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「IchigoJamでものづくり」~地域人材を活かして行うもの作りを通した科学技術体感型授業~

株式会社ナチュラルスタイル

H28年度第2次補正予算にて実証実施

1.モデルの概要

1.1 モデルの全体概要

「もの作りを通して伝える地域人材を活かしたプログラミング」を目標としてこのモデルを実施した。もの作りは日本社会を支える重要な要素であり、IoTなどこれからの社会には必要不可欠なものとなっている。全国各地には若く優秀な学生がたくさんおり、地域それぞれのユニークな特徴をその地域の人材で継承、育成することは今教育の観点からもたいへん有意義であると考え工業高等専門学校の学生や社会人が教員をサポートするモデルを実施した。選んだ題材は、実施地域の伝統産業をテーマにした「メガネ拭きロボットの製作」。「プログラミング」という単語の持つイメージを「野球」や「サッカー」のイメージのように持っていくために地元のおしゃれなメディアも取り込んだモデルに仕上げた。

事業者名 株式会社ナチュラルスタイル

1.2 実施体制

1.2.1 体制図

体制図

1.2.2 実証校、教育委員会、他外部団体との連携について

鯖江市教育委員会に協力いただき実証校2校を選考していただいた。実証にあたりどのように進めるかなど、細かな打ち合わせは鯖江市教育委員会の会議室をお借りし、複数回に渡ってミーティングを実施。実証校となる2校からは校長、学生メンターの計画については福井高専 村田講師、広報活動に関して地元メディアである福井新聞社、そして全体進行についてPCN(プログラミングクラブネットワーク)福井のメンバーが参加した。

1.3 実施スケジュール

実施スケジュール

2.メンターの育成

2.1 育成メンター概要

今回はメンターとして実施校教員を含む「社会人」と「高専生」を対象とした。当初、県内の教員を対象として募集をかけたが、その募集を知った一般の方からも参加したいとの声があり、急遽受け入れを行った。また、高専(高等専門学校)は全国に55キャンパスを有する一大学校組織であり、そこに通う学生はプログラミングに関するテクニカルな知識も持ち合わせており、福井で行うメンター育成はすぐに全国に展開できる可能性が高いと考えた。

社会人(教員含む) 18
高専生 44

2.2 メンターの募集

以下のようなチラシを、県内教員、実施校生徒に配布した。教員向けチラシは一般社会人の目にも止まったらしく、問い合わせを多く受けたため親御さんや地域の方々の参加も受け付けた。高専生の募集には福井工業高等専門学校 村田講師 に学生の起用を依頼、情報工学科の2年生全員がメンターに参加した。

教員向けのメンター募集チラシ

(a)教員向けチラシ

2.3 育成研修

2.3.1 研修プログラム概要
  • ・高校生
    • ・PCNのスタッフが福井高専に出向き、電子情報工学科2年生の授業90分の中で育成研修を全4回行った。
      • ・4/25 第1回 高専生メンター育成講座(90分)
        • ・IchigoJamキットを半田付けして製作
        • ・電子回路の知識とコンピュータの基本をレクチャー
      • ・5/9 第2回 高専生メンター育成講座(90分)
        • ・実施講座1コマ目を想定した模擬授業
        • ・実施講座2コマ目を想定した模擬授業
      • ・5/6 第3回 高専生メンター育成講座(90分)
        • ・実施講座3コマ目を想定した模擬授業
      • ・6/20 第4回 高専生メンター育成講座(90分)
        • ・実施校校長による小学生との接し方講座
        • ・実施講座1~3コマ目の復習
    • ・育成講座終了後、習熟具合を測るために学生に対しテストを行った。
  • ・社会人(教員含む)
    • ・PCNのスタッフが集まった社会人(教員含む)に対して90分2コマの育成研修を2回行った。
      • ・7/24 第1回 社会人メンター育成(90分 x 2コマ)
        • ・実施講座1,2コマ目を想定した模擬授業
        • ・実施講座3,4コマ目を想定した模擬授業
      • ・7/25 第2回 社会人メンター育成(90分 x 2コマ)
        • ・実施講座1,2コマ目を想定した模擬授業
        • ・実施講座3,4コマ目を想定した模擬授業
    • ・育成講座終了後、習熟具合を測るために参加者に対しテストを行った。
2.3.2 研修教材

