北海道地方非常通信協議会
会報第38号

2006.3
兵庫県及び神戸市における災害時の情報伝達の現状と課題について
平成7年1月の阪神・淡路大震災から10年が経過し、都市部で発生した大規模災害時の災害対策機関が行う被災直後の救済活動の限界が明らかになるとともに、情報収集、情報伝達の問題点も指摘されています。
北海道地方非常通信協議会では、被災地である兵庫県及び神戸市に阪神・淡路大震災における情報伝達に関する教訓とその後の対策、平成16年の台風23号による被害において更に明らかになった課題などについてお聞きしました。
1 兵庫県
(1) 阪神・淡路大震災における情報伝達に関する教訓等について
ア 情報収集・伝達方法
・兵庫県では、防災行政用無線として兵庫衛星通信ネットワークを整備していたが、震災により非常用発電機の冷却水パイプが損傷し、被災自治体及び防災関係機関と連絡が取れない状態となった。(非常用発電機と冷却水層の距離が離れていた)
・被災自治体の組織そのものが壊滅状態となり、被災地からの情報が得られないため、県職員みずから足を使って被災自治体の被害状況を調査し情報収集を行った。
・災害対策本部を設置したが参集できた本部員は21名中僅か5名であり、要員不足のため十分な初動体制がとれない状況であった。また、当日は職員も被災し2割程度しか勤務できない状態であった。
・被災自治体からの応援要請が兵庫県にあり、応援協定を締結している他県に要請を行った。しかし、被災自治体からも同県内の自治体に直接応援要請していたため、要請が重複して行われていたことが判明し、応援要請方法の問題提起ともなった。
イ 教訓に基づき講じた対策
・防災行政用無線が非常用電源設備の脆弱性のため使用できなかったことを踏まえ、震度7にも耐えられる「兵庫県災害対策センター」を整備し、災害活動の中枢機能を整えた。
・発災時の初動体制がとれるよう災害待機宿舎(全76戸)を整備し、徒歩で30分で庁舎に参集できる体制とした。
・迅速な情報収集及び県民局、市町、自衛隊や海上保安庁等の防災関係機関との相互連絡体制を確保するため「フェニックス防災システム」を構築し、リアルタイムに情報を収集できる体制を整えた。また、このシステムは、被災地に発災後の被害予測情報を提供できるようになっている。
・震災直後、被災者の病院搬送が円滑にできなかったことから、医療機関の情報(診療科目、対応可否情報)をインターネットで入手できるようにした。
ウ 情報収集の課題
・昨年の台風23号の際、自治体職員が災害対応に追われ住民からの河川決壊通報を受けながら迅速な対応ができなかった。また、市町からは、「災害対応の最中は、フェニックスシステムに被災情報を入力する時間さえない。」ということも指摘されている。
(2) 災害訓練関係
・県組織内の訓練は県民局が持ち回りで年1回実施するとともに、2府7県合同で防災訓練を実施している。
・通常、災害訓練は実働訓練を行っているものであるが、平成15年、県として初めて図上訓練を実施し、災害対策本部における情報収集・分析、判断能力の検証及び本部と防災関係機関との相互連絡機能の検証を行った結果、各機関との連絡体制を構築することが課題となった。
2 神戸市
(1) 阪神・淡路大震災における情報伝達に関する教訓等について
ア 情報収集・伝達方法
・災害対策本部では生きている電話回線はあるものの、電話回線の輻輳や市民からの問い合わせ等によりほとんど使用不可能な状態となり、防災関係機関との相互連絡が出来ない状態であった。
・被災情報を収集しても、その情報をどこにどのようなに集約するのか不明確であり、また、市役所内のどの部署に報告するのかも不確定であった。
・収集した情報の相互共有が部局間において出来てなかったことから、他の部局における災害対策状況の把握ができなかった。
・住民への広報活動は、広報車で行ったが、住民への広報誌の印刷配布や電話による個別周知は不可能な状態であった。また、被災当日にプレスルームを開設し、マスコミを通じて情報提供を行った。さらに、インターネットの普及時期に相まって収集した情報をインターネットにより発信した。
