(産業競争力低下の原因)
日本の経済社会は今、大きな転換点にある。産業競争力は、90年代初と比べて大幅に低下した。その原因は、経営力の面での効率性や透明性が低いこと、基礎的科学技術の研究・開発の成果が産業化に結び付いていないこと、平等主義、年功序列といった硬直的な仕組みや慣習の中で個性や能力のある人材を十分に活かしきれていないことにある。
一方で、新たな需要を創造する力も低下しており、消費者の国民生活に対する満足度も低い。また、国の過度な関与と地方の個性の喪失の中で、地域の活力も失われつつある。
グローバル化への対応も遅れている。ITの著しい進歩とアジア諸国の発展は日本経済をとりまく環境をも大きく変えた。ITの進歩は、企業経営を含む社会経済活動のあり方を大きく変革させるだけでなく、世界的なレベルで競争力の地殻変動を生み出している。つい昨日まで日本でつくられていたモノが中国をはじめとするアジアの国々にその産業立地を移しつつある。
21世紀の新しいフロンティアの拡大と生産資源のダイナミックな再配分を通じた産業競争力の再構築なしには、豊かな国民生活を維持することはできない。
(経済活性化に向けて取るべき戦略)
問題を抱えながらも日本経済の潜在的な力量は依然として高い。高度成長を生み出した日本人経営者の勇敢な行動と決断、傾斜生産方式にみられる選択と集中、品質と消費者志向を誇る日本の技術力といった特質を活かせば日本は必ず甦る。既に企業活動の面では、大胆な事業・企業組織の再編、産学官での連携など新たな動きが現れ始めており、国民生活の面でも、医療・社会福祉、教育の分野でも利用者の選択肢の幅が拡がりつつある。
薄明かりが見えつつある新世紀への突破口を、今着手している構造改革を徹底化・迅速化することにより、大きく広げなければならない。特に人間力を高め、一人一人の能力が十分に発揮されることが重要である。また、新しい技術と潜在的需要(ウォンツ)の出会いを促進し、政策資源のダイナミックな再配分を国民経済レベルで行い、持続的な経済成長を生み出す。日本社会の再設計(ソーシャル・リエンジニアリング)としての「構造改革」の意義はここにある。
その際、第1に、「民間ができることは、できるだけ民間に委ねる」との原則の下に、民営化や規制改革を通じて、経済活動の主体を「官」から「民」へ移し、民業を拡大する。第2に、政府の役割を、市場活動を邪魔しないよう裁量型から事後監視型に変える。その際、司法制度改革を総合的かつ集中的に推進し、社会的インフラとしての司法機能を充実・強化する。一方で、政府は、地球規模の環境問題への対応や技術基盤の強化など「市場の失敗」を補完する必要がある。グローバル化した世界経済の中で、企業活動にとっていかに魅力ある環境を整備できるか、この点で政府もまた企業と並んで国際競争にさらされているといえる。第3に、消費者・利用者を起点とした多様な選択肢のある経済社会を構築することである。このためには、市場競争を促進するとともに、消費者・利用者が適切な選択を行えるよう、情報と評価を公開する。第4に、グローバル化の流れの中で活力を取り込むため、FTAを推進するなど、多くの国・地域との経済連携を深める。
産業競争力を再構築し、もって経済を活性化する戦略として、具体的には人間力、技術力、経営力、産業発掘、地域力、グローバル化といった6つの重点課題に着目し、日本の強みを伸ばし、弱みを克服するための戦略を構築する。人間力、技術力、経営力は、産業競争力を強化し、供給力を強化する「成長」戦略である。産業発掘、地域力、グローバル化は、市場を開拓し、我が国の豊富な貯蓄を投資と消費の好循環に向ける「市場創造」戦略である。これら6つの戦略の下で具体的な30のアクションプログラムを実施し、経済を活性化する。
その際、(1)技術と市場の好循環、(2)製造業とサービス業の好循環、(3)日本とアジアの好循環、という「3つの好循環」を梃子に、相乗的かつ加速的に経済活性化を達成していくことが重要である。
(日本の経済社会の何が変わるか)
経済活性化戦略により日本の経済社会はどのように変わるのか。経済活性化により、豊かな自然環境、医療・介護サービス、子育て支援、安全・安心で美しい街並みや高品質な住宅、多様な情報・知識の入手など消費者の潜在需要を実現する財・サービスが新事業として発展していく。こうした新事業が次々と誕生する中で、企業の競争力が市場での成否を左右する。企業はワンセット主義から、選択と集中による企業戦略に転換する。経営者も年功序列の閉じた会社組織の中で選ばれるのではなく、外部評価などを通じて選ばれるようになる。
大学教員は、競争的環境の下で研究費を獲得し、経済社会との連携を深める。教育でも、年齢のみを基準とするのではなく、能力や個性に応じた多様な選択肢が拡がる。結果の平等主義から機会の平等が実現され、一人一人が何度も挑戦できる仕組みとなる。
空洞化への懸念に対しては、産業の保護ではなく国際競争の中で企業努力によってグローバル化をチャンスに変える。地方レベルでは、地域の特性を伸ばして産業の裾野を広げていく。
我々は時代の流れ、世界経済の変化を機敏にとらえ、以下に掲げるような具体的な経済活性化戦略を迅速かつ徹底して実行し、次の世代にも残せる豊かな経済社会を築いていかなければならない。
経済成長も、社会の安定も結局は「人」に依存する。能力と個性を磨き、人と人の交流・連携の中で相互に啓発されることを通じて、一人一人の持つ人間力が伸び伸びと発揮され、活力あふれる日本が再生する。人間力向上のために、一人一人の基礎的能力を引き上げるとともに、世界に誇る専門性、多様性ある人材を育成し、国としての知識創造力を向上させる。また、職場、地域社会等での交流や対話を深め、人を育む豊かな社会を構築する。
(大学改革)
