資料3-4

アンケート集計結果及び質疑応答について

1. アンケートの調査方法

平成22年12月15日に実施した公開技術試験に参加された方を対象にアンケート調査を行った。

(1)調査時期   平成22年12月15日
(2)調査対象者  公開技術試験登録参加者(75名)
(3)有効回答数  56(75%)
(4)調査方法   無記名・選択式(一部記入式)


2. アンケートの設問

設問については、以下のとおり。

(1)所属団体の業種(6選択及びその他)
(2)公開技術試験の認知方法(5選択及びその他)
(3)公開技術試験の評価(5段階選択)
(a)わかりやすさ
(b)実現性
(c)有効性
(d)経済効果
(e)独自性
(f)進歩性
(g)汎用性
(h)利用傾向(職場に欲しいか?)
(4)利用シーンと課題(記述式)
(5)自由意見(記述式)


3. アンケートの集計結果
3.1.所属団体の業種

回答者の所属団体の業種の内訳は下図のとおり。

グラフ:所属団体の業種

3分の2が製造業者であり、UWB技術が普及の前段階であることが現れている。



3.2.公開実験の認知手段

公開実験を認知した手段の内訳を下図に示す。

グラフ:公開実験の認知手段

「メール」には委員にあてた告知メールが含まれていると考えられる。

同僚・知人が3分の1を占めることから、組織としてUWBの動向に注目している現状をうかがい知ることができる。



3.3.わかりやすさ

実験内容についての設問である。4つの利用シーンを想定した実験について、それぞれ実験のわかりやすさを5段階で質問した。集計結果を下図に示す。


グラフ:わかりやすさ

4つの利用シーンの想定実験については、概ねご理解をいただけた。医療機器管理の実験については、表示端末と実験場所が離れていたため、両方を見渡すことのできない位置からの参加者には動きが判別しにくかったため、わかりにくいという評価をされた方があったものと考えられる。今後同様の実験を行う上での反省点である。



3.4.実現性

4つの利用シーンにおけるUWB無線センサーネットワークを用いたアプリケーションの実現性を5段階で質問した。集計結果を下図に示す。


グラフ:実現性

従来技術における前例のない物理セキュリティ(仮想壁)のアプリケーションについて、実現性が低いと評価されている方が比較的多かった。OA機器については、セキュリティ機器が普及していることもあり、実現性を低いとする回答は非常に少なかった。



3.5.有効性

4つの利用シーンにおけるUWB無線センサーネットワークを用いたアプリケーションの有効性を5段階で質問した。集計結果を下図に示す。


グラフ:有効性

物理セキュリティについて、消極的評価をする回答が多かった。これについては、従来技術によるセキュリティ確保を前提とするアプリケーションであるのに対して、従来技術との効果の混同を恐れて、領域をシートのみで表示したこと、他アプリケーションとの兼ね合いで領域が実際の利用イメージに対して非常に小さくなってしまったことなどから、有効性について実感が得られなかったのではないかという反省がある。

照明制御について、やや消極的な回答が他のアプリケーションに比べて多いが、これは、従来技術によって広く実現されている同アプリケーションにおいて、UWB無線センサー特有の利点が分かりにくかったためという反省がある。



3.6.経済効果

4つの利用シーンにおけるUWB無線センサーネットワークを用いたアプリケーションの経済効果を5段階で質問した。集計結果を下図に示す。


グラフ:経済効果

中間的な評価に回答が集中しているのは、今回の利用シーン全体について経済効果の評価が大きくないことを示していると理解するべきであろう。特に、実験場所において大がかりなプロトタイプを目の当たりにした直後であるため、価格面での不安が反映されているとも考えられる。

照明制御については、従来技術により既に実用化されていることから、従来例をご存知の方には低い評価、あまりご存じない方からは比較的高い評価を受けた結果、他のアプリケーションに比べて評価が分かれたものと考えられる。

その中で、医療機器管理アプリケーションに対しては高い評価の割合が大きいことは特徴的である。見通しの効かない環境内の機器の位置と状態を同時に取得できるUWB無線センサーネットワークの特長をご理解いただけたことが現れているものであると考えられる。



3.7.独自性

4つの利用シーンにおけるUWB無線センサーネットワークを用いたアプリケーションの独自性を5段階で質問した。集計結果を下図に示す。


グラフ:独自性

既に従来技術により実用化されている照明制御とOA機器制御について比較的低い評価が多かったのに対し、従来にない概念である仮想壁による物理セキュリティ管理と複数システムの組み合わせでしか実現できなかった医療機器(機器の位置と状態の同時管理)アプリケーションに対しては、独自性を高く評価する回答が多かった。