イ 教訓に基づき講じた対策
(ア) 情報伝達体制
・被災情報を迅速に収集するため、市役所内の情報収集部局を明確にすると共に、関係機関との連絡系統を地域防災計画に盛り込んだ。また、電話の輻輳により防災関係機関と連絡が取れなかったことを踏まえ、県警、日赤、陸上・海上自衛隊及び海上保安庁間をホットラインにより接続するとともにライフライン各社との通信確保のため、防災相互波(158.35MHz)を整備した。
(イ) 情報の共有化
・収集した被災情報を各部局が共有できるようにするため総合防災通信ネットワークシステム(こうべ防災ネット)を構築し、被災情報、職員招集・配備情報、避難者情報、物資管理情報を共有した。
・被災情報は、各区において防災ネットに入力する。さらに区では、阪神・淡路大震災の際、どの部署が何をすべきが明文化されていなかった教訓に基づき、情報連絡班、支援班、調査班、物資班等に分類し、担当課を明確にした。
ウ 情報収集の課題
・関西電力と神戸市はホットラインで接続されているが、10万戸が停電した平成16年9月の台風23号においては、停電復旧作業のための停電エリア・戸数の情報収集がスムーズにできなかった。
・医療機関が被災者の受け入れを判断するための情報は、被災者の被災症状、対応可能な診療科目や医薬品の在庫等多岐にわたり、刻々と変化することから、災害対策本部が搬送可能な医療機関の情報を把握することが困難な状況にある。被災者の搬送業務を行っている消防局の情報収集体制が課題となった。
(2) 災害訓練関係
・災害発生時には救助隊の到着をただ待つのではなく自助、共助による対応が功を奏した経験を踏まえ、日頃からの地域住民相互の協力を生かし、発災時の初期消火、救出活動が円滑に行われることを目的として小学校単位で構成する防災福祉コミュニティーの結成を進めている。
・このコミュニティーの災害訓練では、市が防災訓練費用及び活動経費の一部補助を実施し、消防職員がコミュニティーと連携を図り、防災訓練の指導に当たるなど積極的に関わっている。
・なお、訓練では情報伝達訓練は実施していないが、コミュニティーからの被災情報は避難所を通じて本庁に上がってくる。(避難所−本庁は神戸防災ネットで接続)
・市民からの被災情報を電子メールにより区に送信する図上訓練を実施しているが、担当者は到達した50本程度のメールの6割しか処理できず、対応方法に問題があることが判明した。
3 その他
・地震直後における情報入手メディアとしてラジオが68%、テレビ18%と放送メディアが高い比率を示していることから、被災者への情報提供機関として中波、FM県域放送をはじめ、より被災地に密着しているコミュニティーFM放送が情報提供機関として有益である。
・被災者が安否情報を県、市に求めたことにより電話が輻輳したことから、住民にNTTの、※災害伝言ダイヤル(171)や携帯電話事業者の災害用伝言板サービス、インターネット等の活用を周知するとともに、自助・共助による情報収集方法についても広く知ってもらうことが重要である。
・災害発生時には、県、市及び防災関係機関における通信回線の確保の他、災害対策本部から支援物資の搬送機関である物流機関、医療機関、ボランティア団体、食料調達先となり得るコンビニ等、連絡先を明確にする必要性がある。
※ 災害時における、電話が輻輳した時などの安否情報の確認やインターネットの利用に関するポイント等については、「災害時における電気通信の利活用に関する検討会」(平成15年10月から平成15年12月まで開催)報告書がまとめられています。
詳細は北海道総合通信局ホームページ http://www.soumu.go.jp/soutsu/hokkaido/2003/1216a.htm にてご覧いただけます。
以上
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