「知」の世紀をリードする大学の教育研究機能を高度化するため、国公私立を通じた大学改革を推進する。国立大学を早期に非公務員型法人に移行させるとともに、大学や教員・事務職員等を競争的環境に置き、能力主義を徹底し、大学の国際競争力、教育研究能力を高める。
・文部科学省は国立大学の法人化と教員・事務職員等の非公務員化を平成16年度を目途に開始する。
・文部科学省は国立大学の法人化を待たず、平成15年度より、大学・大学院、学部・学科の設置規制を柔軟化し、教育機関間の競争を活性化する。
・文部科学省は、国立大学の法人化後の大学・事務局運営における関与を極力行わない。
・国立大学の法人化後の大学運営について、複数の民間機関等により評価を実施する。
・文部科学省は平成14年度から、大学事務局幹部職員を含め、経営専門家等民間からの採用、大学事務の外部発注を促進する。
・文部科学省は、国立大学の法人化を待たず、平成15年度から、弾力的な勤務形態(例えば週20時間勤務)による教官の任用を進め、兼業・起業を促進する。
・文部科学省は、研究は競争的環境を原則として、強化する。教育については、適正な受益者負担を求めつつ、大学への補助を一層重点的・競争的なものとするとともに、奨学金を充実する。
(時代の要請する人材育成)
科学技術の進展や経済社会システムの変革に応じて必要となる人材の育成が急務である。
・関係府省は、ITやライフサイエンス等、高度な知識を要する分野での人材供給を平成14年度から強化することを通じて新分野人材育成を倍増する。
・文部科学省は、教員人事の流動性・多様性を高めるため、国立大学の法人化後の各大学において、公開公募制・任期制の積極的導入や他大学出身者・経験者の登用などについて、具体的目標を定め推進する。
・文部科学省、司法制度改革推進本部は、経営、法律、技術経営等の実務に携わる高度専門職業人養成を行う法科大学院などの専門職大学院(仮称)について平成16年度までに学生受入れに向けて制度を整備する。また、大学、大学院、専修学校等における実践的な職業教育を行うなど社会人の再教育等に柔軟に応える機能(いわゆるコミュニティ・カレッジ)を強化する。
・関係府省は、平成14年度から、旧国立研究所など公務員型独立行政法人について、その業務の内容により非公務員型独立行政法人化を進める。
・文部科学省は、外国の高等教育機関の対日進出を促す環境整備をする。
(個性ある人間教育)
学校や教員の個性と競争を通じて、基礎学力の維持・向上を図るとともに、地域や現場の判断により、個性や創造性の涵養を図る。また家庭や地域が教育の現場として果たす役割も大きい。
・文部科学省は、義務教育における学校選択制度を推進するとともに、平成14年度からコミュニティ・スクールの導入に向けた実践研究を推進する。
・文部科学省は、IT国民皆教育戦略として、義務教育におけるITを活用した情報教育を平成14年度から推進する。また総務省及び文部科学省は、平成17年度までに公立小中高等学校等の全教室がインターネットに接続できるようにするなど、学校のIT環境の整備を進める。
・文部科学省は、総務省、経済産業省と協力し、ネットワークを活用した教育用コンテンツの開発・充実、流通促進を通じ、教育の多様化・活性化を図る。
・文部科学省は、確かな学力を育成するため、平成14年度から習熟度別少人数指導、学力向上フロンティア事業、科学技術・理科大好きプランによる理科教育の充実等を推進する。また、社会人の活用等による心の教育の充実、家庭の教育力の向上等を推進する。
・文部科学省は、「英語が使える日本人」の育成を目指し、平成14年度中に英語教育の改善のための行動計画をとりまとめる。平成15年度から外国人の優秀な外国語指導助手の正規教員等への採用を促進する。
・文部科学省は、早期に新たな教員評価制度の導入を促進する。また、教員の一律処遇から、やる気と能力に応じた処遇をするシステムに転換する。
・文部科学省は、関係府省と連携し、平成14年度から学校内外を通じた奉仕活動・体験活動等を推進するための協議会等を整備するとともに、これらの活動を学校において単位認定する等の取組みを奨励する。
(高齢者、女性、若者等が、ともに社会を支える制度の整備)
能力に応じた賃金・就業体系の導入、NPOの役割の拡大等働き方を多様化・弾力化し、生涯現役でいられる社会の仕組みに変える。男女共同参画社会を構築し、女性が働くことが不利にならない制度設計にする。さらに、青少年期からの人間力の涵養のため、早い時期からの職業体験機会の充実等を図ること等を通じ、若年者雇用対策に万全を期する。
・厚生労働省は、有期労働契約や裁量労働制の見直し、派遣労働法制における対象範囲拡大、募集・採用における年齢制限廃止努力の徹底、有料職業紹介の規制緩和等労働制度を引き続き見直す。また、解雇の基準やルールについて、立法で明示することを検討する。
・厚生労働省は、雇用保険3事業について、平成15年度から、雇入助成の縮減、雇用維持支援から労働移動・能力開発支援への重点化等により、抜本的合理化を図る。
・厚生労働省は、年金をはじめとする社会保障制度について、持続可能で公平な制度の構築に向け、給付と負担のあり方等を抜本的に見直すほか、年金のポータブル化の拡充、短時間労働者に対する社会保険の適用拡大、第3号被保険者制度のあり方について見直す。
・厚生労働省は、平成14年度から、「働らコール」事業(全国の就職支援機関についての情報を提供する電話サービス)への支援、「ハローワーク・インターネットサービス」への求人企業名の掲載等を通じて就労等に関する多面的情報提供を充実する。
・厚生労働省は、民間活用によるキャリアカウンセリングを促進する。
・NPO活動促進のための、現行NPO税制の認定要件の見直しを検討する。
・厚生労働省、農林水産省、環境省及び関係府省は、若年者トライアル雇用、インターンシップ、「緑の雇用」の活用などによる職業体験機会の充実等を通じて、青少年等の職業理解を促進し、職業意識を醸成させる。
