資料5 経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004

はじめに 日本経済の現状と構造改革が目指すところ

1.日本経済の現状と課題

(民間需要主導で景気回復しつつある日本)

 我が国は今、長期停滞を脱し、新たな飛躍の段階を迎えつつある。集中調整期間は、マイナス成長と巨額な不良債権の存在という厳しい経済環境から出発したが、構造改革を進める中で、財政に依存することなく民間需要主導により、景気回復の裾野をこれまで着実に広げてきた。

 不良債権処理の着実な進展、規制改革や企業再生・活性化への幅広い取組、歳出改革・税制改革の推進等これまでの構造改革が、バブル崩壊後日本経済を下押ししてきた重しの除去に総合的な成果をあげている。不良債権処理については、主要行の不良債権残高はこの2年で13兆円以上減少し、銀行や不動産業等の株価が着実に上昇している。また、企業の設備投資・研究開発減税が回復を下支えしたほか、最低資本金特例による過去1年での起業社数が1万社を超える急増ぶりを示すなど、企業の再生・再編が活発である。

 一方、失業率は平成14年1月に5.5%まで上昇したものの、その後徐々に低下し、平成15年を通してみれば13年ぶりに低下に転じた。失業率が上昇もしくは高止まりを続けたバブル崩壊後の過去2回の景気回復とは顕著な違いであり、今回の回復が構造改革の成果を伴うものであることを示している。

 このように企業部門の好調が雇用の回復を通じて家計に波及する兆しも現れ、金融システムの安定化や株価上昇とあいまって、消費マインドが改善している。この結果、平成14年初からの景気回復局面における平均成長率は年率3.0%、うち民間需要の寄与度が2.2%を占め、民間需要主導の成長が実現しつつある。しかしながら、地域の回復動向にはばらつきがあり、大企業に比べ中小企業の状況は厳しいことを認識することが重要である。また、平成16年前半においても緩やかなデフレ状況が続いており、デフレ克服への取組は依然重要な政策課題である。

(改革成果の拡大と集中調整期間の仕上げ)

 平成16年度は、集中調整期間の仕上げの年であり、バブル崩壊後の負の遺産からの脱却に目途をつける。「金融再生プログラム」を着実に推進し、不良債権問題を終結させること等により、金融システムを強化するとともに、中小・地域金融機関の機能強化を図る。同時に、早期のデフレ克服を目指し、政府・日本銀行が一体となって政策努力を行う。また、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」(平成15年6月27日閣議決定。以下「基本方針2003」という。)など、これまでに策定されてきた施策を引き続き着実に実行し、これに加えて地域再生や雇用政策に一段の努力を行うことにより、改革成果を日本の隅々にまで浸透させる。

2.「集中調整期間」から「重点強化期間」へ

 平成17年度以降の課題は、「官から民へ」、「国から地方へ」といったこれまでの改革についてより本格的な取組を行うとともに、人口減少や国際環境の変化など新たな条件の下での成長基盤を確立することである。平成17年度及び平成18年度の2年間を「重点強化期間」と位置づけ、日本銀行と一体となった政策努力によりデフレからの脱却を確実なものとしつつ、新たな成長に向けた基盤の重点強化を図る。このような取組の結果、平成18年度以降は名目成長率で概ね2 %程度あるいはそれ以上の成長経路を辿ると見込まれる。

 「重点強化期間」における主な課題は次のとおりである。

 第一に、「官から民へ」、「国から地方へ」を徹底させ、民間や地域の知恵が主導する経済社会システムをつくりあげる。そのために、行政の事後チェック機能を強化しつつ、官でなければできない業務を明確化する作業に取り組むとともに、国による地方公共団体への規制の見直しなど地方の裁量権拡大に取り組む。また、郵政民営化の準備を完了させる。

 第二に、政府部門の本格的な改革(「官の改革」)を行い、国民に説明責任を果たす効率的でスリムな政府をつくる。そのために、予算ごとの成果目標の明示・厳格な事後評価等の予算制度改革や、一段の行政改革に取り組む。

 第三に、民間の成長力を強化するための改革(「民の改革」)を行う。人口減少という我が国経済社会の大変化に向けて、経済社会の更なる発展のための戦略をとりまとまる。また、「金融重点強化プログラム」(仮称)を策定し、不良債権問題への対応から脱却して、金融・証券市場の構造改革と活性化により、我が国金融セクターを更に強化・充実させ、経済社会の新たな成長に向け、国際的にも最高水準の金融機能が利用者のニーズに応じて提供されることを目指す。

 第四に、「人間力」の抜本的強化に取り組む。その際、雇用のミスマッチ縮小に力点を置く。このため、約10%の高い失業率を示す若年層に対する能力開発施策等の拡充、地域の実情に応じた雇用政策の展開、利用者の立場に立った雇用関連事業の再編・ワンストップ化に取り組む。

 第五に、「持続的な安全・安心」の確立に取り組む。具体的には、社会保障制度について、年金・医療・介護・生活保護等を一体としてとらえた総合的な改革を進める。また、少子化対策、健康・介護予防の推進、治安・安全の確保、循環型社会の構築・地球環境の保全にも注力する。

 このように、集中調整期間後の我が国経済社会は、新たな課題に挑戦しつつ、持続的な成長軌道の確立を目指すことになる。しかし、これまで取り組んできた構造改革そのものの目標が変わるわけではない。構造改革とは、我が国が持てる資源(人材、資金、技術力等)を最大限に活かすための改革にほかならないからである。集中調整期間から重点強化期間へと移行する時期にあたって、構造改革の意義を確認することは重要なことであり、次項において目指すべき経済社会の姿を改めて示すこととする。

3.構造改革とその目指すところ

 21世紀の我が国経済社会は、単なる過去の延長戦上にはない。

 グローバリゼーションが加速度に進み、IT化が産業、生活、そして労働の在り方を革命的に変えている。かつて発展途上国と呼ばれた国々が次々と目覚しい成長を遂げる中で、日本が今後も競争力を保持し、より豊かで住み良い社会を構築するためには、高齢化や環境問題等の課題を新たな社会的ニーズに転換しつつ個々の企業、地域、個人レベルでそれぞれイノベーション(革新)を生み出し、日本経済を新たな成長軌道に乗せていくことが必要である。

 例えば、人口減少社会が到来するなかで、質の高い生活を維持すべく、医療や介護、子育て等の分野で新商品・新サービスの開発が進めば、高齢化は逆に経済活力に結びつく。省資源・省エネルギー・新エネルギーのための技術開発も、企業にとっては、新たな成長の糸口になり得る。

 このような企業、個人の挑戦を支えるためにも、政府は、簡素で効率的であらねばならない。また、基礎的財政収支を黒字化するなど財政を健全化していくため、民間需要主導の持続的な経済成長を実現すると同時に、政府全体の歳出を国・地方が歩調を合わせつつ抑制することにより、例えば潜在的国民負担率で見て、その目途を50%程度としつつ、政府の規模の上昇を抑制する。

 他方、政府は、時代の変化が生み出す新たな要請にも応えていかねばならない。例えば、国際環境の厳しさが増すなかで、安全と安心がこれまで以上に重要な課題となっている。治安・安全の確保、大規模災害等への対策のみならず、情報セキュリティや衛生上の安全確保等への政府の取組が急務である。また、国民の価値観の多様化、高度化は、画一的な行政サービスに飽き足らず、公の分野においても選択の自由を求める傾向を強めている。政府は、企業や個人が時代の変化に柔軟に対応し得る環境整備を行うにとどまらず、自らもまた、新たな時代のニーズに即応し、機動的に変化していかねばならないのである。

