特定非営利活動法人みんなのコード
事業者名 | 特定非営利活動法人みんなのコード | |
実証ブロック/実証校 | 北海道・信越・関東地区 | 和光小学校、附属札幌小学校、横須賀市立田浦小学校、田上町立田上小学校、田上町立羽生田小学校 |
育成メンター(メインメンター) | メインメンター数: | 24 |
メインメンター属性: | 教職員 | |
育成メンター(サブメンター) | サブメンター数: | なし |
サブメンター属性: | なし | |
研修時間
※実証エリア・実証校によって異なる場合は加重平均 |
3 | 時間 |
(うち自宅研修時間) | 原則0だが、授業準備のために2時間程度費やすメンターもいた | |
使用言語・教材・ツール
※ツールはPC・タブレット以外で |
言語: | Scratch |
教材・ツール: |
1アンプラグド教材(「ルビィのぼうけん」)
2ドリル型教材(「Hour of Code」) 3Scratch |
|
使用端末とその帰属
※実証会場によって異なる場合は実証校ごとに記載 |
各児童につき1台以上 | 帰属:実証校 |
講座の受講児童・生徒数と学年 | 受講者数: | 合計140名 |
学年:
※複数学年の場合は学年ごとの人数を記載 |
小学校4~6年 学年ごとの集計なし | |
カリキュラム | 附属札幌小では加賀プランのみ5時間、和光小では2017年プランのみ5時間、そのほかは両プランを結合した10時間の実習が行われた。 | 基本的に加賀プランが1日、2017年プランが1日必要となる。 |
使用端末(PC・タブレット)の帰属 | 実証校 |
北海道・新潟・神奈川の3地域において、総合的な学習の時間でも実施可能なプログラミング教育活動の実証事業を行いました。内容は教養課程内を意識した形式となっています。
昨年度、加賀モデルでは5コマ1年分の実施でしたが、本事業は10コマを実施し、前半5コマは加賀モデル、後半5コマは本年度の新規授業内容(以下2017モデル)とする2階建て構造といたします。(※)
加賀モデルでは、社会とプログラミングの繋がり・アンプラグド・ドリル型教材での学習活動を実施しましたが、2017モデルは「自分たちの暮らしをコンピューターで便利にする」というテーマの下で、Scratchを使用しての学習活動を中心といたします。
なお、3地域を実証地域としているものの、各地域毎で下記変化を付け、指導者育成方法の検証も実施いたします。
1. 新潟地区 基本モデル
2. 北海道地区 年度分割モデル (北海道教育大学付属札幌小学校においては、加賀モデル単独実施。和光小学校においては、2017モデル単独実施)
3. 神奈川地区 授業見学省略モデル (みんなのコードによる児童への模範授業の見学を省略し、メンターへの模擬授業で代替します)
(※ 本実証事業においては、単年度に実施しますが、展開時は2年間に分けての実施を想定します)
平成28年度の本事業を石川県加賀市で実施し、2020年度から総合的な学習の時間で実施することを想定した5時間分のカリキュラム(以下、加賀モデル)を実証しました。実際に同市では平成29年度から市内全校に展開される運びとなり、他自治体からも引き合いが多く加賀モデルは実証事業として成功であったと考えています。
しかし、同市やその他の自治体より、1年目の内容を踏まえた2年目のカリキュラムも必要であるとの声が多く、本事業の実施に至りました。
また、同市においては市長の強力なリーダーシップにて継続的な実施がすぐに決まったものの、他市においては本取組の広がりに課題があり、広報活動への重点も置く必要があると認識しております。
【課題1】アンプラグド・ドリル型教材を実施した上でのScratchでの効果的な授業の実施
【課題2】第1項の為の最適な指導者育成方法の検討(内容・時間数等)
【課題3】第1項後の継続的な実施の為の、学校内外への「プログラミング教育への必要感」や「子どものためになる」との世論の理解の不足
上記の様な課題を背景として、2017年度実施の当モデルでは、
【目的1】2年分の総合的な学習の時間の時間でも活用可能なカリキュラムの確立
【目的2】上記カリキュラムの指導者育成方法の確立
【目的3】プログラミング教育の学校内外への必要性・可能性の啓発
を見据えて実証を行いました。