・厚生労働省、文部科学省は、若年者雇用を促進するため、学校と職業安定機関が緊密に連携しつつ、学校における就職支援体制の強化を図るとともに、不安定就労若年者等に対する効果的なカウンセリングの実施や職業訓練の一層の推進を図る。
・厚生労働省、関係府省は、長期連続休暇制度の導入促進に努める。
(健康寿命の増進)
長寿社会は、単に長寿であるというだけでなく、社会の支え手として元気に働き、生活を享受することができる期間が長いという健康寿命の増進が重要である。
・厚生労働省、経済産業省は、平成14年度から、ITの活用による医療・健康情報の提供や健康づくり支援産業育成のための環境整備をする。
・厚生労働省は、平成14年度から「21世紀における国民健康づくり運動」を一層推進する。
・関係府省は、健康に対する食の重要性に鑑み、いわゆる「食育」を充実する。
・関係府省は、平成15年度から健康寿命の増進のための医療、健康、バイオテクノロジーの科学技術予算等の重点化を図る。
(挑戦者支援)
結果の平等主義から脱却し、男女ともに新たな挑戦や再挑戦がしやすい社会を構築するとともに、努力が報われるような仕組みを構築する。また、国民が世界の中で活躍する。
・文部科学省は、社会人を含む学生への奨学金を重視する。厚生労働省は、職業訓練については民間を活用するとともに、個人の能力開発については給付の重点化、貸付の積極的な活用により意欲の高い個人を対象とした効果的・効率的な支援制度とする。
・男女共同参画会議は、女性の個性や能力が活用されるようなチャレンジ支援策を平成14年度中にとりまとめ、企業等における女性の能力発揮のための積極的取組みの推進等を図る。
・経済産業省は、関係府省と協力して、平成14年度に、挑戦することの社会的認知向上のための企業改革賞等を創設する。
・関係府省は、平成14年度から、障害者等がそれぞれの能力を発揮して然るべき報酬がもらえる仕組みの検討、使いやすい情報通信機器・サービスの開発・普及などによる情報バリアフリー環境の整備、電子政府の構築等の面で政府が障害者をパイロット的に雇用する事業の創設等、障害者の自立を支援する政策を具体化する。
・総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省は連携して、平成14年度から、情報通信環境の高度化、地域コミュニティ形成、ビジネス環境整備、就業条件の確保等を通じて、テレワーク・SOHOなど多様な働き方を支援する。
・厚生労働省は、企業による離職者の再就職援助システム(企業の再就職あっせんや教育訓練に対する支援)や官民による労働力需給調整機能の強化など、離職者の再就職インフラを強化する。
ナノテクノロジー、IT、バイオテクノロジー、環境をはじめとする先端分野で欧米と伍して競争できる技術基盤を強化・保護し、「世界の第1走者」たり続けることを目指す。民間主導の原則を踏まえ、民間活力を引き出すために、政府は、府省間の非効率や重複を排除しつつ、技術基盤の強化、制度の見直し等で重要な役割を担う。
(戦略分野への選択と集中)
重点分野ごとの割合が固定化するといったことがないよう、既存プロジェクトの見直しを進め、科学技術予算について、技術の革新性、産業への波及性と発展性、事業実施可能性(民間資金の有無等)を踏まえた戦略により、資源配分する。また、研究開発等にかかる制度整備を図る。
・総合科学技術会議は、「平成15年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針」においてライフサイエンス等の重点4分野へのメリハリのある重点化を図る。
・総合科学技術会議は、関係府省と協力して、基礎研究を重視するとともに、科学研究費補助金等の競争的資金の割合を拡大する。また、競争的資金の成果について厳正な評価を行うなど、制度改革を推進する。
・関係府省は、財務省との協議の上で、平成15年度から科学研究費補助金等の研究開発資金を年度を越える個別の研究開発の進捗に合わせて柔軟に執行できるよう対応する。
・試験研究税制、IT・環境投資促進税制措置の見直しを検討する。
(新しい産学官連携の推進)
総合科学技術会議の定めた方針等を踏まえ、組織的な産学官の新しい連携を推進する。連携は大学と企業の相互作用であり、双方向的に実施する。
・文部科学省は、平成14年度中に、研究成果物、知的財産権等の取扱いについて、産学官連携における大学のルールを整備する。
・経済産業省は、平成14年度中に国有特許を民間へ譲渡する場合の価格決定ルールを設定する。また、平成14年度中に産業活力再生特別措置法に基づく委託研究先への特許権の帰属について、原則、関係府省全研究委託費への拡大を図る。
・文部科学省、経済産業省及び関係府省は、事業化支援や起業家育成(インキュベーション)事業の充実等により「大学発ベンチャー1000社計画」を推進する(平成14年度以降3カ年)。
・文部科学省、経済産業省は、平成14年度以降も引き続き、民間人の大学への登用、産学におけるワンストップ窓口の整備など、大学等における連携推進体制を構築する。
・文部科学省、厚生労働省は、基礎研究の臨床への橋渡し研究の拡充や実験成果の共有等の内容を含む全国治験活性化3ヶ年計画を平成14年度中に策定し、産学官連携を推進するための基盤を整備する。
(産業化支援)
国家プロジェクト、政府調達等を通じて、「実用化段階」の研究開発に対して、リスク負担を軽減する。
・総合科学技術会議は、関係府省と協力し、高信頼ソフトウェア基盤開発プログラム、次世代半導体技術等次代の産業基盤を構築するプロジェクトベースの研究開発を推進する。
