体病院のうち一般病院について病床数300床以上の大規模病院が占める割合を経営主体別にみると、都道府県立が51.1%、大都市立が63.6%、市立が51.4%とそれぞれ大きな割合を占めている。これら大規模病院は、地域における基幹病院、中核病院として高度の医療設備を備え、医療水準の向上等に重要な役割を果たしている。

 平成15年度末における病床数は23万8千床で、前年度と比べると0.6%減となり、入院、外来延患者数は2億人で、2.7%減となっている。

 また、病床利用率は81.9%(前年度82.5%)、外来入院患者比率(年延外来患者数を年延入院患者数で除したもの)は182.4%(前年度188.1%)となっている。なお、全国の病院に占める自治体病院の数及び病床数の推移は、第103図のとおりである。

第103図 全国の病院に占める自治体病院の地位

第103図 全国の病院に占める自治体病院の地位

b 経営状況

(a) 損益収支

 病院事業の総収益は4兆1,978億円、総費用は4兆2,991億円となっており、この結果、純損益は1,013億円の赤字、総収支比率は97.6%となっている。また、経常収益は、患者1人1日あたり料金収入の増加等から、前年度と比べると0.4%増の4兆1,843億円、経常費用は、薬品費や職員給与費が減少したことなどから、0.3%減の4兆2,775億円となっている。この結果、経常損益では932億円の赤字、経常収支比率は97.8%となっている。また、純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第36表のとおりである。

第36表 病院事業の経営状況

第36表 病院事業の経営状況

 累積欠損金は1兆6,190億円で、前年度と比べると7.1%増、不良債務は742億円で、前年度と比べると0.7%減となっている。

 なお、医業費用に対する医業収益の割合である医業収支比率は91.0%(前年度90.3%)となっており、これを病院の種別にみると、一般病院が91.7%(同91.0%)、結核病院が46.2%(同47.3%)、精神病院が66.0%(同65.8%)となっている。

(b) 資本収支

 資本的支出は6,569億円で、前年度と比べると6.7%減となっている。これに対する財源は、外部資金が4,783億円、内部資金が1,621億円で、財源不足額は165億円となっている。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は3,793億円で、前年度と比べると14.3%減、企業債償還金は2,197億円で、前年度と比べると6.3%増となっている。

(キ) 下水道事業

a 事業数及び経営規模

 地方公共団体が経営する下水道事業で、平成15年度決算対象となるものは、4,956事業(うち建設中483事業)であり、法適用企業が185事業、法非適用企業が4,771事業である。これを経営主体別にみると、都道府県営が82事業、大都市営が25事業、市営が1,256事業、町村営が3,533事業、一部事務組合等営が60事業となっている。

 下水道事業の平成15年度末における現在処理区域内人口は8,925万人、現在処理区域面積は277万haとなっている。また、年間総処理水量(雨水処理水量と汚水処理水量の合計。ただし、流域下水道分は流域関連公共下水道として水量を計上しているため除く。)は139億1百万m3で、前年度と比べると4.6%増となっている。

b 経営状況

(a) 法適用企業

(i) 損益収支

 法適用企業の下水道事業の総収益は1兆3,467億円、総費用は1兆3,134億円となっており、この結果、純損益は334億円の黒字、総収支比率は102.5%となっている。また、経常収益は、国庫(都道府県)補助金が減少したこと等から、前年度と比べると0.2%減の1兆3,425億円、経常費用は、職員給与費が減少したこと等から、0.6%減の1兆3,121億円となっている。この結果、経常損益は304億円の黒字、経常収支比率は102.3%となっている。なお、純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第37表のとおりである。

第37表 下水道事業(法適用企業)の経営状況

第37表 下水道事業(法適用企業)の経営状況

 累積欠損金は2,071億円で、前年度と比べると1.4%減となり、また、不良債務は283億円で、31.8%増となっている。

(ii) 資本収支

 法適用企業の下水道事業の資本的支出は1兆5,254億円で、前年度と比べると2.0%増となっている。これに対する財源は、外部資金が9,604億円、内部資金が5,227億円で、財源不足額は422億円となっている。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は7,884億円で、前年度と比べると7.0%減、企業債償還金は7,199億円で、前年度と比べると13.5%増となっている。