本実証事業では、3ブロックの各自治体の教育委員会に協力を要請し、そのうえでそれぞれの自治体にある小学校から実証校を選択、研修を重ねながら授業実践に向かっていくという方式を取っています。他外部団体との連携は基本的にはありませんが、みんなのコードと教育委員会との間につながりができることによって今後のプログラミング教育の普及が加速されると認識しております。
地域 |
日にち |
時間 |
会場 |
住所 |
内容 |
北海道 |
7月8日 |
9:00-12:00 |
和光小学校 |
北海道札幌市北区北34条西7丁目 |
指導者養成講座 |
北海道 |
7月27日 |
9:00-12:00 |
和光小学校 |
北海道札幌市北区北34条西7丁目 |
プログラミング講座 |
北海道 |
7月27日 |
14:00-17:00 |
附属札幌小学校 |
北海道札幌市北区あいの里5条3丁目1−10 |
指導者養成講座 |
北海道 |
7月28日 |
9:00-12:00 |
和光小学校 |
北海道札幌市北区北34条西7丁目 |
プログラミング講座 |
北海道 |
8月10日 |
10:00-17:30 |
子ども學舎 |
北海道札幌市中央区大通西18丁目2−8 |
シンポジウム |
北海道 |
8月17日 |
8:50-11:35 |
附属札幌小学校 |
北海道札幌市北区あいの里5条3丁目1−10 |
プログラミング講座 |
北海道 |
8月17日 |
11:45-12:30 |
附属札幌小学校 |
北海道札幌市北区あいの里5条3丁目1−10 |
研究会 |
神奈川 |
8月1日 |
13:00-17:00 |
横須賀市教育研究所 |
神奈川県横須賀市久里浜6-14-3 |
指導者養成講座 |
神奈川 |
8月23日 |
9:00-12:20 |
横須賀市立田浦小学校 |
神奈川県横須賀市田浦町3丁目55 |
プログラミング講座 |
神奈川 |
8月23日 |
13:30-16:00 |
横須賀市立田浦小学校 |
神奈川県横須賀市田浦町3丁目55 |
指導者養成講座 |
神奈川 |
8月24日 |
9:00-12:20 |
横須賀市立田浦小学校 |
神奈川県横須賀市田浦町3丁目55 |
プログラミング講座 |
新潟 |
8月7日 |
9:00-16:50 |
田上町立田上小学校 |
新潟県南蒲原郡 田上町田上乙333 |
指導者養成講座 |
新潟 |
8月8日 |
8:30-14:30 |
田上町立田上小学校 |
新潟県南蒲原郡 田上町田上乙333 |
指導者養成講座 |
新潟 |
9月16日 |
9:00-12:20 |
田上町立羽生田小学校 |
新潟県南蒲原郡田上町羽生田乙555 |
プログラミング講座 |
新潟 |
10月28日 |
9:00-12:20 |
田上町立羽生田小学校 |
新潟県南蒲原郡田上町羽生田乙555 |
プログラミング講座 |
本事業では、2017年4月以降、参加校の小学校教員に対しプログラミング教育指導担当者を募集しました。プログラミング教育指導担当者とは、各校においてコンピューターに関する基礎知識を有し、来年度以降各学校においてプログラミング学習を展開する上で、中核となる教員です。
特定非営利活動法人みんなのコードが全体の取りまとめを担い、北海道・新潟・神奈川の3地区でそれぞれNPO法人進学支援の会・こども學舎、田上町教育委員会、横須賀市教育委員会にコーディネーターとしての協力を要請しました。各地区のコーディネーターがメンター募集の中核を担いました。
北海道では北海道教育大学附属札幌小学校・札幌市立和光小学校、新潟では田上町立田上小学校・田上町立羽生田小学校、神奈川では横須賀市立田浦小学校を実施校として、当該教員に対して各校1名以上のプログラミング教育指導担当者を募集しました。
前年度に引き続き、本モデルにおいて実際の教員を選択した理由は2つありました。一つ目は平成32年にプログラミング教育が必修化される際に、実際に教壇に立つ先生の準備が遅れていたことです。教員自身も多くは無関心であったり、プログラミングについて「コーディングを小学生に教える」という誤解もあったりという状況の中、実際のプログラミング学習の機会に触れる、その際の子どもの表情を見る、そしてその教え方を学ぶということが現場では進んでおりませんでした。これはこのプログラミング教育に対する市長の考え、教育長の考えにも依存するもので、自治体間でも連携がなされず、準備にも大きな差が生じております。もう一つは加賀市での実証事業成功を受けて、多角的な視野を持ってメンター育成の可能性を探る必要性を感じたからです。ある自治体での導入事例が確立すれば、それを横展開することも可能ですし、またその教育委員会が他の教育委員会に対し研修会を実施することも可能となります。その際、メンター育成にベストな方法が確立されていないと、地域間格差が生じたり若年層に対するプログラミング教育の浸透に障害となったりすると思われたからです。