・総合科学技術会議、関係府省が協力して、半導体微細加工技術、燃料電池やマイクロ電池、超微細製造技術、光技術等ナノテク、ITなどを応用した基盤的技術の開発や普及を産学官で重点的に推進する。
・内閣府は、平成14年度、潜在性のある科学技術を軸にした技術革新やビジネスモデルが拓く新しい産業の可能性や将来性を検討する「動け!日本」緊急産学官プロジェクトを推進する。
・経済産業省は、平成15年度から、中小企業技術革新制度(SBIR)について、関係府省による一層積極的な活用を促すため、統一運用の策定等を行うとともに、同制度を通じて開発された製品の利用促進を図るため、関連情報の提供を一層充実させる。
・文部科学省、経済産業省は平成14年度から、大学発ベンチャーの育成、公設試験機関や企業の有する基礎研究の実用化等の観点から、マッチング事業等を推進する。
(産業力強化のためのIT化推進)
欧米の後追いを続けるだけでは、産業競争力は強くならない。IT戦略本部が取りまとめた「e−Japan重点計画−2002」に基づきIT政策を推進する。また、日本の特徴を生かした移動型(モバイル)、どこでも型(ユビキタス)のIT社会を構築する。
・総務省及び関係府省は、平成17年度までに世界最高水準の高度情報通信ネットワークを形成し、安全性・信頼性を確保する。
・総務省及び関係府省は、第4世代移動通信システムなど、どこでも型、移動型の次世代ITの産学官研究開発を推進する。
・経済産業省は、平成15年度中に中小企業のおおむね半数程度がインターネットを活用して電子商取引等を実施できるようになるとの目標のもと、「中小企業IT化推進計画」を着実に実施するとともに、製造・配送・販売三層全体での経営の最適化を推進し、企業連携の革新を促進する。
・経済産業省は、平成14年度から高度IT人材育成のため、IT技能に関する標準を整備するとともに、経営とITの双方に通じ、経営者の立場に立って経営戦略を支援できる人材(ITコーディネーター)を引き続き育成する。
・IT投資促進税制措置の見直しを検討する。
(知的財産権の保護・活用)
我が国の国際競争力を強化し、経済を活性化していくために、知的財産戦略会議が取りまとめる知的財産戦略大綱に基づき、平成17年度までに、関係府省は、迅速かつ的確な特許審査や司法制度のあり方、知的財産の創造・流通・活用の促進、知的財産権侵害品に対する国境措置の強化等の課題について、集中的・計画的に取り組む。
東アジア諸国の産業競争力が向上する中で、これまでの製造業の強みを活かしながら、スリムな経営体質に変え、競争力のある分野を選択し、資源を集中する。特に、企業の浮沈は経営者の能力次第で決まる。経営者には高い経営能力や倫理観、企業文化の構築が求められる。
政府は、起業や企業経営の刷新を図る制度整備やリスクマネー供給の円滑化をはじめとする市場環境整備を迅速に行う。一方、民間金融機関においては、プロジェクト・ファイナンス、債権流動化等、リスク管理手法の多様化に取り組む。
(起業の促進・廃業における障害の除去)
起業に伴うハードルとリスクを低くし、起業活動を活性化することにより、経済の新陳代謝を活発にする。
・法務省において、債務不履行の場合の取立て範囲について、検討、見直しを進めるとともに、関係府省において、起業の促進・廃業における障害の除去という目的実現の観点から個人保証のあり方の検討、見直しを進める。
・法務省、経済産業省は、平成14年度から、起業コストの見直しの観点に基づき、一定の要件を満たした会社の設立について最低資本金制度の特例を設けるなど会社設立や事業再編の際のコストや手続きを見直す。
・総務省、経済産業省、国土交通省は、協力して、平成14年度から、全国規模での創業・起業のため、経営、技術、法律等の専門知識、行政関連情報等がインターネットの活用によりワンストップで提供されるとともに、企業相互の情報交流を促進する情報サイト等の拡充・創設を図る。また、経済産業省は、平成15年度から、創業・ベンチャー及び中小企業のニーズに合わせ、大企業や国の研究機関OB等の高度人材が有する経営ノウハウ・技術をマッチングさせる仕組みを検討する。
・経済産業省は、企業組合を創業に活用しやすい制度とするための組合員や組合事業に関する要件を平成14年度から見直す。
・関係府省は、平成14年度から、サービスフランチャイズシステムにかかる環境を整備する。
・民間投資家に係る創業支援制度の整備を行う。
(企業・産業の再編、経営のあり方)
環境変化や製造や製品の特性に応じて、企業再編、海外生産、ダウンサイジング等経営体制のあり方を変えていく必要がある。
・経済産業省は、企業の壁を越えた大胆な事業再編や産業再編を促進するために、産業活力再生特別措置法を平成14年度中に抜本強化に向けて見直す。その際、あわせて時限的に設備廃棄・雇用調整等の円滑化、企業組織再編の円滑化、分離独立による再生等を通じた産業再編の促進を図る。
・金融庁は、今後の我が国金融システムをより強固なものとするため、主として地域金融機関を念頭において、合併等を促進する施策を早急に取りまとめ、これにより、収益性の改善等による経営基盤の一層の強化及び中小企業金融の円滑化を図る。
・金融庁は、平成14年度、取引所等を通じ証券市場の退出基準を厳格化する。
・法務省は、平成15年中に破産法、平成14年中に会社更生法等の倒産法制を見直す。
・関係府省は、中堅企業等の徹底した経営改革を推進するため、事業再生を進める融資制度を整備する。
・公正取引委員会は、グローバル競争の視点を踏まえて、企業結合審査を一層、迅速化し明確化する。
・公正取引委員会は、新たな環境変化に対応し、平成14年度から、知的財産権、電子商取引等に関する独占禁止法上の考え方の明確化を一層進める。
・内閣官房は、平成14年中に事業活動の電子化を妨げる規制について総点検を行う。