 構造改革とは、このように新たな経済社会の環境に、企業、地域、個人が柔軟に対応し、その持てる能力が最大限に発揮されるよう、制度や政策、更に政府の在り方そのものを変革する不断の取組である。

第1部 「重点強化期間」の主な改革

1.「官から民へ」、「国から地方へ」の徹底

(1) 郵政民営化の着実な実施

・平成16年4月に経済財政諮問会議で取りまとめた「郵政民営化に関する論点整理」を踏まえ、平成16年秋頃に民営化の基本方針を取りまとめ、平成17年には民営化法案を提出する。

(2) 規制改革・民間開放の積極的推進

・官でなければできない業務の範囲を明確にするための「市場化テスト」や、民間開放に関する数値目標の設定など、民間開放推進のための制度を早期に導入するため、平成16年度中に制度設計を行うとともに、平成17年度の試行的導入に向けて検討を進める。

・国及び地方公共団体の事務事業の民間への移管(民営化・民間譲渡・民間委託)を推進するとともに、公共施設の民間による管理運営、利活用の促進を図る。

・重点17分野などのうち、国民生活に密着し、需要と雇用の拡大にもつながる分野(医療、福祉・保育、教育等)を選定し、なるべく早期に改革案を取りまとめる。

・このため、規制改革・民間開放推進本部と規制改革・民間開放推進会議との密接な連携の下に、重点的に検討を行い、改革を進める。また、経済財政諮問会議等関係会議、関係推進本部等との連携を進める。

・構造改革特区は、地方公共団体が自発的な立案に基づき責任を持って実施し、国はそれを事後的に評価する制度であることを十分踏まえ、地方公共団体や民間等からの提案を「少なくとも特区において実現するためにはどうすればいいか。」という方向で検討し、特区制度を今後とも拡充する。また、提案の実現度を高めるために、個別の提案について不採用の理由等を具体的に公表し、提案者に不採用の理由に対する意見提出の機会を十分に与えるものとする。

・特区での規制の特例措置について、評価委員会の評価を踏まえた本部決定を本年9月に行い、特段の問題が生じていないと判断されたものについては、速やかに全国展開を推進する。また、規制の特例措置の活用を別の制度が阻害していないかを調査し、関連する規制等に問題がある場合には、評価委員会の意見も踏まえつつ、新たな規制改革等を実施する。

・PFIの一層の活用を進めるため、補助金等に係る官民の衡平性を確保する。

(3) 地域の真の自立

(地方の裁量権の拡大と地方行革の推進)

・地方分権改革推進会議等の成果を踏まえ、「地域主権」の推進を図るため、国の過度の関与が地方の主体的な決定や創意工夫ある行財政改革への取組の支障とならないよう、必置規制や義務付け等、国による地方公共団体への規制の廃止や大幅な緩和を図るとともに、条例で定めることができる範囲の大幅な拡大等を通じて、地方の裁量権を拡大する。

・同時に、民間との効率性比較による事務事業のアウトソーシング、公の施設を民間事業者が管理することができる制度(指定管理者制度)の積極的活用、地方公営企業の民営化・民間譲渡・民間委託といった地方行政改革の推進が必要である。また、地方公務員の給与等について、その適正化を強力に推進するとともに、地域の民間給与の状況をより的確に反映し決定できるよう、人事委員会機能の強化をはじめとしてその在り方を見直す。国はそのための参考となる指標を整備する。

・地方分権の更なる推進に向けて将来の道州制の導入に関する検討を本格化させる。

・地方分権推進のモデル的な取組としてのいわゆる「道州制特区」について、地域からの提案を受け止めつつ、その趣旨を生かす推進体制を整える。

(三位一体の改革)

・「基本方針2003」に掲げられた基本的な方向に沿って、三位一体の改革に関する政府・与党協議会の合意(平成15年12月)を踏まえつつ、三位一体の改革を着実に推進していく。

・地方が自らの支出を自らの権限、責任、財源で賄う割合を増やすとともに、国と地方を通じた簡素で効率的な行財政システムの構築につながるよう、平成18年度までの三位一体の改革の全体像を平成16年秋に明らかにし、年内に決定する。その際、地方の意見に十分耳を傾けるとともに、国民への分かり易い説明に配意する。

・全体像には、以下の点に留意しつつ、平成17年度及び平成18年度に行う3兆円程度の国庫補助負担金改革の工程表、税源移譲の内容及び交付税改革の方向を一体的に盛り込む。

 そのため、税源移譲は概ね3兆円規模を目指す。その前提として地方公共団体に対して、国庫補助負担金改革の具体案を取りまとめるよう要請し、これを踏まえ検討する。

・国庫補助負担金の改革については、財源移譲に結び付く改革、地方の裁量度を高め自主性を大幅に拡大する改革を実施する。併せて、国・地方を通じた行政のスリム化の改革を推進する。その際、国の関与・規制の見直しを一体的に行うことが重要である。

・税源移譲については、三位一体改革の一環として、平成18年度までに、所得税から個人住民税への本格的な税源移譲を実施する。その際、応益性や偏在度の縮小といった観点を踏まえ、個人住民税所得割の税率をフラット化する方向で検討を行う。あわせて国・地方を通じた個人所得課税の抜本的見直しを行う。

・地方交付税については、地方団体の改革意欲を削がないよう、国の歳出の見直しと歩調を合わせて、地方の歳出を見直し、抑制する。一方、地域において必要な行政課題に対しては、適切に財源措置を行う。これらにより、地方団体の安定的な財政運営に必要な一般財源の総額を確保する。また、地方団体の効率的な行財政運営を促進するよう、地方交付税の算定の見直しを検討する。

・財政力の弱い団体においては、税源移譲額が国庫補助負担金の廃止、縮減に伴い財源措置すべき額に満たない場合があることから、実態を踏まえつつ、地方交付税の算定等を通じて適切に対応する。

・地方の財政状況について、国民への迅速で分かり易い説明に一層配意する。

(市町村合併の推進)

・地方分権の推進、地域の再生・活性化を図るためには、住民に身近な自治体である市町村の行財政基盤を強化することが不可欠であり、市町村合併を引き続き強力に推進する。

2.「官の改革」の強化

(1) 予算制度改革の本格化

(国民に理解される予算の構築)

・成果目標の明示や事後評価の徹底等を通じて、予算の質を高めるとともに、国民に理解される分かりやすい予算への転換を図り、説明責任を果たす。

(1) 平成17年度予算から重点化する予算全て(第3部 2.(3)参照)に成果目標を明示する。各府省は目標の達成状況を公表するとともに事後評価を行う。

(2) 公会計の整備に取り組み、一般会計・特別会計に独立行政法人・特殊法人等の関係法人を連結し、発生主義を基本とする省庁別の連結財務書類について、平成17年度までにその試行段階を終了する。各府省は平成18年度から、連結財務書類を「年次報告書(仮称)」として公表する。

(3) 政策毎に予算と決算を結びつけ、予算と成果を評価できるような予算書、決算書の作成に向けて、平成18年度までに整備を進める。

(モデル事業)

・平成16年度予算から「基本方針2003」に基づき試行的に取り組んでいる「モデル事業」について、平成17年度予算においては、導入効果が高いと見込まれる電子政府に関する予算等について広く導入するほか、各府省における自主的な取組を通じて事業の追加を図る。各府省は、原則として定量的なアウトカム指標(電子政府に関する予算については業務の効率化に関する指標等)を用いた政策目標を設定し、内閣府と意見交換の上、ふさわしいものについて、モデル事業として概算要求を行う。

