ジャパン・トゥエンティワン株式会社
事業者名 | 豊橋市・豊橋市教育委員会・ジャパン・トゥエンティワン株式会社 | |
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実証ブロック/実証校 | 東海ブロック |
豊橋市立大清水小学校 および 豊橋市立植田小学校 |
育成メンター(メインメンター) |
メインメンター数: | 3 |
メインメンター属性: | 一般市民 | |
育成メンター(サブメンター) | サブメンター数: | 24 |
サブメンター属性: | 一般市民 | |
研修時間 | 2 | 時間 |
(うち自宅研修時間) | (上記の一斉研修に加え、各自のペースで自宅研修を実施。実施時間は管理しない) | 時間 |
使用言語・教材・ツール | 使用言語: | CoffeeScript(言語を直接的には指導しない) |
教材・ツール: | コードモンキー 「コードの冒険」 | |
使用端末とその帰属 |
Notebook PC (NEC, Windows 8.1) 大清水小学校40台、植田小学校32台 |
実証校(PC ルーム) |
講座の受講児童・生徒数と学年 | 受講者数: | 72 |
学年 |
1年生10名、2年生13名、3年生15名 4年生10名、5年生10名、6年生12名 |
|
カリキュラム | 7.5時間 | 週1回(1.5時間) x 5回 |
使用端末(PC・タブレット)の帰属 |
実証講座 放課後子ども教室 「トヨッキースクール」 : 実証校のPCルーム オープン講座での使用端末: 事業者持ち込み、および参加者持ち込み |
プログラミングの未経験者でも指導者となれることを目指して開発され、海外で実績の高いプログラミング学習教材 CodeMonkey(コードモンキー)を活用することで、市民のだれでもがプログラミング教育を体感し慣れ親しみ、その意義を理解して様々なレベルのメンターとなり得て、次世代を担う子どもたちがこれから普遍的に求められるプログラミング的思考力などを身につけることを可能とする、学び合い・教え合いの楽しい雰囲気と環境を、官民学および地域人材を活用した市民総参加型で創り上げる。
豊橋市は、市長と教育委員会のリーダーシップのもと、「未来に羽ばたく子ども・若者を応援するための取組み」を平成29年度の重点事業の一つに位置づけて、プログラミング教育の推進を宣言した。日本の若者の未来、すなわち日本社会の未来を左右するプログラミング教育は21世紀社会の「読み・書き・そろばん」であり、先行する世界の優れた道具・知識・経験・ノウハウを積極的に取り入れながら、官民学・地域人材を活用した市民総参加で推進するべきである。
コードモンキーは、IT先進国イスラエルで開発されたゲーミフィケ―ションのドリル式プログラミング学習プラットフォームで、イスラエルでは全小中学校の標準教材に採用されている。さらに欧州や米国をはじめ中国やインドの公立学校でも導入され600万人以上の利用実績がある。また毎年イスラエルではコードモンキーの教材と生徒の学習履歴や解答などのログデータを活用して教育省主催によるプログラミングコンテストが開催されている。
ジャパン・トゥエンティワン(株)は、豊橋市に本社を置き、世界の先進的な技術と製品を日本市場でビジネス化するベンチャー企業であり、その事業の一つとしてコードモンキーの技術的先進性と将来性を発掘し、日本のプログラミング教育の発展のために日本国内への導入と普及拡大を推進している。また同社は、2016年10月に本社を東京都内から社長の出身地である豊橋へ移転し、豊橋市を中心とした世界のハイテック産業による地方再生に積極的に取り組んでいる。
上記の背景にもとづき、「豊橋市」「豊橋市教育委員会」「ジャパン・トゥエンティワン株式会社」の三者が対等な立場で連携主体を構成し、市の施設と放課後の教室を活用して、コードモンキーを教材に、市民によるプログラミング講座を下記4つのフェーズで実証する。
1 コードモンキーを市民1,000人に広く提供し、多くの市民がプログラミングを体験
2
市の生涯学習拠点「ミナクル」を活用したオープン講座により、プログラミング教育の幅広い周知と多様な市民メンターの醸成、実証校でのプログラミング講座を実施するメンター人材の発掘と、メンター育成講座を実施
3実証小学校2校(豊橋市立大清水小学校、豊橋市立植田小学校)の放課後子ども教室「トヨッキースクール」において、2の修了者が講師となり、プログラミング講座を実施
4 海外(イスラエル)の小学生と豊橋市選抜チームによるコンテストを開催
【課題1】プログラミング教育は、専門的な教育を受けた一部のメンターしかできないとの既成概念。
【課題2】プログラミング的思考力は、個人の適正と能力差が極めて大きく現れ、従来型の一斉指導による画一的な教育には向かない。自分で考える新しい教育が必要。
【課題3】教育現場は、プログラミング教育以前に、英語教育、論理的思考力、課題解決力、アクティブラーニングなどの課題が山積みされ、それらすべてへの対応が不可能な現実。
【課題4】日本のプログラミング教育はグローバル社会からすでに周回遅れしている。最先端の技術とノウハウを活用して開発され、グローバルに実績あるベストプラクティスの活用が、日本の国力強化に必至。
グローバルに実績のあるプログラミング学習教材「コードモンキー」は、日本でも同等に活用が可能であること、それを使って市民の誰でもがメンターになり得ること、そしてコンピュータサイエンスの知識を有しない一般市民でもアクティブラーニングのクラス運営ができることを検証する。
本事業におる検証は、豊橋市が本年度より開始した、放課後子ども教室「トヨッキースクール」(教育過程外)の一環として行った。なお、教育課程内のプログラミング教育としてのコードモンキーの使用を、豊橋市内の小中学校それぞれ1校にて実践研究を行ったが、これは豊橋市による予算措置での実施であり、本事業の範疇ではないため、本報告書の対象外とする。
本実証モデルの設計にあたっては、豊橋市教育委員会の生涯学習課の枠組みの中で実施できるように構築した。コンテンツと実施方法の企画については、統括プロジェクトマネジャーを座長に、豊橋市教育委員会・生涯学習課とジャパン・トゥエンティワン株式会社(J21)のメンバーで4月〜6月に数回打ち合わせを行い、教育委員会主導による運営によりプロジェクトを遂行した。
<放課後子ども教室>
実証校2校は、豊橋市が平成29年度より新たに実施する放課後子ども教室「トヨッキースクール」の講座一環として、プログラミング教室を開講するもので、実証校との調整は、放課後子ども教室の企画運営を担当する豊橋市教育委員会生涯学習課が行った。
児童クラブと一体・連携した放課後子ども教室は、すべての就学児童が放課後に安全・安心に過ごし、多様な体験活動などができるよう、文部科学省と厚生労働省が推進する事業で、福祉・子育て・教育が連携して小学校の余裕教室などを活用して地域の多彩な人材の参画を得て子どもたちに様々な学習・体験支援を行うものである。
