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2 地方財政の概況

 地方公共団体の歳入及び歳出は、一般会計と特別会計に区分して経理されているが、特別会計の中には、一般行政活動に係るものと企業活動に係るものがある。

 このため、地方財政では、これらの会計を一定の基準によって、一般行政部門と水道、交通、病院等の企業活動部門に分け、前者を「普通会計」、後者を「地方公営事業会計」として区分している。

 以下、平成15年度の地方財政について、8までにおいて普通会計の状況を示すとともに、9において地方公営事業会計の状況を示す。

(1) 決算規模 [第1表第5表第11表第71表

 地方公共団体(47都道府県、3,132市町村、23特別区、1,975一部事務組合及び82広域連合(以下、一部事務組合及び広域連合を「一部事務組合等」という。))の普通会計の純計決算額は、第1表のとおり、歳入94兆8,870億円(前年度97兆1,702億円)、歳出92兆5,818億円(同94兆8,394億円)で、歳入、歳出いずれも4年連続して減少している。

第1表 地方公共団体の決算規模(純計)

第1表 地方公共団体の決算規模(純計)

第2表 団体種類別決算規模の状況

第2表 団体種類別決算規模の状況

第7図 決算規模の推移

第7図 決算規模の推移

 また、前年度と比べると、歳入2.3%減(前年度2.8%減)、歳出2.4%減(同2.7%減)となっている。

 このように決算規模が前年度決算額を下回った主な要因としては、歳入については、地方税及び地方交付税等が減少したこと、歳出については、普通建設事業費を中心に投資的経費が減少したことなどがあげられる。

 団体種類別の決算規模の状況は、第2表のとおりであり、都道府県、市町村(特別区及び一部事務組合等を含む。特記がある場合を除き、以下同じ。)ともに歳入、歳出は、それぞれ前年度決算額を下回っている。

 また、近年の決算規模の推移は、第7図のとおりである。

(2) 決算収支

ア 実質収支[第7表

 実質収支(形式収支(歳入歳出差引額)から明許繰越等のために翌年度に繰り越すべき財源を控除した額)の状況は、第3表のとおりである。

 平成15年度の実質収支は、1兆2,046億円の黒字(前年度1兆783億円の黒字)で、昭和31年度以降黒字が続いている。また、前年度と比べると、黒字幅はやや増加している。

 団体種類別に実質収支をみると、都道府県においては、6年連続で赤字団体が発生したものの、1,477億円の黒字(前年度1,344億円の黒字)となっている。

 また、市町村においては、1兆570億円の黒字(前年度9,439億円の黒字)であり、昭和31年度以降黒字が続いている。

 実質収支が赤字である団体数をみると、平成14年度に赤字であった25団体(1府1県、23市町村。打切り決算(市町村合併等により、出納整理期間中の歳入、歳出がないことをいう。以下同じ。)が行われたことによる赤字団体は除いている。)のうち21団体(1府1県、19市町村)が引き続き赤字であり、7団体(3市、3村、1一部事務組合)が新たに赤字団体となった結果、赤字団体数は28団体であり、前年度と比べると3団体増加している。

第3表 実質収支の状況

第3表 実質収支の状況

第8図 実質収支の推移

第8図 実質収支の推移

第9図 実質収支比率の推移

第9図 実質収支比率の推移

 なお、市町村合併に伴う打切り決算により、これ以外に14団体(14市町村)が赤字となった。

 さらに、近年の実質収支及び赤字団体の赤字額の推移は、第8図のとおりである。

 標準財政規模に対する実質収支額の割合である実質収支比率の推移は、第9図のとおりであり、平成15年度の実質収支比率(特別区及び一部事務組合等を除く加重平均)は前年度と比べると0.3%ポイント上昇の2.1%となっている。

 これを団体種類別にみると、都道府県は0.1%ポイント上昇の0.6%、特別区及び一部事務組合等を除く市町村は0.6%ポイント上昇の3.5%となっている。

イ 単年度収支及び実質単年度収支[第7表

 単年度収支(実質収支から前年度の実質収支を差し引いた額)は、2年ぶりに黒字に転じており(前年度554億円の赤字)、その黒字額は1,397億円となっている。

 これを団体種類別にみると、都道府県は133億円の黒字(前年度592億円の黒字)、市町村は1,263億円の黒字(同1,146億円の赤字)となっている。

 また、実質単年度収支(単年度収支に財政調整基金への積立額及び地方債の繰上償還額を加え、財政調整基金の取崩し額を差し引いた額)は、2年ぶりに黒字に転じており(前年度978億円の赤字)、その黒字額は918億円となっている。

 これを団体種類別にみると、都道府県は458億円の赤字(前年度1,017億円の黒字)、市町村は1,377億円の黒字(同1,995億円の赤字)となっている。

 なお、実質収支、単年度収支及び実質単年度収支の赤字団体数の状況は、第4表のとおりである。

第4表 赤字の団体数の状況

第4表 赤字の団体数の状況

(3) 歳入[第11表

 歳入純計決算額は94兆8,870億円で、前年度と比べると2.3%減(前年度2.8%減)となり、前年度に引き続き減少した。

 決算額の主な内訳をみると、第5表のとおりである。

第5表 歳入純計決算額の状況

第5表 歳入純計決算額の状況

第10図 歳入純計決算額の構成比の推移

第10図 歳入純計決算額の構成比の推移

 地方税(対前年度比2.1%減)は、都道府県の事業税は増加したものの、道府県民税、市町村民税の減少等により、減少している。

 地方交付税(同7.5%減)が前年度に引き続き減少した一方、地方特例交付金(同11.4%増)は、国庫補助負担金の一般財源化に伴う措置等により増加している。

 国庫支出金(同0.2%減)は、義務教育費国庫負担金の一般財源化等に伴い減少している。

 地方債(同3.5%増)は、臨時財政対策債及び減税補てん債の増加等により増加している。

 歳入純計決算額の構成比の推移は、第10図のとおりである。主な歳入項目の構成比の推移は次のとおりである。

 地方税の構成比は、ピークとなった昭和63年度(歳入総額の44.3%)以降低下し、33%から36%台の間で推移しており、平成15年度は前年度と同じ34.4%となっている。