(政策群)

・「政策群」については、府省間の連携をより強化し、対象の拡充に積極的に取り組む(ITを活用した医療の利便性向上、建設業の新分野進出の円滑化等)。

(1) 各府省は相互に連携して検討を行い、内閣府とも意見交換の上、ふさわしいものについて政策群として概算要求を行う。その際、できる限り定量的な政策目標(民間活力の誘発に関するものを含む)を定め、その政策目標の達成に向けて個々の府省が果たすべき役割と責任を明確にするとともに、個別の政策手段毎の評価指標を定めることにより、目標を明確化・体系化する。予算査定は、引き続き府省横断的に行う。

(2) 政策群の執行に当たっては、各府省が連携して取り組む。その状況や、目標の達成状況等について、執行段階及び事後において厳格な検証を府省横断的に行い、国民への説明責任を果たすとともに、その後の政策に反映させる。その際、政策評価や予算執行調査を活用する。

(特別会計改革)

・関係府省は、各特別会計について、それぞれの性格に応じ、必要性について厳しく検証しつつ徹底した見直しを行い、年内に改革案を策定する。改革案には、成果目標及び中期的な抑制の目標を設定するとともに、今後の取組工程を明示する。とりわけ、「特別会計の見直しについて-基本的考え方と具体的方策-」(平成15年11月26日財政制度等審議会)で提起されている保険事業についてはその存廃も含めて検討する。改革案及びそれに基づく各年度における取組を経済財政諮問会議に報告する。

・また、特別会計を含めた公会計の整備に取り組むとともに、その内容や会計間、勘定間の繰入の実態等を分かりやすく国民に説明する。

(2) 公的債務管理の充実を通じた市場の安定

・国債・地方債に関する説明責任の充実、民間有識者による助言のための会議の創設、民間専門家の任用を通じた体制の強化等により適切な債務管理を推進する。

・国債市場の厚みを増すため、中期的視点に立ち、物価連動債、個人向け国債等、新たな商品の発行拡大に努め、国債の商品性・保有者層の多様化を図る。

・地方債について、三位一体の改革と整合性を取り、地方の自立と責任を拡大する観点を踏まえつつ、平成18年度に予定されている地方債発行の協議制移行までに、地方公共団体における公的債務管理の充実を図るため、一層の情報開示を進めるとともに、適切な管理の在り方を検討する。

(3) 行政改革

・新たな時代ニーズに応じた行政の再構築に向け、公務員制度や特殊法人等の改革、地方支分部局の効率化・合理化に向けた改革を中期的観点から抜本的に進める。このため、平成17年末を期限とする行政改革大綱のその後の取扱いの検討に着手するとともに、平成17年夏に、定員削減計画を改定する。併せて、行政の基盤である公務員制度について、重点強化期間中に新たな制度に移行できるよう、改革を進める。さらに、政府部内全体を通じて定員の再配置を強力に推進し、特に、地方支分部局については、業務の必要性と業務量の根本的見直しや統廃合の検討により、抜本的に定員を合理化するなど、その在り方を見直す。

・政省令等の行政立法について国民参加の充実に資するため、法制を整備することとし、そのため行政手続法を改正する。

・中央省庁等改革で設立された独立行政法人について、中期目標期間の終了に伴う組織・業務全般の整理縮小、民営化等の検討に平成16年夏から着手する。その際、特殊法人等改革推進本部参与会議の協力も得て、平成16年中に相当数について結論を得る。また、独立行政法人の運営費交付金について、透明性を向上させ、説明責任を確保する。

・地域における給与の官民格差を踏まえて、地域における国家公務員給与の在り方を早急に見直す。

・縦割り行政を打破し、幅広い視野からの政策課題に取り組むことができるよう、今後3年間で各府省の幹部の1割を目途に、府省間の人事交流を積極的に行う。また、府省の若手職員について、広い視野に立った人材の養成の観点から、官民の人事交流を強化する。また、幹部クラスの官民交流について、各府省の業務内容に応じ、数値目標を掲げて推進することを目指し、そのための環境整備に取り組む。

・国・地方で、時代の変化を反映した的確な情報把握と迅速な情報開示のため、農林水産統計などに偏った要員配置等を含めて、既存の統計を抜本的に見直す。一方、真に必要な分野を重点的に整備し、統計制度を充実させる。

(4) 包括的かつ抜本的な税制改革

・経済社会の活性化、持続可能な社会保障制度の確立、真の地方分権と行革の推進、基礎的財政収支の改善、グローバル化の下での競争力強化等の視点に立ち、「平成16年度与党税制改正大綱」(平成15年12月17日)も踏まえ、相互に関連する税制改革案を包括的かつ抜本的に検討し、重点強化期間内を目途に結論を得る。

・産業の競争力強化のための研究開発、設備投資減税の集中・重点化の効果を検証し、引き続き、今後の法人課税の在り方を税制改革の中で検討する。

・貯蓄から投資への流れを加速するため、金融所得に対する一体的課税について、早期の実現を目指し、平成16年度中に検討を行う。併せて、納税者番号制度をはじめ納税環境整備を進める。

3.「民の改革」の推進

(1) 将来の人口減少下での成長戦略の確立

・将来の人口減少や少子高齢化の下で、制約条件とみなされる変化を新たな成長に結びつけ、経済社会の更なる発展のための戦略(「日本経済21世紀ビジョン」(仮称))を官民の英知を結集して経済財政諮問会議において平成16年度中に取りまとめる。

(2) 起業等の促進と新しい企業法制

・起業や迅速な組織再編を促進するため、商法等の改正において、最低資本金制度の下限額の大幅な引下げ又は撤廃の恒常措置化、意欲ある事業家の起業等を促進する新しい法人制度(いわゆるLLC)の創設等の検討を行い、平成17年目途に法案を国会に提出する。また、同改正に伴う組織再編税制の見直しを検討する。さらに、再挑戦しやすい環境整備のため、包括根保証制度等の見直しを行い、平成16年目途に法案を提出する。

・中小企業経営革新支援法、新事業創出促進法、中小創造法を抜本的に見直し、国民に使いやすく分かりやすい一体的な体系を構築するため、平成16年度中に法案を提出する。

(3) 金融システムの一層の改革の推進

・集中調整期間の終了後も金融セクターにおける構造改革の手綱を緩めることなく、我が国金融セクターを更に強化・充実させ、経済成長の基盤とするため、重点強化期間を対象とした「金融重点強化プログラム」(仮称)を平成16年末を目途に策定する。

・「金融重点強化プログラム」(仮称)により、バブル崩壊以来の不良債権問題への対応から脱却して、以下の5つを柱とする金融行政への積極的転換を図る。

(1) 強固で活力ある金融システムの構築

(2) 金融機関の自主的・持続的な取組による経営強化

(3) 地域活性化・中小企業再生に貢献する地域金融や中小企業金融の構築

(4) 利用者のニーズに対応した多様で高度な金融サービスの提供

(5) 金融実態に対応した取引ルール等の整備とその下での利用者の安心の確保

 こうした金融行政の下、民間金融機関等の創意工夫により、経済社会の新たな成長に向けて、国際的にも最高水準の金融機能が利用者のニーズに応じて提供されるようになることを目指す。

4.「人間力」の抜本的強化

(1) 「人間力」強化のための戦略の検討

・関係4大臣による若者自立・挑戦戦略会議等の場で、平成16年中に雇用や教育面での課題を含む「人間力」強化のための戦略を検討する。その一環として、雇用のミスマッチを縮小する施策に取り組む。