今回、本年度より開催するトヨッキースクールの最初の実施校である植田小学校と大清水小学校の2校が実証校となり、職員会議で校長・教員の全教職員が不在となる毎週木曜日の放課後の時間を活用し、学校のPCルームを利用してプログラミング講座を実施することとした。しかしこの時間この場所で子どもたちにプログラミングを指導できる人材をすぐに探すことは困難であり、プログラミングに関心のある地域の多様な人材を発掘するべく、本実証モデルで市民メンターを育成することになった。 参考URL:http://www.city.toyohashi.lg.jp/32005.htm
<生涯学習拠点を活用した土曜日の教育活動>
本実証モデルでは実施期間中、毎月最終土曜日に実証校区内の豊橋市大清水まなび交流館「ミナクル」*にて、子供からお年寄りまでが集い、コードモンキーを使ってプログラミングの学び合いをするコーモンキー広場と、講師によるプログラミング教育に関するスペシャルトーク(講演会)を行うオープン講座を開催した。これは放課後子ども教室と同様に、豊橋市教育委員会生涯学習課が管轄する生涯学習拠点「ミナクル」での、土曜日を活用した教育活動モデル事業の一環で、文部科学省の「土曜日の教育活動推進プラン」を受け、学校・家庭・地域が連携して子どもたちへの教育活動を行っているものである。施設内の無線LANと市役所所有の貸出用タブレット端末iPad Air2を活用した、市としても初めての市民向けプログラミング学習支援の取り組みである。
*「人と人をつなぎ、賑わいの輪が広がる、地域と共生する施設」をコンセプトに、2015年4月に生涯学習の拠点、地域のシンボルとなる施設として豊橋市が設置。
参考URL:http://www.city.toyohashi.lg.jp/30311.htm
<地域人材を活用した学校外の教育活動の推進>
豊橋市教育委員会では、上記事業において指導者・講師情報を管理し地域人材を活用している。本実証モデルで育成した市民メンターは、来年度以降のプログラミング講座を担う地域人材として期待される。
参考URL:http://www.city.toyohashi.lg.jp/8061.htm
<他団体との連携>
本実施モデルは、J21顧問である豊橋技術科学大学の高嶋教授の企画立案によるものであり、同大学より以下の協力を得た。
国立大学法人 豊橋技術科学大学(http://tut.ac.jp)
1 高嶋孝明 豊橋技術科学大学教授・スーパーグローバル大学推進室長(同大学・情報工学修士課程修了)
本実証モデルの企画立案・統括PM。自身のプログラミング学習経験と、1982年からIBMにおける32年間の勤務における製品開発からビジネスまでのグローバルな経験、現在の大学での職務から、早期のプログラミング学習の必要性を感じていた。コードモンキーとそのカリキュラムガイドを実際に手にして、プログラミング教材としての完成度の高さを認識し、本モデルを発案した。
2 石田誠 豊橋技術科学大学 元副学長/特別顧問/名誉教授
昨年度より豊橋市教育委員会・教育長のアドバイザーも担い、地域の学校教育の発展を支援。本実証モデル実現のために、豊橋市・教育委員会など関係者とのパイプ役として協力を得た。モデル実施においてもメンターへの指導とサポートを得た。
3 豊橋技術科学大学 コンピュータークラブ(http://tut-cc.org/)
市民メンターが育つまでの期間、オープン講座に参加の子供から大人まで、にコードモンキー(プログラミング)のメンター・指導者としてコンピュータークラブの学生3名の協力を得た。分かりやすく丁寧に教えてくれると参加者からも評判が良く、指導した学生からはプログラミングを教えることの楽しさを知ったとの感想を得た。
4 豊橋技術科学大学 附属図書館・マルチプラザ (http://www.lib.tut.ac.jp/guidance/multiplaza.html
)
本実証モデルの最後に2017年12月に開催した、豊橋とイスラエルの子ども達によるプログラミングコンテスト(上述のステップ4)の会場として提供を受けた。
広く市民に周知して多くの理解者と参加者を得るために、以下の団体などによる広報・チラシ配布等の協力を得た。
1 豊橋市教育委員会の人材ネットワーク(元教員、館長、など)
2 CoderDojo 豊橋 - 豊橋創造大学 経営学部 今井正文教授 (http://ba.sozo.ac.jp/archives/proj/imaiproj
)
3 愛知教育大学 ICT教育基盤センター 中西宏文教授/センター長
4 Code for MIKAWA(https://uzura.org/)
豊橋市をはじめ、東三河で活躍するIT・ものづくり系のエンジニアや大学の研究者、行政職員などがアフターファイブに集い、ITを使ってまちづくりに貢献することとIT産業の発展を目的に、ミーティングやイベントを定期的に開催。オープン講座でコードモンキー(プログラミング)のメンター・指導者としても協力を得た。
1 東三河懇話会(http://www.konwakai.jp/index.html
)・ 豊橋市商工会議所
東三河を拠点とする企業・大学・地方自治体・NPO等の交流の場を設け地域の持続可能な発展に寄与する民間団体。定例会等で本実証モデルの発表を行い、地元経済界へプログラミング教育の必要性を啓蒙し支援を仰いだ。
2 (株)サイエンスクリエイト(http://www.tsc.co.jp/)
豊橋での新産業創出を目指して、愛知県・豊橋市・日本政策投資銀行及び民間企業の出資により設立された第3セクター会社。地域産業育成支援のための拠点施設である「豊橋サイエンスコア」を運営し、産学官共同研究や地域産業支援のための事業を行う。サイエンスクリエイトのパソコンルーム、メーカーズラボなどの活用やコラボレーションを通じて、実証モデル終了後のプログラミング教育の継続的な活動展開の連携の可能性を今後協議していく予定。
コードモンキーの特別ライセンスを市民1,000人に広く配布してプログラミングをまず体験をしてもらい、それにより多様な市民メンターを醸成した。その中から、トヨッキースクールでコードモンキーを使ったプログラミング講座のメンターとなる希望者を下記条件で募集したところ、20代の学生から40・50代の主婦や自営業、60代の退職者まで、幅広い層の一般市民 27名 が応募、全員をメンターとして採用した。
<メンター募集条件>
募集は以下のステップで行った。
■ステップ1 コードモンキーのライセンスを市民1,000人に提供し、多くの市民にプログラミングを体験してもらう
本実証モデルはまず、特別ライセンスカードの準備と市民へのプロジェクト周知、募集、ライセンスカード配付から始まる。市民に親しみを持ってもらえるように、「とよはしプログラミング・チャレンジ2017」、略称 「とよプロ2017」と名付け、参加者1,000名を募るプロモーションを2017年4月25日から開始した。応募者数への懸念があったが、プレスリリースや各種メディアでの周知、特に2017年5月5日の中日新聞への掲載が大きな契機となって、1ヶ月で825名の応募があった。その後追加で50名を募集して最終的に875名が応募、残りのライセンスは実証校での児童と関係者に充てた。
<参加募集と配付方法>
募集期間:2017年4月25日〜5月23日
申込方法:豊橋市HPの申込フォーム URL:http://www.city.toyohashi.lg.jp/31983.htm
1年間プログラミング教材を学習できる特別ライセンスカードを1,000人に無料で配布します!