 地方交付税の構成比は、平成2年度から7年度までは低下の傾向にあり、8年度から12年度までは上昇の傾向にあったが、13年度以降、地方財政対策にあたり、交付税特別会計の借入金方式に代えて臨時財政対策債を発行し、基準財政需要額の一部を振り替えることとしたこと等から再び低下の傾向に転じ、15年度は前年度と比べると1.1%ポイント低下の19.0%となっている。

 国庫支出金の構成比は、14%台で推移した後、経済対策の規模の拡大、介護保険制度の実施準備等から平成10年度、11年度と連続して上昇し、12年度からは再び14%台で推移したが、14年度以降13%台に低下となり、15年度は前年度と比べると0.3%ポイント上昇の13.9%となっている。

 地方債の構成比は、経済対策の影響等から上昇した平成10年度を除き、8年度から12年度までは低下傾向にあった。13年度から臨時財政対策債の発行により上昇の傾向にあり、15年度は前年度と比べると0.8%ポイント上昇の14.5%となっている。

第11図 歳入決算額の構成比

第11図 歳入決算額の構成比

 なお、臨時財政対策債の発行額を除くと、2.0%ポイント低下の9.0%となっている。

 一般財源の構成比は、平成元年度(歳入総額の62.7%)をピークに低下したのち、8年度から12年度までおおむね上昇傾向にあったが、13年度から地方交付税の減少により、減少傾向に転じ、15年度は前年度と比べると、0.7%ポイント低下の55.3%となっている。

 なお、一般財源に臨時財政対策債発行額を加えると、2.1%ポイント上昇の60.8%となっている。

 次に、歳入決算額の構成比を団体種類別にみると、第11図のとおりである。

 都道府県においては、地方税が最も大きな割合(31.0%)を占め、以下、地方交付税(20.0%)、国庫支出金(15.8%)の順となっている。

 一方、市町村においては、地方税が最も大きな割合(33.7%)を占め、以下、地方交付税(15.8%)、地方債(12.1%)の順となっている。

(4) 歳出

 歳出の分類方法としては、行政目的に着目した「目的別分類」と経費の経済的な性質に着目した「性質別分類」が用いられるが、これらの分類による歳出の概要は、次のとおりである。

ア 目的別歳出

(ア) 目的別歳出[第34表

 地方公共団体の経費は、その行政目的によって、総務費、民生費、衛生費、労働費、農林水産業費、商工費、土木費、消防費、警察費、教育費、公債費等に大別することができる。

 歳出純計決算額は92兆5,818億円で、前年度と比べると2.4%減(前年度2.7%減)となっている。

 目的別歳出の構成比は、第6表のとおりであり、教育費(歳出総額の18.6%)、土木費(同17.8%)、民生費(同15.7%)、公債費(同14.2%)、総務費(同9.8%)の順となっており、教育費、土木費及び民生費で全体の5割以上を占めている。

第6表 目的別歳出純計決算額の状況

第6表 目的別歳出純計決算額の状況

第7表 目的別歳出純計決算額の構成比の推移

第7表 目的別歳出純計決算額の構成比の推移

 これらの項目の伸び率をみると、教育費が2.6%減(前年度1.9%減)、土木費が7.0%減(同4.8%減)、民生費が1.7%増(同1.8%増)、公債費が1.0%増(同1.7%増)、総務費が5.6%増(同4.3%減)となっており、民生費及び公債費が引き続き増加している。

第12図 目的別歳出決算額の構成比

第12図 目的別歳出決算額の構成比

第8表 一般財源の目的別経費充当状況

第8表 一般財源の目的別経費充当状況

 目的別歳出の構成比の推移は、第7表のとおりである。農林水産業費及び土木費の構成比がそれぞれ低下しつつある一方、数次にわたる経済対策の影響を受けて公債費の構成比が上昇している。

 目的別歳出の構成比を団体種類別にみると、第12図のとおりである。

 都道府県においては、市町村立義務教育諸学校教職員の人件費を負担していることなどにより教育費が最も大きな割合(23.8%)を占め、以下、土木費(16.9%)、公債費(13.7%)、民生費(8.1%)、農林水産業費(7.3%)の順となっている。

第13図 一般財源充当額の目的別構成比の推移

第13図 一般財源充当額の目的別構成比の推移

第9表 性質別歳出純計決算額の状況

第9表 性質別歳出純計決算額の状況

 また、市町村においては、民生費(24.0%)が最も大きな割合を占め、以下、土木費(16.9%)、公債費(13.3%)、総務費(12.9%)、教育費(11.3%)の順となっている。

(イ) 一般財源の充当状況

 一般財源の目的別歳出に対する充当状況は、第8表のとおりである。一般財源総額(52兆4,352億円)に占める目的別歳出の割合をみると、公債費が最も大きな割合(19.4%)を占め、以下、教育費(19.2%)、民生費(14.4%)、総務費(12.3%)、土木費(11.2%)の順となっている。

 一般財源充当額の目的別構成比の推移は、第13図のとおりである。近年、公債費に充当された一般財源の構成比が上昇し、教育費に充当された一般財源の構成比が低下する傾向にある。

イ 性質別歳出

(ア) 性質別歳出[第71表

 地方公共団体の経費は、その経済的な性質によって、義務的経費、投資的経費及びその他の経費に大別することができる。

第14図 歳出決算増減額に占める義務的経費、投資的経費等の増減額の推移

第14図 歳出決算増減額に占める義務的経費、投資的経費等の増減額の推移

 義務的経費は、職員給与費等の人件費のほか、生活保護費等の扶助費及び地方債の元利償還金等の公債費からなっており、そのうち人件費が約6割(56.2%)を占めている。また、投資的経費は、道路、橋りょう、公園、公営住宅、学校の建設等に要する普通建設事業費のほか、災害復旧事業費及び失業対策事業費からなっており、そのうち普通建設事業費が大部分(98.3%)を占めている。

 歳出純計決算額の性質別内訳をみると、第9表のとおりである。

 義務的経費は、前年度決算額を下回っている(対前年度比0.1%減)。これは、前年度に引き続き扶助費(同4.3%増)及び公債費(同0.9%増)は増加したが、行政改革に伴う定員削減による職員給の減少等により人件費(同1.8%減)が減少したためである。