(b) 法非適用企業

 法非適用企業の下水道事業の総収益は1兆5,140億円で、前年度と比べると0.5%増となっている。その内訳をみると、他会計繰入金(雨水処理負担金を含む。)が6,407億円(総収益に占める割合42.3%)、料金収入が6,454億円(同42.6%)等となっている。一方、総費用は1兆3,745億円で、前年度と比べると1.7%減となっており、うち地方債利息が6,784億円(総費用に占める割合49.4%)となっている。

 資本的支出は3兆1,373億円で、前年度と比べると4.8%減となっている。その内訳をみると、建設改良費は2兆2,975億円で、前年度と比べると10.2%減、地方債償還金は8,243億円で、前年度と比べると14.0%増となっている。

 実質収支をみると、黒字事業が4,191事業で850億円の黒字、赤字事業が104事業で418億円の赤字となり、差引431億円の黒字となっている。

(c) 全体の経営状況

 法適用企業と法非適用企業を合計した下水道事業の総収益は、前年度と比べると0.3%増の2兆8,607億円、総費用は、前年度と比べると1.2%減の2兆6,879億円となっており、この結果、全体の収支(法適用企業の純損益と法非適用企業の実質収支の合計)は765億円の黒字となっている。これは、供用を開始した事業の増加により料金収入が増加しているほか、他会計の繰入れが行われていることによる。

 汚水処理費を年間有収水量で除して算出した汚水処理原価(特定公共下水道及び流域下水道を除く。)についてみると、法適用企業が151.67円/m3(維持管理費56.79円/m3、資本費94.88円/m3)、法非適用企業が269.05円/m3(維持管理費87.12円/m3、資本費181.93円/m3)、全体としては211.93円/m3(維持管理費72.36円/m3、資本費139.57円/m3)となっている。

 汚水処理原価と使用料単価(使用料収入を年間有収水量で除して算出したもの、特定公共下水道及び流域下水道を除く。)の関係をみると、法適用企業の使用料単価は133.56円/m3で、汚水処理原価の88.1%、法非適用企業の使用料単価は124.51円/m3で、汚水処理原価の46.3%、全体の使用料単価は128.92円/m3で、汚水処理原価の60.8%とそれぞれ低い水準となっている。このため、下水道事業の財政健全化のためにも今後使用料水準の適正化を図っていく必要がある。

(ク) その他の地方公営企業

a 事業数

 地方公共団体は、以上の事業のほかにも各種の事業を経営している。これを事業別にみると、平成15年度決算対象となるものは、港湾整備事業が119事業、市場事業が190事業、と畜場事業が83事業、観光施設事業が557事業、宅地造成事業が676事業、有料道路事業が5事業、駐車場整備事業が257事業、介護サービス事業が847事業及びその他事業が39事業(診療所、廃棄物等処理施設、自動車学校等)となっている。

b 経営状況

 その他の地方公営企業の純損益、経常損益、実質収支における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第38表のとおりである。

第38表 その他の地方公営企業の経営状況

第38表 その他の地方公営企業の経営状況

(2) 国民健康保険事業[第117表

 平成15年度末の国民健康保険事業の保険者は、3150団体(13大都市、35中核市、39特例市、601都市、2,436町村、23特別区、3一部事務組合)で、総保険者数は前年度末と比べると80団体減少となっている。また、直営診療所を設置している団体は570団体(5中核市、5特例市、65都市、492町村、3一部事務組合)で、前年度末と比べると6団体減少となっている。

 被保険者数は4,716万人であり、加入世帯数は2,443万世帯となっている。

 これらを前年度末と比べると、被保険者数は98万人増加、加入世帯数は71万世帯増加となっている。

 なお、昭和59年10月に創設された退職者医療制度の被保険者数及び被扶養者数は652万8千人で、前年度末と比べると71万2千人増加(12.3%増)となっている。

ア 事業勘定[第117表

(ア) 歳入

 保険税(料)を主な歳入としている事業勘定の歳入決算額は10兆5,046億円で、前年度と比べると9.4%増となっている。

 歳入の内訳をみると、第104図のとおりであり、国民健康保険税(料)及び国庫支出金の両者で歳入総額の67.4%を占め、前年度(70.7%)と同水準になっている。

 それぞれの決算額をみると、国民健康保険税(料)は3兆4,278億円で、前年度と比べると1.2%増となっているが、国庫支出金は3兆6,585億円で、7.7%増となっている。また、国庫支出金の主な内訳をみると、療養給付費等負担金が2兆8,388億円、財政調整交付金等が8,197億円で、それぞれ前年度と比べると5.8%増(前年度1.4%減)、14.9%増(同4.4%減)となっている。

