第2章 平成9年情報通信の現況


第1節 情報通信産業の現状

  1. 情報通信産業に関する日米比較
  2. (1) 日米における産業構造の変化
     我が国及び米国において、名目GDPに占める各産業部門の推移を見ると、米国においては、第二次産業と比較した第三次産業のシェアが、我が国に比べ高くなっている。ただ、2年から7年までの5年間では、我が国においても第三次産業のシェアが大きく伸びており、近年において、我が国経済のサービス化が急速に進展していることが分かる(第2−1−5図参照)。


    (2) 名目国内生産額の動向
     米国における8年の情報通信産業(注1)の名目生産額は、1.2兆ドル(円換算(注2)で128.0兆円)となり、我が国の約1.4倍の規模になっている。また、5年から8年までの年平均成長率も7.47%と、我が国に比べ高い伸びを示している。
     また、情報通信産業を「情報通信サービス」、「情報通信支援財」及び「研究」部門に分けて見ると、8年時点において、我が国は「情報通信サービス」部門のシェアが51.3%である一方、米国においては64.7%となっており、米国において、この部門の比率がより高くなっていることが分かる(第2−1−6図参照)。



    (3) 名目GDPの動向
     米国における8年の情報通信産業の名目GDPは、0.6兆ドル(円換算で66.6兆円)となり、我が国の約1.5倍の規模になっている。また、5年から8年までの年平均成長率も5.73%と、我が国に比べ高い伸びを示している(第2−1−7図参照)。



    (4) 情報通信産業構造の日米比較分析
     情報通信産業に属する部門の名目GDPに占めるシェアと、2年から8年までの年平均成長率を日米比較すると、名目GDPに占めるシェアにおいては、我が国は「通信機器」等の製造業部門、米国は「情報サービス」等のサービス業部門が、相対的に大きくなっている。
     また、成長率においては、ほとんどの部門で米国の成長率が高くなっているが、「電気通信」においては、我が国が優位に立っている(第2−1−8図参照)。


    (5) 情報化投資の動向
     民間企業設備投資に占める情報化投資(注3)の比率を見ると、我が国においては2年から8年の期間で7.7ポイント上昇し、8年には10%を超えて14.1%に達したが、米国においては、同期間に19.9ポイント上昇し、8年には33.8%に達している。
     このように、米国における情報化投資は高い成長を続けているが、6年以降、我が国においても、積極的な情報化投資が行われてきていることが分かる(第2−1−9図参照)。



    (6) 情報化投資が実質GDP拡大に与えた影響
     民間企業の情報化投資が実質GDP成長に与えた寄与を日米で計測すると、我が国における情報化投資が実質GDP成長に与えた寄与率は、8年には15.4%(実質GDP成長率3.9ポイントのうち0.6ポイント)となっている。
     米国においては、6年まで情報化投資の寄与率が2〜3%程度で推移していたが、その後急拡大し、8年には約13.0%となっている。このことから、両国における情報化投資は、実質GDPの拡大に確実に寄与していることが分かる(第2−1−10図参照)。


    (7) 電気通信分野における日米格差要因
     ここでは、成長を続けている「電気通信」が、主要経済部門にどのように需要されているのか、また、需要の格差が何に起因しているのかについて日米で比較分析を行う。
     「電気通信」に対する主要経済部門の需要割合について日米で比較すると、我が国においては事業所向け需要が、米国においては家計消費向け需要が、それぞれ高くなっている(第2−1−11図参照)。

     事業所向け需要規模について見ると、我が国と比較して米国の需要は45.9%増になっているが、その主要因は、日米の経済規模の格差によるもの(40.6%)が大部分である。また、日米間の産業構成の相違によるもの(7.4%)もある。これは、情報通信分野の投入比率(注4)が高いサービス部門の構成比率が、米国において相対的に高いことが要因と考えられる。
     また、家計消費向け需要規模について見ると、我が国と比較して米国の需要は60.1%増となっている。その主要因は、両国の消費規模の格差によるもの(27.4%)が最も大きいが、消費支出に占める電気通信支出のシェアによるもの(17.9%)も大きくなっている(第2−1−12図参照)。

    日米間の経済規模格差を考慮しないという仮定の下で分析した場合、日米間の需要格差が生じる要因として、家計消費向け需要部門において、家計消費支出に占める電気通信支出の比率が、米国において相対的に高いことに起因する格差要因が大きい。一方、事業所向け需要部門では、需要構造自体には、日米間で大きな差違はないことが分かる。
     したがって、今後我が国においては、米国のように、家計における電気通信支出の消費全体に占める割合を増加させることによって、電気通信分野の市場が拡大されることが考えられる。




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