・経済産業研究所は、平成14年度に「失われた10年」の間でも成功した日本企業の要因を明らかにする「動け!日本」日本の優秀企業研究により、競争力の低下している企業に今後の企業経営のヒントを与える。
・連結税制を整備する。
・企業や業界が消費者への対応等にかかる自主行動基準を策定し、遵守していくよう、内閣府は、関係各省と協力し、自主行動基準の指針の策定、第3者の評価組織の育成、企業、業界及び消費者への普及・啓発活動等を平成14年度から推進する。
(中小企業の革新と再生)
創造力、柔軟性、意欲に富んだ中小企業の新事業への挑戦や事業再生を積極的に支援する。
・経済産業省は、平成14年度から、売掛債権担保等保証の推進、中小企業信用リスク情報データベース(CRD)の活用、中小企業金融におけるミドルリスクマネー供給の円滑化等により資金供給を多様化する。
・経済産業省は、平成14年度から、政府系研究所と中小企業との連携強化等を推進することにより、新分野に挑戦する中小企業の戦略的技術開発を支援する。
・経済産業省は、平成14年度から、経営自己診断システムや経営相談等により、事業再構築、事業売却、廃業等の見極めを早期に行い、円滑に進めるための環境を整備する。
・経済産業省は、平成14年度から、創造力や意欲に富んだ中小企業の事業再生を促進するため、円滑な資金供給等のセーフティーネットを確保する。
(直接金融市場の整備)
企業活動における変革を支え、起業・創業を活発化させるためには、リスクマネーを供給する直接金融市場の活性化が不可欠である。また、直接金融市場を通じた投資家のガバナンスが、優れた経営者を選ぶ力となり、企業の経営刷新力を拡大する。
・公的金融を見直す。
・金融庁は、四半期開示に向けた取組みを強化するとの観点から、取引所等に対し、その進め方等を明らかにする行動計画の策定を、6月中に要請する。
・金融庁は、株式投資単位の引下げについて取引所等を通じ企業側に一層の推進努力を求める。
・金融庁は、平成15年度から、株式公開前の資金調達円滑化のため、適格機関投資家の範囲の拡大等を行うことにより、私募市場を活性化する。
・金融資産課税の見直しを検討する。
(規制改革や政府活動の効率化を通じた高コスト構造の是正)
我が国の産業の競争力を高めるため、運輸、流通、エネルギー、IT分野等の規制改革等を通じて競争環境を整備する。
・経済産業省は、引き続き電力・ガスの公正かつ透明性の高い供給システムを実現するため、小売の自由化範囲の拡大などの規制改革の徹底を図る。また、経済産業省及び公正取引委員会は引き続き協力して公正な競争環境の整備を図る。
・関係府省は、平成14年度、電力会社、鉄道事業者、国、地方自治体が保有する未利用光ファイバーの一層の開放を促し、より自由な設備やサービスの提供を行えるよう環境整備をする。
・総務省は、電気通信事業者の多様な事業展開を促すため、電気通信事業法における一種・二種の事業区分を廃止する等競争の枠組みについて見直し、平成14年度中に結論を得る。
・関係府省は、主要港湾における24時間フルオープン化の早期実現に向け行政を含めた関係者の取組みを平成14年度より、一層促進するとともに、港湾物流の迅速化等についても引き続き推進する。
・関係府省は、上下水道業務の民間委託、公営ガスの民営化を推進する。また、ケアハウス、保育所及び学校等にPFIを活用する。
豊かな自然環境、医療・介護サービス、子育て支援、街並みや高品質な住宅など国民の潜在的需要に応えることで需要創造型の生活産業を創出する。その際、21世紀の生活を革新する技術、新サービス、文化や娯楽などが梃子になる。
(技術革新が拓く21世紀の新たな需要)
・関係本部・会議及び府省は、環境・エネルギー(省エネ総合サービスの抜本的普及、燃料電池等の環境配慮型技術・製品の普及、リサイクルの一層の促進等)、情報家電・ブロードバンド・IT、健康・バイオテクノロジー、ナノテクノロジー・材料の4分野の技術開発、知的財産・標準化、市場化等を内容とする戦略を平成14年に策定し、内閣官房がこれをとりまとめる。
・総務省、関係府省は、情報開示の推進等を含め電子政府・電子自治体を推進し、原則すべての国民との間の手続きの電子化を平成15年度中に実施する。また、関係府省は、ITS、GISの本格的普及、医療や防災等の公共分野におけるIT化加速、電子商取引等を推進するとともに、電子入札を積極的に進める。
・総務省は、平成14年度から、家庭のIT革命を支える基盤である放送のデジタル化を推進し、家庭から簡便に利用できるテレビ連動型電子商取引等様々なITビジネスの創出を促進する。
(ライフスタイルの変化が引き出す潜在需要の顕在化)
高齢化・生涯現役時代の到来、女性の社会進出、休暇の長期連続化など働き方、暮らし方の変化、少子化の進展、循環型社会の構築に伴い、これらライフスタイルの変化による人々の潜在需要(ウォンツ)を掘り起こし、具体的なサービスや商品として実現する需要創造型の生活産業を創出する。その際、民営化や規制改革を通じて民業を拡大し、政府は市場活動を阻害しないよう事後監視型の役割に変わる。特に技術革新や医療ニーズの多様化の中で、医療・健康サービスは豊かな生活をもたらす重要な産業として発展する可能性が高い。規制改革を進め、患者の選択による保険外診療の併用を拡大(特定療養費制度の活用)するとともに、根拠に基づく医療(EBM)を推進するなど、医療の発展を図る。
・内閣府は、関係各省と協力して、サービス産業を中心とする530万人雇用創出に向けた規制改革と広報・普及活動を平成14年度から推進する。
・厚生労働省、国土交通省は平成14年度、安心ハウス構想を推進する。
・厚生労働省はPFIの活用等を通じてケアハウス、生活支援ハウス等を整備する。
・国土交通省は平成14年度、共同自家用運転手産業ともいうべき生活支援輸送サービスの振興を図る。