応募方法:豊橋市のホームページの申込フォームに必要事項を入力し、生涯学習課へデータを送信してください。
対 象:豊橋市内在住、在勤、在学している方(小学生以上)で、
インターネット環境でCodeMonkeyにアクセスできる見込みの方
応募締切:2017年5月23日午後5時
受取期間:2017年5月26日(金)〜6月9日(金)9:00〜17:00
受取場所:カードは以下の施設で希望される配布場所で配布します。
豊橋市役所生涯学習課、大清水まなび交流館 ミナクル
石巻地区市民館、二川地区市民館、牟呂地区市民館
その他:応募結果はEメールにて通知します。(応募多数の場合は抽選)
<特別ライセンスカード>
コードモンキーの200チャレンジまである内の最初の100チャレンジまでを1年間利用できる特別ライセンス1,000個をCodeMonkey Studios社が用意し、そのライセンス費用はジャパン・トゥエンティワン(株)が負担した。IDとパスワードを記載したライセンスカードを1,000枚制作した。
<自宅学習支援>
ライセンスカードに説明書を添付し、インターネット環境とWebブラウザーがあれば、自宅や職場などで、いつでもどこでも「ゲーム感覚」で「プログラミングを学習できる」ことを周知させ、広く市民に「プログラミング」に慣れ親しんでもらうことを狙った。
以下の方法で広く市民に周知した。
1報道発表 2チラシ配布 3豊橋市HPでの告知 4Facebook広告 5メディア掲載・地元団体への告知
1 報道発表
●2017年4月3日 報道発表(採択プレスリリース)
豊橋市発表http://www.city.toyohashi.lg.jp/31267.htm
J21発表https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000020.000010261.html
●2017年4月25日 報道発表(とよはしプログラミング・チャレンジ2017実施詳細)
http://www.city.toyohashi.lg.jp/secure/49109/
2 チラシ配布
配布数:5,500枚
配布場所:ア)市・学校関係(記者会・市議会・小中高大学・PTA等)
イ)市民配付用(市民館、各種施設など)
ウ)生涯学習拠点ミナクル周辺 回覧折り込み配付
エ)近隣小中学校への配布
3 豊橋市ホームページ http://www.city.toyohashi.lg.jp/32007.htm
本事業の進捗状況の報告からイベントの告知、各種募集・応募などは、基本すべてこのURLの豊橋市のホームページより行った。
4 Facebook広告(J21)
出稿期間 2017年4月26日〜5月23日
ターゲット 豊橋市在住の「ハイテク」「IT」「教育」などに興味を示しているFacebookユーザーにターゲティング。
訴求 3,886人にリーチ、270回のエンゲージメント(いいね!・コメント・シェア・詳細クリックの合計)
5 メディア掲載・地元団体への告知等
●東愛知新聞 2017年4月26日 1面
●中日新聞 5月5日 三河版1面
(※画像割愛)
●ICT教育ニュース 4月4日 http://ict-enews.net/2017/04/4japan21/
●教育家庭新聞 4月12日 http://www.kknews.co.jp/wb/archives/2017/04/codemonkey1000.html
●教育新聞 4月20日 https://www.kyobun.co.jp/news/20170420_06/
●FM豊橋 5月20日 「とよはしプログラミング・チャレンジ2017」 https://www.tut.ac.jp/audio/170520.mp3
●東三河懇話会 産官学交流サロンPRタイム 4月11日、5月17日
●豊橋市商工会議所 議員昼食会 7月14日
<特別ライセンスカードへの市民の応募>
2017年4月25日〜5月23日の、申し込み受付期間中の応募者数の推移は右図の通りで、最終的に825名の応募があった。その後追加で50名を募集して合計 875名 への配布となった。
申し込み者825名の属性は以下の通りである。半数以上がプログラミングを学ぶ機会が欲しかった、75%はプログラミング未経験。小学生が30%(プログラミングを体験させたいために親が申込み)、半数が社会人等であり、市民一般のプログラミング教育に関する意識が極めて高いことが判明した。
<SNSと口コミ効果>
ハッシュタッグ
「#とよプロ2017」、「#コードモンキー」のキーワードをライセンスカードやチラシなどでPRし、参加市民一人ひとりが仲間意識と一体感を持ち、「市民」が「とよプロ」を盛り上げて行くという空気感の醸成と環境作りを心掛けた。その結果、本事業についてブログやSNSで積極的に発信する数名の「とよプロ・アンバサダー」が誕生した。
ブログ参考URL:
1
http://norakura1.com/2017/06/04/post-269/
2
http://toyopuro-okan.hatenablog.com/entry/2017/05/26/123315
3
http://trialvillage.net/
■ステップ2 生涯学習拠点を活用したオープン講座でプログラミング学習を盛り上げ、多様な市民メンターを醸成
豊橋市の生涯学習拠点、大清水まなび交流館「ミナクル」で、コードモンキーを自由に学び合い交流できるオープン講座を定期的に開催し、市民によるプログラミング学習を盛り上げた。
<豊橋市長宣言による 「とよプロ2017」 開会式とオープン講座スタート>
2017年6月24日に、「とよはしプログラミング・チャレンジ2017」 の開会式を行い、本事業の説明と意義の講演を開催。
当日の様子はYouTubeとFacebookでライブ配信を行った。
日時:2017年6月24日(土)15時〜18時
内容:
1 佐原市長、山西教育長、J21加藤社長による開会宣言, CodeMonkey Studio本社からのビデオメッセージ
2 高嶋PMによるスペシャルトーク
3 コードモンキーひろば(プログラミング学び合いの場)
来場数:約200名
告知:
1 特別ライセンス取得者へのメールマガジン配信 6月8日、21日
2 広報とよはし 2017年6月15日号 ほか
https://cccc.backshelf.jp/bookview/?filseq=3302
内容:
1 開会式https://www.youtube.com/watch?v=YPWsiyjrRds