・フリーター・無業者を重点に若年者の雇用・就業対策を強力に推進するとともに、個人の選択を機能させた若年者の能力開発施策の拡充、専門高校・国立高専の教育内容見直しと地域との連携強化等を行う。

・少子高齢化社会の急速な到来等に対応するとともに、男女共同参画社会の実現を目指して、性別や年齢にかかわらず、仕事と生活のバランスをとりつつ、能力と意欲に応じて多様な働き方ができる環境を整備していく。

・障害者の雇用・就業、自立を支援するため、在宅就労や地域における就労の支援、精神障害者の雇用促進、地域生活支援のためのハード・ソフトを含めた基盤整備等の施策について法的整備を含め充実強化を図る。

(2) 利用者の立場に立った雇用関連事業の再編

・国、都道府県、市町村、独立行政法人、公益法人が実施している雇用関連事業について、利用者の立場に立ったワンストップ化を進め、複数の機関で実施している事業がある場合には、機関の間で調整を図り、効果的な運用を行う。

・ハローワークをはじめとする雇用関連事業において、より効率的・効果的な実施に努めるとともに、民間で行うことがより効率的・効果的な分野については、民間への開放を促進する。

・雇用保険3事業の29助成金をはじめ、雇用関連各種事業の一層の整理統合を推進し、雇用維持支援・雇入助成から労働移動支援・ミスマッチ解消支援への重点化を進める。

(3) 教育現場の活性化等

(教育現場の活性化)

・「確かな学力」の向上を図り、学習指導要領の不断の見直しを進めるとともに、高校等学校現場における体験学習や実習について、単位の認定など各学校の取組を促進する。また、幼児期からの「人間力」向上のための教育を重視する。

・寄宿学校など寄宿を伴った教育活動を行う学校や宿泊を伴った共同生活を通じた体験活動等を推進する。

・教員の給与や人数・配置に関する現行法の規定について、時代のニーズに応じた教育の質を確保するという本来の役割を果たしているかという観点を含め、その在り方を平成18年度までに検討し、結論を得る。

・地域の創意工夫を活かし、学校の自由度を高めるため、平成16年度内を目途に、教育委員会の改革と合わせ、教育内容等に関する校長の権限強化と学校の外部評価の拡充に向けた方針を示す。

・法人化等を契機とした各大学の時代のニーズに応えた多様な組織見直しや新たな改革の取組を促進すべく、政策目標の明確化、事後評価の確立、競争原理を機能させた支援等、高等教育・研究の活性化を図る。

・大学の学部・学科の設置認可の弾力化について、平成15年度から施行された制度改正の実施状況等を踏まえ、平成16年度以降検討し、できる限り速やかに結論を得る。

・各大学の自主的な検討に基づき、専門職大学院の拡充を図り、高度専門職業人材の養成を強力に推進する。

(文化芸術・スポーツの振興)

・文化芸術・スポーツについて、国民の豊かな感性や体力を育むとともに、国内外の人々を魅了する我が国の文化力の向上を図り、経済・社会の活性化にも資するよう、効果的かつ効率的な振興策を重点的に実施する。

(食育の推進)

・「食育」を推進するため、関係行政機関等が連携し、指導の充実、国民的な運動の展開等に取り組む。

5.「持続的な安全・安心」の確立

(1) 社会保障制度の総合的改革

(社会保障の一体的見直し)

・社会保障制度全般について、広く有識者の参加も得つつ、一体的な見直しを開始する。平成16年中に、社会保障制度の国民生活における基本的役割、その持続可能性、経済や雇用との関係、家族や地域社会の在り方を踏まえ、中期的な観点からの社会保障給付費の目標、税・保険料の負担や給付の在り方、公的に給付すべき範囲の在り方、各制度間の調整の在り方、制度運営の在り方等の課題についての論点整理を行い、重点強化期間内を目途に結論を得る。

・国民の利便性向上、事業効率化に向けて、保険料の徴収体制及び社会保険庁の在り方を見直す。

・社会保障制度を国民にとって分かりやすいものとするとともに、個々人に対する給付と負担についての情報開示・情報提供を徹底する。

(年金制度改革)

・制度に対する信頼を確保できるよう、国民一人一人の立場に立った運営を目指し、その見直しを進める。また、前述の社会保障制度全般についての一体的見直しにあわせて、体系の在り方について検討する。

(医療制度改革)

・給付費の急増を回避し、将来にわたり持続可能な制度となるよう、社会保障制度の総合的改革の観点に立って、医療制度改革を平成16年度以降も引き続き着実に進める。

・「基本方針2003」で閣議決定されたように、昨年3月の「医療保険制度体系及び診療報酬体系に関する基本方針」(平成15年3月28日閣議決定。以下「医療に関する基本方針」という。)の具体化について実施可能なものから極力早期に実施するとともに、増大する高齢者医療費の伸びの適正化方策や、公的保険給付の内容及び範囲の見直し等の「医療に関する基本方針」以外の課題について早期に検討し、実施する。

・「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」(平成13年6月26日閣議決定)における「医療サービス効率化プログラム」(診療報酬体系の見直し、公的医療保険の守備範囲の見直し等を含む。)を早期に完全実施する。

・診療報酬体系の見直しに当たっては、利用者の立場が反映され、また審議の透明化が図られるよう、中央社会保険医療協議会等の在り方を見直す。

(介護保険制度改革)

・給付費の急増を回避し、将来にわたり持続可能な制度となるよう、社会保障制度の総合的改革の観点に立って、平成17年度に改革を行う。給付の実態を精査し、給付の重点化と効率化を図りつつ、制度創設以来の議論を踏まえ、以下の内容を中心とする改革を行う。これによって、保険料負担の上昇を極力抑制する。

(1) 軽度要介護者に対するサービスを効果ある介護予防に重点化

(2) 在宅における痴呆ケア、施設における個室・ユニット化等の推進

(3) 第三者評価の義務付け等のサービスの質の向上

(4) 在宅と施設の給付範囲の不均衡の是正及び年金との重複給付の調整等を図る観点から「ホテルコスト」、食費等の利用者負担の見直し

(生活保護の見直し)

・社会経済情勢の変化等を踏まえ、加算等の扶助基準の見直し、保護の適正な実施に向けた地方公共団体の取組の推進など、制度、運営の両面にわたる見直しを行い、平成17年度から実施する。特に、雇用施策と連携しつつ、就労及び自立を促す。

(2) 少子化対策の充実

・人口減少の時代を目前に控え、家庭の役割を大切にし、子どもを生み、育てることに喜びを感じることができる社会を構築する。「少子化社会対策大綱」(平成16年6月4日閣議決定)に基づき、国の基本政策として少子化の流れを変えるための施策を強力に推進する。平成16年中に大綱の重点施策についての具体的実施計画を策定するとともに、高齢関係給付の比重が高い現在の社会保障制度の姿を見直す。また、保育については、児童の視点に立って、利用者の選択を機能させ、サービスの向上について施設間の競争を促す方向で情報公開、第三者評価等の施策を推進する。

(3) 健康・介護予防の推進

・国民一人一人が生涯にわたり元気で活動的に生活できる「明るく活力ある社会」を構築する。このため、健康で自立して暮らすことのできる「健康寿命」の延伸を目指し、「働き盛り層」「女性層」「高齢者層」など国民各層を対象とした生活習慣病対策及び介護予防について、平成17年度からの10か年戦略(「健康フロンティア戦略」)として、施策の推進による成果について数値目標を設定し、その達成を図るため、地域における介護予防の拠点の整備など、関係府省が連携して重点的に政策を展開する。