・文部科学省、厚生労働省は、ネットワーク型子育て支援ビジネスモデルの実施の支援や「保育所待機児童ゼロ作戦」の推進、「預かり保育」の推進等を通じて、子育て支援を推進・拡充する。
・農林水産省は、関係府省と協力して、平成14年度から、都市と農山漁村を双方向で行き交うライフスタイル(デュアルライフ)の実現に向け、国民運動として民間の取組みの拡大を図るとともに、特区手法を含め、都市と農山漁村の共生・対流を推進する。
・国土交通省は平成14年度、住宅流通市場整備のための既存住宅に係る検査・評価制度を構築する。
(環境産業の活性化)
地球温暖化対策の実施、循環型社会の構築等による安心と魅力に満ちた環境の創造を通じて、民間の技術・製品開発の活性化、新たなビジネスモデルの形成、新規需要や雇用の創出が図られる。さらに、我が国の優位性を活かした世界をリードする環境関連産業が、経済社会システムの抜本的改革の牽引的役割を果たしていく。
・「循環型社会形成推進基本計画」を平成14年度末までに策定し、関係府省は、循環型社会に対応した新たなライフスタイル、ビジネススタイルの普及を推進すること等により、静脈産業の育成、グリーン物品の市場拡大等を図る。
・関係府省は、廃棄物・リサイクル処理などの環境技術の実用化に向けた研究開発等を進めることにより、経済活動の環境への負荷を低減し、環境セクターを創出し、拡大する。また、関係府省は、自動車リサイクル制度の創設や、各種リサイクル法の着実な実施など循環型社会の構築に向けた取組みを推進する。
・関係府省は、協力して、消費者・利用者が環境に優しい製品選択を拡大する観点から、平成14年度からエコマーク、環境JIS、省エネラベリング制度等による消費者選択への誘因の充実強化を図る。
・関係府省は、地球温暖化対策を進める観点から、低公害車、環境配慮型の住宅、建築物及び機器等の開発・普及に係る民間企業の取組みを促進し、新たな需要や産業の創出を円滑化する。また、国土交通省は、平成14年度から利用運送事業者等の取組みを促進するための参入規制の見直し等により環境負荷低減型物流への転換を進める。
・燃料電池については、内閣官房及び関係府省は、平成17年を目途に安全性の確保を前提としつつ、包括的な規制の再点検を行う。また、関係府省は、燃料電池自動車、住宅用燃料電池の開発・普及を推進する。
・環境投資促進税制措置の見直しを検討する。
(観光産業の活性化・休暇の長期連続化)
内外の人々にとって魅力ある日本を構築し、観光産業を活性化する。その際、場所と場所を結ぶ「輸送」の発想から、「経験し、楽しむ」産業へと変わる必要がある。
・国土交通省は、関係府省と協力して、平成14年度から、外国人旅行者の訪日を促進するグローバル観光戦略を構築し、個性ある日本の文化、自然環境などの国際PRや、地域の特性、創意工夫を活かした観光地づくりを推進する。
・国土交通省は、平成14年度から、自治体のイニシアティブ、地域コミュニティーの協力、ITの積極的導入等を通じて、地域特性を活かす経験型・目的達成型の観光産業を育成し、内外に発信する。
・国土交通省は、平成14年度から観光地の魅力度の分析、診断、公表の仕組みを構築することにより、観光地の地域間競争を促進させ、地域自らの努力を喚起し、地域独自の取組みを促す。
・厚生労働省、国土交通省等の関係府省は協力して、平成14年度から、学校の夏休みの一部を秋休みに移行したり、長期休暇を地域ごとにずらすなどの休暇の分散化を推奨するとともに、年休計画表の作成の一層の促進等を通じ、休暇の長期連続化や休暇取得時期の多様化を推奨する。文部科学省は、必要に応じ協力する。
・外務省、国土交通省は協力して平成14年度から、観光客誘致のためのビザ発行の規制緩和を行う。
・外務省、国土交通省は協力して平成14年度、日韓で共通に使える公共交通機関のパスを発行するための環境整備に着手する。
(食料産業の活性化)
「食」に対する国民の信頼を回復するために、真に「消費者」を基点とした食料産業と農林水産業に再生する。
・農林水産省及び関係府省は、「安全で安心」な食品を供給するため、牛肉、野菜等がいつ、どこで、どのように生産・流通されたのかについて把握できる仕組み(トレーサビリティシステム)を、平成15年度から導入する。
・農林水産省は、平成14年度から産地ごとに、消費者の評価を踏まえた「ブランド・ニッポン」戦略の産学官による策定を推進し、戦略に基づく農水産物の供給体制を確立する。農地法の見直し等により国際競争力のある効率的な農業経営を推進する。
・農林水産省は、平成14年度から、我が国の農林水産生産構造の中核となるような農林水産業者・企業に対して施策を集中化すること等により、農林水産業の構造改革を加速化する。
・農林水産省は、需要に応じた生産の推進等を図る観点から、米の生産調整や水田農業関連施策の改革方向を平成14年度中に策定する。
・農林水産省は、平成14年度から食料産業の成長を促進するため、食料産業の高付価値化を支える遺伝子情報等を活用した健康志向型食品等に関する技術開発等を推進するとともに、生産・流通を通じた高コスト構造の是正を図る。
・平成14年度から、食品表示制度を含めた食品安全行政の抜本的な改革に着手し、消費者に信頼される食の安全安心体制を構築する。特に、内閣官房は関係府省と協力して、食品の安全に関するリスク評価を行う食品安全委員会(仮称)を新たに設置するための法案及び消費者の保護を基本とした包括的な食品の安全を確保するための食品安全基本法案(仮称)を平成15年の通常国会に提出するとともに、農林水産省等は、リスク管理部門を産業振興部門から分離・強化する等所要の見直しを図る。
・公正取引委員会は、一般消費者を誤認させる不当表示の現行規制の見直しを行い、平成15年度までに、消費者の適切な評価・選択のための環境を整備する。
(文化・スポーツ・健康等の産業化)