スペシャルトーク 「とよプロ2017ってなに?!」
<オープン講座の概要>
本事業の実施期間中(2017年6月から11月までの最終土曜日6回)に、実証校区内の豊橋市大清水まなび交流館「ミナクル」にて、子供からお年寄りまでが集い、コードモンキーを使ってプログラミングの学び合いと、講師による講演会を行うオープン講座を開催した。
1 「コードモンキー広場」を開設して、個人所有端末の持ち込み、および貸し出し用の豊橋市所有のiPad Air2と豊橋技科大提供のノートブックPCで、施設内の無線LANまたは自身の携帯ネットワークに接続してコードモンキーを学習する環境を開設した。これにより、クラウド環境による自宅学習とサポート提供に加え、対面交流による学び合いを可能とし、市民総参加によるプログラミング教育への理解と、教え合い・学び合いの環境を提供し、市民メンターの醸成を行った。コードモンキー/プログラミングに詳しいファシリテータを配置し来場者への質問への対応と指導に当たった。10月と11月は、12月のイスラエル小学生とのプログラミングコンテスト(とよプロ2017チャンピオンシップ)に向けたプログラミング強化のためのブートキャンプも実施した。
2 「スペシャルトーク」として、プログラミング教育に関連する話題を提供する講師陣を招いて、一般市民及びメンター志望者向けにプログラミング教育の必要性や実践例などの講演を並行開催して、市民の意識と知識を高めた。講演はYouTubeとFacebookでライブ配信を行い、動画は来場できなかった人や市内外の人が視聴できるツール(教材)として公開している。トヨッキースクールでのプログラミング教室開始後は、メンターが集まり実証校での講座の振り返りなどの意見交換をする交流会の場とした。毎回10名〜20名の参加があり、メンター同士の交流の場として活発な意見と情報交換の場として有効に活用され、メンター有志が実証校以外でコードモンキーを使ったプログラミングの体験会を開催する等の横展開にも繋がっている。
オープン講座実施概要
場所: 豊橋市大清水まなび交流館「ミナクル」
日時: 6/24, 7/29, 8/26, 9/30, 10/28, 11/25 (土曜日) 全6回 15:00-18:00
内容:1 スペシャルトーク: 講師によるプログラミング教育に関する講演(多目的室)
10・11月は、メンターの情報交換会として実施
2 コードモンキー広場(プログラミングの学び合い)(工作室)
スペシャルトークの講師・講演内容・動画配信
2017年6月24日(土) 高嶋孝明 J21顧問/豊橋技術科学大学教授 本事業企画立案者
「とよプロ2017って何?コードモンキーの全世界を見てみよう!」
動画1 https://www.youtube.com/watch?v=iHmSAWwHMqA
動画2 https://www.youtube.com/watch?v=AeMZzYoseRE
2017年7月29日(土) 松田孝 東京都小金井市立前原小学校校長
「公立小学校のプログラミング教育最前線
〜日本で断トツに先行してプログラミング教育を実践する校長が語る〜」
チラシ:https://drive.google.com/open?id=1PkKNM5-cslkpY7SC45UesxPPAolVObUz
動画:https://www.youtube.com/watch?v=TXC0RkEKlyc
2017年8月26日(土) 笠井賢 Eatbee 代表取締役社長
「キッズ英会話教室にコードモンキーが遊びに来た
〜ニュータイプの日本人が溢れる社会を目指して
文科省官僚・大使館一等書記官から幼児期教育ベンチャーに転身〜」
チラシ:http://i.r.cbz.jp/cc/pl/fpff4494/t9rw/wiz5gkkk/
動画:https://www.youtube.com/watch?v=X97uOgYayJc
資料:https://drive.google.com/open?id=1b8st8fXc1W_TVEL5lEdvIqPBQeeVdluR
2017年9月30日(土) 大岩元 慶応義塾大学名誉教授・豊橋技術科学大学元教授
「日本の将来は プログラミング教育を左右する!」
〜AI時代の今こそ、真のプログラミング教育が必要〜」
チラシ:http://i.r.cbz.jp/cc/pl/fpff4494/gnh9/bhvzm136/
動画: https://youtu.be/QemmPA8abNo
資料:https://drive.google.com/open?id=0Bz2LeAmuVQSsRGVCTGlFQ3Q2TlU
また、Facebookやライセンス取得者へのメールマガジンで適宜話題を提供して、継続的な盛り上げとオープン講座への参加者を募った。
<とよプロ2017参加者のコードモンキー利用状況>
2017年12月6日時点の状況は以下の通りである。(コードモンキーのダッシュボード機能を利用して集計)
登録者数:872名 ログイン数:577名
100チャレンジ達成:107名 ライセンスをアップグレードして100以降を実施:8名
■ステップ3 メンター養成講座の参加者を募集
プレスリリース・報道には、特別ライセンスの無償配布案内と同時に、メンター養成講座の参加者の募集も記載し、豊橋市のホームページにて受付を行った。
併せて、アクティブにコードモンキーを利用している市民を抽出し、2017年7月上旬にメンター・スカウトメールを配信した。抽出条件は、その時点でチャレンジ85までを星三つでクリアしている人で、結果は51名であった(小中高生6名を含む)。
これらの結果、27名 がメンター養成講座に応募した。
「メンター養成講座」を、オープン講座の開催日に合わせて二回開催した。どちらも内容は同じで、応募者はいずれかを受講。高嶋PMが講師となり、1回2時間の講義形式で行った。養成講座の申込者全員に、事前にコードモンキー・カリキュラムガイドを郵送し、自宅でのハンズオン学習を可能にした。また、コードモンキーをプレイすること自体がeラーニングとなっている。メンターのほとんどは、特別ライセンスを取得してコードモンキーを自らプレイし、そして、これなら自分も子ども達に教えられそう、一緒にプログラミングを学ぶことができそうだ、教えてみたい、という気持ちが芽生えて応募してきた市民であった。
開催日時: 2017年7月29日(土)、 8月26日(土) それぞれ13時〜15時
参加人数: 2017年7月29日 17名、 8月26日 10名