研修にはIchigoJamと本講座用の電子工作キット、思考サポート用カードなどを用いた。

  • 機材a)こどもパソコン IchigoJam(左)とIchigoDake(右)
  • 機材a)こどもパソコン IchigoJam(左)とIchigoDake(右)

(a) こどもパソコン IchigoJam(左)とIchigoDake(右)

プログラミングを学ぶこども向けの専用パソコンとして福井県鯖江市で開発されたIchigoJamは安価(¥1, 500~、2017年現在)に提供されており、一人一台持つことが現実的である。またこれ単体ではインターネットに接続することができず、ネットリスクの議論とは切り離した所でプログラミング教育を行うことができる。ゲームなどの画面の中だけのプログラミングのほか、様々なセンサーや駆動系を制御した物理的な世界のプログラミングも体験することができ、半田付けして自作することも可能なことから中学校の技術家庭にも応用が可能である。また、リコーダーのように持ち歩くことができさらに安価(¥980~、2017年現在)に開発された IchigoDake も同性能で選択可能である。プログラミングに用いる言語環境も選択が可能で、キーボードでのタイピングによる BASIC言語,JavaScript言語、十字キーとA Bボタンだけでプログラミング可能な IchigonQuest 、タブレットによるタッチ入力が可能な カトラリーアップス がある。今回の講座では BASIC言語 を選択した。

機材b)周辺機器

(b) 周辺機器

IchigoJamの使用にあたってはキーボードとTVを必要とする。今回はこれらも市販品から調達し、キーボードは ¥800程度、TVモニタは ¥2,700 などである。機材の配布や接続準備にはそれなりの時間を要してしまうため、一体型のスクールセットなどを用いることも可能である。

機材c)スクールセット

(c) スクールセット

機材d)カトラリーカード

(d) カトラリーカード

BASIC言語をキーボードで入力する前に頭の中の思考をしっかりと整理するために カトラリーカード も利用した。安価な名刺用紙にプリンターで印刷したもので、学校でも準備することができる。カードの表には行いたい動作が絵で示されており、裏にはそれに応じたBASICコマンドが記述されている。プログラミングにまだ慣れていない児童らは物理的なこのカードを並べて思考を整理し、固まったところで裏返してIchigoJamに入力する。

機材e)わくわく電子工作キット

(e) わくわく電子工作キット

機材f) プログラミング入門プリント

(f) プログラミング入門プリント

講座の進行は入門プリントにそって進めることができる。このプリントはIchigoJam BASICを用いた数々の試行教室から生まれたものであり、小学校中~高学年向けである。BASICの基本からプログラミング的思考の入門までが盛り込まれている。

3.実証講座の実施

3.1 講座の概要

講座実施概要

(a) 実施概要

児童募集チラシ

(b) 児童募集チラシ

  • ・8/3 鯖江東小学校の教室にて実施。
    • ・1コマ目(45分)
      • ・「はじめのいっぽ」
      • ・機材の準備方法、操作方法、BASIC言語の基本、プログラミング的思考入門
    • ・2コマ目(45分)
      • ・「ゲームをつくろう」
      • ・ゲームを題材にした1コマ目の反復訓練(ドリル)
      • ・より深くプログラミングの要素を体験
    • ・3コマ目(45分)
      • ・「IchigoJamかくちょう」
      • ・電気の流れ、ボタン検知、サーボモータ駆動の練習
    • ・4コマ目(45分)
      • ・「メガネふきロボットをつくろう」
      • ・児童それぞれが考えた仕組みで めがねを自動で拭くロボットの製作
    • ・5コマ目(45分)
      • ・「発表会」
      • ・全員の作品を1つずつ自ら発表、特徴や工夫した点、今後の改善点などを発表
  • ・8/7 鯖江神明小学校の教室にて実施。
    • ・鯖江東小学校と同じ