メンター募集に際しては、前述の通り3地域各地区コーディネーターが中心となり、市内の小中学校におけるプログラミング教育に関心のある教員を各校1名以上、計23名を対象としました。内訳としては北海道で10名、神奈川で5名、新潟で8名のメンター育成を目指しました。また、現場の教員を総括する役割を担っている校長や、教育委員会に所属している職員に対しても研修を実施いたしました。
平成28年7月8、27日、8月1、7、8、10、17、23日に実施されました。また、上記日程のうち、8月10日に実施された子ども學舎でのシンポジウムは、本実証事業を基に北海道地区でのプログラミング教育の推進を横展開する目的で行われました。また、8月1日に横須賀市教育研究所で実施された講習会では、本実証事業実施にあたり横須賀市教育委員会と協働し多くの教員に参加していただく研修会にて本実証事業の研修内容のうち前半部分を講習・修了しました。
昨年度の加賀で実施した実証事業を踏まえて、メンターを対象とした座学での講義と授業実演の補助を基本パターンとして育成を実施しました。本年度の新しいモデルの模索として、地区ごとに3パターンの育成計画を実施しました。
パターン |
日にち |
時間帯 |
内容 |
地区 |
基本 |
1日目 |
午前 |
座学での講義 |
新潟 |
午後 |
授業での補助(加賀プラン) |
|||
2日目 |
午前 |
模範授業での補助(2017プラン) |
||
午後 |
振り返り |
|||
短縮 |
1日目 |
午後 |
座学での講義+模擬授業(加賀プラン) |
神奈川 |
2日目 |
午後 |
模擬授業(2017プラン) |
||
分割 |
1日目
|
午後 |
座学での講義+模擬授業(加賀プラン) |
北海道 |
1日目
|
午前 |
座学での講義+模擬授業(2017プラン) |
メンター研修に関する工夫として、実際のプログラミング教材の体験から、プログラミング教育が必要な理由、授業に導入するための単元指導計画例の提示等を行っております。また、Scratchを使用した効果的な実践事例の提示も行っております。そうした段階を踏むことで、プログラミング教育の根本を理解したメンターを育成することができると考えております。
研修資料や模擬授業の動画等を本実証事業参加団体で共有し、校内自主研修等に広まるよう工夫をいたしました。教育委員会と提携した研修を通じて、プログラム教育推進の横展開も企図しております。また、みんなのコードが直接模擬授業をするのではなく教員の方々にノウハウを教えることで、自治体内で副次的にプログラミング教育全体への認知度が向上していくモデルだと考えております。
授業内容についても「教育課程内でも教育課程外でも実施できる」形にしており、本実証事業のように夏休み期間や土曜特別授業でも実施できます。また、平成30年度の展開も可能なように総合的な学習の時間でも実施できる形にしており、他の自治体でも時間枠の確保もしやすくしております。
研修教材には、みんなのコード利根川によるスライドと、Scratchを使用しました。
メンターとして参加してくださった教員の方々が指導する学級を中心として、教育課程の一環として、及び夏休みの教育課程外活動も活用しながら、参加できる児童を募集しました。
対象学年は、プログラミング教育の必修化を踏まえ、小学生を対象としました。本モデルにおいて取り扱った教材は、難易度別のコースがあることから、中・高学年であればいずれの学年も取り組むことができるものですので各児童の理解度に応じた対応が可能となります。とりわけ、Scratchによる実証事業は「自分たちの暮らしを便利にする」というテーマを掲げていたため、身近なものとプログラミングを結びつけて課題を解決する発想力の水準が期待されており、こちらも小学生中・高学年が相応しいという認識に至りました。
メンターの指導する学級単位で実証事業を行うと、学級全体のコミュニケーションが活発であるためより発展的な思考に到達しやすく、Scratchを使用した授業の強みを最大限発揮できると考えました。かつ、より授業実践を見据えたビジョンが形成できると結論づけました。