集合研修では、コードモンキーで使用するプログラミング言語の説明といったIT・コンピュータサイエンス等の内容は一切行なっていない。本プロジェクトの目的と意義、メンターへの期待、そしてカリキュラムガイドの意図するところの解説とトヨッキースクールでのプログラミング講座の進め方の基本方針を説明。後半一時間で、メンター候補者の自己紹介と応募の動機と豊富を語ってもらい、各自の思いの共有とチームビルディングに時間を充てた。そして研修の最後に、実証校での5回の講座を通してリードするメインメンターの立候補を募り、積極的な立候補者が出てきて、参加者の合意でメインメンターを決めることができた。そして、あらためて受講者にメンターとなる意思を確認したところ辞退者はいなかったため、全員をメンターとして登録した。実証校でのプログラミング講座の進め方については、メインメンターに原則一任し、適宜メール等で高嶋PMが相談に乗った。
養成講座の他に、自宅での自習やオープン講座でのスペシャルトーク講演会・メンター交流会などの場を提供し、意欲のあるメンターの積極的な参加があった。また、メンター間の交流を活性化するために、以下の取り組みを行った。
<オンライン交流>
メンターのFacebookグループを作成し、事務局、講師(高嶋PM)、メンター間のオンラインでの情報・意見交換の場を設けた。実証校での講座が始まると、毎回積極的なディスカッションが生まれ講座の反省・改善に活かされた。
※メンター専用のFacebookグループ(非公開) 参加者:27名中14名
とよプロメンターグループ https://www.facebook.com/groups/1911758042414345/
<オフライン交流>
毎月オープン講座で交流会を実施し、高嶋PMをファシリテーターに、本実証モデルの目的や実証校での講座の振り返り、プログラミング教育全般に関する意見交換や質疑応答の場を設けた。講座を実施するうえでの不安や疑問の解消、メンター同士の交流に有効だった。
受領した特別ライセンスを使って、各自が自宅などで自由にコードモンキーを使用。コードモンキーの特徴は以下の通りである。
カリキュラムガイド(抜粋)
カリキュラムガイドは、海外で学校での利用実績があり、コンピューターやプログラミングの知識がなくても子どもに理解させるためのロールプレイやアクティブラーニングの進め方が丁寧に記載されているため、メインメンターがクラス運営方法を考えるうえで、また各自がメンターを実施する際のヒントや進め方のガイドとなるよう、参考資料として提供した。実際のプログラミング講座を行う際には、特段の指導をしなかったが、メインメンターはガイドにあるロールプレイの一部を自分なりに取り入れるなど、工夫をしてクラスを自主的に運営していった。
<計画>
実証講座は、豊橋市立大清水小学校と植田小学校の2校で実施、各校のPCルームを利用し、それぞれトヨッキースクールの5回の連続講座として実施した。トヨッキースクールが全学年を対象とするため、本プログラミング講座の対象も学年を限定しなかった。募集はトヨッキースクールの開催責任者である豊橋市教育委員会・生涯学習課が、各学校と連携して行った。募集定員はPCルームのノートブックPCの数に応じて決定、大清水小学校は40名に対して48名が応募、植田小学校は32名に対して66名が応募した。
受講児童は、学年毎の人数がある程度均等になるように抽選で決定。受講できなかった児童には、特別ライセンスカードを提供した。各校の受講児童は以下の通り。
実証校 | 参加児童(申し込み者数) | 1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 | 6年 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
大清水小学校 | 40名(48) | 4名 | 7名 | 9名 | 6名 | 7名 | 7名 |
植田小学校 | 32名(66) | 6名 | 6名 | 6名 | 4名 | 4名 | 6名 |
講座の進め方は、両校で異なる方法で進める方針とした。
1 カリキュラムガイドに準じて、全員が足並みをそろえてレッスンを進めていく(大清水小学校)
2 各自のペースで自由に進めていく(植田小学校)
講座の進行は全5回を通して主講師となるメインメンターが行い、都合がつく日程で講師となるメンターが毎回3-4名加わる体制で実施する計画とした。
メインメンターは立候補で選出。植田小学校は2名が立候補したため、講座の進行役と全体の管理を分担する2名体制とした。それぞれのプロファイルは以下の通り。
メインメンター | 年齢 | 性別 | 職業 | プログラミング経験 | 教育経験 | 応募動機 |
---|---|---|---|---|---|---|
大清水小学校 | 40代 | 女性 | 社会人 | 経験あるが使用していない | 学校や塾などで教科指導経験あり | 地域のために役立ちたい |
植田小学校 | 30代 | 女性 | 主婦 | 経験はほとんどない | 学校や塾などで教科指導経験あり | 教育に関心 |
40代 | 女性 | 社会人 | 経験あるが使用していない | 学校や塾などで教科指導経験あり | 教育に関心 |
<実際の講座の進行>
大清水小学校の2回目までは全員が揃って学習テーマを進めて行った。しかし、1年から6年生までと学年の幅が広く、先へどんどん進みたい児童(高学年)と、マンツーマンでじっくり丁寧に見なければならない児童(低学年)のレベル差が大きくなって全員揃って進めることを断念。各自が自分のペースで自由に進める方針に変更した。また、それに伴い、メンターの人数不足が顕著になったため、見学参加のメンターも講座運営に実質的に入ってサポートし、当初予定より大幅に増員した体制となった。上記のメンターシフト表が今回実施した講座の参加メンターの実数である。
毎回講座終了後に、参加したメンターでの反省会と次回からの改善の提案の意見交換を行い、さらにFacebookやメールで他のメンターとの共有と意見交換を実施。メインメンターがそれらを参考に、次回の進め方を毎回考えて実行、というサイクルを繰り返していった。
講座進行の変遷の概略は以下の通りである。
大清水小学校
植田小学校
各自の自由なチャレンジプレイを支える幅広い多様な市民メンター 小学1年生から6年生までレベルの全然違う子たちが同じ教室で
楽しくて集中しすぎるので、背伸びして一休み せんせ~ ありがとう!