3.2 実施の様子

  • 教員が授業を実施している様子(左)、高専生がサポートしている様子(右)
  • 教員が授業を実施している様子(左)、高専生がサポートしている様子(右)

(a) 教員が授業を実施している様子(左)、高専生がサポートしている様子(右)

  • カードを使って思考している様子(左)、出来上がったロボットを発表している様子(右)
  • カードを使って思考している様子(左)、出来上がったロボットを発表している様子(右)

(b) カードを使って思考している様子(左)、出来上がったロボットを発表している様子(右)

当日、模造紙大のキーボード写真を準備するなど、教員は必要なツールを自ら作って授業にのぞまれた。高専の学生は年齢が近いこともあってか児童とフレンドリーに接し、技術的なサポートをしっかりできており、はたから見た雰囲気はとても微笑ましいものであった。

3.3 メディア掲載

【テレビ関係】
・福井放送:
・丹南ケーブルTV:
【新聞・雑誌関係】
・日本経済新聞:
・福井新聞:
・日刊県民福井:
・電波新聞:
・(誌名不明):

(※画像割愛)

3.4 参加者の声

3.4.1 児童・生徒の声

・プログラミングをしてみたらおもしろかった
・役に立つものをプログラミングしたい
・個人個人の発想が自由に表現できて楽しいからプログラミングを今後も続けたい
・プログラミングはつくるのが楽しいから今後も続けたい
・コンピューターを使ってちがうものも作りたい
・こどもでもゲームやアプリの作り方を考えれば変わるのだな~と思った
・プログラミングをつかってもっと便利にしたい

3.4.2 メンターの声

・児童の考えを引き出そうとした
・基本的にはあまり口出ししないようにしてつまずいているなと思ったら助言するようにした
・児童が何をしたいのか明確にしてアドバイスするよう努めた
・研修を通して子供達のつまずく点などを知れたので、教える際に注意したい
・自分が当たり前にやっていることも児童にとっては難しいので、丁寧に教えてあげられるよう努めた
・教えてあげるためには自分が理解しないといけない
・遅れている子がいないか確認しながらすすめるよう努めた
・小学生は「基本的なルールを先におさえる」「細かく進み具合を確認する」などが貴重であると知れてよかった
・説明の仕方が難しかった
・リアクションを大きくしたり、一人取り残された感を感じさせないようフォローした
・児童や生徒が、こうしたい!というとき即座にヒントを提示できるようになりたい
・メンターとしての経験を積める機会を増やして欲しい
・児童のわからないところをしっかりフォローできた
・児童の方からたくさん声をかけてくれて嬉しかった

3.4.3 実証校の先生・保護者の声

特になし

3.4.4 実証校校長先生・教育委員会の声

・単純なゲームであっても、自分で打ち込み、画面が動くことに、ものすごく驚き、喜んでいた。
・製作段階では「数字を変えることで動く速さや角度が変わること」「ライトが付いたり消えたりすること」などの試行錯誤の部分や考えを巡らす部分に、児童はのめり込んでいた。自分で発見することに喜びを感じているようで、日頃の授業ではなかなか確保できない時間、経験だったと思う。
・事前に児童がつまずくだろうと予想された「キーボードの打ち方」「工作材料の数や与え方」については、掲示物を使った丁寧な指導や材料の精選と置き場所の確保などにより、スムーズに活動できていた。
・児童同士の教え合いや、メンターの支援により、試行錯誤を楽しんでいる様子が見られた。
・「くそおもしろい、これ。」「家で続きをしてもいいですか。」「夏休みの自由研究にしてもいいですか。」など、意欲的な声が聴かれた。
・タイトな時間設定だったので、プログラミングを活用したロボット制作には、難しさを感じている児童がいた。メンターが1対1でつくことで、完成に近づけることができていた。
・拡張の配線は、何番目の穴に差し込むのかが分かりづらそうだった。