講座各回の実施日程と会場については「1.3 実施スケジュール」を参照。講座各回の内容は以下の通り。
地域 |
日にち |
時間 |
会場 |
内容 |
参加人数 |
参加メンター数 |
講座進行責任者の属性 |
北海道 |
7月27日 |
9:00-12:00 |
和光小学校 |
2017年プランの単独実施、1日目。 |
37 |
10 |
実証校教員 |
北海道 |
7月28日 |
9:00-12:00 |
和光小学校 |
2017年プランの単独実施、1日目。 |
37 |
10 |
|
北海道 |
8月17日 |
8:50-11:35 |
附属札幌小学校 |
加賀プランの単独実施。 |
51 |
10 |
|
神奈川 |
8月23日 |
9:00-12:20 |
横須賀市立田浦小学校 |
2017年プランの実施、 |
22 |
5 |
|
神奈川 |
8月24日 |
9:00-12:20 |
横須賀市立田浦小学校 |
プログラミング講座 |
22 |
5 |
|
新潟 |
9月16日 |
9:00-12:20 |
田上町立羽生田小学校 |
プログラミング講座 |
19 |
8 |
|
新潟 |
10月28日 |
9:00-12:20 |
田上町立羽生田小学校 |
プログラミング講座 |
19 |
8 |
また、加賀プランと2017プランの概要については以下の図表の通りです。
児童に対しては、「プログラミングが身近な生活を便利にしていると気づくこと(導入)」、「プログラミングとはコンピューターに処理を指示することだが、普段の生活とも共通する部分があると感じること(アンプラグド)」「自分でもコンピューターにプログラミングで指示することで、デジタルのつくり手になれると感じること(Hour of Code)」「自分たちの暮らしをさらに自分たちがプログラミングをすることによって便利にできそうだと感じること(まとめ)」との意図を各時間に持たせるように工夫しました。
その上で2017プランでは、「プログラミングされていないものをプログラミングしたらどうなるか考えること(発展)」「実際にプログラミングによって身近な課題を実践的に解決してみること(Scratch)」「自分たちの暮らしを自分たちがプログラミングすることでより便利にできることが可能だと実感すること(まとめ)」との意図を加え、より実感を持ってプログラミングの可能性を体験してもらうようにプランニングしました。
ただ、そういった個別の学習目標よりも、全時間を通して「プログラミングは楽しい」と子どもたちに感じてもらうことをポリシーとして大事にしております。
日にち |
時限 |
テーマ |
具体的な内容 |
1日目
|
1時限目 |
テクノロジー体験 |
身の回りにあるプログラミングで動いていると思うものを10個あげてみる。コンピューターをどのようなものかを説明する。実際にプログラミングがどのように自分たちの暮らしを便利にしているか考え、事例を提示する(ロボットなど)。 |
2時限目 |
プログラミング模擬体験 |
コンピューターを使わない学習;「ルビイのぼうけん」でのアンプラグド学習 |
|
3時限目 |
Hour of Code |
コンピューターを使った学習;「Hour of Code」のなかで実施対象の学年に合わせたコンテンツを体験 |
|
4時限目 |
|||
5時限目 |
発展的思考 |
まだプログラミングされていないものにプログラミングするとどうなるかを体験 |
|
2日目
|
6時限目 |
企画案作成 |
5限目の内容から上でのアプリのラフ案作成 |
7時限目 |
Scratch |
コンピューターを使った学習;Scratchでのアプリのプロトタイプを実装 |
|
8時限目 |
|||
9時限目 |
発表準備 |
発表準備 |
|
10時限目 |
発表・まとめ |
発表・まとめ・振り返り |
前述の通り、本事業は3つの目的を掲げています。
【目的1】2年分の総合的な学習の時間の時間でも活用可能なカリキュラムの確立
【目的2】上記カリキュラムの指導者育成方法の確立
【目的3】プログラミング教育の学校内外への必要性・可能性の啓発
加えて、プログラミング教育の普及にあたり、指導者(メンター)の育成と、その指導者(メンター)により実施される講座に参加する子どもたちの両者に目標を設定します。
【プログラミング指導者(メンター)】