第104図 国民健康保険事業の歳入決算の状況(事業勘定)

第104図 国民健康保険事業の歳入決算の状況(事業勘定)

 また、都道府県支出金は654億円で、前年度と比べると222.3%増(同10.9%減)となっている。

 さらに、他会計繰入金は1兆1,461億円で、前年度と比べると11.2%増(同4.7%増)となっている。

 この内訳をみると、財源補てん的な繰入金が3,612億円(0.8%増)、国民健康保険の財政基盤の安定を図るための保険基盤安定制度による繰入金が4,026億円(36.9%増)、高医療費基準超過額に係る繰入金が19億円(4.9%増)等となっている。

(イ) 歳出

 歳出決算額は10兆3,592億円で、前年度と比べると10.2%増(前年度0.0%減)となっている。

 歳出の内訳をみると、第105図のとおりであり、保険給付費は6兆3,149億円で、前年度と比べると17.7%増(同7.0%減)となっている。

 主な内訳をみると、療養諸費等が6兆1,283億円で、前年度と比べると18.1%増(同7.2%減)となるとともに、その他の給付費が1,639億円で、6.6%増(同0.2%増)となっている。

(ウ) 収支

 実質収支は1,434億円の黒字(前年度1,966億円の黒字)であり、昭和40年度以降黒字基調が続いている。しかし、実質収支から財源補てん的な他会計繰入金及び都道府県支出金を控除し、繰出金を加えた再差引収支については、2,604億円の赤字(前年度1,682億円の赤字)となっており、10年連続して赤字となっている。

 再差引収支を団体規模別にみると、大都市が1,896億円の赤字(前年度1,794億円の赤字)、中核市が425億円の赤字(同318億円の赤字)、特例市が315億円の赤字(同188億円の赤字)、都市が787億円の赤字(同501億円の赤字)となる一方、町村が777億円の黒字(同1,019億円の黒字)、一部事務組合が3億円の黒字(同4億円の黒字)、特別区が40億円の黒字(同97億円の黒字)となっており、大都市、中核市、特例市及び都市において赤字額が増加している。

第105図 国民健康保険事業の歳出決算の状況(事業勘定)

第105図 国民健康保険事業の歳出決算の状況(事業勘定)

 再差引収支を黒字・赤字の団体別にみると、黒字の団体数は前年度と比べると245団体減少の2,201団体で、その黒字額は340億円減少の1,585億円となっている。

 一方、赤字の団体数は949団体(前年度784団体)で、全団体に占める割合は30.1%となっており、その赤字額は、前年度と比べると582億円増加の4,189億円となっている。

 赤字の団体が占める割合を団体規模別にみると、大都市が100.0%、中核市が71.4%、特例市が87.2%、都市が50.6%、町村が23.1%となっており、大都市、中核市及び特例市においては、厳しい財政運営が続いている。

イ 直診勘定[第117表

 診療所等を設置し診療収入を主な歳入としている直診勘定の歳入決算額は834億円で、前年度と比べると1.9%減(前年度1.1%減)となっている。

 このうち、診療収入は553億円で、前年度と比べると3.0%減(同5.8%減)となっており、歳入総額に占める割合も前年度と比べて0.7%ポイント低下の66.3%となっている。一方、他会計繰入金は134億円で、前年度と比べると4.3%増(同4.0%増)となっており、歳入総額に占める割合も1.0%ポイント上昇の16.1%となっている。

 歳出決算額は817億円で、前年度と比べると2.0%減(同0.3%減)となっている。

 このうち、総務費は401億円(歳出総額に占める割合の49.1%)で、前年度と比べると2.6%減(前年度2.4%減)となっている。また、医業費は274億円(歳出総額に占める割合の33.5%)で、前年度と比べると3.2%減(前年度3.1%減)となっている。なお、医業費の診療収入に対する比率は前年度とほぼ同水準の49.5%となっている。

 実質収支は15億円の黒字(前年度12億円の黒字)となっているが、この実質収支から他会計繰入金を控除し、繰出金を加えた再差引収支は、115億円の赤字(同99億円の赤字)となっている。