4.アンケート結果

4.1 児童・生徒

  • 児童・生徒向けアンケート(Q1-8)あなたはこれまで、「プログラミング」という言葉を知っていましたか。またはこれまで「プログラミング」を体験したことがありますか?最も近いものをひとつ選んでください。 「プログラミング」を経験したことがあった53% 「プログラミング」を経験したことはないが、意味は知っていた8% 「プログラミング」という言葉を聞いたことはあるが、中身まではよく知らなかった34% 「プログラミング」という言葉を聞いたことがなかった5%
  • 半数以上が「経験したことがあった」となっている。実証校がある福井県鯖江市は以前よりプログラミングへの取り組みがなされているためこのような結果になったと考える。

Q1-8 あなたはこれまで「プログラミング」という言葉を知っていましたか。または体験したことがありますか

  • 児童・生徒向けアンケート(Q2-1)「プログラミング講座」は楽しかったですか。最も近いものをひとつ選んでください。 プログラミングすることも、講座も楽しかった・・・92%95% プログラミングすることはあまり楽しくなかったが、講座は楽しかった・・・0%2% プログラミングすることは楽しかったが、講座はあまり楽しくなかった・・・8%3% プログラミングすることはあまり楽しくなかったし、講座もあまり楽しくなかった・・・0%0%
  • 95%の児童が「楽しかった」と回答。残りの5%の児童に対する配慮も課題である。

Q2-1 「プログラミング」講座は楽しかったですか

  • 児童・生徒向けアンケート(Q2-4)「プログラミング」の講座で利用した教材は簡単でしたか。最も近いものをひとつ教えてください。 簡単すぎた49% 簡単だった36% ちょうどよかった5% 少し難しかった とても難しかった10%
  • 「ちょうどよかった」「少し難しかった」が85%を占め、難易度としては良い設定であったと思われる。

Q2-4 「プログラミング」の講座で利用した教材は簡単でしたか

  • 児童・生徒向けアンケート講座を体験したことによって、以下の内容について達成できたと思いますか。あてはまるものをそれぞれひとつ選んでください。(Q3-11)プログラミングを通して、アプリやゲームがどうやって動くのか理解できるようになった よくできた41% だいたいできた56% どちらともいえない3% あまりできなかった0% ほとんどできなかった0%
  • 97%の児童らがプログラムの動きを理解した気になってくれた。プログラミングは奥が深く、これを機により深く興味を持ってもらえたらと願う。

Q3-1 1 プログラミングを通してアプリやゲームがどうやって動くのか理解できるようになった

  • 児童・生徒向けアンケート(Q3-12)自分なりのアイディアを取入れたり、工夫したりするようになった よくできた38% だいたいできた44% どちらともいえない12% あまりできなかった3% ほとんどできなかった3%
  • 多くの児童が工夫して工作することができた。

Q3-1 2 自分なりのアイデアを取り入れたり工夫するようになった

  • 児童・生徒向けアンケート(Q3-13)自分なりの作品を作ることができるようになった よくできた41% だいたいできた38% どちらともいえない12% あまりできなかった6% ほとんどできなかった3%
  • 多くの児童が自分なりの作品を作ることができた。

Q3-1 3 自分なりの作品を作ることができるようになった

  • 児童・生徒向けアンケート(Q3-14)うまくプログラムが動かないときは理由を考えて、解決策を試すようになった よくできた15% だいたいできた62% どちらともいえない20% あまりできなかった3% ほとんどできなかった0%
  • 多くの児童がうまく動かない時は解決策を試すことができたようだが、20%の児童はどちらとも言えないとの回答。メンターが教えすぎた可能性も考えられる。

Q3-1 4 うまくプログラムが動かない時は理由を考えて、解決策を試すようになった

  • 児童・生徒向けアンケート(Q3-15)自分から積極的に取り組むようになった よくできた39% だいたいできた49% どちらともいえない9% あまりできなかった3% ほとんどできなかった0%
  • 多くの児童が積極的に取り組むようになった。