プログラミング教育とは、いわゆるコーディングを指導するということだけではなく、プログラミング的思考とされる「論理的思考力」や「問題解決力」を学ぶことでもあります。社会の課題に直面した時、論理的発想力によって自分たちの力で課題を解決できる人材を育成する必要性があります。
また、単にプログラミングそのものを学習するだけでなく、社会でどのようにテクノロジーが活用されているのか、子どもたちの身近な暮らしと関連付けたり、子どもたちがワクワクするような将来の可能性を示し、学習意欲を向上させたりといった取り組みも必要です。
このことを理解してもらうとともに、能動的にプログラミング普及活動の最前線を担える人材となっていただくことを目指します。
また、本事業終了後も実施自治体内にて教育課程内外でプログラミング教育の実施及びメンターの拡大再生産が始まることを企図しております。
【参加する児童(子供たち)】
プログラミング教育を通じて、筋道を立てて物事を考えること(論理的思考)や物事を創りだすこと、およびその楽しさ(創造性)、それを自分でやり遂げる能力(問題解決能力)を身につけてもらうことを目指します。その上で、プログラミングは難しいものではなく、楽しいものだと感じてもらうことを目指しています。
メディア掲載は特にありませんでした。
メンターには、本モデル実施により下記のような回答がありました。
・「プログラミング」と聞いて、個人が黙々とパソコンに向かうイメージを持っていたが、アンプラグドな活動もあることを知り、プログラミング教育の意義を知り、そのイメージが変わった子供達は非常に活き活きとした表情で課題に取り組んでおり、会話も弾んでいた。
・プログラミング教育必修化への不安が払拭された。指導内容が子供の学びにどう繋がるが見えたことでプログラミング教育を捉え直すことができた。電気が発明されたから理科で電気を学ぶ、社会の常識になったことを教育で学ぶというのはとてもすんなり理解できた。
また、横須賀市での実践事業を終えたメンターが、横須賀市内算数研究会の研修事業の一つであり月に一度開催されている「算数サークル」においてプログラミング教育を実践するなど、メンターの自主的な横展開が促進されたと認識しております。
弊法人実施のアンケートでは、以下のような反応が教員の方々よりありました。
・プログラミングのことがわかりました。子供たちも楽しみながらできるのが良かったと思います。
・自分が実際に授業を行う際にも、この授業形式なら活用できそうだと思いました。
・講座の始まるだいぶ前から子供達がパソコンの椅子に座り、まだかまだかとプログラミングの授業を受けたいという気持ちを強く感じた。
また、保護者の皆様からのコメントは特に受けておりません。
校長先生・教育委員会の先生からのコメントは特にいただいておりません。
児童はプログラミングという言葉に見覚えがありつつ、体験したことないという声がほとんどでした。とはいえ、苦労するポイントがあっても友達と協力して向かっていく様子が見受けられました。一方でメンターは指導の難点をいくつか見出しており、適切に教材を理解した上で児童ごとの進度・理解度に適合した指導ができるか不安との声が上がりました。
教育委員会と民間企業との役割分担について昨年に引き続き困難な点がありました。教育委員会が協力的かつ主導的に本モデルを推進しましたが、民間企業との連携、役割分担について柔軟に対応していくことが必要であったと認識しています。
昨年度の実証事業では、メンター育成のために授業実施の機会を重ねることが必要ですが実際に授業を実施できる先生は一度に多くても二人であることが効率の悪さとして挙げられました。そうした反省を踏まえ、例えば横須賀での実証事業では、1日全5コマの授業を4名の先生で分担することにより、授業を実際に担当するコマと授業を見学するコマを交互に振り分けました。また最終的に相互のフィードバックを展開することによって先生同士のプログラミング教育のノウハウを相互共有しました。とはいえ、模擬授業を含めても先生同士の横展開には限界があり、教育委員会や各自治体がより積極的にサポートする必要があると考えました。
本年度の実証事業では理想的なモデルを模索する上で「1.2モデルの全体概要」で前述したように、
1、 新潟地区 基本モデル
2、 北海道地区 年度分割モデル
3、 神奈川地区 授業見学省略モデル
のように、各地域で変化をつけて実施しました。比較対照の結果を反省点としてまとめておきたいと思います。