修了証をもらって、みんな笑顔
<メインメンターが毎回の進行計画を自作して講座を実施>
進行計画書
児童の座席配置と前回からの引き継ぎ事項
<児童の進捗分析と、児童・メンターの席配置が講座を重ねる度に進化>
進捗をダッシュボードのデータから分析。講座の毎回の様子とあわせて、子どもたちが落ち着いてプレイでき、またメンターが効率的に対応できる席配置をメンターが発案して作成し、毎回試行を繰り返しながら実施。
<コードモンキー・ダッシュボードによる各児童の進捗確認>
大清水小学校(一番上は1年生、下が6年生)
低学年と高学年では進捗に大きな差が。トヨッキースクールが始まる前からコードモンキーを家族とやっていた一年生を含む何名かは100まで突破。最初の2回までは全員一緒に同じペースでテーマを進めた。その後自由モードに切り替えたが、星3つ取る(そこで学んでほしい内容をキッチリとこなす)ことを意識させて行った。5回の講座終了後も自宅で継続しているものもこの記録に含み、すべて時系列で分析が可能。
植田小学校
第1回から各自が自由に進む方式で進行。星の数は気にしないでとにかく面をクリアすることに夢中な子供(学んで欲しいことが定着していない子供)が大清水に比べて散見される。しかし、プログラミングを嫌いにさせないことを一番大事に、自由に色々と考え楽しく進められるように見守った。
<とよプロ2017 チャンピオンシップ>
(※)新聞記事画像割愛
●東愛知新聞 2017年4月26日 1面
●中日新聞 2017年5月5日 三河版1面
●東愛知新聞 2017年6月26日 1面
●中日新聞 2017年9月10日
●東愛知新聞 2017年12月2日
(※画像割愛)
●ICT教育ニュース 4月4日 http://ict-enews.net/2017/04/4japan21/
●教育家庭新聞 4月12日 http://www.kknews.co.jp/wb/archives/2017/04/codemonkey1000.html
●教育新聞 4月20日 https://www.kyobun.co.jp/news/20170420_06/
●FM豊橋 5月20日 「とよはしプログラミング・チャレンジ2017」 https://www.tut.ac.jp/audio/170520.mp3
●CBCテレビ「イッポウ」 6月29日 放映
(※画像割愛)
●豊橋ケーブルネットワーク ティーズ 「HOTステーション」 6月28日、7月1日、7月2日 放映
(※画像割愛)
<実証校校長>
<教育委員会>
1.8 あなたはこれまで、「プログラミング」という言葉を知っていましたか
2.1 「プログラミング講座」は楽しかったですか
2.4 「プログラミング」の講座で利用した教材は簡単でしたか
3.1 講座を体験したことによって達成できたことは何ですか
3.2 プログラムが思うように動かなかったとき、どうすることが一番多かったですか
3.4 あなたはプログラミングを今後も続けていきたいと思いますか
3.3 メンター育成を受けて、全体的に内容を理解できましたか
3.6 実際にメンターを行うにあたって、不安はありますか
3.7 実際にメンターを行うにあたって、具体的にどういったことに不安がありますか
5.1 講座は当初予定していたとおりに実施出来ましたか
5.2 実施前のイメージと比較して、メンターを実施することは難しかったですか
5.3 実施前のイメージと比較して、どういった点でメンターをうまく実施できたと思いますか
5.5 実施前のイメージと比較して、どういった点でメンターをうまく実施できなかったと思いますか
8.3 今後のあなた自身のメンターとしての関わり方について
※27名の市民メンターによる、1年から6年生までの混合で合計72名の児童への一斉プログラミング教室を、合計10回行った。指導方法や綿密な講座の進め方を育成講座では教えることなく、メンターの自主的な運営に任せる、という進め方であった。いわゆる「リーンスタートアップ」方式で、とにかく最低限決めて進めて、チェックして改善して実行する繰り返しを、3ヶ月に渡ってほぼ毎週行ってきた。そのため、発見や課題が膨大で、整理分析するのに十分な時間が取れていない。一言で簡潔に表現してもその本質をうまく伝えきれないので、本報告書では簡単な要約に併せて、メンターのアンケート記載から主要なものを幅広く列挙して情報共有する。
教育委員会の生涯学習課が主管となる、放課後子ども教室「トヨッキースクール」の一環として実施したため、豊橋市の関連部署・施設、実証校と非常に良い連携がとれた。また一年近くにわたる、共同提案の策定から、プロジェクト企画、毎月のオープン講座、10週間のほぼ毎週のトヨッキースクールの開催を通じて、関係者の相互の強い信頼関係と絆を築くことができた。
特別ライセンスを広く無償配布し、まず体験する・自習するという環境を提供し、プログラミング教育を自らが体感し、自信を持ってメンターに応募してもらう、というモデルが有効であることが分かった。
一ヶ月という短期間で十分な広報活動もできなかった環境であったにもかかわらず、800名以上の市民が特別ライセンスに応募、30名近くがメンターに志願した、というのは驚異的である。また、その大半がプログラミングを学ぶ機会が欲しかった、ということで市民のプログラミング教育への意識が極めて高いことが判明した。毎月のオープン講座やスペシャルトークへの参加者も多く、市民みんなで子どもたちに「プログラミング教育を」行う、という方針について共感を得ているという実感を持つことができた。
プログラミング教育の識者による講演や、チームビルディングを中心とした養成講座により、自主的で自律的にプログラミング講座を行うメンターチームを構成することができた。
<メンターの声>
1年から6年生までの学習レベルも興味もスキルも大きく違いがある多様な児童が、一つの同じ教室で、一般の市民メンターの手作りによるプログラミング講座を、毎週1回放課後に1.5時間 x 5回、2つの小学校で受講した、という事実は驚くべきことである。さらに参加した児童が楽しく満足できる講座を運営することができた。
参加した市民メンターも、児童と触れ合うことで子供たちの無限の可能性に驚き、メンター・児童が共に学び合うという理想的な教室を運営できた、あるいは、今後の改善により運営が間違いなくできるとの実感を持つことができた。