OA機器管理については、ハンズフリー・個人認証・相互位置認識など多くの機能を持つものであったのに対し、公開時間の制約により十分に訴求できなかったことも評価の低くなった一因と考えられる。事前の説明により趣旨をご理解いただいた方には高い評価をしていただいた方もあった。



3.8.進歩性

4つの利用シーンにおけるUWB無線センサーネットワークを用いたアプリケーションの進歩性を5段階で質問した。集計結果を下図に示す。


グラフ:進歩性

経済効果についての設問と同様に、中間的な評価が多かった。参加者に製造業者が多かったことから、UWB無線センサーネットワークを利用したアプリケーションについては一定の予備知識を持っている方が多く、これらの方に対しては意外と言えるほどのインパクトを与えられなかったことが現れていると考えられる。

この中で、仮想壁による物理セキュリティは際立って進歩性に対する評価が高く、従来技術では実現が困難であったアプリケーションに対する期待が大きいことがわかる。また、医療機器実験に対しても、他のアプリケーションに対して「斬新」と評価された回答が多く、従来技術では組み合わせにより一部でしか実現できていなかったことを容易に実現できることに対する期待は大きいと考えられる。



3.9.汎用性

4つの利用シーンにおけるUWB無線センサーネットワークを用いたアプリケーションの汎用性を5段階で質問した。集計結果を下図に示す。


グラフ:汎用性

実験モデルとしては、比較的身近である環境を選択したため、汎用性に対する評価は概して高かった。

中では最も馴染みのないと思われる物理セキュリティに対しても、汎用性の観点からは高い評価をする回答が多く、高精度測位センサーによるセキュリティ管理についての潜在的な需要をうかがわせる。



3.10.あなたの職場に欲しいか

最後の設問として、4つの利用シーンにおいてUWB無線センサーネットワークを用いたそれぞれのアプリケーションが身近な場所(職場)に欲しいかということを5段階で質問した。集計結果を下図に示す。


グラフ:あなたの職場に欲しいか

すでに広く普及している照明制御については、ことさらにUWB無線センサーネットワークを利用する意向を示す回答はほとんど見られなかった。

また、実現性に対する評価が低く、進歩性に対する評価は目立って高かった仮想壁による物理セキュリティに対しては、高い評価と低い評価に分かれており、利用シーンとしては広くないことがこの回答からもわかる。

「あなたの」職場という設問から、医療機器管理アプリケーションについては不要とした回答が多かったが、中間的評価が多かったのは、機器の位置と状態の同時管理として広くとらえた回答が多かったためと考えられる。

今回の実験では、時間的制約から実際の使用感などを実感いただけるものとならなかったため、身近な環境における有効性を実感を持って回答していただくには至らなかった。



4. 利用シーンと課題

自由記述によりご提案いただいた利用シーンを下表に示す。課題については、利用シーン特有と考えられるものがなかったため、別表として示す。

利用シーン アプリケーション
工事現場 入退出管理
立入区画管理
資機材の位置管理
保線作業 作業員位置確認
病院 電子カルテ端末個人認証
麻薬金庫、劇薬金庫の職種権限による制限管理
手術室機器管理
ショッピング 位置に応じた情報提供
家庭内 照明消し忘れ防止
電気のスイッチに届かない小さな子供、車椅子の高齢者や障害者
介護施設・老人施設
独居老人 動態監視
重要施設 入退出管理
人、物の所在管理
監視カメラの機能補完(細分化ゾーンでの単一システム運用)
工場 製造物の位置管理・生産進捗管理
物流倉庫 物品位置検索・所在管理
入退出管理 複数の扉に対して1つのリーダで管理
課題 期待される内容
タグの省電力化 電池寿命数か月以上
タグのサイズ 常時携帯可能・携帯電話内蔵
検知範囲 部屋全体
耐環境性 遮蔽環境での検知
大人数のいる空間
障害物に対する耐性
精度とその安定度
検知(確率)の完全性
価格 コスト削減効果の数値に対して納得できる価格
公共施設でのIMESと競合しないか