Q3-1 5 自分から積極的に取り組むようになった

  • 児童・生徒向けアンケート(Q3-16)友達と協力して作業を進められるようになった よくできた44% だいたいできた38% どちらともいえない3% あまりできなかった3% ほとんどできなかった9%
  • 多くの児童が協力して作業を進められたが、15%の児童はできていなかった。今回の授業は基本的に一人で取り組むものであり、隣の子と教えあったりしなかった児童もいたと考えられる。

Q3-1 6 友達と協力して作業を進められるようになった

  • 児童・生徒向けアンケート(Q3-17)人前で作品や意見を発表できるようになった よくできた32% だいたいできた50% どちらともいえない9% あまりできなかった6% ほとんどできなかった3%
  • 多くの児童が人前で作品を発表できるようになった。

Q3-1 7 人前で作品や意見を発表できるようになった

  • 児童・生徒向けアンケート(Q3-18)難しいところであきらめずに取り組めるようになった よくできた44% だいたいできた44% どちらともいえない9% あまりできなかった3% ほとんどできなかった0%
  • 88%の児童が諦めずに取り組むことができた。

Q3-1 8 難しいところで諦めずに取り組めるようになった

  • 児童・生徒向けアンケート(Q3-19)自分でもの(ゲーム等のプログラムを含む)を作りたいと思うようになった
  • 82%の児童が自分でものを作りたいと思うようになった。 よくできた56% だいたいできた26% どちらともいえない12% あまりできなかった6% ほとんどできなかった0%"

Q3-1 9 自分でもの(ゲーム等のプログラムを含む)を作りたいと思うようになった

  • 児童・生徒向けアンケート(Q3-2)プログラムが思うように動かなかったとき、どうすることが一番多かったですか。最も近いものをひとつ選んでください。 自分でプログラムを見直し、「命令」の組み合わせを直して、やりなおした31% すべてのプログラムや「命令」を消して、もう一度初めからやりなおした3% 少しずつ「命令」や数字を変えてみて、繰り返しやりなおした16% メンター(先生)や近くの大人に教えてもらった47% 進んでいる友達に教えてもらった3% どうしたらよいかわからなかったので、そのままにした0% その他0%
  • 50%の児童は自ら考えて動くように努力し、50%の児童はメンターや友達に教えてもらっている。ちかくにメンターを多く配置した本授業の特徴が出ているものと考える。

Q3-2 プログラムが思うように動かなかった時、どうすることが一番多かったですか

  • 児童・生徒向けアンケート(Q3-4)あなたは今後も「プログラミング」を続けていきたいと思いますか。あてはまるものをひとつ選んでください。 続けたい79% わからない21% 続けたくない0%
  • 「続けたい」が79%なのに対し「続けたくない」は0%であったことは大変よかった。今後は「わからない」の21%も続けたくなるような取り組みが必要である。

Q3-4 あなたは今後も「プログラミング」を続けたいと思いますか

4.2 メンター

  • 育成メンター向けアンケート(Q3-3)メンター育成研修を受けて、全体的に内容を理解できましたか。あてはまるものをひとつ選んでください。 よく理解できた17% だいたい理解できた74% どちらともいえない9% あまり理解できなかった0% ほとんど理解できなかった0%
  • 91%の方が内容を理解してもらえた。本授業の内容が別段難しいということはないと考える。

Q3-3 メンター育成研修を受けて、全体的に内容を理解できましたか

  • 育成メンター向けアンケート(Q3-6)実際にメンターを行うにあたって、不安はありますか。あてはまるものをひとつ選んでください。 まったく不安はない2% あまり不安はない22% わからない25% やや不安がある42% 非常に不安がある9%
  • 「不安はない」が24%なのに対し「不安がある」が51%となった。授業の内容は理解したとは言え、児童らに教えることに対する不安をもう少し改善する必要がある。