年度分割モデルでは、2017モデルのみを採用した札幌市立和光小学校での生徒の達成度が他地域に比べて不十分でした。プログラミング的思考の導入部分を授業として行っていないことが問題と考えられます。導入から発展させ自分たちの生活と密接に結びつけてプログラミングを思考することが必要だと認識しております。
授業見学省略モデルでは、みんなのコードによる模擬授業を省略してメンター研修で代用しましたが、メンターの自立性も促進され、メンターの教員同士でより協力して授業を作っていく様子が見られました。基本モデルのように必ずしも模擬授業を実施する必要がないのではないと考えられました。メンター育成の達成数を意識すると模擬授業は効率的な選択ですが、授業見学モデルはより効果的なメンター育成が実現できると判明したと言えます。
モデル普及に向け、実証校・教育委員会他との連携の中で連携体制の構築に関して修正するポイントは以下の通りです。
a. 各自治体の教育委員会に則したカスタマイズ
b. プログラミング教育の浸透度の地域間格差の解消
c. 先生同士の拡大再生産・横展開をよりサポートする仕組み
モデル普及に向け、メンター育成の観点において修正可能なポイントは以下の通りです。
d. 各校内での自主的な研修会実施に向けたコンテンツ整理
e. 各学校のICT環境の改善・予算の確保
モデル普及に向け、講座内容に関して改善できるポイントは以下の通りです。
f. 2017年モデル以降の発展的なコンテンツ
g. 2017年モデル自体の見直し
(Scratchを思い通りに使いこなせるまでに時間がかかること、育成するメンター数にばらつきがあること、児童によっては内容が難化し過ぎてしまうこと、加賀モデルと2017年モデルの接続がやや急であること、など)
h. 模擬授業の質の向上
前述の通り、本モデルは先生同士の相互的な情報共有による授業の質の向上を試みており、それは成功していたと考えられます。横須賀のモデルでは、別の小学校において同様のメンターが授業を掛け持ちし、知識やノウハウを共有、分担することにより加賀プランと2017プラン全体を通じたプランを設計していました。
こうした先生同士のコミュニケーションを利用した横展開はどの地域どの学校においても重要だと考えられます。
加賀プランと2017プランを複合的に展開する本実践事業は、初等教育段階でのプログラミング思考の導入と発展を実現するプランであると捉えており、学級の規模や生徒の情報リテラシーの有無に関わらず、実生活を原点として展開できる普遍的なプランだと考えております。また、児童のプログラミングに対するイメージが向上することにより授業自体の人気が出れば、縦横に拡大することが可能だと捉えております。
みんなのコードの本実証事業開始後、平成30年1月末時点で30以上の市区町村または都道府県よりプログラミング教育についての指導実績があり、その中で本実証事業の内容の横展開を実施しています。すでに普及段階に入っているものと認識しています。
継続的なメンター育成によるプログラミング教育指導教員の拡大再生産を進めることにより、みんなのコードのリソースが不足しているという課題は解決され、各自治体にプログラミング教育の知識を十分に備えたメンターが立つようになり、人脈形成がより一層進化していると考えております。つきましては、みんなのコードを中核とするメンター同士の連帯関係を強固なものとし、認識をより一致させていくことで、横展開の仕組みを整えたいと思っております。シンポジウムによる情報交換会、教材の提供を行っていくことも継続し、各自治体やエリアのコミュニティを醸成させていくことを視野に入れております。弊社の今年度の活動実績として、プログラミング教育に関するシンポジウムを主に教員の方を対象として北海道・東京・長野・大阪・香川・福岡の6都市で開催、計833名を動員いたしました。こうしたイベントを通じても、全国的な情報共有が実現できると企図しております。
そうした活動はコンテンツの改善にも効果的だと考えており、あくまでも教員と提携した形で協働していきたいと思っております。
別添えの「みんなのコード経費支出計画」のとおり、コストはモデル全体で約498万円。
うち、メンター育成に費やすコストが研修会準備費とメンター研修にかかる費用の合計で270000円+1910520円=2180520円。また、児童に対してかかるコストが1432080円。
メンター育成一人当たりのコストは約94805円、児童一人当たりのコストは約10229円。
別添えのファイルを参照。