5. 自由記述

自由記述欄にご意見の記入をいただいた数は半数近くに上っており、参加者の期待の強さを感じさせるものであった。

記述内容を大まかに分類したものを下表に示す。なお、«二重山括弧»の文字は事務局が補完した部分を表している。

実験内容・公開手法
周波数共用をもっとアピールできないか?
アプリをもっと前面に出してはどうか。
いかにもメーカーがシーズ側からする提案だと感じた。オフィスなら、コクヨ・オカムラ・イトーキさんと相談したデモが見たかった。病院なら病院さんのニーズを具体的に見せてほしかった。
デモ全体的に何が言いたいのか今ひとつ不明。期待はずれであった。技術試験について工夫が必要と思われる。
技術試験見学において、色々な条件で試して、制約条件や問題点という側面も積極的に見せてほしい。また、体験させて欲しかった。実用を考えると、どこまでできるのか、及び、何はできないかを明確に理解することが重要と思う。
位置検出の精度、安定性がいま一つだった。装置の不完全性によるものか、本質的なものか説明が欲しかった。
«実験結果の報告のみではなく、»公開実験であったためわかりやすかった。
アプリケーション
イメージング装置としての実用化はどうか?(海外では災害用に実用化されている)
位置管理として器材棚の管理や準備物の所在管理ができればよい。
例えば、手術準備が複雑化しており、誰でも準備できるニーズがある。手術Aに対して、保管場所にあるX,Y,Z機材のうち必要な(X,Z)機材のみ画面上で点滅させて準備できるように。
簡便な測位センサシステムは技術が完成できれば有用性が高いと思われます。(セキュリティ、物品管理、行動記録など)是非実用となる技術を完成して頂ければと思います。
UHF帯のEPC Global規格のパッシブタグでも今回の応用シーンは実現が可能と言える。«精度»50センチメートルの位置測定での差別化が図れるか疑問。
障害物が無い環境での使用が条件なので現実的な利用シーンが思いつきません。AV新機能、モーションセンサ、エコ制御などは他に有力な低コスト手段があるため、キビシイと思います。
汎用性の高い分野で実用化しコストを下げていくと大きな市場となる可能性を感じました。
機器
タグのサイズがどれくらい小さくなるか(ケータイなどへの搭載が可能か?)などで、実用化への時間が変わってくるのではと感じた。
レーダ方式と、加速度センサー及び信号処理による移動量計算方式とどちらが使いやすいか比較する必要があると思います。
タグは価格が問題、実売で1個あたり500円«以下»。
機器がプロトタイプなのでまだ実用化には遠いと思うが、技術的に有効だと思うので色々と実験を進めてほしいと思います。
技術試験全体
全体のスケジュールを記載してほしい。実用の見通しなど。
いる・いないの情報を取るだけでこのようなことをする必要があるのかどうか。しかも標準化、仕様化を4年もかけているというのはあまりにも時間をかけすぎではないか。無線タグでも利用可能ではないか。
国際的な標準化のタイアップはどうなっているのか。
ご準備お疲れさまでした。ありがとうございました。


6. 公開試験会場における質疑応答内容

公開試験会場においては、実験場所において短時間の質問を受け付けたほか、公開実験の終了後質疑応答を行った。質疑応答の内容について、下表に示す。

実験場所における質疑
質問 回答
測位精度は 距離で30センチメートル、角度で2度で合計して50センチメートル程度の精度。
タグの大きさについてはどの程度小さくするのか 厚みのある名札。タバコの箱程度を考えている。
垂直方向の位置測定はできるのか 今日の実験では測定していない。機器の機能としては持っている。
人の影響はあるのか 遮蔽の影響が大きい。反射についてはキャンセルしている。金属などについても同じ。
測定範囲は 半径で10メートル程度。
360度の範囲で測位できるのか 機器の性能としては可能だが、今日の実験では背後方向は測定していない。
商品となるまでどの程度のスパンで考えているのか 半導体開発が必要なため、少なくとも2から3年必要。
医療機器への影響は他の無線に比べて小さいのか 放射する電波の性質としては、小さいと考えられる。不要輻射については同等。
全体質疑
質問 回答
サンプリングはどのくらいで行っているのか 測距は毎秒1ギガビットで信号をサンプリングしている。
表示の間隔としては2秒ごとに表示している。
何個くらいのタグを検知できるか 個数は最大で40から50個。今回の機器の能力としては実用的には20から30程度。
通信速度は 毎秒5メガビット
通信距離は 今回の機器としては、IDの認識については13から14メートル程度可能。精度よく測位ができる範囲は10メートル程度。
エリアの広さについては、ハイバンドでのリンクバジェットの計算値が10メートル程度であり、現時点では10メートルを基準としている。他の技術を使用してエリアを拡大することについては、製品の開発業者が実装によって対処すべき事柄となる。
医療現場で医療機器に与える影響については実験結果があるか。今後行う予定はあるのか。 実験は測位性能のみに対して行っている。
他システムに対する干渉については検討を行うが、電磁耐性については検証しない。
ローバンドについは実験局とする必要があったが、ハイバンドについても同じか。 今回の実験に使用している機器は実験局設備。
現時点では,毎秒50メガビット以下の通信能力の無線機については技適が認められていないため、実験局となる。今回の技術試験では、毎秒50メガビット以下の設備について干渉条件等を検討することも目的である。
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