Q3-6 実際にメンターを行うにあたって不安はありますか

  • 育成メンター向けアンケート(Q3-7)(3.5で1または2と答えた方)具体的にどういったことに不安がありますか。あてはまるものを全て教えてください。(複数回答)、児童・生徒の気づきやつまずきをうまく拾って、ファシリテートできるか48%、児童・生徒の疑問や悩みに対して、実証講座の目的に沿った適切な指導・助言ができるか74%、児童・生徒の疑問や悩みに対して、児童・生徒の能力に合わせた適切な助言・指導ができるか48%、児童・生徒が自分の指導や助言を聞き入れ、従ってくれるか13%、時間内に予定のプログラムを終了できるか30%、用意された教材を効果的に使用して指導できるか26%、その他9%
  • 66%の方が「児童からの質問に答えられるか」というところにあった。メンターがプログラミングスキルについて自信を持つためには一定の経験が必要であると考える。

Q3-7 具体的にどういったことに不安がありますか

  • 育成メンター向けアンケート(Q5-1)講座は当初予定していた通りに実施できましたか。最も近いものをひとつ教えてください。 実施できた54% だいたい実施できた37% どちらともいえない7% あまり実施できなかった2% まったく実施できなかった0%
  • 91%の方が「できた」と回答。実施前の不安は大きかったものの当日の高専学生のサポートもありうまく授業を行うことができたものと考える。

Q5-1 講座は当初予定していた通りに実施できましたか

  • 育成メンター向けアンケート(Q5-2)実施前のイメージと比較して、メンターを実施することは難しかったですか。最も近いものをひとつ教えてください。、非常に難しかった19%、やや難しかった49%、どちらともいえない26%、比較的容易だった3%、非常に容易だった3%
  • 「難しかった」が68%と多かった。メインのメンターを務めた教員らは授業準備もかなり丁寧に行なっており、予想したようには進まなかったのかもしれないが授業自体はうまく行われていた。

Q5-2 実施前のイメージと比較してメンターを実施することは難しかったですか

  • 育成メンター向けアンケート(Q5-3)実施前のイメージと比較して、どういった点でメンターをうまく実施できたと思いますか。あてはまるものを全て教えてください。、児童・生徒の気づきやつまずきをうまく拾って、ファシリテートすること52%、児童・生徒の疑問や悩みに対して、実証講座の目的に沿った適切な指導・助言を行うこと41%、児童・生徒の疑問や悩みに対して、児童・生徒の能力に合わせた適切な助言・指導を行うこと57%、児童・生徒に自分の指導や助言を聞いてもらい、集中を切らさずに講座に参加してもらうこと57%、時間内に予定の講座内容を終了させること39%、用意された教材を効果的に使用すること30%、その他7%
  • とくに「児童の疑問や悩みに対して児童の能力に合わせた適切な指導助言を行うこと」について他の項目よりもなされたと考えられる。

Q5-3 実施前のイメージと比較して、どういった点でメンターをうまく実施できたと思いますか

  • 育成メンター向けアンケート(Q5-5)実施前のイメージと比較して、どういった点でメンターをうまく実施できなかったと思いますか。あてはまるものを全て教えてください。、児童・生徒の気づきやつまずきをうまく拾って、ファシリテートすること13%、児童・生徒の疑問や悩みに対して、実証講座の目的に沿った適切な指導・助言を行うこと17%、児童・生徒の疑問や悩みに対して、児童・生徒の能力に合わせた適切な助言・指導を行うこと13%、児童・生徒に自分の指導や助言を聞いてもらい、集中を切らさずに講座に参加してもらうこと11%、時間内に予定の講座内容を終了させること17%、用意された教材を効果的に使用すること15%、その他
  • 全体的に実施できなかった項目が満遍なくあり、メンターとしての経験を積むことが重要である。

Q5-5 実施前のイメージと比較して、どういった点でメンターをうまく実施できなかったと思いますか

  • 育成メンター向けアンケート(Q8-3)今後のあなた自身のメンターとしての関わり方について、最も近いものをひとつ教えてください。 メインの指導者として、ひとりで、または経験の少ないサブメンターと一緒にプログラミング教育の指導ができると思う18% メインの指導者として、経験のあるサブメンターがついてくれれば指導できると思う(ひとりで指導するのは不安だ)20% サブメンターとして、経験のあるメイン指導者と一緒にさらに指導経験を積みたい38% メンター業務を今後もやるには不安が大きい11% 今後はメンターをやりたくない0% わからない(考えがまとまっていない)13% その他0%
  • 76%の方が今後も何らかの形でメンターをしてみたいと回答。不安がある方が11%いるとはいえ、やりたくない方が0%であったのは良い結果であった。