・ゲノム科学・ナノテクノロジーの推進など健康寿命を伸ばす科学技術の振興を図るとともに、医薬品・医療機器について、治験環境の充実、承認審査の迅速化、後発医薬品市場の育成など関連産業の国際競争力の強化を図る。

(4) 治安・安全の確保

・国民に治安と安全を確保し、安心して暮らせる社会を保障する。そのために、「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」について、例えば、「不法滞在者を今後5年間で半減」するなど成果目標を可能な限り数値化しつつ、毎年の進捗状況のフォローアップを行うことを通じ、その着実な実施を図る。そのため、治安対策に取り組む国・地方の要員・施設等の充実や法制の整備に取り組むとともに、業務の効率化の徹底、PFI、民間委託の拡充、地域住民による防犯活動の促進等を図る。

・大規模災害、テロ、有事等に対する全国的見地からの対応の体制整備や、住民及びNPO等との協働による安心・安全な地域づくりを推進する。大規模地震対策、治山治水対策をはじめとする防災対策については、被害減少に向けた成果目標を設定し、そのために戦略的・重点的に施策を推進する。また、地域の防災拠点となる公共施設の耐震化等を推進する。

・情報セキュリティについては、高い信頼性が確保されたIT社会の実現に向けて、プライバシー侵害や個人情報の大量流出等に的確に対応できるようにするとともに、官民連携して、高度情報通信ネットワークの安全性及び信頼性を確保するための総合的かつ統一のとれた対策を強力に推進する。

・SARSをはじめとする新たな感染症といった国民の生命・健康を脅かす事態に対して、迅速かつ適切に対応できる体制を確保する。

・BSE、鳥インフルエンザへの対策や食品表示基準の見直し等、引き続き、食の安全・安心の確保に努める。

(5) 循環型社会の構築・地球環境の保全

・環境保護と経済発展の両立の観点を踏まえ、循環型社会の構築に向け、リサイクル対策、ごみの排出抑制、不法投棄対策等に引き続き取り組むとともに、環境教育を推進する。また、京都議定書の目標の達成を図るため、平成16年に「地球温暖化対策推進大綱」の評価・見直しを行い、必要な追加的対策・施策を講ずる。

・森林の環境保全機能を重視し、「緑の雇用」による担い手の育成と地域への定住促進、木材利用の促進を図りつつ、健全な森林の整備・保全を進める。

(6) 持続的な発展基盤の確保

(司法制度改革)

・国民に身近で頼りがいのある司法を実現するため、裁判員制度の導入、裁判外の紛争解決手段(ADR)の拡充・活性化、犯罪被害者支援を含む司法ネットの整備等の司法制度改革を推進する。

(大陸棚の調査等)

・大陸棚の調査等領土・領海に関して引き続き迅速かつ的確に対処する。

(エネルギー等)

・エネルギーの安定供給の確保及び環境への適合等の観点から、「エネルギー基本計画」を着実に実施する。また、原料資源の中長期的な安定供給確保策の強化を推進する。

第2部 経済活性化に向けた重点施策

1.地域再生

(1) 地域再生の積極的展開

 やる気のある地方公共団体、住民や地域の民間企業等との協力の下に自主性と創意工夫を活かしながら、それぞれの地元の特性を踏まえた地域間競争を通じて地方経済の活性化を図ることにより、地域の再生を実現する。

・地域の政策的ニーズにより積極的に対応した施策を実現し、地域が再生に向けた取組を自主裁量で戦略的に実施できるようにするため、「今後の地域再生の推進にあたっての方向と戦略(平成16年5月27日本部決定)」等に基づき、地域再生本部において更なる施策の展開を積極的に図る。

・「国から地方へ」「官から民へ」との考え方の下、地方の権限と責任を大幅に拡大するなど、「三位一体の改革」にも資する方向で、各種政策手段を組み合わせた「地域の地力全開戦略」としての取組を強力に推進する。推進するにあたっては、下記について、府省横断的なものも含め、補助金改革等を行い、持続可能な地域の再生につなげる。

(1) 知恵と工夫の競争のサポート・促進

・地域再生に必要なひとづくり、人材ネットワークづくりに資する活動(企画立案・推進)への支援

・既存の諸施策において、地域再生を重視する方針を明確化するとともに、地域再生推進のための手段を具体化

(2) 自主裁量性の尊重、縦割り行政の是正、成果主義的な政策への転換

・地域再生のモデルとなる主要政策テーマとして、地域観光の活性化、産学連携、環境共生、地域福祉・介護、IT化、バリアフリー化等を位置づけ、テーマごとに連携すべき施策をパッケージ化等

・地域再生の推進に資するよう、地域の視点からの補助金改革を推進し、既存の補助金を見直し、地域が自主裁量性の高い資金を未来への投資として、透明な選定プロセス、複数年度執行、成果の評価なども念頭に、国民に説明できるような形で戦略的に活用できるような仕組みを構築

(3) 民間のノウハウ、資金等の活用促進

・地域再生に資する外部経済効果等の高い民間プロジェクトに対する、民間資金の誘導促進

・アウトソーシングを促進するための環境整備

(2) 都市再生の総合的な推進

・都市の国際競争力を高めるとともに、地域経済の活性化、質の高い生活環境の創出を図るため、都市再生プロジェクトの推進、民間都市開発投資の促進、商業等の機能が集積する市街地の中心部の再生をはじめとする全国都市再生の推進に取り組む。その一環として、都市部における地籍整備を推進する。

(3) 地域の基幹産業等の再生・強化

(農業の競争力強化・食料産業の活性化)

・農業の競争力強化、食料産業の活性化を図るため、「農政改革基本構想」に示された攻めの農政の方向性を踏まえ、本年夏までに新たな「食料・農業・農村基本計画」の中間論点整理を行い、可能な施策から平成17年度概算要求等に反映し速やかに実施する。

 その際、市場原理に基づく価格形成による競争の一層の促進、担い手を対象とした品目横断的な政策への移行、農業環境・資源の保全政策、農業生産法人の要件や構造改革特区における株式会社等の農業への参入の全国展開等参入規制の在り方について検討を行い、規模拡大や多様な担い手の育成に重点をおく。

 また、農林水産物、食品の輸出拡大に向けた取組の強化、食品産業と農業との連携強化、水産資源の増大と持続的利用を図るとともに、「立ち上がる農山漁村」を推進する。

 さらに、改正された関係法律等に沿って、地方の裁量権の拡大と地方組織のスリム化を図る。

・産業クラスター、知的クラスター等の手法を活用し、食料産業分野においても産学官連携を推進する。

(建設業の新分野進出支援策の取りまとめ)

・地域の中小・中堅建設業の新分野進出への取組が円滑になされるよう、情報提供、中小企業対策や雇用対策の活用、農業、福祉、環境等の分野への進出に係る規制・制度の見直しや構造改革特区の活用、施設の管理運営を行うPFI事業への参入支援等の支援策を関係省庁が連携して本年秋までに取りまとめ、速やかに実施する。

(観光戦略の強化)

・観光立国による地域再生のための地域自らの取組を促進するとともに、観光産業の進展を図る。このため、新たに設けられた観光立国推進戦略会議を活用しつつ平成16年度から観光戦略を強化する。