 投資的経費は、前年度決算額を下回っている(対前年度比12.4%減)。これは、大部分を占める普通建設事業費が、補助事業費(同14.7%減)、単独事業費(同10.1%減)ともに減少し、前年度決算額を下回ったためである(同12.4%減)。

 また、その他の経費は、貸付金(対前年度比2.7%減)等の減少により前年度決算額を下回っている(同1.5%減)。

 平成10年度以降の歳出決算増減額に占めるこれらの経費の推移は、第14図のとおりである。

 次に、性質別経費の構成比の推移は、第15図のとおりである。

 投資的経費の構成比は、平成2年度以降、積極的な地方単独事業の実施や4年度以降の数次にわたる経済対策の影響等から上昇傾向にあったが、8年度に低下に転じ、15年度は前年度と比べると2.2%ポイント低下の20.1%となっている。また、投資的経費のうち普通建設事業費の内訳を補助事業費、単独事業費の別にみると、昭和63年度に初めて単独事業費が補助事業費を上回り、それ以降、単独事業費が補助事業費を上回っている。

 一方、義務的経費の構成比は、投資的経費の増加が相対的に大きかったことから、昭和60年度(48.8%)をピークに低下傾向にあったが、平成8年度以降は、投資的経費の減少に伴い上昇傾向にあり、地方債の元利償還金の増大による公債費の増加も伴い、15年度は前年度に比べると1.1%ポイント上昇の49.8%となっている。

第15図 性質別歳出純計決算額の構成比の推移

第15図 性質別歳出純計決算額の構成比の推移

第16図 性質別歳出決算額の構成比

第16図 性質別歳出決算額の構成比

第10表 一般財源の性質別経費充当状況

第10表 一般財源の性質別経費充当状況

 性質別歳出決算額の構成比を団体種類別にみると、第16図のとおりである。

 人件費の構成比は、都道府県において市町村立義務教育諸学校教職員の人件費を負担していることなどから、都道府県(31.4%)が市町村(21.3%)を上回っている。また、扶助費の構成比は、社会福祉関係事務が主に市町村において行われていることなどから、市町村(12.0%)が都道府県(2.1%)を上回っている。

第17図 一般財源充当額の性質別構成比の推移

第17図 一般財源充当額の性質別構成比の推移

 さらに、普通建設事業費のうち、補助事業費の構成比は、都道府県(10.8%)が市町村(5.9%)を上回る一方、単独事業費の構成比は、市町村(11.0%)が都道府県(8.1%)を上回っている。

(イ) 一般財源の充当状況[第72表

 一般財源の性質別経費に対する充当状況は、第10表のとおりである。

 一般財源総額(52兆4,352億円)に占める性質別経費の割合をみると、義務的経費が最も大きな割合(58.4%)を占め、投資的経費に充当された割合は8.3%であり、歳出総額に占める投資的経費の割合(20.1%)に比べて小さくなっている。

 一般財源充当額の性質別構成比の推移は、第17図のとおりである。

 義務的経費に充当された一般財源の構成比は、昭和50年度の62.0%をピークに、平成2年度の47.5%まで総じて低下し、3年度以降は、低下となった12年度を除き上昇してきたが、15年度は、前年度と比べると0.3%ポイント低下の58.4%となっている。

 一方、投資的経費に充当された一般財源の構成比は、平成3年度以降低下傾向を示しており、15年度は、前年度に比べると0.4%ポイント低下の8.3%となっている。

(5) 財政構造の弾力性

ア 経常収支比率[第8表

 地方公共団体が社会経済や行政需要の変化に適切に対応していくためには、財政構造の弾力性が確保されなければならない。財政分析においては、財政構造の弾力性の度合いを判断する指標の一つとして、経常収支比率が用いられている。

 経常収支比率は、経常経費充当一般財源(人件費、扶助費、公債費のように毎年度経常的に支出される経費に充当された一般財源)が、経常一般財源(一般財源総額のうち地方税、普通交付税のように毎年度経常的に収入される一般財源)、減税補てん債及び臨時財政対策債の合計額に対し、どの程度の割合となっているかをみることにより財政構造の弾力性を判断するものである。

第18図 経常収支比率を構成する分子及び分母の増減状況 その1 合計

第18図 経常収支比率を構成する分子及び分母の増減状況 その1 合計

 平成15年度の経常収支比率(特別区及び一部事務組合等を除く加重平均)は、前年度(90.3%)より1.3%ポイント低下の89.0%となり、集計開始(昭和44年度)以来最も高い値を示した前年度をやや下回っている。

 また、その内訳をみると、人件費分が36.0%(前年度37.0%)、公債費分が21.5%(同21.6%)等となっている。

 なお、減税補てん債及び臨時財政対策債の発行額を経常収支比率算出上の分母から除いた場合の経常収支比率を求めると、99.9%となる。

 このように経常収支比率が前年度を下回ったのは、第18図(その1)のとおり、分子である経常経費充当一般財源は、行政改革に伴う定員削減による職員給の減少等により人件費分が減少したものの、公債費分の増加等により分子全体として増加した一方、分母の経常一般財源も地方税及び地方交付税は減少したものの、減税補てん債及び臨時財政対策債の大幅な増加等により分母全体として増加し、分母の伸び率が分子の伸び率を上回ったことによるものである。

 近年の経常収支比率の推移をみると、第11表のとおり、平成15年度は低下しているものの、平成13年度及び平成14年度は上昇傾向にあり、特に公債費充当分が上昇している。

 次に、経常収支比率を団体種類別にみると、都道府県は前年度と比べると2.7%ポイント低下の90.8%、特別区及び一部事務組合等を除く市町村は前年度と同じ87.4%となっている。

第11表 経常収支比率の推移

第11表 経常収支比率の推移

第18図 経常収支比率を構成する分子及び分母の増減状況 その2 都道府県

第18図 経常収支比率を構成する分子及び分母の増減状況 その2 都道府県

第18図 経常収支比率を構成する分子及び分母の増減状況 その3 市町村

第18図 経常収支比率を構成する分子及び分母の増減状況 その3 市町村

第12表 経常収支比率の段階別分布状況

第12表 経常収支比率の段階別分布状況

 このように都道府県の経常収支比率が市町村より高くなっているのは、都道府県が市町村立義務教育諸学校教職員の給与を負担していることなどから人件費充当分が大きいことなどによるものである。