健康、スポーツ、ファッション、娯楽、音楽といった分野は今後世界規模で市場が拡大すると見込まれ、その産業化を推進する。
・厚生労働省、経済産業省は、平成14年度から、ITを活用し、医療・健康情報の提供や健康づくり支援産業育成のための環境整備をする。
・文部科学省、経済産業省は、関係府省と協力して、平成14年度、日本の文化の産業化を推進する。
・関係府省は、平成14年度から、人材育成、映像やコンテンツの流通市場の構築、知的財産権保護等の推進を通じて、ゲームソフト、アニメーション、放送ソフト等コンテンツ産業を育成する。
・文部科学省は、文化芸術振興における団体に着眼した支援から事業に着眼した支援への転換を進める。
(聖域を排した民業拡大)
・総務省及び関係府省は、国・地方の行政サービスのアウトソーシングの実施について、行政の効率化・簡素化等の観点から、これを計画的かつ積極的に推進することとし、これにより民業拡大を進める。
・関係府省は、国民の利益の観点にたち、徹底した行政改革を行い、特殊法人等や国営施設の見直し、民営化を推進する。
・文部科学省、厚生労働省は、医療・介護、保育、労働、教育等の社会的規制分野において、民間による良質で効率的なサービス提供を推進する。
・関係府省は、公共投資・政府調達等において、平成14年度より競争を制限するような過度な地域要件等の撤廃により、入札条件の適正化を推進する。
・関係府省は、引き続き、業法における事前規制の撤廃・緩和、ノーアクションレター制度の充実等により、事後監視型へルールを変更する。
・総務省及び関係府省は、平成15年度より、ニーズの乏しい統計を廃止するとともに、雇用や環境、新サービス産業や観光などの新成長分野等ニーズのある統計を抜本的に整備する。また、総務省が中心となって、政府が保有する統計情報をインターネット上で高度に利活用できる仕組みを構築する。
大都市が国際競争力を持ち、地方では個性ある発展を遂げるよう、各地域の潜在的な経済力を最大限に発揮させ、知恵と工夫の競争により地域経済を活性化する。このためには、国と地方の役割分担を見直し、地方でできることは地方にまかせることが重要である。
(構造改革特区の導入等)
・進展の遅い分野の規制改革を地域の自発性を最大限尊重する形で進めるため、「構造改革特区」の導入を図る。こうした地域限定の構造改革を行うことで、地域の特性が顕在化したり、特定地域に新たな産業が集積するなど、地域の活性化にもつながる。構造改革特区については、多くの府省に関係する新たな手法の施策でもあり、内閣官房に推進のための組織を設け、総合規制改革会議等の意見を聴きつつ、地方公共団体の具体的な提案等を踏まえて制度改革の内容等の具体化を推進する。
・国土交通省は、6月1日に施行された都市再生特別措置法に基づき、都市再生緊急整備地域の指定を踏まえ、都市再生特別地区の積極活用を図る。
(国際競争力のある大都市の再生)
世界への情報発信力、交流・物流のハブ、文化芸術、国際的資金仲介力といった機能を兼ね備え、また、生活空間として質の高い環境を有する、国際競争力のある東京など大都市を再生する。大都市の再生等により、土地の流動化・有効利用、地価の下落の歯止めに資する。
・財源について関係府省で見通しをつけた上で、国土交通省は、羽田空港を再拡張し、2000年代後半までに国際定期便の就航を図る。
・国土交通省は、国際港湾機能を強化するため、ITを活用した航行規制の効率化によるノンストップ航行を平成15年度以降順次実現化するなど、規制・制度や運用面での改革を推進し、関係府省は連携して、平成15年度のできる限り早期に輸出入・港湾関連手続きのワンストップサービス(シングルウィンドウ化)を実現する。
・警察庁、国土交通省は、地方自治体と協力し、徹底した渋滞解消を図るための施策を推進する。このため、自治体レベルでの渋滞解消計画の策定が求められるほか、首都圏中央連絡道路等の三大都市圏環状道路の早期完成、無断駐車への迅速な対応、道路周辺工事・街路樹剪定の夜間化、自動車交通量の調整を図る交通需要マネジメント施策の展開等を進める。
・国土交通省は、航空機の運航の安全を確保した上で、ライトアップ等都市美観との調和を図る観点からビルの航空障害灯等に係る航空法にかかる規制緩和を推進する。
・国土交通省は、職住近接型の街づくりを推進する。また、堤防上の土地利用の規制を緩和し水辺都市再生を促進する。
・文部科学省は、平成14年度から国立博物館等の夜間開館、企業等の多様な用途での利用、文化ボランティアとの積極的連携協力や外国語解説の拡大等、外国人向けサービスの充実など活発な文化芸術活動の推進を図る。
(特色ある地方都市の再生)
地方の個性ある発展なくして、地域活性化はない。特色ある地方の大学や研究所を核として、地域経済を支え、世界に通用する特色ある事業を拡大する。また、広域圏の経済産業連携を強化する。
・文部科学省、経済産業省は、関係府省と協力し、平成14年度から、バイオ、IT等地域に蓄積した知的資産を活用し、知的クラスター創成事業や産業クラスター計画を相互に連携しつつ推進する。
・関係府省は、地元自治体と協力し、道路等利用を含め、イベントやロケ等通じて、商店街の活性化及び地域の観光振興を推進する。
・総務省、文部科学省、関係府省は、地方自治体と国立大学等との連携の強化を図る。
・寄附税制の見直しの検討、ネーミングライツ等多様な住民参加手法の導入を通じて、関係府省は、地域の文化や科学技術を振興する。
・総務省及び関係府省は、市町村合併を促進し、目途を立てて速やかな市町村の再編を促す。
(地域産業の活性化)
地方が、「自助と自立の精神」の下、多様な資源を生かし、知恵と工夫の競争を通じて、個性ある地域、特色ある地域産業を形成する。その際、IT、バイオ、環境、高齢化対応への取組みは、産業誘致や生活向上の面でも地域発展の基礎となり、地方間の競争力を大きく左右する。