・具体的には、観光分野の人材育成、良好な景観形成、長期休暇の取得促進、外国人観光客に配慮した諸環境の整備、都市と農山漁村の共生・対流の促進、世界遺産をはじめとする自然・文化等の活用等の施策を強力に推進する。

2.雇用政策・人材育成施策の新たな展開

(1) 職業教育の強化と「若者自立・挑戦プラン」の強化

(職業教育の強化)

・小・中学校段階から職業に関する教育を地域の協力も得て充実するとともに、高校段階においては、より具体的な職業観の確立を目指した教育を強化する。こうした考え方に立って、社会ニーズに応じた高度な専門的人材を育成するため、専門高校及び全国に展開する国立高専等の学校運営の弾力化、地域の特性を活かした教育内容の構築、地域産業との連携等の強化を促進する。

(「若者自立・挑戦プラン」の強化)

・「若者自立・挑戦プラン」については、民間委託等を活用する範囲を大幅に拡充することや、国から地域への支援を競争的・選択的に行うこと及び成果評価に基づき適切に見直しを行うこと等により実効性・効率性を高めていく。そのため、平成16年中に若者自立・挑戦戦略会議でアクションプランを取りまとめる。

・また、地域の産業界の協力を得つつ、地域の産業界、教育機関、行政機関、住民が連携して、地域における経験豊かな人材や施設(工場、サービス施設、職業能力開発校等)を活用した職業教育及び体験活動等の積極的推進を図るなど、同プランを効果的に推進していく枠組みを強化する。

(フリーター・無業者に対する働く意欲の向上等)

・若年者雇用への関心を喚起する国民運動の推進、働く意欲の涵養、向上を図る取組、労働体験や職場定着の推進のための施策など、若年者に働く意義を実感させ、その意欲や能力を高める総合的な対策を講じる。

(2) 地域主導の雇用政策

・労働移動円滑化や能力開発等の雇用政策において地域の実情に応じた対応策を取るため、地域からの提案を受けた競争的・選択的支援の仕組みの創設について検討する。

・「新産業創造戦略」を踏まえ、国際競争力に優れた先端産業、市場ニーズに対応したサービス等新産業とともに、観光や食品産業、ものづくり産業など地域再生の核となる産業を育成し、新たな雇用機会の創出を図る。同時に、地域のニーズ等を踏まえつつ、これら新産業の発展を支える中核人材を育成するための人材育成プログラムを推進する。

(3) 労働移動の円滑化等

・平成16年度より長期失業者を対象に導入されたハローワーク事業の包括的な民間委託について、評価結果を踏まえ、より効果的・効率的な就職支援となるよう民間事業者の活用を拡大する。

・有料職業紹介事業者が求職者から手数料を徴収できる範囲(現行 年収700万円超)について、施行状況を踏まえ、更なる拡大に関し検討する。

・ハローワーク及び雇用保険3事業について、平成16年度より開始された数値目標の明示を今後も進めるとともに、保険料負担者への説明責任の徹底、外部評価の活用による厳正な評価を行い、その結果を踏まえて重点化・効率化を一層推進する。

3.「新産業創造戦略」の推進、市場環境の整備及び発展基盤の強化

(1) 「新産業創造戦略」の推進

(7つの戦略産業分野と地域再生の産業群の育成)

・「新産業創造戦略」に示されたアクション・プログラムを踏まえ、我が国の将来の発展を支える燃料電池等7つの戦略産業分野を育成するため、研究開発、人材育成、規制改革、環境整備等を重点的に推進する。

・地域の資源を活かしつつ産業クラスター計画や知的クラスター創成事業を推進し、創造的な地域産業の再生を図る。その際、両者の統合的かつ円滑な運用や各クラスター間のネットワーク化を進める。また、コーディネーター制度について地域の実態とニーズに即した運用を行うなど顔の見える信頼ネットワークの充実、人材・技術のデータベース化支援など地域における産学官連携強化、地域ブランドの形成・発信等の重点施策を実施する。

(産業人材の育成)

・製造現場の中核人材やサービス産業人材、IT人材等の産業人材の育成を図るため、産学連携による人材育成プログラムの開発やベテラン人材の活用等を促進する。また、企業内人材投資の促進、優秀な産業人材のスキル標準の策定を含む顕彰制度の充実・普及、草の根eラーニング・システムの整備等を推進する。

(新技術の創造・保護等と最適な事業環境整備)

・研究開発については、「科学技術創造立国」の実現に向けた政策との連携を緊密にしつつ、戦略産業分野への重点化を図る。また、研究開発と規制改革・標準化等の一体的推進、特許審査迅速化と特許情報の提供拡大等、企業における営業秘密管理や技術流出防止の強化、国際標準の戦略的獲得、デザインの保護強化と地域ブランドの確立支援等により、新技術の創造・保護等を強化する。

・電子タグの活用による商物流の効率化、ITに関する信頼性・安全性の一層の強化等を推進する。

(2) 公正取引のためのルールの強化

・21世紀にふさわしい競争政策を確立するため、幅広く議論を尽くした上、独占禁止法改正法案を本年中に国会に提出するとともに、引き続き、公正取引委員会の機能強化に取り組む。

・公共調達について、価格だけでなく技術や品質を含めた評価の下で、健全な競争を促進するため入札・契約の一層の改革・適正化を進めるとともに、発注者側に談合への関与があった場合の制裁の厳格化を検討する。

(3) 経済連携の推進、対日直接投資の促進

・WTO新ラウンド交渉を推進しつつ、経済連携を推進する。アジア各国等との経済連携交渉について、アジアの先進国にふさわしいリーダーシップを発揮しつつ、政府全体として緊密な連携・調整の下に、国内構造改革と一体的に加速・強化する。このため、看護、介護等の分野における外国人労働者の受入れに関して総合的な観点から検討する。また、農業生産の効率化を促す方向で、農政改革を早期に進める。相手側に技術・人材育成、国内法制度(政府調達、知的財産権保護、競争政策等)、通信・物流インフラなどの面で自由化のボトルネックがある場合にはODAなどによる協力も活用しつつ、その改善を支援していく。

・新たな経営ノウハウや技術の導入等を通じて新市場や雇用の創出をもたらす対日直接投資を促進するため、「対日投資促進プログラム」の着実な実施により、平成18年末までの5年間で対日直接投資残高の倍増を目指す。

(4) IT戦略の推進

 2005年までに世界の最先端のIT国家となるとともに、2006年以降も世界最先端のIT国家であり続けるため、内閣一体となってe-Japan戦略を進めていくことが必要であり、このため「e-Japan重点計画2004」に基づき、加速化5分野、先導的7分野、インフラ等IT政策の重点化・加速化を推進する。

・利活用の分野のうち医療のIT化については、より良質で安全かつ効率的な医療を実現するため、政策群の手法も活用し、財政規律を保ちつつ関係機関にIT化のインセンティブを与える制度改革等により強力に推進し、社会保障関係のIT化につなげていく。また、同様に効率性を確保しつつ、教育など知のIT化を推進する。

・電子政府の構築に当たっては、IT化に対応した行政の減量効率化を進める。

・ネットワーク分野については、ユビキタスネットワーク環境を整備し、高齢者・障害者が元気に参加できるIT社会を実現するため、「u-Japan構想」を具体化する。

・e-Japan重点計画2004においては、過去の重点計画の評価を踏まえ、成果目標を導入し、IT戦略における成果主義を確立する。

(5) 科学技術創造立国

・「科学技術基本計画」に基づき、関係府省の協力の下、総合科学技術会議が司令塔として先導して、一般会計・特別会計の科学技術予算(人文社会科学を含む。)を、各府省の枠を超え、優先的な分野に大胆に重点化・効率化する。その際、これまでの同会議による優先順位付けの成果を評価する。また、政策群の手法について、一層の活用を図る。「みらい創造プロジェクト」については、経済活性化のため、引き続き推進する。