 都道府県の経常収支比率を構成する分子及び分母の増減状況は、第18図(その2)のとおりである。

 都道府県の経常収支比率が低下しているのは、その分子が減少し分母が増加したためである。分子である経常経費充当一般財源は、公債費分等の増加があったものの、行政改革による人件費分の減少や制度改正に伴う市町村への事務移管による扶助費分の減少等により全体として減少した。

 一方、分母は、経常一般財源のうち地方税及び地方交付税の大幅な減少があったものの、減税補てん債及び臨時財政対策債の増加がそれを上回り、全体として増加した。

 また、市町村の経常収支比率を構成する分子及び分母の増減状況は、第18図(その3)のとおりである。

 市町村の経常収支比率が前年度と同じであるのは、分子と分母の伸び率が同じ程度であったためである。分子である経常経費充当一般財源は、行政改革による人件費分等の減少があったものの、公債費分の増加や制度改正に伴う都道府県からの事務移管による扶助費分の増加等により全体として増加した。一方、分母は、経常一般財源のうち地方税及び地方交付税の大幅な減少があったものの、減税補てん債及び臨時財政対策債の増加がそれを上回り、全体として増加した。

 経常収支比率の段階別分布状況をみると、第12表のとおりである。経常収支比率が75%以上の団体数は、都道府県47団体の全ての団体(前年度同数)、特別区及び一部事務組合等を除く市町村においては全体の95.9%を占める3,004団体(同3,041団体)となっており、多くの団体の経常収支比率が高い水準にある。

イ 公債費負担比率及び起債制限比率[第8表

 地方債の元利償還金等の公債費は、義務的経費の中でも特に弾力性に乏しい経費であることから、財政構造の弾力性をみる場合、その動向には常に留意する必要がある。その公債費の状況を把握するための指標として、公債費負担比率及び起債制限比率が用いられている。

 公債費負担比率は、公債費充当一般財源(地方債の元利償還金等の公債費に充当された一般財源)が一般財源総額に対し、どの程度の割合となっているかを示す指標であり、公債費がどの程度一般財源の使途の自由度を制約しているかをみることにより、財政構造の弾力性を判断するものである。

第19図 公債費負担比率を構成する分子及び分母の増減状況

第19図 公債費負担比率を構成する分子及び分母の増減状況

第20図 公債費充当一般財源及び公債費負担比率の推移

第20図 公債費充当一般財源及び公債費負担比率の推移

 平成15年度の公債費負担比率(全団体の加重平均)は、前年度より0.2%ポイント上昇の19.4%となり、12年連続して上昇している。

 このように公債費負担比率が前年度を上回ったのは、第19図のとおり、分子である公債費充当一般財源は減少したものの、分母である一般財源総額が地方税等の減少により分子の減少率を上回って減少したためである。

 近年の公債費負担比率の推移は、第20図のとおりであり、平成4年度以降連続して上昇しており、財政構造の硬直化が更に進んでいる。

 起債制限比率は、地方債元利償還金及び公債費に準ずる債務負担行為に係る支出の合計額から繰上償還された額を除き、さらにこれに充当された一般財源のうち普通交付税の算定において基準財政需要額に算入されたものを除いたものが、標準財政規模及び臨時財政対策債発行可能額の合計額(普通交付税の算定において基準財政需要額に算入された公債費等を除く)に対しどの程度の割合となっているかをみるものである。

第13表 起債制限比率の推移

第13表 起債制限比率の推移

第14表 起債制限比率の段階別分布状況

第14表 起債制限比率の段階別分布状況

 平成15年度の起債制限比率(一部事務組合等を除く加重平均)は、第13表のとおりであり、前年度と同じ11.6%となっている。

 起債制限比率の段階別分布状況は、第14表のとおりであり、都道府県においては起債制限比率が15%以上の団体が全体の12.8%にあたる6団体(前年度7団体)となっており、市町村においては起債制限比率が15%以上の団体が全体の6.0%にあたる189団体(同142団体)となっている。

(6) 将来にわたる財政負担

 地方公共団体の財政状況をみるには、単年度の収支状況のみでなく、地方債、債務負担行為等のように将来にわたって財政負担となるものや、財政調整基金等の積立金のように年度間の財源調整を図り将来における弾力的な財政運営に資するために財源を留保するものの状況についても、併せて、総合的に把握する必要がある。これらの状況は、次のとおりである。

ア 地方債現在高[第97表

 平成15年度末における地方債現在高は138兆9,477億円で、前年度末と比べると3.0%増(前年度末3.0%増)となっている。なお、特定資金公共投資事業債を除いた地方債現在高は、138兆980億円で、前年度末と比べると3.0%増(同2.5%増)となっている。

 地方債現在高の歳入総額及び一般財源総額に対するそれぞれの割合の推移は、第21図のとおりである。

 地方債現在高は、昭和50年度末では歳入総額の0.44倍、一般財源総額の0.88倍であったが、地方税収等の落込みや減税に伴う減収の補てん、経済対策に伴う公共投資の追加等により地方債が急増したことに伴い、平成4年度末以降急増し、さらに、平成13年度からの臨時財政対策債の発行により15年度末には歳入総額の1.46倍、一般財源総額の2.63倍となっている。なお、標準財政規模に対する比率では、前年度末と比べると23.5%ポイント上昇の275.2%となっている。

第21図 地方債現在高の歳入総額等に対する割合の推移

第21図 地方債現在高の歳入総額等に対する割合の推移

第22図 地方債現在高の目的別構成比及び借入先別構成比の推移

第22図 地方債現在高の目的別構成比及び借入先別構成比の推移

 近年の地方債現在高の目的別構成比及び借入先別構成比の推移は、第22図のとおりである。

 地方債現在高を目的別にみると、一般単独事業債が最も大きな割合(37.6%)を占め、以下、一般公共事業債(20.1%)、臨時財政対策債(6.6%)、減税補てん債(4.9%)、減収補てん債(3.9%)、公営住宅建設事業債(3.6%)の順となっている。