Q8-3 今後のあなた自身のメンターとしての関わり方について、最も近いものをひとつ教えてください

5.発見・成果と課題・改善

5.1 発見・成果

講座を実施した教員の感想から、高専生・社会人メンターによる授業サポートは効果的に働いたことがわかった。教員は、教えたことがないプログラミング教育を行うにあたり、個々の生徒が遭遇する技術的な課題の発生により、全体の進行が妨げられる可能性を不安視していた。しかし、本モデルにおいては、複数の高専生・社会人メンターが授業サポートに入っているため、大きく進行が滞ることなく授業を行うことが出来た。
教員が、現在の教科に含まれないプログラミングを教えることのハードルを下げるために、プログラミング教育のメンター講座を受講したメンターの支援は、有効であるといえる。

5.1.1 実証校・教育委員会他との連携体制の構築

提案段階では全体での打ち合わせなくスタートした実施体制ではあったが、キックオフなどの全体会議を複数回経ることで、よい連携体制が築けたと思う。
鯖江市教育委員会には、会議室の提供、市内校長先生への周知など連携のための支援を多くいただいた。また実証校の校長からは、適切な教員の紹介をいただき実施にあたっての全面的なサポートをいただけている。

5.1.2 メンター育成

(高校生)
授業でプログラミングの授業がある情報工学科の学生に対して、メンター育成を実施したが、実施前のプログラミングに対するイメージは良いものではなかった。しかし、メンター育成・講座サポート後のアンケートでは、47%の生徒がプログラミングへの意識が良いものになったと回答している。これらより、プログラミング教育に学生が参加することは、児童や教員のためのみならず、自身の学習へもプラスに働くといえる。(福井高専 村田講師による「高専生をメンターとした小学生プログラミング教育の実践」は別紙参照)

  • 学生メンターへの意識調査(独自調査)
  • 学生メンターへの意識調査(独自調査)

(a)学生メンターへの意識調査

5.1.3 講座内容

夏休み中の特別授業で、昼ごはんを挟んだ長時間の講座であったが児童の集中力は切れることなく進めることができた。興味を持って参加申し込みをくれた児童だけとはいえ、関係者一同驚いた点である。興味をもった児童たちは、夏休み中に自宅でも継続的に学習を進めて、新しい工作やロボットを作ってきてくれたことは嬉しい成果だった。

児童の継続性についてのアンケート(独自調査)(1:◎、2:○、3:△、4:×)

児童の継続性についてのアンケート(独自調査)(1:◎、2:○、3:△、4:×)

(b)児童の継続性についてのアンケート(1:◎、2:○、3:△、4:×)

ロボット開発の続きをお家で仕上げて来た児童達

ロボット開発の続きをお家で仕上げて来た児童達

ロボット開発の続きをお家で仕上げて来た児童達

(c)ロボット開発の続きをお家で仕上げて来た児童達

5.2 課題・改善

5.2.1 実証校・教育委員会他との連携体制の構築

今回の講座実証においては、各実証校と教育委員会、そして事業主体とがうまく連携し、大きな問題なく準備から実践までを行うことができた。他地方においても取り組まれる場合には、各学校長含め教員の理解、そして自治体および教育委員会の協力が重要であると考える。

5.2.2 メンター育成

講座当日の進め方についての打ち合わせが足りず、担当教員への負担が大きかったとの意見が聞かれた。メンター育成講習を受けたとしても初めての授業に対しては不安も多くあり、実証講座当日の流れをもっと詳しく打ち合わせしておくと良かったと思われる。