・農林水産省、環境省、関係府省は協力して、動植物、微生物や有機性廃棄物からエネルギー源や製品を得るバイオマスの利活用の推進について具体策を平成14年度中にとりまとめる等、計画的に取り組む。
・総務省は、平成14年度から、地方自治体のITを活用した業務の共同化やアウトソーシングの推進により、地元関連産業の活性化を図るとともに、安全な地域づくりのため、情報システム、人材育成等の消防防災基盤整備を推進する。
・関係府省は、ITを利用した無医地区をはじめとする医療ネットワークの整備を引き続き推進する。
・総務省、文部科学省は、公立大学について、国立大学の動向も踏まえつつ改革を進めながら、平成15年度から、研究施設の共同利用、大学院社会人コースの拡充等、地域経済の活性化に資するような積極的な活用を推進する。
・総務省は、平成14年度から、ハード・ソフトの施策の集中展開を通じ、魅力的なITビジネス環境の先行的実現(ITビジネスモデル地区構想)により、IT産業集積を通じた地域経済活性化を推進する。
・総務省は、平成14年度から、地方公共団体が行う光ファイバ網等の整備に対して支援を行い、地理的要因による情報格差を是正することによって、新たな産業の振興など地域産業の活性化を図る。
・農林水産省は、規制改革による林業への民間事業体の新規参入、事業再編の促進、木材の品質向上・供給ロットの拡大等による経営力の強化を通じ、林業や地域産業の活性化、雇用拡大、並びに森林整備保全、地球温暖化防止を図る。また、関係府省は、森林の果たす公益的機能や森林管理に果たす地域の役割の重要性等を踏まえ、適正な森林管理のあり方を検討する。
市場が世界に開かれることなくして我が国の成長はありえず、外国資本の参入、産業の再編、人材の交流を活発化させ、競争力を強化していく必要がある。また、東アジア諸国の産業競争力が向上する中で、我が国企業は、同一水準の製品を作っていては生き残れない。技術や経営の革新を進め、国際競争力を強化することが重要である。一方で、WTO新ラウンド交渉を推進しつつ、FTAを推進するなど、多くの国・地域との経済連携を深めることは、財・サービス需要や資金需要を始め経済活動のフィールドを拡大させ、多くのビジネス機会を新たに生むとともに、製品コストの低下に資する。
(グローバルに開かれた市場の構築)
自由貿易のメリットが最大限活用できる「グローバルに開かれた市場」を構築することによってしか貿易立国日本の未来はない。
・関係府省は、FTAなど経済連携を推進・強化することとし、これに必要な課題の克服に取り組む。
・関係府省は、各種障壁を撤廃し、制度の共通化・統一化を進めた「東アジア自由ビジネス圏」の創設に向け、平成14年度から環境整備を行う。
・司法制度改革推進本部は、弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働を積極的に推進する見地から、特定共同事業の要件緩和等を行うため、平成15年を目途に法案を提出する。
・関係府省は協力して、平成14年度、世界で活躍する日本製品や日本人、個性ある日本の自然環境や文化をアピールするグローバル戦略を構築する。在外公館の活用や国際PR、わかりやすい標識や情報拠点の整備等を推進する。
(対内直接投資・頭脳流入の拡大)
対内直接投資の増大は、雇用の創出、競争促進等を通じた経済の活性化に加え、先進技術や経営ノウハウの拡散効果をもたらす。阻害要因を計画的に是正し、対内直接投資を促進し、頭脳流入を拡大する。
・対内直接投資阻害要因を除去する。このため、関係府省は、国境を越えた合併・買収に関する制度整備、政府関係情報のワン・ストップ・サービスの推進、地方の特色を活かした企業誘致施策、規制業種への対内投資促進、外国人医師の受入れ拡充や二国間社会保障協定締結の促進を推進する。
・関係府省は、海外の高度人材を活用する観点から、戦略的分野の技術者の入国、就労、勉学、研修、居住等に係る環境を改善する。
・内閣府は、経済産業省等関係各省と協力して、上記の内容を含め、対内直接投資、頭脳流入の拡大を目指した具体策を平成14年度中を目途にとりまとめ、各省と協力し、計画的な実施を図る。
(グローバル化の中での積極的貢献)
日本製品や日本文化に対する世界の関心が低下しつつある。世界への積極的な貢献を通じて、グローバル化を牽引し、魅力ある日本をアピールする。新たなビジネス機会の創造にもつながる。また、日本は途上国の貧困問題、環境問題、紛争処理、平和構築など国際的な課題に積極的に貢献し、世界の中でプレゼンスを高めていく。
・関係府省は、引き続き、電子商取引、知的財産保護や標準化、競争政策や投資にかかるルール作り等、国際的ルール作りへ積極的な貢献を行う。
・文部科学省は、留学生交流、外国人留学生に対する支援を推進する。外務省及び文部科学省は、文化芸術分野での受入れ・派遣を促進する。
・外務省は、青年海外協力隊やシニア海外ボランティアの推進など、国境を越えた活躍の場を拡大すると共に、途上国での国際協力体験を大学及び大学院の単位として認定する等の形で、国際協力に対する人材育成を図る。
・総務省及び関係府省は、平成14年度中にアジア地域におけるブロードバンド環境整備の目標を明確化した「アジア・ブロードバンド計画」を策定するとともに、アジア諸国との協働体制を立ち上げ、官民の役割分担等について検討を行い、具体的な措置を盛り込んだアクションプランを策定する。
経済活性化戦略においては、政策の実施主体・実施時期をできるだけ具体的に明示したところであり、経済財政諮問会議は、今後、IT戦略本部、総合科学技術会議、総合規制改革会議等関係本部会議等とも連携し、関係府省における経済活性化戦略の具体的推進状況等についてフォローアップを行う。