 地方債現在高の借入先別の構成比は、政府資金(45.5%)、市中銀行資金(28.2%)、市場公募債(12.8%)、公営企業金融公庫資金(6.1%)の順となっている。

 また、前年度末と比較すると、市場公募債が1.2%ポイント上昇となっている一方、政府資金は0.2%ポイント低下、市中銀行資金は0.7%ポイント低下となっている。

 地方債現在高を団体種類別にみると、都道府県においては77兆3,894億円、市町村においては61兆5,583億円で、前年度末と比べるとそれぞれ3.8%増(前年度末4.1%増)、2.0%増(同1.8%増)となっている。

イ 債務負担行為額[第98表

 地方公共団体は、将来の支出を約束するために、債務負担行為を行うことができる。

 この債務負担行為は、数年度にわたる建設工事、土地の購入等の場合のように翌年度以降の経費支出が予定されているものと、債務保証又は損失補償のように債務不履行等の一定の事実が発生したときに支出されるものとに大別することができる。

 これらの債務負担行為に基づく翌年度以降支出予定額をみると、平成15年度末では12兆6,949億円であり、前年度末と比べると1.7%減(前年度末7.1%減)となっている。

 翌年度以降支出予定額を目的別にみると、第23図のとおりであり、製造・工事の請負に係るもの(対前年度末比5.9%減)、土地の購入に係るもの(同5.0%減)が減少したことなどから、物件の購入等に係るものは減少(同5.0%減)している。

 一方、債務保証又は損失補償に係るものについては、特別法の規定に基づく法人のうち地方三公社以外に係るもの(信用保証協会、農協、社会福祉法人等)(対前年度末比4.9%減)及びその他の債務保証又は損失補償(同14.9%減)については減少したものの、地方三公社(地方住宅供給公社、地方道路公社及び土地開発公社)に係るもの(同54.4%増)及び地方公共団体が出資・出えんしている上記以外の法人(財団法人、株式会社等)(同119.3%増)が増加したことなどから増加(同15.3%増)している。

 翌年度以降支出予定額を団体種類別にみると、都道府県においては5兆9,692億円、市町村においては6兆7,257億円であり、前年度末と比べるとそれぞれ4.3%減(前年度末9.4%減)、0.7%増(同4.9%減)となっている。

ウ 積立金現在高[第99表

 地方公共団体は、財政の健全な運営を図るため、将来の財政需要に備えて積立てを行っており、この積立金現在高の状況は、第15表のとおりである。

 平成15年度末における積立金現在高は13兆9,865億円で、前年度末と比べると6,822億円減少(対前年度末比4.7%減)となっている。また、標準財政規模に対する比率は、前年度末と比べると0.4%ポイント上昇の27.9%となっている。

 積立金現在高の内訳をみると、年度間の財源調整を行うために積み立てられている財政調整基金は前年度末に比べ1.2%減となっている。

 地方債の将来の償還費に充てるために積み立てられている減債基金は前年度末に比べ0.4%減となり、将来の特定の財政需要に備えて積み立てられているその他特定目的基金は7.7%減となっている。

 積立金現在高を団体種類別にみると、都道府県については、減債基金は増加しているものの、財政調整基金及びその他特定目的基金の減少により2,855億円減少(対前年度末比6.6%減)、市町村については、財政調整基金は増加しているものの、減債基金及びその他特定目的基金の減少により3,967億円減少(同3.8%減)となっている。

エ 将来にわたる実質的な財政負担[第97表〜第99表第130表

 地方債現在高(特定資金公共投資事業債を除く。)に債務負担行為に基づく翌年度以降支出予定額を加え、積立金現在高を差し引いた地方公共団体の将来にわたる実質的な財政負担の推移は、第24図のとおりである。

 平成15年度末における将来にわたる実質的な財政負担は136兆8,064億円で、前年度末と比べると3.4%増(前年度末2.5%増)となっている。

第23図 債務負担行為に基づく翌年度以降支出予定額の目的別構成比の推移

第23図 債務負担行為に基づく翌年度以降支出予定額の目的別構成比の推移

第15表 積立金現在高の状況

第15表 積立金現在高の状況

第24図 将来にわたる実質的な財政負担の推移

第24図 将来にわたる実質的な財政負担の推移

 なお、標準財政規模に対する比率は、前年度末と比べると24.1%ポイント上昇の272.6%となっており、また、国内総生産(名目ベース。以下同じ。)に対する割合では、前年度末と比べると0.7%ポイント上昇の27.3%となっている。

 将来にわたる実質的な財政負担を団体種類別にみると、都道府県においては78兆7,406億円(標準財政規模に対する比率341.9%)、市町村においては58兆658億円(同213.8%)であり、前年度末と比べるとそれぞれ3.7%増(前年度末3.0%増)、2.9%増(同1.9%増)となっている。

オ 普通会計が負担すべき借入金残高

 普通会計が将来にわたって負担すべき借入金という観点からは、地方債現在高のほか、巨額の地方財源不足に対処するための昭和58年度、61年度、平成4年度から15年度までの各年度における交付税及び譲与税配付金特別会計(以下「交付税特別会計」という。)借入金のうち地方財政全体で負担するもの及び地方公営企業において償還する企業債のうち、経費負担区分の原則等に基づき、普通会計がその償還財源を負担するものについても併せて考慮する必要がある。

 この観点から、交付税特別会計借入金残高のうち地方財政全体で負担することとなるものと企業債現在高のうち普通会計が負担することとなるものを地方債現在高(特定資金公共投資事業債を除く。)に加えた普通会計が負担すべき借入金残高の推移をみると、第25図のとおりである。

 これをみると、近年の地方税収等の落込みや平成4年度以降の補正予算による経済対策に加え、平成6年度以降の減税による地方税の減収等に対応するための財源確保及び平成13年度以降の臨時財政対策債の発行等に伴い、普通会計が負担すべき借入金残高は急増しており、15年度末には、198兆2,802億円に達し、前年度末と比べると2.7%増となっている(前年度2.9%増)。