<メンターの声>
放課後こども教室という枠で教育委員会・生涯学習課の責任の下で実施したため、小学校のPCルームを活用し、全校生を対象に募集して実施できた。しかし、児童の募集、抽選、学校側との調整、当日の児童引き受けから保護者への引き渡しの対応など、教育委員会の対応負担が極めて大きく、他校へ展開するのは容易ではない。地域人材や民間団体・企業との連携を深め教育委員会の負担を軽減し横展開に繋げる必要がある。
今回育った市民メンターが学校のPCルームをつかって子供たちにプログラミングをボランティアで教えたい、と申し出ても制約条件が多くあって実質的に不可能なのが現実である。さらに、「プログラミング教育」以前に、市民がボランティアとして講師をするときの、児童の管理をどうするかが大きな課題となる。
特別ライセンスの配布、メンター募集について、可能なかぎり広く周知するように努めたが、時間的・リソース的制約などもあり、「知らなかった」という声も多く聞こえてきている。今後は前もって計画し、市の広報誌などへの掲載を実現すると共に、今回の取り組みを広く紹介していくことで、市民メンターによる「プログラミング教室」自体を広めていきたい。
今回の育成講座では、体系立った教え方やクラス運営方法などを一切指導せず、参考情報を提供するだけで、メンターの自主性に任せてきた。今回初めての試みであったが、結果としてうまく終わることができた。今後、同様のことを実施しながら知見とノウハウを蓄積して、体系だった育成方法の構築を検討したい。
<メンターの声>
「放課後こども教室」の目的にもよるが、プログラミング教室としては、通常の授業と同じように、ある程度の学年をまとめないとうまく運営できない、と感じるメンターが多かった。
今回は、メインメンターとメンターでプログラミング教室をうまくまとめてくれたが、今後の教室の拡大を考慮すると、ある程度の学年別が望ましい。さらに、毎回講座実施の度に得る教室運営ノウハウをいかに共有し、また体系化して多数の講座運営を効果的に進めるか、を具体的に考えていく必要がある
<メンターの声>
コードモンキーは、コンピュータサイエンスの経験や予備知識がなくても、誰でもが子どもたちにコンピュータサイエンスの基礎知識を学べるように指導できること、また指導者も子どもたちと一緒に学べることを目指して開発されている。したがってメンターに必要な資質は、プログラミングに係る技術的な経験や知識ではなく、自分自身がまずコードモンキーを使用すること、そしてその実体験に基づいて、子どもたちにコードモンキーを使用して学んでほしいという情熱を持つことである。
今回の実証では、多くの一般市民がコードモンキーをまず自分で触って体験してみてプログラミングを体感し、これなら教えられそう・教えることで地域の役に立ちたい、というメンターが多数出てくることを、豊橋市では実証することができた。800名以上が体験に応募し、30名近くがメンター候補として名乗り出たこと、そこに豊橋市特質の要件があったとは思えない。したがって、同様のアプローチは国内のどの地域でも適応可能なはずである。豊橋での経験を生かし、より綿密に準備し広報を徹底すれば、さらに多くの市民が応募することは間違いない。
豊橋市の特別ライセンス応募者の大多数が「プログラミングを学ぶ機会が欲しかった」ということを応募の理由に挙げている。メンターの多くは自分の子供の将来に対して何をしてあげられるか、また地域のために役に立ちたい、との熱意が背中を押している。この親の思いは日本中同じ、特にプログラミング教室が首都圏に集中していることから、地方都市ではそのニーズがより高い。特段の設備とコンピュータサイエンスの知識を有する人がいなくても、市民が自発的に学び合い教えあうことができる本モデルは、特にこのような地方都市に望まれているものかもしれない。
現行のコードモンキーの課題解決型教材と、詳細な指導案を教師用にガイドするカリキュラムガイドを適用した大規模な実証を日本国内で行うのは、今回が初めてである。その結果から、海外で開発されたこれらの教材が日本でも有効であることを示せた。また、今回のメンターたちが子供たちに教えながら、創意工夫をして作成した補助教材や、カリキュラムガイドを参考にしながら子供たちにとって良いと発案して実践した方法など、日本ならではのきめ細やかな改善が、教育のプロではない市民から次々と出てきた。これらを共有し、整理体系化して、同じ悩みや苦労をしているグループに展開できるようにすることで、展開の広さと速度を高めることができると考える。
現在の課題解決型教材が不向きな点として、ゲームなどの作成を通した創造性の喚起があげられるが、これにおいては、日本への展開を最近開始した、コードモンキーの継続的教材「ゲームビルダー」を通して達成できると考えている。
また、小学校の教科の中にプログラミングを取り入れる、という方針に関しては、今後日本で展開を予定している「コードモンキーの小学生向けの算数コース」であれば、小学2年生からの教科学習でプログラミングを取り入れることが可能と考える。
算数コースは、「距離」(加算・減算・測定の組合せ)、「角度」(分度器の使用)、「掛け算」
から構成され、ドードー(鳥)の向きや歩く距離を正確に操作して、卵を取ることを通じて、これらの理解を深めて学べるように工夫されている。この教育プラットフォームを活用して日本の学校現場のニーズに合わせた教材開発を行っていくことも検討する。それにより、学校教育への具体的な展開の可能性が開かれるものと考える。
コードモンキー 小学生向け 算数コース
「市民総メンターによるプログラミング教育の推進」を掲げ、コードモンキーを用いてそのモデルの有効性を実証した、豊橋市・豊橋市教育委員会およびジャパントゥエンティワン株式会社の今後の重要な役割は、まず、プログラミング教育に対して豊橋市の行政および市民に芽生えた関心と情熱の灯火を絶やさないことである。今回認識した課題に対する対応策、成果の確認できた内容についてはそれの更なる発展と新たなチャレンジ、そして本実証モデルに関心を寄せる他の自治体や教育委員会・学校・企業・個人などへ広げていく活動を進めて行きたい。