(3) 介護保険事業[第119表

 平成12年4月から、介護が必要となる状態になっても能力に応じて自立した日常生活ができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づく介護保険制度が実施されている。

 介護保険制度を実施する保険者である市町村等が設ける介護保険事業会計は、第1号被保険者(65才以上の者)からの保険料や、第2号被保険者(40才以上65才未満の医療保険加入者)の介護納付金分に係る支払基金からの交付金である支払基金交付金等を財源として保険給付等を行う保険事業勘定と、介護給付の対象となる在宅サービス及び施設サービスを実施する介護サービス事業勘定とに区分される。

 なお、市町村等が実施する指定介護老人福祉施設、介護老人保健施設、老人短期入所施設、老人デイサービスセンター、指定訪問看護ステーションの5施設により介護サービスを提供する事業(地方自治法(昭和22年法律第67号)第244条の2第4項の規定に基づき利用料金制をとるものは除く。)は介護サービス事業として公営企業会計の対象とされている。

 平成15年度末の介護保険事業の保険者は、2,734団体(13大都市、35中核市、39特例市、551都市、2,004町村、23特別区、69一部事務組合等)となっている。また、介護サービス事業勘定を設置している団体は535団体(6大都市、9中核市、10特例市、79都市、406町村、20特別区、5一部事務組合等)となっている。

 ア 保険事業勘定[第119表

(ア) 歳入

 保険事業勘定の歳入決算額は5兆5,196億円となっている。

 歳入の内訳をみると、第106図のとおりである。それぞれの決算額をみると、第1号被保険者が支払う保険料が9,393億円、介護給付費負担金(介護給付及び予防給付に要する費用の額(以下「介護・予防給付額」という。)の100分の20に相当する額)、調整交付金(介護・予防給付額の100分の5に相当する額)等の国庫支出金が1兆3,467億円、支払基金交付金(第2号被保険者の介護給付金分に係る社会保険診療報酬支払基金からの交付金)が1兆6,467億円、都道府県の法定負担(介護・予防給付額の100分の12.5に相当する額)を含む都道府県支出金が6,449億円、市町村の法定負担分(介護・予防給付額の100分の12.5に相当する額)を含む他会計繰入金が8,368億円、介護保険制度の円滑な導入のために設置された基金等の取崩し額である基金繰入金が273億円等となっている。

(イ) 歳出

 歳出決算額は5兆4,396億円となっている。

 歳出の内訳をみると、第107図のとおりであり、保険給付費は5兆1,109億円で、歳出総額の94.0%を占めている。

 その他は、総務費が2,210億円、基金積立金537億円、介護保険財政の安定化を図るため都道府県が設置する基金へ保険者が毎年度拠出する財政安定化基金拠出金54億円等となっている。

(ウ) 収支

 実質収支は777億円の黒字となっており、実質収支から財源補てん的な他会計繰入金及び都道府県支出金を控除し、繰出金を加えた再差引収支についても、672億円の黒字となっている。

 再差引収支を黒字・赤字の団体別にみると、黒字の団体数は2,526団体で、全団体に占める割合は92.4%となっており、その黒字額は770億円となっている。

第106図 介護保険事業の歳入決算の状況(保険事業勘定)

第106図 介護保険事業の歳入決算の状況(保険事業勘定)

第107図 介護保険事業の歳出決算の状況(保険事業勘定)

第107図 介護保険事業の歳出決算の状況(保険事業勘定)

 一方、赤字の団体数は208団体で、全団体に占める割合は7.6%となっており、その赤字額は99億円となっている。

イ 介護サービス事業勘定[第119表

 介護サービス事業勘定の歳入決算額は425億円となっている。このうち、利用者の支払う自己負担金を含むサービス収入は116億円で、歳入総額に占める割合は27.3%となっている。

 普通会計等からの繰入金は249億円で、歳入総額に占める割合は58.5%となっており、このうち、普通会計からのものが247億円となっている。

 また、地方債は31億円で、歳入総額に占める割合は7.3%となっている。

 歳出決算額は421億円となっている。このうち、施設整備費は77億円で、歳出総額に占める割合は18.2%となっている。

 また、サービス事業費は、126億円で、歳出総額に占める割合は30.0%となっている。

 なお、実質収支は4億円の黒字となっている。

(4) その他の事業

ア 収益事業[第120表

 収益事業を実施した地方公共団体の数は延べ388団体で、前年度と比べると17団体減少となっている。

 これを事業別にみると、公営競技についてはモーターボート競走事業を施行した団体が173団体と最も多く、以下、自転車競走事業87団体、競馬事業60団体、小型自動車競走事業8団体の順となっている。