第25図 普通会計が負担すべき借入金残高及び国内総生産に占める割合の推移

第25図 普通会計が負担すべき借入金残高及び国内総生産に占める割合の推移

 また、その内訳は、地方債現在高(特定資金公共投資事業債を除く。)が138兆980億円、交付税特別会計借入金残高が31兆8,357億円、企業債現在高のうち普通会計が負担することとなるものが28兆3,465億円となっている。

 また、この普通会計が負担すべき借入金残高の標準財政規模に対する比率は、前年度末と比べると32.7%ポイント上昇の395.1%にまで増大しており、普通会計が負担すべき借入金残高の国内総生産に対する比率は、前年度末と比べると0.8%ポイント上昇の39.6%となっている。

(7) 決算の背景

ア 平成15年度の経済見通しと国の予算

(ア) 経済見通しと経済財政運営の基本的態度

 「平成15年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」は、平成14年12月19日に閣議了解、平成15年1月24日に閣議決定された。

 これによると、平成14年度の我が国経済は、年初来の輸出の増加や生産の持ち直しの動き等により、景気に一部持ち直しの動きがみられたが、年後半にかけて世界経済への先行き懸念や株価低迷の影響等が最終需要の下押し要因となり、年度後半はほぼ横ばいで推移することが見込まれていた。また、平成14年度の国内総生産の名目成長率はマイナス0.6%程度になると見込まれていた。

 このような情勢認識に立って、平成15年度の経済財政運営の基本的態度については、経済活性化に向け、「金融システム改革」、「税制改革」、「規制改革」及び「歳出改革」の四本柱の構造改革を一体的かつ整合的に実行することとし、こうした構造改革の取組を更に加速することにより、デフレを抑制しながら、民間需要主導の持続的な経済成長の実現を目指すことを基本に経済財政運営を行い、世界経済の持続的発展への貢献を目指すこととされた。

 以上のような経済財政運営の下において、平成15年度の国内総生産は498.6兆円程度、経済成長率は名目でマイナス0.2%程度、実質で0.6%程度になるものと見通された。

(イ) 国の予算

 平成14年11月29日、「平成15年度予算編成の基本方針」が閣議決定され、その中で平成15年度予算については、活力ある経済社会と持続的な財政構造の構築を図るため、「官から民へ」、「国から地方へ」の観点に立ち、制度・政策の抜本的な見直しの検討を踏まえ、歳出改革を加速し、歳出全体にわたる徹底した見直しを行うものとされ、一般歳出及び一般会計歳出全体について実質的に平成14年度の水準以下に抑制すること等を基本的考え方とすることとされた。また、歳出の見直しと構造改革の推進のため、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」(以下「基本方針2002」という。)に基づき、活力ある経済社会の実現に向けた将来の発展につながる4分野(「人間力の向上・発揮−教育・文化、科学技術、IT」、「個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方」、「公平で安心な高齢化社会・少子化対策」、「循環型社会の構築・地球環境問題への対応」)で政策効果が顕著なものについて重点的に推進するとともに、社会資本整備、社会保障制度、地方財政等の事項についても制度・施策の見直しを行うものとされた。社会資本整備については、重点4分野を中心に、雇用・民間需要の拡大に資する分野への重点配分を行う一方、国庫補助負担金について、その内容を見直すとともに、「改革と展望」に基づく公共投資の抑制を踏まえつつ、これを上回る縮減を目指して実施することとし、公共投資関係費の水準については、前年度当初予算から3%以上削減すること等とされた。地方財政については、国の関与の縮減、国庫補助負担事業の廃止・縮減、アウトソーシングの推進など国・地方を通じた事務事業の在り方の見直しも踏まえ、国の歳出の徹底的な見直しと歩調を合わせつつ、地方財政計画の歳出を徹底的に見直すとともに、定員の計画的削減や国家公務員に準じた退職手当の支給水準の引下げ等による総人件費の抑制や地方単独事業の削減を図ることなどにより、地方財政計画の規模を抑制することとされるとともに、「改革と展望」の期間(平成18年度まで。以下同じ。)を通じ、地方財政計画の歳出の計画的な抑制を図ることにより、計画規模の抑制に努めることとされた。同時に、国庫補助負担金、地方交付税、税源移譲を含む税源配分の在り方についての「三位一体の改革」を進めることとされた。

 平成15年度の国の予算は、以上のような方針により編成され、平成14年12月24日に概算の閣議決定が行われた後、平成15年1月24日に第156回国会に提出された。

 これによると、平成15年度の国の一般会計予算の規模は81兆7,891億円で、前年度当初予算と比べると5,591億円の増加(0.7%増)となっており、うち一般歳出の規模は47兆5,922億円で、前年度当初予算と比べると450億円の増加(0.1%増)となった。なお、「平成15年度予算編成の基本方針」において、前年度当初予算から3%以上削減することとされた公共投資関係費については、3.7%減の8兆9,117億円となった。また、公債の発行予定額は36兆4,450億円で、前年度当初発行予定額と比べると6兆4,450億円の増加(21.5%増)となっており、公債依存度は44.6%となった。

 他方、財政投融資計画については、行財政改革の趣旨を踏まえ、全体規模を縮減しつつ、構造改革に資する分野に重点を置き対象事業を見直すとともに、現下の経済金融情勢を踏まえ、企業再生・中小企業金融等真に必要と考えられる資金需要には的確に対応することとされ、計画規模は23兆4,115億円、前年度計画と比べると3兆3,805億円の減(12.6%減)となった。

イ 地方財政計画

 平成15年度の地方財政計画は、極めて厳しい地方財政の現状等を踏まえ、歳出面においては、歳出全般にわたり徹底した見直しを行うことにより歳出総額の計画的な抑制を図る一方、当面の重要課題である個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方の形成、循環型社会の構築・地球環境問題への対応、少子・高齢化対策等に財源の重点的配分を図ることとし、歳入面においては、地方税負担の公平適正化の推進と地方交付税の所要額の確保を図ることを基本とするとともに、引き続き生じることとなった大幅な財源不足について、地方財政の運営上支障が生じないよう適切な補てん措置を講じることとし、次の方針に基づき策定された。