・競争的研究資金については、交付の審査基準を明確化するとともに、研究者に関するデータベースの活用や研究の実績より計画を重視するなど評価方法を改革し、将来ある若手研究者や質の高い研究に重点配分する。

(6) 知的財産の創造・保護・活用

・知的財産戦略については、「知的財産推進計画2004」に基づき、官民一体となった模倣品・海賊版対策の強化等、引き続き、知的財産の創造・保護・活用を推進するとともに、業界の一層の近代化・合理化に向けた取組の強化等を通じて、コンテンツビジネスの振興を推進する。

(7) 中小企業の革新と再生

・大学発ベンチャー1000社計画等の研究開発型ベンチャー支援、異業種間やNPO等との新連携による中小企業の高付加価値化支援、中小企業再生支援協議会等を活用した事業・産業再生の一層の促進、創業からその後の事業展開に応じた資金供給の円滑化や債権・動産の活用促進等による産業金融機能強化等を通じ、活力ある中小企業の革新と再生を図る。

第3部 経済財政運営と平成17年度予算の在り方

1.経済財政運営の考え方

(1) 今後の経済動向と当面の経済財政運営の考え方

(平成16・17年度の日本経済)

・景気の現状は、企業部門の改善に広がりがみられ、個人消費も持ち直すなど、着実な回復を続けている。但し、景気回復の状況にはばらつきがみられる。

・今後の経済動向については、世界経済の回復が続く中で、景気の自律的な動きが強まっていくことから、景気回復が続き、「平成16年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」(平成16年1月19日閣議決定)及び「構造改革と経済財政の中期展望-2003年度改定」(同日閣議決定。以下「改革と展望-2003年度改定」という。)で示した経済の姿に概ね沿ったものとなると見込まれる。

・平成16年度については、世界経済の回復が続く中で、生産や設備投資の増加が続き、こうした企業部門の動きにより、雇用・所得環境も厳しいながらも持ち直しに向かい、家計部門にも徐々に明るさが及んでいくことが期待される。こうしたことから、我が国経済は民間需要中心の回復過程を辿るものと見込まれる。また、デフレ傾向は継続するおそれがあるものの、需要の回復等に加え、政府・日本銀行一体となった取組を進めることにより、デフレ圧力は徐々に低下していくと見込まれる。

・平成17年度については、改革の成果が各部門に浸透していき、企業部門の改善の広がりに加え、家計部門も回復していくことが期待されることから、民間需要を中心とした景気の緩やかな拡大期間が続くものと考えられる。また、デフレからの確実な脱却に向けた進展が見込まれる。

・但し、世界経済の動向等に伴うリスクの存在には十分留意する必要がある。

(当面の経済財政運営の考え方)

・集中調整期間の仕上げの年となる平成16年度においては、景気の回復には地域間にばらつきがあり、また、大企業に比べ、中小企業を巡る環境は厳しいことに鑑み、改革の成果を地域や中小企業にも浸透させるとともに、デフレ克服を目指しながら、「基本方針2003」に盛り込まれた施策を着実に実施するなど、構造改革の取組を加速・拡大する。重点強化期間と位置づける平成17年度及び18年度においては、デフレからの脱却を確実なものとしつつ、新たな成長に向けた基盤の重点強化を図る。

 なお、今後とも、経済情勢によっては、大胆かつ柔軟な政策運営を行う。

・デフレについては、景気の着実な回復により需給ギャップが縮小する一方で、銀行貸出の低迷等からマネーサプライの伸びが低い中で、素材価格の上昇により国内企業物価はわずかな上昇を示しているが、物価動向を総合的に勘案すれば、デフレ克服は「道半ば」の状況にあり、その取組は依然重要な政策課題である。こうした中、政府として「改革と展望-2003年度改定」で名目成長率は徐々に上昇し平成18年度(2006年度)以降は概ね2 %程度あるいはそれ以上と見込んだことにも鑑み、集中調整期間終了後におけるデフレからの脱却を確実なものとするため、政府は、日本銀行と一体となって政策努力を更に強化する。

・政府は、需給ギャップの更なる縮小を進めるためにも、以下の4分野の構造改革を引き続き推進する。

・金融分野においては、平成16年度末までに、「金融再生プログラム」の着実な推進により、不良債権問題を終結させるとともに、中小企業の再生と地域経済の活性化を推進するため、リレーションシップ・バンキング(間柄重視の地域密着型金融)の機能強化を図る。また、産業・金融の一体的再生を図るため、産業再生機構等の積極的活用を促し、整理回収機構(RCC)についても中小企業等の集中的再生に向けた一層の活用を図る。さらに、投資商品の多様化・投資家保護の拡充や市場を通じた企業のガバナンス向上など、金融・証券市場の構造改革と活性化に取り組むとともに、平成16年末を目途に「金融重点強化プログラム」(仮称)を策定し、国際的にも最高水準の金融機能が利用者のニーズに応じて提供されるようになることを目指す。

・規制分野においては、平成16年5月発足の規制改革・民間開放推進本部と規制改革・民間開放推進会議等が密接な連携を図りつつ、3か年計画を着実に実施するなど、国民生活に直結した分野やビジネスニーズの高い分野等での規制改革・民間開放を進める。また、今後とも構造改革特区を拡充するとともに、これまでの特区での規制の特例措置について、評価委員会の評価を踏まえつつ、速やかな全国展開を行う。

・歳出分野においては、引き続き、民間需要創出に力点を置いた重点化・効率化を行うとともに、社会保障制度改革、三位一体の改革、予算制度改革の本格化等と併せ、持続可能な財政構造を構築する。また、公的債務管理の充実に努める。

 財政投融資については、構造改革に資する分野に対象事業の重点化を図りつつ、真に政策的に必要と考えられる資金需要には的確かつ弾力的に対応する。

・税制分野においては、持続的な経済社会の活性化のための税制改革、租税負担と社会保障負担の総合的な検討、三位一体の改革を中心として、引き続き、包括的かつ抜本的な税制改革に取り組む。その際、経済や財政の状況等を十分に見極めつつ、歳出の徹底した見直しと併せ、幅広く検討を行う。

・また、これらの取組に加え、経済活性化に向けた重点施策として、地域再生、雇用政策・人材育成施策の新たな展開、「新産業創造戦略」の推進、市場環境の整備及び発展基盤の強化に取り組む。

・日本銀行には、効果的な資金供給につながるような措置を含め、更に実効性ある金融政策運営に努めるよう期待する。また、「改革と展望-2003年度改定」及び「基本方針2004」において政府が示した、「重点強化期間」を含む経済の見通し、デフレからの脱却を確実なものとするための取組等の基本方針と整合的なものとなるよう、金融・資本市場の期待の安定化にも配慮しつつ、デフレ克服までの道筋を含め、金融政策運営に関する透明性の一段の向上に努めることを期待する。

(2) 中期的な経済財政運営の在り方

・本基本方針の施策を着実に実行し、重点強化期間において、デフレからの脱却を確実なものとしつつ、人口減少や国際環境の変化など新たな条件の下での成長基盤の重点強化を図る。