5.2.3 講座内容

課題としては、コンピューターに慣れ、初めてのプログラミングを行い、発展的な工作との連携までを実施するためには、5時限の設定では短すぎるとの意見が多く聞かれた。もっと習ったプログラムを試したい、もっと作った工作の完成度を上げたい、ロボットの動きを工夫したいというニーズには、答えられなかった。
復習をいれる、児童が学んだことを試行錯誤する時間をとる、オリジナルのモノづくりをじっくりやるなどを考慮すると、2倍〜3倍程度の時間を設定しても良かったかもしれない。

6.実証モデルの普及に向けて

6.1 モデルの横展開の可能性

6.1.1 メンター育成

今回協力を依頼した高専は全国に55キャンパスあり、各地方において有効に活用できるものと思われる。高専の学生はプログラミングに対する技術的なサポートが可能であり、年齢も小学生に近いことで児童のあこがれのお兄さんお姉さんとしてメンター活躍することができる。
メンターにはプログラミングスキルは必須であると考える。答えは1つでないことがほとんどで、課題に対しての複数のアプローチを提示できる経験が必要である。ただ、こどもに接するスキルも同じく重要で、プログラミング経験者はこどもに接するスキルを、教員はプログラミングスキルを携えた上でメンターとして活動すると良いだろう。

6.1.2 講座の構成、教材

今回の実証モデルは図工や理科の要素を取り入れ、「総合の学習」を意識して設計した。理科で習った電気の特性を利用してモーターを回し、それぞれにアイデアを出し図工の要領でメガネ拭きの機構に取り組む。プログラミングはそれらを結びつける接着剤の役割となる。
また、プログラミング教育とICT環境整備は別で考え、WiFiなどのネットワーク環境がなくともプログラミング教育はなされるべきである。既存設備を利用する際の「アプリのインストール権限や利用者権限管理」の問題も大きく、プログラミングを学ぶためにはリコーダーのような専用コンピュータがあることが望ましい。本事例でのプログラミングでは学校の既存設備を利用せず、安価なスタンドアロンコンピュータ「IchigoJam」を用いた。IchigoJamは安価(¥980~)であり、リコーダーのように一人一台持つことが現実的で起動や終了も速く、こどもにも扱いがたいへん容易である。不要な操作で授業を逸脱する心配もなく、本来の「プログラミング教育」に専念することが可能である。インターネット環境も必要なく「教育のICT化」の準備に左右されずにプログラミング教育をスタートできる。画面の中だけのプログラミングから安価なロボットを使ったプログラミングまで幅広く対応することができ、教員の得意分野、地域の人材/特徴に合わせた授業内容を構築することも容易である。

  • Ichigojam半田付け可能なキットも選択可能
  • プログラム制御可能なタミヤ製ロボット

(a)半田付け可能なキットも選択可能(左)、プログラム制御可能なタミヤ製ロボット(右)

なお、本モデル授業で利用されたプリントなどの教材はこちら( http://pcn.club/spro/ )よりダウンロード可能である。

6.2 普及のための活動

プログラミングの認知度やイメージアップについて、地元メディアである福井新聞社とうまく連携して「野球」や「サッカー」のような文化を築くべく「福井県小中学生プログラミングフェス」などの活動を毎年行なっている。また、プログラミング啓蒙活動団体である「PCN」を運営し、現在、日本だけでなく世界に存在する各地のPCNは 32拠点(2017年12月現在)となっている。各地のPCNは地元に根付いたプログラミングクラブの運営をそれぞれに行なっており、各地の特徴、人材を活かした取り組みを多く実践している。今後は学校活動から放課後の活動まで、メンター提供や機材提供など広くプログラミング教育をサポートすることができるものと考えている。株式会社ナチュラルスタイルは児童が家でも学校でも一人一台のパソコンを利用できるよう、ハードウェア面とソフトウェア面から教材の開発を行なっている。

  • 福井県小中学生プログラミング・フェス
  • 福井県小中学生プログラミング・フェス
  • 福井県小中学生プログラミング・フェス
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(b)福井県小中学生プログラミング・フェス

各地のPCN(一部)

(c)各地のPCN(一部)

7.参考添付資料

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