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2. 実証フィールドにおけるヒアリングの結果 へもどる
本章では、ICT支援に既存の専門機関あるいは、専門職が関わることで、ICT支援そのものの改善を図り、かつ、それを継続的に支える支援基盤の構築という観点で、課題と提案を整理する。
「障害者のIT利活用支援の在り方に関する研究会」の提言ならびに、今回の実証事業において、ICT支援をより効果的にあるべき姿に近づけるためには、支援基盤の整備にあたって、障害者支援の専門職に専門家の視点から、かかわってもらうことが必須であることが指摘されている。
そこで、社団法人日本作業療法士協会の協力を得て、支援基盤整備における作業療法士の視点からのデータ整備の方向性ならびにその内容を検討する「データ整備研究会」を設置した。メンバーは、日本作業療法士協会から推薦された4名とし、3回の研究会を開催した。
- 日本作業療法士協会から推薦された4名
- 池上 洋: 東京都立梅ヶ丘病院
- 田中 栄一: 国立病院機構八雲病院
- 田中 勇次郎: 東京都立多摩療育園
- 宮永 敬市: 九州市立障害福祉センター
- オブザーバー
- 事務局: 三菱総合研究所
現状では、ICT支援を担う支援者の報酬を生み出す仕組みがないため、ICT支援団体に障害者支援の専門職が配置されることが難しい。したがって、多様な専門機関に配置されている既存の専門職がICT支援のノウハウを身につけることで、専門職とICT支援団体が、支援ステップごとに、主たる担当と、補佐的な支援とを分けて担う形をとり、効果的なICT支援を実施することが望まれる。たとえば、以下のような役割分担が想定される。
- 受付(相談・申し込み)
利用者側で選べないので、専門職でもICT支援者でも受け付ける
- 導入面接、事前評価、支援計画作成
専門職が担当、ICT支援者が補佐する
- フィッティング
専門職が担当、ICT支援者が補佐する
- 支援実施
ICT支援者が担当、専門職が補佐する
- 中間・事後評価
専門職が担当、ICT支援者が補佐する
- フォロー
ICT支援者が担当、専門職が補佐する
上記のような形で、専門職がかかわった場合、実証用ポータルサイトで提供している情報に加えて、ニーズ把握の手法、技術の活用と支援方法、情報収集の方法、情報の見方、機器の選び方、フィッティングの方法、評価・フォローの方法など、専門職として活用したい情報も同時に提供されることが重要になってくる。
これらも含め、今回のポータルサイトの「ICT支援の手順とポイント」の機能ならびに、「製品情報」「事例情報」等を、ICT支援のガイドラインとして、バージョンアップし、既存の専門職ならびにICTの支援者が共通の認識で支援に取り組める環境を作ることが必要である。
「ICT支援の手順とポイント」バージョンアップ例 ― ICT支援ガイドライン ―
ICTサポートのハウトゥー (How to)
- ITサポートの目的・こころ構え
- サポートの手順
- 手順にそったマニュアル
- ニーズ把握の手法
- 技術の活用と支援の方法
- 情報収集の方法
- 情報の見方
- 機器の選び方
- フィッチングの方法
- 評価・フォローの方法
ICT支援における今後の課題としては、下記の点が挙げられる。
ICT支援における今後の課題
- ICTサポートに関するガイドラインの作成
- ICTサポートに必要な情報・サービスの整備
- ICTサポート体制の整備
- ICTサポートに関わる人材の育成と適正な配置
- 企業の製品開発・販売体制との連携
- ICTサポートの必要性についての啓発
上記の課題を踏まえ、データ整備検討研究会では、障害者支援の専門職の中でも、作業療法士(OT)に焦点をあて、OT自身が、かつ、職能団体である日本作業療法士協会が、課題解決に向けて、どのような役割を果たすべきかを検討し、そのポイントを次のように整理した。
課題解決に向けたOT協会の役割
- OT向けITサポートに関するガイドラインの作成
道具を上手に使って生活改善を進めるプロとして
- OTによるITサポートに必要な情報・サービスの発信
製品に関する適正評価、導入方法、活用事例
将来的には評価・効果情報の提供
- OTを核にしたITサポート体制の整備
特に圏域でのITサポート拠点の整備
- OT向けITサポートスキル向上プログラムの推進
ICT支援のノウハウをもつ専門職の育成
- AT業界ネットワーク構築への協力
- OT協会のネットワークによるITサポートの必要性についての啓発
今後、ICT支援をきちんとしたプロのサービスとして定着させるためには、日本作業療法士協会ならびに作業療法士(OT)の協力が欠かせない。その体制が実現すれば、ICT支援基盤機能としても、より高度な機能の付加と情報の追加が実現する。