・歳出改革路線を堅持し、「改革と展望」に沿って、平成18年度(2006年度)までの政府の大きさ(一般政府の支出規模のGDP比)が平成14年度(2002年度)の水準を上回らない程度とすることを目指す。また、平成18年度(2006年度)までに、国と地方双方が歳出削減努力を積み重ねつつ、必要な行政サービス、歳出水準を見極め、また経済活性化の進展状況および財政事情を踏まえ、必要な税制上の措置を判断する。

・さらに、平成19年度(2007年度)以降も、それ以前と同程度の財政収支改善努力を行うと同時に民間需要主導の持続的成長を実現することにより、2010年代初頭における国と地方合わせた基礎的財政収支の黒字化を目指す。

2.平成17年度予算における基本的な考え方

(1) 平成17年度予算のねらい

・平成17年度予算は、集中調整期間後の「構造改革の仕上げ」と「新たな成長」に向けた重要な予算である。義務的経費を含めて歳出を厳しく見直し、重点課題に対してメリハリのある配分を行うなど、持続可能な財政の構築と予算の質の向上を目指す。平成17年度予算の概算要求基準についても、これらの考え方を踏まえ、策定する。その際、これまでの概算要求基準の下での予算のメリハリを検証する。

・同時に、成果目標の明示や事後の政策評価等の徹底など、予算制度に踏み込んだ改革を行い、国民にとって分かりやすい予算を目指す。

(2) 歳出改革路線の堅持

・「改革と展望」に示された「政府の大きさ(一般政府の支出規模のGDP比)は2002年度の水準を上回らない程度とすることを目指す」との方針を踏まえ、平成16年度予算は、一般会計歳出及び一般歳出ともに実質的に前年度の水準を下回るものとなった。平成17年度予算においても、引き続き歳出改革路線を堅持する。国債発行額についても極力抑制する。また、引き続き、特別会計や地方を含め、政府の大きさ(一般政府の支出規模のGDP比)を極力抑制することを目指す。特別会計については、平成17年度予算では、各特別会計の性格に応じ、制度改革等を行い、一般会計からの繰入を抑制する。

(3) 予算配分の重点化・効率化

(重点化の考え方)

・「活力ある社会・経済の実現に向けた重点4分野」(「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」(平成14年6月25日閣議決定))の考え方に沿い施策を集中し、「第1部 「重点強化期間」の主な改革」及び「第2部 経済活性化に向けた重点施策」を推進する。その際、「(4)主要予算の改革」も踏まえ、施策の絞込み(重点化・効率化)を行う。また、各府省は、重点課題における全ての事業予算について、成果目標を提示し、事後評価を十分行い得る基盤を整える。

・また、新規施策の計上に当たり、既存施策の廃止・縮減を行う(予算見合いの原則)。各省庁は要求に当たって徹底した自助努力を行う。あわせて、民間需要を誘発する政策、より少ない財政負担で民間主体の投資を喚起する政策等、民間の潜在力を最大限引き出す政策や費用対効果の高い施策に絞り込む。また、継続する既存施策については、事後評価を要求・査定に反映する。

・「政策群」については、府省間の連携をより強化し、対象を拡充する。

(抑制の考え方)

・納税者の立場に立って、公共調達の効率化、公用車の効率化をはじめとする行政効率化関係省庁連絡会議の取りまとめ内容について、概算要求、機構・定員及び予算執行に反映する。

・また、予算全体について、民間委託・PFIなど民間活力の活用による効率化に努めるとともに、物価動向に加えて、行政サービスの簡素化・効率化を織り込み、予算執行調査等も活用しつつ、単価の見直しとコストの縮減を図る。義務的な経費であっても、制度改革の取組と併せ、事務事業の合理化や単価の見直しを進めることにより、経費の大胆な節減に取り組む。

・さらに、総人件費の抑制に努める。また、人事院においては、地域における給与の官民格差を踏まえて、地域における国家公務員給与の在り方についての検討を行い早急に具体的措置を取りまとめるよう、要請する。地方公共団体においても、地方公務員給与の在り方の見直しを行うよう、要請する。

(4) 主要予算の改革

(1) 社会保障については、一般歳出の約4割、地方向け国庫補助負担金の約6割を占めている。少子高齢化が進展する中、年々増加する社会保障関係費の伸びの抑制に取り組むことが、我が国の財政運営上の最大の課題である。このため、概算要求段階及びその後の予算編成過程において、社会保障関係の自然増を放置することなく、「第1部 5.「持続的な安全・安心」の確立」を踏まえ、介護、生活保護、医療その他の制度改革等に取り組み、公的給付の見直し等を行うことにより、その抑制を図る。

(2) 雇用については、政策効果や実績を検証し、雇用維持支援・雇入れ助成から労働移動支援・ミスマッチ解消等に重点化するなど、メリハリのある見直しを行う。

(3) 公共投資については、「改革と展望」に基づき、景気対策のための大幅な追加が行われていた以前の水準を目安に、選択と集中の観点から、更なる重点化・効率化を推進するとともにコストの縮減等を図る。その中で、国の役割は国家的な政策課題への対応の観点から戦略的・広域的かつ質の高い社会資本の整備に重点化するとともに、地方の自主性・裁量性を拡大する方向で取り組む。「平成16年度予算編成の基本方針」(平成15年12月5日閣議決定)において厳しく見直すこととした分野については、引き続き厳しく抑制する。機能類似の事業については、府省間の一層の連携・調整を図る。

(4) 教育については、義務教育に関する地方の自由度を拡大し、地方公共団体や地域住民の知恵・工夫が一層活かされるような仕組みとするため、これまでの改革に加え、現行法の見直しを含めた検討を進めるなど、義務教育費国庫負担制度の改革を推進する。また、高等教育の質的向上を図るため、機関に対する既存の支援策の在り方を見直し、国立大学法人間、国公私立を通じた競争原理に基づく支援へのシフトを促進するとともに、奨学金制度による意欲・能力のある個人に対する支援を一層推進する。文化については、施策の有効性や費用対効果の検証等を通じ、説明責任を果たしつつ、その振興及び支援の重点化を図る。

(5) 科学技術については、総合科学技術会議による施策の優先順位付けの予算への反映を徹底するとともに、同会議が一層の主導性を発揮し、重点4分野(ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料)への更なる重点化と、その他分野(エネルギー、製造技術、社会基盤、フロンティア)における一層の効率化・合理化を図る。また、プロジェクトの中間評価・事後評価の結果を将来の資源配分に反映する具体的制度作りを進めるとともに、評価結果に基づくプロジェクトの見直しや中止を積極的に行う。

(6) 農林水産については、農業者全体を対象とした一律的な施策について見直しを行い、施策を意欲と能力ある経営体に集中させることにより、競争力の強化を図る方向での改革を更に推進する。

(7) 地方財政については、三位一体の改革を推進し、国の方針と歩調を合わせつつ、地方歳出の徹底した見直しを行い、地方財政計画の規模の抑制に努めるとともに、引き続き交付税の算定方法の簡素化等に取り組む。

(8) 治安については、現下の犯罪情勢等を踏まえ、既存施策の精査の徹底、民間活力の活用等を通じ、効率的かつ機動的な体制の整備を図ることにより、国民の安全・安心を確保する。

(9) 防衛については、「弾道ミサイル防衛システムの整備等について」(平成15年12月19日閣議決定)に沿って、新たな脅威等に実効的に対応し得る体制を整備するとともに、自衛隊の既存の組織・装備等の抜本的な見直し・効率化を図る。

(10) ODAについては、我が国にふさわしい姿を目指し、諸外国の動向や外交を戦略的に展開するための適切な水準を見極めつつ、その内容を精査し、効率化を進める。