 また、宝くじは、47都道府県及び13大都市の60団体で発行されている。これらを団体種類別にみると、都道府県においては延べ73団体、市町村においては延べ315団体が収益事業を実施している。

(ア) 経営状況

 決算額は、歳入3兆6,203億円、歳出3兆6,333億円となっている。これを前年度と比べると歳入は6.9%減、歳出は6.5%減となっている。

 実質上の収支(歳入歳出差引額から翌年度に繰り越すべき財源、他会計からの繰入金、過去の収益を積み立てた基金からの繰入金及び未払金を控除し、他会計への繰出金及び未収金を加えた額)は4,231億円(前年度4,640億円、ただし、平成14年度は未払金及び未収金を差し引く前の額)の黒字となっている。

 普通会計等への収益金の繰出しについて、事業別にみると、競馬事業が15億円(前年度16億円)、自転車競走事業が72億円(同111億円)、小型自動車競走事業が6億円(同7億円)、モーターボート競走事業が133億円(同169億円)、宝くじ事業が4,500億円(同4,565億円)となっている。

(イ) 収益金の使途状況

 収益金の大部分は普通会計等に繰り入れられ、道路、教育施設、社会福祉施設等の整備事業などの財源として活用されている。その繰入額は4,726億円で、前年度と比べると2.9%減(前年度0.9%増)となっている。

 収益金繰入額の使途状況を目的別にみると、土木費が1,875億円で最も大きな割合(収益金繰入額に占める割合の39.7%)を占め、教育費の689億円(同14.6%)がこれに次いでおり、この両者で繰入総額の54.3%を占めている。

 このほか、民生費が358億円(同7.6%)、衛生費が198億円(同4.2%)、農林水産業費が98億円(同2.1%)等となっている。

イ 共済事業

(ア) 農業共済事業[第122表

 農業共済事業を実施した市町村の数は87団体で、前年度と比べると13団体減少となっている。

 農業共済事業会計の決算額は歳入250億円、歳出236億円で、前年度と比べると歳入5.0%減(前年度6.4%減)、歳出0.3%増(同6.9%減)となっている。

 なお、実質上の収支(歳入歳出差引額から支払準備金積立額、責任準備金積立額、繰入金及び未払金を控除し、繰出金及び未収金を加えた額)は、7億円の赤字(同5億円の黒字)となっている。

(イ) 交通災害共済事業[第123表

 直営方式により交通災害共済事業を実施した地方公共団体は189団体(2県、130市町村、57一部事務組合)で、前年度と比べると8団体減少となっている。

 また、加入者は平成15年度末で2,279万人(前年度末2,446万人)となっている。

 交通災害共済事業会計の決算額は歳入156億円、歳出130億円で、前年度と比べると歳入15.4%減(前年度0.7%増)、歳出16.3%減(同1.2%減)となっている。

 なお、実質上の収支(歳入歳出差引額から未経過共済掛金、繰入金及び未払金を控除し、繰出金及び未収金を加えた額)は10億円の黒字(同9億円の黒字)となっている。

ウ その他

(ア) 老人保健医療事業[第118表

 老人保健医療事業会計の決算額は、歳入10兆8,400億円、歳出10兆7,948億円であり、歳入においては、医療費交付金等が、歳出においては、医療費等がそれぞれ減少したことから、前年度と比べると歳入0.8%減(前年度0.4%減)、歳出0.7%減(同0.4%減)となっている。

 医療給付費等は10兆3,965億円で、歳出総額の96.3%を占めている。

 実質収支は441億円の黒字(同505億円の黒字)となっている。

(イ) 公立大学附属病院事業[第121表

 公立大学附属病院事業会計の決算額は、収益的収支では総収益1,821億円、総費用1,814億円で、前年度と比べると総収益1.8%増(前年度2.1%減)、総費用1.5%増(同1.9%減)となっている。

 また、資本的収支では資本的収入528億円、資本的支出553億円で、前年度と比べると、資本的収入19.2%増(同34.5%増)、資本的支出21.6%増(同33.2%増)となっている。

 実質収支は2億円の黒字(同16億円の黒字)となっている。


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