(1) 地方税については、恒久的な減税を引き続き実施するとともに、現下の経済・財政状況等を踏まえつつ、持続的な経済社会の活性化を実現するための「あるべき税制」の構築に向け、法人事業税の外形標準課税の導入、不動産取得税の税率の引下げ、特別土地保有税の課税停止、新増設に係る事業所税の廃止、平成15年度の固定資産税の評価替えに伴う土地に係る固定資産税・都市計画税の税負担の調整、個人住民税について配偶者特別控除(上乗せ分)の廃止、配当所得・株式等譲渡所得に係る課税方式の見直し、地方のたばこ税の税率の引上げその他の所要の措置を講じる。

 特に法人事業税への外形標準課税の導入については、平成15年度に、資本金1億円超の法人を対象として、外形基準の割合を4分の1とする外形標準課税制度を創設し、平成16年度から適用する。

(2) 地方財源不足見込額等について、地方財政の運営に支障が生じることのないよう、次の措置を講じる。

1)恒久的な減税に伴う影響額及び平成15年度税制改正に伴う減収額以外の地方財源不足(国庫補助負担金の見直しに伴う地方財政への影響額を含まず。以下「通常収支に係る財源不足」という。)の見込額13兆4,457億円については、次の措置を講じる。

ア 平成13年度に講じた平成15年度までの間の制度改正を踏まえ、通常収支に係る財源不足補てん措置としては交付税特別会計における新規借入金を廃止し、財源不足のうち建設地方債(財源対策債)の増発等を除いた残余については国と地方が折半して補てんすることとし、国負担分については、国の一般会計からの加算により、地方負担分については地方財政法(昭和23年法律第109号)第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)により補てん措置を講じる。

 臨時財政対策債の元利償還金相当額については、その全額を後年度地方交付税の基準財政需要額に算入する。

イ これに基づき、平成15年度の通常収支に係る財源不足見込額については、次により完全に補てんする。

(ア) 地方交付税については、国の一般会計加算により5兆7,361億円(うち、地方交付税法(昭和25年法律第211号)附則第4条の2第2項の加算額1,684億円、平成14年度補正予算に伴う地方財政措置に係る改正後の同条第6項の加算額37億円、配当所得課税の見直しに係る特例加算額224億円、臨時財政対策特例加算額5兆5,416億円)増額する。

(イ) 地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)を5兆8,696億円発行する。

(ウ) 建設地方債(財源対策債)を1兆8,400億円増発する。

2)恒久的な減税に伴う地方財政への影響額3兆2,437億円については、次の措置を講じる。

ア 恒久的な減税の実施による地方税の減収1兆8,137億円について、国と地方のたばこ税の税率変更による地方たばこ税の増収措置、法人税の地方交付税率の引上げ、地方特例交付金及び地方債(地方財政法第5条の特例としての減税補てん債)の発行により完全に補てんする。

イ 恒久的な減税の実施による地方交付税への影響額1兆4,300億円のうち、平成15年度に新たに発生する地方交付税の減収1兆3,449億円については、交付税特別会計借入金により措置し、国と地方が折半して負担することにより完全に補てんする。

 また、平成11年度以降地方交付税への影響額の補てんとして措置した交付税特別会計借入金について、国負担分の借入金の利子相当額420億円は一般会計からの繰入れにより、地方負担分の借入金の利子相当額431億円は交付税特別会計借入金により措置する。

3)平成15年度税制改正に伴う平成15年度の地方税及び地方交付税の減収額6,873億円については、次の措置を講じる。

ア 地方税の減収2,410億円については、減税補てん債の発行により完全に補てんする。

イ 地方交付税の減収4,463億円については、交付税特別会計借入金により完全に補てんする。

4)平成15年度に行うこととする国庫補助負担金の見直しに伴う地方財政への影響については、次の措置を講じる。

ア 義務教育費国庫負担金の一部等の国庫補助負担金の一般財源化に伴い、地方において必要となる一般財源の額については、その2分の1は地方特例交付金により、2分の1は地方交付税(交付税特別会計借入金により対応し、償還費の4分の3を国が負担)により措置することにより、国庫補助負担金、交付税、税源移譲を含む税源配分の在り方の「三位一体の改革」に向けた暫定措置を講じる。

 なお、国負担分の借入金の利子相当額(平成15年度にあっては4億円)については、一般会計より繰り入れることとする。

イ 市町村道整備に係る国庫補助負担金の見直しに伴う影響については、直轄方式による高速道路整備への地方負担の導入に伴う影響と合わせて財源措置を講じることとし、自動車重量譲与税の譲与割合を4分の1から3分の1に引き上げることにより、所要の税源を地方に移譲する。

5)上記の結果、平成15年度の地方交付税については、18兆693億円(前年度に比し7.5%減)を確保する。

 また、平成5年度の投資的経費に係る国庫補助負担率の見直しに関し一般会計から交付税特別会計に繰り入れることとしていた額等3,243億円については法律の定めるところにより、平成16年度以降の地方交付税の総額に加算する。

(3) 地方債については、地方財源の不足に対処するための措置を講じるとともに、極めて厳しい地方財政の状況の下で、その健全性の確保に留意しつつ、地方公共団体が個性豊かで活力ある地域社会の構築を目指して、それぞれの特性を活かし相互に魅力を共有できる地域づくり、ITを活用した住民生活の向上と地域の振興、すべての人にやさしいまちづくり、環境と調和した循環型社会の形成、災害に強く安全な地域づくり等当面する政策課題に重点的・効率的に対応しうるよう、地方債計画の規模を18兆4,845億円(普通会計分15兆718億円、公営企業会計等分3兆4,127億円)とする。

(4) 社会経済情勢の推移等に即応して使用料・手数料等の適正化を図る。

(5) 地域経済の振興や雇用の安定を図りつつ、個性と活力ある地域社会の構築、住民に身近な社会資本の整備、災害に強い安全なまちづくり、総合的な地域福祉施策の充実、農山漁村地域の活性化等を図ることとし、財源の重点的配分を行う。

1)投資的経費に係る地方単独事業費については、中期的に事業規模の計画的抑制を図ることとし、平成15年度においては、国の公共投資関係費の取扱い等も勘案しつつ、前年度に比し5.5%減額する一方で、地域活性化事業、合併特例事業及び防災対策事業などにより、引き続き、地域の自立や活性化につながる基盤整備を重点的・効率的に推進する。