豊橋市・豊橋市教育委員会としては、育成した市民メンターと今回の経験を活用して、2018年度から新たに開校する「トヨッキースクール」の実施校へも、プログラミング教室を教育過程外の活動として展開していくことを検討している。今回の特別ライセンス募集の際に、市内の小学校のコンピュータークラブに所属する児童が応募してライセンスを取得し、課外活動でそれを使用するというケースもあった。これはコードモンキーを知った父兄が、クラブ担任に掛け合って実現したものである。また、今回のメンターの何名かは、実証事業期間中および終了後にも、コワーキングスペースなどを利用して、コードモンキー教室を自主的に開催している。このよう自律的に育ちつつあるメンターがアンバサダーとなって、豊橋市内や他地域へ同様の活動の輪が広がることに期待する。
ジャパン・トゥエンティワン株式会社としては、上記活動に対する技術的・ビジネス的な支援とともに、CodeMonkey Studios社と密接に連携して日本への普及に必要な活動や新しい教材の導入、グローバル社会のプログラミング教育の動向情報の入手と情報発信などを推進する。また、コードモンキーを用いたプログラミング教育に賛同して全国各地で行われている個々の活動を、点から線・面へと広げる支援が重要と認識している。
今回は、実証校の施設(PC教室:ノートブックPCと無線Wi-Fi環境)を利用出来たため、ICT環境への大きな課題はなかった。その利用が可能であったのは、教育委員会の生涯学習課が主管となって、参加する児童・市民メンターへの対応並びに設備の使用に対する責任を担って実施して来たためである。しかし、市民メンターが自主的に開催しようとして、プログラミング教室やイベントに学校のPCの教室借用を願い出ても、万が一の問題発生に対する過敏な責任回避や、学校教員の立会が必須であるが時間外勤務を命じることが出来ない、との理由で門前払いされてしまう。また、今後トヨッキースクールスクールでのプログラミング教室の実施校を増やす上でも、教育委員会・生涯学習課の職員への負担が過多になり人員も少ないため、多くの学校に展開することが困難なのが現実である。このような状況では折角整備された設備も使われないまま空き状態となり、情熱持つ市民や団体のプログラミング教育推進の足かせとなる。最大限に有効活用できるための運用ルールや権限と責任の移譲、人的リソースの手配、保険等のセーフティネットの準備などが必須である。
コードモンキーは、ブラウザーとインターネットさえあれば自宅でもいつでもどこでも学習できる。今回も自宅にその環境があるために思いっきり学習出来た児童や市民が多数いた一方で、その環境が無いために学びたくても学べない不平等も生じている。それを補うために、毎月最終土曜日に実証校区内の豊橋市大清水まなび交流館「ミナクル」にて、自宅に環境がなくても学べる「コードモンキー広場」を開催した。ミナクルは新しい施設であるため無料の無線LANが設置され、また豊橋市や豊橋技術科学大学の有する貸出可能なタブレット端末やノートブックPCの使用が可能であった。しかしながら、同様の活動を市内広域に広めようとすると、市民が自由に利用可能な無線LAN環境の整備された公共施設は稀有であり、また借用可能なPCの数も極めて少ない。これらの環境整備も急ぐ必要がある。
今回は、1,000人への特別ライセンス費用をジャパン・トゥエンティワン株式会社が負担し、市民へは無償で提供した。無料だったからやってみた、と言う意見も多く聞いており、今後コードモンキーを使用したプログラミング教育を推進する上で、ライセンス費用の負担が普及の障壁となる可能性がある。それをクリアするための方策として、今回同様に使用できるチャレンジの数を制限するなどした特別ライセンスとして価格を低減し、教材費として参加者が自己負担できる金額とすることで対応が可能と考えている。講座や授業で利用後も一定期間使用可能として、興味を持ち意欲の高い児童や生徒・親がプログラミング教育を自発的に継続可能とすることで、プログラミングスキルの更なる向上が期待されると共に、ライセンス価格を支払うインセンティブが生じる。なお、自宅でPCやネット環境がない児童への配慮も必要となるとであろう。また、プログラミング教育を推進したい有志や団体と、それをサポートする企業・個人をクラウドファンドでつないで経済的支援するモデルも一案として検討している。
実証事業の締めくくりとして実施した、世界初の豊橋の小学生とイスラエルの小学生がネット生中継で対戦するチャンピオンシップは、豊橋市長・教育長・CodeMonkey Studios社CEOを招き、市民100名以上が観戦して大いに盛り上がった。チーム戦ではイスラエルが1~3位を独占するも、個人戦であったなら日本の小学4年生チームがトップであったこと、この体験を通じて参加した豊橋の小学生がもっと高度なプログラミングを勉強したいと意欲を高めるなど、日本の若者たちの将来は明るいと期待を持てるイベントとなった。このようなイベントも各地に広めていくことで、日本全体のプログラミング教育の推進を応援することも考えたい。
プログラミング教育に関して、豊橋市教育委員会では課程外の教育を意識した本事業とは別に、「プログラミング教育の推進」を予算化して、小学校・中学校、各1校を研究校に選び、プログラミング教育の実践研究を実施している。これは、教育委員会の学校教育課が主管となり、2020年から授業でプログラミングを行うために、各種のプログラミング学習教材を選び、発達段階に即した授業づくり、教科指導における教材の効果的な活用方法、教員の指導方法などの実践研究を行っているものである。本事業で用いたコードモンキーも対象教材の一つとして、教員が5-6年生のクラスの授業として、カリキュラムガイドも参考に、生徒たちにあった指導方法を開発して実践している。今後、教育委員会の生涯学習課で行った、さまざまな経歴や人生経験をいかした意欲的な市民メンターの育成と、放課後こども教室のトヨッキースクールで得た知見、学校教育課で教員が授業としての指導方法の実践研究で得る知見と今後授業を本格実施する上で生ずる材不足、これらが相互補完して相乗効果でプログラミング教育が促進されるというのは、新しいモデルとしての発展系であると考える。それに向けた課題の確認と実施できる体制作りが急務であると考える。
(報告書作成責任者: ジャパン・トゥエンティワン顧問/豊橋技術科学大学教授 高嶋孝明)