2)一般行政経費に係る地方単独事業費については、既定の行政経費の縮減を図る一方、個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方の形成、循環型社会の構築・地球環境問題への対応、少子・高齢化対策等の分野に係る施策に財源の重点的配分を図る。

3)消防力の充実、自然災害の防止、震災対策の推進等住民生活の安全を確保するための施策を推進する。

4)過疎地域の自立促進のための施策等に対し所要の財政措置を講じる。

(6) 地方公共団体の公債費負担の軽減を図るため、普通会計における高利の公的資金に係る地方債等に対する特別交付税措置及び一定の公営企業金融公庫資金の借換え措置を講じる。

(7) 地方公営企業の経営基盤の強化、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、社会経済情勢の変化に対応した新たな事業の展開等を図るため、経費負担区分等に基づき、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行う。

(8) 地方行財政運営の合理化と財政秩序の確立を図ることとし、このため次の措置を講じる。

1)国庫補助負担金について補助負担単価の適正化等国庫補助負担基準を改善する。

2)一般職の定員を削減する等定員管理の合理化を図るとともに、一般行政経費等を極力抑制する。

3)年度途中における事情の変化に弾力的に対応できるよう、必要な財源をあらかじめ確保する。

 以上のような方針に基づいて策定した平成15年度の地方財政計画の規模は、86兆2,107億円で、前年度と比べると1兆3,559億円減少(1.5%減)となっている。

 歳入についてみると、地方税は32兆1,725億円で、前年度と比べると2兆838億円減少(6.1%減)(道府県税7.7%減、市町村税4.9%減)、地方譲与税は6,939億円で、前年度と比べると700億円増加(11.2%増)、地方特例交付金は1兆62億円で、前年度と比べると1,026億円増加(11.4%増)、地方交付税は18兆693億円で、前年度と比べると1兆4,756億円減少(7.5%減)、国庫支出金は12兆2,600億円で、前年度と比べると4,613億円減少(3.6%減)、地方債(普通会計分)は15兆718億円で、前年度と比べると2兆4,225億円増加(19.2%増)となった。

 一方、歳出についてみると、給与関係経費は23兆4,383億円で、前年度と比べると2,615億円減少(1.1%減)となった。なお、地方財政計画全体の職員数については、一般職員(義務教育教職員、警察官、消防職員、非義務制学校の教員を除く職員)について、国家公務員の定員削減の方針に準じ、10,369人を縮減するとともに、保健師の増員、施設増に伴う所要の増員等に義務教育教職員、警察官、消防職員、非義務制学校の教員の増減員を加え、10,368人の減員を見込んだ。一般行政経費は21兆263億円で、前年度と比べると2,195億円増加(1.1%増)、公債費は13兆7,673億円で、前年度と比べると3,359億円増加(2.5%増)、投資的経費は23兆2,868億円で、前年度と比べると1兆3,117億円減少(5.3%減)となっており、投資的経費のうち、公共事業費中の普通建設事業費は7兆1,552億円で、前年度と比べると4,911億円減少(6.4%減)、地方単独事業費は14兆 8,800億円で、前年度と比べると8,700億円減少(5.5%減)となった。

 また、平成15年度の地方債計画の規模は18兆4,845億円で、前年度当初計画と比べると1兆9,606億円増加(11.9%増)となった。

ウ 財政運営の経過

(ア) 経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003

 平成15年6月27日、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」(以下「基本方針2003」という。)が閣議決定された。

 「基本方針2003」においては、構造改革を更に本格的に推進するため、これまでの進展を点検・評価したうえで、構造改革の基本方針を「経済活性化」、「国民の『安心』の確保」、「将来世代に責任が持てる財政の確立」という「3つの宣言」とこれらの宣言に関する具体的な「7つの改革」という形で新たに打ち出し、その枠組みに沿って政府が今後特に推進する施策を明らかにした。

 具体的には、「経済活性化」については、民間の活力を阻む規制・制度や政府の関与を取り除き、民間需要を創造することを宣言し、(1)規制改革・構造改革特区、(2)資金の流れと金融・産業再生、(3)税制改革、(4)雇用・人間力の強化の4つの改革に取り組むこととし、「国民の『安心』の確保」については、持続可能な社会保障制度を構築し、若者が将来を展望でき、高齢者も安心できる社会をつくることを宣言し、(5)社会保障制度改革に取り組むこととし、「将来世代に責任が持てる財政の確立」については、財政の信認を確保し、成果を重視することを宣言し、(6)「国と地方」の改革、(7)予算編成プロセスの改革に取り組むこととした。

(イ) 平成15年度補正予算(第1号、特第1号及び機第1号)

 平成15年度補正予算(第1号、特第1号及び機第1号)は、平成15年12月20日に閣議決定され、平成16年1月19日に第159回国会に提出され、2月9日成立した。

 この補正予算においては、歳出面では、義務的経費を中心としたやむを得ざる追加財政需要への対応として、義務的経費7,179億円、災害対策費2,156億円、イラク復興支援経済協力費1,188億円等を追加計上するほか、既定経費の節減1兆1,716億円、予備費の減額1,000億円の修正減少額を計上した。また、歳入面では、前年度剰余金受入3,874億円を計上するほか、その他収入2,369億円の減収を見込んだ。

 この結果、一般会計予算の規模は、歳入歳出とも平成15年度当初予算に対し、1,505億円増加し、81兆9,396億円となった。

(ウ) 平成15年度補正予算(第1号、特第1号及び機第1号)に係る地方財政補正措置

 平成15年度補正予算(第1号、特第1号及び機第1号)の編成による歳出の追加に伴う地方負担の増加に対しては以下の地方財政補正措置が講じられた。

 国の補正予算により平成15年度に追加されることとなった災害復旧事業等投資的経費に係る地方負担額(普通会計分635億円)については、原則として、地方債(通常充当率)を充当することとされた。

 介護給付費、生活保護費、老人医療給付費等地方債の対象とならない経費(3,208億円)については、給与関係経費の不用額(4,380億円)の充当により対応することとされた。


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